説明

癌および感染性疾患の処置に関する組成物および方法

本発明は、Toll様受容体作動薬および免疫メディエーターを含む組成物を投与することにより免疫反応を調節する方法を提供し、このメディエーターは、抗炎症性サイトカインIL−10の発現を下方制御し、炎症促進性サイトカインIL−12の発現を上方制御する。本方法を使用して、癌性状態および感染性疾患の治療目的の処置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、癌または悪性疾患および感染性疾患を予防または処置する新規の組成物および方法に関する。特に、本発明は、1型免疫反応(例えばTh1細胞)の誘導および/または制御性T(Treg)細胞の破壊を促進する組成物および方法に関する。本発明は、疾患の処置においての本発明の組成物の使用にまでさらに及ぶ。
【0002】
[背景技術]
自然免疫系細胞、特に樹状細胞(DC)は、機能的に別個のTh1、Th2または制御性T(Treg)細胞サブタイプへの未感作(ナイーブ)CD4T細胞の分化に関する。保存された微生物分子とToll様受容体(TLR)およびインテグリン等の病原体認識受容体(PRR)の結合を介した未成熟DCの活性化は、成熟およびリンパ節へのホーミングを伴い、そこで、成熟DCは、未感作(ナイーブ)T細胞に対して抗原(Ag)を提示する。病原体由来分子によるDCの活性化は、別個のT細胞サブタイプへの未感作CD4T細胞の分化を制御する重要な役割を果たす。Th1細胞は、細胞内感染および腫瘍に対して防御するが炎症性反応および自己免疫疾患にも関連し、一方、Th2細胞は、アレルギー性反応に関与する。Treg細胞は、Th1およびTh2反応を抑制することができる。
【0003】
正常な免疫応答性の個体における腫瘍進行は、腫瘍抗原を認識する免疫系の障害を反映しているか、または制御性T細胞の誘導および活性化を介した抗腫瘍免疫反応の破壊の結果である恐れがあり、これは、増殖中の腫瘍の環境によりさらに影響され得る。自然および適応免疫反応を腫瘍に対して誘導することができ、防御エフェクター細胞は、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、IFN−ガンマ産生CD4およびCD8T細胞、NK細胞およびマクロファージを含む。通常、T細胞が腫瘍部位に引き付けられた主要な免疫細胞集団を構成する一方、多くの場合、T細胞は、腫瘍の死滅に効果がなく、証拠はこれが制御性T細胞機能に起因する可能性を示唆する(Woo、E.Y.,et al.,2002.Eur J Immunol 32:3267)。
【0004】
転写リプレッサーFoxp3を発現し、胸腺由来の成熟T細胞として出現する天然のCD4CD25制御性T細胞は、自己抗原に対する寛容性を維持し、自己免疫性を予防する重要な役割を果たす(Sakaguchi,S.2000.Cell 101:455−458)。
【0005】
IL−10を分泌する誘導性の制御性T細胞(Tr1細胞と呼ばれる)またはTGF−ベータを分泌する誘導性の制御性T細胞(Th3細胞と呼ばれる)は、病原体および自己抗原に反応して末梢で産生される。天然および誘導性の制御性T細胞は、病原体誘導性の免疫病理を予防することにより、感染中の宿主に有益なものとなることができる。しかし、病原体による制御性T細胞の誘導または活性化は、防御免疫を覆す戦略である可能性があり、CD4CD25制御性T細胞の枯渇により、特定の感染症における生存を強化することが示されたことも報告されている(Mills,K.H.,and P.McGuirk,2004.Semin immunol 16:107−117)。CD4CD25T細胞の枯渇はまた、抗腫瘍免疫性を高めることができる。エフェクター対制御性T細胞の平衡はまた、増殖中の腫瘍の環境により影響され、この平衡は、腫瘍増殖の消散または進行に関連しうる。したがって、制御性T細胞を抑制し、より強力なエフェクターT細胞反応の発達を可能にした場合、腫瘍に対するワクチンまたは治療は、より効果的でありうる。
【0006】
Toll様受容体
Toll様受容体(TLR)スーパーファミリーは、病原体の侵入を認識し、免疫反応を開始する中心的な役割を果たす。13種のヒトTLRを現在までに同定している。それぞれは、信号伝達カスケードの活性化につながる別個の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、これは、次々に、転写因子NF−κBおよびさらにマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、p38、c−jun、N末端キナーゼ(JNK)およびp42/44を活性化する。TLR−3およびTLR−4もまた、転写因子であるインターフェロン制御因子3(IRF3)の活性化に至る別の経路を活性化し、これは、IFN−ベータを含めた遺伝子のサブセットを誘導するインターフェロン感受性反応要素(interferon sensitive response element)(ISRE)に結合する。TLRは、インターロイキン−1受容体(IL−1R)/TLRスーパーファミリーと呼ばれる大きなスーパーファミリーの1員であり、これはまた、IL−1R1サブグループおよびTlRドメイン含有アダプターサブグループを含有する。3つのサブグループ全ては、Toll/IL−1受容体(TlR)細胞質ドメインを保有し、これは、信号伝達に不可欠である。TLRは、細胞外ロイシンリッチリピートを保持し、一方、IL−1R1サブグループは、細胞外免疫グロブリンドメインを有する。アダプター分子は、細胞質内に存在し、細胞外領域を含有しない。
【0007】
Toll様受容体(TLR)作動薬は、腫瘍ワクチンのアジュバントとして臨床試験が行われている。治療の基本は、TLR作動薬が1型反応、特にIFN−ガンマ分泌性Th1細胞、NK細胞およびCD8CTLの活性化を促進する。現在までの結果から、抗腫瘍免疫反応の強化が明らかとなっているが、これらが腫瘍増殖を予防する実際の指標はいまだにない。しかしながら、マウス試験のデータはこれらがいくつかの有効性を有する可能性を示唆する(Miconnet,I.,S.et al.2002.J Immunol 168:1212)。
【0008】
ワクチン
一般に、感染性疾患に対するワクチンは、抗原特異的エフェクターT細胞の産生を介して感染に対する防御的な(予防的な)免疫性を与え、これは、中和抗体の産生を促進し、病原体に対して細胞性免疫を媒介する。これらの反応は、記憶TおよびB細胞の産生に続き呼び起こされることができ、ワクチン配合中のアジュバントにより定量的および定性的に影響される。アジュバントは、抗原製剤に添加された外因性の免疫調節物質またはウイルスもしくは細菌ワクチンを減弱または不活性化させた内因性構成物質であってよく、これは、非特異的にTLRおよび他の病原体認識受容体との相互作用を介して自然免疫反応を活性化する。LPS、CPG−オリゴデオキシヌクレオチド(CpG−ODN)、ポリICならびにBordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含めた全菌体を含めたTLR作動薬は、全てアジュバント活性を有し、エフェクターT細胞および共注入された抗原に対する抗体反応を促進する。
【0009】
抗炎症性サイトカイン阻害剤
シクロオキシゲナーゼ2(Cox−2)阻害剤は、種々の癌に対する適度な効果を有する治療として使用されることが知られている。Cox−2は、炎症性刺激により誘導される酵素であり、この刺激は、新生物組織内のプロスタグランジンE2(PGE2)の合成を誘導する。PGE2は、IL−10の潜在的な誘導物質である。Cox−2は、血管形成、細胞増殖を強化し、アポトーシス抵抗性の細胞を作製し、これにより、腫瘍増殖におけるCox−2選択的阻害剤(例えばセレコキシブおよびNS−398)の効果について説明することができる。
【0010】
MAPキナーゼ阻害剤は、炎症性疾患における臨床試験が行われており、これまでERKおよびp38が、in vitroにおいて腫瘍細胞の細胞死および生存に関与していると考えられてきた。
【0011】
本発明者らは、免疫系の既知の調節物質の特定の組み合わせの投与により、これらの調節物質の効果を相乗的に強化することができ、これが、本発明者らによる改良された治療組成物の同定につながり、この組成物が、炎症促進性免疫反応を阻害することができる抗炎症性反応を抑制することにより癌性条件および感染性疾患の処置および/または予防に有用であるという画期的な発見をした。
【0012】
制御性T細胞は、IL−10および/またはTGF−ベータ等の抗炎症性サイトカインを発現することが知られており、このようなサイトカインの発現は、免疫反応を抑制することが知られている。制御性T細胞はまた、細胞間接触により免疫反応を抑制する。抑制された免疫反応が癌性細胞の発達に対抗するものである場合、免疫反応の抑制は、腫瘍増殖の増加を生じうる。結果的に、IL−10および/またはTGF−ベータ等の抗炎症性サイトカインあるいは制御性T細胞の阻害剤は、抗癌治療または感染性疾患処置、特にワクチンの効果を改良することに有用である。
【0013】
[発明の開示]
本発明の第1の態様において、Th1−介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置のための組成物を提供し、当該組成物は、
(i)少なくとも1つのToll様受容体(TLR)作動薬および
(ii)免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質を含み、この阻害は、制御性T細胞の機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因することを含む。
【0014】
抑制された抗炎症性サイトカインは、IL−10および/またはTGF−ベータであってよい。上方制御された炎症促進性サイトカインは、IL−12またはインターフェロンガンマ、IL−1およびTNF−ベータ等のいくつかのさらなる炎症促進性サイトカインであってよい。
【0015】
炎症促進性サイトカインの上方制御は、Th1細胞およびCTL(細胞傷害性Tリンパ球)等のエフェクター細胞により媒介される炎症性反応を促進するよう作用する。
【0016】
免疫調節物質は、抗炎症性免疫反応の媒介に関与し、または抗炎症性免疫反応を媒介する経路に関与する少なくとも1つの分子を抑制または阻害する阻害性化合物である。
【0017】
抗炎症性反応は、サイトカインIL−10の産生およびTh1またはTh3細胞等のTreg細胞の産生を特徴とする。
【0018】
適切なIL−10および/またはTGF−ベータの産生の阻害および/またはIL−12の上方制御は、自然免疫系の細胞、例えば樹状細胞において調節される。
【0019】
適切な免疫調節物質は、IL−10産生の抑制またはIL−10機能の阻害を引き起こす。免疫調節物質は、TGF−ベータの機能の抑制または阻害をさらに引き起こす。このサイトカイン反応の調節(IL−10および/またはTGF−ベータ)および特に、自然免疫系の細胞のサイトカイン発現プロフィールの調節は、免疫抑制活性を有するT細胞のサブセットであるTreg細胞の誘導を阻害するよう作用する。IL−10およびTGF−ベータの調節に加えて、本発明の化合物は、抗炎症性効果を誘導することが知られているさらなるサイトカインの発現を調節することができる。
【0020】
免疫調節化合物は、制御性T細胞と免疫系の他の細胞との間の直接の細胞間接触をさらに抑制することができ、その中で、この機構により媒介される炎症促進性免疫反応の抑制を防止する。
【0021】
「制御性T細胞機能の選択的阻害」とは、そのように阻害された制御性T細胞が、炎症促進性免疫反応を抑制することができず、または抗炎症性免疫反応、特に直接の細胞間接触による媒介をすることができないことを意味する。
【0022】
本明細書において定義されるように、サイトカインの産生の増加に関連して使用される場合の「上方制御」という語句は、そのサイトカインの活性または発現が休止細胞に認められるものに比べ大きいことを意味する。
【0023】
本明細書において定義されるように、サイトカインの産生の低下に関連して使用される場合の「抑制」という語句は、サイトカインの活性または発現が休止細胞に認められるものに比べ小さいことを意味する。
【0024】
本明細書において定義されるように、サイトカインの産生の阻害に関連して使用される場合の「阻害」という語句は、サイトカインの活性または発現が休止細胞に認められる活性または発現濃度に比べた場合に阻害または実質的に阻害されていることを意味する。
【0025】
一実施形態において、少なくとも1つのToll様受容体(TLR)作動薬は、当業者に公知であるいずれの適切なTLR作動薬であってもよい。TLR作動薬は、TLRに対する結合親和性および特異性を有し、これは、その結合がTLRを活性化し、下流の信号伝達を媒介するよう作用する。
【0026】
TLR作動薬は、TLR−2、TLR−3、TLR−4、TLR−5、TLR−7、TLR−8およびTLR−9の少なくとも1つに特異的な結合を有することができる。適切なTLR作動薬の具体的な例として、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。さらに、上記のTLR作動薬に対する適切な類似体もまた使用することができ、この場合、前記類似体は、少なくとも1つのToll様受容体を活性化するよう機能する。
【0027】
適切な免疫調節物質は、免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する化合物である。適切な調節作用は、標的に選択性である。阻害剤を、標的の活性を阻害するために有効な量において提供する。適切に阻害されている活性とは、選択的に阻害された分子の、信号伝達および信号調節に関与する能力であり、これは、抗炎症性反応に寄与することができる。
【0028】
さらなる実施形態において、免疫調節物質は、MAPキナーゼタンパク質、Cox−2、ERK、p38またはpl3Kの少なくとも1つの阻害剤の少なくとも1つを含むことができる。
【0029】
適切な免疫反応は、制御性T細胞の誘導を促進する抗炎症性反応または自然免疫反応である。一実施形態において、免疫調節物質は、MAPキナーゼタンパク質またはMAPキナーゼ経路の阻害剤であり、適切には選択的阻害剤である。MAPキナーゼ(マイトジェン活性化キナーゼ)は、細胞性反応、炎症および増殖に関与するタンパク質である。
【0030】
p38キナーゼ(p38)は、MAPキナーゼのストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)群の一員である。哺乳類細胞において、p38キナーゼ信号伝達経路は、ストレスに対する細胞の反応に関与し、さらに、アポトーシスの上方制御の役割を有することが知られる。p38キナーゼの活性化は、IL−1、TNFおよびCox−2等の炎症性反応の原因となる分子の産生を増加することが知られている。
【0031】
一実施形態において、阻害剤は、p38キナーゼ阻害剤である。阻害剤は、少なくとも1つのp38キナーゼのアイソフォームの機能を阻害するよう作用する。それゆえ、この阻害剤は、p38信号経路の機能を阻害するよう作用する。好ましくは、p38キナーゼ阻害剤は、SB203580または薬理学的に許容される塩またはその溶媒和物あるいはその類似体であり、この場合、類似体は、p38阻害活性を有する。別法として、阻害剤は、SB220025もしくはSB239063または薬理学的に許容される塩またはその溶媒和物あるいはその類似体であり、この場合、類似体はp38キナーゼ阻害剤活性を有する。
【0032】
ERK(細胞外制御性キナーゼ)は、細胞の成長および増殖を制御するMAPキナーゼ群である。
【0033】
一実施形態において、阻害剤は、ERK阻害剤であり、適切には選択的ERK阻害剤である。好ましくは、ERK阻害剤は、U0126もしくは薬理学的に許容される塩またはその溶媒和物あるいはその類似体であり、この場合、類似体は、ERK阻害剤活性を有する。別法として、阻害剤は、PD98059またはその類似体であってよく、この場合、類似体は、ERK阻害活性を有する。さらなる実施形態において、ERK阻害剤は、p38阻害性化合物を併用して提供される。
【0034】
さらなる実施形態において、免疫調節物質は、MEK1またはMEK2等のさらなるMAPキナーゼの阻害剤であってよく、これは、MAPキナーゼ由来の下流点にてTh1信号伝達経路に存在し得る転写因子を阻害または遮断する化合物であってよい。このような転写因子の例は、c−Fosである。
【0035】
さらなる実施形態において、免疫調節物質は、ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤であり、適切には選択的阻害剤である。ホスホイノシチドキナーゼ3(pl3K)は、細胞の寿命を制御するプロトオンコジーンである。
【0036】
一実施形態において、pl3K阻害剤は、LY294002、薬理学的に許容される塩またはその溶媒和物あるいはその類似体であり、この場合、類似体は、pl3K阻害活性を有する。別法として、pl3K阻害剤は、ウォルトマンニン(WMN)であってよい。
【0037】
さらなる実施形態において、免疫調節物質は、Cox−2(シクロオキシゲナーゼ2)阻害剤である。適切なCox−2阻害剤は、セレコキシブ(セレブレックス(NS−398)、Pfizer Corporation)、ベクストラ(Pfizer Corporation)、ロフェコキシブ(VIOXX、Merck)または薬理学的に許容される塩またはその溶媒和物あるいはその類似体であり、この場合、類似体は、Cox−2阻害剤活性を有する。適切なCox−2阻害剤は、選択的阻害剤である。
【0038】
Cox−2阻害剤の投与は、IL−10またはTGF−ベータを産生する誘導性の制御性T細胞またはFoxp3を発現する天然の制御性T細胞の誘導を阻害することにより免疫反応をTh1経路に偏らせる。それに応じて、本発明の本態様においてTLR作動薬とCox−2阻害剤の共投与は、天然および誘導性の制御性T細胞の両方を阻害するよう作用することができる。
【0039】
本発明者らは、驚くことに、TLR作動薬とともに投与される場合、Cox−2の阻害が抗炎症性サイトカインIL−10およびTGF−ベータの産生を抑制することを認めた。さらに、Cox−2阻害剤はまた、Toll様受容体作動薬で刺激後、IL−27mRNAの産生を誘導することが示され、さらに、樹状細胞によりIL−12p40およびIL−12p35の産生を増加させる一方、IL−10mRNA発現は低下させることが示された。
【0040】
組成物は、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原をさらに含むことができる。腫瘍特異的抗原は、癌性細胞または癌性状態の個体から単離した熱ショックタンパク質と、抗原ペプチドとの間で形成される複合体由来であってよい。
【0041】
一実施形態において、組成物は、癌性細胞の増殖を強化するよう機能する腫瘍細胞産物を阻害する化合物をさらに含むことができる。このような化合物は、例えば、薬剤耐性ができることにより、またはアポトーシス抵抗性ができることにより腫瘍の生存を延長する結果となりうる。このような化合物の例は、当業者により公知である。
【0042】
本明細書において定義される「Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態」は、癌性または悪性状態であってよく、あるいはさらに前記状態は、感染性疾患であってよい。このような状態の例は、以降に記載する。
【0043】
本発明のさらなる態様は、Th1介在性免疫反応の強化のための医薬組成物を提供し、この組成物は、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節化合物を含み、この阻害は、制御性T細胞の機能の選択的な阻害に起因し、または薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とともに、少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節を引き起こす。
【0044】
