説明

発光ダイオード

【課題】均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる発光ダイオードを提供する。
【解決手段】発光ダイオード1Aは、窒化ガリウム基板15と、窒化物半導体からなり窒化ガリウム基板15の主面15a上に設けられた活性層5と、希土類元素を含む窒化物半導体からなり、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbをそれぞれ発する第1〜第3窒化物半導体層11〜13を有する発光層10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、青色発光ダイオード(LED)や紫外LEDといった短波長のLEDと、これらのLEDからの光によって蛍光を発する蛍光体とを用いた白色発光デバイスが盛んに開発され、実用化されている。図7は、特許文献1に記載された白色発光デバイスの構成を示す側断面図である。図7に示す白色発光デバイス100は、支持基体101と、支持基体101の上に搭載されたフリップチップ型の青色LED102と、青色LED102の周囲を封止する蛍光体層103とを備えており、蛍光体層103は、黄色系蛍光体粒子104と、母材である透光性樹脂105との混合体からなる。そして、青色LED102から出射される青色光と、この青色光により黄色系蛍光体粒子104が励起され発生した黄色光とが合成され、白色光として取り出される。
【特許文献1】特開2007−235184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、蛍光体粒子を混合した樹脂を備える白色発光デバイスでは、LEDを樹脂で封止する際の厚みのばらつきや、樹脂内部における蛍光体粒子の分布の偏りによって、均一な色合いを有する白色光を得ることが難しい。また、樹脂は半導体より早く劣化するため、デバイスの長寿命化を妨げる一因となる。
【0004】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明による発光ダイオードは、窒化ガリウム基板と、窒化物半導体からなり窒化ガリウム基板の主面上に設けられた活性層と、希土類元素を含む窒化物半導体からなり、活性層において発生した光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ発する第1〜第3窒化物半導体層を有する発光層とを備えることを特徴とする。
【0006】
この発光ダイオードは、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層を備えており、この発光層は、活性層において発生した光(活性層が窒化物半導体からなるので、この光の波長はおよそ365[nm]〜440[nm]となる)を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発する。このように、活性層からの光により励起される発光物質(希土類元素)を半導体の内部に含ませることにより、該発光物質の均一な分布を容易に実現できると共に、樹脂を不要にできる。したがって、上記した発光ダイオードによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光、緑色光、及び青色光を発する半導体層をそれぞれ別個に設けることにより、例えば青色LEDの光と黄色の蛍光とを混合するタイプの白色発光デバイスと比較して、より演色性を高めることができる。
【0007】
また、発光ダイオードは、発光層の第1〜第3窒化物半導体層が、希土類元素としてそれぞれEu、Tb、及びErを含むことを特徴としてもよい。これにより、赤色光、緑色光、及び青色光を発する第1〜第3窒化物半導体層を好適に実現できる。
【0008】
また、発光ダイオードは、発光層の第1〜第3窒化物半導体層が、活性層に近い側から第1窒化物半導体層、第2窒化物半導体層、第3窒化物半導体層の順に配置されていることを特徴としてもよい。このように、発する光の波長が短い層ほど活性層から遠くなるように各層を配置することにより、第3窒化物半導体層から出た光が発光ダイオードの外部へ出力される際の第1、第2窒化物半導体層における吸収を防ぎ、且つ、第2窒化物半導体層から出た光が発光ダイオードの外部へ出力される際の第1窒化物半導体層における吸収を防ぐことができるので、所望の色合いの白色光を好適に得ることができる。
【0009】
また、発光ダイオードは、発光層が、窒化ガリウム基板の主面に希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴としてもよく、また、発光層が、窒化ガリウム基板の裏面に希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴としてもよい。或いは、発光層が、希土類元素をドーパントとして含み窒化ガリウム基板の主面と活性層との間に形成された層であることを特徴としてもよく、また、発光層が、希土類元素をドーパントとして含み活性層上に形成された層であることを特徴としてもよい。これらのうち何れかの構成によって、上記した第1〜第3窒化物半導体層を好適に実現できる。
【0010】
また、本発明による別の発光ダイオードは、窒化ガリウム基板と、窒化物半導体からなり窒化ガリウム基板の主面上に設けられた活性層と、希土類元素を含む窒化物半導体からなり、活性層において発生した光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ発する第1〜第3窒化物半導体領域を有する発光層とを備え、第1窒化物半導体領域は、窒化ガリウム基板の主面における第1の領域に希土類元素がイオン注入されて成り、第2窒化物半導体領域は、主面における第1の領域とは別の第2の領域に希土類元素がイオン注入されて成り、第3窒化物半導体領域は、主面における第1及び第2の領域とは別の第3の領域に希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴とする。
【0011】
