説明

発光素子およびその製造方法、並びに発光装置

【課題】光取り出し効率を高めると共に薄型化が容易な発光素子および量産性が改善可能なその製造方法、並びに発光装置を提供する。
【解決手段】発光層を有する半導体積層体と、上面側に前記半導体積層体が設けられ、側面に平均高さおよび平均ピッチが均一に分布した凹凸を有する透光性基板と、を備えたことを特徴とする発光素子およびその製造方法、並びに発光装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子およびその製造方法、並びに発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透光性基板上に可視光を放出可能な発光層が設けられた発光素子において、透光性基板の側面に微小凹凸を形成すると透光性基板の側面における全反射が低減され光取り出し効率を高めることができる。
【0003】
他方、SMD(Surface Mounted Device)型などの発光素子が実装された回路基板を用いた電子機器を薄型にする場合、発光装置も薄型とすることが要求される。例えば、発光装置の厚さを、0.55mm以下にする場合、実装部材の厚さやボンディングワイヤの高さを考慮すると、発光素子のチップの厚さを150μm以下とすることが好ましい。
【0004】
このような薄いチップの側面に、フロスト処理などを用いて微小凹凸を形成する工程では、チップの収量が低下し、作業性も低下する。
【0005】
材料・面方位によらず粗面化を行った高輝度発光ダイオードの開示例がある(特許文献1)。この例では、AlGaInP活性層が設けられたGaP基板の側面の全部をダイシングブレードを用いて粗面状に加工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−258672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光取り出し効率を高めるとともに、薄型化が容易な発光素子および量産性が改善可能なその製造方法、並びに発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、発光層を有する半導体積層体と、上面側に前記半導体積層体が設けられ、側面に平均高さおよび平均ピッチが均一に分布した凹凸を有する透光性基板と、を備えたことを特徴とする発光素子が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、発光層を有する半導体積層体と、上側面に前記半導体積層体が設けられ、側面に平均高さおよび平均ピッチが均一に分布した凹凸を有する透光性基板と、を有する発光素子と、前記発光素子が接着された第1の電極と、前記第1の電極の一方の端部と対向しかつ 前記第1の電極の他方の端部とは互いに反対方向に延在する他方の端部と、を有する第2の電極と、凹部が設けられ、前記凹部の底面には前記第1および第2の電極の一部がそれぞれ露出し、かつ前記凹部の内部に前記発光素子が設けられた絶縁部材と、前記凹部内に充填された透光性樹脂層と、を備えたことを特徴とする発光装置が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、透光性基板の上面に半導体積層体を形成する工程と、前記透光性基板の下面に貫通しない溝部を前記半導体積層体側から形成する工程と、前記溝部の内側面に凹凸を形成する工程と、前記溝部に至るまで前記透光性基板を前記下面側から研磨する工程と、を備えたことを特徴とする発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
光取り出し効率を高めるとともに、薄型化が容易な発光素子および量産性が改善可能なその製造方法、並びに発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる発光素子の模式断面図
【図2】発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図2(a)は透光性基板上に接着層を形成した模式断面図、図2(b)は第1の基板上に接着層までを形成した模式断面図、図2(c)はウェーハを接着した模式断面図、図2(d)は第1の基板を除去した模式断面図、である。
【図3】発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図3(a)は上部成長層を形成した模式断面図、図3(b)は上部電極を形成した模式断面図、図3(c)はコンタクト層をエッチングした模式断面図、である。
【図4】発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図4(a)は半導体積層体を分離した模式断面図、図4(b)は保護層を充填した模式断面図、図4(c)はハーフダイシングを行った断面図、である。