一実施形態において、免疫調節物質は、制御性T細胞の機能を選択的に阻害し、そのため、これらは、細胞間接触により媒介される炎症促進性免疫反応を抑制することができない。
【0045】
一実施形態において、抗炎症性サイトカインIL−10の産生を、調節物質により阻害し、または抑制する一方、炎症促進性サイトカインIL−12の産生を強化する。
【0046】
適切な免疫調節物質は、免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する化合物であり、特に、MAPキナーゼタンパク質の阻害剤であってよい。阻害剤は、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1またはMEK2の阻害剤、pl3K阻害剤あるいはCox−2阻害剤の少なくとも1つであってよい。
【0047】
適切なTLR作動薬は、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。
【0048】
一実施形態において、Th1免疫反応の強化は、医薬組成物を癌性または悪性状態あるいは感染性疾患の処置または予防に使用することを可能にする。
【0049】
一実施形態において、組成物は、腫瘍増殖および発達を阻害し、または腫瘍増殖を強化するよう機能する産物またはメディエーターの機能を阻害し、または抑制する、さらなる調節化合物を含むことができる。このような調節化合物は、例えば、腫瘍の生存を延長する結果となるいくつかの分子または経路の機能を阻害し、または抑制することができる。例えば、調節化合物は、腫瘍細胞の薬剤耐性を阻害し、またはそのアポトーシス抵抗性を阻害することができる。
【0050】
本発明のさらなる態様は、Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置または予防方法を提供し、本方法は、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬の治療的に有用な量を投与するステップと、
免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質の治療的に有用な量を投与するステップであって、この阻害は、制御性T細胞機能の選択的阻害か、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つ炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節を引き起こすことに起因するステップ
を含む。
【0051】
一実施形態において、抗炎症性サイトカインIL−10の産生を、免疫調節物質により阻害し、または抑制する一方、炎症促進性サイトカインIL−12の産生を強化する。
【0052】
適切な免疫調節物質は、少なくともIL―10の機能の抑制または阻害を引き起こす。調節物質は、TGF−ベータの機能の抑制または阻害をさらに引き起こすことができる。このサイトカイン反応および特に自然免疫系の細胞のサイトカイン発現プロフィールのこの調節は、Treg細胞、すなわち、サプレッサー活性を有するT細胞のサブセットの誘導を阻害するよう作用する。IL−10およびTGF−ベータの調節に加えて、本発明の化合物は、抗炎症性効果を誘導することが知られるさらなるサイトカインまたはメディエーターの発現を調節することができる。
【0053】
さらに、免疫調節物質は、IL−12の発現または機能的活性の増加を媒介することができる。IL−1、TNF−ベータまたはIFN−ガンマ等のさらなる炎症促進性サイトカインの上方制御もまた認めることができる。
【0054】
適切なIL−10および/またはTGF−ベータの産生の阻害および/またはIL−12の上方制御を、自然免疫系の細胞、例えば樹状細胞において調節する。
【0055】
適切には、免疫調節物質は、免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する化合物であり、特にMAPキナーゼタンパク質の阻害剤であってよい。阻害剤は、p38阻害剤、ERK阻害剤、MEK1またはMEK2阻害剤、pl3K阻害剤あるいはCox−2阻害剤の少なくとも1つであってよい。
【0056】
適切なTLR作動薬は、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。
【0057】
一実施形態において、Toll様受容体作動薬および免疫調節化合物を被検体に共投与する。別法として、Toll様受容体作動薬および免疫調節物質を個別にまたは続けて投与し、本実施形態において、投与方法は、Toll様受容体作動薬および免疫調節物質において異なっていてよい。
【0058】
一般に、被検体は、哺乳類動物である。さらなる実施形態において、被検体は、ヒトである。
【0059】
本発明を使用して、あらゆる既知の癌性または悪性状態を処置する処置または予防方法を提供する。癌性または悪性状態は、以下を含むことができる:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜肉腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌(papillary carcinoma)、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体細胞腫(pinealoma)、血管芽細胞腫(hemangioblastoma)、聴神経種(acoustic neuroma)、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症および重鎖疾患(heavy chain disease)。
【0060】
本発明の組成物、医薬組成物および方法を感染性疾患の処置に使用する場合、このような状態は、以下を含むがそれだけに限定されない:Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosis、リーシュマニア、Bordetella pertussis、マラリア、インフルエンザウイルス、HIV、またはC型肝炎ウイルス。
【0061】
本発明のさらに追加の態様は、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節物質を含む組成物の使用を提供し、この免疫調節物質は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、またはTh1−介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置のために、少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0062】
一実施形態において、状態は、悪性または癌性状態である。さらなる実施形態において、状態は、感染性疾患である。
【0063】
一実施形態において、抗炎症性サイトカインIL−10の産生を免疫調節物質により阻害し、または抑制する一方、炎症促進性サイトカインIL−12の産生を強化する。
【0064】
適切な免疫調節物質は、少なくともIL−10の機能の抑制または阻害を引き起こす。調節物質は、TGF−ベータの機能の抑制または阻害をさらに引き起こしうる。このサイトカイン反応の調節および特に、自然免疫系の細胞のサイトカイン発現プロフィールの調節は、制御性T細胞、すなわちサプレッサー活性を有するT細胞のサブセットの誘導を阻害するよう作用する。IL−10およびTGF−ベータの調節に加えて、本発明の化合物は、抗炎症性効果を誘導することが知られているさらなるサイトカインまたはメディエーターの発現を調節することができる。調節物質はまた、制御性T細胞による細胞間接触抑制を阻害することができる。
【0065】
さらに、免疫調節物質は、IL−12の機能的活性の発現の増加を調節することができる。IL−1、TNF−ベータまたはIFN−ガンマ等のさらなる炎症促進性サイトカインの上方制御もまた、認めることができる。
【0066】
適切なIL−10および/またはTGF−ベータの産生の阻害および/またはIL−12の上方制御を、自然免疫系の細胞、例えば樹状細胞において調節する。
【0067】
適切なTLR作動薬は、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。
【0068】
適切には、免疫調節物質は、免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する化合物であり、特にMAPキナーゼタンパク質の阻害剤であってよい。阻害剤は、p38阻害剤、ERK阻害剤、MEK1またはMEK2阻害剤、pl3K阻害剤あるいはCox−2阻害剤の少なくとも1つであってよい。
【0069】
本発明のさらに追加の態様は、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節物質の使用を提供し、この免疫調節物質は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、またはTh1−介在性または他のエフェクター免疫反応の強化が所望される状態の処置のための医薬品の調製において、少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0070】
一実施形態において、状態は、悪性または癌性状態である。さらなる実施形態において、状態は、感染性疾患である。
【0071】
適切な免疫調節物質は、免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する化合物であり、特に、MAPキナーゼタンパク質の阻害剤であってよい。阻害剤は、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1またはMEK2の阻害剤、pl3K阻害剤あるいはCox−2阻害剤の少なくとも1つであってよい。
【0072】
適切なTLR作動薬は、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。
【0073】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、抗癌または黒色腫ワクチンの効果の改良にまで及ぶ。抗癌ワクチン構成物質(例えば腫瘍特異的ワクチン)および制御性T細胞またはIL−10産生を阻害する免疫調節化合物をともに含む組成物は、驚くことに、本発明者らにより、癌および悪性状態の処置に予想外に効果的な組成物を提供するものとして同定された。
【0074】
一般に、タンパク質等の非生物材料のワクチン接種は、Th1またはTh2反応のどちらかである、抗体反応およびCD4+ヘルパーT細胞反応につながる。一方で、一般に、生物ウイルスまたは細胞内細菌等の生物材料を用いたワクチン接種または感染は、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応につながる。Th1およびCTL反応は、癌、病原体ウイルスおよび細胞内細菌に対する防御において重要である。Th2反応は、細胞外細菌および寄生虫に対する防御において重要である。
【0075】
したがって、本発明のさらなる態様は、以下を含む癌性または悪性状態の処置のための組成物を提供する;
(i)癌性または悪性状態に特異的である免疫反応を開始することができる少なくとも1つの腫瘍特異的抗原を含む組成物と、
(ii)少なくとも1つのToll様受容体作動薬、および、
(iii)制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する免疫調節物質。
【0076】
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原を含む適切な組成物が、癌ワクチン、または少なくとも1つの抗原(Ag)を含有するワクチン構成物質である。さらに、腫瘍特異的抗原は、特異的腫瘍型の代表的なものである既知の腫瘍抗原であってよい。
【0077】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載されている。
【0078】
サイトカイン反応および特に免疫系細胞のサイトカイン発現プロフィールの調節は、制御性T細胞の誘導を阻害するよう作用する。これは、IL−10の抑制または阻害により媒介することができる。
【0079】
癌ワクチンは、いくつかの適切なワクチンまたはワクチン断片、例えば、全細胞ワクチン、DNAワクチン、サブユニットワクチンまたはペプチドワクチンであってよい。
【0080】
IL−10の産生に対する抗原とともに共投与される免疫調節化合物は、サイトカインIL−12の産生をさらに上方制御することができる。IL−12は、免疫反応を「Th1」経路の下流に偏らせるよう作用する。さらなる場合において、IL−10の阻害剤は、特異的にIL−12産生を誘導しないが、これは、間接的にIL−10の産生の低下に起因しうる。
【0081】
典型的に、Th1免疫反応の誘導は、制御性T細胞免疫反応の破壊を伴う。
【0082】
本発明のさらなる態様は、癌性または悪性状態の処置または予防のための医薬組成物を提供し、この組成物は、免疫反応を開始することができる少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、少なくとも1つのTLR作動薬および免疫調節化合物ならびに薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む。
【0083】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0084】
一実施形態において、腫瘍特異的抗原は、癌ワクチンまたはワクチン構成物質由来である。
【0085】
本発明のさらなる態様は、癌性または悪性状態の処置方法を提供し、本方法は、
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原を含む抗癌ワクチンまたは抗原断片あるいはその決定基を投与し、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬を投与し、
少なくとも1つの免疫調節化合物の治療的に有用な量を投与するステップを含み、
この免疫調節化合物は、自然免疫系の細胞によるIL−10および/またはTGF−ベータの阻害および/またはIL−12の上方制御を介したサイトカイン反応を調節する。
【0086】
適切には、調節物質は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0087】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0088】
一般に、被検体は、哺乳類動物である。さらなる実施形態において、被検体は、ヒトである。
【0089】
本発明のさらに追加の態様は、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物を含む組成物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、癌もしくは悪性状態の処置において、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現を調節して免疫反応の抑制を阻害する。
【0090】
本発明のさらに追加の態様は、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物を含む組成物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、癌もしくは悪性状態の処置のための医薬品の調製において、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現を調節して免疫反応の抑制を阻害する。
【0091】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0092】
一般に、被検体は、哺乳類動物である。さらなる実施形態において、被検体は、ヒトである。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、癌性細胞または癌性状態を有する個体から単離した熱ショックタンパク質を含むワクチン組成物およびこれに非共有結合により複合化される抗原ペプチドにまで及ぶ。この熱ショックタンパク質−抗原ペプチド複合体(HSP−Ag)を個体に投与し、抗原ペプチドに関する免疫反応を誘導することができる。本発明者らは、驚くことに、Cox−2阻害剤等の免疫系を阻害するよう作用する免疫メディエーターの共投与がHSPに複合化された抗原に対する免疫反応の強化を生じることを同定した。HSP−Ag複合体の単離により、抗原が、抗原提示細胞により処理され、抗原を非自己であると認識する場合に免疫反応を開始するように免疫系に提示されることを可能にするだろう。
【0094】
このようなHSP−Ag複合体の例は、熱ショックタンパク質HSP−70と腫瘍特異的ペプチドとの間の複合体である。このような態様において、本発明は、以下を含む癌性または悪性状態の処置のための組成物を提供する;
(i)抗原ペプチドと複合化された熱ショックタンパク質および
(ii)制御性T細胞機能の選択的な阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節から免疫反応の抑制を阻害する免疫調節化合物。
【0095】
適切には、免疫調節物質は、自然免疫系の細胞によるIL−10および/またはTGF−ベータの阻害および/またはIL−12の上方制御を介してサイトカイン反応を調節する。
【0096】
サイトカイン反応および特に免疫系細胞のサイトカイン発現プロフィールの調節は、制御性T細胞の誘導を阻害するよう作用する。
【0097】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0098】
適切には、熱ショックタンパク質に複合化される抗原は、腫瘍特異的抗原であり、癌性細胞由来である。
【0099】
免疫調節物質がCox−2阻害剤である場合、HSP−70抗原複合体およびCox−2阻害剤の投与は、樹状細胞上のCD80発現の強化を生じる。
【0100】
一実施形態において、HSP−60/抗原複合体は、樹状細胞HSP−70ワクチンの形態で提供される。
【0101】
本発明の本態様は、癌性細胞または癌性状態に感染した宿主から得られる異なる熱ショックタンパク質の使用にまで及ぶ。したがって、熱ショックタンパク質は、HSP−60、HSP−90およびgp96であってよいが、前述に制限されず、当業者に公知のあらゆる適切な熱ショックタンパク質にまで及ぶことができる。
【0102】
本発明のさらに追加の態様は、癌性または悪性状態の処置の使用において、腫瘍特異的抗原と複合化された熱ショックタンパク質と、少なくとも1つのToll様受容体作動薬と、免疫調節物質との使用を提供し、この免疫調節物質は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0103】
さらなる態様において、本発明は、悪性または癌性状態の処置のための医薬品の調製における、腫瘍特異的抗原と複合化された熱ショックタンパク質と、少なくとも1つのToll様受容体作動薬と、免疫調節物質との使用にまで及び、この免疫調節物質は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0104】
樹状細胞ワクチン
樹状細胞(DC)は、有効な抗原提示細胞(APC)であり、外来または自己抗原に特異的な未感作Tリンパ球を刺激する独自の能力を有する。
【0105】
樹状細胞は、骨髄で産生され、事実上の体内の全ての組織に血流を介して移動する。これらの細胞は、通常、胸腺、リンパ節および脾臓等のリンパ器官の構造的区画で見つかる。しかし、これらはまた、血流および他の体組織においても見つかる。樹状細胞は、適宜、抗原を捕捉し、免疫反応が開始される流入領域リンパ節に移動する。
【0106】
樹状細胞は、ペプチドを処理し、主要組織適合(MHC)−ペプチド複合体を介して、抗原特異的未感作Tリンパ球に提示する。
【0107】
