説明

癲癇発生の危険性の低減用および/または発作性疾患の治療用の組成物および方法

【課題】患者での癲癇発生の危険性低減および/または癲癇現象の緩和のための化合物およびそれを含む組成物の提供。
【解決手段】少なくとも以下の2種の成分が化学的に結合された化合物およびそれを含む組成物;a)ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体および塩類から選ぶビタミンB6に基づく成分;およびb)少なくとも1種の抗癲癇薬(AED)または抗痙攣性、神経保護性の薬剤または神経向性化合物または部分。該化合物の使用により、更に癲癇発現を予防し、癲癇発現を緩和すると共に癲癇薬の副作用を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は癲癇および関連疾患の治療と予防用の組成物および当該組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
癲癇は最も一般的な慢性神経性疾患の1つである。当該病気は再発性発作が特徴で、それは大脳ニューロンの異常および過剰活性から起こり、脳機能の発作的無秩序を生じる。癲癇の類型には部分的(症候性)および全身的突発性発作が含まれる。部分的癲癇は“局在関連”で、脳の限られた部位で起こる。癲癇の全身的様式は発作を起こす可能性のある遺伝的傾向以外、特定の脳傷害または病気では起こらない。全身的発作、大発作には強直間代性発作が含まれ、そこでは全身で痙攣を経験する。治療をしないと、癲癇は悪化して死に至る神経性緊急事態である癲癇重積症となる[Antiepiletic Drugs;eds.R.H.Levy,R.H.Mattson and B.S.Meldrum;4th Edition,Raven Press,NY,NY;Aicardi.Epilepsy in children,2nd edition.New York:Raven Press,1994:18−43]。突発性癲癇は関与している正確な遺伝的または生物化学的な欠陥については殆ど知られていない遺伝的疾患と思われる(Andermann In Genetic Basis of the Epilepsies,eds.Anderson VE,Hauser WA,Penry JK,Sing CF.New York:Raven Press 1982:355〜74;Anderson EV,Hauser WA.Genetics.In:Dam M,Gram L,ed.Comprehensive Epileptology.New York:Raven Press 1990:57〜76)。最近の研究は遺伝性素因は局在関連癲癇、特に外傷後癲癇を発生しやすくする可能性を示唆している。この型の癲癇では、頭部の損傷は病理的遺伝性因子が低浸透である病気を誘導する決定的な外因性因子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
世界中で5、300万を上回る人が癲癇で悩まされており、米国だけでも発作を生じた、またはいつか生じるであろう人が250万人いる。癲癇は主として子供や若者を冒す。新しい癲癇症状の50%近くが25歳より前に起こる。癲癇患者の約28%が抗癲癇治療に抵抗性のある難治性癲癇である。広いスペクトルの抗癲癇薬が癲癇治療に用いられている[Antiepiletic Drugs;eds.R.H.Levy,R.H.Mattson and B.S.Meldrum;4th Edition,Raven Press,NY,NY;Aicardi,Epilepsy in chldren,2d Edition,Raven Press,1994]。それにも係わらず、10年前に表明された目標、即ち現在市販の抗癲癇薬(AEDs)と同じ効果で、より毒性が低いAEDsを上市するという目標(Drugs and Market Development,1992,v.2,N3)は未だに達成されていない。
【0004】
“ピリドキシン依存型癲癇”として知られている癲癇の一つの特異な型は稀な(1:100000)常染色体性劣性遺伝性疾患として説明され、それは新生児および小児において重篤な痙攣を起こし、その後に知的傷害を起こす(Hunt et al.Pediatrics 1954;13:140;Rosenberg In:Medical Genetics MuKusic VA,ed.1995:73−8;Shideler Am.J.Med.Technol.1983;49:17−22;Scriver and Hutchison Pediatrics 1963;31:240−50)。
【0005】
当該技術分野ではピリドキシン依存癲癇はピリドキシンの投与で治療できると報告された(Aicardi,Epilepsy in children,2d Edition,Raven Press 1994:Epilepsy Problems Solving in Clinical Practice;eds.D.Schmidt S.C.Schachter;Martin Dunitz,2000).しかしながら、当該文献はピリドキシン依存癲癇を治療する治療方法は他の型の癲癇治療には適していないことを示唆している。
【0006】
ビタミンB6(ピリドキシン)はアミノ酸類、たんぱく質類、糖質類、脂質類、ホルモン類および神経伝達物質の代謝で重要な役目を果たしている(Lumeng L,Li TK.Mammalian vitamin B metabolism:regulatory role of protein−binding and the hydrolysis of pyridoxine 5'−Phosphate in storage and transport.In:G.P.Tryfiates,ed.Vitamin B,Metabolism and Role in Growth. Food & Nutirition Press,Inc.,Westport,CT 06880 USA,1980:27−51)。活性型であるピリドキサール−5'−リン酸(PLP)はトランスアミナーゼ類、デカルボキシラーゼ類およびリアーゼ類など哺乳類組織中の多くの酵素の補酵素である。神経伝達物質(例えばドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、チラミン、トリプタミン、タウリン、GABA(γ−アミノ酪酸)および間接的にはアセチルコリン)は同様にPLP依存酵素的反応で合成され、代謝される(検討用:Metzler Biochemistry,Academic Press,1977;Ebadi M.,Regulation and function of pyridoxine phosphate in CNS.Neurochem.Int 1981,3,181−206;Leklem 1988 Vitamin B6 metabolism and function in humans.In:Clinical and physiological Application of vitamin B6(Leklem & Reynolds eds.,)Alan R.Liss,NY,1988;Schideler Ch.Vitamin B6:An Overview.Am.J.Med.Technol.1983;49:17−22)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の要約)
本発明の好ましい実施形態によれば癲癇発生の危険性の低減および/または患者の癲癇性現象を軽減するための組成物が提供される。本発明の1つの好ましい実施形態では、当該組成物は抗癲癇薬(AEDs)および抗痙攣性、神経保護性、神経伝達物質および精神向性の部分の群から選択された他の化学的部分と化学的に結合したビタミンB6部分からなる化合物を含む。好ましくは、当該組成物の用量は、ビタミンB6部分もAED部分/抗けいれん部分もその部分の安全な最大用量より多く存在しないようにする。そのような化合物は以下の式で表わすことができ、:
【0008】
【化1】


