説明

発光素子の外囲器

【課題】発光素子の外囲器における放熱効率を改善する。
【解決手段】リードフレーム11に発光素子1aの下面の電極を接続し、別のリードフレーム12に発光素子1a’の下面の電極を接続する。この構成により、発光素子1aの発する熱はリードフレーム11を通じて放熱され、発光素子1a’が発する熱はリードフレーム12を通じて放熱されるようになり、放熱効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子が発した光を外部へ放射するようにした発光素子の外囲器に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の発光素子には、光を外部へ効率的に放射するために外囲器(パッケージ)が必要である。その一例として、大型SMD(Surface Mount Device)外囲器がある。
【0003】
このような外囲器としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。図6の斜視図に示すように、従来の外囲器は、パッケージ20に内壁が傾斜した凹部21を備え、凹部21の底面に金属製のカソード側のリードフレーム11とアノード側のリードフレーム12が別々に配置される。発光素子1の下端の電極がリードフレーム11に銀ペースト等の導電性材料で接続され、発光素子1の上端の電極2がワイヤ3を通じてリードフレーム12に接続される。パッケージ20は、凹部21の内壁で完全拡散反射に近い条件で発光素子1からの光が反射されるように、白色のポリフタルアミド樹脂で形成される。凹部21には、上面開口部から透光性のエポキシ樹脂30が液体の状態で注入され、その後、エポキシ樹脂30は加温され硬化される。このような構成により、この外囲器は、発光素子1が発した直接光あるいは反射光をエポキシ樹脂30を介して外部へ放射するようになっている。
【0004】
また、図7の斜視図に示すように、白色を含めた混色を実現するために、複数の発光素子を外囲器に搭載することもある。同図では、RBG三色の発光素子1a,1b,1cの下端の電極が、それぞれ別個のカソード側のリードフレーム11a,11b,11c上に銀ペーストもしくは共晶半田で接続されている。そして、発光素子1a,1b,1cのそれぞれの上端の電極2a,2b,2cは、それぞれに対応するワイヤ3a,3b,3cを通じて共通のアノード側のリードフレーム12に接続される。
【特許文献1】特開2003−163378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示した構成の場合、発光素子1で発生した熱は、熱伝導性の良い金属を通して逃げることになる。つまり、発光素子1の下端の電極の底面が接続されたリードフレーム11を通じて熱が逃げる。一方、発光素子1の上端の電極に接続されているワイヤ3は細いため、このワイヤ3に接続されているリードフレーム12は、熱の放熱経路としてはほとんど寄与せず、この外囲器は放熱効率が低いという問題がある。
【0006】
また、図7に示した構成では、3つの独立したリードフレーム11a,11b,11cは、発光素子1a,1b,1cの下端の電極の底面がそれぞれ接続されているので放熱に寄与するが、共通のリードフレーム12は、発光素子1a,1b,1cの上端の電極2a,2b,2cにそれぞれ細いワイヤ3a,3b,3cを通じて接続されているため、放熱にはほとんど寄与しない。よって、この外囲器も放熱効率は十分ではない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、発光素子の外囲器における放熱効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光素子の外囲器は、上部がp型、下部がn型で上下両面に電極を備えた第1発光素子と、上部がn型、下部がp型で上下両面に電極を備えた第2発光素子と、第1発光素子の下面の電極が接続される第1リードフレームと、第2発光素子の下面の電極が接続される第2リードフレームと、第1発光素子の上面の電極と第2発光素子の上面の電極とを接続するワイヤと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、第1リードフレームに第1発光素子の下面の電極を接続し、第2リードフレームに第2発光素子の下面の電極を接続したことで、第1リードフレームと第2リードフレームの双方が放熱に寄与する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光素子の外囲器によれば、放熱効率を大幅に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、第1実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。