説明

発光素子、表示装置、表示方法、および電子機器

【課題】高い効率で、発光面の法線方向に集中して光を射出することができる発光素子を得る。
【解決手段】発光層52と、発光層52に対向して配置され、発光層52の方向からその法線方向に進む法線光L1を透過させるように干渉させる干渉層(エタロン29)と、発光層52の、干渉層(エタロン29)とは反対側に対向して配置され、発光層52の方向からの光を反射させる反射層55と、干渉層(エタロン29)と反射層55との間に配置された散乱構造(散乱層43)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子、およびそれを用いた表示装置とその表示方法、ならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明や液晶表示装置のバックライトなどに、発光素子である発光ダイオードが用いられるようになってきた。発光ダイオードは、低い消費電力で所望の光強度を実現することが出来るため、エコロジーの流れにも乗って、様々な応用が期待されている。
【0003】
発光ダイオードは、光の取り出し効率を高める方法について、多くの検討がなされている(例えば、特許文献1、非特許文献1など)。これらの発光ダイオードは、光が広い範囲に射出するように調整されており、照明などの用途に適したものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−179255号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. C. Shen, et al, "Optical cavity effects in InGaN/GaN quantum-well-heterostructure flip-chip light-emitting diodes", Applied Physics Letters, Volume 82, pp2221-2223, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発光ダイオードは、用途によっては、発光面の正面に対して(発光面の法線方向に対して)光を集中して射出することが望まれる場合がある。つまり、この用途に用いられる発光ダイオードは、狭い範囲に、かつ高い効率で光を射出することが望まれる。しかしながら、特許文献1や非特許文献1に開示された発光ダイオードは、広い範囲に光を射出するものであり、このような用途には適していない。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高い効率で、発光面の法線方向に集中して光を射出することができる発光素子、表示装置、表示方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光素子は、発光層と、干渉層と、反射層と、散乱構造とを備えている。干渉層は、発光層に対向して配置され、発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させるものである。反射層は、発光層の、干渉層とは反対側に対向して配置され、発光層の方向からの光を反射させるものである。散乱構造は、干渉層と反射層との間に配置されたものである。
【0009】
本発明の表示装置は、複数の上記本発明の発光素子と、複数の第1のアドレス線および複数の第2のアドレス線と、駆動回路とを備えている。複数の第1のアドレス線および複数の第2のアドレス線は、複数の発光素子を発光させるための駆動信号を伝えるものである。駆動回路は複数の第1のアドレス線に駆動信号を供給するものである。
【0010】
本発明の表示方法は、複数の第1のアドレス線の両端に対して駆動信号を時分割的に供給し、複数の第2のアドレス線に対して駆動信号とは異なる他の駆動信号を時分割的に供給し、複数の第1のアドレス線のうち駆動信号が供給された第1のアドレス線と、複数の第2のアドレス線のうち他の駆動信号が供給された第2のアドレス線とに接続された発光素子の発光層から光を発光させ、散乱構造により光を散乱させ、発光層に対向して配置された反射層により発光層の方向からの光を反射させ、発光層の、反射層とは反対側に対向して配置された干渉層に、発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させるようにしたものである。
【0011】
本発明の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0012】
本発明の発光素子、表示装置、表示方法および電子機器では、発光層から様々な方向に射出した光は、干渉層および反射層において反射され、その間を行き来する。その際、この光は、散乱構造により散乱され、その方向がしばしば変化する。この行き来する光が、干渉層の法線光として干渉層に入射すると、干渉層において干渉し、干渉層を透過することができる。これにより、発光層から様々な方向に射出した光は、干渉層の法線光の方向へ集光される。
【0013】
本発明の発光素子では、例えば、干渉層は、発光層と接しているか、あるいは他の透光性を有する層を介して配置され互いに密着していることが望ましい。発光層および反射層は、例えば、発光層から直接に干渉層へ向かう法線光と、発光層から反射層を経て干渉層へ向かう法線光とが、互いに同位相となるように機能する共振構造を構成することが望ましい。ここで、「同位相」とは、位相が完全に一致している場合の位相関係に限定されるものではなく、2つの光が互いに干渉して強め合うような位相関係を含むものである。
【0014】
散乱構造は、例えば反射層の表面に形成されるようにしてもよい。また、散乱構造は、例えば、互いに屈折率の異なる複数の層により構成されるようにしてもよい。干渉層は、例えばエタロンが望ましい。干渉層と反射層との間には、例えば、透過する光の波長を変換する色変換層を備えるようにしてもよい。
【0015】
本発明の表示装置では、例えば、複数の発光素子のそれぞれが、複数の第1のアドレス線のうちの1本に接続されるとともに、複数の第2のアドレス線のうちの1本に接続され、複数の第1のアドレス線が透光性材料により形成され、駆動回路が第1のアドレス線の両端に駆動信号を供給するようにしてもよい。上記透光性材料は、例えば半導体が使用可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発光素子、表示装置、表示方法、および電子機器によれば、干渉層、反射層、および散乱構造を備えるようにしたので、発光層から射出した光を集光することができ、高い効率で、発光面の法線方向に集中して光を射出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を表すブロック図である。
【図2】図1に示した表示デバイスの一構成例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した画素に係る発光素子の概略断面構造を表す断面図である。