この発光ダイオードは、窒化物半導体基板に希土類元素がイオン注入されてなる発光層を備えており、この発光層は、活性層において発生した光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発する。このように、活性層からの光により励起される発光物質(希土類元素)を半導体の内部に含ませることにより、該発光物質の均一な分布を容易に実現させ得ると共に、樹脂を不要にできる。したがって、この発光ダイオードによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光、緑色光、及び青色光を発する半導体領域をそれぞれ別個に設けることにより、演色性を高めることができる。
【0012】
また、上記した別の発光ダイオードは、発光層の第1〜第3窒化物半導体領域が、希土類元素としてそれぞれEu、Tb、及びErをイオン注入されて成ることを特徴としてもよい。これにより、赤色光、緑色光、及び青色光を発する第1〜第3窒化物半導体領域を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による発光ダイオードによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明による発光ダイオードの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態としての発光ダイオード1Aの構成を示す側断面図である。図1を参照すると、発光ダイオード1Aは、窒化ガリウム基板15を備えている。また、発光ダイオード1Aは、窒化ガリウム基板15の主面15a上に順に積層されたn型GaN層3及びn型AlGaN層4といった第1導電型窒化物半導体層を備えている。n型GaN層3は、n型の不純物(例えばSi)がドープされたGaNからなり、n型AlGaN層4は、n型の不純物(例えばSi)がドープされたAlX1Ga1-X1N(0<X1<1)からなる。また、発光ダイオード1Aは、n型AlGaN層4上に設けられた活性層5を備えている。また、発光ダイオード1Aは、活性層5上に順に積層されたp型AlGaN層6及びp型GaN層7といった第2導電型窒化物半導体層を備えている。p型AlGaN層6は、p型の不純物(例えばMg)がドープされたAlX2Ga1-X2N(0<X2<1)からなり、p型GaN層7は、p型の不純物(例えばMg)がドープされたGaNからなる。
【0016】
活性層5は、電流(キャリア)が注入されることにより光Luを発生する層である。本実施形態では、光Luの波長帯は例えば紫外から青紫色となる波長帯(365[nm]〜440[nm])であり、一実施例では380[nm]である。活性層5は、n型AlGaN層4上に形成されており、多重量子井戸構造を有している。具体的には、活性層5は、バリア層及び井戸層をそれぞれ複数有している。すなわち、活性層5は、バリア層及び井戸層が交互に積層されることにより構成されている。バリア層及び井戸層は、AlX3InYGa1-X3-YN(0≦X3<1、0≦Y<1、0<X3+Y<1)といった窒化物半導体からなる。本実施形態のバリア層の組成はX3>Y、一実施例ではX3=0.2且つY=0である。また、本実施形態の井戸層の組成はX3<Y、一実施例ではX3=0且つY=0.05である。このように、バリア層及び井戸層の組成は、バリア層のバンドギャップが井戸層のバンドギャップよりも大きくなるように調整されている。この構成により、活性層5に注入されたキャリアが井戸層に効率よく閉じ込められる。
【0017】
発光ダイオード1Aは、上記構成に加え、更にアノード電極8及びカソード電極9を備えている。アノード電極8は、p型GaN層7の活性層5と対向する面とは反対側の面上に設けられている。本実施形態では、アノード電極8は、p型GaN層7上のほぼ全面にわたって設けられている。アノード電極8は例えばNi/Au/Al/Auといった金属を順次積層してなり、アノード電極8とp型GaN層7との間でオーミック接触が実現されている。また、アノード電極8は、活性層5において発生した光Luを反射する機能も有している。
【0018】
カソード電極9は、n型GaN層3の窒化ガリウム基板15と対向する面とは反対側の面上において、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7が設けられた領域とは別の領域上に設けられている。カソード電極9は、例えばTi/Al/Auといった金属を順次積層してなり、カソード電極9とn型GaN層3との間でオーミック接触が実現されている。なお、カソード電極9は、窒化ガリウム基板15の裏面15b上の一部に形成されてもよい。
【0019】
窒化ガリウム基板15は、アンドープGaN、或いはn型GaNからなる。窒化ガリウム基板15の厚さは例えば100[μm]以上であることが好ましく、転位密度は1×108[cm-2]以下であることが好ましい。また、本実施形態では、窒化ガリウム基板15はその表面が(0001)結晶面を含むように形成されており、主面15aとしてガリウム面(Ga面)が用いられている。
【0020】
また、窒化ガリウム基板15における主面15a側の内部には、活性層5からの光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発生する発光層10が形成されている。発光層10は、窒化ガリウム基板15を構成するGaNの一部に希土類元素が含まれて成り、活性層5において発生した光Luを吸収して赤色光Lrを発する第1窒化物半導体層11と、光Luを吸収して緑色光Lgを発する第2窒化物半導体層12と、光Luを吸収して青色光Lbを発する第3窒化物半導体層13とを有している。
【0021】
第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、及び第3窒化物半導体層13は、それぞれ異なる希土類元素が窒化ガリウム基板15の主面15aにイオン注入されることによって形成された層である。具体的には、第1窒化物半導体層11はユウロビウム(Eu)が主面15aにイオン注入されて成り、第2窒化物半導体層12はテルビウム(Tb)が主面15aにイオン注入されて成り、第3窒化物半導体層13はエルビウム(Er)が主面15aにイオン注入されて成る。第1窒化物半導体層11のEuは、紫外光である光Luにより励起されて波長630[nm]〜760[nm]の赤色光を発光する。第2窒化物半導体層12のTbは、光Luにより励起されて波長520[nm]〜570[nm]の緑色光を発光する。第3窒化物半導体層13のErは、光Luにより励起されて波長440[nm]〜470[nm]の青色光を発光する。なお、第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、及び第3窒化物半導体層13の好適な厚さは、それぞれ50[μm]〜200[μm]である。