本発明は、本発明の化合物および方法を成熟樹状細胞の特定のサブセットの産生を誘導するための使用にまで及び、この成熟樹状細胞は、Th1およびCTL等の細胞型により媒介されるエフェクターT細胞反応を促進する表現型およびサイトカイン発現プロフィールを有し、さらに制御性T細胞の産生を抑制する。骨髄性およびリンパ球性樹状細胞群は、ともに本発明に有用である。
【0108】
樹状細胞を調節して、Th1細胞プロフィールおよびさらにCTL反応を誘導するサイトカインプロフィールを発現するようにこれらの表現型を修飾することが望ましい。このような樹状細胞のサブセットの誘導は、IL−10およびTGF−ベータの産生を特徴とする未成熟樹状細胞の産生を避けるよう作用し、このようなサイトカインプロフィールは、制御性T細胞の産生、またはCD80あるいはCD86の発現は高いがCD40の発現は低い結果を生じる。
【0109】
本発明は、樹状細胞ワクチンにまでさらに及ぶ。上文に定義された組成物を癌性状態または感染性疾患に関連するこのような治療を必要とする個体に予防または治療目的の処置を提供するために投与することができる。一般に、感染性疾患に対する免疫反応を媒介するワクチン組成物を個体の感染を予防するために予防的に投与する。しかし、この例外として、C型肝炎およびHIV等の感染性疾患に対するワクチンという点において、この場合、ワクチンを治療目的で投与する。しかし、一般に、個体の免疫低下状態のため、一般に、治療様式において感染性疾患ワクチンを投与することは、望ましくない。
【0110】
ワクチンを癌性状態の個体に関連して投与する場合、一般に、ワクチンは、腫瘍細胞または腫瘍細胞由来の抗原を含むワクチンとして治療目的で投与する。
【0111】
本発明者らは、癌性状態の処置に関連して樹状細胞ワクチンの有用性を同定している。さらに、本発明者らは、驚くことに、樹状細胞、Toll様受容体作動薬および免疫調節物質を含むワクチン組成物の投与が、効果の高い治療を提供することを同定している。
【0112】
それに応じて、本発明のさらなる態様は、以下を含む癌性状態の処置のためのワクチン組成物にまで及ぶ:
樹状細胞、
少なくとも1つの腫瘍細胞抗原、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する免疫調節化合物。
【0113】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0114】
適切には、樹状細胞は、樹状細胞の養子移入により提供され、これを、Toll様受容体作動薬の存在または非存在下において腫瘍特異的抗原でパルスし、IL−10を阻害するように作用する免疫調節化合物は、癌性または悪性状態あるいは感染性疾患に対して有効であってよいTh1細胞反応を誘導するよう作用することができる。適切な樹状細胞は、未成熟表現型のものである。
【0115】
一実施形態において、少なくとも1つの腫瘍抗原を、抗原と複合化された熱ショックタンパク質を投与することにより提供することができる。抗原性タンパク質と複合化された熱ショックタンパク質は、癌性細胞、または癌性状態を有する個体由来であってよい。
【0116】
本発明のさらなる態様は、癌性または悪性状態の処置方法を提供し、本方法は、それを必要とする被検体に、
腫瘍特異的抗原の存在下においてパルスされた樹状細胞を投与し、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬を投与し、および
免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質の治療的に有用な量を投与し、この阻害は、制御性T細胞機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因する、
ステップを含む。
【0117】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0118】
本発明のさらに追加の態様は、癌性状態の処置のために、樹状細胞、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または、少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0119】
本発明のさらに追加の態様は、癌性状態の処置のためのワクチン組成物の調製において、樹状細胞、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0120】
本発明者らは、樹状細胞ワクチンを癌性または悪性状態の処置のために個体に投与することができることをさらに同定し、この場合、腫瘍特異的抗原を、組成物として提供しないが、この場合、抗原は、樹状ワクチン組成物を投与する個体由来の腫瘍特異的抗原である。
【0121】
したがって、本発明のさらなる態様は、以下を含む癌性状態の処置のためのワクチン組成物を提供する:
樹状細胞、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する免疫調節化合物。
【0122】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0123】
本発明のさらなる態様は、癌性または悪性状態の処置方法を提供し、本方法は、それを必要する被検体に、
腫瘍特異的抗原の存在下においてパルスされた樹状細胞を投与し、および
免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質の治療的に有用な量を投与し、この阻害は、制御性T細胞機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因する、
ステップを含む。
【0124】
適切な免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0125】
本発明のさらに追加の態様は、癌性状態の処置のために、樹状細胞、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0126】
本発明のさらに追加の態様は、癌性状態の処置ためのワクチン組成物の調製において、樹状細胞、少なくとも1つのToll様受容体作動薬および免疫調節化合物の使用を提供し、この免疫調節化合物は、制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節により免疫反応の抑制を阻害する。
【0127】
したがって、本発明のさらに追加の態様は、癌または感染性疾患の処置に適切な被検体のTh1反応を誘導するための方法を提供し、本方法は、
ワクチンおよび/またはTLR作動薬および免疫調節化合物の存在下において疾患特異的抗原に単離した樹状細胞を暴露し、この調節化合物は、ex vivoの自然免疫系の細胞によりIL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12産生を上方制御し、エフェクター細胞機能を促進する表現型への樹状細胞の成熟を引き起こし、
樹状細胞を被検体に投与し、それにより被検体に産生された免疫反応が十分に、癌の発症または進行を予防し、あるいは病原性微生物による感染を予防し、それにより感染疾患を予防する、
ステップを含む。
【0128】
本発明の本態様の一実施形態において、樹状細胞は、被検体にとって自己である。一実施形態において、樹状細胞は、成熟樹状細胞である。
【0129】
適切な疾患特異的抗原は、腫瘍特異的抗原である。
【0130】
適切なTLR作動薬および免疫調節化合物は、上文に記載される。
【0131】
さらに追加の態様は、癌または感染性疾患の治療のための医薬品の調製における、樹状細胞の使用に関し、これを、ワクチンおよび/またはTLR作動薬および免疫反応の抑制を阻害する免疫調節化合物にex vivoで暴露し、この阻害は、制御性T細胞機能の選択的阻害に起因し、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節を引き起こす。
【0132】
本発明の本態様の他の実施形態において、樹状細胞は、あらゆる他の適切な抗原提示細胞と置き換えることができる。このような適切な抗原提示細胞は、マクロファージ、単球およびB細胞である。さらなる実施形態において、樹状細胞の調節は、ex vivoで生じる。
【0133】
好ましい実施例において、抗原提示細胞、好ましくは再投与される樹状細胞は、被検体に対して自己である。典型的には、被検体は、ヒトである。
【0134】
本発明のさらなる態様において、癌、悪性状態または感染性疾患の予防または処置のための組成物を提供し、その組成物は、
(i)感染性疾患、癌または悪性状態に対して特異的に形成することができる免疫反応に対するワクチンまたはワクチン構成物質の存在下においてパルスされる樹状細胞、
(ii)toll様受容体(TLR)作動薬等のアジュバントおよび
(iii)免疫反応の抑制を阻害する化合物であって、この阻害が制御性T細胞の機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節を引き起こす化合物に起因し、ならびに
薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体
を含む。
【0135】
適切には、IL−10および/またはTGF−ベータの産生の阻害および/またはIL−12の上方制御を自然免疫系の細胞、例えば、樹状細胞において調節する。
【0136】
一実施形態において、樹状細胞を、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞等の全細胞癌ワクチンおよびTLR作動薬CpGならびにMAPキナーゼであるERKに対する阻害剤として作用する化合物を用いて処置する。さらなる実施形態において、ERK阻害剤は、p38阻害剤、pl3K阻害剤またはCox−2阻害剤と置き換えることができる。
【0137】
さらなる実施形態において、DCは、癌細胞または感染性疾患に感染した細胞由来のHSP−70でパルスすることができ、前記DCを、さらに、抗炎症性サイトカインの産生を阻害する化合物に暴露する。具体的な一例は、Cox−2阻害剤の投与であり、これは、IL−10を阻害および/または天然のTregの発現を阻害するよう作用することができる。
【0138】
発明の詳細な説明
未感作CD4T細胞は、エフェクターTh1またはTh2あるいはTreg細胞に分化することができ、これらの別個のサブタイプの選択的誘導は、樹状細胞(DC)の成熟状態および自然免疫系の細胞により分泌された制御性サイトカインを含めた多くの因子により決定されるようである。ある種の病原体由来の免疫調節分子、例えばTLRリガンドは、Th1細胞の誘導を促進する。他に、病原体由来分子、例えば、B.pertussis由来のFHAおよびCyaAならびにCTは、選択的に、またはTh2細胞とともにのいずれかでTr細胞の誘導を促進する。エフェクターT細胞と同時のTreg細胞の誘導は、宿主の防御的戦略であり、過剰なTh1またはTh2反応を制御し、それにより感染誘導性炎症および免疫病理を制限することができる。TLRリガンドによるTh1細胞の誘導は、これらのIL−12促進能および、特にマクロファージおよびDCなどの自然細胞由来のIL−27産生によるものである。しかし、TLRリガンドもまた、マクロファージ由来のIL−10産生を誘導することや、Th2促進TLR−2作動薬Pam3Cysが、DC由来のIL−10産生を誘導することが明らかにされた。
【0139】
本発明の発明者らは、近年、IL−10およびTGF−ベータを発現するCD4およびCD8Treg細胞が、抗腫瘍免疫性を覆し、腫瘍増殖を促進する恐れがあることを明らかにした。これらは、バイスタンダー抗原に対するT細胞反応が、増殖しているCT26腫瘍の領域の抗原を用いて皮下に免疫化したマウスにおいて抑制されることを明らかにした。増殖している腫瘍のT細胞は、IL−10、TGF−ベータおよびFoxp3のmRNAを発現し、腫瘍または流入領域リンパ節に浸潤しているCD4およびCD8T細胞の高頻度のものがIL−10を分泌し、低頻度のものがIFN−ガンマを分泌する。IL−10分泌性マクロファージおよび樹状細胞もまた、増殖している腫瘍に浸潤した。CD8CTL反応は、肺転移のマウスにおいて検出不能であり、CT26結腸癌細胞を皮下に注射後、弱く、一過性であったが、抗IL−10および抗TGF−ベータの存在下において強化された。in vivoにおいてCD4またはCD25T細胞の除去は、CD8T細胞によるIFN−ガンマ産生を顕著に強化し、皮下の腫瘍の体積および肺転移を低下させ、生存を強化した。対照的に、CD8T細胞の除去はCTL反応を抑制し、皮下腫瘍の進行を促進したが、肺転移は低下した。これらの所見は、腫瘍の増殖がIL−10およびTGF−ベータを分泌するCD4Treg細胞の誘導または動員を促進し、エフェクターCD8T細胞反応を抑制することを示唆する。しかし、IL−10およびTGF−ベータを発現するCD8Treg細胞もまた、肺の免疫抑制的な環境により動員または活性化され、この場合、これらは、抗腫瘍免疫の誘導を抑制したのであろう。
【0140】
本発明の発明者らは、TLR作動薬の投与がIL−10分泌性Treg細胞およびTh1細胞を同時に誘導することを以前に明らかにした。TLRリガンドは、IFN−ガンマ、IFN−ガンマおよびIL−10またはIL−10のみを分泌するT細胞を誘導した。さらに、IL−10分泌性Tr1およびIL−10ならびにIFN−ガンマ分泌性Th1様Treg細胞のこれらの別個の集団は、Th1細胞によるIFN−ガンマ産生を抑制し、TLRリガンドが制御性およびエフェクターT細胞の別個の集団を同時に誘導することを示唆する。自然IL−12およびIL−10は、それぞれTh1およびTreg1細胞の誘導に関することが以前に報告された。本発明者らは、TLR−2、TLR−4、TLR−5、TLR−7、TLR−8およびTLR−9リガンドが、DC由来のIL−10ならびにIL−12産生を活性化することを明らかにした。さらに、TLRリガンドは、ERKおよびp38MAPキナーゼのリン酸化を誘導し、ERKおよびP38の阻害剤は、樹状細胞由来のTLRリガンド誘導性IL−10を抑制し、IL−12産生を強化した。
【0141】
理論に制約されることを望まないが、本発明の発明者らは、p38阻害剤、pl3K阻害剤、ERK阻害剤および/またはCox−2阻害剤が、自然細胞(例えば、樹状細胞)によるIL−10産生を抑制し、IL−12を強化することによりTLR作動薬および/またはHSP70ワクチンの効果を強化し、それにより、Treg細胞ではなく、Th1およびCTLの誘導を促進する。これは、Treg細胞の誘導および活性化に関連する抗腫瘍免疫反応の破壊を制限する。
【0142】
定義
本明細書において使用される「T細胞」という語句は、CD4T細胞およびCD8T細胞を含む。T細胞という語句はまた、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞の両方ならびに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。
【0143】
本発明に関連する「被検体」は、ヒト、霊長類および家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)等の哺乳類動物;マウス、ウサギ、ラットおよびモルモット等の実験動物;イヌおよびネコ等のペット動物を含み、包含する。
【0144】
処置/治療
本明細書において、「処置」という語句は、ヒトまたは非ヒト動物に役立つことができるあらゆる方法を言及するために使用される。処置は、存在する状態に関してであってよく、または予防(予防的処置)であってよい。処置は、治癒、緩和または予防的効果を含むことができる。
【0145】
さらに具体的には、本明細書において、「治療的」および「予防的」処置への言及は、最も広義の内容として考慮される。「治療的」という語句は、被検体を完全に回復するまで処置することを必ずしも意味しない。同様に、「予防的」は、被検体が最終的に疾患状態にならないことを必ずしも意味しない。
【0146】
したがって、治療的および予防的処置は、特定の状態の症状の緩和または特定の状態を発症する危険を予防あるいはそうでなければ低下させることを含む。「予防的」という語句は、特定の状態の重症度または発症の低下として考慮することができる。「治療的」も存在する状態の重症度を低下させることができる。
【0147】
投与
本発明において使用される有効成分を同被検体に個別に投与することができ、または医薬組成物として共投与することができる。一般に、医薬組成物は、目的の投与経路に応じて選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体を含むだろう。
【0148】
有効成分(場合により、医薬組成物の形態)をいくつかの適切な経路を介して処置の必要な患者に投与することができる。正確な用量は、より詳細には以下に記載されているように、多くの因子に応じて決定されるだろう。
【0149】
適切な一投与経路は、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、例えば点滴パッチの使用を含む)である。他の適切な投与経路は、経口、経直腸、経鼻、局所(経頬および舌下を含む)、注入、経膣、皮内、腹腔内、頭蓋内、鞘内および硬膜外投与あるいは例えばネブライザーまたは吸入器による経口または鼻吸入を介する投与、あるいは移植を含む(がそれだけに限定されない)。
【0150】
静脈内注射において、有効成分は、発熱物質のない非経口的に許容される水溶液の形態であり、適切なpH、等張性および安定性を有する。当業者は、例えば、等張性ベヒクル、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液を使用して適切な溶液を調節することができるだろう。必要な場合、防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を含むことができる。
【0151】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体形態であってよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバント等の固体担体を含むことができる。一般に、液体医薬組成物は、液体担体、例えば、水、石油、動物または植物油、鉱油あるいは合成油を含む。生理食塩水溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液あるいはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含むことができる。
【0152】
組成物はまた、ミクロスフィア、リポソーム、他の微粒子送達系または血液を含めた特定の組織に入れる徐放性製剤を介して投与することができる。徐放性担体の適切な例として、シェア製品の形態の半透過性ポリマーマトリックス、例えば、座剤またはマイクロカプセルがある。移植可能またはマイクロカプセル状の徐放性マトリックスは、ポリラクチド(米国特許第3773919号または欧州特許出願第0058481号)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman et al,Biopolymers 22(1):547−556,1985)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)またはエチレンビニル酢酸(Langer et al,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277,1981およびLanger,Chem.Tech.12:98−105,1982)を含む。
【0153】
