説明

発光デバイスおよびその製造方法

【課題】発光光の取り出し効率を高めることが可能な発光デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】一導電型半導体層と逆導電型半導体層とが積層されてなる、前記一導電型半導体層と前記逆導電型半導体層との境界を含む発光部分を有する発光構造体と、前記発光構造体の上面と接合した電流拡散層と、前記電流拡散層の上側面に被着された電極層とを有し、前記電極層は、前記境界の周縁線よりも外側領域に配置されていることを特徴とする発光デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードやレーザなどに代表される発光デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光デバイスは、現在利用可能な最も効率的な光源の1つである。たとえばAlGaInPからなる発光層を有するLEDは、各種表示用光源として広く用いられている。たとえば下記特許文献1,2に示されているように、一般的なLEDでは、発光層の上部に、発光波長に対してほぼ透明な電流拡散層が設けられている。電流拡散層は、その上面に設けられた電極から流れる電流を、発光層全体に効率的に流すことに寄与する。電流拡散層としては、たとえばGaP等が広く用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平7-202259号公報
【特許文献2】特開平7-263743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、比較的小型の発光ダイオードを基板上に複数配置し、たとえば照射光源として用いる装置等が提案されている。このような照射装置では、たとえば、発光ダイオードからの発光を、発光層が積層された半導体基板の上面に対して鉛直上向きに、この半導体基板からはなれる方向に照射する。このような場合、発光層の上面に設けられた電極は、発光の光路を遮る障害物となってしまう。特に近年は、発光装置の小型化の要求に応じて、発光素子を高密度にて配列することにより、各発光素子のサイズが小さくなっている。このため、電流拡散層上に設けられる上部電極によって発光素子を覆う面積割合は大きくなっている。このように発光素子をより小型化するほど、発光素子内部で発光した光の内、上部電極で遮られる光の割合はより大きくなってしまうといった課題を有する。
【0005】
本発明の目的は、発光光の取り出し効率を高めることが可能な発光デバイスおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一導電型半導体層と逆導電型半導体層とが積層されてなる、前記一導電型半導体層と前記逆導電型半導体層との境界を含む発光部分を有する発光構造体と、前記発光構造体の上面と接合した電流拡散層と、前記電流拡散層の上側面に被着された電極層とを有し、前記電極層は、前記境界の周縁線よりも外側領域に配置されていることを特徴とする発光デバイスを提供する。
【0007】
前記発光構造体は、前記発光構造体の下面の側から、前記発光構造体の前記上面の側に近づくにしたがって、前記上面に平行な断面の面積がより小さくなっていることが好ましい。
【0008】
また、前記電流拡散層および前記発光構造体は、前記電流拡散層のエッチングレートが前記発光構造体のエッチングレートに比べてより小さいエッチング剤によってエッチングされて形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記発光構造体の、前記境界の前記周縁線が露出した側面が、樹脂層で被覆されていることが好ましい。なお、前記樹脂層は透光性樹脂層であってもよく。前記樹脂層は反射性樹脂層であってもよい。
【0010】
前記発光構造体は、AlInP、AlGaInPの少なくともいずれかから構成され、前記電流拡散層はGaPからなることが好ましい。
【0011】