【0022】
これらの窒化物半導体層11〜13は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、第3窒化物半導体層13の順に配置されている。すなわち、第3窒化物半導体層13のイオン注入深さが最も深く、次いで第2窒化物半導体層12のイオン注入深さが深く、第1窒化物半導体層11のイオン注入深さが最も浅い。
【0023】
なお、窒化ガリウム基板15の厚さは、これらの窒化物半導体層11〜13から出射される赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを十分に透過できる厚さであることが好ましい。
【0024】
このような構成を備える発光ダイオード1Aの作製方法の一例を以下に説明する。まず、厚さ100[μm]以上、転位密度1×108[cm-2]以下の(0001)GaNウェハのGa面側に、Er、Tb、及びEuを深さを変えて1×1020[cm-3]ずつイオン注入することにより、第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、及び第3窒化物半導体層13からなる発光層10を形成する。次に、このGaNウェハをMOCVD炉の中におき、炉の内部を窒素(N2)及びアンモニア(NH3)雰囲気として1000[℃]で30分間のアニールを行い、GaNウェハの表面におけるイオン注入された領域の結晶性を回復させる。
【0025】
続いて、GaNウェハのGa面上に、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7を順次成長させる。そして、n型GaN層3を除く各層4〜7の一部をエッチングにより除去して露出したn型GaN層3の表面にカソード電極9を形成するとともに、残存したp型GaN層7上にアノード電極8を形成する。或いは、各層4〜7をエッチングせずに、p型GaN層7上にアノード電極8を形成し、GaNウェハの裏面上にカソード電極9を形成してもよい。その後、GaNウェハをチップ状に切断することにより、本実施形態に係る発光ダイオード1Aが作製される。
【0026】
この発光ダイオード1Aをフリップチップ実装し、アノード電極8とカソード電極9との間に電流を流すと、活性層5において紫外光(光Lu)が発生する。この光Luが発光層10に達すると、第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、及び第3窒化物半導体層13のそれぞれにおいて吸収され、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbが発生する。これらの光Lr、Lg、及びLbは、窒化ガリウム基板15を透過して発光ダイオード1Aの外部へ出射されるとともに、互いに合成されて白色光となる。
【0027】
本実施形態の発光ダイオード1Aが奏する効果について説明する。発光ダイオード1Aは、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層10を備えており、この発光層10は、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する。このように、活性層5からの光Luにより励起される発光物質(希土類元素)を半導体の内部に含ませることにより、該発光物質の偏在を抑えて均一な分布を容易に実現できると共に、従来の白色発光デバイスで用いられていた樹脂を不要にできる。したがって、本実施形態の発光ダイオード1Aによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する半導体層を、第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、及び第3窒化物半導体層13としてそれぞれ別個に設けることにより、例えば青色LEDの光と黄色の蛍光とを混合するタイプの白色発光デバイスと比較して、演色性をより高めることができる。
【0028】
また、本実施形態のように、発光層10の第1窒化物半導体層11が希土類元素としてEuを含み、第2窒化物半導体層12が希土類元素としてTbを含み、第3窒化物半導体層13が希土類元素としてErを含むとよい。これにより、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する第1〜第3窒化物半導体層11〜13を好適に実現できる。
【0029】
また、本実施形態のように、発光層10の第1〜第3窒化物半導体層11〜13は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層11、第2窒化物半導体層12、第3窒化物半導体層13の順に配置されているとよい。このように、発する光の波長が短い層ほど活性層5から遠くなるように窒化物半導体層11〜13を配置することにより、第3窒化物半導体層13から出た赤色光Lrが発光ダイオード1Aの外部へ出射する際に第1窒化物半導体層11及び第2窒化物半導体層12に吸収されることを効果的に防ぎ、且つ、第2窒化物半導体層12から出た緑色光Lgが発光ダイオード1Aの外部へ出射する際に第1窒化物半導体層11に吸収されることを効果的に防ぐことができる。したがって、所望の色合いの白色光を好適に得ることができる。
【0030】
また、本実施形態のように、窒化ガリウム基板15として転位密度1×108[cm-2]以下の低転位基板を用いることによって、各半導体層3〜7の低転位化を図り、発光強度を高めることができる。
【0031】