上記の技法およびプロトコールおよび本発明において使用することができる他の技法およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Siences,18th edition,Gennaro,A.R.,Lippincott Williams&Wilkins;20th edition(December 15,2000)ISBN 0−912734−04−3およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems;Ansel,H.C.et al.7th Edition ISBN 0−683305−72−7に見つけることができ、これらの開示全体を参照として本明細書に組み込む。
【0154】
医薬組成物
上記の通り、本発明は、癌性または悪性状態および/または感染性疾患の処置、特に、Th1免疫反応の誘導およびTreg免疫反応の抑制あるいは阻害のための医薬組成物にまで及ぶ。
【0155】
本発明における医薬組成物および本発明に準じる使用において、有効成分に加えて、薬理学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に公知の他の材料を含むことができる。このような材料は、非毒性であるものとし、有効成分の効果を干渉しないものとする。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路に応じて決定し、これは、例えば、経口、静脈内、経鼻または経口もしくは鼻吸入を介してよい。製剤は、液体、例えば、pH6.8〜7.6の非リン酸緩衝液を含有する生理食塩溶液または凍結乾燥もしくは冷凍乾燥粉末であってよい。
【0156】
用量
組成物は、「治療的有効量」または「所望量」において個体に投与することが好ましく、これは、個体に十分に有益であることを示す。
【0157】
本明細書において定義されるように、「有効量」という語句は、所望の反応を少なくとも部分的に得るために、または発症を遅延もしくは進行を阻害または処置された特定の状態の発症または進行を完全に停止するために必要な量を意味する。
【0158】
量は、処置される被検体の健康および身体的状態、処置される被検体の分類群、所望される防御の程度、組成物の配合、医学的状況および他の関連因子の評価に応じて変化する。量は、相対的に広範囲であり、これは、定期的な試験を介して決定することができることが期待される。
【0159】
処置の処方、例えば、用量等の判断は、最終的には一般開業医、内科医または他科の医師の責任の範囲および判断であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および実施者に公知の他の因子を考慮する。
【0160】
最適用量は、例えば、年齢、性別、体重、処置される状態の重症度、投与される有効成分および投与経路を含めた多くのパラメーターに基づいて内科医により決定されることができる。
【0161】
広範囲の用量を適用することができる。患者を考慮して、例えば、薬剤約0.1mg〜約1mgを1日当たり体重kg当たりで投与することができる。投与方法を調節して、至適治療反応を提供することができる。例えば、数分割投与を1日毎、週毎、月毎または他の適切な間隔で投与することができ、または用量を、状況の緊急を示す場合、比例的に減量することができる。
【0162】
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は全て、本発明の分野の当業者により通常、理解される意味を有する。
【0163】
本明細書を通して、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、「comprise(含む)」もしくは「include(含む)」という語句はまたは「comprises」もしくは「comprising」、「includes」もしくは「including」等の変形は、明記された整数または整数群の包括を意味するが、いくつかの他の整数もしくは整数群を排除しないことが理解されるだろう。
【0164】
本発明は、ここで、説明の目的において提供され、本発明を限定するように解釈されることを意図しない以下の実施例を参照し、さらに図を参照して記載される。
【実施例】
【0165】
マウス
BALB/cおよびC57BL/6マウスをHarlan UK Ltd(ビスター、オックスフォードシャー(Oxon)、英国)から購入した。DO.11.10OVA T細胞受容体(TCR)トランスジェニック(Tg)マウスを施設内で飼育した。全てのマウスを特定の病原体を含有しない状態下において管理し、アイルランド保健局(Irish Department of Health)の規制およびガイドラインに準拠した。
【0166】
腫瘍株
CT26結腸癌由来の細胞株を、10%熱不活性化FCSを補充したRPMI1640で維持し、皮下(s.c.)で惹起した場合、BALB/cマウスにおいて固体腫瘍により維持した。B16F10腫瘍細胞株を、10%熱不活性化FCSで補充したDMEMで維持し、s.c.で惹起した場合、C57BL/6マウスにおいて固体腫瘍を形成した。他に明記されない限り、両実験モデルにおいてマウスに2×10個の腫瘍細胞を注射した。
【0167】
腹膜マクロファージ
腹腔を加温培地5mlで洗浄した。細胞をペトリ皿に載せ、付着しない細胞を2時間後に除去した。次いで付着細胞を10/mlで蒔いた。
【0168】
熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞
B16腫瘍細胞を43℃にて1時間インキュベートした。次いで細胞を20K Gyで照射後、37℃にて4時間インキュベートした。細胞を1:1の比にてBMDCに添加した。
【0169】
非関連抗原に対する増殖およびサイトカイン反応における腫瘍の影響
D011.10マウスに、200μgのOVAのみまたは2×10個のCT26細胞とともに側腹部にs.c.注射した。マウスを7日後にOVA200μgでブーストし、14日後にリンパ節細胞懸濁液を調製し、OVA(50、150および500μg/ml)で96マイクロタイター丸底プレートに5%CO、37℃、2×10個/mlにて培養した。3日後、上清を取り出し、IFN−ガンマ濃度を2部位ELISA法により決定した。培養4日後、2μCiH−チミジン(Amersham)を各ウェルに添加した。プレートをさらに6時間後インキュベートし、その後、細胞をフィルターマットに回収し(Tomtec Harvester 96 Mach III M)、cpmをベータカウンター(1450 Microbeta Trilux、Wallac)を使用して決定した。
【0170】
免疫化
マウスをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH;5μg)、KLHおよびCpG−ODN(25μg)、LPS(20μg)、ポリIC(25μg)死菌体B.pertussis(1×10)またはコレラ毒素(CT)(10ng)を用いてs.c.で免疫した。
【0171】
Ex vivoのサイトカイン反応
C57BL/6マウスに、100μl中CpG(10μg)またはCox−2阻害剤セレコキシブ(100μg)のどちらかを側腹部に注射した。流入領域鼠径リンパ節を2および6時間後に取り出し、ふるいにかけ、PBS1mlに再懸濁した。ELISA法により、IL−10およびTGF−ベータにおいて、S/Nを測定した一方、mRNAを細胞から抽出し、RT−PCRにより、IL−10およびIL−27p28を測定した。
【0172】
抗原特異的サイトカイン産生
免疫化7日後に取り出されたリンパ節または脾臓細胞(2×10個/ml)をKLH(50μg/ml)の存在下、超音波処理したB.pertussis(5μg/ml)の存在下または培地のみで培養した。上清を72時間後に取り出し、ELISA法によりIL−4、IL−10およびIFN−ガンマ濃度を決定した。
【0173】
抗原特異的T細胞株
KLH特異的CD4T細胞株を、抗原(10μg/mlKLH)および抗原提示細胞の存在下で脾臓またはリンパ節細胞を刺激することにより、KLHおよびCpG−ODNを用いて免疫したマウスの脾臓またはリンパ節から樹立した。特定の場合において、抗IFN−ガンマまたはIL−12および抗IL−10を培養開始時に添加した。抗原再刺激2〜3回後に樹立した細胞株をKLH(10μg/ml)およびAPCの存在下で培養し、上清のIFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度を3日後にELISA法により決定した。リンパ節細胞を抗原(KLHまたはいくつかの実験においてB.pertussis抗原)の存在下で培養し、6日後に細胞を細胞内染色した。
【0174】
サプレッサーアッセイ
KLHおよびCpG−ODNを用いて免疫したマウス由来の脾臓細胞をIL−12の存在下においてKLHとともに培養し、KLH特異的Th1型T細胞株を産生した。IL−10を分泌し、IFN−ガンマまたはIL−4を少量または全く分泌しないTr1型細胞株を抗IFN−ガンマの存在下において最初の培養によりKLHおよびCpGを用いて免疫したマウスから樹立した。IFN−ガンマおよびIL−10を発現したTh1Tr型T細胞株を、KLHおよびCpGで免疫したマウス由来の脾臓細胞を、抗原及びAPCの存在下で、サイトカインまたは抗体を添加せずに培養することにより、樹立した。Th1細胞株(1×10個/ml)をAPC(照射された脾臓細胞;2×10個/ml)およびKLHのみで、または1:3、1:1または3:1の比のTr1またはTh1Tr細胞の存在下において培養した。上清を3日後に取り出し、IFN−ガンマ濃度をELISA法により調べた。Th1細胞のみの反応を基準とした結果を表す。
【0175】
DC活性化
骨髄由来の未成熟DC(BMDC)を、抽出した骨髄細胞をGM−CSF(40ng/ml)で10日間培養することにより、産生した。BALB/cまたはC57BL/6マウスのどちらか由来のBMDCを1ng/ml〜10μg/mlのTLR作動薬、Pam3CSK4、ザイモサン、LPS、フラジェリン、ポリIC、CpG−ODNまたは培地のみでインキュベートした。阻害試験において、活性化した細胞を、MEK1/2(ERK)阻害剤U0126(1.25〜5μM)、Cox−2阻害剤NS−398(0.1〜10μM)またはp38阻害剤SB203580(0.1〜10μM)で前処置した(1時間)。BMDCはまた、種々の濃度のB16の上清(S/N)で24時間処置した。B16S/Nを、B16細胞5×10個/mlを1週間増殖させ、使用済み培地を除去することにより調製した。6または24時間後、上清を取り出し、サイトカイン濃度をELISA法により決定し、または細胞をホモジナイズし、得られたmRNAをRT−PCRにより分析した。
【0176】
DC移入実験
C57BL/6マウス由来の活性化BMDCをCpG(5μg)およびKLH(5μg)でインキュベートし、Cox−2(NS−398:5μM)、p38(SB203580:1μM)およびERK(U0126:5μM)に対する阻害剤とともに前処置した。処置された細胞2.5×10個を各フットパッドに注入した。膝窩リンパ節および脾臓を5日後に取り出し、単一細胞懸濁液をKLH(2、10、50μg/ml)で再刺激した。S/Nを3日後に取り出し、ELISA法により、アリコートのIFN−ガンマおよびIL−10を測定した。
【0177】
腫瘍実験において、C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍でs.c.で惹起し、処置されたBMDC(1〜5×10個)を腫瘍部位に3日目から開始して1週間間隔で3回s.c.注射で処置した。BMDCを、CpG(5μg/ml)とともに、熱ショックされ:照射されたB16腫瘍細胞と、またはCox−2阻害剤セレコキシブ(5μM)またはERK阻害剤U0126(5μM)のどちらかで24時間負荷した。マウスの腫瘍増殖を定期的にモニターした。
【0178】
調節されたDCを用いたin vitroのT細胞の活性化
BALB/c由来DCをOVAクラスIIペプチド(5μg)とともにインキュベートした。同時に、細胞をCpG(10μg)またはp38阻害剤SB203580(1または5μM)のどちらかおよびERK阻害剤U0126(5μM)で24時間刺激した。次いで、D011.10OVA−TCR T細胞をBMDC(10:1)に添加した。上清を3および11日後に取り出し、ELISA法により、アリコートのIL−10およびIFN−ガンマを測定した。
【0179】
直接腫瘍治療
C57BL/6マウスに、2×10個の腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、3、5および7日目にCpG(10または20μg)、Cox−2阻害剤セレコキシブ(100または500μg)またはその併用のいずれかで腫瘍部位にs.c.注射した。マウスの腫瘍増殖および生存を定期的にモニターした。腫瘍径をキャリパーにより二次元で測定し、以下の式により決定した:(幅×長)×π/6、式中、幅はより小さい値である。腫瘍長が15mm以上を測定した場合マウスを屠殺した。
【0180】
ウェスタンブロット分析
DCを、TLRリガンドとともに1×10個/mlで15分〜8時間培養した。特定の実験において、ERKまたはp38阻害剤をTLRリガンドの1時間前に添加した。細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜に転写し、リン酸化p38(pp38;Cell Signal Technology,マサチューセッツ州、米国)またはリン酸化ERK(pERK;Santa Cruz Biotechnologies、米国)に特異的な抗体および西洋わさびペルオキシダーゼ結合二次抗体でブロットした。ニトロセルロースをストリップし、全p38または全ERKに特異的な抗体でプローブした。
【0181】
磁気細胞分離によるT細胞の精製
細胞懸濁液をリンパ節、肺または外科手術により取り出した腫瘍から調製した。組織試料を培地で洗浄し、外科用メスの刃で微細に切断し、ハンクス平衡塩溶液中コラゲナーゼD(Sigma)0.1%溶液で37℃にて30分間インキュベートした。次いで、細胞懸濁液を70μm細胞濾過器に通し、赤血球を溶解した。細胞を洗浄し、計数し、抗CD4または抗CD8磁性ビーズ(Miltenyi Biotech)10μlを有するMACS緩衝液90μlに再懸濁し、4〜8℃にて15分間インキュベートした。MACS緩衝液(2ml)を各試料に添加後、300×gにて10分間遠心分離した。次いで、各試料をMACS緩衝液500μlに再懸濁し、AutoMacs(Miltenyi Biotech)を使用して分離した。
【0182】
フローサイトメトリーによる分析および細胞内サイトカイン染色
単一細胞懸濁液をリンパ節、肺および腫瘍から調製した。肺および腫瘍を、0.1%コラゲナーゼD(Sigma)を有するハンクス平衡塩溶液で消化した。細胞をPMA(10ng/ml)およびイオノマイシン(1μg/ml)で1時間刺激後、ブレフェルジンA(10μg/ml)を37℃にて4時間添加した。細胞をCD4(Caltag)、CD8(BD Pharmingen)、CD11c(BD Pharmingen)またはF4/80(Caltag)のいずれかに特異的な抗体で再懸濁した。次いで、細胞を固定培地A(Fix&Perm cell permeabilization kit、 Caltag Laboratories)50μlで固定した。細胞を透過性培地B(Fix&Perm cell permeabilization kit、 Caltag Laboratories)50μlおよび抗IL−10または抗IFN−ガンマ抗体(BD Pharmingen)5μlでインキュベートし、FACScalibur(商標)のCELLQuest(商標)ソフトウェア(Becton−Dickson、サンノゼ、カリフォルニア州)を使用して免疫蛍光を分析した。
【0183】
逆転写酵素−PCR
RNAを脾臓、肺、LNまたは腫瘍細胞またはCD4およびCD8T細胞のいずれかからTriReagent(Sigma Aldrich)を使用して抽出し、Superscript II RT(Invitrogen)およびOligodT(12〜18)プライマー(Invitrogen)を使用して逆転写した。
マウスTGF−ベータに特異的なプライマー(センス−AGACGGAATACAGGGCTTTCGATTCA、アンチセンス−CTTGGGCTTGCGACCCACGTAGTA)、IL−10(センス−CTGGACAACATACTGCTAACCGAC、アンチセンス−TTCATTCATGGCCTTGTAGACACC)、Foxp3(センス−CAGCTGCCTACAGTGCCCCTA、アンチセンス−CATTTGCCAGCAGTGGGTAG)、Cox−2(センス−GTATCAGAACCGCATTGCCTCTGA、アンチセンス−CGGCTTCCAGTATTGAGGAGAACAGAT)、IP−10(センス−CGCACCTCCACATAGCTTACAG、アンチセンス−CCTATCCTGCCCACGTGTTGAG、IL−23p19(センス−TCTCGGAATCTCTGCATGC、アンチセンス−CTGGAGGAGTTGGCTGAGTC)、IL−15(センス−CATATGGAATCCAACTGGATAGATGTAAGATA、アンチセンス−CATATGCTCGAGGGACGTGTTGATGAACAT)およびベータ−アクチン(センス−GGACTCCTATGTGGGTGACGAGG、アンチセンス−TGCCAATAGTGATGACTTGGC)をcDNA試料2μgとともに使用し、ペルチェサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)を使用してTaqポリメラーゼ(Promega)で増幅した。
【0184】
熱ショックタンパク質(HSP)は、タンパク質分解中に産生される多岐にわたる細胞ペプチドと結合している。いくつかの細胞(例えば、腫瘍細胞)由来のHSP調製物は、その細胞のペプチドレパートリーを含有する。HSPペプチド複合体を用いたワクチン接種は、ペプチドに対するT細胞反応を産生する。
【0185】
HSP70腫瘍ペプチド複合体の精製
B16腫瘍細胞(1×10個)をC57BL/6マウスに注射し、14日後、マウスを屠殺し、腫瘍を取り出した。腫瘍は、その体積の4倍の低張性緩衝液(2mM NaHCO、PMSF pH7.1)中でホモジナイズした後、100,000gにて遠心分離し、上清を回収した。試料を緩衝液D(20mM Tris酢酸塩、20mM NaCl、15mM ベータ−メルカプトエタノール、3mM MgCl、0.5mM PMSF、pH7.5)にPD10カラムを用いて変更した。試料を緩衝液Dで均衡させたADPアガロースカラム(5ml)に直接適用した。カラムを0.5M NaClを含有する緩衝液Dで洗浄後、タンパク質アッセイによりタンパク質をさらに検出することができなくなるまで緩衝液Dのみで洗浄した。最後にカラムを、3mMADPを含有する緩衝液Dで室温にて30分間インキュベートし、続いて、同緩衝液(25ml)で溶出した。HSP70を、Bradfordタンパク質アッセイを使用し、定量した。調製物の純度を銀染色ゲルで、特異的抗体を用いたウェスタンブロッティング法により特異性を評価した。
【0186】
[実施例1] CT26腫瘍増殖は、非関連抗原に対するT細胞反応を阻害する
材料および方法
DO.11.10マウスにOVA(200μg)単独で、または2×10個のCT26細胞とともに、s.c.注射した。マウスを7日後にOVA200μgでブーストし、14日後にリンパ節細胞をOVAで再刺激し、増殖(図1A)を4日後に検討し、IFN−ガンマ(図1B)濃度を3日後に取り出した上清で決定した。結果は、1群当たりマウス5匹の平均±SDであり、3点測定した。OVA対OVA+CT26、ANOVAにより**p<0.01、***p<0.001。
【0187】
結果
腫瘍増殖中に適応免疫反応が効率的に産生しないのは、増殖している腫瘍により作製された免疫抑制環境に起因する可能性を調べるために、本発明者らは、非関連抗原に対するT細胞反応における増殖している腫瘍の影響を検討した。OVA−TCRTgマウスにCT26細胞の存在下または非存在下においてOVAでs.c.注射し、マウスを7日後にOVAでブーストし、14日後に屠殺した。流入領域リンパ節を取り出し、OVA−特異的T細胞増殖およびIFN−ガンマ産生を調べた。CT26細胞およびOVAで惹起されたマウスは、OVAのみを注射したマウスと比較した場合、OVA−特異的T細胞増殖が有意に減少した(図1A)。CT26細胞の共投与もまた、リンパ節のOVA−特異的IFN−ガンマ産生を有意に低下させ(図1B)、増殖しているCT26腫瘍が特に注射部位にて他の抗原に対する免疫反応を抑制することを明らかにした。