式中R'はAED部分または抗痙攣性、神経保護性、神経伝達物質または神経向性の部分を表し、Rは−CHOH、−CHOおよび−CHNHからなる群より選んだもの;そしてそれらの医薬的に許容される塩である。
【0009】
本発明の他の好ましい実施形態では、当該組成物は:
(a)以下の式を有するビタミンB6:
【0010】
【化2】


式中でRは−CHOH、−CHOおよび−CHNHからなる群より選んだものであり、ビタミンB6化合物は単一投与ではその最大安全量未満で、その1日量は最大安全1日量以下で使用され、そして
(b)AEDまたは抗痙攣性、神経保護性の薬或いは神経向性化合物で、AEDまたは化合物は単一投与では最大安全用量以下およびその1日量が最大安全1日投与量以下で使用されるものの物理的混合物を含む。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態に従えば、上で説明した組成物は単一製剤で患者内にビタミンB6化合物および当該AED、抗痙攣性、神経保護性の薬或いは神経向性化合物が存在するような様式で患者に投与される。
【0012】
本発明は更に、治療を必要とする患者にピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体およびそれらの物質のいずれかの塩類からなる群より選んだ少なくとも1つの物質をピリドキシンの推奨される1日栄養所要量の約2から約500倍に相当する量で投与する治療法を提供する。少なくともそのような1つの物質は少なくとも1つのAED、抗痙攣性、神経保護性の薬または神経向性化合物と共に投与してもよい。
【0013】
本発明は少なくとも以下の成分(i)、(ii)および(iii)、即ち:
(i)ピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体およびそれらの物質のいずれかの塩類から選んだ少なくとも1物質;
(ii)少なくとも1つのAEDまたは抗痙攣性、神経保護性の薬或いは神経向性化合物;および
(iii)少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤の混和物、好ましくは混合物を含む医薬組成物も提供する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、当該混和物または混合物および/またはそれらの個々の成分を米国特許第6,156,347号で開示されているような従来のマイクロカプセル化手法を用いてマイクロカプセル化してもよい。この内容については参考で本明細書に組み込まれている。リポソーム類は当該技術分野で知られているように当該混合物またはその成分のマイクロカプセル化に利用することもできる。
【0015】
上記のように、1つの態様では本発明は物質の一定群の少なくとも1つを500mg/日以下の量、即ちピリドキシンの推奨されている1日栄養所要量の約2から約500倍のヒト患者への投与に関する。本明細書および請求項では、ピリドキシンの推奨される1日栄養所要量は転載したようにFood and Nutrition Board of the National Academy of Sciences−National Research Council(U.S.A),1968 revision、例えば、“The Pharmaceutical Basis of Therapeutics”,4th edition 1970,eds Goodman and Gilman(The Macmillan Company)が明らかにした所要量を意味する。分かりやすいように、関連データを下に転載する。
【0016】
ピリドキシンの推奨される1日栄養所要量
年齢
(幼児は除く) 量(mg)
幼児 2ヶ月まで 0.2
2〜6ヶ月 0.3
子供 6〜12ヶ月 0.4
1〜2 0.5
2〜3 0.6
3〜4 0.7
4〜6 0.9
6〜8 1.0
8〜10 1.2
男性 10〜12 1.4
12〜14 1.6
14〜18 1.8
18〜22 2.0
22〜35 2.0
35〜55 2.0
55〜75+ 2.0
女性 10〜12 1.4
12〜14 1.6
14〜18 1.8
16〜18 2.0
18〜22 2.0
22〜35 2.0
35〜55 2.0
55〜75+ 2.0
妊娠期 2.5
授乳期 2.5
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、危険性の高いヒト患者における癲癇発生の危険性を低下させる方法は、ピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能性誘導体とそれらの物質の何れかの塩類から選んだ少なくとも1つを当該患者に投与する処置を含み、その量はピリドキシンの推奨される1日栄養所要量の約2から約500倍に相当する。
【0018】
危険性の高いヒト患者は、例えば発作障害の家系を有する妊娠中または授乳期の女性;発作障害の家系を有する子供、特に約1〜5歳の年齢範囲の子供、それに次いで11から15歳の思春期の当該子供;熱性または呼吸停止の痙攣のような発作発現の個人歴を持つ子供;先天性傷害または仮死を、特に小児期または青春期の時代に経験した子供であろう。当該危険性の高いヒト患者はまた、例えば脳外傷を受けたことがあるヒトである可能性もあり、その症例では発現後にピリドキシンを好ましくは約1〜2年間上記の量投与される。本発明の他の好ましい実施形態において、危険性の高いヒト患者は過去に少なくとも1種のAEDでの治療過程を受け、その治療過程はそれ以来なされていないヒトである。そのような場合、ピリドキシンの投与過程は2〜20mg/kg,好ましくは4〜10mg/kgの用量で約1〜2年の期間続けることが好ましい。好ましくは、ピリドキシンの投与過程はAED治療過程の終了後、直ちに開始される。発作のない、意識消失および弛緩性癲癇[ILAE revised classification of epileptic seizures(1981)]など癲癇の幾つかの特異な型はピリドキシン治療が適していないことが示されていることに注意することが大切である。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、癲癇性発作の危険性を低下させ、癲癇の発生を緩和するとともにヒト患者におけるAEDsの副作用を和らげる方法は、癲癇と診断された患者にピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能性誘導体並びにそれらの物質のいずれかの塩類からなる群より選んだ少なくとも1種をピリドキシンの推奨される1日栄養許容量の約2から約500倍に相当する量で、1日当たりピリドキシン500mgを越えない量を投与する処置を含む。本発明の本実施形態では、前記の少なくとも1つの物質と共に、例としてフェニトインまたは他のヒダントイン類;フェノバルビツタールまたは他のバルビツール酸塩類、ピリミドン、カルバゼピンおよびオキサカルバマゼピン、バルプロ酸またはその誘導体;オキサゾリジン類;ベンゾジアゼピン類;フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリジン、ビガバトリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)から選んだ薬剤のような少なくとも1種の抗癲癇薬(AED)、他に使用されている何れか他のAEDまたは見込みあるAEDを併用投与するのが好ましい(“Antiepileptic Drugs”、4th Edition,Ed.by R.Levy,R.H.Mattson,B.S.Meldrum;Raven Press,NY、NY,1995)。AEDsとしては知られていない神経保護薬および神経向性薬をAEDsの代わりに上で挙げたものと組合せて使用してもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、癲癇の発現を予防し癲癇の発現と共にAEDsの副作用の両方を低減する方法は当該患者に:
(a)ピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体およびそれらの物質のいずれかの塩類からなる群より選ぶ少なくとも1種の物質を、ピリドキシンの推奨される1日栄養許容量の約2倍から約500倍に相当する量とともに
(b)上で特定したものから選ぶことができる少なくとも1種のAEDを投与する処置を含む。
【0021】
本発明の本実施形態では、当該ヒト患者は少なくとも1種のAEDでの治療過程を受けていなければならず、AED治療の中止期間にある患者である。これらの条件下で、ビタミンB6(または上で説明したその誘導体)との組合せで毎日投与されるAEDの量はビタミンB6またはその誘導体無しで毎日投与されるAEDの量より好ましいことに約10〜90%少ない。
【0022】
AEDがピリドキサール、ピリドキシアミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体類およびそれら物質のいずれかの塩類から選んだ少なくとも1種の物質と併用投与される本発明のこれらの実施形態では、そのとき併用投与は2種の成分を別々な投与の形をとってもよいことは理解されるであろう。しかしながら、2種の成分を錠剤、カプセル、糖衣錠またはシロップ或いは他のいずれかの処方の形状にして併用投与するのが一般的にはより便利であろう。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態に従えば、以下の混和物、好ましくは混合物:
(a)ピリドキサール、ピリドキサミンおよびピリドキシン、それらの医薬的に許容される機能的誘導体およびそれら物質のいずれかの塩類から選んだ少なくとも1種の物質;
(b)少なくとも1種のAED,神経保護薬または神経向性化合物、および
(c)少なくとも1種の担体、希釈剤または賦形剤、
を含む医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、当該混和物または混合物、および/またはその個々の成分は内容を参考文献で当該明細書に組み込んだ米国特許第6,156,347号にて開示してあるような従来のマイクロカプセル化手法を用いてマイクロカプセル化してもよい。リポソームも当技術分野で知られているように当該混合物またはその成分についてのマイクロカプセル化用に利用できる。当該担体、希釈剤または賦形剤は製剤技術にて知られているもので、当技術分野で知られているように投与の適切な方法、例えば経口投与、注射、経鼻投与、直腸投与、経皮投与または他の許容される投与方法に応じて選択される。
【0025】
本発明の医薬組成物において、(a):(b)の重量比は好ましくは約1:0.1から約1:1の範囲であり、治療の初めでは1:0.1で始まり、それからAEDの1回分は必要であれば約1:1の一定比率まで徐々に増量される。約1:1の比率での(a)と(b)の投与期間に引き続き、治療の終了まで(b)の1回分は次第に減少され、(a):(b)の比は相応して次第に約1:1から約1:0.1まで変化し、それから徐々に(b)の1回分が0までになって(b)は(a)により完全に置き換わる。これらの組成物は望ましくは用量単位の形態であって、それは全体で成分(a)および(b)のそれぞれの最大成人1日量以下、好ましくは成分(a)は約500mg以下および成分(b)の一般的成人1日量以下を含有している。
【0026】
当業者であれば明らかなように、一方で本発明は1日成人用量が適さないであろう個人(幼児および子供を含んでいる)の治療方法に関し、他方で成人および子供に関する1日量がいずれの場合でも1日分を分割投与で与えられるのであれば、本発明の用量単位は成分(b)の一般的成人1日量の一部分および成分(a)の最大1日量の一部分を含有することになろう。少なくとも1種のAEDは、例えばフェニトインまたは他のヒダントイン類;フェノバルビタールまたは他のバルビツール酸塩類、ピリミドン、カルバマゼピンおよびオキサカルバマゼピン、バルプロ酸またはその誘導体;オキサゾリジン類;ベンゾジアゼピン類;フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリジン、ビガバトリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(“Antiepileptic Drugs”、4th Edition,Ed.by R.Levy、R.H.Mattson,B.S.Meldrum;Raven Press,NY,NY,1995)とともに、使用されているいずれかの他のAEDまたは潜在的AEDから選ばれる。AEDsとしては知られていないが神経保護性化合物および神経向性薬も成分(b)として使用してもよい。
【0027】
本発明の医薬組成物の成分(b)の一般的な成人1日量につき上記の参照が行われた限りにおいて、ある既知のAEDに関してそのようなデータを再現するのに便利である(Antiepiletic Drugs 4th Ed.Ed.R.Levy,R.H.Mattson,B.S.Meldrum)。しかしながら、既知のAEDの利用を必要とする本発明の実施形態は同様に潜在的AEDs、神経保護性化合物または神経向性剤を含み本明細書では特定されていないか或いは示されていない薬剤も同じように利用できることは強調しなければならない。
【0028】
数種類の既知抗痙攣薬の標準的成人1日量
薬剤名 1日量
(mg/kg)
カルバマゼピン 5〜20
バルプロ酸 10〜20
フェニトイン 4〜7
ゾニザミド 8〜12
クロナゼパム 10〜40
【0029】
かくして、本発明は癲癇性発作の危険性を低減および/またはそれらを緩和するとともにAEDsの副作用を低くする新たな種類の組成物を提供する。本発明の組成物は神経保護性および抗痙攣性の性質を有する無毒な成分を含有することで、副作用の可能性を大きく低減することを特徴とする。当該組成物の活性は十分なので、従来の抗痙攣剤より比較的低い用量レベルで効果がある。
【0030】
“ピリドキシン依存型癲癇”として知られている癲癇型でのピリドキシンの投与による治療が当技術分野で報告されていることは注意すべきである(Hunt et al.Pediatrics 1954;13:140;Rosenberg In:Medical Genetics McKusic VA,ed.1995:73−8;Shideler Am.J.Med.Technol.1983;49:17−22;Scriver and Hutchison Pediatrics 1963;31:240−50)。当該文献はピリドキシン依存型癲癇治療の薬物療法が他の型の癲癇治療には適さないことを示唆している。本発明はそれとは対照的に当該病気の初期形態の予防と治療とともにピリドキシン依存型癲癇ではない癲癇型の再発予防での使用に適するものとしてピリドキシンのみを提供する。本発明に従えばAEDsと組合せたピリドキシンを、混合物または化学的に結合した部分のいずれかで、ピリドキシン依存型癲癇以外の病気の異なる局面で薬物治療に供する。しかしながら、ピリドキシン治療が適さない癲癇の幾つかの特定な形態、例えば発作のない、意識消失および弛緩性癲癇には、ピリドキシンとAEDsを混合物または化学的結合部分のいずれかの組合せで与える治療も同じように適さないことに注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、説明したようにNC−001、ビタミンB6、GABAまたはビタミンB6とGABAの組合せで治療した遺伝的癲癇性(EP)マウスにおけるPTZ誘導痙攣反応の評点を示す。
【図2】図2は5mg/kg、7.5mg/kgまたは10mg/kgのNC−001で処置した遺伝的癲癇性(EP)マウスにおけるPTZ誘導痙攣応答を示す。
【図3】図3は遺伝的癲癇性(EP)マウスに経口投与したNC−001の抗痙攣効果を示す。
【0032】
本発明を実施するための最良の方法
本発明によれば、1種類の化合物が癲癇発生の危険性を低減し、癲癇発生を緩和させるとともにAEDの副作用を低減させることが説明されている。本発明の好ましい実施形態によれば、当該組成物は(a)ビタミンB6の部分、(b)AEDの部分を含んだ化合物である。当該ビタミンB6の部分はAED、神経保護性または神経伝達性の物質或いは神経向性物質と化学的に結合し、以下の式で示されうる新規AEDを与える:
【化3】