また、基板上に、一導電型半導体層と逆導電型半導体層との境界を含む発光部分を有する発光構造体と、前記発光構造体の上面と接合した電流拡散層と、前記電流拡散層の上側面に被着された電極層と、を形成する工程と、前記電流拡散層のエッチングレートが前記発光構造体のエッチングレートに比べてより小さいエッチング剤を用いて、前記電流拡散層と前記発光構造体とをエッチングする工程を有し、前記エッチング工程では、前記電極層が、前記境界の周縁線よりも外側領域に位置されるまでエッチングを行うことを特徴とする発光デバイスの製造方法を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光デバイスから発光される光を、電極層に遮蔽されることなく効率的に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の一形態である発光ダイオード1の構成を示す図である。図1(a)は、発光ダイオード1の積層構造を示す図であり、図1(b)は、発光ダイオード1を上から見た平面図である。
【0014】
本実施形態では、発光ダイオード(LED)を発光デバイスの例として詳細に説明する。
【0015】
発光効率のよいLEDとしては、ダブルへテロ(DH)接合を持った構造のLEDが知られている。このLEDの特長は、電子とホールを再結合させて発光させるための発光層を挟んで、発光層のなかに電子やホールを閉じこめるための閉じ込め層を配置した構造を持つことである。この閉じ込め層は、発光層よりもバンドギャップが大きくその発光を吸収しないクラッド層として機能する。
【0016】
LEDの発光波長は、発光層の組成で決定される。たとえば、ダブルへテロ(DH)接合を持った構造のAlGaInPを発光層に用いたLEDでは、その組成が、(AlxGa1-x0.5In0.5Pと表わされるとき、発光層のバンドギャップエネルギー(Eg)は、0≦x≦0.6の範囲では、Eg=1.91+0.61x(eV)とxの値によって変化する。したがってLEDの発光波長は、650nmから545nmまで、発光層のバンドギャップエネルギー、すなわち活性層の組成によって変化する。
【0017】
ダブルヘテロ構造のクラッド層には、たとえばp型クラッド層としてp−AlInP、n型クラッド層としてn−AlInPなどが用いられ、発光層上部の電流拡散層には、たとえばp型のp−GaPが用いられる。
【0018】
図1(a),(b)に示す発光ダイオード1は、n型GaAs基板2上に、n型AlInPクラッド層7と、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さいp型のAlGaInP発光層9と、この発光層9上に形成された、該発光層よりもバンドギャップが大きいp型AlInPクラッド層8と、このp型AlInPクラッド層8上に形成された、当該p型AlInPクラッド層8よりも厚いp型GaP層からなる電流拡散層4を有する。
【0019】
発光ダイオード1では、pn接合部にAlGaInP発光層9が配置され、この発光層9に電流が流れることで発光層9が発光する。本実施形態の発光ダイオード1は、GaAs基板2上に複数配置され、発光ダイオード1からの発光をGaAs基板2の上面に対して鉛直上向きに、このGaAs基板2からはなれる方向に照射する照射装置として機能する。なお、本実施形態の発光ダイオード1は、半導体基板上に複数配置されて用いられることに、特に限定されるものではない。
【0020】
p型GaP電流拡散層4には、第1電極5が形成され、GaAs基板2の、発光構造体3が形成される側と反対側には、第2電極6が設けられる。
【0021】
発光構造体3は、n型AlInPクラッド層7と、p型AlInPクラッド層8と、これらに挟持されたAlGaInP発光層9で構成される。
【0022】
ここで、第1電極5は、GaAs基板2の基板面に垂直な方向から見た平面視において、pn境界(接合)の周縁線に対して、より外側領域に設けられている。本実施形態では、境界の周縁線とは、具体的には、AlGaInP発光層9とn型AlInPクラッド層7との境界の外周線をいう。第1電極5が、境界の周縁線の外側に配されているとは、すなわち、p型GaP電流拡散層4上であって、AlGaInP発光層9を底面とする仮想柱状体10よりも外側の領域に設けられていることをいう。仮想柱状体10は、AlGaInP発光層9の上面と略垂直な外周面で囲まれた柱状体となっている。本実施形態では、p型の発光層を有する、いわゆるダブルへテロ構造の発光素子について記載しているが、発光素子がn型であってもよく、また単なるヘテロ構造であってもよい。いずれの場合であっても、境界の周縁線とは、pn接合部の外周線のことをいう。
【0023】
図1(b)の平面図には、わかりやすいように、発光部分であるAlGaInP発光層9の領域(すなわち仮想柱状体10の占める領域)を図示している。