同図の外囲器は、受けた光を完全拡散反射に近い条件で反射する白色のPPA(ポリフタルアミド)樹脂製の枠構造のパッケージ20に凹部を備え、この凹部の底面に金属製のリードフレーム11(第1リードフレーム)およびリードフレーム12(第2リードフレーム)がそれぞれ配置される。この凹部の底面には、LED(Light Emitting Diode)等による2種類の同色の発光素子1a(第1発光素子),発光素子1a’(第2発光素子)が配置される。
【0012】
図2(a)に示すように、発光素子1aは、通常のn型GaAs基板100上に、AllnGap系の赤色四元活性層101を含むダブルへテロ構造を有し、p側の上面に円形の電極2aを、n側の下面に矩形の電極4aをそれぞれ備える。
【0013】
また、図2(b)に示すように、発光素子1a’は、発光素子1aをp型GaP基板200に融着させ、後からGaAs基板100をエッチングで除去して構成される。よって、発光素子1a’の最終構造としては、p型GaP基板200の上にAllnGap系赤色四元活性層101を含むダブルへテロ構造が形成され、n側の上面に円形の電極2a’を、p側の下面に矩形の電極4a’をそれぞれ備える。なお、融着の手法は、ウェハー同士を直接融着してもよいし、金属を介して融着してもよい。
【0014】
図1に示すように、発光素子1aは、その下面の電極4aがリードフレーム11に接続され、発光素子1a’は、その下面の電極4a’がリードフレーム12に接続される。これらの接続には、銀ペーストもしくはAu−Sn等の共晶半田を用いる。発光素子1aの上面の電極2aと発光素子1a’の上面の電極2a’は、ワイヤ3を通じて直列に接続される。このような構成の凹部に、透明のエポキシ樹脂30を液体の状態で注入し、その後、加温して硬化させる。
【0015】
図3は、本外囲器におけるリードフレーム11,12の構造を示す斜視図である。同図では、リードフレームの構造が分かり易くなるように、パッケージ20の上部とエポキシ樹脂30を除去した状態を示している。発光素子1aが発した熱はリードフレーム11を通じて放熱され、発光素子1a’が発した熱はリードフレーム12を通じて放熱される。
【0016】
したがって、本実施の形態によれば、リードフレーム11に発光素子1aの下面の電極4aを接続し、別のリードフレーム12に発光素子1a’の下面の電極4a’を接続したことで、リードフレーム11,12の双方が放熱に寄与するので、放熱効率を大幅に向上させることができる。これによって、より大きな電流を流すことが可能となり、明るい発光色を得ることができる。
【0017】
なお、本実施の形態において、図6に示した発光素子の外囲器と同じ明るさを得るためには、それぞれの発光素子1a,1a’に流す電流値は半分でよい。この半分の電流値に相当する熱がそれぞれリードフレーム11,12から放熱されるので、発光素子の温度上昇を有効に抑えることができる。
【0018】
[第2の実施の形態]
図4は、第2実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。本実施の形態では、発する光が同色の発光素子ではなく、異なる色の発光素子1a(第1発光素子),1b(第2発光素子)を用いる。本実施形態における発光素子1aは、n型SiC基板上に成長させたGaN/InGaN系の青色LEDであり、p側の上面に円形の電極2aを備え、n側の下面にも電極を備える。一方、発光素子1bは、p型GaP基板200の上にAllnGaP系の黄色四元活性層を含むダブルヘテロ構造を有する黄色LEDであり、n側の上面に円形の電極2bを備え、p側の下面にも電極を有する。
【0019】
発光素子1aの下面の電極はリードフレーム11に接続され、発光素子1bの下面の電極はリードフレーム12に接続される。これらの接続には、銀ペーストもしくはAu−Sn等の共晶半田が用いられる。発光素子1aの上面の電極2aと発光素子1bの上面の電極2bは、ワイヤ3を通じて直列に接続される。その他、図1と同一物には同一の符号を付すものとし、ここでは重複した説明は省略する。
【0020】
本実施の形態によれば、発する光が異なる色の発光素子1a,1bを用い、その一例として青色LEDと黄色LEDを用いたことで、青色と黄色は補色関係にあるので、発光素子1a,1bが発する光は擬似白色となり、明るい白色発光を実現することができる。
