説明

発光素子、発光素子の使用方法、発光素子の製造方法

【課題】容易に製造することができ、300nm程度または400nm程度もしくはその両方の短波長領域でEL発光する発光素子を提供するものである。
【解決手段】本発明の発光素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極及び第2電極の間に設けられゲルマニウム発光体を含む担持体とを備え、前記ゲルマニウム発光体は、少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムを含み、前記第1電極と第2電極に電位差を与えた際の発光の波長のピークが250〜350の範囲内及び350〜500nmの範囲内のうち少なくとも一方にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に製造でき且つ300nm程度または400nm程度あるいはその両方の短波長領域で発光する発光素子並びにその使用方法及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、自己発光する光源として、別途の光源が不要な新たな表示素子等としての利用が期待されているものである。
従来のEL素子には、「分散型」と「薄膜型」の2つのタイプが存在し、その多くが交流駆動によって、発光する。
【0003】
従来の分散型と薄膜型のEL素子については、特許文献1や非特許文献1に記載されているような無機EL素子が無機化合物を用いて実現されている。
従来の分散型EL素子は、電極間に電流経路が遮断された蛍光体粒子(例えば、ZnS:Cu,Clなど)を有する素子に交流電圧を印加することにより、蛍光体粒子が電界発光をする。この蛍光体粒子の粒子径は10μm程度が最適であると考えられ、2〜3μmよりも小さくなると発光輝度が著しく低下することが知られている。なお、この分散型EL素子は、ドナー・アクセプタ間の再結合により発光すると考えられている。
【0004】
また、従来の薄膜型EL素子は、電極間に絶縁層で挟まれた蛍光体の発光層(例えば、発光中心となるMnを母材ZnS中にドープしたZnS:Mnなど)を有する素子に交流電圧を印加することにより、発光層が電界発光する。なお、この薄膜型EL素子は、母材中を走るホットエレクトロンによる発光中心の衝突励起により発光すると考えられている。
【0005】
その一方で、半導体基板、特にシリコン基板上に発光素子を作製する技術の開発が盛んに行われている。情報処理装置や記憶装置であるCMOS回路などはシリコンを中心として半導体を基幹として実現されているため、シリコン等の基板上にトランジスタ等の他の機能素子と同時に発光素子を作成することができれば、情報処理装置や記憶装置と発光素子を同一基板上に作製することができる。このことにより、光によるチップ間通信や光コンピューティング技術が可能となり、更なるデジタル電子機器の発展につながることが期待されている。
【0006】
例えば、特許文献2では、シリコン基板上のシリコン窒化膜(絶縁体)中にシリコンのナノメートルオーダーの微粒子を形成し、このシリコン窒化膜に電圧を印加することによって約650nmのピークを有するエレクトロルミネセンスが確認されたことが報告されている。
【0007】
なお、従来の絶縁体膜中に微粒子を形成した発光素子は、絶縁体膜の両側の電極に100V程度の高い電圧を印加し、絶縁体膜に7MV/cm程度の強い電界を印加することが必要である。このことにより、電極の電子が絶縁体膜の伝導帯にFN(ファウラー・ノルドハイム)トンネリングによって供給され、この電子が電界により加速され十分な運動エネルギーを得た後、微粒子に衝突する。衝突した電子は、微粒子の電子を励起し、この励起された電子により発光すると考えられている。
これら従来無機ELのなかには、460〜480nm程度の青色を発光する材料も存在するが100V程度かそれ以上の高電圧が必要な上に、充分な輝度が得られていない。
【特許文献1】特開2007−265986号公報
【非特許文献1】最新無機EL開発動向〜材料特性と製造技術・応用展開〜、第1版、情報機構、2007年3月27日
【特許文献2】特開平11−310776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2などの従来の絶縁体膜中に微粒子を形成した発光素子の発光は可視光領域であり、そのほとんどは赤色など波長の比較的長い領域の発光であり、また実用に耐える輝度、面積、発光の均一性等は実際には実現されていない。ディスプレイや、蛍光灯にかわる個体照明の実現等の観点から、より短波長領域で、輝度、面積が十分で、むらなく発光する発光素子が望まれている。
また、絶縁体膜中に微粒子を形成した従来の発光素子は、発光にむらが生じるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、容易に製造することができ、特に紫外〜青色(250〜500nm程度)の短波長領域でむらなく発光する発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の発光素子は、第1電極と、第2電極と、第1及び第2電極間に設けられ酸化ゲルマニウムを含む担持体を備え、前記酸化ゲルマニウムは、少なくとも一部が酸素欠陥を有し、前記第1電極と第2電極に電位差を与えた際の発光の波長のピークが250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方にあることを特徴とする。
本発明の発光素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極及び第2電極の間に設けられゲルマニウム発光体を含む担持体とを備え、前記ゲルマニウム発光体は、少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムを含み、前記第1電極と第2電極に電位差を与えた際の発光の波長のピークが250〜350の範囲内及び350〜500nmの範囲内のうち少なくとも一方にあることを特徴とする。
【0010】
本発明者は、鋭意研究を行っていたところ、担持体中に少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムを有するゲルマニウム発光体を含有させた素子に対して電位差を与えることによってこの素子を発光させることができ、そのエレクトロミネッセンス波長のピークが250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方にあることを見出した。
そして、この素子の作製条件および状態についてさらに詳しく検討を行った結果、ゲルマニウム原子及び酸素原子を含むクラスターまたは微粒子(以下、クラスターを含めて微粒子と表現する)を備えることで、安定的に効率よく発光することを見出した。また、発光波長は微粒子の大きさにほとんど依存せず、この素子の発光機構は微粒子のいわゆる従来考えられていた量子サイズ効果によるものではなく、酸化ゲルマニウムの酸素欠陥によるものであるという知見を得て、本発明の完成に到った。
【0011】
本発明の発光素子は、例えば担持体にゲルマニウムをイオン注入して、その後熱処理を行うという非常にシンプルな方法で製造できるというメリットを有している。
また、量子サイズ効果を発光原理としている発光素子では、粒子のサイズが変化すると発光波長も変化するが、粒子サイズは例えばゲルマニウム注入量・熱処理温度・熱処理時間等の作製条件によって容易に変化しうるものであるので、粒子サイズを揃えるのは容易ではなく、従って、製品ばらつきを小さくすることは容易ではない。また、使用環境によっては経時変化によるわずかな粒径の変化でも発光波長が変化し、製品の信頼性確保は容易ではない。これらの問題は、短波長になるほど粒径変化による波長変動大きいため、青色領域や紫外領域では解決が一層困難である。
一方、本発明の発光素子は、酸素欠陥を有する酸化ゲルマニウムが発光中心となって発光するものと考えられ、粒子サイズが変化しても発光波長が変化しない。従って、本発明によれば製品ばらつきを小さくすることが比較的容易である。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。
【0012】
酸化ゲルマニウム全体に対する酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムの割合の最大値は、0.1以上であってもよい。
前記ゲルマニウム微粒子は、中心部がゲルマニウムからなり、酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムは、前記中心部の周囲に配置されていてもよい。
前記ゲルマニウム微粒子の最大粒径は、1〜20nmであってもよい。
前記担持体は、波長250nm以上350nm以下、または波長350nm以上500nm以下、もしくはその両方の光の透過率が50%以上99.99%以下であってもよい。
前記担持体は、絶縁体からなってもよい。
前記担持体は、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなってもよい。
前記酸化ゲルマニウムの存在する領域は、第1電極または第2電極もしくはその両方から5nm以上15nm以下離れていてもよい。
前記第2電極は、波長250nm以上350nm以下、または波長350nm以上500nm以下、もしくはその両方の光の透過率が50%以上99.99%以下であってもよい。
前記第2電極は、金属酸化物薄膜、金属薄膜または半導体薄膜からからなってもよい。
前記第2電極は、スリット構造あるいはポーラス構造などの穴開き構造であってもよい。
前記穴あき構造の第2電極は、導電性のナノワイヤからなってもよい。
前記発光素子は、更に第1及び第2電極間に流れる最大電流を制限する手段を有していてもよい。
前記最大電流を制限する手段は、第1または第2の電極と電気的に接続された電気抵抗体であってもよい。
前記電気抵抗体は可変抵抗であってもよい。
【0013】
また、本発明は、上記記載の発光素子の使用方法であって、第1及び第2電極間に交流電圧を印加することを特徴とする発光素子の使用方法も提供する。本発明の発光素子は、交流電圧を印加した場合に耐久性が向上することが実験的に見出された。
また、本発明の発光素子は、電流に制限を加えた場合に耐久性が向上が著しいことが実験的に見出された。
【0014】
また、本発明の発光素子は、第1及び第2電極間に直流電圧を印加することを特徴とする発光素子の発光素子の使用方法も提供する。本発明の発光素子は、直流電圧を印加した場合に低電圧でも発光することが実験的に見出された。
また、本発明は、上記記載の発光素子の製造方法であって前記酸化ゲルマニウムは、前記担持体中にゲルマニウム濃度が1.5〜20原子%となる領域を形成し、その後熱処理を施すことによって形成される発光素子の製造方法も提供する。この範囲の量のゲルマニウムを含有することによって発光強度を強くすることができることが実験的に見出された。
【0015】
前記酸化ゲルマニウムは、ゲルマニウムを微粒子化したのち、酸化して形成されてもよい。
前記領域は、ゲルマニウムをイオン注入することにより形成されてもよい。
前記イオン注入されるゲルマニウムは、注入以前に負イオンまたは中性イオン化してもよい。
前記イオン注入は、注入エネルギーを変えて複数回、注入してもよい。
前記領域は、酸化シリコンとゲルマニウムを同時に堆積することにより形成してもよい。
前記領域は、酸化シリコンとゲルマニウムの混合物を塗布または吹き付けることにより形成してもよい。
前記領域は、酸化ゲルマニウムを塗布または吹き付けすることで形成していてもよい。
前記熱処理の前に、水分に曝してもよい。
前記熱処理は、不活性雰囲気中で第1熱処理した後、更に酸化性雰囲気中で第2熱処理してもよい。
前記熱処理の温度は、400℃以上1200℃以下でもよい。
前記熱処理の雰囲気中に、H2Oを含んでもよい。
【0016】
また、本発明は、上記記載の発光素子を備えた固体照明、ディスプレイも提供する。上記発光素子を発光源として用いれば照明や、ディスプレイのフレキシブル化、軽量化及び薄型化を比較的容易に達成することができる。
ここで示した種々の実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0018】
1.第1実施形態
1−1.発光素子
図1を用いて本発明の一実施形態の発光素子について説明する。図1は、本実施形態の発光素子10の構造を示す断面図である。
【0019】
本実施形態の発光素子10は、第1電極1と、第2電極3と、第1及び第2電極1,3間に設けられ酸化ゲルマニウム5を含む担持体7を備え、前記酸化ゲルマニウムは、少なくとも一部が酸素欠損を有し、担持体7に対して電位差を与えた際の発光の波長のピークが250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方である。第1及び第2電極1,3間に電圧が印加されると、酸化ゲルマニウムを含む担持体7から光が放出される。
【0020】
1−1−1.第1及び第2電極
第1電極1及び第2電極3は、担持体7に対して電圧を印加することができるものであればその構成は特に限定されない。例えば、金属や半導体からなる。第1電極1と第2電極3は、同じ材料であっても異なる材料であってもよい。担持体7からの光取り出し効率を向上させるために第1電極1と第2電極3の少なくとも一方は、発光波長に対して透明であることが好ましい。波長250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方の光の透過率が50%以上99.99%以下の電極であっても構わず、特に限定されない。例えば、ITOなどの金属酸化物薄膜またはAl、Ti、Taなどの金属薄膜またはSi、SiC、GaNなどの半導体薄膜である。一例では、第1電極1は、担持体7上に配置されたITO電極からなり、第2電極3は、担持体7を間に挟んで第1電極3の反対側に導電性のシリコン基板からなる。
他の一例では、第1電極1はスリット構造あるいはポーラス構造などの穴開き構造である。短波長、特に300nm以下の光に対しては多くの透明導電膜の透過率が著しく低下する。透過性を確保するには、極薄膜にする必要がある。しかしながら、極薄膜にすると電気的抵抗が高くなる恐れが生じる。そこでより低抵抗のAl等の金属薄膜を用いることができる。金属は極薄膜にすれば短波長の光を透過するようになる。より好ましいのは、例えば格子戸状にITOやAlなどの導電体を成膜することで、電位差は導電体で与え、生じた短波長の光は導電体が成膜されていない箇所から取り出すことができる。
穴あき構造の電極には、導電性のナノワイヤを用いて作製することができる。たとえばナノワイヤを分散させた溶液を塗布し、乾燥することでナノワイヤが適度に重なり合うとともに隙間を有する構造ができる。ナノワイヤにはシリコン、好ましくはドーピングして導電性を高めたシリコンナノワイヤや、カーボンナノチューブ、あるいは金属ナノロッドを用いることができる。
【0021】
1−1−2.担持体