【0188】
[実施例2] 増殖している腫瘍により誘導された免疫抑制サイトカイン産生
材料および方法
RNAを、培養CT26細胞から抽出し、RT−PCRをIL−10、TGF−ベータ、IL−23p19、IL−15およびIP−10に特異的なプライマーを使用して行った(図2A)。培養されたCT26細胞の上清のTGF−ベータタンパク質をELISA法により定量した(図2B)。RNAをin vitroで培養されたCT26細胞またはホモジナイズしたs.c.CT26腫瘍を担持するマウスから摘出した固体CT26腫瘍(マウス5匹からプールされたRNA)から抽出し、RT−PCRをIL−10およびベータアクチンに特異的なプライマーを使用して行った(図2C)。結果は、3回の実験の代表値である。
【0189】
BALB/cマウス(5匹/群)にi.v.(図3A)またはs.c.(図3B)のどちらかでCT26細胞を注射した。リンパ節(LN)およびs.c.腫瘍塊(T)または肺を未感作(N)および腫瘍惹起14日後の腫瘍担持マウス(T)から取り出した。CD4およびCD8T細胞を、磁気細胞分離を使用して単離し、RNAを単離し、RT−PCRをIL−10およびTGF−ベータに特異的なプライマーを使用して行った。
【0190】
結果
腫瘍増殖中の免疫抑制の可能性のあるメディエーターを検討するために、本発明者らは、in vitroで培養された腫瘍およびex vivoで増殖している腫瘍の炎症促進性および抗炎症性サイトカインのmRNA発現を検討した。培養されたCT26腫瘍細胞のサイトカインmRNA発現の検討は、抗炎症性サイトカイン、TGF−ベータのmRNA発現を明らかにした(図2A)。さらに、TGF−ベータタンパク質を増殖している腫瘍の上清中に検出した(図2B)。Cox−2、IL−23p19、IL−15およびIP−10mRNAもまたCT26細胞により発現した(図2A)が、本発明者らは、IL−1ベータ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12p35、IL−12p40、IL−13、IL−18、IL−27p28、IL−27EB13、TNF−αおよびIFN−ガンマのmRNA発現を検出できなかった(データは図示せず)。PMAで細胞を刺激した後でもin vitroで培養された腫瘍中(図2A)にIL−10mRNAを検出することができなかったが(データは図示せず)、ex vivoの腫瘍塊においては検出され(図2C)、in vivoで腫瘍を浸潤している細胞がIL−10を分泌したことを示唆した。
【0191】
次いで、本発明者らは、RT−PCRにより、腫瘍塊、肺および流入領域リンパ節のT細胞のIL−10およびTGF−ベータmRNA発現を検討した。CD4およびCD8T細胞を、CT26肺転移を有するマウスの肺および頸部リンパ節からと、CT26細胞をs.c.注射したマウスの固体腫瘍および鼠径リンパ節から精製した。IL−10mRNAの恒常的発現は、未感作マウスのリンパ節と比較した肺のCD4T細胞において高値であった。IL−10発現は、未感作マウスの肺のT細胞に見つかったものに比較し、腫瘍担持マウスの肺のCD4およびCD8T細胞はともにかなり強化されたが、肺転移を有するマウスの頸部リンパ節のIL−10mRNA発現はほとんど変化しなかった(図3A)。さらに、TGF−ベータmRNA発現は、未感作の対照マウスと比較した場合、CT26肺転移担持マウスの肺から精製されたCD4およびCD8T細胞は、ともに顕著に高く、リンパ節ではほとんど変化がなかった(図3C)。高IL−10発現もまた、CT26をs.c.注射されたマウス由来の固体腫瘍から精製されたCD4およびCD8T細胞において検出された(図3B)。CT26細胞を用いてs.c.で惹起14日後のマウス鼠径リンパ節由来のCD4T細胞のIL−10mRNA発現およびCD8T細胞のTGF−ベータmRNA発現がわずかに増加した(図3B)。しかし、鼠径リンパ節において、TGF−ベータ発現の高い恒常的な発現があった。これらの所見は、CT26腫瘍の増殖が、すでに免疫抑制的な肺の環境を強化し、IL−10およびTGF−ベータ発現性CD4およびCD8T細胞の腫瘍部位への浸潤を促進することを示唆する。
【0192】
[実施例3] Foxp3発現を、CT26腫瘍塊内のCD4T細胞において強化する
材料および方法
BALB/cマウス(5匹/群)に、静脈内(i.v.)(図3A)または皮下(s.c.)(図3B)のどちらかでCT26を注射した。リンパ節(LN)およびs.c.腫瘍塊(T)を、未感作(N)および腫瘍惹起14日後の腫瘍担持マウス(T)から取り出した。CD4およびCD8T細胞を、磁気細胞分離を使用して単離し、RNAを単離し、RT−PCRをFoxp3に特異的なプライマーを使用して行った。
【0193】
結果
IL−10およびTGF−ベータを発現するT細胞が増殖中の腫瘍に蓄積することが明らかになったので、本発明者らは、天然のTreg細胞が腫瘍部位に動員される可能性を検討した。CD4およびCD8T細胞を、鼠径リンパ節、およびs.c.モデルの固体腫瘍、および肺転移モデルの表在性リンパ節と肺から精製し、RT−PCRを、Foxp3に特異的なプライマーを使用して行った。肺転移モデルにおいて、Foxp3発現は、未感作マウス由来の同組織と比較した腫瘍担持マウスの肺および流入領域リンパ節から精製されたCD4T細胞において顕著に強化された(図3A)。また、Foxp3発現は、s.c.腫瘍塊に浸潤しているCD4T細胞にも検出された(図3B)。肺モデルと違い、Foxp3発現は、s.c.腫瘍を有するマウスの流入領域リンパ節において強化されなかった。Foxp3発現は、未感作または腫瘍担持マウス由来の組織のいずれのCD8T細胞においても検出されなかった。
【0194】
[実施例4] 高頻度のIL−10分泌性CD4およびCD8T細胞ならびに低頻度のIFN−ガンマ分泌性T細胞は、増殖している腫瘍に浸潤する
材料および方法
BALB/cマウスに2×10または3×10個のCT26結腸癌細胞をそれぞれs.c.またはi.v.のどちらかで注射した。固体s.c.腫瘍または肺を示された日に切除した。細胞をPMAおよびイオノマイシンで刺激し、表面CD4、CD8および細胞内IL−10ならびにIFN−ガンマに特異的な抗体で標識し、免疫蛍光分析を行った(図4A)。
【0195】
結果
増殖している腫瘍のIL−10分泌性およびFoxp3T細胞の存在を明らかにしたので、本発明者らは、細胞内サイトカイン染色を使用して、腫瘍増殖中の肺または腫瘍塊に動員されるエフェクター対制御性T細胞の相対的な頻度を検討した。マウスをCT26細胞でs.c.またはi.v.で惹起し、腫瘍を3または14日後に取り出し、細胞内サイトカイン染色を、表面CD4またはCD8を標識したT細胞のIL−10およびIFN−ガンマについて行った。非常に高頻度(24〜37%)のIL−10分泌性CD4およびCD8T細胞が、CT26転移を担持するマウスの肺およびCT26細胞をs.c.注射したマウスの腫瘍塊で検出された(図4A)。対照的に、IFN−ガンマの分泌は、CD4T細胞で6〜7%およびCD8T細胞で9〜27%であった(図4A)。
【0196】
[実施例5] IL−10分泌性マクロファージおよびDCは、増殖している腫瘍に浸潤する
材料および方法
BALB/cマウスに3×10個のCT26結腸癌細胞をi.v.注射し、肺を未感作マウス(0日目)または腫瘍惹起3日および14日後のマウスから取り出した。細胞を表面CD11cおよびF4/80および細胞内IL−10に特異的な抗体で標識し、免疫蛍光分析を行った(図4B)。
【0197】
結果
自然のIL−10は、マクロファージおよびDCにより分泌され、末梢において未感作T細胞由来の誘導性Treg細胞の分化に重要な役割を果たすことが報告された。CT26転移の発達中の肺へのIL−10分泌性T細胞の動員を明らかにしたので、それゆえ、本発明者らは、これが肺におけるIL−10産生マクロファージまたはDCの動員および活性化に関与する可能性を検討した。マウスをCT26細胞でi.v.惹起し、肺および頸部リンパ節を3または14日後に取り出し、細胞内サイトカイン染色を表面CD11cまたはF4/80を標識した細胞において行った。肺のCT26腫瘍の発達は、肺に対するマクロファージおよびDCの動員に関連し、これらの自然細胞の高い割合がIL−10を分泌した(図4B)。肺のCD11c細胞の割合は、未感作マウスの11%から腫瘍惹起3日および14日後のそれぞれ17%および34%まで増加し、一方、F4/80細胞の割合は、未感作マウスの12%から腫瘍惹起14日後の27%まで増加した。さらに、腫瘍惹起14日後に浸潤マクロファージの79%および浸潤DCの38%がIL−10を分泌した。対照的に、DC11cおよびF4/80細胞の割合は、未感作対照マウスと比較した場合、腫瘍惹起3日および14日後のリンパ節において低下した。さらに、非常に低頻度のこれらの細胞が、IL−10を分泌し、これは、腫瘍惹起後に顕著に変化しなかった。
【0198】
[実施例6] B16細胞は、樹状細胞およびマクロファージのCox−2発現を誘導する
材料および方法
C57BL/6マウス由来の骨髄由来樹状細胞または腹腔マクロファージを種々の希釈のB16上清で24時間インキュベートした。細胞をホモジナイズし、得られたmRNAを、Cox−2特異的プライマーを使用してRT−PCRにより分析し、ベータアクチン発現と比較した。B16上清を、B16細胞5×10個/mlを1週間増殖させ、使用済み培地を除去することにより調製した。
【0199】
結果
Cox−2阻害剤は癌の処置において使用され、様々な成功をもたらした。Cox−2およびCox−2により誘導されたPGE2は、Foxp3発現性の制御性T細胞を促進することに関与していた。本発明者らは、CT26腫瘍がCox−2mRNAを発現することをすでに示した。本明細書において、本発明者らは、腫瘍細胞もマクロファージおよび樹状細胞のCox−2発現を誘導することができる可能性を、B16腫瘍細胞株を使用して検討した。増殖しているB16細胞由来の上清を用いた骨髄由来DCまたは腹腔マクロファージの刺激は、DCおよびマクロファージのCox−2mRNA発現を誘導した(図5)。それゆえ、腫瘍細胞は、Cox−2を発現するだけでなく、自然免疫系の細胞のCox−2の発現も誘導する。
【0200】
[実施例7] CpG−ODNは、樹状細胞およびマクロファージのCox−2発現を誘導する
材料および方法
C57BL/6マウスの骨髄由来DCおよび腹腔マクロファージを種々の濃度のCpGで24時間インキュベートした。細胞をホモジナイズし、得られたmRNAを、Cox−2特異的プライマーを使用して、RT−PCRにより分析し、ベータアクチン発現と比較した。
【0201】
結果
CpG−ODNを、腫瘍の治療として、および感染性疾患ワクチンのアジュバントとして調べている。これらの可能性は、自然免疫反応、特にIL−12を、および結果として樹状細胞およびマクロファージ等の自然免疫細胞とTLR9との相互作用を介した適応免疫を強化する能力に基づく。しかし、TLR信号伝達は、IL−12産生等の免疫性サイトカインの誘導に制限されず、他のメディエーターも活性化することができる。本発明者らは、自然免疫細胞のCox−2誘導におけるCpGの影響を調べた。CpGは、樹状細胞およびマクロファージのCox−2mRNA発現の用量依存的な誘導を誘導した(図6)。Cox−2が、脈管形成および抗炎症性反応に寄与することができるため、これは、腫瘍治療または癌あるいは感染性疾患のワクチンのアジュバントとして望ましくない。
【0202】
[実施例8] TLRリガンドは、制御活性を有するIL−10分泌性T細胞およびIFN−ガンマ分泌性Th1細胞を誘導する
材料および方法
BALB/cマウスをPBSのみ、KLH(5μg)またはKLHおよびCpG−ODN(25μg)、LPS(1μg)、ポリIC(25μg)、死菌体B.pertussis全細胞ワクチン(Pw)またはCT(10ng)を用いてs.c.で免疫した。7日後、マウスの流入領域リンパ節細胞をKLH(50μg/ml)で刺激し、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により、3日後に決定した(図7)。
【0203】
CD4T細胞株をKLHで免疫化したマウスから樹立し、CpG−ODNをKLH(10μg/ml)およびAPCで刺激した(図8A)。株6および7を最初に抗IFN−ガンマの存在下において抗原で刺激して、培養液を模倣し(および複数の再培養ステップで洗浄することにより除去し)IFN−ガンマ分泌性T細胞の増殖を防止した。T細胞株を、抗原およびAPCの刺激により、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10産生について調べた(図8A)。
【0204】
PBS(対照)またはKLHおよびCpG−ODNで免疫化したマウス由来のリンパ節細胞をKLH(50μg/ml)で刺激し、6日後、細胞をPMAおよびイオノマイシンで6時間再刺激した(図8B)。ブレフェルジンA(10μg/ml)を最後の4時間に添加した。免疫蛍光分析を、CD4細胞上にゲーティング後の細胞内IL−10およびIFN−ガンマにおいて行った(図8B)。
【0205】
高濃度のIFN−ガンマを分泌し、IL−4およびIL−10を低濃度分泌し、または全く分泌しないTh1細胞株をIL−12および抗IL−10の存在下においてT細胞を培養することにより、KLHおよびCpG−ODNで免疫化したマウスから樹立した(図8C)。IL−10を分泌し、およびIFN−ガンマまたはIL−4を低濃度または全く分泌しないTh1型細胞株を、抗IFN−ガンマの存在下において最初の培養により樹立し、IFN−ガンマおよびIL−10分泌性T細胞株(Th1Trと呼ぶ)の混合物をサイトカインまたは抗体を添加することなく、抗原およびAPCとともに培養することにより樹立した。Th1細胞株は、APCおよび抗原のみまたは1:3、1:1または3:1の比のTr1またはTh1Tr細胞の存在下において培養した。上清を3日後に取り出し、IFN−ガンマ濃度をELISA法により調べた(図8C)。Th1細胞のみの反応を基準として結果を表す。
【0206】
結果
TLRリガンド、例えばCpGまたはLPSは、選択的にTh1反応を誘導し、または特定のTLR−2作動薬の場合、Th2反応を誘導することが広く報告されている。本発明者らは、モデルバイスタンダー抗原であるKLHに対するT細胞反応に関するTLRリガンドの役割を検討した。KLHのみを用いた免疫化は、IL−10および低濃度IL−4を分泌するがIFN−ガンマは分泌しないT細胞を生成した。TLRリガンド、CpG−ODN、LPSまたはポリICの共投与は、高濃度のIFN−ガンマを分泌するがIL−4を低濃度または検出不能な程度分泌するT細胞である、Th1細胞の誘導と一致するサイトカインプロフィールを産生する(図7)。
【0207】
しかし、IFN−ガンマに加え、顕著なIL−10(しかしIL−4は検出されず)もまた、TLRリガンドの存在下においてKLHで免疫されたマウスの抗原刺激性リンパ節細胞由来の上清に検出された(図6)。死菌体B.pertussisおよびpertussis全細胞ワクチンは、強力なアジュバント活性を有する。本明細書において、本発明者らは、死菌体B.pertussisが共投与抗原であるKLHに対する、IL−10およびIFN−ガンマを分泌する抗原特異的T細胞の誘導を促進することを発見した。対照的に、本発明者らが以前に示したCTを用いた免疫は、Th1およびTh2細胞を誘導し、KLH特異的IL−4およびIL−10産生を強化した。
【0208】
免疫されたマウス由来のKLH特異的CD4T細胞株の産生は、KLHおよびCpG−ODN(図8A)を用いた免疫が、IFN−ガンマのみまたはIFN−ガンマおよびIL−10を分泌するT細胞を産生したことを示した。抗原およびCpG−ODNまたはB.pertussisで免疫したマウスから産生されたT細胞株を抗IFN−ガンマの存在下において最初にex vivoでリンパ節を培養することにより産生する場合(これは、次いでいくつかの洗浄ステップおよびいくつかの再培養ステップにより除去された)、これらのT細胞は、IL−10を分泌するが、IFN−ガンマまたはIL−4を分泌しない(図8A)。これらの所見は、Th1−促進アジュバントもまたIL−10分泌性Th1型T細胞およびIL−10およびIFN−ガンマを分泌するT細胞を産生することを示唆し、これらは、Th1Tr細胞と呼ばれている。KLHおよびCpG−ODNで免疫化されたマウス由来のCD4T細胞の細胞内サイトカイン染色もまた、IFN−ガンマまたはIL−10のみまたはIFN−ガンマおよびIL−10を分泌する細胞の別個の集団を明らかにし(図8B)、このTLR作動薬が、Th1およびTr1細胞および両方のサイトカインを分泌する別個の集団の誘導を促進することが確認された。
【0209】
次に、本発明者らは、KLHおよびCpG−ODNを用いて免疫することにより誘導された、抗原特異的IL−10またはIL−10およびIFN−ガンマ分泌性T細胞の、樹立したKLH特異的CD4Th1細胞株に対するサプレッサー機能を検討した。このTh1細胞株は、KLHおよびCpG−ODNで免疫化されたマウスから樹立され、抗原およびAPCの刺激に対して高濃度のIFN−ガンマを分泌する。IL−10を分泌するが、IFN−ガンマまたはIL−4を分泌しないTh1細胞もまた、抗IFN−ガンマ中和抗体の存在下において最初の培養によりKLHおよびCpG−ODNで免疫したマウスの脾臓細胞から増殖した。これらのTr1細胞は、3:1、1:1および1:3の比のTh1細胞によりIFN−ガンマ産生を顕著に抑制し、この場合、最も高い発現は、Tr1細胞数が最も多い時に認められた(図8C)。IFN−ガンマおよびIL−10を分泌するTh1Tr細胞もまた、IFN−ガンマ分泌を抑制するが、1:1および3:1の比のみにおいてである。これらの所見は、エフェクターIFN−ガンマ分泌性細胞を誘導するのに加え、CpG−ODNが、同時にサプレッサー活性を有するT細胞の誘導を促進することを示唆した。
【0210】
[実施例9] TLRリガンドは、ERKおよびp38の活性化を介してDCIL−10産生を誘導する
材料および方法
DCを1ng/ml〜10μg/mlのPam3CSK4(Pam3)、ザイモサン(Zym)、ポリIC、LPS、フラジェリン(Flag)、CpG−ODNの存在下または培地のみでインキュベートした。24時間後、上清を取り出し、IL−10、IL−12p40およびIL−12p70濃度をELISA法により決定した。NT、検査せず(図9)。
【0211】
DCをMEK1/2阻害剤(U0126)で1時間プレインキュベート後、培地のみまたはPam3Cys、ザイモサン、LPS、フラジェリンまたはCpG−ODN(1または5μg/ml)で15分間インキュベートした。細胞を溶解し、ウェスタンブロット法をリン酸化ERK1およびリン酸化ERK2に特異的な抗体を使用して行った(図10A)。DCを培地のみ(0)またはLPS(100ng/ml)で0.5、1、2、4、8または12時間刺激した。ウェスタンブロット法をリン酸化ERKまたはp38に特異的な抗体を使用して行った(図10B)。ブロットをストリップし、全ERKまたはp38に特異的な抗体で再プローブした。DCを培地のみ(対照)、U0126(1.25〜5μM)(図10C)またはp38阻害剤SB203580(SB;0.1〜10μM)(図10D)で、CpG−ODN(5μg/ml)、LPS(100ng/ml)または培地のみを添加する前に1時間プレインキュベートし、24時間後、IL−10濃度をELISA法により決定した。DMSOで処置した細胞を陰性対照として使用した。
【0212】
BALB/cマウスの骨髄由来DCをCpGのみ(10μg)またはp38阻害剤SB203580(低:1μM、高:5μM)あるいはERK阻害剤UO126(5μM)で24時間インキュベートした。上清を取り出し、アリコートをELISA法により、IL−10、IL−12p70およびIL−6について測定した(図11)。
【0213】
結果