続いて、本発明の第2〜第6実施形態について説明する。なお、以下の説明では、各実施形態の発光ダイオードと第1実施形態の発光ダイオード1Aとの構成上の相違点について主に説明し、同様の構成を備える点については詳細な説明を省略する。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2実施形態としての発光ダイオード1Bの構成を示す側断面図である。図2を参照すると、発光ダイオード1Bは、第1実施形態の窒化ガリウム基板15に代えて、窒化ガリウム基板16を備えている。窒化ガリウム基板16は、アンドープGaN、或いはn型GaNからなる。窒化ガリウム基板16の厚さは例えば100[μm]以上であることが好ましく、転位密度は1×108[cm-2]以下であることが好ましい。また、本実施形態では、窒化ガリウム基板16はその表面が(0001)結晶面を含むように形成されており、主面16aとしてガリウム面(Ga面)が用いられている。そして、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7は、窒化ガリウム基板16の主面16a上に積層されている。
【0033】
窒化ガリウム基板16における裏面16b側の内部には、活性層5からの光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発生する発光層20が形成されている。発光層20は、窒化ガリウム基板16を構成するGaNの一部に希土類元素が含まれて成り、活性層5において発生した光Luを吸収して赤色光Lrを発する第1窒化物半導体層21と、光Luを吸収して緑色光Lgを発する第2窒化物半導体層22と、光Luを吸収して青色光Lbを発する第3窒化物半導体層23とを有している。
【0034】
第1窒化物半導体層21、第2窒化物半導体層22、及び第3窒化物半導体層23は、それぞれ異なる希土類元素が窒化ガリウム基板16の裏面16bにイオン注入されることによって形成された層である。具体的には、第1窒化物半導体層21はEuが裏面16bにイオン注入されて成り、第2窒化物半導体層22はTbが裏面16bにイオン注入されて成り、第3窒化物半導体層23はErが裏面16bにイオン注入されて成る。なお、これらの窒化物半導体層21〜23の発光波長および厚さは、第1実施形態の窒化物半導体層11〜13と同様である。
【0035】
窒化物半導体層21〜23は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層21、第2窒化物半導体層22、第3窒化物半導体層23の順に配置されている。すなわち、第1窒化物半導体層21のイオン注入深さが最も深く、次いで第2窒化物半導体層22のイオン注入深さが深く、第3窒化物半導体層23のイオン注入深さが最も浅い。
【0036】
なお、窒化ガリウム基板16は、活性層5から出射される光Luを十分に透過できる厚さであることが好ましい。
【0037】
このような構成を備える発光ダイオード1Bの作製方法の一例を以下に説明する。まず、厚さ100[μm]以上、転位密度1×108[cm-2]以下の(0001)GaNウェハの窒素面(N面)側に、Eu、Tb、及びErを深さを変えて1×1020[cm-3]ずつイオン注入することにより、第1窒化物半導体層21、第2窒化物半導体層22、及び第3窒化物半導体層23からなる発光層20を形成する。次に、このGaNウェハをMOCVD炉の中におき、炉の内部を窒素(N2)及びアンモニア(NH3)雰囲気として1000[℃]で30分間のアニールを行い、GaNウェハの表面におけるイオン注入された領域の結晶性を回復させる。
【0038】
続いて、GaNウェハのGa面上に、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7を順次成長させる。そして、n型GaN層3を除く各層4〜7の一部をエッチングにより除去して露出したn型GaN層3の表面にカソード電極9を形成するとともに、残存したp型GaN層7上にアノード電極8を形成する。或いは、各層4〜7をエッチングせずに、p型GaN層7上にアノード電極8を形成し、GaNウェハの裏面上にカソード電極9を形成してもよい。その後、GaNウェハをチップ状に切断することにより、本実施形態に係る発光ダイオード1Bが作製される。
【0039】
この発光ダイオード1Bをフリップチップ実装し、アノード電極8とカソード電極9との間に電流を流すと、活性層5において紫外光(光Lu)が発生する。この光Luが窒化ガリウム基板16を透過して発光層20に達すると、第1窒化物半導体層21、第2窒化物半導体層22、及び第3窒化物半導体層23のそれぞれにおいて吸収され、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbが発生する。これらの光Lr、Lg、及びLbは、発光ダイオード1Bの外部へ出射されるとともに、互いに合成されて白色光となる。
【0040】
本実施形態の発光ダイオード1Bは、前述した第1実施形態の発光ダイオード1Aと同様に、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層20を備えており、この発光層20は、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する。これにより、発光物質(希土類元素)の偏在を抑えて均一な分布を容易に実現できると共に、従来の白色発光デバイスで用いられていた樹脂を不要にできる。したがって、本実施形態の発光ダイオード1Bによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する半導体層をそれぞれ別個に設けることにより、演色性を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態においても、発光層20の第1〜第3窒化物半導体層21〜23は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層21、第2窒化物半導体層22、第3窒化物半導体層23の順に配置されている。これにより、所望の色合いの白色光を好適に得ることができる。また、窒化ガリウム基板16として転位密度1×108[cm-2]以下の低転位基板を用いることによって、各半導体層3〜7の低転位化を図り、発光強度を高めることができる。
【0042】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3実施形態としての発光ダイオード1Cの構成を示す側断面図である。図3を参照すると、発光ダイオード1Cは、窒化ガリウム基板17を備えている。また、発光ダイオード1Cは、窒化ガリウム基板17の主面17a上に設けられた発光層30を備えている。本実施形態では、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7は、発光層30上に順に積層されている。