担持体7は、酸化ゲルマニウム5を担持することができるものであればその構成は特に限定されない。担持体7の光透過率は特に限定されないが、波長250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方の光の透過率が50%以上であることが好ましい。酸化ゲルマニウム5を含む担持体7から放出される光のピーク波長は300または400nm前後であるので、波長250〜350の範囲内、または350〜500nmの範囲内、もしくはその両方での光透過率が高ければその分だけ光取り出し効率が高くなるからである。また、担持体7の材料は、特に限定されないが、担持体7は、絶縁体からなることが好ましい。この場合、発光に寄与することなく電極間を流れる電流を低減できるので、実効的な発光効率を向上することができ、低消費電力で発光が可能だからである。また、担持体7は、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなることがさらに好ましい。この場合、シリコン系の絶縁膜であり、シリコンはゲルマニウムよりも酸素と結合しやすいので、ゲルマニウム原子が不必要に酸素と結合せず、また酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは比較的酸素を透過しにくいのでゲルマニウム原子が外気の浸透によって酸化されたたりしないので、発光が安定し劣化も少ない。また、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは通常のシリコン半導体プロセスで製膜可能であるので量産性に優れる上、他の電子回路と組み合わせることが可能だからである。さらに、担持体7は、酸化シリコンからなることが特に好ましい。実験の結果、窒化シリコンは酸素を透過しにくいため、ゲルマニウムを担持体に担持させたのちに、酸化を行うのがやや困難であることが分かった。酸化シリコンもしくは酸窒化シリコンの場合は窒化シリコンにくらべて低温、短時間で発光強度が十分な程度に酸化ゲルマニウムを生成できた。また、この場合、シリコン基板の熱酸化によって容易に担持体7を形成することができる。従って、基板9と担持体7は、それぞれ、シリコン基板と、その上のシリコン熱酸化膜であることが好ましい。基板9は、絶縁体基板、半導体基板、導電体基板の何れであってもよく、省略してもよい。もし電子回路ではなく、照明やディスプレイなど大面積が必要な場合は、CVDや塗布方式で酸化シリコンを形成したり、他の絶縁体等を用いることができる。
【0022】
1−1−3.ゲルマニウム発光体
ゲルマニウム発光体5は、ゲルマニウム原子を含み、発光源となるものであれば特に限定されないが例えばゲルマニウム微粒子である。ゲルマニウム微粒子とは、ゲルマニウム原子を含む微粒子である。また、ゲルマニウム発光体5は、少なくとも一部が酸化したゲルマニウム微粒子であってもよい。ゲルマニウム発光体5は、ゲルマニウムとその酸化物を主成分とする微粒子であることが好ましく、実質的にゲルマニウムとその酸化物のみからなる微粒子であることがさらに好ましく、実質的にゲルマニウムの酸化物のみからなる微粒子であることがさらに好ましい。
本発明者の実験によると、ゲルマニウム基板を熱酸化あるいはゲルマニウム原子をイオン注入等で担持体に含有させた後、ゲルマニウム原子を酸化して酸化ゲルマニウムを作製した発光素子に比べて、担持体中にゲルマニウム微粒子を形成した後、酸化して酸化ゲルマニウムを作製した発光素子の方が、発光強度、耐久性ともに優れていることが判明した。これはおそらく、微粒子表面では効率よく酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムが形成され、かつ比較的安定に存在するためだと考えられる。
【0023】
ゲルマニウム発光体5は、担持体7中に含まれており、担持体7中に均一に分散していることが好ましい。担持体7中のゲルマニウム発光体5の数密度は、特に限定されない。ゲルマニウム発光体5は、一例では、数密度が1×1016個/cm3〜1×1021個/cm3となるように担持体7中に含めることができる。
【0024】
ゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子は、好ましくは、最大粒径が1〜20nmである。この場合、発光効率が特に高くなるからである。本発明において、「最大粒径」とは、担持体7の任意の断面(図1のような断面であってもよく、紙面に垂直な断面であってもよい。)の100nm角の範囲をTEM観察した場合に観察できた微粒子のうち粒径が最も大きいものの粒径を意味する。また、本発明において「粒径」とは、断面TEM写真で見た場合に、TEM写真に射影され微粒子の平面像が含むことのできる最も長い線分の長さを意味する。ゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子の最大粒径は、例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19又は20nmである。ゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子の最大粒径は、ここで例示した何れか2つの数値の間の範囲内であってもよく、何れか1つの数値以下であってもよい。
【0025】
ゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子は、酸化ゲルマニウムを含み、この酸化ゲルマニウムは、少なくとも一部が酸素欠損を有している。ゲルマニウム原子は4本の結合手を有しているので、各結合手が酸素原子に結合すると、各ゲルマニウム原子には4つの酸素原子が結合することになる。このような状態の酸化ゲルマニウムを「酸素欠損を有さない酸化ゲルマニウム」又は「GeO2」と称する。一方、ゲルマニウムの酸化度合いによっては各ゲルマニウム原子の4本の結合手の一部のみを酸素原子に結合させ、残りを未結合の状態(つまり、酸素原子に結合していない状態)にすることができる。このような状態の酸化ゲルマニウムを「酸素欠損を有する酸化ゲルマニウム」又は「GeO」と称する。
GeOが存在している場所は、特に限定されず、GeOは、例えば、ゲルマニウム微粒子の表面に配置される。一例では、中心部がGeであり、その周囲がGeOで覆われている。また、GeOの周囲がGeO2で覆われていてもよい。
【0026】
酸化ゲルマニウム全体(GeO2+GeO)に対する酸素欠損を有する酸化ゲルマニウム(GeO)の割合(以下、「酸素欠損率」とも称する。)は、XPSスペクトルのGeの3dピーク付近のスペクトルにおいて、GeO2に起因するピークの面積SGeO2と、GeOに起因するピークの面積SGeOを求め、SGeO/(SGeO2+SGeO)を算出することによって求めることができる。XPS測定のためのX線源には、例えば単色化したAl Kα線(1486.6eV)を用いることができる。GeO2に起因するピークとGeOに起因するピークは、裾野が重なるが、図2に示すようにガウスフィッティングを行ってGeO2に起因するピークとGeOに起因するピークとを波形分離することによって面積SGeO2及びSGeOを求めることができる。GeO2及びGeOのピークエネルギーは、それぞれ約33.5,32eVである。
【0027】
GeOが発光に関与していることが本発明者の実験によって明らかになったので、酸素欠損率が高いほど発光効率が高くなると考えられる。酸素欠損率の最大値は、特に限定されないが、0.1以上が好ましい。この最大値が小さすぎると発光しなかったり発光強度が小さくなりすぎる可能性があるからである。この最大値は、具体的には例えば0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,0.95,0.99,1である。この最大値は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
また、酸素欠損率の平均値は、特に限定されないが、0.1以上が好ましい。この平均値が小さすぎると発光しなかったり発光強度が小さくなりすぎる可能性があるからである。この平均値は、具体的には例えば0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,0.95,0.99,1である。この平均値は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。酸素欠損率の平均値は、ゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子の数密度がピーク値の1/100以上となる範囲で測定する。酸素欠損率の平均値は、具体的には例えば、担持体7の深さ方向の一定間隔の複数の位置で酸素欠損率の測定を行い、この測定で得られた測定値を代数平均することによって求めることができる。測定を行う位置の間隔は、できるだけ狭い方が好ましく、例えば、10nm以下とする。酸素欠損率の測定は、例えば、担持体7のエッチングを同条件で一定時間行う度に行ってもよい。エッチング条件は、例えば、4keVでのアルゴンエッチングを5分間にする。
【0029】
ところで、XPSスペクトルのGeの2pピーク付近のスペクトルにおいて、ゲルマニウム(Ge)に起因するピークの面積SGeと、酸化ゲルマニウム(GeO+GeO2)に起因するピークの面積S酸化Geを求め、SGeO/(SGe+S酸化Ge)を算出することによってGeの酸化率を求めることができる。また、上記の酸素欠損率の平均値と同様の方法で酸化率の平均値を求めることができる。この酸化率の平均値は、特に限定されないが、例えば、1,5,10,15,20,25,30,34.9,35,40,45,50,55,60,60.1,65,70,70.1,75,80,85,90,95,99,100%である。この酸化率の平均値は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
担持体7中にゲルマニウム発光体5であるゲルマニウム微粒子を含有させる方法は、特に限定されないが、一例では、担持体7に対してゲルマニウムをイオン注入して担持体7中にゲルマニウムを含有する領域を形成し、その後、少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムが形成されるように熱処理を行う方法が考えられる。イオン注入後の熱処理によってゲルマニウム原子が酸化されて少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムが形成される。熱処理条件やあるいは注入条件によって、注入されたゲルマニウム原子は拡散および凝集して多数の微粒子が担持体7中に形成される。ゲルマニウムのイオン注入は、例えば、注入エネルギー5〜100keVで注入量1×1014〜1×1017ions/cm2の条件で行うことができる。
酸素欠損率は、ゲルマニウムの注入量、熱処理時間、熱処理温度、熱処理雰囲気等を変化させることによって適宜調節することができる。具体的には熱処理雰囲気中の酸素の分圧や流量を調整することによって酸素欠損率を高めることができる。例えば膜厚100nmの酸化シリコン中のゲルマニウムの原子濃度が10%以下の場合において、1時間、800℃の熱処理においては、真空引き(毎分400リットル)しながら不活性ガスを供給(毎分50ミリリットル)した場合は、ゲルマニウムは一部酸素と結合するが酸素が不足しているので完全には酸化されず酸素欠損が生成できる。不活性ガスに体積20%の酸素を混合した1気圧の雰囲気中では、酸素の供給過多で酸素欠損が減少する。酸素欠損率を高めるのに適した雰囲気は、ゲルマニウムの含有率や含有場所(イオン注入では注入条件)や熱処理時間、温度など他の様々なパラメーターにも左右されるが、一例では、ゲルマニウムの原子濃度を比較的高くし、不活性ガスに酸素を混合したガスを真空引きしながら供給することによって酸素欠損率を高めることができる。
【0031】
さらに好ましくは、熱処理は、不活性雰囲気中で第1熱処理した後、更に酸化性雰囲気中で第2熱処理する。一例では、膜厚50nmの酸化シリコン中のゲルマニウムの原子濃度が2〜5原子%の場合において、1時間700℃の熱処理において、真空引き(毎分400リットル)しながら不活性ガスを供給(毎分50ミリリットル)して700℃で1時間熱処理し、その後雰囲気ガスに酸素を体積20%混合して、真空引き(毎分400リットル) しながら供給(毎分10ミリリットル)して700℃で1時間熱処理した場合は、ゲルマニウムの微粒子が形成された後、ゲルマニウム微粒子の少なくとも表面が酸化され、酸素が一部欠損した酸化ゲルマニウムが形成される。
【0032】
また更なる実験の結果、熱処理の前に水分に曝すと発光強度が増大することを見出した。これは酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムの生成が促進されるためと考えられる。更に本発明者は、熱処理の雰囲気中にH2Oを含ませることを着想した。通常の熱処理の雰囲気は乾燥気体で行うが、少し湿気を含ませて実験を行うとやはり発光強度が増大した。
【0033】
また、ゲルマニウムは、担持体7中にゲルマニウム濃度が1.5〜20原子%になるように含有させることが好ましい。400℃以上1200℃以下の熱処理した場合は、この範囲であれば発光効率が比較的高くなるからである。ただし熱処理時間は、熱処理温度に応じて簡単な条件出しを行い、低温から高温になるにつれて短時間とした。ゲルマニウム濃度は、具体的には例えば1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20原子%である。この濃度は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ゲルマニウム濃度は、例えば高分解能RBS(ラザフォード後方散乱)法によって測定することができる。その他、SIMS(二次イオン質量分析法)等の様々な分析法によって測定することが可能である。なお、ゲルマニウム濃度の測定は、ゲルマニウム濃度がピーク値の1/100以上となる範囲で行う。熱処理の温度は1時間では、600〜900℃が好ましく、700〜800℃がさらに好ましい。この範囲であれば発光効率が比較的高くなるからである。これは、注入したゲルマニウム原子の凝集および酸化、あるいは注入時等に生じた担持体中の酸化ゲルマニウム以外の欠陥を回復が可能な温度であるからと考えられる。
【0034】
イオン注入されるゲルマニウムは、注入以前に負イオン化または中性化することが好ましい。本発明者はゲルマニウムを注入するに当たって、正イオンと負イオンの違いを調べるため、熱酸化膜を形成したシリコン基板に、ゲルマニウムの正イオン注入および負イオン注入を委託した。その結果、ゲルマニウムを負イオン注入して作製した発光素子は良好な発光特性を示したのに比べ、正イオン注入して作製した発光素子では発光特性が劣るものが多く、中には発光が確認できないものも存在した。そこで正イオン注入時の状況を詳しく調べると、基板がシリコンであったため薄膜の酸化膜であっても導電性基板に対しては通常通り電子シャワー無しで正イオン注入した、との回答を得た。本発明者は、イオンを中性化することを着想し再度、電子シャワーを行いながら正イオン注入するように指示し、発光素子を作製した。その結果、良好な発光特性を示す発光素子を得た。
【0035】
さらに、イオン注入はエネルギーをかえて複数回行うことができる。この場合、本発明の発光素子に適したゲルマニウム濃度の領域を担持体中の深さ方向により広く、作製することができる。したがって、発光領域が深さ方向に広がり単位面積当たりの発光強度が増大する。
【0036】
担持体7中にゲルマニウムを含有する領域を形成する方法としては、イオン注入の他、担持体の材料とゲルマニウムを同時または交互に堆積することにより形成することができる。たとえば、酸化シリコンとゲルマニウムを、RFスパッタ装置を用いて堆積したり、CVD装置を用いて酸化シリコンとゲルマニウムを交互に堆積することができる。この時、ゲルマニウムの堆積時間を短くして膜になる前の微粒子の状態で積層することも可能である。または、あらかじめ作製した酸化シリコンとゲルマニウムの混合物、あるいは酸化ゲルマニウムを塗布または吹き付けることにより形成することもできる。一例として、図3を用いて説明する。予めイオン注入や熱処理などの方法で酸化シリコン中に酸化ゲルマニウムが分散した材料を作製し、ボールミル法によって数十nm〜数百nm程度の微粒子に粉砕する。その酸化ゲルマニウムを含む酸化シリコンの微粒子をガラス等の透明基板上に形成したITO電極の上に薄く塗布または吹き付ける。その後、表面に絶縁性の液体を塗布したシリコン基板等の導電性の板で挟み込む。電流制限用の抵抗を介してシリコン基板とITOの間に、交流電圧を印加することで、同様の青色発光を得た。