【図5】発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図5(a)は凹凸を形成した模式断面図、図5(b)は溝部に樹脂を充填した模式断面図、図5(c)は支持板を接着した模式断面図、である。
【図6】凹凸形状の分布を説明する模式図を示し、図6(a)は発光素子の模式斜視図、図6(b)は凹凸の変化を説明する模式図、図6(c)は小さい凹凸を説明する模式図、である。
【図7】発光装置の模式断面図
【図8】比較例にかかる発光装置の模式断面図を示し、図8(a)はパッケージを含む発光装置の模式断面図、図8(b)はチップ下部領域の部分模式断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる発光素子の模式断面図である。
発光素子5は、透光性基板10の上方に、接着層12、接着層26、再成長下地層24、上部成長層35が、この順序で積層されている。上部成長層35の上面には上部電極42、透光性基板10の下面には下部電極44、がそれぞれ設けられている。
上部成長層35は、透光性基板10側から、第1クラッド層28、発光層30、第2クラッド層32、電流拡散層34、およびコンタクト層36、がこの順序に積層されている。また、透光性基板10の側面10aには、微小な凹凸11が全面にわたって均一に形成されている。この場合、微小な凹凸11の断面において、光束がより広い角度に放出されるので、全反射される領域が狭くなり、光取り出し効率が改善される。
【0014】
他方、発光素子5が屈折率が1.5の封止樹脂により覆われており、屈折率が3.45のGaPからなる透光性基板10の側面が平面である場合、臨界角は略26度となる。発光層30からの放出光、上部電極42や下部電極44における反射光、およびチップと外部との界面における反射光が臨界角以上の入射角で側面10aに当たると、発光素子5のチップの外部に放出されない。
【0015】
なお、第2クラッド層32、電流拡散層34、およびコンタクト層36、は、同一導電型とし、p型およびn型のいずれか一方とし、第1クラッド層28、および透光性基板10は、p型およびn型のいずれか他方とする。
【0016】
発光層30を含む上部成長層35は、In(AlGa1−x1−yP(0≦x≦1、0≦y≦1)やAlGa1−zAs(0≦z≦1)、GaIn1−sAs1−t(0≦s≦1、0≦t≦1)とすると、放出光の波長範囲を530〜900nmなどできる。もし、発光層30のバンドギャップ波長を透光性基板10のバンドギャップ波長よりも長くすると、透光性基板10における放出光の吸収を低減できる。このような、透光性基板10として、例えばバンドギャップ波長が550nmであるGaP、やバンドギャップ波長が570nmであるAlAs、などを用いることができる。
【0017】
また、発光層30は、井戸層および障壁層からなる多重量子井戸構造とすることができる。量子井戸構造を有する発光素子は、キャリアを井戸層に効率よく閉じ込め発光効率を高めるとともに、動作電流を低減し、発光波長を精度良く制御することができる。
【0018】
図2は発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図2(a)は透光性基板上に接着層を形成した模式断面図、図2(b)は第1の基板上に接着層までを形成した模式断面図、図2(c)はウェーハを接着した模式断面図、図2(d)は第1の基板を除去した模式断面図、である。
図2(a)において透光性基板10は、n型GaPから成るものとし、その表面にn型導電型の接着層12を形成する。また、図2(b)のように、n型GaAsなどからなる第1の基板20の表面に、バッファ層22、再成長下地層24、および接着層26をこの順序で形成する(図2(b))。
【0019】
続いて、図2(c)のように、接着層12と、接着層26と、を向かい合わせて接触させ熱圧着により、ウェーハ接着を行う。さらに、図2(d)のように、第1の基板20を除去する。バッファ層22は、次に結晶成長を行う直前に除去するとよい。
【0020】
図3は発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図3(a)は上部成長層を形成した模式断面図、図3(b)は上部電極を形成した模式断面図、図3(c)はコンタクト層をエッチングした模式断面図、である。なお、透光性基板10側の接着層12、接着層26、及び再成長下地層24、及びその上に成長された上部成長層35、を半導体積層体39と呼ぶことにする。
さらに、図3(a)のように、透光性基板10の上方に積層された再成長下地層24の上方に、n型In0.5Al0.5Pからなる第1クラッド層(厚さ0.6μm)28、発光層30、p型In0.5Al0.5Pからなる第2クラッド層(厚さ0.6μm)32、In0.5(Al0.7Ga0.30.5Pからなる電流拡散層(厚さ2μm)34、p型Ga0.5Al0.5Asからなるコンタクト層36、およびダミー層37をこの順序で結晶成長する。なお、それぞれの層の厚さおよび組成はこれらに限定されない。また、透光性基板10および半導体積層体39の導電型はそれぞれ反対の導電型であってもよい。