【0043】
窒化ガリウム基板17は、アンドープGaN、或いはn型GaNからなる。窒化ガリウム基板17の厚さは例えば100[μm]以上であることが好ましく、転位密度は1×108[cm-2]以下であることが好ましい。また、窒化ガリウム基板17はその表面が(0001)結晶面を含むように形成されている。
【0044】
発光層30は、希土類元素をドーパントとして含み、窒化ガリウム基板17の主面17aと活性層5との間に形成された層である。発光層30は、活性層5からの光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発生する。発光層30は、例えばGaNなどの窒化物半導体層に希土類元素がドープされて成り、GaNからなる場合はバッファ層としても機能する。発光層30は、活性層5において発生した光Luを吸収して赤色光Lrを発する第1窒化物半導体層31と、光Luを吸収して緑色光Lgを発する第2窒化物半導体層32と、光Luを吸収して青色光Lbを発する第3窒化物半導体層33とを有している。
【0045】
第1窒化物半導体層31、第2窒化物半導体層32、及び第3窒化物半導体層33は、それぞれ異なる希土類元素がドープされた層である。具体的には、第1窒化物半導体層31は窒化物半導体にEuがドープされて成り、第2窒化物半導体層32は窒化物半導体にTbがドープされて成り、第3窒化物半導体層33は窒化物半導体にErがドープされて成る。なお、これらの窒化物半導体層31〜33の発光波長および厚さは、第1実施形態の窒化物半導体層11〜13と同様である。
【0046】
窒化物半導体層31〜33は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層31、第2窒化物半導体層32、第3窒化物半導体層33の順に配置されている。すなわち、窒化ガリウム基板17の主面17a上にまず第3窒化物半導体層33が形成され、その上に第2窒化物半導体層32が形成され、その上に第1窒化物半導体層31が形成されている。
【0047】
なお、窒化ガリウム基板17は、発光層30から出射される赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを十分に透過できる厚さであることが好ましい。
【0048】
このような構成を備える発光ダイオード1Cの作製方法の一例を以下に説明する。まず、厚さ100[μm]以上、転位密度1×108[cm-2]以下の(0001)GaNウェハ上に、Erを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層、Tbを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層、及びEuを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層をMOCVD法により順に成長させることによって、第1窒化物半導体層31、第2窒化物半導体層32、及び第3窒化物半導体層33からなる発光層30を形成する。
【0049】
続いて、発光層30上に、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7を順次成長させる。そして、n型GaN層3を除く各層4〜7の一部をエッチングにより除去して露出したn型GaN層3の表面にカソード電極9を形成するとともに、残存したp型GaN層7上にアノード電極8を形成する。或いは、各層4〜7をエッチングせずに、p型GaN層7上にアノード電極8を形成し、GaNウェハの裏面上にカソード電極9を形成してもよい。その後、GaNウェハをチップ状に切断することにより、本実施形態に係る発光ダイオード1Cが作製される。
【0050】
この発光ダイオード1Cをフリップチップ実装し、アノード電極8とカソード電極9との間に電流を流すと、活性層5において紫外光(光Lu)が発生する。この光Luが発光層30に達すると、第1窒化物半導体層31、第2窒化物半導体層32、及び第3窒化物半導体層33のそれぞれにおいて吸収され、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbが発生する。これらの光Lr、Lg、及びLbは、窒化ガリウム基板17を透過して発光ダイオード1Cの外部へ出射されるとともに、互いに合成されて白色光となる。
【0051】
本実施形態の発光ダイオード1Cは、前述した第1実施形態の発光ダイオード1Aと同様に、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層30を備えており、この発光層30は、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する。これにより、発光物質(希土類元素)の偏在を抑えて均一な分布を容易に実現できると共に、従来の白色発光デバイスで用いられていた樹脂を不要にできる。したがって、本実施形態の発光ダイオード1Cによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する半導体層をそれぞれ別個に設けることにより、演色性を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態においても、発光層30の第1〜第3窒化物半導体層31〜33は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層31、第2窒化物半導体層32、第3窒化物半導体層33の順に配置されている。これにより、所望の色合いの白色光を好適に得ることができる。また、窒化ガリウム基板17として転位密度1×108[cm-2]以下の低転位基板を用いることによって、各半導体層3〜7の低転位化を図り、発光強度を高めることができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4実施形態としての発光ダイオード1Dの構成を示す側断面図である。図4を参照すると、発光ダイオード1Dは、窒化ガリウム基板17を備えている。窒化ガリウム基板17の構成は、前述した第3実施形態と同様である。窒化ガリウム基板17の主面17a上には、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7が設けられている。そして、発光ダイオード1Dは、p型GaN層7上に設けられた発光層40を更に備えている。