【図4】図1に示した表示デバイスの製造工程の一例を表す斜視図である。
【図5】図4に示した表示デバイスの概略断面構造を表す断面図である。
【図6】図3に示した発光素子の一動作例を表す模式図である。
【図7】図3に示した半共振器構造の一特性例を表す特性図である。
【図8】図3に示した発光素子の他の動作例を表す模式図である。
【図9】図3に示した発光素子の一特性例を表す特性図である。
【図10】図1に示した表示デバイスの一特性例を表す特性図である。
【図11】比較例に係る発光素子の一特性例を表す断面図および特性図である。
【図12】他の比較例に係る発光素子の一構成例および一動作例を表す模式図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る発光素子の一構成例および一動作例を表す模式図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の一構成例および一動作例を表す模式図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る発光素子の一構成例および一動作例を表す模式図である。
【図16】変形例に係る画素の一構成例を表す回路図である。
【図17】他の変形例に係る発光素子の概略断面構造を表す断面図である。
【図18】適用例に係る表示装置の外観構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
【0019】
<1.第1の実施の形態>
[構成例]
(全体構成例)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を表すものである。なお、本発明の実施の形態に係る発光素子、表示方法は、本実施の形態により具現化されるので、併せて説明する。この表示装置1は、制御部11と、列ドライバ12A,12Bと、行ドライバ13A,13Bと、表示デバイス2とを備えている。なお、以下では、列ドライバ12A,12Bの総称として列ドライバ12を適宜用い、行ドライバ13A,13Bの総称として行ドライバ13を適宜用いるものとする。
【0020】
制御部11は、供給された画像信号Sigに基づいて、列ドライバ12を駆動するための列駆動信号Vsigr、および行ドライバ13を駆動するための行駆動信号Vsigcを生成する回路である。
【0021】
列ドライバ12は、制御部11から供給される列駆動信号Vsigrに基づいて、表示デバイス2の列アドレス線31(後述)に画素信号Vpixを印加する回路である。この例では、列ドライバ12は、同じ回路構成を有する2つの列ドライバ12A,12Bから構成され、表示デバイス2の列アドレス線31の両端の列電極32(後述)を介して画素信号Vpixを供給するようになっている。なお、2つの列ドライバ12A,12Bに代えて、1つの列ドライバを用い、列アドレス線31の両端の列電極32を介して列アドレス線31を駆動するようにしてもよい。
【0022】
行ドライバ13は、制御部11から供給される行駆動信号Vsigcに基づいて、表示デバイス2の行アドレス線33(後述)のうちの一本を時分割的に順次選択し、走査信号Vscanを印加する回路である。この例では、行ドライバ13は、同じ回路構成を有する2つの行ドライバ13A,13Bから構成され、表示デバイス2の行アドレス線33の両端の行電極34(後述)を介して走査信号Vscanを供給するようになっている。なお、2つの行ドライバ13A,13Bに代えて、1つの行ドライバを用い、行アドレス線33の両端の行電極34を介して行アドレス線33を駆動するようにしてもよい。
【0023】
表示デバイス2は、画素信号Vpixおよび走査信号Vscanに基づいて表示を行うデバイスである。表示デバイス2は、列アドレス線31と、行アドレス線33と、画素7とを備えている。
【0024】
列アドレス線31は、列ドライバ12から供給される画素信号Vpixを各画素7に伝えるものである。列アドレス線31の両端には列電極32が形成されており、画素信号Vpixが、これらの列電極32を介して、両側から同時に列アドレス線31に供給されるようになっている。この構成により、後述するように、列アドレス線31の片側から画素信号Vpixを供給する場合に比べて、各画素7を駆動する際の列アドレス線31における電圧降下を低減することができる。
【0025】
行アドレス線33は、行ドライバ13から供給される走査信号Vscanを各画素7に伝えるものである。列アドレス線31と同様に、行アドレス線33の両端には行電極34が形成されており、走査信号Vscanが、これらの行電極34を介して、両側から同時に行アドレス線33に供給されるようになっている。
【0026】
画素7は、発光ダイオードを含む発光素子4(後述)を有しており、画素信号Vpixおよび走査信号Vscanの電位差に応じた光強度で発光するものである。画素7は、列アドレス線31と行アドレス線33とが交差する位置に配置され、表示デバイス2にマトリックス状に形成されている。画素7は、列アドレス線31に画素信号Vpixが供給され、かつ行アドレス線33に走査信号Vscanが供給されたときに、その電位差に応じた光強度で発光する。つまり、表示デバイス2は、いわゆるパッシブ駆動方式により駆動されるものである。
【0027】
(表示デバイス2)
図2は、表示デバイス2の一構成例を斜視的に表すものである。図2において、(A)は表示デバイス2の全体の外観を示し、(B)は(A)の要部(破線部)の拡大図を示す。表示デバイス2は、基板21と、エタロン29とを備えている。
【0028】
基板21は、光を透過する性質をもつ透光性基板であり、例えばサファイヤ基板により構成される。基板21の片側の面には、上述した列アドレス線31、列電極32、行アドレス線33、および行電極34が形成されている。列アドレス線31は、透光性および導電性を有する材料、例えばn型のGaN結晶層(半導体材料)により構成される。もしくは、列アドレス線31は、ITO(Indium Tin Oxide)により構成されてもよい。行アドレス線33は、この例では金属により構成されている。列アドレス線31と行アドレス線33が交差する部分には、発光丘35が形成されている。この発光丘35は、単一波長の光9を発光する発光ダイオードを構成するものであり、列アドレス線31に供給された画素信号Vpix、および行アドレス線33に供給された走査信号Vscanの電位差に応じた光強度で発光するものである。発光丘35から射出した光は、透光性の列アドレス線31および基板21を経て、エタロン29に入射する。
【0029】