【0037】
1−1−4.発光波長
本実施形態の発光素子10は、電極間に電圧を印加した際のエレクトロルミネッセンス(EL)の波長のピークが250〜350の範囲内(より厳密には、255〜340nm,260〜330nm,270〜320nm,280〜310nm又は285〜300nm)、または350〜500nmの範囲内(より厳密には、355〜480nm,360〜460nm,365〜440nm,370〜420nm,375〜410nm,380〜400nm又は385〜395nm)、もしくはその両方の範囲内である。
【0038】
1−1−5.発光素子の使用方法
本実施形態の発光素子10は、第1電極1と第2電極3の間に電圧を印加することによって発光させることができる。印加する電圧は、直流電圧であっても交流電圧であってもよいが、交流電圧を印加した場合は耐久性がある。交流電圧の波形は、例えば正弦波であり、その電圧は、例えば5〜100Vp−pであり、その周波数は、例えば0.01Hz〜10kHzである。この電圧は、具体的には例えば5,10,15,20,25,30,40,50,60,70,80,90,100Vp−pである。この電圧は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この周波数は、具体的には例えば0.01Hz,0.1,1,10,50,60,100,1000,10000Hzである。この周波数はここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明者は第1及び第2電極間に流れる電流に制限を加える手段を第1または第2電極と電気的に接続することで耐久性が向上することを見出した。
電流を制限する手段は、第1または第2の電極と電気的に接続された電気抵抗体を用いることができる。電気抵抗体は、発光素子と電気的に接続された外部回路中の電気抵抗でもよい。
【0039】
あるいは、第1または第2電極の少なくとも一方と担持体の間に、高抵抗の薄膜を更に加えることで電気抵抗体とすることができる。たとえばSiNやSiONの薄膜を、担持体の形成後にCVD法で約5nm程度堆積し、その後第2電極を形成すればよい。膜厚は、発光素子の特性によって増減させる必要がある。
あるいは注入を用いて担持体に隣接する電極表面付近から数nm〜数十nmまでの深さをアモルファス化して高抵抗層を作製することができる。たとえば、シリコン基板を第1電極とし、その上の担持体にゲルマニウムを注入する際に、第1電極にゲルマニウムがある程度撃ち込まれることでシリコン基板の表面から数nmから数十nmを比較的任意の深さでアモルファス化することができる。
【0040】
また、電気抵抗は可変抵抗であることが好ましい。実験の結果、電気抵抗の値を変えることで発光強度が変化することを見出した。さらに電流をモニターしながら実験を進めると、発光素子の作成条件によって、発光に適した電流値が存在することがわかった。可変抵抗であれば、発光素子の発光特性が多少ばらついても、第1または第2の電極と電気的に接続された電気抵抗の値を調整することで発光強度を揃えることが可能である。
更に第1及び第2電極間に直流電圧を印加することで、動作電圧を低下させることができた。詳しい実験の結果、周波数を過剰に高くすると発光の輝度が低下することを見出した。そこで、直流電圧を印加することを着想し、過剰な電流が流れないように電気抵抗を第2の電極に接続し、直流電圧の電圧および抵抗値を慎重に変化させた。その結果、交流に比べて低電圧動作し、耐久性にも問題がないことが判明した。直流電圧で動作可能であれば、太陽電池で発電した電力や蓄電池からの電力で直接動作することができるという利点も有する。
【0041】
1−2.ディスプレイ
上記実施形態の発光素子10は、比較的短波長の光を放出するので、適切な蛍光体を用いることによって青色、緑色及び赤色の光に変換することができる。従って、発光素子10を用いてカラーディスプレイを作成することができる。また、発光素子10を発光源として用いればディスプレイのフレキシブル化、軽量化及び薄型化を比較的容易に達成することができる。
【0042】
以上の実施形態で示した種々の特徴は,互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合,そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して,単独で又は組み合わせて,本発明に採用することができる。
【0043】
1−3.実証実験
1−3−1.EL実験
以下の方法でEL実験を行った。
まず酸素雰囲気中,1000℃、40分でシリコン基板を熱酸化することによって表面にシリコン熱酸化膜を形成した。
次に、シリコン熱酸化膜中にGeイオンを50keVで6.0×1015ions/cm2、20keVで2.0×1015ions/cm2、10keVで9.0×1014ions/cm2の条件でこの順番で多重に注入した。
次に、ロータリーポンプで引きながら、窒素を50ml流入させ、700℃で1時間、20%に希釈した酸素を10ml流入させながら同じく、1時間熱処理した。この熱処理によって注入したGeの凝集及び酸化によってGeが酸化されて少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムが形成される。
次に、シリコン熱酸化膜上にITO電極を形成し、シリコン基板側にアルミニウム電極を形成し、EL実験に用いる発光素子を得た。
【0044】
この発光素子のITO電極とアルミニウム電極の間に交流電圧(正弦波、50Vp−p、1kHz)を印加したところ青色の発光が確認された。
また、この青色の発光の発光スペクトルを図4に示す。図4を参照すると、確認された青色の発光は、300nmから550nmの波長の光であり、350nmから500nmの間にピークを有するエレクトロルミネッセンス発光であることが分かった。
また、交流電圧の代わりに直流電圧を印加したところ、25Vで発光が確認でき、発光強度も高かった。
またITO電極をスリット構造にした時の、発光スペクトルを図5に示す。目視では強度が強かったがほぼおなじ青色発光であったが、波長250〜350nmの間にピークを有する紫外光のエレクトロルミネッセンス発光でもあることがわかった。
これらの二つの発光は、第2電極上にフィルター膜をさらに備えることで片方をカットすることができる。たとえば本発明の発光素子ではフィルター用の多層膜をさらに形成することは容易である。
【0045】
1−3−2.酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムと発光との関係
以下に示す方法によって、酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムが本発明の発光素子の発光に関与していることを確認した。
【0046】
まず、上記実施の形態と同様の工程で、サンプル作製をおこなった。ただし、アニールの工程では雰囲気を水素に変更した。アニール炉の炉内および配管は、残留酸素が極力少なくなるように充分な真空引きと置換作業を行った。
その上で、同様の手順でEL実験を行ったところ、発光強度が弱かった。これは、窒素中のアニールでは、Geは注入中にSiO2から解離した酸素や、供給窒素あるいは炉内の残留酸素によって酸化するが、本実験の水素中アニールではGeの酸化に寄与する酸素が少なく、また水素によって酸化したGeが還元されGeがほとんど酸化しなかったためと考えられる。
従って、本発明の発光素子の発光には、酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムであるGeOが関与していることが確認できた。
【0047】
次に、互いに異なる種々の温度条件と注入条件で発光素子を作製し、EL波長を測定した。EL波長の測定には、島津製作所製、分光蛍光光度計RF−5300PCに改造を加えた装置を用いた。発光素子の作製方法は、熱処理温度やGe注入量を適宜変化させた以外は「1−3−1.EL実験」で説明した通りである。
【0048】
得られた結果を図6、図7に示す。図6中の温度は、熱処理温度(時間は1時間)を示す。図7中の「原子%」は、Ge注入後のシリコン熱酸化膜内でのGe濃度を示す。このGe濃度は、「KOBELCO製HRBS500」を用いてラザフォード後方散乱法によって測定した。具体的には、450keVでHeイオンビームを照射し、反跳粒子を磁場型エネルギー分析器を用いて分析した。シリコン酸化膜中のゲルマニウム原子の深さ分布をシリコン酸化膜中のシリコン原子からの散乱を基準して求めることができる。本実験ではシリコン酸化膜とシリコンの密度を2.2と2.33g/cm3として計算した。図6でのGe濃度は5原子%であり、図7での熱処理温度は800℃(時間は1時間)である。
【0049】
図6,図7を参照すると、熱処理温度やGe濃度が変わってもELのピーク波長は、ほぼ400nmで一定であることが分かる。
【0050】
ところで、図6を参照すると、熱処理温度は、400〜1000℃が好ましく、700〜900℃がさらに好ましいことが分かる。また、図7を参照すると、Ge濃度は、0.1〜20原子%が好ましく、2〜11原子%がさらに好ましいことが分かる。より低温または高温での熱処理実験を行うべきか、予備検討を行ったところ、注入直後でもわずかに発光スペクトルを得ることができたが、1200℃以上の高温で熱処理すると発光スペクトルを得ることが困難になった。
【0051】
1−3−3.Ge,GeO,GeO2の割合の深さ方向分布
「1−3−1.EL実験」で説明した方法に従って発光素子を作製し、シリコン熱酸化膜内でのGe,GeO,GeO2の割合の深さ方向分布を調べた。ここで作製した発光素子のGe濃度は5原子%であり、熱処理温度は800℃(時間は1時間)である。
XPSは通常試料表面から深さ数nmの範囲の分析ができるので、アルゴンイオンビームによるエッチングとXPS測定を交互に行うことによって、深さ50nmまでの領域においてGe,GeO,GeO2の割合の深さ方向の変化を調べた。アルゴンイオンビームのエネルギーは4kV,ビーム電流は15mAで、1回当り300秒照射した。その時のXPS測定結果を各深さについて、分かり易いように縦方向にグラフを平行移動して並べたものを図8(a)に示す。また、各深さに含まれるGe原子の状態を、Ge(金属Ge),GeO,GeO2の割合で示したグラフを図8(b)に示す。
【0052】
これによると、「1−3−1.EL実験」で説明した注入方法でGeの注入濃度が比較的高い深さ10〜50nmの領域では、酸化されていないGeの割合は30〜70%である。GeO2は0〜20%の間で、およそ10%である。Geが完全に酸化されず一部酸化したGeOは10〜50%の間である。
【0053】
各深さでのGe,GeO,GeO2の割合は、スペクトルのGeの3dピーク付近のXPSスペクトルにおいて、Geに起因するピークの面積SGeと、GeOに起因するピークの面積SGeOと、GeO2に起因するピークの面積SGeO2とを求め、(SG,SGeO,SGeO2)/(SG+SGeO+SGeO2)を各深さで算出することによって求めた。また、各深さでの、酸化ゲルマニウム全体(GeO2+GeO)に対するGeO,GeO2の割合を図9のグラフに示す。
【0054】
これによると、酸化ゲルマニウムの内、完全に酸化されてGeO2となっている割合は、ゲルマニウムの濃度が低く、雰囲気の影響を強く受けてゲルマニウムが完全に酸化されやすい表面近傍を除いて、およそ20〜60%の間で、Geが完全に酸化されず一部酸化したGeOはおよそ40〜80%の間である。「1−3−1.EL実験」で説明した注入方法でGeの注入濃度が比較的高い深さ10〜40nmの領域では、酸化ゲルマニウムの内、完全に酸化されてGeO2となっている割合はおよそ50%以下で、およそ20〜30%である。Geが完全に酸化されず一部酸化したGeOはおよそ50%以上で70〜80%である。各深さでのGeO,GeO2の割合は、スペクトルのGeの3dピーク付近のXPSスペクトルにおいて、GeOに起因するピークの面積SGeOと、GeO2に起因するピークの面積SGeO2とを求め、(SGeO,SGeO2)/(SGeO+SGeO2)を各深さで算出することによって求めた。XPSスペクトルは、X線源として単色化したAl、Kα線(1486.6eV)を用いて測定した。
【0055】
2.第2実施形態
また、本実施形態の発光素子は、基板をさらに備え、前記担持体は、前記基板上に設けられかつ基板表面に平行な第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を有し、第1電極と第2電極は、第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ設けられ、第1電極、第2電極及び第1平行面の上に設けられた透光性の保護層を備える。
【0056】
従来のEL素子の発光効率が低い原因は、第1または第2の電極から供給された電子が、発光中心と衝突または近傍を通過して発光中心の電子を励起する確率が低いためであると考えた。このことを一例として特許文献2に開示されたEL素子で説明する。図22は絶縁体層に微粒子を形成した従来のEL素子の概略断面図である。図23は絶縁体層に微粒子を形成した従来のEL素子の模式的なバンド図である。特許文献2に開示されたEL素子では、シリコン窒化物多結晶膜とシリコン多結晶膜を交互に積層し、その後熱処理することにより微粒子を形成するため、微粒子の密度が高い領域と微粒子の密度が低い領域とが交互に積層していると考えられる。この素子では、シリコン層122からシリコン窒化膜121の伝導帯に注入された電子はシリコン微粒子123の密度が高い領域に垂直な方向の電界によって加速される。シリコン微粒子123の密度が高い領域と電子の加速方向が直交しているため、電子が電界により加速されシリコン微粒子123の電子を励起するのに十分な運動エネルギーを得た場所に発光中心であるシリコン微粒子123が存在する確率は低くなる。つまり、発光中心であるシリコン微粒子123を発光させることができる電子がシリコン微粒子123に衝突する確率は低くなり、シリコン微粒子123が発光する確率は低いと考えられる。
【0057】
また、シリコン窒化膜121に供給された個々の電子は、シリコン窒化膜121中でフォノン等の散乱により運動エネルギーを失う場合があるため、電子の加速方向が直交して配置されたシリコン微粒子123にたどり着いた電子が発光中心を発光させる十分な運動エネルギーを有する確率は低いと考えられる。例えば、図23の破線の矢印のように、シリコン窒化膜121の伝導帯に供給された電子が、発光中心にたどり着く前にフォノンなどの散乱により運動エネルギーを失った場合、電界で加速された電子がいくら大きなエネルギーを持っていてもちょうど発光中心と衝突する所で発光中心の電子を励起させる十分なエネルギーを持っていなくては発光に寄与しないと考えられる。すなわち、従来のEL素子では、十分な運動エネルギーを持つ電子と発光中心の衝突回数が小さく、発光効率が制限されてしまう。
【0058】