式中R'はAEDの部分を示し、Rは−CHOH、−CHOおよび−CHNHからなる群より選ばれ、当該組成物はその最大安全用量以下の用量で使用される。
【0033】
当該AEDの部分はビタミンB6部分のピリジン核に付属する−CHOHまたは−OH基にエーテル化のような結合でビタミンB6部分に結合できるのであれば実際上いかなるAED(または他の上表された化合物)でもなりうる。制限なくおよび図示と実施例によれば、当該AED部分はフェナントインまたは他のヒダントイン類;フェノバルビタールまたは他のバルビツール酸塩類、ピリミドン、カルマゼピンおよびオキサカルマゼピン、バルプロ酸またはその誘導体;オキサゾリジン類;ベンゾジアゼピン類;フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリジン、ビガバトリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(“Antiepileptic Drugs”,4th Edition,Ed.by R Levy,R.H.Mattson,B.S.Meldrum;Raven Press,NY,NY,1995)とともに、使用されている他のいずれかのAEDまたは潜在的AEDをビタミンB6の前記−CHOH基と反応させることで得られるものである。神経伝達物質、神経保護性化合物および神経向性剤はAEDとしては知られていなくても上で言及したような組合せでAEDsの代わりに使用できる。
【0034】
従って、当該化学的に結合したビタミンB6部分とAED部分の好ましい用量範囲は成分の各々の安全最大1日量以下に制限される。成人および子供用のような1日量は分割投与で与えることができる。当該引用した用量で癲癇の痙攣の顕著な緩和をもたらし、そして/または癲癇の発生の危険性を顕著に低減するのに役に立つので、これら範囲内に留まるのが望ましい。得られたデータによれば、化学的に他の抗痙攣剤(または神経保護剤、神経伝達物質、神経向性剤)の一部分と結合したビタミンB6の部分は十分低い用量で効果が出るので不都合な副作用は最小化されるか或いは無くなる。
【0035】
いずれか特定の理論に拘束される積りはないが、上で説明したようなAEDsの多くは他のAEDとともに血流中に存在する場合、血液脳関門を通過するのは低い割合だけと考えられ、脳内にAEDの効果量を供するには血液中にこれらの化合物が比較的多量必要とされる。ビタミンB6は容易に消化管に吸収され、比較的容易に血液脳関門を通過するので、AEDとビタミンB部分を化学的に結合すればAEDが脳中において効果的濃度に達するのに必要とされるAEDの血流中の濃度はより低いと推定される。これにより多くが血流中のAEDの高濃度により引き起こされる副作用を少なくし、または無くして発作性疾患の効果的治療をもたらす。
【0036】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、ビタミンB6および抗痙攣性化合物は両成分が同時に患者に与えられるようなやり方で別々または物理的混合物にて投与できる。好ましくは、ビタミンB6およびAED化合物は単一処方にて与えられる。AEDに対するビタミンB6の好ましい重量比は治療開始時における増量期間での約0.1:1から治療型が一定したときの約1:1までの範囲である。AEDに対するビタミンB6の重量比の徐々なる増加は治療中止の時期では約1.0:0.1までにするのが推奨され、ピリドキシンのみでの長期治療で終了するのが好ましい。
【0037】
ビタミンB6化合物は以下の式を有し:
【化4】