エタロン29は、基板21を経て入射した単一波長の光のうち、その面の法線方向の光を透過させるように干渉させる光学干渉フィルタである。エタロン29は、平行平面性の優れた板で構成されるものであり、板の材料は一般的な光学ガラスを用いることができる。エタロン29の内部では、ファブリ・ペロー干渉計の原理と同様に、その両側の界面において反射が生じて定在波が発生することにより干渉効果を実現している。具体的には、エタロン29に入射した単一波長の光9のうち、エタロン29の法線方向に進む光は、エタロン29内部に定在波を発生し、入射した方向とは反対側から射出する。言い換えれば、このような入射光は、エタロン29を透過する。一方、エタロン29に入射した単一波長の光9のうち、エタロン29の法線方向からずれた方向に進む光は、入射した側に反射される。このように、エタロン29は、光学干渉フィルタの干渉効果の角度依存性を用い、入射光のうちエタロン29の法線方向に進む光を選択的に透過させる。これにより、エタロン29は、表示デバイス2の表示面の法線方向に光を最も射出するように機能するものである。
【0030】
なお、この例では、基板21とエタロン29とを別体として構成したが、これに限定されるものではなく、例えば基板21がエタロン29の機能を有するようにしてもよい。
【0031】
各発光丘34は、その部分に対応する行アドレス線33、列アドレス線31、基板21、およびエタロン29とともに発光素子4を構成する。次に、発光素子4について説明する。
【0032】
図3(A)は、発光素子4の概略断面構造を表すものであり、図3(B)は、発光素子4の光学的な等価構造を表すものである。
【0033】
図3(A)に示したように、発光素子4では、基板21の片側の面に、電極41、発光体42、散乱層43および電極44がこの順に形成されている。電極41は、図2(B)に示した列アドレス線31に対応するものであり、発光体42に対して給電するためのものである。発光体42は発光丘35に対応するものである。散乱層43は、光を散乱する層であり、例えば、屈折率が互いに異なる複数の層などにより構成されるものである。電極44は、行アドレス線33と発光体42とのコンタクトをとるための電極24(後述)に対応するものであり、散乱層43を介して、発光体42に対して給電するように形成されている。電極44は金属で形成されており、発光体42の方向から入射する光を反射するようになっている。基板21の両側の面のうち、発光体42等が形成された面と反対の面には、エタロン29が形成されている。これらの層は互いに密着して形成されており、後述するように、不要な反射が生じないようになっている。
【0034】
発光素子4の光学的等価構造は、図3(B)に示したように、エタロン29と、発光体42と、散乱層43と、反射層55により構成されている。図3(A)に示した電極41および基板21は透光性の性質を有するため、図示を省略している。発光体42は、実際に発光が行われる発光層52と、その両面の透光層51,53を備えている。反射層55は、光学的に反射層として機能する電極44に対応するものである。
【0035】
後述するように、発光層52、透光層53、および反射層55は、半共振器構造RSを構成している。この半共振器構造RSにより、発光層52から射出し反射層55において反射されてエタロン29に向かう光と、発光層52から射出し直接エタロン29に向かう光とが干渉し、エタロン29の法線方向に向かう光が最も強め合うようになっている。
【0036】
以上の構成により、発光素子4では、発光層52から射出され、エタロン29へ入射する光のうち、エタロン29の法線方向に進む光はエタロン29を透過し、法線方向からずれた方向に進む光は、エタロン29によって反射された後、散乱層43により散乱される。その散乱光のうち、エタロン29に向かってその法線方向に進む光は、エタロン29を透過するようになる。一方、発光層52から射出され、反射層55に入射し反射される光のうち、エタロン29の法線方向に進む光は半共振器構造RSにより最も強め合い、エタロン29に入射し透過する。これにより、発光素子4は、その発光面の法線方向に光を最も射出するようになっている。
【0037】
ここで、エタロン29は、本発明における「干渉層」の一具体例に対応する。散乱層43は、本発明における「散乱構造」の一具体例に対応する。半共振器構造RSは、本発明における「共振構造」の一具体例に対応する。
【0038】
画素信号Vpixは、本発明における「駆動信号」の一具体例に対応し、走査信号Vscanは、本発明における「他の駆動信号」の一具体例に対応する。列アドレス線31は、本発明における「第1のアドレス線」の一具体例に対応する。行アドレス線33は、本発明における「第2のアドレス線」の一具体例に対応する。列ドライバ12は、本発明における「駆動回路」の一具体例に対応する。
【0039】
[製造方法例]
次に、本実施の形態に係る表示デバイス2の製造方法について説明する。
【0040】
図4は、表示デバイス2の製造工程の一例を斜視的に説明するものである。
【0041】
まず、基板21上に、n型のGaN結晶層22およびGaN結晶層23を、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により形成する(ステップS1)。n型のGaN結晶層22は、後に列アドレス線31になるものである。GaN結晶層23は、後に発光丘35になるものであり、例えば、n型のGaN結晶層とp型のGaN結晶層とが互いに積層して構成されたものである。また、GaN結晶層23の上面付近には、散乱層43(図示せず)が形成される。
【0042】
次に、GaN結晶層23(散乱層43)上に電極24を形成する(ステップS2)。電極24は、発光丘35と行アドレス線33とのコンタクトをとるために用いられるとともに、半共振器構造RSの反射層55として機能するものであり、発光素子4が配置される位置に形成される。電極24の材料は、例えば銀が用いられる。
【0043】
次に、発光丘35を形成する(ステップS3)。具体的には、ステップS1において形成したGaN結晶層23のうち、後に発光素子4が配置される位置以外の部分を、ドライエッチングにより加工し、発光丘35を形成する。エッチングを行った部分には、ステップS1で形成したn型GaN結晶層22が現れる。
【0044】
次に、列アドレス線31を形成する(ステップS4)。具体的には、ステップS1において形成したn型のGaN結晶層22のうち、後に列アドレス線31となる部分以外を、ドライエッチングにより加工する。これにより、n型のGaN結晶材料からなる列アドレス線31あ形成される。エッチングを行った部分には、基板21が現れる。
【0045】
次に、層間絶縁膜25を形成する(ステップS5)。層間絶縁膜25の材料は、例えばポリイミドが用いられる。
【0046】
次に、行アドレス線33、行電極34および列電極32を形成する(ステップS6)。行アドレス線33、行電極34および行電極34の材料は、例えばTiW/Ti/Pt/Auなどの金属が用いられる。
【0047】