本実施形態の発光素子は、発光効率を高くすることができる構造を有する。このことを図面を用いて説明する。図10(a)は、本発明の一実施形態の発光素子の概略断面図であり、図10(b)及び(c)は、本発明の一実施形態の発光素子の第1電極と第2電極の間の担持体層の概略断面図である。なお図10(c)では発光領域27と第1電極23及び第2電極24の間にd1の間隔を設けている。図10(b)、(c)に示すように本発明では、第1電極23と第2電極24の間に印加する電界の方向、つまり第1電極23または第2電極24から供給された電子が加速される方向と、発光体28が分布する領域である発光領域27を平行にすることができる。このことにより、電界により加速され発光中心の電子を励起させる運動エネルギーを得た電子が存在する場所に発光体28が存在する確率を高くすることができる。つまり、第1電極23又は第2電極24から注入され電界によって加速された電子が発光中心である発光体28の電子を励起させる運動エネルギーをもった状態で発光体28と相互作用する確率を高くすることができる。その結果、発光素子26の発光効率を増加することができる。また、一度発光体28と相互作用した電子が、再び電界により加速され十分な運動エネルギーを得た後発光体28と相互作用することができるため、発光素子26の発光効率を増加することができる。
【0059】
以下、本発明の他の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0060】
2−1.無機EL素子の構造
本実施形態の無機EL素子26は、基板21と、基板21上に設けられかつ第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を有する透光性の担持体層22と、第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ設けられた第1電極23および第2電極24と、第1電極23、第2電極24及び第1平行面の上に設けられた透光性の保護層25と、第1電極23と第2電極24の間の担持体層22の一部に形成された発光領域27とを備え、発光領域27は、第1平行面と平行に分布する発光体28が形成された領域であることを特徴とする。
また、本実施形態の無機EL素子26は、基板21と担持体層22の間に反射層を設けてもよい。なお、図11は、本発明の一実施形態の反射層29を設けた無機EL素子の概略断面図である。
以下、本発明の一実施形態の無機EL素子の各構成要素について説明する。
【0061】
2−1−1.基板
基板21は、特に限定されないが、例えば、シリコン基板である。
基板21をシリコン基板とすることで、後述する担持体層22をシリコン基板表面に形成される酸化シリコンとすることができる。また、基板21をシリコン基板とすることで、シリコン基板上にLSIと本発明の無機EL素子を混載することができる。
【0062】
2−1−2.担持体層
担持体層22は、基板21上に設けられ、かつ第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を有し、かつ透光性を有する絶縁体又は高抵抗の半導体であれば特に限定されない。なお、この発明で透光性とは、無機EL素子が発光する光を透過することができることをいう。
第1平行面とは、担持体層22の上面の一部の面である。また、第2平行面とは、担持体層22の上面の一部の面であって、第1平行面より低い面である。また、担持体層22は、第1平行面と第2平行面の間に段差を有することができる。
また、第1平行面は、例えば、一定の幅を持った線状とすることができ、第2平行面は、例えば、線状の第1平行面の両側に一定の幅を持った線状とすることができる。また、第1平行面及び第2平行面は、同一基板上に複数形成することができる。
担持体層22の材料は、透光性を有する絶縁体であって、発光領域27を形成することができれば、特に限定されないが、例えば酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンである。また、担持体層22は、積層構造で形成されていても良い。なお、積層構造とした場合、下の層を後述する反射層29とすることができる。また、担持体層22には、電気的絶縁性が要求される。一般にCMOS技術に使用される酸化シリコンからなる絶縁層は絶縁性に優れ、耐圧が10MV/cm程度であり、十分な性能を有すると考えられる。
【0063】
また、担持体層22は、例えば、波長250nm以上500nm以下の光の透過率が50%以上99.99%以下とすることができる。250nm〜500nmの光の透過率が高いことで、この光を直接ディスプレイに使用することや無機EL素子26の上に、色変換素子やカラーフィルタを乗せて異なる波長の光を出すことが可能となる。また、後述する発光体28がGeO及びGeO2を含む微粒子である場合、微粒子が波長390nm程度のEL発光を示すため、このEL発光を効率よく利用することができる。
担持体層22の形状は、第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を有すれば特に限定されないが、例えば、第2平行面の下の担持体層22の厚さd3は、第1電極23と第2電極24との間の担持体層22の長さd2より厚い厚さとすることができる。d3をd2より大きくすることにより、電圧印加をする際に第1電極23又は第2電極24と基板1との間に電気が流れショートすることを回避することができる。
【0064】
また、第2平行面の下の担持体層22の厚さd3は、例えば、80〜150nm(例えば、80、90、100、110、120、130、140及び150nmの何れか2つの間の範囲)である。
また、第1平行面の下の担持体層22の厚さは、例えば、d3よりも厚い厚さであって、100〜200nm(例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190及び200nmの何れか2つの間の範囲)である。
また、第1電極23と第2電極24との間の長さd2は、例えば、d3よりも短い長さであって、40〜100nm(例えば、40、50、60、70、80、90及び100nmの何れか2つの間の範囲)の間の範囲である。d2を40〜100nmとすることで無機EL素子を発光させるための駆動電圧を十分に低下することができる。特にd2を40〜60nmとすることで、駆動AC電圧が30〜40Vとすることができ、家庭用電化製品等への利用が可能となる。また、この40〜60nmの線幅加工は現在または近い将来のシリコン基板に形成されるLSIのゲート長と同等であり、同一のシリコン基板に無機EL素子とLSIを混載することが可能となる。また、この線幅加工は、ArF等のエキシマレーザーを用いて実現可能である。
また、d2が100nmより大きい場合、EL発光に必要な閾値電圧を大きくすることにつながる場合がある。
【0065】
2−1−3.発光領域
発光領域27は、第1電極23と第2電極24の間の担持体層22の一部に形成され、第1平行面と平行に担持体層22中に分布する複数の発光体28が形成された領域であれば特に限定されない。
また、発光領域27は、第1平行面と平行な発光体28の密度が相対的に高い領域を有することができる。この発光体28の密度が高い領域を電子が電界によりこの領域と平行に加速されることにより、発光中心である発光体28の電子を励起するエネルギーをもった電子が発光体28に衝突する確率を高くすることができる。つまり、無機EL素子の発光効率を高くすることができる。
なお、担持体層22中に発光体28の密度の差が顕著に異なる領域が存在する場合、発光領域27は、発光体28の密度が高い領域を指す。
発光領域27の形状は、第1平行面と平行であれば特に限定されない。
また、発光領域27は、例えば、第1電極23および第2電極24の膜厚方向の6分の1〜6分の5(例えば、6分の1、6分の2、6分の3、6分の4、6分の5の何れか2つの間の範囲)に発光体8の密度が高い領域を有することができる。また、発光体28の密度が高い領域を複数有することもできる。
また、発光領域27の厚さは、例えば第1平面と第2平面の間の長さよりも薄い厚さであって、5〜60nm(例えば5,10、20、30、40、50及び60nmの何れか2つの間の範囲)である。
また、発光領域27の第1電極23と第2電極24との間方向の長さは、例えばd2よりも短い長さであって、20〜80nm(例えば20、30、40、50、60、70及び80nmの何れか2つの間の範囲)である。
【0066】
また、発光領域27と、第1電極23および第2電極24との間の長さd1は、例えば、7〜15nm(例えば7、8、9、10、11、12、13、14及び15nmの何れか2つの間の範囲)とすることができる。
d1を7〜15nmとすることにより、発光効率を高くすることができる。このことを以下に説明する。第1電極23または第2電極24から注入された電子が電界により加速され発光中心である発光体28の電子を励起するのに十分な運動エネルギーを得る前に発光体28と相互作用しても発光せず、電子の運動エネルギーがフォノン等に失われ、熱へと変換されると考えられる。従って、電子は発光体28に到着するまでに十分な運動エネルギーを得る必要がある。従って、例えば、3MV/cm〜7MV/cm程度の電界で電子が加速されると仮定し、発光体28を発光させるための励起エネルギーが5〜10eV程度であるとすると、電子が発光体28を発光させるために必要なエネルギーを得るために、電子は7nm〜15nm程度無散乱で加速され、運動エネルギーを得る必要がある。本構成によって、電極から供給された電子は発光中心である発光体28の電子を励起するために必要なエネルギーを持って発光体28と相互作用する確率を高くすることができ、発光効率を高くすることが可能となる。なお、3MV/cm〜7MV/cm程度の電界は、シリコン酸化膜の耐圧よりも低く安定的に印加可能な電界である。
また、発光領域の上下を透明電極等で挟んだ構造からなり、電子の加速方向とEL発光の取出方向が平行となる従来のEL素子においては、透明電極の透過率が100%でないために発光効率が低減してしまうのに対し、本発明においては、電子の加速方向と発光の取出方向は垂直であり、上記の透明電極による発光強度の低減が生じないため、発光を効率よく取り出すことができる。
【0067】
2−1−4.発光体
発光体28は、発光領域27に複数形成されたものであれば、特に限定されない。
また、発光体28は、例えば微粒子、金属原子、金属イオンであり、また、例えば、ゲルマニウム、シリコン又はスズの微粒子である。また、発光体28は例えば酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムGeOおよびGeO2を含む微粒子とすることができる。特に発光体28をGeOを含む微粒子とすることにより、波長250〜500nmの間にピーク波長を持つEL発光を示すEL素子とすることができる。このような短波長の光は直接ディスプレイに使用することや無機EL素子の上に、色変換素子やカラーフィルタを乗せて異なる波長の光を出す用途に使用することができる。
【0068】
2−1−5.第1電極および第2電極
第1電極23および第2電極24は、担持体層22の第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ設けられる電極であれば特に限定されない。
また、第1電極23および第2電極24の材料は、電極材料であれば特に限定されないが、例えば、コバルトシリサイド、チタンシリサイド、ニッケルシリサイド又はヒ素、リン、ボロン等をドープしたポリシリコンである。特に第1電極23および第2電極24の材料をコバルトシリサイド、チタンシリサイド又はニッケルシリサイドとすることにより、シート抵抗を低減することができる。電極などのシート抵抗を下げることにより、発光に必要な電圧閾値を下げることができる。
【0069】
また、第1電極23および第2電極24の下面は、第2平行面と接しており、側面は、第1平行面の下の担持体層22に接している。第1電極23および第2電極24の厚さは、例えば、第1平行面と第2平行面の間の長さの80〜100%の厚さとすることができる。好ましくは90〜99%の厚さとすることができる。100%を超える厚さでは、第1電極23および第2電極24は担持体層22の第1平行面の一部の上に覆い被さる構造となり、第1電極23と第2電極24との間の距離が小さくなるため、絶縁破壊電圧が低下する。また、80%より小さい厚さでは、シート抵抗が大きくなるために、発光電圧を印加するのに必要な外部電源の能力が大きくなる。
【0070】
2−1−6.保護層
保護層25は、第1電極23、第2電極24及び第1平行面の上に設けられ、かつ透光性を有すれば特に限定されない。
また、保護層25の材料は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンである。
また、保護層25の厚さは、例えば50〜500nm(例えば50、100、150、200、250、300、400及び500nmの何れか2つの間の範囲)である。
また、保護層25の波長250nm以上330nm以下、または波長350nm以上500nm以下、もしくはその両方の光の透過率は、例えば、50%以上99.99%以下(例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、99及び99.99%の何れか2つの間の範囲)である。この波長の範囲の光の透過率が高いことで、この光を直接ディスプレイに使用することや無機EL素子26の上に、色変換素子やカラーフィルタを乗せて異なる波長の光を出すことが可能となる。また、発光体28がGeO及びGeO2を含む微粒子である場合、この微粒子がこの範囲の波長のEL発光を示すため、このEL発光を効率よく利用することができる。
また、保護層25を設けることにより、発光領域27などの大気中の酸素、水分等による劣化を防止することができる。
【0071】
2−1−7.反射層
反射層29は、基板21と担持体層22との間に設けることができる。
反射層29の材料は、例えば、Alなどの金属又は担持体層の材料と異なる材料の絶縁体の積層膜である。この反射層29を設けることにより、発光領域27においてEL発光し基板21方向へ進む光を上方向に反射させ、より効率よく光を取り出すことが可能である。
また、反射層29を絶縁体で形成することにより、第1電極23または第2電極24と基板21との間の距離が大きくなり、電気的ショートがしにくくなるというメリットを有している。また、絶縁体の積層膜からなる反射層29の材料、膜厚を任意に変化させることによって、発光領域27で発光する波長に適合した所望の波長の光を効率よく反射させることが可能である。
また、反射層29を金属で形成した場合、電気的ショートが生じやすくなるため、担持体層22の膜厚を第1電極23と第2電極24の間の長さよりも十分に厚くする必要がある。
【0072】
2−2.無機EL素子の使用方法
本実施形態の無機EL素子は、第1電極23と第2電極24との間に電圧を印加することによりEL発光する。特に直流電圧よりも交流電圧を印加することによって発光強度を強くすることができる。例えば、第1電極23と第2電極24との間に3MV/cm〜10MV/cmの電界を形成することができる1Hz〜10kHzの正弦波の交流電圧を印加することができる。
このことにより第1電極23または第2電極24から担持体層22に供給された電子が電界により加速され、発光中心である発光体28のエネルギー準位を励起することによってEL発光を実現することができる。
【0073】
2−3.無機EL素子の製造方法
本実施形態の無機EL素子26の製造方法は、基板21上に形成された透光性の担持体層22の一部をエッチングすることにより第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を形成する第2平行面形成工程と、第1平行面及び第2平行面の上にポリシリコン層を形成するポリシリコン層形成工程と、第1平行面の上のポリシリコン層をエッチングし除去するエッチング工程と、第1平行面の下の担持体層22に無機物質のイオン注入しその後熱処理することにより第1平行面と平行に分布する発光体28を形成する発光領域形成工程と、ポリシリコン層の上に高融点金属層を形成しその後熱処理することにより第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ第1電極23および第2電極24を形成する電極形成工程と、第1電極23、第2電極24及び第1平行面の上に保護層25を形成する保護層形成工程を備える。