TLRリガンドおよびTLRリガンドを含む死菌体Bordetella pertussisがTr細胞およびTh1細胞を誘導することを明らかにしたので、本発明者らは、これがDCによるIL−10およびIL−12の同時誘導を反映する可能性について検討した。本発明者らは、検討したTLRリガンド、Pam3CSK4(TLR−2)、ザイモサン(TLR−2)、ポリIC(TLR−3)、LPS(TLR−4)、フラジェリン(TLR−5)およびCpG−ODN(TLR−9)がそれぞれ未成熟骨髄由来DCのIL−10およびIL−12p40ならびにIL−12p70の産生を誘導することを発見した(図9)。IL−10およびIL−12の誘導は、それぞれERKおよびp38信号伝達に関連し、それゆえ、本発明者らは、TLR誘導性サイトカイン産生においてこれらのMAPキナーゼの役割を検討した。本発明者らは、検討したTLRリガンドがそれぞれDCのERKリン酸化を誘導することを発見した(図10A)。LPS誘導性ERKリン酸化は、30分にて最大値となったが、8時間まで明らかであった(図10B)。TLRリガンドを阻害するMEK1/2阻害剤であるU0126を用いたプレインキュベーションは、ERKリン酸化(図10A)を誘導し、CpG−ODNまたはLPSで刺激されたDCからのIL−10産生を抑制した(図10C)。MEK1/2阻害剤は、IL−12p70産生を強化した。この効果は、IL−10−/−マウス由来のDCにおいても保持されており、IL−10産生の低下に続くものではないことを示唆した(データは図示せず)。TLRリガンドもまた、DCのp38のリン酸化を誘導した。特定のp38阻害剤であるSB203580を用いたDCのプレインキュベーションは、LPSまたはCpG−ODNに対する反応においてIL−10を阻害、および/またはIL−12p70産生を強化した(図10Dおよび図11)。本発明者らはまた、p38およびERK阻害剤の併用がCpG誘導性IL−10産生をさらに抑制し、IL−12p35を強化するが、IL−6において効果がないことを発見した(図11)。ERKおよびp38は、ERK促進IL−10およびp38促進IL−12で別々にIL−10およびIL−12産生を制御することができることを以前に示唆している。しかし、本発明者らの所見は、IRF−5−欠損マウス(Takaoka,A.,H.Yanai,S.Kondo,G.Duncan,H.Negishi,T.Mizutani,S.I.Kano,K.Honda,Y.Ohba,T.W.Mak,and T.Taniguchi.2005.Integral role of IRF−5 in the gene induction programme activated by Toll−like receptors.Nature)およびNF−κB阻害剤(Kabashima,K.,T.Honda,Y.Nunokawa,and Y.Miyachi.2004.A new NF−kappaB inhibitor attenuates a TH1 type immune response in a murine model.FEBS Lett 578:36−40)を使用する最近の報告と併用し、TLRリガンドがMAPキナーゼである、ERKおよびp38を介してIL−10を活性化する一方、IL−12p70は、IRF−5およびNF−κB経路を利用することを示唆する。
【0214】
[実施例10] p38、ERKおよびCox−2阻害剤の、外来抗原およびCpGで刺激された樹状細胞への添加は、Th1の誘導能を強化し、IL−10分泌性T細胞の誘導を抑制する
材料および方法
BALB/cの骨髄由来DCをOVAクラスIIペプチド(5μg)とともにインキュベートした。同時に、細胞をCpG(10μg)のみまたはp38阻害剤SB203580(低:1μM、高:5μM)あるいはP38阻害剤およびERK阻害剤UO126(5μM)のいずれかで24時間刺激した。D011.10OVA−TCRTgマウスから精製されたCD4+T細胞をDC(10:1)で刺激し、上清を抗原刺激3日後に取り出し、IL−10およびIFNガンマは、ELISA法により定量した(図12)。
【0215】
C57BL/6マウスの骨髄由来DCを培地のみ(−)、KLH(5μg)およびCpG(5μg)ならびに、Cox−2(NS−398:5μM)、p38(SB203580:1μM)、ERK(UO126:5μM)に対する阻害剤の示された組み合わせでインキュベートした。2.5×10個の処置された細胞を57BL−6マウスの各フットパッドに注入した。膝窩リンパ節および脾臓を5日後に取り出し、単一細胞懸濁液をKLH(2、10、50μg/ml)で再刺激した。上清を3日後に取り出し、IFN−ガンマおよびIL−10濃度をELISA法により定量した(図13)。
【0216】
結果
TLRリガンドは、樹状細胞およびマクロファージ由来のIL−10およびIL−12産生を強化する。さらに、自然免疫細胞由来のIL−12およびIL−10産生は、Th1およびTreg細胞それぞれの誘導を促進する。これは、アジュバントとしてのTLR作動薬によるTh1およびTreg細胞の同時誘導を説明する。本明細書において、本発明者らは、p38またはERK阻害剤あるいはこれらの両方とCpGとの併用がin vitroおよびin vivoにおいて外来抗原に対するTh1を強化し、Tr誘導を抑制することを示す。DCをOVAペプチドのみまたはCpGあるいはp38阻害剤存在下またはP38およびERK阻害剤存在下においてCpGで刺激後、これを使用して、DO11.10OVA T細胞受容体(TCR)トランスジェニック(Tg)マウスの脾臓から精製したCD4T細胞を刺激した。T細胞サイトカイン産生を1回または2回の抗原刺激後に検討した。結果は、CpGの存在下において、OVAを用いてパルスされたDCは、IL−10およびIFNガンマ分泌性T細胞を誘導し、これは、Th1およびTreg細胞のin vivo誘導に一致することを示す(図12)。p38阻害剤の添加により、IL−10分泌性T細胞の誘導が抑制され、IFN−ガンマ分泌性T細胞の誘導が強化された。これを、ERK阻害剤の添加によりさらに強化された。
【0217】
次に、本発明者らは、CpG活性化樹状細胞のin vivoでのT細胞反応誘導におけるp38、ERKおよびCox−2阻害剤の影響について検討した。骨髄由来DCを、KLHのみ、またはCpGのみあるいはp38、ERKおよびCox−2阻害剤の組み合わせで刺激後、マウスにs.c注射した。流入領域リンパ節および脾臓を5日後に取り出し、細胞を抗原(KLH)で刺激し、サイトカイン産生を評価した。データは、抗原を用いてパルスしたDCが、in vivoでIL−10およびIFN−ガンマ分泌性T細胞を誘導したことを明らかにした(図13)。マウスに注射する前に、CpGおよび抗原で刺激中のDCへのp38またはCox−2阻害剤の添加は、DCのIFN−ガンマ分泌性T細胞誘導能を強化する一方、IL−10分泌性T細胞を抑制した。ERK阻害剤は、IL−10分泌性T細胞の誘導を抑制したが、Th1細胞も抑制した。ERK、p38およびCox−2阻害剤の併用は、IL−10産生T細胞を完全に抑制するが、IFN−ガンマ分泌性T細胞も減少させた。これらの所見は、p38およびCox−2阻害剤がTh1を強化し、アジュバントとしてのTLR作動薬と外来抗原に対するTreg細胞誘導を抑制する。ERK阻害剤もまた、IL−10産生T細胞を抑制した。
【0218】
[実施例11] Cox−2阻害剤は、TLR作動薬誘導性IL−10およびTGF−ベータ産生を抑制し、自然IL−12およびIL−27産生を強化する
材料および方法
C57BL/6マウスにCpG(10μg)またはCpGおよびCox−2阻害剤セレコキシブ(100μg)のいずれかを側腹部に注射した。流入鼠径リンパ節を2および6時間後に取り出し、ふるいにかけ、PBS1mlに再懸濁した。細胞を取り出し、上清のIL−10およびTGF−ベータ濃度をELISA法により定量した(図14)。
【0219】
C57BL/6マウスにCpG(10μg)のみまたは種々の濃度のCox−2阻害剤セレコキシブ(5、50または500μg)のどちらかを側腹部に注射した。6時間後、流入鼠径リンパ節を取り出し、単一細胞懸濁液を調製した。細胞をホモジナイズし、得られたmRNAをRT−PCRにより、IL−27およびIL−10の発現において分析し、ベータアクチン発現と比較した(図15)。
【0220】
C57BL/6マウスの骨髄由来DCをCpG(10μg)および種々の濃度のCox−2阻害剤NS−398とともに24時間インキュベートした。上清を取り出し、IL−10およびIL−12p40濃度をELISA法により決定した(図16)。
【0221】
C57BL/6マウスの骨髄由来DCをCpG(10μg)および種々の濃度のCox−2阻害剤NS−398とともに24時間インキュベートした。細胞をホモジナイズし、得られたmRNAをRT−PCRにより、IL−10およびIL−27p38特異的プライマーを使用して分析し、ベータアクチン発現と比較した(図17)。
【0222】
C57BL/6マウスの骨髄由来DCをCpG(10μg)または、1または10μMのCox−2阻害剤NS−398とともに24時間インキュベートした。細胞をホモジナイズし、得られたmRNAをRT−PCRにより、IL−10、IL−12p35またはIL−12p40特異的プライマーを使用して分析し、ベータアクチン発現と比較した(図18)。
【0223】
結果
本発明者らは、腫瘍細胞がCox−2を発現し、腫瘍上清およびCpGが自然免疫細胞のCox−2発現を誘導することを見つけたため、本発明者らは、in vivoおよびin vitroでの樹状細胞からのTLR作動薬誘導性サイトカイン発現におけるCox−2阻害剤の影響を検討した。マウスにCpGのみ、またはCox−2阻害剤とともに、s.c.で注射し、リンパ節を6時間後に取り出し、サイトカイン産生を評価した。CpG注射は、IL−10およびTGF−ベータの産生を誘導し、これは、Cox−2阻害剤の共投与により抑制された(図14)。IL−10mRNAのCpG誘導性発現もまた、Cox−2阻害剤の共投与により、マウスにおいて抑制され、一方、IL−27mRNA発現は強化された(図15)。CpGを用いたDCのIn vitro刺激は、IL−10およびIL−12p40の産生を誘導した。培養物へのCox−2阻害剤の添加は、IL−10を抑制し、IL−12産生を強化した(図16)。CpGもまた、IL−12p40、IL−12p35およびIL−27p28mRNAの発現を誘導し、これは、Cox−2阻害剤の添加により強化された(図17および18)。対照的に、CpG誘導性IL−10mRNA発現はCox−2阻害剤により抑制された。これらの観察は、2つの別個のCox−2阻害剤が、抗炎症性およびTreg促進性サイトカインの抑制能を有する一方、Th1細胞の誘導を方向付ける制御性サイトカインを強化することを明らかにする。それゆえ、TLR作動薬およびCox−2阻害剤の併用は、in vivoで外来性抗原および腫瘍抗原に対する自然および適応エフェクター反応を刺激するための効果的な方法である。
【0224】
[実施例12] Cox−2阻害剤およびCpGの併用治療は、腫瘍増殖を抑制する
材料および方法
C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起させ、3、5および7日目にCpG(10μg)、Cox−2阻害剤セレコキシブ(100μg)またはその両方の併用で腫瘍部位にs.c.注射した。マウスの腫瘍増殖を定期的にモニターした(図19)。
【0225】
C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起させ、3、5および7日目にCpG(20μg)、Cox−2阻害剤セレコキシブ(500μg)またはその両方の併用で腫瘍部位にs.c.注射した。腫瘍の体積を定期的にモニターした(図20)。
【0226】
C57BL/6マウスを2×10個の腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起させ、3、5および7日目にCpG(20μg)、Cox−2阻害剤セレコキシブ(500μg)またはその両方の併用で腫瘍部位にs.c.注射した。マウスの腫瘍および生存を定期的にモニターした(図21)。
【0227】
結果
本発明者らは、マウス腫瘍モデルを使用して、Cox−2阻害剤を併用したTLR作動薬の治療効果を評価した。マウスを、B16腫瘍を用いてs.c.で惹起させ、未処置のまま、または3、5および7日目にCpG(10μg)を、場合によりCox−2阻害剤(セレコキシブ100μg)とともに、あるいはCox−2阻害剤のみで腫瘍部位にs.c.注射した。Cox−2阻害剤のみの処置は、腫瘍増殖を強化し、CpGのみは、ほとんど効果がなかった(図19)。しかし、CpGおよびCox−2阻害剤の併用は、腫瘍増殖の著しい低下を生じた。これらの試験を、より高用量のCpG(20μg)およびCox−2阻害剤(500μg)を使用して繰り返した。高用量のCpGは、腫瘍増殖を低下させるが、防御効果は、Cox−2阻害剤の治療を併用した場合、顕著に改善された(図20)。CpGのみまたはCox−2阻害剤のみに比べ、CpGおよびCox−2阻害剤の防御効果はまた、腫瘍非含有マウスの生存曲線および数から明らかに証明された(図21)。未処置のマウスは、全て45日以内に死亡し、CpGのみで処置したマウスは、全て55日以内に死亡した。Cox−2阻害剤で処置したマウスの20%は生存し、一方、CpGおよびCox−2阻害剤で処置したマウスの40%が生存した。
【0228】
[実施例13] Cox−2またはERK阻害剤は、腫瘍に対する樹状細胞ワクチン接種の治療効果を強化する
材料および方法
C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、3日目から腫瘍部位に1週間間隔で、処置されたDC(1〜5×10個)を3回s.c.注射で処置した。DCを熱ショックされ/照射されたB16腫瘍細胞およびCpG(5μg/ml)のみまたはCox−2阻害剤セレコキシブ(5μM)もしくはERK阻害剤UO126(5μM)のどちらかとともに24時間パルスした。マウスの腫瘍増殖を定期的にモニターした(図22)。11匹のC57BL/6マウスの群を2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、腫瘍惹起3、10および17日後に、処置されたDC(1〜5×10個)を3回(腫瘍部位にs.c.)注射で処置した。DCをHSP−70(5μg/ml)のみまたはCox−2阻害剤NS398(5μM)との併用のどちらかで24時間インキュベートした。マウスの腫瘍増殖および生存を定期的にモニターした。角括弧内の図は、log rank検定の有意差を表す(図23)。
【0229】
骨髄由来DCを培地のみ(対照)、HSP70ワクチン(5mg/ml)、Cox−2阻害剤NS398(5mM)、HSP70およびCox−2阻害剤またはLPS(10ng/ml)でインキュベートした。24時間後、細胞を抗CD80およびCD11C抗体で標識し、細胞蛍光分析を行った。結果は、CD11c+DC集団でゲートした細胞の平均蛍光強度(MFI)を表す(図24)。
【0230】
結果
癌におけるこれらの潜在的治療効果に加えて、TLR作動薬は、アジュバント特性を有し、病原体または腫瘍抗原で誘導された免疫反応を強化する。TLR作動薬CpGが自然細胞由来のIL−10産生を強化することができ、結果としてTreg細胞を誘導し、これは、癌または感染性疾患ワクチンの逆効果を生じる恐れがあることが示された。本発明者らは、驚くことに、これらがCox−2またはERK阻害剤の共投与により腫瘍ワクチンの効果を改良することができることを示した。腫瘍の免疫抑制環境により影響される(図1に示す)腫瘍抗原およびアジュバントを用いた直接免疫を使用するよりむしろ、本発明者らの手法は、阻害剤を場合により有するCpGの存在下において抗原でパルスした樹状細胞を使用することであった。本発明者らは、全細胞腫瘍ワクチンとして熱ショックされ、照射されたB16細胞を使用し、これをCox−2またはERK阻害剤の存在下または非存在下においてDCおよびCpGとともにインキュベートした。CpG存在下において腫瘍抗原でパルスされた樹状細胞の治療的免疫化は腫瘍増殖に影響しなかった(図22)。しかし、Cox−2またはERK阻害剤の存在下においてB16抗原およびCpGでパルスしたDCを用いた免疫化は、腫瘍増殖の速度を顕著に遅延させた。
【0231】
本発明者らは、熱ショックタンパク質(HSP)−70ワクチンを用いた治療的免疫化の効果におけるCox−2阻害剤の影響もまた検討した。
【0232】
このB16腫瘍からの精製により調製されたHSP−70ワクチンは、マウスのB16腫瘍に対して予防的免疫化に効果があることを以前に示しているが、増殖している腫瘍を有するマウスの治療に投与された場合ほとんど効果がなかった。本明細書において、本発明者らは、Cox−2阻害剤の存在下または非存在下においてHSP−70ワクチンで樹状細胞をパルス後、B16腫瘍惹起3、10および17日後に細胞を移入した。Cox−2阻害剤のみでパルスしたDCの投与は、防御効果がなかった(図23)。さらに、HSP−70ワクチンのみでパルスしたDCを用いた免疫化は、パルスしなかったDCの投与により示されたものに比べマウスの生存または腫瘍非含有マウスの数を強化しなかった。しかし、Cox−2阻害剤の存在下においてHSP−70ワクチンでパルスしたDCを用いて治療的に免疫化したマウスにおいて、腫瘍非含有動物の数が最も多く(77%)および生存率が最も高かった(77%)。これらの所見は、Cox−2阻害剤およびHSP−70ワクチンの併用がどちらかのみの治療に比べ癌治療の効果を顕著に改善したことを明らかにした。
【0233】
DC活性化におけるCox−2およびHSP70の効果の検討は、Cox−2のみまたはHSP70のみのどちらもCD80発現を強化しなかったが、一方、併用により、LPSで実現したものと同一濃度のCD80平均蛍光強度が顕著に強化された(図24)。これらの所見は、HSP70およびCox−2阻害剤の併用が樹状細胞を成熟させ、どちらかの分子のみでは認められなかった効果を示唆する。
【0234】
[実施例14] ERK、Cox−2またはp38の阻害は、樹状細胞のTLR作動薬誘導性PGEを抑制する
材料および方法
骨髄由来樹状細胞(DC)をCpG(5μg)またはERK阻害剤、U0126(5μM)またはその両方でin vitroで24時間刺激した。上清を取り出し、PGE濃度をELISA法により決定した。ANOVAによるCpG+p38阻害剤対CpG **p<0.01(図25)。
【0235】
骨髄由来DCをCpG(5μg)のみまたはCox−2阻害剤であるNS−398の存在下において刺激した。24時間後、上清を取り出し、PGE濃度(図26(a))をELISA法により決定した。ANOVAによるCpG+p38阻害剤対CpG p<0.05。
【0236】
骨髄由来DCを熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、CpG(5μg)、p38阻害剤SB203580(5μM)またはその両方で24時間刺激した。上清を取り出し、PGE濃度をELISA法により決定した。ANOVAによるCpG+p38阻害剤対CpG p<0.05(図27)。
【0237】
結果
図25は、ERK活性化の抑制が樹状細胞によるCpG誘導性PGE2産生を反転させることを示す。
【0238】
図26(a)は、Cox−2産生の抑制が樹状細胞によるCpG誘導性PGE2産生を反転させることを示す。
【0239】
図27は、p38MAPキナーゼ活性化の抑制が樹状細胞によるCpG誘導性PGE2産生を反転させることを示す。
【0240】
[実施例15] Cox−2阻害剤は、樹状細胞によるTLR作動薬誘導性IL−10産生を抑制する
材料および方法
骨髄由来DCをCpG(5μg)のみまたはCox−2阻害剤であるNS−398の存在下において刺激した。24時間後、上清を取り出し、IL−10の濃度(図26(b))をELISA法により決定した。ANOVAによるCpG+p38阻害剤対CpG p<0.05。
【0241】
結果
図26(b)は、Cox−2産生の抑制が樹状細胞によるCpG誘導性IL−10産生を反転させることを示す。
【0242】
[実施例16] p38の阻害は、腫瘍細胞ワクチンおよびTLR作動薬で刺激された樹状細胞により、IL−10を抑制し、IL−12産生を強化する