【0054】
発光層40は、希土類元素をドーパントとして含み、活性層5上(本実施形態ではp型GaN層7上)に形成された層である。発光層40は、活性層5からの光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発生する。発光層40は、例えばGaNなどの窒化物半導体層に希土類元素がドープされて成る。発光層40は、活性層5において発生した光Luを吸収して赤色光Lrを発する第1窒化物半導体層41と、光Luを吸収して緑色光Lgを発する第2窒化物半導体層42と、光Luを吸収して青色光Lbを発する第3窒化物半導体層43とを有している。
【0055】
第1窒化物半導体層41、第2窒化物半導体層42、及び第3窒化物半導体層43は、それぞれ異なる希土類元素がドープされた層である。具体的には、第1窒化物半導体層41は窒化物半導体にEuがドープされて成り、第2窒化物半導体層42は窒化物半導体にTbがドープされて成り、第3窒化物半導体層43は窒化物半導体にErがドープされて成る。なお、これらの窒化物半導体層41〜43の発光波長および厚さは、第1実施形態の窒化物半導体層11〜13と同様である。
【0056】
窒化物半導体層41〜43は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層41、第2窒化物半導体層42、第3窒化物半導体層43の順に配置されている。すなわち、p型GaN層7上にまず第1窒化物半導体層41が形成され、その上に第2窒化物半導体層42が形成され、その上に第3窒化物半導体層43が形成されている。
【0057】
このような構成を備える発光ダイオード1Dの作製方法の一例を以下に説明する。まず、厚さ100[μm]以上、転位密度1×108[cm-2]以下の(0001)GaNウェハ上に、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7を順次成長させる。そして、p型GaN層7上に、Euを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層、Tbを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層、及びErを濃度1×1020[cm-3]でドープしたGaN層をMOCVD法により順に成長させることによって、第1窒化物半導体層41、第2窒化物半導体層42、及び第3窒化物半導体層43からなる発光層40を形成する。
【0058】
続いて、発光層40上にアノード電極8を形成し、GaNウェハの裏面上にカソード電極9を形成する。或いは、n型GaN層3を除く各層4〜7及び発光層40の一部をエッチングにより除去して、露出したn型GaN層3の表面にカソード電極9を形成するとともに、残存した発光層40上にアノード電極を形成してもよい。その後、GaNウェハをチップ状に切断することにより、本実施形態に係る発光ダイオード1Dが作製される。
【0059】
この発光ダイオード1Dを、窒化ガリウム基板17を下にしてワイヤボンディング等により実装し、アノード電極8とカソード電極9との間に電流を流すと、活性層5において紫外光(光Lu)が発生する。この光Luが発光層40に達すると、第1窒化物半導体層41、第2窒化物半導体層42、及び第3窒化物半導体層43のそれぞれにおいて吸収され、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbが発生する。これらの光Lr、Lg、及びLbは、発光層40の表面のうちアノード電極8に覆われていない部分を通って発光ダイオード1Dの外部へ出射されるとともに、互いに合成されて白色光となる。
【0060】
本実施形態の発光ダイオード1Dは、前述した第1実施形態の発光ダイオード1Aと同様に、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層40を備えており、この発光層40は、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する。これにより、発光物質(希土類元素)の偏在を抑えて均一な分布を容易に実現できると共に、従来の白色発光デバイスで用いられていた樹脂を不要にできる。したがって、本実施形態の発光ダイオード1Dによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する半導体層をそれぞれ別個に設けることにより、演色性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態においても、発光層40の第1〜第3窒化物半導体層41〜43は、活性層5に近い側から第1窒化物半導体層41、第2窒化物半導体層42、第3窒化物半導体層43の順に配置されている。これにより、所望の色合いの白色光を好適に得ることができる。
【0062】
(第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5実施形態としての発光ダイオード1Eの構成を示す側断面図である。図5を参照すると、発光ダイオード1Eは、第1実施形態の窒化ガリウム基板15に代えて、窒化ガリウム基板18を備えている。窒化ガリウム基板18は、アンドープGaN、或いはn型GaNからなる。窒化ガリウム基板18の厚さは例えば100[μm]以上であることが好ましく、転位密度は1×108[cm-2]以下であることが好ましい。また、窒化ガリウム基板18はその表面が(0001)結晶面を含むように形成されており、主面18aとしてガリウム面(Ga面)が用いられている。そして、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7は、窒化ガリウム基板18の主面18a上に積層されている。
【0063】