【0024】
GaAs基板2の主面に対して垂直な方向から発光ダイオード1を平面視したときに、第1電極5と発光部分であるAlGaInP発光層9とが重複しないので、AlGaInP発光層9からの放射光が、第1電極5によって遮られる割合を小さくすることができ、発光光の取り出し効率を高めることができる。
【0025】
また、本実施形態の発光ダイオード1は、積層構造の上面の側(電流拡散層4の側)からGaAs基板2の側に向かうにしたがって、電流拡散層4の上面に沿った断面積がより大きくなっている。すなわち、発光構造体3は、GaAs基板2の表面から離間するにしたがって、電流拡散層4の上面の中央に近づくように傾斜した側面(斜面3A)を有する、いわゆるメサ形状に構成されている。本実施形態の発光ダイオード1では、AlGaInP発光層9の端部が斜面3Aに露出しており、この斜面3Aは、GaAs基板2の上面に対向する方向ではなく、GaAs基板2からより離間する側(図中の上側)を向いて傾斜している。
【0026】
発光ダイオード1では、斜面3Aに露出したAlGaInP発光層9の端部からも比較的大きな光量の光が照射されるが、斜面3Aが、GaAs基板2からより離間する側(上側)を向いて傾斜しているので、この端部から照射された光は、GaAs基板2の上面に対して鉛直上向きに、このGaAs基板2から離れる方向に、効率的に照射される。
【0027】
発光構造体3の周辺には、発光構造体3のサイドエッチングされた部分を埋めるように、発光構造体3の側面が樹脂材11によって被覆されている。樹脂材11は、エポキシ系樹脂等の樹脂材料で形成されている。樹脂材11の裾野は、図1(b)に示すようにGaP電流拡散層4よりも大きくなるように設けられ、その厚みは発光構造体3より離間する方向に向かって漸次薄くなっている。すなわち、本実施形態における樹脂材11は、GaP電流拡散層4表面とGaAs基板2表面とを滑らかに接続している。第1電極5は、樹脂材11の表面に設けられた配線パターン5Aを介して、GaAs基板2表面に設けられた図示しない配線パターンと接続されている。かかる樹脂材11が設けられていることで、GaAs基板2と発光構造体3との境界や、電流拡散層4のエッジ部等で生じる、第1電極5や配線パターン5Aの断線等を抑制することができる。すなわち、樹脂材11によって、第1電極5の配線領域を、GaP電流拡散層4表面から樹脂材11表面さらには、GaAs基板2表面にまで広げることを可能としている。
【0028】
樹脂材11は、発光構造体3からの発光に対して透過性を有し、傾斜した斜面3aの側から出射した発光を、比較的良好に透過する。すなわち、斜面3Aから出射した光は、樹脂材11を比較的高い透過率で透過して、GaAs基板2の上面に対して鉛直上向きに、このGaAs基板2からはなれる方向に、比較的高い光量で照射される。
【0029】
なお、樹脂材11は、ポリイミド系樹脂・シリコーン系樹脂などによって放射光に対する遮光性が付与されたものであってもよい。
【0030】
発光構造体3の側面を覆う樹脂材11が、反射性を有することにより、発光構造体3の側面から放射される光を反射し、GaP電流拡散層4に対応する領域からの発光量を高めることができる。樹脂材11に放射光の反射性を付与するには、樹脂材11の屈折率を適宜調整し、発光構造体3と樹脂材11との界面および樹脂材11と空気との界面で放射光を反射させることができる。
【0031】
また、発光ダイオード1を複数配列させたセンサや、露光装置などの場合は、隣接する発光ダイオード1の光による影響を受けないように、樹脂材11に遮光性を付与することが好ましい。このように、樹脂材11の透過性能や反射性能、および遮光性能等を種々変更することで、発光ダイオード1からの光の照射特性など、種々変更して設定することができる。
【0032】
以下、本実施形態の発光ダイオード1のより詳細な構成、および製造方法について、詳細に記載する。
【0033】
本実施形態のn型GaAs基板2は、たとえば、一導電型不純物であるSiなどを1×1017〜1019atoms/cm程度含有し、厚みが100〜350μmの板状部材である。
【0034】
また、本実施形態のn型AlInPクラッド層7は、一導電型不純物であるSiなどを1×1017〜1×1019atoms/cm程度含有し、厚みが0.4〜1.0μmに形成される。p型AlInPクラッド層8は逆導電型不純物であるZnなどを1×1017〜1×1019atoms/cm程度含有し、厚みが0.4〜1.0μmに形成される。