また、本実施形態の無機EL素子26の製造方法では、第2平行面形成工程の前に担持体層形成工程を備えることもできる。また、本実施形態の無機EL素子26の製造方法では、担持体層形成工程の前に反射層形成工程を備えることもできる。
以下、本実施形態の無機EL素子26の製造方法の各工程について説明する。
【0074】
2−3−1.第2平行面形成工程
図12は、本発明の一実施形態の無機EL素子26の第2平行面形成工程における概略断面図である。
基板21の上部に形成された透光性を有する担持体層22の一部をエッチングすることにより、担持体層22に第1平行面の両側の第1平行面より低い第2平行面を形成する。例えば、担持体層22は、シリコン基板の表面に形成されるシリコン酸化膜を利用することができる。また、エッチングは、例えば、図12のように、例えば40〜100nmの線幅で担持体層22の表面にフォトレジスト30を形成した後、エッチングを行うことによりフォトレジスト30を形成していない担持体層22に第1平行面より低い第2平行面を形成することができる。その後フォトレジスト30を除去することにより担持体層22に第2平行面を形成することができる。なお、フォトレジスト30の線幅は、d2と実質的に同一の長さになり、この線幅は最先端シリコントランジスタのゲート長と同程度であり、その世代で使用されるArF等のエキシマレーザーを用いて実現可能である。
【0075】
2−3−2.ポリシリコン層形成工程
担持体層22に第2平行面を形成した後に、第1平行面及び第2平行面の上にポリシリコン層31を形成する。例えば、担持体層22の上にポリシリコン層31をスパッタリングにより堆積することにより形成することができる
【0076】
2−3−3.エッチング工程
図13および図14は、本発明の一実施形態の無機EL素子26のエッチング形成工程における概略断面図である。
第1平行面の上のポリシリコン層31をエッチングし除去する。エッチング除去するポリシリコン層31は、第1平行面の一部のポリシリコン層31であってもよい。例えば、図13のようにポリシリコン層31の上面に、担持体層22の第1平行面の上部に開口を有するようにフォトレジスト32を形成することができる。その後、エッチングにより、フォトレジスト32が上部に形成されていないポリシリコン層31を除去することができる。その後フォトレジスト32を除去することにより、図14のように担持体層22の第2平行面及び第1平行面の一部の上にポリシリコン層31を形成することができる。
【0077】
なお、フォトレジスト32の開口部の幅d4及び第1電極23及び第2電極24の間の方向の位置は、発光領域27の幅(d2−2×d1)及び電極間の方向の位置と実質的に同一となる場合があるため、所望の発光領域27が得られるようにフォトレジスト32を形成することができる。
また、フォトレジスト32の開口部の幅d4を所望の発光領域27の幅よりも広くすることもできる。この場合、例えば、ゲルマニウムの酸化シリコン中およびシリコン中の拡散係数の違いにより所望の発光領域27とすることができる(後述)。
なお、ポリシリコン層31のエッチングはRIEを用いて行えば良いが、担持体層22との選択性が小さいガスを用いて行うと、担持体層22がエッチングされる、または、多大なダメージが入る可能性があるため、エッチング除去するポリシリコン層31を数nm程度残してRIEによる非等方性エッチングを行い、その後、例えば、酸素雰囲気で酸化を行いシリコン酸化膜を形成し、フッ酸(HF)でウェットエッチングすることができる。
【0078】
2−3−4.発光領域形成工程
図15は、本発明の一実施形態の無機EL素子26の発光領域形成工程における概略断面図である。
開口を有するポリシリコン層31を形成した後、第1平行面の下の担持体層22に発光体となる例えば無機物質のイオン注入しその後熱処理することにより第1平行面と平行に分布する発光体28を形成する。例えば、担持体層22の第1平行面の上方からゲルマニウムイオンをイオン注入し、その後熱処理を施すことにより、第1平行面の下の担持体層22に複数のゲルマニウム微粒子又は酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムGeO及びGeO2を含む微粒子が形成された発光領域27を形成することができる。イオン注入するとき、第2平行面の下の担持体層22の上及び第1平行面の端部の上には、ポリシリコン層31が形成されているため、イオンは注入されない。このことにより、ポリシリコン層31の開口の下部の担持体層22にイオン注入することができる。
【0079】
なお、イオン注入法はシリコン基板を用いて非常に微細な素子を並べたCMOS回路のドーピング工程において使用される方法で、非常に高い精度および再現性をもって発光領域27におけるゲルマニウムイオンの濃度および分布状態の制御が可能である。このことにより、複数の無機EL素子を同一基板上に形成した場合、ゲルマニウム濃度(微粒子の密度)のばらつきを小さくすることができる。従って、複数の無機EL素子の発光のばらつきを小さくすることができる。
また、イオン注入後、熱処理を施すことによって、EL発光強度が上昇する。熱処理は、例えば、1000℃で30秒アニールすることによって行うことができる。熱処理によって、例えば、ゲルマニウムイオンは凝集し、ドット状になるが、TEM像(図示なし)からその直径は10nm以下であることがわかっている。すなわち、従来の分散型EL素子に見られたような10μm程度の大きなドットでないため、微細素子および高画質画素を比較的容易に実現することができる。
【0080】
また、例えばゲルマニウムイオンが所望の発光領域27の幅よりも広い範囲の第1平行面の下の担持体層22である酸化シリコン層に注入された場合、ゲルマニウムの拡散係数の違いを利用して所望の発光領域27の幅とすることができる。すなわち、ゲルマニウムの拡散係数は酸化シリコン層中よりもポリシリコン層31中の方が大きいため、第1平行面の下の担持体層22の端部に注入されたゲルマニウムイオンはアニール処理によって、速やかにポリシリコン層31中に拡散する。一方で、ポリシリコン層31から比較的遠い領域に注入されたゲルマニウムイオンは、拡散によって酸化シリコン層中での分布は多少変わるが、その総数は変わらず、発光への寄与は変わらない。このようにゲルマニウムの拡散係数の違いを利用することによって、所望の大きさの発光領域7が形成されるだけでなく、発光領域27の両側の担持体層22のゲルマニウム濃度を十分に低くすることができ、電極から供給された電子が発光領域27に達するまでに十分に運動エネルギーを得ることができる。
【0081】
2−3−5.電極形成工程
発光領域27を形成した後、ポリシリコン層31の上に高融点金属層を形成しその後熱処理することにより第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ第1電極23および第2電極24を形成する。例えば、担持体層22の第1平行面より高い部分に存在するポリシリコン層31をエッチングにより除去した後、コバルト、チタンまたはニッケルなどの高融点金属層を第2平行面の上のポリシリコン層31の上部などにスパッタリング等により堆積することができる。その後、例えば600℃程度でアニール処理を行って、ポリシリコン層31と高融点金属層を反応させ、シリサイド化した高融点金属を第2平衡面の上に形成し、第1電極23および第2電極24を形成することができる。また、未反応の高融点金属層は、この基板を硫酸過水(硫酸過酸化水素水)、塩酸過水(塩酸過酸化水素水)、 アンモニア過水等に浸すことによって除去することができる。
また、一般に担持体層22である酸化シリコン層とコバルト、チタン又はニッケルなどはシリサイド化のアニール処理によって反応しないため、ポリシリコン層31を形成した領域のみにシリサイド化した高融点金属を形成することが可能である。
【0082】
また、担持体層22の第1平行面より高い部分に存在するポリシリコン層31をエッチングするためには、RIEを用いても良いが、第1平行面の下の担持体層22がエッチングされる、または、多大なダメージが入る可能性がある。このため、第2平行面の上に形成されたポリシリコン層31を数nm程度残してRIEによる非等方性エッチングを行い、その後、例えば、酸素雰囲気で酸化を行いシリコン酸化膜を形成し、その後フッ酸(HF)でウェットエッチングすると良い。このとき第1平行面の下の担持体層22がウェットエッチングされることがないように行うことができる。
また、ポリシリコン層31と高融点金属層との反応では、ポリシリコン層31を残さず、フルシリサイド化されていることが望ましい。これは堆積する高融点金属層の膜厚を調整することで作製することが可能であり、EL素子以外の外部抵抗低減化のために必要な技術である。
【0083】
また、図16は、本発明の一実施形態の無機EL素子26の電極形成工程における概略断面図である。
例えば、図16のようにコバルト、チタンまたはニッケルなどの高融点金属層33を第2平行面の上のポリシリコン層31の上部などにスパッタリング等により堆積した後、600℃程度でアニール処理を行って、ポリシリコン層31と高融点金属層33を反応させ、シリサイド化した高融点金属を第2平行面の上に形成することができる。その後、担持体層22の第1平行面より高い部分に存在する高融点金属シリサイドをCMP等で除去することにより第1電極23および第2電極24を形成することもできる。
この場合、アニール処理後、ポリシリコン層31と未反応の高融点金属層33を除去した後、CMP等で高融点金属シリサイドと第1平行面とを平坦化することができる。
【0084】
2−3−6.保護層形成工程
第1電極23および第2電極24の形成後、第1電極23、第2電極24及び第1平行面の上に保護層25を形成する。保護層25の形成方法は特に限定されないが、例えば酸化シリコンや窒化シリコンをCVDやスパッタリングで堆積し形成することができる。
【0085】
2−3−7.担持体層形成工程
また、第2平行面形成工程の前に担持体層形成工程を備えることもできる。担持体層形成工程では、例えば、基板21の上に担持体層22を、絶縁材料をCVDやスパッタリングにより形成することができる。また、基板21を熱処理することにより熱酸化膜を形成することもできる。
【0086】
2−3−8.反射層形成工程
また、担持体層形成工程の前に反射層形成工程を備えることもできる。反射層形成工程では、例えば、基板21の上に反射層をCVDやスパッタリングにより形成することができる。
【0087】
2−4.無機EL素子を備えたディスプレイ
本発明の無機EL素子を同一基板上に複数個作製することにより、ディスプレイを作製することも可能である。また、特に発光体28をGeO及びGeO2を含む微粒子とすることにより、波長250〜500nmの間にピーク波長を持つEL発光をすることができる。このような短波長の光は直接ディスプレイに使用することや無機EL素子の上に、色変換素子やカラーフィルタを乗せて異なる波長の光を出す用途に使用することができる。
【0088】
2−5.ゲルマニウムイオンのイオン注入条件シミュレーション
発光領域形成工程における第1平行面の下の担持体層22にゲルマニウムイオンを注入するシミュレーションを行った。図17は、ゲルマニウムイオンのイオン注入条件シミュレーションにおける、担持体層22の深さ方向の距離とゲルマニウムイオンの濃度との関係を示したグラフである。
シミュレーションにはTRIMを用い、ゲルマニウムのピーク濃度が1%を達成するように行い、注入条件は30keV、1.5×1015/cm2 とした。図17の横軸は担持体層22である酸化シリコン層の深さであり、担持体層22である酸化シリコン層と保護層25である酸化シリコン層の界面を起点とした。また、このシミュレーションにおいては、担持体層22の第1平行面と第2平行面との距離は50nm、第2平行面の下の担持体層22である酸化シリコン層の膜厚d3は200nmを想定した。また、担持体層22である酸化シリコン層の密度は2.2g/cm3とした。
【0089】
図17からわかるように注入分布はガウス型の分布をしており、そのピーク深さは27nm程度、半値幅は20nm程度であった。ドーズ量を変化させることによってゲルマニウム濃度の調整が可能であり、注入エネルギーを変化させることでピーク深さを変化させることが可能である。また、多数回イオン注入を行い、所望のプロファイルを得ることも可能である。たとえば、エネルギーを変えて複数回注入することで所望の濃度をより浅い場所から深い場所まで広い範囲に作成することができる。この手法を用いれば、発光に適したゲルマニウム濃度を広い範囲作成でき、発光効率や発光強度の向上ができる。
【0090】
3.第3実施形態
また本実施形態の発光素子は、第1電極と、透光性の第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられかつ発光体を内部に有する担持体部とを備え、第1電極は、前記担持体部と接する表面に複数の凸部を有し、前記凸部の上端と第2電極との間の長さは、第1電極の前記凸部以外の部分と第2電極との間の長さより短いことを特徴とする。本発明は、発光効率がよく、動作電圧を低減し、むらなく発光する発光素子を提供する。
【0091】
絶縁体膜中に発光体を形成した従来の発光素子の発光にむらが生じる原因は、電極間の長さが均一でないことにあることを見出した。このことを図面を使って説明する。図24は、絶縁体膜213中の発光領域214に発光体として蛍光体を分散させた従来の発光素子の概略断面図である。図24のように従来の発光素子215では、シリコン基板211とITO電極212の間の長さのばらつきが生じる。これはシリコン基板211の表面や絶縁体膜213の小さな湾曲、傷、ITO電極212の形成状態などにより生じる。つまり、シリコン基板211とITO電極212との間の長さがd1の部分とd2の部分が生じる(d2>d1)。このとき、シリコン基板211とITO電極212との間に電圧を印加し絶縁体膜213に7MV/cm程度の強い電界を印加すると、基板211とITO電極212との間の長さが短い部分つまりd1の部分に集中して電子が供給され、その部分が他の部分に比べ強く発光すると考えられる。また、基板211とITO電極212との間の長さが長い部分、つまりd2の部分には電子が供給されにくくこの部分が発光しない又は弱くしか発光しないと考えられる。このため従来の発光素子215では発光のむらが生じていたと考えられる。
【0092】
この発光のむらをなくす方法について検討を行った結果、絶縁体膜の両側の電極間の長さの短い部分が発光領域に均一に分布するように作製することによりこの部分に選択的に電子を供給することができ、この部分を選択的に発光させることができるという知見を得た。
このことを図面を用いて説明する。図18(a)は、本発明の一実施形態の発光素子であり凸部としてカーボンナノチューブなどを用いた発光素子の概略断面図である。図18(b)は、本発明の一実施形態の発光素子であり円錐形状の凸部を形成した発光素子の概略断面図である。図18(c)は、第1電極と第2電極の間に電圧を印加した場合の本発明の一実施形態の発光素子の概略断面図である。
【0093】