最後に、基板21の上記発光丘35などが形成された面とは反対の面に、エタロン29を形成する(ステップS7)。エタロン29の形成は、蒸着や、別に形成したエタロン29を張り合わせることにより行われる。エタロン29は、基板21とは屈折率が異なる材料で構成される。エタロン29の材料は、一般的な光学ガラスを用いることができる。具体的には、フッ化マグネシウムMgF2(屈折率n=1.38)、硫化亜鉛ZnS(n=2.4)、氷晶石Na3AlF6(n=1.35)、フッ化カルシウムCaF2、酸化シリコンSiO2、酸化アルミニウムAl23などが使用可能である。
【0048】
以上により、表示デバイス2の製造が終了する。
【0049】
図5は、図4のステップS7のV−V矢視方向の概略断面構造を表すものである。以上の製造工程により、発光素子4が基板12にマトリックス状に配置形成され、外部から列アドレス線31および行アドレス線33により各発光素子4を制御することができるようになる。
【0050】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の表示装置1の動作および作用について説明する。
【0051】
(全体動作概要)
制御部11は、供給された画像信号Sigに基づいて、列駆動信号Vsigrおよび行駆動信号Vsigcを生成する。列ドライバ12は、制御部11から供給される列駆動信号Vsigrに基づいて、表示デバイス2の列アドレス線31に画素信号Vpixを印加する。行ドライバ13は、制御部11から供給される行駆動信号Vsigcに基づいて、表示デバイス2の行アドレス線33のうちの一本を時分割的に順次選択し、走査信号Vscanを印加する。表示デバイス2の発光素子4は、画素信号Vpixおよび走査信号Vscanが印加されたとき、その電位差に応じた光強度で発光する。発光素子4は、発光面の法線方向に集中して光を射出する。表示デバイス2は、その表示面にわたり発光素子4が順次発光することにより、画像信号Sigにより指示された画像を表示する。
【0052】
(発光素子4の動作および作用)
発光素子4は、発光層52から射出した光を、エタロン29、半共振器構造RS、および散乱層43により集光することにより、エタロン29の法線方向に集中して光を射出する。以下に、これらの作用を詳細に説明する。
【0053】
まず、エタロン29の作用について説明する。
【0054】
図6は、発光素子4の一動作例を模式的に表すものである。図6では、説明の便宜上、光は散乱層43によって散乱されないものとする。
【0055】
図6に示したように、発光層52からエタロン29に向かう光のうち、エタロン29の法線方向に進む光L1は、エタロン29の干渉効果により選択的に透過され、射出される。一方、発光層52からエタロン29に向かう光のうち、エタロン29の法線方向からややずれた方向に進む光L2は、エタロン29により反射される。
【0056】
エタロン29において、干渉効果により光を強め合う条件は、以下のように示される。
D×cosφ=m×1/2×λ/n ・・・(1)
ここで、Dはエタロン29の板の厚さであり、φはエタロン29に入射する光の方向とエタロン29の法線方向との間の入射角度であり、mは自然数であり、λはエタロン29における光の波長であり、nはエタロン29の屈折率である。
【0057】
エタロン29の法線方向に進む光L1がエタロン29の干渉効果により選択的に透過されるためには、式(1)において入射角度φ=0[deg]とおいた式(次式)を満足するように、例えばエタロン29の厚さDなどを設定すればよい。
D=m×1/2×λ/n ・・・(2)
【0058】
以上のように、エタロン29は、光学干渉フィルタの干渉効果の角度依存性を用い、発光層52から入射した光のうち、エタロン29の法線方向に進む光を透過する。これにより、発光素子4は、エタロン29の法線方向に集中して光を射出することができる。
【0059】
次に、半共振器構造RSの作用について説明する。
【0060】
図6に示したように、発光層52から射出し反射層55において反射されてエタロン29に向かう光のうちの、発光層52の法線方向に進む光L3と、発光層52から射出し直接エタロン29に向かう光のうちの、発光層52の法線方向に進む光L4とは、位相関係が互いに同位相になっており、干渉して強め合っている。つまり、発光層52、透光層53、および反射層55は、半共振器として機能している。
【0061】
半共振器構造RSにおいて、干渉効果により光が強め合う条件は、以下のように示される。
2d×cosθ=(k+1/2)×λn ・・・(3)
ここで、dは発光層52と反射層55の間隔(透光層53の幅)であり、θは光の進む方向と発光層52の法線方向との間の角度であり、kは自然数であり、λnは透光層53における光の波長である。
【0062】
発光層52の法線方向に進む光L3およびL4が、干渉効果により強め合うようにするためには、式(3)において角度θ=0[deg]とおいた式(次式)を満足するように、例えば半共振器構造RSの間隔dなどを設定すればよい。
2d=(k+1/2)×λn ・・・(4)
【0063】
以上のように、半共振器構造RSは、発光層52からエタロン29に向かう光のうち、発光層52の法線方向に進む光L3およびL4が干渉効果により強め合うようにすることができる。これにより、発光素子4は、エタロン29の法線方向に集中して光を射出することができる。
【0064】
図7は、干渉効果とパラメータd/λnとの関係を表すものである。特性C1は、干渉効果により光を強め合う場合を示したものであり、式(3)に基づいて角度θと間隔d/波長λnとの関係をプロットしたものである。ここでは、自然数kは1としている。
【0065】
図7に示したように、例えば、発光層52の法線方向の光が強め合うようにしたい場合には、特性C1と角度θがゼロの線との交点におけるd/λnの値(0.75)になるように間隔dを設定すればよい。
【0066】
次に、散乱層43の作用について説明する。
【0067】
図8は、発光素子4の他の動作例を模式的に表すものである。発光層52から射出し反射層55に向かう光のうちの、発光層52の法線方向からずれた光L11は、反射層55において反射する際に散乱層43により散乱されてその方向が変化し、発光層52を透過してエタロン29に入射する。その際、その入射光のうちエタロン29の法線方向に進む光L11Bは、エタロン29を透過することができる。
【0068】
散乱層43により散乱された後にエタロン29へ入射した光が、エタロン29の法線方向からずれていた場合には、その光は発光体42内部に反射されるが、その光が再度散乱層43により散乱され、その散乱光がエタロン29の法線方向に進む場合には、エタロン29を透過することができる。このように、光が発光層52から射出される際、発光層52の法線方向からずれていた場合でも、エタロン29と反射層55との間を往復する際に散乱層43で散乱され、エタロン29の法線方向に進む光になると、エタロン29を透過することができる。
【0069】
一方、散乱層43がない場合には、光L11は反射層55でそのまま反射されて光L11Cとなる。この光L11Cは、エタロン29に入射すると反射される。この光はエタロン29と反射層55の間を往復することとなるが、散乱層43が無いのでその進む方向が変わることはなく、エタロン29の法線方向に進む光になることはないので、エタロン29を透過することはない。