【0021】
再成長下地層24はGaAsと格子整合している。このために、格子定数の異なる透光性基板10と接着されても、接着側とは反対側の上方にはGaAsまたはIn(AlGa1−x1−yP(0≦x≦1、0≦y≦1)と格子整合した半導体層が結晶成長できる。なお、発光層を含む積層体を結晶成長したのちウェーハ接着を行ってもよいが、図2〜図3に説明した製造方法の方が半導体積層体39の結晶品質を高めることが容易となる。
【0022】
このような結晶結晶成長には、MOCVD(Meatl Organic Chemical Vapor Depositon)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0023】
続いて、図3(b)のように、ダミー層37を除去し上部成長層35の上面のコンタクト層36を露出する。コンタクト層36の上に、上部電極42をパターニングする。コンタクト層36がp型Ga0.5Al0.5Asからなる場合、上部電極42は、例えばAu(厚さ0.05μm)/AuZn(Zn0.3重量%含有、厚さ0.2μm)/Au(厚さ)0.5μm)などの構成とすることができる。また、Ti/Pt/Auなどのノンアロイ系やITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜を用いた構成としてもよい。
【0024】
コンタクト層36がGaAsからなる場合、可視光が吸収され光出力が低下する。このために、上部電極42をマスクとして、ウェットエッチング法などを用いてコンタクト層36を除去すると光出力を高めることができる。
【0025】
図4は本実施形態にかかる発光素子の製造方法の工程断面図を示し、 図4(a)は半導体積層体を分離した模式断面図、図4(b)は保護層を充填した模式断面図、図4(c)はハーフダイシングを行った模式断面図、である。
図4(a)のように、フォトレジスト膜50をパターニングし、ウェットエッチング法などを用いて半導体積層体39のダイシングロードとする領域39aを除去し、フォトレジスト膜50をさらに剥離する。なお、半導体積層体39の上面には上部電極42が設けられているが図示していない。
【0026】
続いて、図4(b)のように、エッチングにより露出した半導体積層体39のメサ表面を、第1の保護層52で覆う。第1の保護層52の材質としては、耐酸性樹脂、SiN、SiOのような誘電体を用いることができる。さらに、フォトレジスト膜などを用いて、第1の保護層52の上面および半導体積層体39の上面に第2の保護層53を形成する。
【0027】
さらに、図4(c)のように、ブレードダイサーなどを用いて第2の保護層53の側からハーフダイシング加工を行い、透光性基板10に溝部54を形成する。透光性基板10の表面からの深さをTGは、例えば50〜150μmとする。このようにして、透光性基板10を上方からみて、格子状に溝部54を形成することができる。
【0028】
図5は本実施形態にかかる発光素子の製造方法の工程断面図を示し、図5(a)は凹凸を形成した模式断面図、図5(b)は溝部に樹脂を充填した模式断面図、図5(c)は支持板を接着した模式断面図、である。
図5(a)のように、溝部54の内側面54aに酸の水溶液などを用いたエッチング工程を含むフロスト処理を行い、高次の結晶面からなる微小な凹凸11を形成する。酸としては、HCl、HSO、H、HFまたはこれらの混合液とすることができる。例えばHCl水溶液を用いると、凹凸11のピッチや高低差が、0.1〜3μmの範囲とすることができる。このような凹凸11が形成された面を粗面とも言う。また、HCl水溶液の温度や濃度を適正に選択することにより、凹凸11のピッチおよび高低差の平均値を0.3〜2μmの範囲とすることがより好ましい。
【0029】
続いて、図5(b)のように、第2の保護層53、第1の保護層52を剥離し、溝部54にPMMA(Polymethyl Methacrylate)などの樹脂55を充填する。さらにエレクトロンワックス57などを用いて支持板56に貼り付けると、接着強度が増すのでより好ましい。このあと、透光性基板10の下面側から研磨を始め、溝部54に至り、基板10が所望の厚さとなると研磨を終了する。さらに例えばポリッシング研磨により表面を鏡面に近づける。研磨終了面59は、鎖線で表すようになる。
【0030】
ウェーハ口径が2インチの透光性基板10の厚さTWは、例えば研磨前で250〜400μmの範囲とする。また、溝部54の深さTDは、例えば70〜170μmとする。この結果、透光性基板10の溝部非形成領域の厚さTRは、例えば80〜330μmの範囲となる。溝部54の下部領域の厚さTMとして、例えば10μm分を研磨除去する。
【0031】
半導体積層体39の厚さTLは、例えば5〜10μmの範囲とする。この結果、発光素子5の厚さである(TD−TM+TL)は、例えば65〜170μmの範囲と薄くすることができる。このようにすると、凹凸11が均一に全面にわたって形成された側面10aとすることができる。また、ウェーハ口径を3インチとした場合、透光性基板10の厚さTWは、例えば400〜500μmの範囲とするので、研磨する部分が多くなる。