本発明の発光素子47では図18(a)(b)に示すように凸部42の上端と第2電極43との間の長さD1は、凸部42が形成されていない第1電極41と第2電極43との間の長さD2よりも短くなる。このような本発明の発光素子47の第1電極41と第2電極43との間に電圧を印加すると、凸部42の上端と第2電極43の間の担持体部44に印加される電界は、凸部42が形成されていない部分の第1電極41と第2電極43の間の担持体部44に印加される電界よりも大きくなる。更に、凸部の先端への電界集中効果により、凸部42が形成されていない部分の上端の第1電極41の電子より凸部42の上端の電子が担持体部44に供給されやすくなる。このことにより、凸部42の上端と第2電極43との間に選択的に電子が流れる。
【0094】
この凸部42の上端から供給され担持体部44を流れる電子が第1電極41と第2電極43の間に印加された電界により加速される。この加速された電子により本発明の発光素子は発光するが、そのメカニズムは明らかではない。たとえば次のように考えられる。加速された電子は、担持体部44中の発光体45と相互作用することで発光体45の電子が励起され発光体45が発光すると考えられる。あるいは加速された電子のエネルギーが電磁波等の他のエネルギーに一旦変換された後、発光体45にエネルギーを与え発光体45が発光すると考えられる。このように直接あるいは間接的にエネルギーを与えることで発光体45の電子が励起され発光体45が発光すると考えられる。
【0095】
さらに、本発明の発光素子47では、凸部42が第1電極41の表面に均一に分布させることができるため、図18(c)のように均一に分布した凸部42と第2電極43の間の発光領域46で発光させることができる。その結果、本発明の発光素子47では発光にむらが生じない。なお、この説明では第1電極41から電子が供給されると説明したが、第2電極43から電子が供給される場合も同様の効果が生じる。
【0096】
また、さらに凸部42の上部を尖端形状とすることにより、より凸部42の上端の電子が担持体部44に供給されやすくなる。このことにより凸部42の上端と第2電極43の間の発光体45で発光を生じやすくすることができる。また、凸部42の上部を尖端形状とすることのより、発光する発光領域46をより均一にすることができる。
【0097】
また、本実施形態の発光素子47では、発光体45は少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムであるので、電圧印加を行うことによって特に紫外〜青色(250〜500nm程度)の短波長領域でエレクトロルミネッセンス発光することができる。従来の発光素子の発光は主に可視光領域である。また、そのほとんどは赤色など波長の比較的長い領域の発光である。今後、半導体集積回路内の微細な導波路など、非常に狭い配線や様々な材料でできた配線を利用した光通信への要望が高まると考えられる。そのためには、利用形態に適した様々な波長が必要になることを想定すると、既存の波長だけでなく、より短波長領域で発光する発光素子が必須となる。また、短波長の光は、蛍光体を用いて容易に長波長に変換できるので、種々の光を生成することもできる。従って、本発明の発光素子は、光通信分野のみならず、カラーディスプレイ等への応用も期待できる。
【0098】
以下、本発明の他の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0099】
3−1.発光素子の構造
本実施形態の発光素子47は、第1電極41と、透光性の第2電極43と、第1電極41と第2電極43との間に設けられかつ発光体45を内部に有する透光性の担持体部44とを備え、第1電極41は、担持体部44と接する表面に複数の凸部42を有し、凸部42の上端と第2電極43との間の長さは、第1電極41の凸部42以外の部分と第2電極43との間の長さより短いことを特徴とする。
第1電極41及び第2電極43間に電圧を印加すると、発光体45から光が放出される。
以下、本実施形態の発光素子47の各構成要素について説明する。
【0100】
3−1−1.第1電極
第1電極41は、導電性物質からなり担持体部44と接する表面に複数の凸部42を有するものであれば特に限定されない。第1電極41と凸部42は、同じ材料であっても異なる材料であってもよい。例えば、第1電極41の凸部42以外の部分は、導電性のシリコン基板である。
【0101】
3−1−2.凸部
凸部42は、導電性物質からなり、第1電極41の絶縁部と接する表面の凸部であれば、特に限定されない。凸部42は、第1電極とおなじ材料であっても異なる材料であってもよい。
凸部42は、例えば、カーボンナノチューブあるいは円錐形状の金属又はシリコンであってもよい。また、凸部42は、シリコンまたはカーボンを主成分としてもよい。
【0102】
また、凸部42の上端と第2電極43との間の長さD1は、凸部42が設けられていない部分の第1電極41と第2電極43との間の長さD2より短い。このことにより、第1電極41と第2電極43との間に電圧を印加すると、凸部42の上端と第2電極43との間の担持体部44に印加される電界は、凸部42が設けられていない部分の第1電極41と第2電極43との間に印加される電界よりも大きくなる。その結果、凸部42の上端と第2電極43との間で電子放出が起こりやすくなり、凸部42の上端と第2電極43との間の発光領域で発光が起こりやすくなる。
また、第1電極41の凸部42以外の部分と第2電極43との間の長さを、凸部42の上端と第2電極43との間の長さの1.1倍以上(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2倍以上)の長さとすることができる。このことにより、凸部42の上端と第2電極43との間の発光領域46で発光をより起こりやすくすることができる。
【0103】
また、凸部42の上端と第2電極43との間の長さを5nm以上100nm以下(例えば5、10、20、30、40、50、60、70、80、90及び100nmのうちいずれか2つの間の範囲)とすることができる。このことにより、凸部42の上端と第2電極43との間で電子放出が起こりやすくすることができる。
また、凸部42を発光領域46(発光体45が形成された領域)の第1電極41側の担持体部44と接する第1電極41の表面に均一に形成することができる。このことのより、凸部42の上端と第2電極43との間の発光が起こりやすい発光領域46を発光領域46に均一に生じさせることができる。このことにより、本実施形態の発光素子47の発光のむらをなくすことができる。なお、本実施形態で「均一」とは第1電極41の表面を凸部が一定の数含まれるように均等に分割したとき、分割された第1電極の表面に形成された凸部の数にばらつきが少ないことをいう。
【0104】
また、凸部42の上部を尖端形状にすることもできる。ここで尖端形状とは、0度以上150度以下の角度を有する形状をいう。なお、形状全体としてこの角度を有すれば、角部分が丸みをおびているものも含む。また、尖端形状は、例えば円錐や角錐のように一点を頂点とした形状でもよく、例えば包丁の刃のように線を頂点とした形状でもよい。また、例えば棒状の形状でもよい。また、尖端形状の頂点の先が第2電極43に向かう形状でもよい。凸部42の上部を尖端形状にすることのより、凸部42の尖端部と第2電極43の間で電子放出がよりおこりやすくすることができる。また、尖端部は、点または線として形成することができるため、凸部42の上端と第2電極43との間の発光が起こりやすい発光領域46を発光領域46により均一に生じさせることができる。また、凸部は頂点を含む面で切った断面において、稜線は下により凸な形状とすることや、頂点の曲率半径をより小さくすることができる。すなわち言い換えると、凸部を頂点から遠ざかるほど傾斜がゆるくなった円錐形状とすることや、最先端部をより尖った形状とすることができる。この場合、第1電極41と第2電極43の間により低い電圧を印可することにより発光素子を発光させることができる。また、凸部をこのような形状にすることにより、発光強度をより強くすることができる。
また、隣接する2つの凸部42は、10nm以上3μm以下(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、500、1000、2000及び3000nmのうちいずれか2つの間の範囲)の間隔とすることができる。このことにより凸部42の上端と第2電極43との間の発光が起こりやすい発光領域46を発光領域46により均一に生じさせることができる。
【0105】
3−1−3.第2電極
第2電極43は、透光性の導電性材料からなり、第1電極41との間に電圧を印可し担持体部44に対して電界を印加することができるものであればその構成は特に限定されない。例えば、第2電極43は、ITO電極とすることができる。なお、本発明において、透光性とは、発光素子の発光波長の光を透過することができることをいう。
【0106】
3−1−4.担持体部
担持体部44は、第1電極41と第2電極43との間に設けられかつ発光体45を内部に有しかつ、光の取出し及び電圧印加により発光を生じるものであれば特に限定されない。典型的には透光性の絶縁体である。また、例えば不純物濃度の低い半導体でもよい。この場合、発光源である発光体45と第2電極43との間の距離が短いことが好ましい。例えばSiCやGaNなどのワイドギャップ半導体であればその厚さが100nm程度以下であれば、波長250〜500nm程度の光を40〜80%程度透過する。つまり、バルク状態ではなく、本発明の実施に用いる状態において、発光体45を内部に有し、透過性を有し、電圧印加によって第1及び、第2の電極間に電子が供給され、発光を生じればよい。担持体の光透過率は特に限定されないが、波長250〜500nmの少なくともある範囲内の光の透過率が50%以上であることが好ましい。発光体45がGeO及びGeO2を含む微粒子である場合、発光体45を含む担持体から放出される光のピーク波長は300および400nm前後であるので、波長300〜500nmでの光透過率が高ければその分だけ光取り出し効率が高くなるからである。また、担持体の材料は、特に限定されないが、担持体は、絶縁体からなることが好ましい。この場合、発光に寄与することなく電極間を流れる電流を低減できるので、実効的な発光効率を向上することができ、低消費電力で発光が可能だからである。例えば、担持体部44は、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなる。この場合、シリコン系の絶縁膜であり、シリコンはゲルマニウムよりも酸素と結合しやすいので、ゲルマニウム原子が不必要に酸素と結合せず、また酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは比較的酸素を透過しにくいのでゲルマニウム原子が外気の浸透によって酸化されないので、発光が安定し劣化も少ない。また、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは通常のシリコン半導体プロセスで製膜可能であるので量産性に優れる上、他の電子回路と組み合わせることが可能である。
【0107】
担持体部44の厚さは、凸部42の上端部で、例えば5nm以上100nm以下(例えば5、10、20、30、40、50、60、70、80、90及び100nmのうちいずれか2つの間の範囲)であり、凸部2以外の部分で、例えば、12nm以上1000nm以下である。
また、担持体部44の光透過率は、例えば波長250〜500nmの少なくともある範囲内の光の透過率が50%以上であることが好ましい。発光体45がGeO及びGeO2を含む微粒子である場合、発光体45から放出される光のピーク波長は390nm前後であるので、波長300〜500nmでの光透過率が高ければその分だけ光取り出し効率が高くなるからである。
【0108】
また、担持体部44が酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなり、凸部42が主としてシリコンまたはカーボンからなる場合、特性が安定する。これは、凸部42の先から電子が放出されるのに伴い、凸部42を構成する原子、すなわちシリコンやカーボンの場合、シリコンやカーボンが離脱することが抑制されるため、電子放出特性が安定するためと考えられる。もし、劣化がおこれば凸部42の高さや形状が変化して電界の強さが変化するからである。
【0109】
3−1−5.発光体
発光体45は、担持体部44に形成されたもので発光源となるものであれば、特に限定されない。また、発光体45は担持体部44に複数形成されたものでもよい。
また、発光体45は、例えば微粒子、金属原子、金属イオンであり、また、例えば、ゲルマニウム、シリコン又はスズの微粒子である。また、発光体45は例えばGeO及びGeO2を含む微粒子とすることができる。この場合、発光体45はゲルマニウム(金属)を含んでもよい。
発光領域46中の発光体45の数密度は、特に限定されないが例えば、1×1016個/cm3〜1×1021個/cm3である。
【0110】
なお、発光体とは、従来無機EL素子において、分散型の場合の蛍光体、薄膜型の場合の発光中心のことである。蛍光体としては例えばZnS微粒子など、発光中心としてはZnS中のMnなどが知られている。これら従来型の発光体のなかには、青色(460〜480nm程度)を発光する材料も存在するが100V程度かそれ以上の高電圧が必要な上に、充分な輝度が得られていない。
【0111】
3−1−6.発光領域
発光領域46は、担持体部44の内部の発光体5が形成された領域であり、第1電極41と第2電極43の間に電圧を印加したときに発光することができる領域である。発光領域46は、担持体部44の全体に形成されていてもよく、担持体部44の一部に形成されていてもよい。
【0112】
3−2.発光素子の製造方法
3−2−1.第1電極の形成
凸部42を有する第1電極41は、例えば導電性のシリコン基板を用いて形成することができる。ここでは、一例としてエッチングを利用した形成方法、レーザーアニールを利用した形成方法及びカーボンナノチューブを形成する方法について説明する。
【0113】
3−2−1―1.エッチングを利用した形成方法
第1電極41の表面にドット状のエッチングマスクを形成し、第1電極41の表面のエッチングを行う。エッチングでは、マスクを形成していない第1電極41から除去されていき、また、ドット状のエッチングマスクの下の第1電極41の外側から徐々に除去されていく。エッチングを続けていくと、ドット状のエッチングマスクの中心部の直下の第1電極41を頂点とした円錐形の第1電極41をエッチングされずに残すことができる。この後、マスクを除去することにより、円錐形状の凸部42を有する第1電極41を形成することができる。
【0114】
3−2−1−2.レーザーアニールを利用した形成方法
例えば、シリコン基板にコヒーレントな直線偏光レーザービームを横方向に移動させながら照射し、この照射をシリコン基板の縦方向に順次行い、アニール処理する。このアニール処理において、周期的な光強度分布に対応した温度分布がシリコン基板に生じる。このため、シリコン基板の表面には、周期的なモジュレーションを有するストライプ形状が形成される。さらに、このシリコン基板を照射面の垂直軸周りに90℃回転させ、再度レーザービームを照射し、同様のアニール処理を行うことができる。このことにより、90℃に交差するストライプの交点にアイランド状の凸部42を有する第1電極41を形成することができる。例えば、532nmの波長のレーザーを用いて上記のシリコン基板のアニール処理を行った場合、間隔が約500〜550nmで高さが30〜50nmの凸部を有する第1電極41を形成することができる。
【0115】
3−2−1−3.カーボンナノチューブの形成
メッキ法により第1電極41の表面にカーボンナノチューブ成長において触媒作用を有する材料(例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の鉄族金属や白金、ロジウム等)を形成し、その後、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン等の炭化水素系ガスを流し、熱CVD法、プラズマCVD法により第1電極41の表面にカーボンナノチューブを作成することができる。