【0070】
以上のように、散乱層43は、光の方向を変化させることができ、エタロン29の法線方向からずれた光を、エタロン29の法線方向に進む光にすることができる。これにより、発光素子4は、様々な方向の光をエタロン29の法線方向に集光することができ、光の取り出し効率を改善することができる。
【0071】
次に、発光素子4における光強度特性を説明する。
【0072】
図9(A)は、発光素子4における光強度の放射角度依存性の特性例を表すものであり、図9(B)は、立体角内強度の放射角度依存性の特性例を表すものである。ここで、放射角度γは、発光素子4から射出される光の方向と、エタロン29の法線方向との間の角度である。図9(A)において、光強度は、放射角度γ=0[deg]の方向への強度を1として規格化したものである。図9(B)において、立体角内強度は、エタロン29の法線方向を軸とした放射角度γの円錐内に射出される光の積分強度を示すものである。この立体角内強度は、エタロン29の表面から射出する全ての光の積分強度(全光束)を1として規格化したものである。
【0073】
図9(A)に示したように、発光素子4の光強度(特性C10)は、参考として示した三角関数(cosγ)の線R1と比較して、放射角度γが増大するにつれてすぐに減少している。これに伴い、発光素子4の立体角内強度(特性C11)は、図9(B)に示したように、放射角度γが増大するにつれてすぐに増大し、放射角度γ=20[deg]において、立体角内強度は50[%]となっている。これは、発光素子4が、エタロン29の法線方向に光を集中して射出していることを意味している。つまり、発光素子4は、発光層52から様々な方向に射出する光を、上述したエタロン29、半共振器構造RS、および散乱層43により集光することにより、エタロン29の法線方向に光を集中して射出している。
【0074】
(表示装置1の動作および作用)
表示装置1では、列ドライバ12が、列アドレス線31の両側の列電極32から、画素信号Vpixを供給し、行ドライバ13が、行アドレス線33の両側の行電極34から、走査信号Vscanを供給している。以下に、この作用を説明する。
【0075】
図10は、図4のステップS7に示した表示デバイス4のX−X方向の光強度分布を表すものである。図10に示したように、列アドレス線31の各発光素子4の光強度のばらつきは、約10%程度であり、低いばらつきを実現している。
【0076】
この例では、列アドレス線31は半導体材料(n型のGaN結晶)により形成されているため、この列アドレス線31の電気抵抗は金属に比べ高くなっている。よって、列ドライバ12が各発光素子4を駆動する際、列アドレス線31における電圧降下が問題になりやすい。特に、列アドレス線31における各発光素子4の位置に依存して、各発光素子4の光強度にばらつきが生じるおそれがある。
【0077】
表示装置1では、列アドレス線31に画素信号Vpixを供給する際、列アドレス線31の両側から供給するようにしている。これにより列アドレス線31における電圧降下が最小限に抑えられ、列アドレス線31において等電位を実現することにより、光強度のばらつきを抑えることができる。
【0078】
以上、列アドレス線31について説明したが、行アドレス線33についても全く同様である。すなわち、表示装置1では、行アドレス線33に走査信号Vscanを供給する際、行アドレス線33の両側から供給するようにしている。これにより行アドレス線33における電圧降下が最小限に抑えられ、行アドレス線33において等電位を実現することにより、光強度のばらつきを抑えることができる。
【0079】
(比較例1)
次に、比較例1に係る表示装置について説明する。本比較例は、レンズを用いて集光する発光素子4Rを用いるものである。その他の構成は、上記実施の形態(図1)と同様である。
【0080】
図11(A)は、比較例1に係る発光素子4Rの一構成例を表すものであり、図11(B)は、発光素子4Rにおける光強度の放射角度依存性の特性例を表すものであり、図11(C)は、立体角内強度の放射角度依存性の特性例を表すものである。
【0081】
発光素子4Rは、レンズLを備えている。レンズLは、発光体42から様々な方向に射出される光を、屈折効果を利用して集光し、発光体42の法線方向に光を射出する機能を有している。
【0082】
レンズLは、例えば、発光体42の中央付近から様々な方向に射出する光が発光体42の法線方向に進むように、最適化して設計されている。具体的には、例えば、発光体42の中央付近の点P1から、発光体42の法線方向からずれた方向に射出した光L22は、このレンズLの界面において屈折し、発光体42の法線方向に進むようになっている。一方、この場合、発光体42の中心付近から離れた点P2から射出した光L23,L24は、このレンズの界面において屈折したときに、発光体42の法線方向に進まないおそれがある。このように、発光体42の様々な位置から様々な方向に射出する光をレンズLにより集光することは、一般に容易ではない。
【0083】
なお、仮に発光体42は、発光体42の中心付近の点P1からのみ射出するように構成すれば、その発光素子から射出する光は発光体42の法線方向に進むようになるが、この場合は、点P1からのみ光が射出するため、光強度自体が低下してしまう。
【0084】
図11(B)に示したように、本比較例1に係る発光素子4Rの光強度(特性R3)は、放射角度γが増大すると、一度増大した後に減少している。参考として示した三角関数(cosγ)の線R1と比較すると、放射角度γが増大したときに光強度が減少しにくい。これに伴い、発光素子4Rの立体角内強度(特性R4)は、図11(C)に示したように、放射角度γが増大するにつれてゆっくりと増大している。これは、発光素子4Rでは、発光体42の様々な位置から様々な方向に射出した光が、レンズLにより十分に集光できていないことを意味している。
【0085】
一方、本実施の形態に係る発光素子4では、光強度(図9(A))、立体角内強度(図9(B))ともに、放射角度γが増大するにつれてすぐに変化しており、発光体42の様々な位置から様々な方向に射出する光を、効果的に集光できている。
【0086】
(比較例2)
次に、比較例2に係る表示装置について説明する。本比較例は、構成層が互いに密着していない発光素子4Sを用いるものである。その他の構成は、上記実施の形態(図1)と同様である。
【0087】