式中Rは−CHOH、−CHOおよび−CHNHからなる群より選ばれる。当該AEDは、例えばフェニトインまたは他のヒダントイン類;フェノバルビタールまたは他のバルビツール酸塩類、ピリミドン、カルバマゼピンおよびオキサカルバマゼピン、バルプロ酸またはその誘導体類;オキサゾリジン類;ベンゾジアゼピン類;フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリジン、ビガバトリンまたは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)または他のAEDでよい。神経保護性または神経伝達物質の化合物および神経向性剤で、AEDsとしては知られていないものも上で言及したような組合せでAEDsの代わりに使用できる。
【0038】
ビタミンB6化合物の量のより好ましい範囲はビタミンB6を1日にkg体重当たり約2mgから約10mgで、各AEDの許容される最大1日量以下である。成人および子供の1日量は分割投与で与えることができる。引用した用量で癲癇発作を顕著に緩和し、そして/または癲癇発生の危険性を顕著に低減するので、これらの範囲に留まるのが非常に望ましい。ピリドキシンを伴う混合物の使用は混合物中に含まれるAEDの1日分を減少させることができるので、不都合な副作用は最小化されるか無くなる。
【0039】
本発明は、本発明による多くの化合物の合成が説明されている例示の実施例を参照することにより理解しやすくなるであろう。
【0040】
実施例
ビタミンB6とγ−アミノ酪酸(GABA)、キヌレン酸およびGABAとキヌレン酸両方との複合体のための合成のプロトコールは以下の実施例1〜3で例示される。しかしながら、同じような手順はピリドキシンまたはその誘導体を他の天然または非天然の生物的活性酸、例えば抗癲癇薬または他の神経保護性化合物および神経向性剤、天然または合成の神経伝達物質などに共有結合させるのに適用できることも理解すべきである。例えば、バルプロ酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)および4−アミノ−5−ヘキサン酸(ビガバクテリン)のような抗癲癇薬は実施例1から3で説明するようなものに似た合成手順でピリドキシンに化学的結合されるであろう。最終生成物は以下に示すように、例えばバルプロ酸とビタミンB6誘導体とのエステルのようなエステル類である:
【0041】
【化5】


バルプロ酸とビタミンB6誘導体とのエステル
バルプロ酸およびビタミンB6誘導体のエステル他の生物的活性化合物分子、例えば5−エチル−5−フェニル−2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオン(フェノバルビタール);5,5−ジフェニル−2,4−イミダゾリジンジオン(フェニトイン);5−エチルジヒドロ−5−フェニル−4,6−(1H,5H)ピリミジンジオン(ピリミドン);5H−ジベンズ[b,f]アゼピン(カルバマゼピン);2−フェニル−1,3−プロパンジオールジカルバメート(フェルバメート)などの(アミノ−)抗癲癇薬は同じようにピリドキシンへ化学的に結合できる。これらの分子合成の手順は以下に説明されるように3段階である:
1.実施例1で以下に示すように5−ブロモメチル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−2−メチルピリジン臭化水素酸塩(3)の合成、工程2。
2.以下に示すようなLi−アミノ誘導体類の合成:
R−NH+BuLi→R−NLi+BuH
式中でR−NHはアミノ基を有する抗癲癇薬を示している。
R−NH薬がフェニトインである反応を以下に例示する:
【0042】
【化6】


(Ph=フェニル)
3.ピリドキシン−(アミノ−)薬複合体の合成:
【0043】
【化7】

【実施例1】
【0044】
[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート二塩酸塩(=B6−GABA)の合成
[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート二塩酸塩の化学構造は以下である:
【0045】
【化8】


[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート二塩酸塩の合成は5段階の手順である。全ての合成された化合物はNMRおよび質量分析計の分析で特性化された。
1.3,4−ビス(ブロモメチル)−5−ヒドロキシ−6−メチルピリジン(2)の合成
【0046】
【化9】


第1段階では、ピリドキシン(1)(20g,0.097モル)を48%臭化水素酸(150ml)中で1時間還流させた。−15℃で結晶化した後、沈殿を分離し、アセトンで洗浄して乾燥した。収量は25g(68%)であった。
MS(ES):m/z295.95;297.93(M+H)
2.3−ブロモメチル−5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチルピリジン臭化水素酸(3)の合成
【0047】
【化10】


4,5−ビス(ブロモメチル)−3−ヒドロキシ−2−メチルピリジン(2)(3g、0.008モル)を水(24ml)中にて40分間45〜50℃で攪拌する。当該溶液をろ過し、減圧下で蒸発させた。得られた残渣をエタノールから結晶化した。収量は1.2g(50%)であった。ピリジン環でのブロモメチルの位置は2,6−ジクロロキノン−4−クロロイミドによる定性分析で実証した(Harris and Folkers(1939)J.Am.Chem.Soc.61:247)。M.p.158〜159℃。
H NMR(CDOD),δ:2.62(s.,3H),4.72(s.,2H),5.18(s.,2H),8.30(s.,1H)。MS(ES):m/z231.92;233.91(M+H)
3.4−三級ブチルオキシカルボニルアミノ酪酸(Boc−GABA)
NH(CHCOOH+BocO→Boc−NH−(CHCOOH
(4)
式中BocO=[COC(CH
100mlの水溶液中の4−アミノ酪酸(GABA)(5.15g,0.05モル):NaOH(1:1 容量/容量)を氷水浴で攪拌した。ピロ炭酸ジ三級ブチル(11.99g,0.055モル)を同じ温度にて添加した。当該反応混合物を室温で1時間攪拌した。当該溶液を減圧下で約70mlまで濃縮し、氷水浴中にて冷却し、酢酸エチル(100ml)の層で覆った。その後KHSOの希薄溶液でpH2〜3の酸性とした。当該水相を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。酢酸エチル抽出物を集め、水(2×70ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、減圧下で蒸発させた。当該収量は10.00g(98%)であった。
H NMR(DMSO−d),δ:1.37(s.,9H),1.60(m.,2H),2.19(t.,2H),2.92(t.,2H)。MS(ES):m/z202.08(M−H)
4.[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレートの合成
【0048】
【化11】