【0116】
3−2−2.担持体部の形成
第1電極41の上に担持体部44を形成することができる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコンをCVDやスパッタリングで堆積し第1電極41の上に担持体部44を形成することができる。第1電極41の表面には、凸部42が形成されているため担持体部44の上面に凸部が反映された凸部が形成される場合があるが、この場合には、CMP等で担持体部44の上面を平坦化することができる。
【0117】
3−2−3.発光体の形成
担持体部44の内部に発光体45を形成する。担持体部44中に発光体45を形成する方法は、特に限定されないが、一例では、担持体部44に対して金属イオンをイオン注入する方法が考えられる。また、発光体45がGeO及びGeO2を含む微粒子の場合、担持体部44に対してゲルマニウムをイオン注入し、その後、熱処理を行う方法が考えられる。イオン注入後の熱処理によってイオンが凝集して多数の微粒子が担持体部44中に形成されるとともにGeが酸化されてGeOおよびGeO2が形成される。ゲルマニウムのイオン注入は、例えば、注入エネルギー5〜100keVで注入量1×1014〜1×1017ions/cm2の条件で行うことができる。
【0118】
また、ゲルマニウムは、担持体部44中のゲルマニウム濃度が0.1〜20原子%になるようにイオン注入することが好ましい。1時間、800℃の熱処理において、真空引き(毎分400リットル)しながら不活性ガスを供給(毎分50ミリリットル)した場合は、この範囲であれば発光するからである。ゲルマニウム濃度は、具体的には例えば0.1,0.2,0.5,1.0,1.4,2,3,5,6,10,11,15,20原子%である。更に好ましくは、2〜11原子%である。下記に記すEL実験では、2原子%以上でも発光が目視で確認でき、11原子%を超えると発光強度が低下したため、この範囲であれば発光効率が良くなると考えられる。この濃度は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ゲルマニウム濃度は、例えば高分解能RBS(ラザフォード後方散乱)法によって測定することができる。その他、SIMS(二次イオン質量分析法)等の様々な分析法によって測定することが可能である。なお、ゲルマニウム濃度の測定は、ゲルマニウム濃度がピーク値の1/100以上となる範囲で行う。熱処理の温度は、400〜1000℃が好ましく、700〜900℃がさらに好ましい。この範囲であればEL実験結果、発光効率が比較的高くなると考えられるからである。
【0119】
3−2−4.第2電極の形成
発光体45が形成された担持体部47の上に透光性の第2電極を形成する。例えばITO電極をスパッタリングにより形成することができる。
【0120】
次にシリコン基板に上記エッチングを利用した方法でシリコンの凸部を形成した後に、酸化シリコン膜を形成し、その他は上記と同様の工程で発光素子を作製しEL実験をおこなった。その結果、発光に必要な直流電圧は最大で約50%程度に低電圧化した。また発光領域の明るさの均一性も向上した。
また、シリコン基板上にZnS微粒子を用いた従来型EL素子を形成し、同様に凸部の有る無しを同様の実験で比較したところ、発光に必要な交流電圧が約10%程度低電圧になった。
このように本発明によって発光のむらの低減と動作電圧の低電圧化することが確認された。
【0121】
4.第4実施形態
本実施形態の発光素子は、第1電極であるpn接合するp型半導体部及びn型半導体部を少なくとも上面に有する基板と、前記基板の上に設けられかつ発光体を内部に有する透光性の絶縁体層と、前記絶縁体層の上に設けられた第2電極である透光性電極と、前記p型半導体部の表面でありかつ上に前記絶縁体層が設けられていない部分の上に設けられた第3電極と、前記n型半導体部の表面でありかつ上に前記絶縁体層が設けられていない部分の上に設けられた第4電極とを備え、前記基板の上面の前記p型半導体部及び前記n型半導体部がpn接合した部分の上に前記絶縁体層および前記透光性電極がこの順で設けられたことを特徴とする。本実施形態の発光素子は、発光効率よくかつむらなく発光する。絶縁体膜に数MV/cm程度の強い電界を印加することが必要な、従来の発光素子に比べて発光効率が高い。また、絶縁体膜の一箇所に電界が集中し破壊すると素子全体が破壊してしまうという問題もなく、発光にむらが生じるという問題もない。
【0122】
本実施形態の発光素子において、p型半導体部に接続された第3電極に負の電圧を印加し、透光性電極に正の電圧を印加し、n型半導体部に接続された第4電極を第3電極と透光性電極の間の電位にすること、例えば接地することにより、FNトンネリングを利用した従来の発光素子に比べより低い電圧で発光素子を効率よく発光させることができるという知見を得た。このことを図面を用いて説明する。
【0123】
図19は、本発明の一実施形態の発光素子の概略断面図である。図20は、本発明の一実施形態の発光素子のpn接合の近傍の半導体のバンド図である。図19に示すように、発光素子59の第3電極57に負の電圧、第4電極58にGND電圧を印加すると、逆バイアスとなり、その電位差が低い場合には、p型半導体部52とn型半導体部53の間では電流は流れない。第3電極57にある程度高い負の電圧を印加すると、図20のようなエネルギーバンドとなり、接合部にかかる電界が高くなるため、p型半導体の価電子帯の電子がn型半導体の伝導帯に流れるトンネル電流が発生する。このp型半導体の価電子帯からn型半導体の伝導帯に流れる電子は、第3電極57と第4電極58との間の電界又は第3電極57と正の電圧に印加された透光性電極56の間の電界により加速され、格子原子に衝突し、ホットエレクトロンとホットホールのペアが生じる。このホットエレクトロンの一部が第3電極57と透光性電極56または第4電極58と透光性電極56の間の電界により加速され、絶縁体層54に供給される。このホットエレクトロンが絶縁体層54の内部の発光体55と相互作用し、発光体55のエネルギー準位を励起し、発光体55を発光させることができると考えられる。
【0124】
以下、発光原理に関する説明は上記のホットエレクトロンを例に進めるが、透光性電極56が負の電圧に印加されている場合は、ホットホールが絶縁体層54の内部の発光体55と相互作用し、発光体55のエネルギー準位を励起するため、上記と同様の発光を実現することが可能であると考えられる。
【0125】
この発光素子59を発光させるためには、トンネル電流が生じることができる電界を第3電極57と第4電極58の間に印加することと、発生したホットエレクトロンを絶縁体層54に供給することができる電界を第3電極57と透光性電極56の間または第4電極58と透光性電極56の間に印加することが必要である。この第3電極57と透光性電極56の間または第4電極58と透光性電極56の間に印加する電界は、FNトンネリングにより絶縁体層54の伝導帯に電子を供給できる電界よりも小さい電界である。このことにより、本発明の発光素子59では、絶縁体層54への電子注入効率はFNトンネリングに比べ高くなる。本発明の発光素子59の電子注入効率とFNトンネリングを利用した従来の発光素子の電子注入効率の比は、実験結果から、およそ7:1と算出された。従って、本発明の発光素子は、FNトンネリングを利用した従来の発光素子に比べより低い電圧で発光素子を効率よく発光させることができる。また、本発明の発光素子と従来の発光素子に同じ電圧を印加した場合、本発明の発光素子の方が輝度が大きくなる。また、本発明の発光素子では、絶縁体層の一箇所に電界が集中し素子全体が破壊してしまうという問題は生じない。
【0126】
さらには、従来例に見られるFNトンネリングを利用した電子注入方法では、ホットエレクトロンの発生箇所および加速箇所が絶縁体層であるため、発光に必要な電圧を印加したとき、絶縁体層には多大なダメージが入るのに対し、本発明の電子注入方法によると、ホットエレクトロンの発生箇所はpn接合部であって、また、加速箇所は絶縁体層であり、分かれているために、高電界が印加される絶縁体層へのダメージが小さいという利点がある。
【0127】
また、FNトンネリングを利用した従来の発光素子では、電極間の電界が最も大きい箇所で強く発光が生じ、電極間の電界が小さい箇所ではほとんど発光しないため発光のむらが生じる。従って、絶縁体層54の膜厚ばらつきが発光むらに直接影響してしまう。
一方で、本発明の発光素子59では、基板1内のpn接合近傍で発生したホットエレクトロンが発光体55に衝突することにより発光体55を発光させると考えられる。本方法で発生したホットエレクトロンのエネルギーは、第3電極57と透光性電極56または第4電極58と透光性電極56の間に印加された電界によって決まり、絶縁体層54の膜厚ばらつきと無関係にホットエレクトロンの得るエネルギーが決まる。従って、絶縁体層54の膜厚の影響は小さいため、発光むらを小さく抑えることが可能である。
また、絶縁体層54と接する基板51の上面に一定の間隔でpn接合を形成することにより又はpn接合を均一に形成することにより、絶縁体層54内で発光する発光体55を均一に設定することができるため、発光のむらをなくすことができる。
【0128】
また、本発明の発光素子は、電圧印加を行うことによって特に紫外〜青色(250〜500nm程度)の短波長領域でエレクトロルミネッセンス発光することができる。従来の発光素子の発光は主に可視光領域である。また、そのほとんどは赤色など波長の比較的長い領域の発光である。今後、半導体集積回路内の微細な導波路など、非常に狭い配線や様々な材料でできた配線を利用した光通信への要望が高まると考えられる。そのためには、利用形態に適した様々な波長が必要になることを想定すると、既存の波長だけでなく、より短波長領域で発光する発光素子が必須となる。また、短波長の光は、蛍光体を用いて容易に長波長に変換できるので、種々の光を生成することもできる。従って、本発明の発光素子は、光通信分野のみならず、蛍光灯にかわる固体照明や、カラーディスプレイ等への応用も期待できる。
【0129】
以下、本発明の他の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0130】
4−1.発光素子の構造
本実施形態の発光素子59は、pn接合するp型半導体部52及びn型半導体部53を少なくとも上面に有する基板51と、基板51の上に設けられかつ発光体55を内部に有する透光性の絶縁体層54と、絶縁体層54の上に設けられた透光性電極56と、p型半導体部52の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に設けられた第3電極57と、n型半導体部53の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に設けられた第4電極58とを備え、基板51の上面のp型半導体部52及びn型半導体部53がpn接合した部分の上に絶縁体層54および透光性電極6がこの順で設けられたことを特徴とする。
以下、本実施形態の発光素子59の各構成要素について説明する。
【0131】
4−1−1.基板
第1電極である基板51は、少なくとも上面にpn接合するp型半導体部52及びn型半導体部53を有すれば特に限定されない。例えばp型のシリコン基板の上部にn型領域が形成されたものでもよく、n型のシリコン基板の上部にp型領域が形成されたものでもよい。また、SiO2基板などの上にp型シリコンとn型シリコンを形成したものでもよく、Si基板の上にSiO2などの絶縁体層を形成し、その上にp型シリコンとn型シリコンを形成したものでもよい。その場合、SOI(Silicon On Insulator)基板上に本発明の素子を結晶シリコン基板上に形成してもよいし、または、CVD法等を用いてSiO2などの絶縁体層にアモルファスシリコンを形成し、その上に本発明の素子を形成してもよい。
【0132】
図21(a)は、本発明の一実施形態の発光素子の基板の一例であり、p型シリコン基板にn型シリコンを上面にくし型に形成し、p型シリコンの上面に第3電極57を形成し、n型シリコンの上面に第4電極58を形成した基板の平面図である。なお、図21(a)の点線で囲んだ部分に絶縁体層54及び透光性電極56を形成することができる。図21(b)は、本発明の一実施形態の発光素子の基板の一例であり、p型シリコン基板にn型シリコンを上面に井桁型に形成し、p型シリコンの上面に第3電極57を形成し、n型シリコンの上面に第4電極58を形成した基板の平面図である。なお、図21(b)の点線で囲んだ部分に絶縁体層54及び透光性電極56を形成することができる。図21(c)は、図21(a)の一点破線X−Y又は図21(b)の一点破線S−Tにおける発光素子の概略断面図である。基板51は具体的には図21(a)〜(c)のように形成することができる。
【0133】
4−1−2.p型半導体部
p型半導体部52は、基板51に含まれるp型半導体の部分でありn型半導体部53とpn接合すれば特に限定されないが、例えばp型シリコンであり、不純物濃度は、例えば1×1019〜1×1020/cm3(例えば1×1016、1×1017及び1×1018の何れか2つの間の範囲)である。
【0134】
4−1−3.n型半導体部
n型半導体部53は、基板51に含まれるn型半導体の部分でありp型半導体部52とpn接合すれば特に限定されないが、例えばn型シリコンであり、不純物濃度は、例えば1×1016〜1×1018/cm3である。
p型半導体部52およびn型半導体部53の不純物濃度は、p型半導体部52に負の電圧を印加し、透光性電極56に正の電圧を印加し、n型半導体部53にGND電圧を印加する場合の目安である。上記で説明したように本発明は、p型半導体部2にGND電圧を印加し、透光性電極56に負の電圧を印加し、n型半導体部53に正の電圧を印加しても同様の発光効果を奏すると考えられ、その場合はp型半導体部52およびn型半導体部53の不純物濃度を上記の目安の濃度と入れ替えればよい。
【0135】
4−1−4.pn接合
pn接合は、p型半導体部52とn型半導体部53が接する界面である。また、このpn接合する部分を絶縁体層54と接する基板51の上面に一定の間隔で形成することができる。また、pn接合する部分を絶縁体層54と接する基板51の上面に均一に形成することができる。具体的には、図21(a)又は(b)のようにpn接合を形成することができる。
このことにより本実施形態の発光素子59に電圧を印加することにより絶縁体層54をむらなく発光させることができる。これは、本実施形態の発光素子59では、pn接合近傍の半導体から絶縁体層54に電子を供給し、発光させるものであるため、pn接合する部分と透光性電極56との間の発光体55が発光するためである。
また、p型半導体部52及びn型半導体部53のうち少なくとも1つは、5×1018cm-3以上の不純物濃度を有してもよい。また、p型半導体部52及びn型半導体部53は、シリコンを主成分としてもよい。
【0136】
第1電極はpn接合するp型半導体部及びn型半導体部からなり、p型半導体部と電気的に接続された第3電極と、n型半導体部と電気的に接続された第4電極とを備えている。
【0137】
4−1−5.第3電極
第3電極57は、p型半導体部52の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に設けられ、p型半導体部52とオーミック接触することができる電極であれば特に限定されない。第3電極57は、例えば、Au、Pt、Ag、Co、Ni、Ti、Ta、Wなどである。
【0138】
4−1−6.第4電極