【0035】
AlGaInP発光層9は、n型AlInPクラッド層7とp型AlInPクラッド層8とに挟持されたダブルヘテロ構造となっており、その組成としては、たとえば、(Al0.6Ga0.4)InPおよび(Al0.7Ga0.3)InPなどを用いることができる。また、AlGaInP発光層9は、単層または複数層で構成される。単層の場合は、Zn、Mgなどを逆導電型不純物として含有するp型であってもよく、Siなどを一導電型不純物として含有するn型であってもよい。複数層で構成される、p型層とn型層とが接合して構成される。不純物濃度は、たとえば、1×1016〜1×1017atoms/cmであり、厚みが0.3〜1.0μmである。
【0036】
第1電極5、第2電極6は、この分野で通常用いられる材料を用いることができる。たとえば、p型GaP電流拡散層4上の第1電極5には、Au−Zn合金等からなる電極が所定の形状で設けられ、GaAs基板2の裏面全体には、Au−Ge等合金からなる第2電極6が設けられる。
【0037】
発光ダイオード1は、たとえば以下のように作製することができる。図2は、発光ダイオード1の製造方法の一例について説明する概略断面図である。
【0038】
まず、シリコン(Si)をドープした砒化ガリウム(GaAs)基板2に、原料ガスとしてトリメチルインジウム(In(CH33)、トリメチルアルミニウム(Al(CH33)、フォスフィン(PH3)を用い、ジシラン(Si26)をドーパントガスとして供給してn型AlInPクラッド層7´を形成する。
【0039】
次に、その上に原料ガスとしてトリメチルガリウム(Ga(CH33)、トリメチルインジウム(In(CH33)、トリメチルアルミニウム(Al(CH33)、フォスフィン(PH3)を用いてAlGaInP発光層9´を形成する。
【0040】
さらに、原料ガスとしてトリメチルインジウム(In(CH33)、トリメチルアルミニウム(Al(CH33)、フォスフィン(PH3)を用い、ジメチル亜鉛(Zn(CH32)をドーパントガスとして供給してp型AlInPクラッド層8´を形成する。
【0041】
次に、p型AlInPクラッド層8´の上に、原料ガスとしてトリメチルガリウム(Ga(CH33)、フォスフィン(PH3)を用い、ジメチル亜鉛(Zn(CH32)をドーパントガスとして供給してp型GaP電流拡散層4´を形成する。この後、スパッタや蒸着といった公知の薄膜形成技術、およびフォトリソグラフィー技術を用いて、第1電極5を形成する(以上、図2(a))。
【0042】
このような積層構造を形成したのち、図2(b)に示すように、たとえば公知のフォトリソグラフィー工程によって、所定のレジストパターン11を形成し、このレジストパターン11をマスクとしたウエットエッチングを行う。
【0043】
ウエットエッチングは、電流拡散層4´、クラッド層7´、クラッド層8´、および発光層9´、を一括してエッチングすることが可能であって、かつ、クラッド層7´、クラッド層8´、および発光層9´のエッチングレートに比べて、電流拡散層4´のエッチングレートが極端に遅いエッチング液を用いて行えばよい。この場合、たとえば、エッチング液としては、塩酸、酢酸、過酸化水素水の混合液、または塩酸、りん酸、過酸化水素水の混合液を用いればよい。
【0044】
塩酸、酢酸、過酸化水素水を用いる場合、たとえば100:500:50の比率(体積比)で混合したエッチング液を用いればよい。または、塩酸、りん酸、過酸化水素水を用いる場合、たとえば100:500:50の比率(体積比)で混合したエッチング液を用いればよい。このようなエッチング液でエッチングを行った場合、まずは最上面の電流拡散層4´がレジストパターン11に則した形状にエッチングされる。その後に引き続きエッチングを行うことで、電流拡散層4の下層の、クラッド層7´、発光層9´クラッド層8´が引き続きエッチングされる。本発明では、電流拡散層4´のエッチングレートに比べて、クラッド層7´、発光層9´クラッド層8´のエッチングレートが比較的高いので、電流拡散層4´の下部にサイドエッチングが進行し、クラッド層7´、発光層9´クラッド層8´が順次エッチングされる。
【0045】