材料および方法
骨髄由来DCを、4時間、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、CpG(5μg)、p38阻害剤SB203580(5μM)またはその両方で刺激した。上清を24時間後に取り出し、IL−10、IL−12p40、IL−12p70およびIL−23濃度をELISA法により決定した。ANOVAによるCpG+p38阻害剤対CpG p<0.05;***p<0.0001。
【0243】
結果
図28は、p38MAPキナーゼ活性化の抑制が、樹状細胞によるCpG誘導性IL−10を反転させる一方、IL−12産生を強化することを示す。IL−23産生は、p38阻害剤により影響されなかった。
【0244】
[実施例17] p38の阻害は、樹状細胞ワクチンならびに腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスした樹状細胞の治療効果を強化する
材料および方法
骨髄由来DCを、4時間、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、培地のみまたはp38阻害剤であるSB203580(5μM)で24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いて皮下(s.c.)で惹起し、惹起後3、10および17日目に腫瘍部位に注射により5×10個のDCで処置した。腫瘍増殖を定期的にモニターした。結果は、個々のマウスの腫瘍の体積を表す(図29)。
【0245】
骨髄由来DCを、4時間、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、CpG(5μg)のみまたはp38阻害剤であるSB203580(5μM)の存在下で24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞でs.c.で惹起し、惹起後3、10および17日目に腫瘍部位に注射により5×10個のDCで処置した。腫瘍増殖を定期的にモニターした。結果は、個々のマウスの腫瘍の体積を表す(図30)。
【0246】
骨髄由来DCを、熱ショックされ/照射されたB16細胞で4時間処置後、培地のみ、CpG(5μg)、CpGおよびp38阻害剤SB203580(5μM)またはp38阻害剤のみで24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞でs.c.で惹起し、惹起後3、10および17日目に腫瘍部位に注射により5×10個のDCで処置した。マウスの生存を定期的にモニターした。括弧内の数字は、対照群に対する統計的有意差を表す(図31)。
【0247】
結果
図29は、p38阻害剤が、全腫瘍死細胞で活性化された樹状細胞を含む腫瘍ワクチンの防御効果を強化することを示す。
【0248】
図30は、p38阻害剤が、TLR作動薬CpGの存在下において全腫瘍死細胞で活性化した樹状細胞を含む腫瘍ワクチンの防御効果を強化することを示す。
【0249】
図31は、p38阻害剤が全腫瘍死細胞のみで、またはTLR作動薬CpGの存在下において活性化された樹状細胞を含むワクチンの治療的投与後のマウスの生存を強化することを示す。
【0250】
[実施例18] 全腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスした樹状細胞を用いた治療は、腫瘍におけるT細胞のIFN−ガンマ産生を強化する
材料および方法
骨髄由来DCを、熱ショックされ/照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、培地のみまたはCpG(5μg)で24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、惹起後3および10日目に腫瘍部位に注射により5×10個のDCで処置した。
【0251】
腫瘍を15日目に抽出し、CD4およびCD8T細胞の細胞内IL−17およびIFN−ガンマを、FACSを使用して免疫蛍光分析により決定した。
【0252】
結果
図32は、s.c.腫瘍を有するマウスへの腫瘍死細胞およびCpGでパルスした樹状細胞の治療的投与が増殖している腫瘍におけるCD4およびCD8T細胞により産生されるIFN−ガンマの頻度を強化することを示す。
【0253】
[実施例19] B16ワクチン、CpGおよびp38阻害剤で処置した樹状細胞を用いた治療がCD4T細胞の頻度を強化するが、腫瘍塊内の制御性T細胞の頻度を低下させる
材料および方法
骨髄由来DCを、熱ショックされ/照射されたB16腫瘍細胞で4時間処置後、培地のみ、CpG(5μg)、CpGおよびp38阻害剤SB203580(5μM)またはp38阻害剤のみで24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、惹起後3および10日目に腫瘍部位に注射により5×10個のDCで処置した。腫瘍を15日目に抽出し、腫瘍塊内のCD4(A)およびCD4CD25Foxp3細胞(B)の割合を、特異的抗体を用いた免疫蛍光分析により決定し、FACSにより分析した。
【0254】
結果
図33は、s.c.腫瘍を有するマウスに、腫瘍死細胞およびCpGとともにp38阻害剤でパルスした樹状細胞の治療的投与が、増殖している腫瘍へのCD4T細胞の動員を強化し、Foxp3を発現している制御性T細胞の動員を抑制することを示す。
【0255】
[実施例20] CpGおよびp38阻害剤の経腫瘍(pertumoural)注射が生存を増加する
材料および方法
C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、CpG(25μg)、p38阻害剤SB203580(50μg)またはその両方を惹起後3、5および7日目に腫瘍部位に注射した。マウスの生存を定期的にモニターした。
【0256】
結果
図34は、p38阻害剤の存在下におけるCpGの治療的投与がCpGまたはp38阻害剤のみでの治療後に認められたものに比べs.c.B16腫瘍を有するマウスの生存を強化することを示す。
【0257】
[実施例21] pl3K阻害剤は、腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスした樹状細胞の治療効果を強化し、増殖している腫瘍を有するマウスの生存の強化を導く
材料および方法
骨髄由来DCを、最初に、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞を用いてin vitroで4時間パルス後、CpG(5μg/ml)のみまたはpl3K阻害剤ウォルトマンニン(2.5μM)とともに24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、惹起後3、10および17日目に5×10個の処置されたDCを腫瘍部位に注射した。腫瘍増殖を定期的にモニターし、各群の平均をプロットした(図35)。
【0258】
骨髄由来DCを、最初に、熱ショックされ、照射されたB16腫瘍細胞を用いてin vitroで4時間パルス後、CpG(5μg/ml)のみまたはpl3キナーゼ(pl3K)阻害剤ウォルトマンニン(2.5μM)とともに24時間刺激した。C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、惹起後3、10および17日目に5×10個の処置されたDCを腫瘍部位に注射した。生存において、腫瘍増殖を定期的にモニターした(図36)。
【0259】
結果
結果は、Pl3キナーゼの存在下において腫瘍死細胞およびCpGでパルスしたDCの治療的投与が、腫瘍細胞およびCpGまたはpl3K阻害剤のみでパルスしたDCに比べ、治療効果が大きかったことを示す(図35)。さらにPl3キナーゼの存在下において腫瘍死細胞およびCpGでパルスしたDCの治療的投与が、腫瘍細胞およびCpGまたはpl3K阻害剤のみでパルスしたDCでの治療後に認められたものに比べs.c.B16腫瘍を有するマウスの生存を強化した(図36)。
【0260】
[実施例22] アジュバントとしてのCpGと併用するp38阻害剤は、無細胞pertussisワクチンの防御効果を強化する
材料および方法
マウスを無細胞pertussisワクチン(JNIH−3;FHAおよび無毒化されたpertussis毒素を含む)0.02ヒト用量のみを用いて、あるいはCpG(5μg)またはCpGおよびp38阻害剤であるSB203580(50μM)存在下において、2回(0および4週)腹腔内(i.p.)で免疫した。マウスを2週間後にBordetella pertussisのエアロゾルで惹起した。B.pertussis感染は、惹起後0、3、7、14および21日目にマウス4匹の群の肺におけるCFU計数により追跡した。肺を無菌で取り出し、氷上で、1%カゼインを有する滅菌生理食塩水1ml中でホモジナイズした。個々の肺の未希釈および段階希釈したホモジネート(100μl)をBordet−Gengou寒天プレートに3回スポットし、37℃にて5日間のインキュベーション後にCFU数を算出した。検出限界は、およそ0.6log10CFU/肺であった。
【0261】
結果
図37は、低用量の無細胞pertussisワクチンは、アジュバントとしてCpGを添加した時でも、マウスにおける防御性が低いが、p38阻害剤の共投与が防御効果を顕著に強化することを示す。CpGおよびp38阻害剤の存在下においてワクチンで免疫されたマウスの肺のB.pertussisCFUは、顕著に低下した。
【0262】
[実施例23] アジュバントとしてCpGを配合された無細胞pertussisワクチンに対する反応において、p38阻害剤は、IFN−ガンマを強化し、IL−10を低下する
材料および方法
マウスを無細胞pertussisワクチン(FHAおよび無毒化されたpertussis毒素を含むJNIH−3)0.02ヒト用量のみを用いて、あるいはCpG(5μg)またはCpGおよびp38阻害剤SB203580(50μM)の存在下において2回(0および4週)非経口により免疫した。マウスを2週間後にBordetella pertussisのエアロゾルで惹起した。惹起前後に取り出された脾臓単核細胞(2×10個/ml)をB.pertussis由来の精製線維状赤血球凝集素(FHA)またはPMA(250ng/ml;Sigma)および抗マウスCD3(1μg/ml;Pharmingen、サンディエゴ、米国)とともに、あるいは陰性対照として培地のみを用いて37℃および5%COにて培養した。上清を72時間後に取り出し、IL−10およびIFN−ガンマ濃度を2部位ELISA法により決定した(図38)。
【0263】
マウスを無細胞pertussisワクチン(FHAおよび無毒化されたpertussis毒素を含むJNIH−3)のみあるいはCpG(5μg)またはCpGおよびp38阻害剤であるSB203580(50μM)の存在下において2回(0および4週)i.p.免疫した。マウスを2週間後にBordetella pertussisのエアロゾルで惹起した。惹起14日後に取り出された脾臓単核細胞(2×10個/ml)をブレファルジンAの存在下において、PMA(250ng/ml;Sigma)およびイオノマイシン(1μg/ml)を用いて37℃および5%COにて培養した。4時間後、細胞内IL−10を、特異的抗体を使用して免疫蛍光分析により決定し、FACSにおいて分析した(図39)。
【0264】
結果
結果は、p38阻害剤が、アジュバントとしてのCpGとともに無細胞pertussisワクチンで免疫後のIFN−ガンマを強化し、IL−10反応を低下させたことを示した(図38および図39)。
【0265】
[実施例24] アジュバントとしてCpGを配合された無細胞pertussisワクチンへのp38阻害剤の添加は、マウスのB.pertussis惹起後の局所IL−1ベータを強化する
材料および方法
マウスを非細胞pertussisワクチン(FHAおよび無毒化されたpertussis毒素を含むJNIH−3)のみあるいはCpG(5μg)またはCpGおよびp38阻害剤SB203580(50μM)の存在下において2回(0および4週)i.p.免疫した。マウスを2週間後にBordetella pertussisのエアロゾルで惹起した。惹起4時間後に肺を取り出し、ホモジナイズし、IL−1ベータ濃度をELISA法により決定した。
【0266】
結果
図40は、ワクチン接種中のp38の阻害が免疫化マウスのB.pertussis惹起後の局所炎症性反応を強化することを示す。アジュバントとしてCpGを配合された無細胞pertussisワクチンへのp38阻害剤の添加は、B.pertussis惹起後の肺の局所IL−1ベータを強化した。
【0267】
[実施例25] 腫瘍ワクチン、TLR作動薬およびp38阻害剤を用いた治療的免疫化は、マウスのB16腫瘍増殖を低下させる
材料および方法
C57BL/6マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、ベヒクルのみ(未処置)、熱ショックされ照射されたB16腫瘍細胞(1×10個)のみまたはCpG(10μg)とともに、あるいはCpGおよびp38阻害剤SB203580(50μg)とともに、惹起後3、5および7日目に腫瘍部位に注射した。マウスの腫瘍増殖を定期的にモニターした。
【0268】
結果
結果(図41)は、p38阻害剤の存在下においてアジュバントとしてCpGを有する死腫瘍ワクチンを用いた治療的免疫が、B16ワクチンのみまたはB16ワクチンおよびCpGによる治療後に認められたものに比べs.c.B16腫瘍を有するマウスの生存を強化することを示す。
【0269】
[実施例26] IL−10欠損マウスにおいて、腫瘍増殖は、顕著に悪化しない
C57BL/6またはIL−10欠損マウスを2×10個のB16腫瘍細胞を用いてs.c.で惹起し、17日後に腫瘍径を評価した。結果は、マウス5匹/群における平均の腫瘍の体積である。
【0270】
結果
結果(図42)は、腫瘍増殖がIL−10欠損マウスにおいて顕著に悪化しないことを示す。それゆえ、IL−10は、抗炎症性反応の媒介における、単独のメディエーターではないことを示す。
【0271】
本明細書において参照した全ての文書は、参照として本明細書に組み込まれる。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の記載された実施例の種々の修正および変更が明らかであろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態に関して記載しているが、請求項に記載される本発明が、このような具体的な実施形態に過度に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである本発明を実施するための記載された様式の種々の修正は、本発明により包含されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】図1は、CT26腫瘍細胞がバイスタンダー抗原に対するT細胞の増殖およびIFN−ガンマ産生を阻害することを示す。
【図2】図2は、CT26腫瘍細胞がin vitroでTGF−ベータを、およびin vivoでIL−10を分泌することを示す。
【図3】図3は、腫瘍に浸潤しているT細胞の、強化されたIL−10、TGF−ベータおよびFoxp3mRNA発現を示す。
【図4−1】図4は、腫瘍部位のCD4およびCD8T細胞、マクロファージおよび樹状細胞によるIL−10産生を示す。
【図4−2】図4は、腫瘍部位のCD4およびCD8T細胞、マクロファージおよび樹状細胞によるIL−10産生を示す。
【図5】図5は、腫瘍上清が樹状細胞およびマクロファージのCox−2発現を誘導することを示す。
【図6】図6は、CpGがDCおよび腹腔マクロファージのCox−2発現を誘導することを示す。
【図7】図7は、Th1促進性TLRリガンドが、IL−10分泌性T細胞も誘導することを示す。
【図8−1】図8は、TLRリガンドが制御性T細胞の誘導を促進することを示す。
【図8−2】図8は、TLRリガンドが制御性T細胞の誘導を促進することを示す。
【図9】図9は、TLRリガンドがDC由来のIL−10およびIL−12産生を刺激することを示す。
【図10−1】図10は、DCのTLRリガンド誘導性IL−10産生がERKおよびp38MAPキナーゼの活性化を介して媒介されることを示す。
【図10−2】図10は、DCのTLRリガンド誘導性IL−10産生がERKおよびp38MAPキナーゼの活性化を介して媒介されることを示す。
【図10−3】図10は、DCのTLRリガンド誘導性IL−10産生がERKおよびp38MAPキナーゼの活性化を介して媒介されることを示す。
【図11】図11は、p38阻害剤のみまたはERK阻害剤との併用がCpG誘導性IL−10を抑制する一方、IL−12産生を増加させることを示す。
【図12】図12は、p38のみ、またはERK阻害剤と併用の、外来抗原およびCpGで刺激された樹状細胞への添加が、Th1の誘導能を強化し、IL−10分泌性T細胞の誘導を抑制することを示す。
【図13】図13は、p38、ERKおよびCox−2阻害剤の、外来抗原およびCpGで刺激された樹状細胞への添加が、Th1の誘導能を強化し、IL−10分泌性T細胞の誘導を抑制することを示す。
【図14】図14は、Cox−2の阻害がin vivoのCpG誘導性IL−10およびTGF−ベータを抑制することを示す。
【図15】図15は、Cox−2の阻害がCpG誘導性IL−27mRNAを強化する一方、流入領域リンパ節のIL−10mRNAを低下させることを示す。
【図16】図16は、Cox−2の阻害がCpG誘導性IL−10を抑制する一方、DCによるIL−12p40産生を増加させることを示す。
【図17】図17は、Cox−2の阻害がCpG誘導性IL−27mRNAを強化する一方、DCのIL−10mRNA発現を低下させることを示す。
【図18】図18は、Cox−2の阻害がCpG誘導性IL−12p35およびIL−12p40mRNA発現を強化する一方、DCのIL−10mRNA発現を低下させることを示す。
【図19】図19は、Cox−2阻害剤およびCpGの併用による治療が腫瘍増殖を低下させることを示す。
【図20】図20は、Cox−2阻害剤が腫瘍増殖におけるCpGの治療効果を強化することを示す。
【図21】図21は、Cox−2阻害剤およびCpGの併用治療が腫瘍惹起後のマウスの生存を強化することを示す。
【図22】図22は、Cox−2またはERK阻害剤が、樹状細胞腫瘍ワクチンの治療効果を強化することを示す。
【図23】図23は、Cox−2阻害剤が、樹状細胞HSP−70ワクチンの治療効果を強化することを示す。
【図24】図24は、Cox−2阻害剤およびHSP70ワクチンの併用がDC上のCD80発現を強化することを示す。
【図25】図25は、ERKの阻害が樹状細胞のTLR作動薬誘導性PGEを抑制することを示す。
【図26】図26は、Cox−2阻害剤が樹状細胞によるTLR作動薬誘導性PGEおよびIL−10産生を抑制することを示す。
【図27】図27は、p38の阻害がCpG誘導性PGE産生を低下させることを示す。
【図28−1】図28は、p38の阻害が腫瘍ワクチンおよびTLR作動薬で刺激された樹状細胞によるIL−10を抑制し、IL−12産生を強化することを示す。
【図28−2】図28は、p38の阻害が腫瘍ワクチンおよびTLR作動薬で刺激された樹状細胞によるIL−10を抑制し、IL−12産生を強化することを示す。
【図29】図29は、p38の阻害が樹状細胞ワクチンの治療効果を強化することを示す。
【図30−1】図30は、p38の阻害が腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスされた樹状細胞の治療効果を強化することを示す。
【図30−2】図30は、p38の阻害が腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスされた樹状細胞の治療効果を強化することを示す。
【図31】図31は、p38阻害剤の存在下において、腫瘍細胞ワクチンでパルスされた樹状細胞ワクチンの治療投与後のマウスの生存が強化したことを示す。