図12は、発光素子4Sの一構成例および一動作例を表すものである。エタロン29と透光層51との間には、空隙60が設けられている。発光層52から射出し空隙60に入射した光L25は、まず、空隙60と透光層51との界面において、それらの屈折率に依存して屈折する。その屈折光L26が、エタロン29の法線方向からずれた方向に進む場合には、エタロン29の界面により反射される。その反射光は、再度空隙60と透光層51との界面に入射し、この界面により反射される。さらにこの反射光は再度エタロン29に入射するが、その光の方向はエタロン29の法線方向からずれているため、エタロン29の界面により反射される。このように、空隙60の両端で反射されることにより行き来する光は、光の進む方向を変えることができないため、エタロン29を透過できず、空隙60内に閉じ込められてしまう。これにより、発光素子4Sの発光強度は低下してしまう。なお、この例では、エタロン29と透光層51との間に空隙60が挿入されている場合を想定したが、これに限定されるものではなく、例えば、互いに隣接する他の層の間に空隙が挿入されている場合も同様であり、また、空隙の代わりに、隣接する層と屈折率が異なる他の透光層が挿入されている場合も同様である。
【0088】
一方、本実施の形態に係る発光素子4では、各層は互いに密着して構成されている。これにより、上述したような不要な反射を抑えることができ、発光強度の低下を抑えることができる。
【0089】
[効果]
以上のように本実施の形態では、エタロン、半共振器構造、および散乱層を備えるようにしたので、発光層52から射出する光を集光し、発光素子の表面の法線方向に集中して光を射出することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、発光素子を構成する各層を互いに密着して配置するようにしたので、不要な反射を抑えることができ、発光強度の低下を抑えることができる。
【0091】
また、本実施の形態では、列アドレス線31に画素信号Vpixを供給する際、列アドレス線31の両側から供給し、行アドレス線33に走査信号Vscanを供給する際、行アドレス線33の両側から供給するようにしたので、列アドレス線31および行アドレス線33における電圧降下を最小限に抑えることができ、各発光素子の光強度のばらつきを抑えることができる
【0092】
[変形例1−1]
上記実施の形態では、散乱層43は透光層53と反射層55との界面(すなわち反射層55の表面)に形成するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、反射面55の表面自体が散乱面になっていてもよい。また、例えば、透光層51や透光層53の内部に形成するようにしてもよい。以下に、透光層51の内部に散乱層を形成する場合について説明する。
【0093】
図13は、本変形例に係る発光素子4Bの構成例と模式的な動作例を表すものである。発光素子4Bは、透光層51の内部に散乱層43Bを有している。
【0094】
発光層52から射出しエタロン29に向かう光のうち、発光層52の法線方向からずれた方向に進む光L12は、散乱層43Bによって散乱されてその方向が変化し、エタロン29に入射する。その際、その入射光のうちエタロン29の法線方向に進む光L12Bは、エタロン29を透過することができる。
【0095】
散乱層43Bにより散乱されエタロン29へ入射した光が、エタロン29の法線方向からずれていた場合でも、エタロン29と反射層55との間を往復する際に散乱層43Bで散乱され、エタロン29の法線方向の光になると、エタロン29を透過することができる。
【0096】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置について説明する。本実施の形態では、発光素子が色変換層を有している。その他の構成は、上記第1の実施の形態(図1など)と同様である。なお、上記第1の実施の形態に係る表示装置1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
図14は、本実施の形態に係る発光素子5の構成例と模式的な動作例を表すものである。発光素子5は、発光層52と反射層55との間に色変換層57を有している。色変換層57は、透過する光の波長を変換する機能を有しており、例えば、蛍光体により構成される。色変換層57は、例えば、結晶成長や、粉末を混ぜた樹脂の塗布などにより形成される。色変換層57は、例えば、発光層52から射出した赤色よりも短い波長の光を、赤色に変換するものである。もしくは、色変換層57は、緑色よりも短い波長の光を緑色に変換するものであってもよく、青色よりも短い波長の光を青色に変換するものであってもよい。エタロン29は、変換された光の波長に対して上述した干渉効果を有するように、厚さDなどが設定され構成される。半共振器構造RSは、色変換層57による波長の変換を考慮して、間隔dなどが設定され構成される。
【0098】
図14に示したように、発光層52から射出し反射層55へ向かう光のうち、発光層52の法線方向に進む光L31は、色変換層57を透過してその波長が変換され、その後に反射層55により反射される(光L31B)。反射光L31Bは、再度色変換層57を透過した後、発光層52を透過する。その際、光L31Bは、その波長が発光層52において発光する光の波長と異なり、電子正孔対を生成させることがないため、発光層52において殆ど吸収されない。光L31Bは、発光層52を透過した後に散乱層43Bに入射する。光L41Bは、散乱層43Bにより散乱されなかった場合には、そのまま直進してエタロン29に入射し、エタロン29を透過することができる。
【0099】
また、発光層52から射出しエタロン29に向かう光L32は、まず散乱層43Bに入射する。光L32は、散乱層43Bにより散乱されなかった場合には、そのまま直進し、エタロン29に入射する。この光L32は、その波長がエタロン29において干渉効果を生じる波長ではないため、エタロン29により反射される。反射光は、再度散乱層43Bに入射し、散乱層43Bにより散乱されなかった場合には、そのまま直進し、色変換層57を透過してその波長が変換され、その後に反射層55により反射される(光L32B)。反射光L32Bは、再度色変換層57を透過した後、殆ど吸収されることなく発光層52を透過する。光L32Bは、発光層52を透過した後に散乱層43Bに再度入射する。この散乱層43Bにおいて散乱された光のうち、エタロン29の法線方向に進む光L32Cは、エタロン29を透過することができる。
【0100】
このように、発光素子5では、発光層52から射出した光は、最終的にエタロン29を透過するまでの間に必ず色変換層57を透過する。一度色変換層57を透過し波長が変化すると、その後に発光層52を透過する際には、その光の波長が発光層52において発光する光の波長と異なるため、光は殆ど吸収されなくなる。これにより、エタロン29と反射層55の間を行き来する際の光の損失を抑えることができる。
【0101】
また、発光素子5では、発光層52から射出した光の波長は、色変換層57を透過することにより変化する。言い換えれば、発光層52において発光する光の波長は、観察者が見る光(エタロン29の透過光)の波長により制約されずに設定することができる。つまり、発光層52において発光する光の波長は、観察者が見る光の波長よりも短ければよく、発光層52に対する制約を少なくすることができる。