または、このウエットエッチングでは、電流拡散層4´を、上記エッチング液(塩酸、酢酸、過酸化水素水の混合液、または塩酸、りん酸、過酸化水素水の混合液)を用いてエッチングした後、クラッド層7´、発光層9´クラッド層8´を、塩酸と酢酸の混合液、または塩酸とりん酸の混合液を用いてエッチングしてもよい。塩酸と酢酸の混合液、または塩酸とりん酸の混合液は、GaPからなる電流拡散層4´については、ほとんどエッチングせず(エッチングレートが極端に小さく)、クラッド層7´、発光層9´クラッド層8´のみを選択的にエッチングする。このため、上述の塩酸、酢酸、過酸化水素水の混合液、または塩酸、りん酸、過酸化水素水の混合液を用いた場合に比べて、電流拡散層4´に対するサイドエッチングの大きさを、より大きい範囲で制御することができる。また、塩酸と酢酸の混合液(第1エッチング液)、または塩酸とりん酸の混合液(第2エッチング液)では、それぞれ塩酸の比率を下げることで、電流拡散層4´に対するサイドエッチングの大きさを大きくし、エッチングによって形成される斜面3Aの傾斜角をより大きくすることが可能な点が、確認されている。下記表1は、本願発明者が確認した、エッチング液における塩酸の比率と、エッチング深さに対するサイドエッチング量の大きさと、の関係を示している。
【0046】
なお、第1エッチング液については、酢酸を230mlとし、第2エッチング液については、りん酸を200mlとした。
【0047】
【表1】

【0048】
このように、エッチング液およびエッチング条件を調整することで、電流拡散層4´に対するサイドエッチングの大きさ、ひいては、斜面3Aの傾きの大きさを調整することができる。エッチングの後、レジストパターン11を除去し、発光ダイオード1が作製される。
【0049】
上述のように、ウエットエッチングにおけるサイドエッチング量や、斜面3Aの傾きは、エッチング液の組成やエッチング条件によって、任意に調整することができる。たとえば、予め形成した第1電極5に対して、充分にサイドエッチングが進行するように条件を設定し、エッチングを行えばよい。
【0050】
第1電極5の面積が小さいほど、pn接合部分(特にAlGaInP発光層9)からの発光を、GaAs基板2の上面に対して鉛直上向きに、このGaAs基板2からはなれる方向に照射する際の光路の障壁は、少ないといえる。一方、第1電極5の面積が小さいほど、電流拡散層4と第1電極5とのコンタクト抵抗がより高くなり、発光効率(電極にかかる電圧に対する、発光層における発光量の割合)は低くなる傾向にある。上述のウエットエッチングでは、サイドエッチング量や斜面3Aの傾きが、広い範囲でかつ比較的高精度で制御できるので、第1電極5を所望の特性を満たす各種大きさに設定した場合に、これら各種の大きさに応じて、サイドエッチング量や斜面3Aの傾きを、種々調整することができる。
【0051】
このようなウエットエッチング工程の後、レジストパターン11を除去し、図2(c)に示すような発光体構造を得る。この後、たとえばスピンコート法を用いて樹脂層を塗布し、必要に応じて露光および熱処理を行って樹脂層を硬化させて、発光構造体3のサイドエッチングされた部分を埋めるように、発光構造体3の側面を樹脂材11によって被覆する。さらに、基板2の、発光構造体3が形成される側と反対側に、第2電極6を設け、発光デバイス1を形成する(図2(d))。
【0052】
図1に示した例では、発光構造体3のサイドエッチされた部分を埋めるように、このサイドエッチ部分を樹脂層11で被覆し、この樹脂層11の表面に設けた電極パターン5Aを介して第1電極5に電圧を印加している。本発明において、必ずしも樹脂層11を設ける必要はない。たとえば、図3に示すように、樹脂層11を設けない構成としてもよい。この場合、たとえば、公知のワイヤボンディング法を用いて形成したワイヤ22を介して、第1電極層5に電圧を印加してもよい。図3に示す実施形態のように、ワイヤ22を第1電極層5に接続した場合でも、第1電極層5とワイヤ22との双方が、平面視において、pn接合部分(特にAlGaInP発光層9)に対して、より外側領域に設けられている。この実施形態でも、第1電極層5やワイヤ22によって発光層9からの発光が遮られる割を比較的低くし、発光層9からの発光を効率良く照射することが可能となっている。
【0053】
図1に示した例では、第1電極5をGaP電流拡散層4の4辺に沿って設けたが、本発明において第1電極の形状や大きさは、特に限定されない。
【0054】
図4は、第1電極5の他の構成例を示す図であり、図1(b)と同様に、発光ダイオード1を上から見た平面図である。