【0032】
このように、透光性基板10の下面側の研磨工程の前に、半導体積層体39が設けられた上面側からダイシングする技術を、DBG(Dicing Before Grinding)と呼ぶ。ブレードダイサーの代わりにレーザ加工法を用いてDBGを行うと、確実にかつ正確にダイシングできるのでチップの収量を高めることが容易となる。
【0033】
さらに、図5(c)のように、下部電極44を形成する。透光性基板10がn型導電型である場合、電極組成は、AuGe(Ge0.3重量%含有、厚さ0.05μm)/Ni/Au(0.5μm)またはAuGe(Ge0.3wt%含有、厚さ0.05μm)/Mo/Au(0.5μm)などとすることができる。下部電極44を支持板56から剥離した状態で下部電極44のシンター工程を行い、チップ間に埋め込まれていた樹脂55をCDE(Chemical Dry Etching)などを用いて除去し、分離面60で分離すると、図1の発光素子5のチップを得ることができる。
【0034】
図6は凹凸形状の分布を説明する模式図を示し、図6(a)は発光素子の模式斜視図、図6(b)は凹凸の変化を説明する模式図、図6(c)は小さい凹凸を説明する模式図、である。
図6(a)において、透光性基板10の4つの側面10aには、凹凸11が形成される。図6(b)に表すように、この凹凸11の谷から山までの差で定義する高さHは、H1、H2、H3、H4のようにXZ面内の位置に応じて変化する。また、山から山の間隔で定義するピッチPは、P1、P2、P3のようにXZ面内の位置に応じて変化する。しかし、フロスト処理工程の条件を同一にすれば、側面10aの上部のA領域、中間部のB領域、下部のC領域、における高さHおよびピッチPの平均値は均一となる。なお、フロスト処理工程を用いて形成された凹凸11の山の先端および谷底は、図6(b)よりも滑らかとなっていてもよい。
【0035】
この場合、SEM(Scanning Electron Microscope)写真を用いて側面10aの断面形状から凹凸11の高さHおよびピッチPの相対値を測定することができる。また、凹凸11の表面形状のSEM写真などを用いても、ピッチPの相対値を測定することができる。なお、本明細書において、「凹凸の平均高さおよび平均ピッチの分布が均一」とは、SEM測定における相対値の最大誤差を、例えば5%として、平均高さおよび平均ピッチ値の差異が共に5%よりも小さく分布している場合を意味するものとする。
【0036】
溝部54内の下部ではフロスト処理工程において酸水溶液の流動性が不十分となり、フロスト処理条件を同一とすることが困難となり、凹凸11が上部におけるようには均一に形成できないことがある。この場合、例えば、図6(c)のように高さおよびピッチが次第に小さくなり、粗面としての効果が低下する。
【0037】
これに対して本実施形態では、溝部54の厚さTMの下部領域を研磨により除去するので、チップに分離した場合に透光性基板10の側面10aを下部から上部にわたって高さHおよびピッチPの分布を均一にすることが容易となる。
【0038】
もし、透光性基板10を研磨しフルダイシングを行いチップを完全に分離したのちにフロスト処理を行う場合、チップ厚さが小さいと処理工程中にチップ剥がれなどを生じ、チップの収量が低下する。また、量産性を高めるためにウェーハを大口径化する場合、製造工程におけるウェーハの割れ、欠け、などを低減するためにウェーハ厚さを薄くには限界がある。
【0039】
これに対して本製造方法によれば、チップを薄型化してもチップ収量の低下を抑制できるので、量産性が改善可能である。なお、樹脂55の屈折率が、GaP及び封止樹脂のそれらの中間とすると、レーザ加工法を用いて樹脂55の領域を分離しチップ側面に樹脂を残すと、光取り出し効率をより高めることが容易となる。
【0040】
図7は、SMD型パッケージにアセンブリした発光装置の模式断面図である。
第1のリード(電極)80の一方の端部側に導電性接着剤86などを用いて発光素子5を接着する。発光素子5の上部電極と第2のリード(電極)82の一方の端部とをボンディングワイヤ90を用いて接続する。熱可塑性樹脂などの絶縁部材からなる成型体84は、凹部84aを有する。凹部84aの底面84bには第1および第2のリード80、82の一部がそれぞれ露出し、発光素子は凹部84aの内部に設けられる。凹部84aにはシリコーンなどからなる封止樹脂92が充填される。また、第1のリード80の他方の端部と第2のリード82の他方の端部とは互いに反対方向に延在している。本実施形態によりチップ厚さTC1を、例えば150μm以下としてもチップ収量を高く保つことができる。このために、発光素子5の下方の成型体84の厚さ、ボンディングワイヤ90の高さ、ボンディングワイヤ90の上部の封止樹脂の高さ、を加えても、発光装置の高さTP1を0.55mm以下とすることが容易となる。例えば、TP1を0.4mmとすることもできる。