【0102】
以上のように本実施の形態では、色変換層を設けるようにしたので、発光層から射出した光が反射層により反射して再度発光層を透過する際、光の吸収が生じないため、光の損失を抑えることができる。また、発光層において発光する光の波長と、観察者が見る光の波長とを異なるようにすることができ、高い設計自由度を実現できる。その他の効果は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0103】
[変形例2−1]
上記実施の形態では、色変換層57を発光層52と反射層55との間に設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、色変換層を干渉層29と発光層52との間に設けてもよいし、色変換層を、干渉層29と発光層52との間と、発光層52と反射層55との間の両方、すなわち発光層52の両側に設けてもよい。以下に、色変換層を発光層の両側に設ける場合について説明する。
【0104】
図15は、変形例に係る発光素子6の構成例と模式的な動作例を表すものである。発光素子6は、発光層52の両側に色変換層57,58を備えている。色変換層57は、発光層52と反射層55との間に設けられ、色変換層58はエタロン29と発光層52との間に設けられている。なお、この例では、散乱層43Bと色変換層58との間の配置関係は、散乱層43Bが発光層52側に配置され、色変換層58がエタロン29側に配置されるようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、散乱層43Bがエタロン29側に配置され、色変換層58が発光層52側に配置されるようにしてもよい。
【0105】
図15に示したように、発光層52から射出しエタロン29に向かう光のうち、発光層52の法線方向からずれた方向に進む光L41は、散乱層43Bによって散乱されてその方向が変化した後、色変換層58を透過してその波長が変換され、その後にエタロン29に入射する。その際、その入射光のうちエタロン29の法線方向に進む光L41Bは、エタロン29を透過することができる。
【0106】
本変形例では、色変換層を発光層の両側に設けるようにしたので、発光層から射出した光が反射層やエタロンにより反射して再度発光層を透過する際、光の吸収が生じないため、光の損失を最小限に抑えることができる。
【0107】
また、上記実施の形態では、散乱層は透光層51の内部に設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば透光層53の内部に設けるようにしてもよいし、第1の実施の形態に示したように反射層55の表面に設けるようにしてもよい。
【0108】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0109】
上記の各実施の形態では、表示デバイス2はパッシブ駆動方式により駆動するものとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えてアクティブ駆動方式により駆動するようにしてもよい。以下に、アクティブ駆動方式の例を説明する。
【0110】
図15は、アクティブ駆動方式に用いられる画素7Bの一構成例を表すものである。画素7Bは、発光素子4および画素回路70により構成されている。発光素子4は、例えば上記第1の実施の形態等の発光素子が使用可能である。画素回路70は、書き込みトランジスタTr1、駆動トランジスタTr2および容量素子Csを用いて構成されており、いわゆる「2Tr1C」の回路構成となっている。この画素回路70では、書き込みトランジスタTr1のゲートが走査線WSLに接続され、ソースが信号線DTLに接続され、ドレインが駆動トランジスタTr2のゲートおよび容量素子Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTr2のドレインは電源線DSLに接続され、ソースは容量素子Csの他端および発光素子4のアノードに接続されている。発光素子4のカソードはグランドに接続されている。
【0111】
この構成により、画素7Bでは、走査線WSLに信号が供給されて書き込みトランジスタTr1がオン状態になったときに、信号線DTLに供給された画素信号に対応する電圧が容量素子Csに保持され、書き込みトランジスタTr2の電流Idが設定され、その電流Idが発光素子4に供給される。
【0112】
この書き込みトランジスタTr1および駆動トランジスタTr2は、図2に示した表示デバイス2において、例えば発光丘35を形成したGaN結晶層23(図4参照)を用いて形成してもよいし、基板21に直接形成してもよい。または、別に製造したこれらのトランジスタを、表示デバイス2に実装するようにしてもよい。もしくは、これらのトランジスタ、信号線DTL、走査線WSL、電源線DSL、およびこれらの駆動回路を形成したウエハの上に、図4に示したように発光丘35などを形成するようにしてもよい。
【0113】
また、上記の各実施の形態では、図2に示したように、光は発光丘35から基板21側(図2の上側)に射出するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、基板21と反対の方向(図2の下方向)に射出するようにしてもよい。この場合、行アドレス線33および電極24(図4)は、例えばITOなど、透光性の材料が用いられる。列アドレス線31は、例えば金属など、光を反射する材料が用いられる。エタロン29は、光が射出する側(図2の下側)に設けられる。
【0114】
また、上記の各実施の形態では、発光素子4は図3(A)に示した構造を有するとしたが、これに限定されるものではなく、例えば図16に示す構造を有するものであっても良い。図16(A)は、発光素子4の片側の面に、給電のための2つの電極45,46を設けた表示装置を表すものである。)この場合、電極45は、例えば金属など、光を反射する材料が用いられる。図16(B)は、エタロン29を基板21側ではなく発光体42側に設けたものである。この場合、電極47,48は、例えば金属など、光を反射する材料が用いられる。基板21は透光性を有していなくてもよい。
【0115】
また、上記の各実施の形態では、1つの散乱層を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば複数の散乱層を設けるようにしてもよい。
【0116】
また、例えば上記の各実施の形態では、発光素子は発光ダイオードを有するようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、EL(Electro-Luminescence)素子を有するようにしてもよい。
【0117】
また、例えば、色変換層をエタロン29の発光層52とは反対の面に配置してもよい。例えば、赤色、緑色、青色の色変換層をそれぞれ用いた3色の発光素子を表示デバイス2に配列することにより、表示装置がカラー画像を表示することが可能となる。