【0055】
図4(a)は、GaP電流拡散層4の対向する2つの辺に沿って設けた例である。図4(b)は、GaP電流拡散層4の互いに隣接する2つの辺に沿ってL字状に設けた例である。図4(c)は、GaP電流拡散層4の互いに隣接する3つの辺に沿ってU字状に設けた例である。図4(d)は、GaP電流拡散層4の1辺に沿って設けた例である。なお第1電極5は、図示しない共通電極に電気的に接続されている。
【0056】
以上、本発明の発光デバイスについて説明したが、本発明の発光デバイスは上記実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の一形態である発光ダイオード1の構成を示す図である。
【図2】発光ダイオード1の製造方法の一例について説明する概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態である発光ダイオード1の構成を示す図である。
【図4】第1電極5の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 発光ダイオード
2 n型GaAs基板
3 発光構造体
4 p型GaP電流拡散層
5 第1電極
6 第2電極
7 n型AlInPクラッド層
8 p型AlInPクラッド層
9 AlGaInP発光層
11 樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型半導体層と逆導電型半導体層とが積層されてなる、前記一導電型半導体層と前記逆導電型半導体層との境界を含む発光部分を有する発光構造体と、
前記発光構造体の上面と接合した電流拡散層と、
前記電流拡散層の上側面に被着された電極層とを有し、
前記電極層は、前記境界の周縁線よりも外側領域に配置されていることを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記発光構造体は、前記発光構造体の下面の側から、前記発光構造体の前記上面の側に近づくにしたがって、前記上面に平行な断面の面積がより小さくなっていることを特徴とする請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記電流拡散層および前記発光構造体は、前記電流拡散層のエッチングレートが前記発光構造体のエッチングレートに比べてより小さいエッチング剤によってエッチングされて形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記発光構造体の、前記境界の前記周縁線が露出した側面が、樹脂層で被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記樹脂層は透光性樹脂層であることを特徴とする請求項4記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記樹脂層は反射性樹脂層であることを特徴とする請求項4記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記発光構造体は、AlInP、AlGaInPの少なくともいずれかから構成され、
前記電流拡散層はGaPからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の発光デバイス。
【請求項8】
基板上に、一導電型半導体層と逆導電型半導体層との境界を含む発光部分を有する発光構造体と、前記発光構造体の上面と接合した電流拡散層と、前記電流拡散層の上側面に被着された電極層と、を形成する工程と、
前記電流拡散層のエッチングレートが前記発光構造体のエッチングレートに比べてより小さいエッチング剤を用いて、前記電流拡散層と前記発光構造体とをエッチングする工程を有し、
前記エッチング工程では、前記電極層が、前記境界の周縁線よりも外側領域に位置されるまでエッチングを行うことを特徴とする発光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−246051(P2009−246051A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88848(P2008−88848)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】