なお、絶縁部材をセラミックとし、電極を厚膜などからなる導電層としてもよい。
【0041】
図8は比較例にかかる発光装置の模式断面図を示し、図8(a)はパッケージを含む発光装置の模式断面図、図8(b)はチップ下部領域の部分模式断面図、である。第1のリード180の上に導電性接着剤186を用いて、厚さがTC11の発光素子105が接着されている。フルダイシング加工した発光素子105の側面に凹凸を形成する場合、透光性基板110を薄くするとフロスト処理以降の工程で発光素子105のチップが剥離や落下し収量が低下しやすい。このために、チップの厚さTC11を150〜300μmなどとしチップの収量を保つようにすることが多く、発光装置の高さTP11が0.6〜1.9mmなどとなる。
【0042】
また、発光素子105の側面の下部領域CCは、フロスト処理液の流動性が低下し凹凸の高さが下方に向かうほど小さくなる。このために、全反射が生じやすくなり光取り出し効率が低下する場合がある。下部領域CCの透光性基板110の下面からの高さは、例えば10μmなどとなる。
【0043】
本実施形態によれば、高輝度を有し薄型化された発光素子と、量産性に富むその製造方法が提供される。このようなチップを用いて、量産性に富み、高輝度化かつ薄型化された発光装置が提供される。この結果、照明装置、表示装置、および信号機の高輝度化および薄型化が容易となる。
【0044】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明を構成する半導体積層体、発光層、電極、透光性基板、凹凸、実装部材、などの材質、サイズ、形状、配置、などに関して当業者が各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
5発光素子、10 透光性基板、11 凹凸、20 第1の基板、24 再成長下地層、26 接着層、30 発光層、35 上部成長層、39 半導体積層体、54 溝部、56 支持板、高さH、ピッチP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を有する半導体積層体と、
上面側に前記半導体積層体が設けられ、側面に平均高さおよび平均ピッチが均一に分布した凹凸を有する透光性基板と、
を備えたことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記発光層は、In(GaAl1−y1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)、AlGa1−zAs(0≦z≦1)、およびGaIn1−sAs1−t(0≦s≦1、0≦t≦1)のいずれかからなり、
前記透光性基板は、GaP、SiC、GaN、サファイヤ、およびダイアモンドのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
発光層を有する半導体積層体と、上側面に前記半導体積層体が設けられ、側面に平均高さおよび平均ピッチが均一に分布した凹凸を有する透光性基板と、を有する発光素子と、
前記発光素子が接着された第1の電極と、
前記第1の電極の一方の端部と対向しかつ 前記第1の電極の他方の端部とは互いに反対方向に延在する他方の端部と、を有する第2の電極と、
凹部が設けられ、前記凹部の底面には前記第1および第2の電極の一部がそれぞれ露出し、かつ前記凹部の内部には前記発光素子が設けられた絶縁部材と、
前記凹部内に充填された透光性樹脂層と、
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
透光性基板の一方の面側に半導体積層体を形成する工程と、
前記透光性基板の他方の面側に貫通しない溝部を前記半導体積層体側から形成する工程と、
前記溝部の内側面に凹凸を形成する工程と、
前記溝部に至るまで前記透光性基板を前記他方の面側から研磨する工程と、
を備えたことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記凹凸を形成する工程のあとに、前記半導体積層側に支持板を貼り付ける工程をさらに備え、
前記支持板を取り付ける工程のあとに、前記研磨する工程を行うことを特徴とする請求項4記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記半導体積層体を形成する工程は、第1の基板の上方に再成長下地層および接着層をこの順序で形成したのち前記透光性基板と接着し、前記第1の基板を除去する工程と、前記再成長下地層の上に発光層を含む上部成長層を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−171327(P2011−171327A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30931(P2010−30931)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】