【図32】図32は、全腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスされた樹状細胞を用いた治療が腫瘍のT細胞IFN−ガンマ産生を強化することを示す。
【図33−1】図33は、B16ワクチン、CpGおよびp38阻害剤で処置された樹状細胞を用いた治療がCD4T細胞の頻度を強化するが腫瘍塊内の制御性T細胞の頻度を低下させることを示す。
【図33−2】図33は、B16ワクチン、CpGおよびp38阻害剤で処置された樹状細胞を用いた治療がCD4T細胞の頻度を強化するが腫瘍塊内の制御性T細胞の頻度を低下させることを示す。
【図34】図34は、CpGおよびp38阻害剤の経腫瘍性注射が生存を高めることを示す。
【図35】図35は、pl3K阻害剤が腫瘍ワクチンおよびCpGでパルスされた樹状細胞の治療効果を強化することを示す。
【図36】図36は、腫瘍ワクチン、CpGおよびpl3キナーゼ阻害剤でパルスされた樹状細胞の移入が増殖している腫瘍を有するマウスの生存を強化することを示す。
【図37】図37は、アジュバントとしてのCpGと併用するp38阻害剤が無細胞pertussisワクチンの防御効果を強化することを示す。
【図38】図38は、p38阻害剤は、アジュバントとしてCpGを配合した無細胞pertussisワクチンに対する反応においてIFN−ガンマを強化し、IL−10を低下させることを示す。
【図39】図39は、アジュバントとしてCpGを配合した無細胞pertussisワクチンに対する反応においてp38阻害剤がIL−10を低下させることを示す。
【図40】図40は、アジュバントとしてCpGを配合した無細胞pertussisワクチンへのp38阻害剤の添加が、マウスのB.pertussis惹起後に局所IL−1ベータを強化することを示す。
【図41】図41は、腫瘍ワクチン、TLR作動薬およびp38阻害剤を用いた治療的免疫がマウスにおけるB16腫瘍増殖を低下させることを示す。
【図42】図42は、腫瘍増殖がIL−10欠損マウスにおいて顕著に悪化しないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置のための組成物であって、当該組成物は、
(i)少なくとも1つのToll様受容体(TLR)作動薬および
(ii)前記免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質
を含み、当該阻害が、制御性T細胞の機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因する、組成物。
【請求項2】
前記免疫調節物質が前記免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害し、前記下流メディエーターが、ホスホイノシチドキナーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、p38、ERK、MEK1またはMEK2を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記免疫調節物質がホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤がLY294002またはウォルトマンニン(WMN)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫調節物質がシクロオキシゲナーゼ2阻害剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記シクロオキシゲナーゼ2阻害剤がセレコキシブ(NS−398)またはロフェコキシブである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫調節物質がMAPキナーゼタンパク質の機能を阻害する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫調節物質が、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1阻害剤およびMEK2阻害剤を含む群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記p38キナーゼ阻害剤が、SB203580、SB220025およびSB239063からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)阻害剤がU0126またはPD98059である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤がLY294002またはウォルトマンニン(WMN)である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫調節物質が、IL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12の産生を上方制御する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記Toll様受容体作動薬が、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838、R83、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含む群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
腫瘍細胞の生存を強化するよう機能する腫瘍細胞産物を阻害する、調節化合物をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記調節化合物が腫瘍増殖阻害産物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記調節化合物がアポトーシスの発症を促進する、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置のための医薬組成物であって、当該組成物は、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
前記免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質を、薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とともに含み、
当該阻害が、制御性T細胞の機能の選択的阻害または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因する、医薬組成物。
【請求項19】
前記免疫調節物質が前記免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記下流メディエーターが、ホスホイノシチドキナーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、p38、ERK、MEK1およびMEK2を含む群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記Toll様受容体作動薬が、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838、R83、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含む群から選択される、請求項18〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態を処置または予防する方法であって、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬の治療的に有用な量を投与するステップと、
免疫反応の抑制を阻害する少なくとも1つの免疫調節物質の治療的に有用な量を投与するステップであって、当該阻害は、制御性T細胞の機能の選択的阻害、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節に起因するステップと
を含む方法。
【請求項23】
Th1介在性免疫反応の強化が所望される状態の処置のための、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能を選択的に阻害して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって前記免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節物質
の使用。
【請求項24】
Th1介在性または他のエフェクターの免疫反応の強化が所望される状態の処置のための医薬品の調製における、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能を選択的に阻害して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって前記免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節物質
の使用。
【請求項25】
癌性または悪性状態を処置するための組成物であって、
(i)免疫反応を開始することができる少なくとも1つの腫瘍特異的抗原を含む組成物であって、前記反応は前記癌性または悪性状態に特異的である組成物、
(ii)少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
(iii)前記制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって前記免疫反応の抑制を阻害する免疫調節物質
を含む、組成物。
【請求項26】
前記腫瘍特異的抗原が、熱ショックタンパク質および癌細胞または癌性状態の個体由来の抗原ペプチドの複合体由来である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記免疫調節物質が前記免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記下流メディエーターが、ホスホイノシチドキナーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、p38、ERK、MEK1およびMEK2を含む群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫調節物質が、ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1阻害剤およびMEK2阻害剤を含む群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記免疫調節物質がIL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12の産生を上方制御する、請求項25〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記Toll様受容体作動薬が、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838、R83、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含む群から選択される、請求項25〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
腫瘍細胞の生存を強化するよう機能する腫瘍細胞産物を阻害する調節化合物をさらに含む、請求項25〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
癌性または悪性状態を処置する方法であって、それを必要とする被検体に、
抗癌ワクチンまたは抗原断片または少なくとも1つの腫瘍特異的抗原を含むその決定因子を投与するステップと、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬を投与するステップと、
治療的に有用な量の免疫調節物質を投与するステップであって、この免疫調節物質は、制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって前記免疫反応の抑制を阻害するステップと
を含む方法。
【請求項34】
癌もしくは悪性状態の治療のための医薬品の調製のための、
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
を含む組成物の使用。
【請求項35】
癌性状態の処置のためのワクチン組成物であって、
樹状細胞、
少なくとも1つの腫瘍細胞抗原、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
を含む、組成物。
【請求項36】
前記免疫調節物質が免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記下流メディエーターが、ホスホイノシチドキナーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、p38、ERK、MEK1およびMEK2を含む群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記免疫調節物質が、ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1阻害剤およびMEK2阻害剤を含む群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記免疫調節物質がIL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12の産生を上方制御する、請求項35〜38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記Toll様受容体作動薬が、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838、R83、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含む群から選択される、請求項35〜39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
腫瘍細胞の生存を強化するよう機能する腫瘍細胞産物を阻害する調節化合物をさらに含む、請求項35〜40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
癌性状態の処置のための、
樹状細胞、
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
の使用。
【請求項43】
癌性状態の処置のためのワクチン組成物の調製のための、
樹状細胞、
少なくとも1つの腫瘍特異的抗原、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
の使用。
【請求項44】
癌性状態の処置のためのワクチン組成物であって、
樹状細胞、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するような前記サイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
を含む、組成物。
【請求項45】
前記免疫調節物質が免疫反応の下流メディエーターの機能を阻害する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記下流メディエーターが、ホスホイノシチドキナーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、p38、ERK、MEK1およびMEK2を含む群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記免疫調節物質が、ホスホイノシチドキナーゼ3阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、ERK阻害剤、MEK1阻害剤およびMEK2阻害剤を含む群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記免疫調節物質がIL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12の産生を上方制御する、請求項44〜47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記Toll様受容体作動薬が、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838、R83、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosisを含む群から選択される、請求項44〜48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
腫瘍細胞の生存を強化するよう機能する腫瘍細胞産物を阻害する調節化合物をさらに含む、請求項44〜49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
癌性状態の処置のための、
樹状細胞、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
の使用。
【請求項52】
癌性状態の処置のためのワクチン組成物の調製のための、
樹状細胞、
少なくとも1つのToll様受容体作動薬および
制御性T細胞の機能の選択的阻害を介して、または少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを抑制し、少なくとも1つの炎症促進性サイトカインを上方制御するようなサイトカイン発現の調節によって免疫反応の抑制を阻害する、免疫調節化合物
の使用。
【請求項53】
癌または感染性疾患の処置に適切な被検体にTh1反応を誘導する方法であって、
エフェクター細胞機能を促進する表現型への樹状細胞の成熟を引き起こすために、ex−vivoにおいて、ワクチンおよび/またはTLR作動薬、ならびに自然免疫系の細胞によりIL−10および/またはTGF−ベータの産生を阻害および/またはIL−12産生を上方制御する免疫調節化合物の存在下で、単離した樹状細胞を疾患特異的抗原に暴露するステップと、
被検体に前記樹状細胞を投与するステップであって、それにより前記被検体に形成される免疫反応が、癌の発症または進行を予防し、あるいは病原体微生物の感染を予防し、それにより感染性疾患を予防するのに十分であるステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28−1】
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【図28−2】
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【図29】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図31】
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【図32】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2009−519234(P2009−519234A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542860(P2008−542860)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003951
【国際公開番号】WO2007/063421
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】