4−三級ブチルオキシカルボニルアミノ酪酸(4)(2.03g,0.01モル)および炭酸セシウム(4.89g,0.015モル)を乾燥DMSO(50ml)中アルゴン下室温で1.5時間攪拌した。3−ブロモメチル−5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチルピリジン臭化水素酸塩(3)を当該反応混合物に加えた。得られた褐色の溶液を室温で18時間放置した。次の日、当該溶液を水(150ml)で希釈し、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。酢酸エチル抽出物を集め、水(3×50ml)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。当該粗沈殿を勾配溶出方式のシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーで精製した。溶離液:クロロホルム(100%)、クロロホルム:酢酸エチル(50%:50%)、酢酸エチル(100%)。当該収量は1.0g(28%)であった。
H NMR(DMSO−d)δ:1.34(s.,9H)、1.60(m.,2H)、2.29(t.,2H)、2.32(s.,3H)、2.88(t.,2H)、4.66(s.,2H)、5.08(s.,2H)、7.87(s.,1H)。MS(ES):m/z355.28(M+H)
5.[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレートジ塩酸塩(6)の合成
【0049】
【化12】


酢酸エチル(7ml)中の5N HClの溶液を[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート(5)(1.8g、5.08ミリモル)の酢酸エチル(20ml)溶液に0℃で加えた。当該反応混合物を0〜5℃で2時間攪拌した。残留物化合物を分離し、メタノール−エーテルの混合液から結晶化した。当該収量は0.7g(42%)であった。
H NMR(CDOD)δ:1.95(m.,2H)、2.64(t.,2H)、2.65(s.,3H)、2.99(t.,2H)、5.09(s.,2H)、5.38(s.,2H)、8.22(s.,1H)。MS(ES):m/z255.13(M+H)
【実施例2】
【0050】
[3−(5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)ピリジル)]メチル−2−[(4−ヒドロキシ)キノリン]カルボキシラート(=B6−Kyn)の合成
[3−(5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)ピリジル)]メチル−2−[(4−ヒドロキシ)キノリン]カルボキシラートの化学構造は:
【0051】
【化13】


4−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸水和物(キヌレン酸(7))(1.80g、8.70ミリモル)および炭酸セシウム(4.25g、13.05ミリモル)の混合物を乾燥DMSO(70ml)中でアルゴン下室温にて1.5時間攪拌した。次いで3−ブロモメチル−5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチルピリジン臭化水素酸塩(3)(3.58g、11.42ミリモル)を加えた。得られた褐色の溶液を18時間室温で維持し、その後水(200ml)で希釈し、酢酸エチル(12×150ml)で抽出した。5℃で結晶化した後、当該沈殿を分離し、酢酸エチル、エーテルで洗浄し乾燥した。当該収量は0.25g(7.8%)であった。
H NMR(DMSO−d)δ2.36(s.,3H)、4.77(s.,2H)、5.47(s.,2H)、6.60(s.,1H)、7.37(t.,1H)、7.69(t.,1H)、7.89(d.,1H)、8.05(s.,1H)、8.06(d.,1H)。MS(ES):m/z341.17(M+H)
【0052】
【化14】

【実施例3】
【0053】
5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチル−ピリド−3−イル)メチル[4−(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)ブチレート(B6−GABA−Kyn)の合成
3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチル−ピリド−3−イル)メチル[4−(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)ブチレートの化学構造は以下である:
【0054】
【化15】


1.4−(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)酪酸(10)の合成
BSA(N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド)(3.26ml、13.20ミリモル)を4−アミノ酪酸(GABA)(0.62g、6.00ミリモル)の乾燥ジクロロメタン(10ml)懸濁液に加え、当該混合物を50℃で6時間攪拌した。得られた溶液を、キヌレン酸(7)(0.95g、5.00ミリモル)、EtN(1ml)、EtOCOCl(0.5ml,5.25ミリモル)から乾燥DMF中にて−20℃で20分間温置して調製した混合の無水物に加えた。当該反応混合物を−5℃で2時間攪拌し、更に18時間4℃で維持した。水(50ml)および酢酸エチル(30ml)をその後に加えた。キヌレン酸を伴う混合物中にある当該化合物(10)を水相から分離した(0.5g)。
H NMR(DMSO−d)δ1.79(m,2H),2.28(t,2H),6.67(s,1H),7.33(t,1H),7.67(t,1H),7.91(d,1H),8.05(d,1H),9.00(s,1H),11.78(s,1H):m/z273.06(M−H)
【0055】
【化16】


2.(5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチル−ピリド−3−イル)メチル[4−(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)]ブチレート(11)
化合物(10)(0.47g,1.71ミリモル)および炭酸セシウム(0.89g,2.74ミリモル)を乾燥DMSO(40ml)中にて室温、アルゴン下で1.5時間攪拌した。化合物(3)(0.72g,2.30ミリモル)をその後に添加した。生じた褐色の溶液を18時間室温で維持し、水(120ml)で希釈し、酢酸エチル(5×100ml)で抽出した。5℃で結晶化した後、沈殿を分離し、酢酸エチル、エーテルで洗浄して乾燥させた。当該収量は0.04gであった。
H NMR(DMSO−d)δ:1.82(m,2H)、2.48(s,3H)、2.50(t,2H)、4.79(s,2H)、5.28(s,2H)、6.79(s,1H)、7.37(t,1H)、7.69(t,1H)、7.93(d,1H)、8.05(s,1H)、8.06(d,1H),9.03(s,1H);m/z 424.08(M−H)
【0056】
【化17】