窒化ガリウム基板18における主面18a側の内部には、活性層5からの光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光を発生する発光層50が形成されている。発光層50は、窒化ガリウム基板18を構成するGaNの一部に希土類元素がイオン注入されて成り、活性層5において発生した光Luを吸収して赤色光Lrを発する第1窒化物半導体領域51と、光Luを吸収して緑色光Lgを発する第2窒化物半導体領域52と、光Luを吸収して青色光Lbを発する第3窒化物半導体領域53とを有している。
【0064】
第1窒化物半導体領域51、第2窒化物半導体領域52、及び第3窒化物半導体領域53は、それぞれ異なる希土類元素が窒化ガリウム基板18の主面18aの異なる領域にイオン注入されることによって形成された層である。具体的には、第1窒化物半導体領域51は、窒化ガリウム基板18の主面18aにおける第1の領域18cに、希土類元素としてEuがイオン注入されることにより形成されている。また、第2窒化物半導体領域52は、主面18aにおける第1の領域18cとは別の第2の領域18dに、希土類元素としてTbがイオン注入されることにより形成されている。また、第3窒化物半導体領域53は、主面18aにおける各領域18c,18dとは別の第3の領域18eに、希土類元素としてErがイオン注入されることにより形成されている。なお、これらの窒化物半導体領域51〜53のイオン注入深さは互いに等しいことが好ましく、好適な発光波長および厚さ(イオン注入深さ)は、第1実施形態の窒化物半導体層11〜13と同様である。
【0065】
なお、窒化ガリウム基板18は、発光層50から出射される赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを十分に透過できる厚さであることが好ましい。
【0066】
このような構成を備える発光ダイオード1Eの作製方法の一例を以下に説明する。まず、厚さ100[μm]以上、転位密度1×108[cm-2]以下の(0001)GaNウェハのGa面側に、Eu、Tb、及びErを相互に位置を変えて1×1020[cm-3]ずつイオン注入することにより、第1窒化物半導体領域51、第2窒化物半導体領域52、及び第3窒化物半導体領域53からなる発光層50を形成する。次に、このGaNウェハをMOCVD炉の中におき、炉の内部を窒素(N2)及びアンモニア(NH3)雰囲気として1000[℃]で30分間のアニールを行い、GaNウェハの表面におけるイオン注入された領域の結晶性を回復させる。
【0067】
続いて、GaNウェハのGa面上に、n型GaN層3、n型AlGaN層4、活性層5、p型AlGaN層6、及びp型GaN層7を順次成長させる。そして、p型GaN層7上にアノード電極8を形成し、GaNウェハの裏面上にカソード電極9を形成する。或いは、n型GaN層3を除く各層4〜7の一部をエッチングにより除去して、露出したn型GaN層3の表面にカソード電極9を形成するとともに、残存したp型GaN層7上にアノード電極8を形成してもよい。その後、GaNウェハをチップ状に切断することにより、本実施形態に係る発光ダイオード1Eが作製される。
【0068】
この発光ダイオード1Eを、窒化ガリウム基板18を上にしてワイヤボンディング等により実装し、アノード電極8とカソード電極9との間に電流を流すと、活性層5において紫外光(光Lu)が発生する。この光Luが発光層50に達すると、第1窒化物半導体領域51、第2窒化物半導体領域52、及び第3窒化物半導体領域53のそれぞれにおいて吸収され、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbが発生する。これらの光Lr、Lg、及びLbは、窒化ガリウム基板18を透過して発光ダイオード1Eの外部へ出射されるとともに、互いに合成されて白色光となる。
【0069】
本実施形態の発光ダイオード1Eは、前述した第1実施形態の発光ダイオード1Aと同様に、希土類元素を含む窒化物半導体からなる発光層50を備えており、この発光層50は、活性層5において発生した紫外光Luを吸収して赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する。これにより、発光物質(希土類元素)の偏在を抑えて均一な分布を容易に実現できると共に、従来の白色発光デバイスで用いられていた樹脂を不要にできる。したがって、本実施形態の発光ダイオード1Eによれば、均一な色合いの白色光を実現でき、且つ長寿命化を図ることができる。また、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する半導体領域をそれぞれ別個に設けることにより、演色性を高めることができる。
【0070】
また、本実施形態のように、発光層50の第1窒化物半導体領域51が希土類元素としてEuを含み、第2窒化物半導体領域52が希土類元素としてTbを含み、第3窒化物半導体領域53が希土類元素としてErを含むとよい。これにより、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbを発する第1〜第3窒化物半導体領域51〜53を好適に実現できる。また、窒化ガリウム基板18として転位密度1×108[cm-2]以下の低転位基板を用いることによって、各半導体層3〜7の低転位化を図り、発光強度を高めることができる。
【0071】
(第6の実施の形態)
図6は、本発明の第6実施形態としての発光ダイオード1Fの構成を示す側断面図である。本実施形態の発光ダイオード1Fは、前述した第5実施形態の発光ダイオード1E(図5参照)に対して電極の形状が相違している。すなわち、本実施形態の発光ダイオード1Fは、第5実施形態のアノード電極8及びカソード電極9に代えて、アノード電極61a〜61c及びカソード電極62a〜62cを備えている。アノード電極61a〜61cは、例えばNi/Au/Al/Auといった金属をp型GaN層7上に順次積層してなり、p型GaN層7との間でオーミック接触が実現されている。また、カソード電極62a〜62cは、例えばTi/Al/Auといった金属を窒化ガリウム基板18の裏面18b上に順次積層してなり、窒化ガリウム基板18との間でオーミック接触が実現されている。
【0072】