【0118】
さらに、例えば上記の各実施の形態では、行アドレス線33は金属を用いて構成したが、これに限定されるものではなく、列アドレス線31と同様に半導体結晶(例えばn型のGaN結晶層)で構成するようにしてもよい。この場合でも、行ドライバ13が行アドレス線33の両側から走査信号Vscanを供給するため、行アドレス線33における電圧降下の影響を低減でき、光強度のばらつきを防ぐことができる。
【0119】
上記の実施の形態等の発光素子、表示装置、表示装置の駆動方法は、例えば、ヘッドマウントディスプレイなど、様々な電子機器に適用することが可能である。図17は、ヘッドマウントディスプレイの外観を表すものである。このヘッドマウントディスプレイ70は、例えば、表示装置501、表示装置501に表示された画像を伝える導光板502、画像を表示する表示面503を有しており、表示装置501は、上記の実施の形態等の発光素子、表示装置、表示装置の駆動方法を用いて構成されている。この具体例は、例えば、特開2009−300480号公報などに記載されている。
【符号の説明】
【0120】
1…表示装置、2…表示デバイス、4,4B,5,6…発光素子、7,7B…画素、9…光、11…制御部、12,12A,12B…列ドライバ、13,13A,13B…行ドライバ、21…基板、22…n型GaN結晶層、23…GaN結晶層、24,41,44〜48…電極、25…相間絶縁膜、29…エタロン、31…列アドレス線、32…列電極、33…行アドレス線、34…行電極、35…発光丘、42…発光体、43,43B…散乱層、51,53…透過層、52…発光層、55…反射層、57,58…色変換層、70…画素回路、Cs…容量素子、C1,C2,C10,C11…特性、d…間隔、DSL…電源線、DTL…信号線、L1〜L6,L11,L11B,L11C,L12,L12B,L12C,L31,L31B,L32,L32B,L32C,L41,L41B…光、RS…半共振器構造、Sig…画像信号、Vpix…画素信号、Tr1…書き込みトランジスタ、Tr2…駆動トランジスタ、Vscan…走査信号、Vsigc…行駆動信号、Vsigr…列駆動信号、WSL…走査線、φ…入射角度、θ,α…角度、γ…放射角度、λ,λn…波長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と、
前記発光層に対向して配置され、前記発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させる干渉層と、
前記発光層の、前記干渉層とは反対側に対向して配置され、前記発光層の方向からの光を反射させる反射層と、
前記干渉層と前記反射層との間に配置された散乱構造と
を備えた発光素子。
【請求項2】
前記干渉層は、前記発光層と接しているか、あるいは他の透光性を有する層を介して配置され互いに密着している
請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光層および前記反射層は、前記発光層から直接に前記干渉層へ向かう法線光と、前記発光層から前記反射層を経て前記干渉層へ向かう法線光とが、互いに同位相となるように構成された共振構造を構成する
請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記散乱構造が、前記反射層の表面に形成されている
請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記散乱構造が、互いに屈折率の異なる複数の層により構成されている
請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記干渉層はエタロンにより構成されている
請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
さらに、前記干渉層と前記反射層との間に、透過する光の波長を変換する色変換層を備えた
請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子を発光させるための信号を伝える複数の第1のアドレス線および複数の第2のアドレス線と、
複数の第1のアドレス線を駆動する駆動回路と
を備え、
前記発光素子は、
発光層と、
前記発光層に対向して配置され、前記発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させる干渉層と、
前記発光層の、前記干渉層とは反対側に対向して配置され、前記発光層の方向からの光を反射させる反射層と、
前記干渉層と前記反射層との間に配置された散乱構造と
を有する表示装置。
【請求項9】
前記複数の発光素子のそれぞれは、前記複数の第1のアドレス線うちの1本に接続されるとともに、前記複数の第2のアドレス線うちの1本に接続され、
前記複数の第1のアドレス線が透光性材料により形成され、
前記駆動回路は、両端から前記第1のアドレス線を駆動する
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記透光性材料は半導体である
請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
複数の第1のアドレス線の両端に対して駆動信号を時分割的に供給し、
複数の第2のアドレス線に対して前記駆動信号とは異なる他の駆動信号を時分割的に供給し、
前記複数の第1のアドレス線のうち前記駆動信号が供給された第1のアドレス線と、前記複数の第2のアドレス線のうち前記他の駆動信号が供給された第2のアドレス線とに接続された発光素子の発光層から光を発光させ、
散乱構造により光を散乱させ、
前記発光層に対向して配置された反射層により前記発光層の方向からの光を反射させ、
前記発光層の、前記反射層とは反対側に対向して配置された干渉層に、前記発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させる
表示方法。
【請求項12】
複数の発光素子を有する表示装置と、
前記表示装置を利用して所定の処理を行う処理部と
を備え、
前記発光素子は、
発光層と、
前記発光層に対向して配置され、前記発光層の方向からその法線方向に進む法線光を透過させるように干渉させる干渉層と、
前記発光層の、前記干渉層とは反対側に対向して配置され、前記発光層の方向からの光を反射させる反射層と、
前記干渉層と前記反射層との間に配置された散乱構造と
を含む電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−211014(P2011−211014A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78238(P2010−78238)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】