【実施例4】
【0057】
GABAと化学的に結合したピリドキシン(NC−001化合物)の抗痙攣効果
GABAと化学的に結合したピリドキシン、[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート二塩酸塩(=B6−GABA複合体;NC−001化合物とも称する)の抗痙攣効果を遺伝的癲癇の動物モデルで試験を行った。
使用した動物モデルはBALB/cマウス系統から選択的に品種改良した癲癇性(EP)亜系マウス(Dolina et al.Epilepsia(1993)43:33〜42)を使用した。EPマウスは遺伝的に高めた発作への感受性を有することが特徴的である。
EPマウスは生理食塩水に溶かしたペンチレンテトラゾール(PTZ)50〜60mg/kgを腹膜内(i.p.)注射で誘導した発作を受けた。当該EP動物はPTZ注射の10から60分前に試験を行った化合物類で腹膜内処理された。
当該試験化合物は以下のものである:
1)NC−001 10mg/kg
2)ピリドキシン塩酸塩(=ビタミンB6) 10mg/kg
3)GABA 10mg/kg
4)別々に注射したビタミンB6およびGABA 10mg/kg。
PTZのみ注射し、更なる処置がないEP動物の群を対照群とした。
各群に対するPTZ誘導の痙攣反応の強度は以下の等級に従って評価した:
等級でのPTZ誘導痙攣反応の強度
1.数度の筋間代性れん縮(10回未満)
2.20回未満のれん縮
3.30回未満のれん縮
4.30〜40回のれん縮/れん縮およびジャンプ/短い部分的痙攣
5.途切れがないれん縮/一連のれん縮およびジャンプ/繰返す部分的痙攣
5.5 不全全身性痙攣
6.単発的全身性痙攣発作
7.一連のれん縮、ジャンプおよび単発的全身性痙攣発作;更なる運動性興奮を伴う単発的全身性痙攣
7.5 重度な持続的全身性痙攣
8.繰返す全身性痙攣
9.一連のれん縮/ジャンプ及び繰返す痙攣
10.癲癇重積症
11.致死的痙攣
EP動物の各群において、発作誘導剤の投与に引き続く最初の30分間における痙攣反応を記録した。
図1で示すように、当該複合化合物NC001をPTZ注射前30分に注射すると痙攣症状をほぼ完全に予防した。6匹の試験マウスの内4匹はいかなる痙攣反応も示さず、他の2匹はわずかに数度の痙攣性れん縮のみを示した。同じ試験設定のもとでGABAのみと共にGABAおよびビタミンB6の両方を組合せた同時注射では10mg/kgの試験1日分でいかなる抗痙攣効果も示さなかった。ビタミンB6そのものはPTZ誘導全身痙攣に対してはいくらかの予防作用を示した。
【実施例5】
【0058】
NC−001の抗痙攣効果は用量依存性がある
更に本発明の化合物の抗痙攣活性を特徴づけるために、NC−001、即ちGABAと化学的に結合したピリドキシンの異なる量の1回分で試験した。
一群3〜5匹の遺伝的癲癇性(EP)BALB/cマウスに対し、PTZ(60mg/kg)を腹腔内注射する前にNC−001につき5mg/kg、7.5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかを腹腔内投与した。PTZ注射の後30分の間における各動物の発作の数をその後に記録した。処置群の各々について痙攣反応の強度を評点化した。
図2で分かるようにNC−001化合物は用量依存性の抗痙攣予防効果を示した。腹腔内(i.p.)注射したNC−001は5mg/kgで既に予防効果が誘導された;本化合物で処理した4匹のEPマウスの2匹のみが全身性痙攣を示したが、他の2匹は多くのれん縮を示した。7.5mg/kgの用量では3匹の処置EPマウスの全てにおいてNC−001は全身性PTZ誘導の痙攣を予防したが、その全てにおいて多くのれん縮が観察された。NC−001の10mg/kgを一回分で注射すると、全身性痙攣反応を完全に予防したが、EPマウスの1匹に単回のれん縮が起こった。
結論:NC−001は増進された発作素因で特徴付けられる遺伝的癲癇性動物を効果的にPTZ誘導の痙攣から予防する。当該抗痙攣効果は用量依存性がある。
【実施例6】
【0059】
NC−001化合物は経口投与するとき抗痙攣効果を示す
当該B6−GABA複合体化合物のGIバリアーを通過する性能を試験するために痙攣性(EP)マウスにNC−001を経口投与した。
12匹の雌EPマウスの群に50mg/kgのPTZを腹腔内処置して発作を誘導した。PTZ投与の30分前に4匹の動物(=処置群)に30mg/kgの一回分でNC−001を経口投与し、他の8匹の動物は賦形剤のみで処置し、対照群として供した。腹腔内PTZ投与後の30分間において全12匹の動物につき痙攣反応の強度を評点化した(実施例4において上で見られるような痙攣反応評点の表を参照)。
図3で見ることができるように、NC−001化合物を経口投与したEPマウスにおいて顕著な保護効果が示された。
【実施例7】
【0060】
ピリドキシンとAEDとの物理的混合物およびその試験
(a)ピリドキシン塩酸塩および(b)AEDの物理的混合物を調製した。それは癲癇に悩んでいる患者に同時にまたは実質的に同時に投与する。(a):(b)の重量比は治療の初期では約0.1:1から1:1の範囲で、治療の終了時で1:0.1である。これらの組成物は望ましくは用量単位の様式で、それは全体で成分(a)および(b)につきそれぞれの安全最大成人1日量以下を含有し、好ましくは成分(a)は1日量2〜10mg/kg、特に4〜7mg/kgにて約500mg以下で、成分(b)の一般的成人1日量以下を含有する。
当該混合物は癲癇発生の危険性を低減するか、または癲癇発生を緩和し、AEDの毒性を低下させる。混合物は錠剤、カプセル、シロップ、マイクロカプセル、リポソームの型、またはいずれか他の医薬的に許容される形状の形で投与することができる。
【実施例8】
【0061】
ピリドキシンと共にAEDを同時投与する例としてのピリドキシン補完フェニトイン
フェニトイン(PHT)は全身的強直性−慢性の全身性痙攣、複雑な部分発作および単純な部分発作の薬物療法に記載されている。本発明による当該混合物の効能は音の刺激で全身痙攣を起こす遺伝的癲癇−聴原性感受性ラットで示された。試験では100dbの強度の音刺激を使用した。
音刺激への発作感受性はピリドキシンで長期処理された聴原生ラットの2群で試験を行った。ラットの1群はピリドキシン(飲料水中に75mg/kg)で長期処置された。第2群にはピリドキシン未処理ラットが含まれていた。当初PHT75mg/kgを注射し、次いで1日1回PHT50mg/kgを12回連続で注射した。各群には11匹のラットを用いた。音誘導の痙攣の発生および強度は13日目および14日目においてラットの両群にて比較評価したので、各動物につき試験を2回行った。
当該実験は、ピリドキシン処置EPラットの群では22匹の被試験体の2匹(9%)のみが音誘導痙攣を生じる一方、PHTのみ(ピリドキシン非処置)で処置した動物群では6匹(27.3%)が痙攣反応を起こした。更に、同じ用量のPHTを長期に与えるとピリドキシン処置動物では非処置EPラットと比較して評点で評価した音誘導の動物痙攣の強度は極端に低かった。そこで、高用量のピリドキシンの同時投与は癲癇性動物における長期PHT投与の効能を顕著に増加させることを示した。
【実施例9】
【0062】
ピリドキシンの同時投与によるPHT毒性の低減
実施例8において記述したピリドキシン処置および非処置群両方の屠殺動物を検査した。圧縮された肝臓、肺における出血領域および肥大した副腎のようなPHT毒性の症状がPHTのみで長期処置された11匹のEPラット全てに見られたが、ピリドキシン(飲料水中に75mg/l)同時投与でPHTの同じ1日分を与えられたラットには見られなかった。そこで、当初1日分75mg/kgを注射し、次いで1日50mgの用量で12日間長期に与えられたPHTの毒性をピリドキシンの同時投与は低減させた。
【実施例10】
【0063】
組成物の使用
上記実施例の各々の組成物を各成分について最大安全用量以下の用量で被験体に使用して癲癇の痙攣を緩和し、抑制させる。当該組成物の各々につきこの濃度範囲において癲癇の抑制および緩和にて顕著な活性を示す。
【0064】
上記実施例は本発明による種々な組成物の合成および効能を例示する。
【0065】
本発明はその特定な実施形態との関係で説明したが、更なる変更ができることおよび本出願は一般的には本発明の原理に従い、そして本発明に関連する技術分野における既知または習慣的な慣例内で発生するような本開示からの逸脱および以前に本明細書で説明した本質的特長を含む本発明のいかなる変形、用途または適用に及ぶ意図があることは理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物で:
【化1】