第4電極58は、n型半導体部53の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に設けられ、n型半導体部53とオーミック接触することができる電極であれば特に限定されない。第4電極58は、例えば、Au、Pt、Ag、Co、Ni、Ti、Ta、Wなどである。
【0139】
4−1−7.第2電極
本実施形態において、第2電極である透光性電極56は、波長250nm以上500nm以下の少なくともある範囲内の光の透過率が50%以上99.99%以下の電極であれば特に限定されない。透光性電極56は、例えば、ITOなどの金属酸化物薄膜またはAl、Ti、Taなどの金属薄膜またはSi、SiC、GaNなどの半導体薄膜である。
【0140】
4−1−8.絶縁体層
絶縁体層54は、基板51の上に設けられかつ発光体55を内部に有しかつ透光性であれば特に限定されない。例えば、絶縁体層54は、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなる。この場合、シリコン系の絶縁体であり、シリコンはゲルマニウムよりも酸素と結合しやすいので、ゲルマニウム原子が不必要に酸素と結合せず、また酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは比較的酸素を透過しにくいのでゲルマニウム原子が外気の浸透によって酸化されないので、発光が安定し劣化も少ない。また、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンは通常のシリコン半導体プロセスで製膜可能であるので量産性に優れる上、他の電子回路と組み合わせることが可能である。
絶縁体層54の厚さは、例えば10nm以上100nm以下(例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90及び100nmのうちいずれか2つの間の範囲)である。
【0141】
なお、本発明で透光性とは、本発明の発光素子59が発光する光を透過することができることをいう。絶縁体層54の光透過率は、例えば波長250nm以上500nm以下の少なくともある範囲内の光の透過率が50%以上であることが好ましい。発光体55がGeO及びGeO2を含む微粒子の場合、発光体55から放出される光のピーク波長は300および400nm前後であるので、波長250〜500nmでの光透過率が高ければその分だけ光取り出し効率が高くなるからである。
【0142】
4−1−9.発光体
発光体55は、例えばGeO及びGeO2を含む微粒子とすることができる。この場合、発光体55はゲルマニウム(金属)を含んでもよい。
【0143】
4−1−10.発光素子の使用方法
本実施形態の発光素子59は、第3電極57に負の電圧を印加し、透光性電極56に正の電圧を印加し、第4電極58を第3電極57と透光性電極56の間の電位にすること、例えば接地することにより、発光させることができる。
印加する電圧の大きさは、第3電極57と第4電極58の間でトンネル電流を流すことができる電界を印加することができ、トンネル電流により発生したホットエレクトロンを絶縁体層54に供給することができる電界を印加することができれば特に限定されない。例えば、第3電極57に−10Vの電圧を印加し、透光性電極56に+25Vの電圧を印加し、第4電極58を接地することにより、発光させることができる。
なお、本実施形態の発光素子59では、ホットエレクトロンによる発光に加え、FNトンネリングによる発光を伴ってもよい。
【0144】
4−2.発光素子の製造方法
4−2−1.基板の形成
pn接合するp型半導体部52及びn型半導体部53を少なくとも上面に有する基板51を形成する。形成方法は、特に限定されないが、例えばp型シリコン基板に所望の形状でマスクを形成し、n型不純物であるリンをイオン注入し、その後マスクを除去することにより、上面にp型シリコンとn型シリコンが形成された基板を形成することができる。
【0145】
4−2−2.絶縁体層の形成
基板51の上に透光性の絶縁体層54を形成する。例えば酸化シリコンや窒化シリコンをCVDやスパッタリングで堆積し形成することができる。
【0146】
4−2−3.発光体の形成
絶縁体層54の内部に発光体55を形成する。絶縁体層54の内部に発光体55を形成する方法は、特に限定されないが、発光体55がGeO及びGeO2を含む微粒子の場合、絶縁体層54に対してゲルマニウムをイオン注入し、その後、熱処理を行う方法が考えられる。イオン注入後の熱処理によってイオンが凝集して多数の微粒子が絶縁体層54中に形成されるとともにGeが酸化されてGeOおよびGeO2が形成される。
【0147】
4−2−4.透光性電極の形成
発光体55が形成された絶縁体層57の上に透光性電極56を形成する。例えばITO電極であれば塗布法、スパッタリング等により形成することができる。
【0148】
4−2−5.第3電極及び第4電極の形成
第3電極57をp型半導体部52の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に形成する。また、第4電極58をn型半導体部の表面でありかつ上に絶縁体層54が設けられていない部分の上に形成する。形成方法は特に限定されないが、例えば、塗布法、スパッタリング等により形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の一実施形態の発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】ガウスフィッティングを説明するためのXPSスペクトルの一例である。
【図3】担持体中にゲルマニウムを含有する領域を形成する方法の一例を説明するための図である。
【図4】EL測定実験のために作製した発光素子の発光スペクトルを示したグラフである。
【図5】EL測定実験のために作製した発光素子の発光スペクトルを示したグラフである。
【図6】種々の温度で熱処理を行って作製した発光素子についてのEL波長測定結果を示したグラフである。
【図7】種々のGe濃度の発光素子についてのEL波長測定結果を示したグラフである。
【図8】(a)は種々の深さで測定したXPSスペクトルを示す。(b)は、種々の深さでのGe、GeO、GeO2の割合を示すグラフである。
【図9】種々の深さでの酸化ゲルマニウム全体(GeO2+GeO)に対するGeO、GeO2の割合を示すグラフである。
【図10】(a)は、本発明の一実施形態の無機EL素子の概略断面図であり、(b)及び(c)は、本発明の一実施形態の無機EL素子の第1電極と第2電極の間の担持体層の概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の反射層を設けた無機EL素子の概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の無機EL素子の第2平行面形成工程における概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の無機EL素子のエッチング工程における概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の無機EL素子のエッチング工程における概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の無機EL素子の発光領域形成工程における概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の無機EL素子の電極形成工程における概略断面図である。
【図17】ゲルマニウムイオンのイオン注入条件シミュレーションにおける、担持体層の深さ方向の距離とゲルマニウムイオンの濃度との関係を示したグラフである。
【図18】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態の発光素子の概略断面図であり、(a)は凸部としてカーボンナノチューブなどを用いた発光素子、(b)は、円錐形状の凸部を形成した発光素子、(c)は、第1電極と第2電極の間に電圧を印加したときの発光素子の概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の発光素子の概略断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の発光素子のpn接合の近傍の半導体のバンド図である。
【図21】(a)及び(b)は本発明の一実施形態の発光素子の基板の一例であり、(a)はくし型のn型半導体部を形成した基板の平面図であり、(b)は井桁型のn型半導体部を形成した基板の平面図である。(c)は、(a)の一点破線X−Y又は(b)の一点破線S−Tにおける発光素子の概略断面図である。
【図22】絶縁体層に微粒子を形成した従来のEL素子の概略断面図である。
【図23】絶縁体層に微粒子を形成した従来のEL素子の模式的なバンド図である。
【図24】絶縁体膜中に微粒子を形成した従来の発光素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0150】
1:第1電極 2:第2電極 5:ゲルマニウム発光体 7:担持体 10:発光素子 11:透明基板 12:シリコン基板 13:ITO電極 14:絶縁体 15:ゲルマニウム微粒子 16:酸化シリコン
21:基板 22:担持体層 23:第1電極 24:第2電極 25:保護層 26:無機EL素子 27:発光領域 28:発光体 29:反射層 30:フォトレジスト 31:ポリシリコン層 32:フォトレジスト 33:高融点金属層
41:第1電極 42:凸部 43:第2電極 44:担持体部 45:発光体 46:発光領域 47:発光素子
51: 基板 52:p型半導体部 53:n型半導体部 54:絶縁体層 55:発光体 56:透光性電極 57:第1電極 58:第2電極 59:発光素子
120:シリコン基板 121:シリコン窒化膜 122:シリコン層 123:シリコン微粒子
211:シリコン基板 212:ITO電極 213:絶縁体膜 214:発光体が形成された発光領域 215:発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、第1電極及び第2電極の間に設けられゲルマニウム発光体を含む担持体とを備え、
前記ゲルマニウム発光体は、少なくとも一部が酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムを含み、前記第1電極と第2電極に電位差を与えた際の発光の波長のピークが250〜350の範囲内及び350〜500nmの範囲内のうち少なくとも一方にあることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記ゲルマニウム発光体は、少なくとも一部が酸化したゲルマニウム微粒子である請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記ゲルマニウム発光体は、前記ゲルマニウム発光体に含まれる酸化ゲルマニウム全体を100パーセントとしたとき10パーセント以上の酸素欠損を有する酸化ゲルマニウムを含む請求項1又は2に記載の素子。
【請求項4】
前記ゲルマニウム発光体は、中心部がゲルマニウムからなり、前記中心部の周囲に酸化ゲルマニウムを有する微粒子である請求項1〜3の何れか1つに記載の素子。
【請求項5】
前記担持体は、波長250nm以上350nm以下、または波長350nm以上500nm以下、もしくはその両方の光の透過率が50%以上99.99%以下である請求項1〜4の何れか1つに記載の素子。
【請求項6】
前記担持体は、酸化シリコン、又は酸窒化シリコンからなる請求項1〜5の何れか1つに記載の素子。
【請求項7】
前記ゲルマニウム発光体は、第1電極または第2電極もしくはその両方から5nm以上15nm以下離れている領域に含まれている請求項1〜6のいずれか1つに記載の素子。
【請求項8】
第2電極は、波長250nm以上350nm以下、または波長350nm以上500nm以下、もしくはその両方の光の透過率が50%以上99.99%以下である請求項1〜7のいずれか1つに記載の素子。
【請求項9】
第2電極は、金属酸化物薄膜、金属薄膜または半導体薄膜からなる請求項1〜8のいずれか1つに記載の素子。
【請求項10】
第2電極は、スリット構造あるいはポーラス構造などの穴開き構造である請求項1〜9の何れか1つに記載の素子。
【請求項11】
第2電極は、導電性のナノワイヤからなる請求項10に記載の素子。
【請求項12】
第1電極及び第2電極の間に流れる電流に制限を加える最大電流制限手段さらに備える請求項1〜11の何れか1つに記載の素子。
【請求項13】
前記最大電流制限手段は、第1電極または第2電極と電気的に接続された電気抵抗体である請求項12に記載の素子。
【請求項14】
前記電気抵抗体は、可変抵抗である請求項13に記載の素子。
【請求項15】
第1電極及び第2電極は前記担持体部と接し、
第1電極は、前記担持体部と接する表面に複数の凸部を有し、
前記凸部の上端と第1電極との間の長さは、第1電極の前記凸部以外の部分と第2電極との間の長さより短い請求項1〜14のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項16】
基板をさらに備え、前記担持体は、前記基板上に設けられかつ基板表面に平行な第1平行面とその両側の第1平行面より低い第2平行面を有し、
第1電極と第2電極は、第1平行面の両側の第2平行面の上にそれぞれ設けられ、
第1電極、第2電極及び第1平行面の上に設けられた透光性の保護層を備える請求項1〜15の何れか1つに記載の素子。
【請求項17】
第1電極及び第2電極は前記担持体部と接し、
第1電極は、pn接合するp型半導体部及びn型半導体部からなり、
前記p型半導体部と電気的に接続された第3電極と、
前記n型半導体部と電気的に接続された第4電極とをさらに備える請求項1〜15のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項18】
固体照明に適用される請求項1〜17のいずれか1つに記載の素子。
【請求項19】
ディスプレイに適用される請求項1〜18のいずれか1つに記載の素子。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1つに記載の発光素子の使用方法であって、
第1及び第2電極間に直流電圧を印加する発光素子の使用方法。
【請求項21】
請求項1に記載の発光素子の製造方法であって
前記担持体中にゲルマニウム濃度が0.1〜20原子%となる領域を形成し、その後熱処理を施すことによって前記ゲルマニウム発光体を形成する発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記ゲルマニウム発光体は、ゲルマニウムを微粒子化したのち、酸化することによって形成される請求項21に記載の発光素子の製造方法。
【請求項23】
負イオンまたは中性化したゲルマニウムを前記担持体中にイオン注入し、その後熱処理を施すことによって前記ゲルマニウム発光体が形成される請求項21又は22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記熱処理は、不活性雰囲気中で熱処理する第1熱処理工程と、酸化性雰囲気中で熱処理する第2熱処理工程からなる請求項21〜23のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−140720(P2010−140720A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314587(P2008−314587)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】