アノード電極61a及びカソード電極62aは、窒化ガリウム基板18の厚さ方向から見て第1窒化物半導体領域51と重なる位置に形成されている。また、アノード電極61b及びカソード電極62bは、窒化ガリウム基板18の厚さ方向から見て第2窒化物半導体領域52と重なる位置に形成されている。また、アノード電極61c及びカソード電極62cは、窒化ガリウム基板18の厚さ方向から見て第3窒化物半導体領域53と重なる位置に形成されている。すなわち、本実施形態では、3組のアノード電極及びカソード電極が、第1窒化物半導体領域51、第2窒化物半導体領域52、及び第3窒化物半導体領域53のそれぞれに対応して設けられている。これにより、赤色光Lr、緑色光Lg、及び青色光Lbのそれぞれを独立して発光させることができるので、RGB発光を行う発光デバイスを1チップで実現できる。
【0073】
本発明による発光ダイオードは、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態では活性層としてMQW構造のものを例示したが、本発明は他の構造の活性層を備える発光ダイオードにも適用可能である。また、活性層や他の半導体層は窒化物半導体であればよく、上記各実施形態において例示した組成に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図4】図4は、本発明の第4実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図5】図5は、本発明の第5実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図6】図6は、本発明の第6実施形態による発光ダイオードの構成を示す側断面図である。
【図7】図7は、特許文献1に記載された白色発光デバイスの構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1A〜1F…発光ダイオード、3…n型GaN層、4…n型AlGaN層、5…活性層、6…p型AlGaN層、7…p型GaN層、8…アノード電極、9…カソード電極、10,20,30,40,50…発光層、11,21,31,41…第1窒化物半導体層、12,22,32,42…第2窒化物半導体層、13,23,33,43…第3窒化物半導体層、15,16,17,18…窒化ガリウム基板、18c…第1の領域、18d…第2の領域、18e…第3の領域、51…第1窒化物半導体領域、52…第2窒化物半導体領域、53…第3窒化物半導体領域、Lb…青色光、Lg…緑色光、Lr…赤色光、Lu…紫外光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム基板と、
窒化物半導体からなり前記窒化ガリウム基板の主面上に設けられた活性層と、
希土類元素を含む窒化物半導体からなり、前記活性層において発生した光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ発する第1〜第3窒化物半導体層を有する発光層と
を備えることを特徴とする、発光ダイオード。
【請求項2】
前記発光層の前記第1〜第3窒化物半導体層が、前記希土類元素としてそれぞれEu、Tb、及びErを含むことを特徴とする、請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記発光層の前記第1〜第3窒化物半導体層が、前記活性層に近い側から前記第1窒化物半導体層、前記第2窒化物半導体層、前記第3窒化物半導体層の順に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記発光層は、前記窒化ガリウム基板の前記主面に前記希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴とする、請求項3に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記発光層は、前記窒化ガリウム基板の裏面に前記希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴とする、請求項3に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記発光層が、前記希土類元素をドーパントとして含み前記窒化ガリウム基板の前記主面と前記活性層との間に形成された層であることを特徴とする、請求項3に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記発光層が、前記希土類元素をドーパントとして含み前記活性層上に形成された層であることを特徴とする、請求項3に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
窒化ガリウム基板と、
窒化物半導体からなり前記窒化ガリウム基板の主面上に設けられた活性層と、
希土類元素を含む窒化物半導体からなり、前記活性層において発生した光を吸収して赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ発する第1〜第3窒化物半導体領域を有する発光層と
を備え、
前記第1窒化物半導体領域は、前記窒化ガリウム基板の前記主面における第1の領域に希土類元素がイオン注入されて成り、
前記第2窒化物半導体領域は、前記主面における前記第1の領域とは別の第2の領域に希土類元素がイオン注入されて成り、
前記第3窒化物半導体領域は、前記主面における前記第1及び第2の領域とは別の第3の領域に希土類元素がイオン注入されて成ることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項9】
前記発光層の前記第1〜第3窒化物半導体領域が、前記希土類元素としてそれぞれEu、Tb、及びErをイオン注入されて成ることを特徴とする、請求項8に記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212308(P2009−212308A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53944(P2008−53944)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(508066588)
【Fターム(参考)】