式中R'はγ−アミノ酪酸のアシルオキシ基、キヌレン酸のアシルオキシ基、(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)ブチレート、バルプロ酸のアシルオキシ基、ガバペンチンのアシルオキシ基、ビガバトリンのアシルオキシ基、フェニトイン(5,5−ジフェニルイミダゾリジン 3−イル−2,4−ジオン)又は他のヒンダトインのイミダゾリジン 3−イル基、フェノバルビタール(5−エチル−5−フェニルピリミジン 3−イル−2,4,6−トリオン)又は他のバルビツレートのピリミジン 3−イル基、及びピリミドンのピリミジン 3−イル基からなる群より選ばれる抗癲癇薬(AED)の部分を表し;Rは−CHOH、−CHOおよび−CHNHからなる群より選ばれる化合物およびそれらの医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式中R'はγ−アミノ酪酸のアシルオキシ基、キヌレン酸のアシルオキシ基、又は(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)ブチレートから選ばれる、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
[5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)−ピリド−3−イル]メチル−4−アミノブチレート、[3−(5−ヒドロキシ−6−メチル−4−(ヒドロキシメチル)ピリジル)]メチル−2−[(4−ヒドロキシ)キノリン]カルボキシラート、及び5−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−6−メチル−ピリド−3−イル)メチル[4−(4−ヒドロキシキノリン−2−カルボニルアミノ)ブチレートからなる群より選ばれる、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の一般式(I)の化合物の治療的効果量および医薬的に許容される担体または賦形剤を含んでいる医薬組成物。
【請求項5】
一般式(I)の化合物における付随する抗癲癇薬(AED)の最大安全量以下である投与量で採用される組成物である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1記載の一般式(I)の化合物の治療的効果量を含む、癲癇を治療するための医薬。
【請求項7】
請求項1記載の一般式(I)の化合物の治療的効果量を含む、癲癇発現の予防、癲癇発現の緩和および/または抗癲癇薬の副作用を低減するための医薬。
【請求項8】
経口投与される請求項6又は7記載の医薬。
【請求項9】
医薬組成物を調製するための請求項1に記載の一般式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
前記医薬組成物が癲癇の治療用である、請求項9記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201910(P2011−201910A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122141(P2011−122141)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【分割の表示】特願2006−523115(P2006−523115)の分割
【原出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(500138283)ディ − ファーム リミテッド (3)
【出願人】(500522345)アドバンスト ニューロプロテクティブ システムズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED NEUROPROTECTIVE SYSTEMS LTD.
【住所又は居所原語表記】Kiryat Weizman Science Park 70400 Nes Ziona Israel
【Fターム(参考)】