【0021】
また、第1実施形態と同様に、リードフレーム11に発光素子1aの下面の電極を接続し、別のリードフレーム12に発光素子1bの下面の電極を接続したことで、リードフレーム11,12の双方が放熱に寄与するので、放熱効率を大幅に向上させることができる。
【0022】
なお、本実施の形態においては、発光素子1a,1bが発する光をそれぞれ青色、黄色としたが、これに限られるものではなく、様々な色を適用することができる。
【0023】
[第3の実施の形態]
図5は、第3実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。本実施の形態では、第1発光素子と第2発光素子の組を複数設けた外囲器について説明する。同図の発光素子1a,1bは、図4に示した発光素子1a,1bと同一物であり、リードフレーム11,12にそれぞれ接続される。本実施形態では、この他にもう一組の発光素子1c,1dを用いる。
【0024】
発光素子1cは、n型SiC基板上に成長させたGaN/InGaN系の緑色LEDであり、p側の上面に円形の電極2cを備え、n側の下面にも電極も備える。発光素子1dは、p型GaP基板上にAllnGaP系の赤色四元活性層101を含むダブルへテロ構造を有する赤色LEDであり、n側の上面に円形の電極2dを備え、p側の下面にも電極を備える。
【0025】
発光素子1cの下面の電極はリードフレーム11に接続され、発光素子1dの下面の電極はリードフレーム12に接続される。これらの接続には、銀ペーストもしくはAu−Sn等の共晶半田が用いられる。発光素子1cの上面の電極2cと発光素子1dの上面の電極2dは、ワイヤ3bを通じて直列に接続される。その他、図4と同一物には同一の符号を付すものとし、ここでは重複した説明は省略する。
【0026】
このような構成とすることで、発光素子1a,1cが発した熱はリードフレーム11を通じて放熱され、発光素子1b,1dが発した熱はリードフレーム12を通じて放熱される。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、4つの発光素子1a〜1dを集積化したパッケージでも、リードフレーム11に発光素子1a,1cのそれぞれの下面の電極を接続し、別のリードフレーム12に発光素子1b、1dの下面の電極を接続したことで、発光素子1a,1cが発した熱はリードフレーム11から放熱され、発光素子1b、1dが発した熱はリードフレーム12から放熱されるので、リードフレーム11,12の双方が放熱に寄与し、放熱効率を大幅に向上させることができる。これによって、より大きな電流を流すことが可能となり、明るい発光色を得ることができる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、発光素子の色の種類を多くできるので、より演色性の良い白色発光を実現することができる。
【0029】
なお、直列に接続した発光素子1a,1bの組と、発光素子1c、1dの組については、それぞれの直列電圧と直列抵抗はほぼ同じになるように、発光波長および素子の構造を選択することが望ましい。これにより、直列に接続された発光素子に流れる電流値を、双方の組でほぼ等しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。
【図2】同図(a)は第1発光素子の構成、同図(b)は第2発光素子の構成をそれぞれ示す断面図である。
【図3】リードフレームの構成を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。
【図5】第3実施形態における発光素子の外囲器の構成を示す斜視図である。
【図6】単数の発光素子を搭載した従来の外囲器の構成を示す斜視図である。
【図7】複数の発光素子を搭載した従来の外囲器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1,1a,1a’,1b,1c,1d…発光素子
2,2a,2b,2c…電極
3,3a,3b,3c…ワイヤ
4a,4a’…電極
11,11a,11b,11c…リードフレーム
12…リードフレーム
20…パッケージ
21…凹部
30…エポキシ樹脂
100…n型GaAs基板
101…赤色四元活性層
200…p型GaP基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部がp型、下部がn型で上下両面に電極を備えた第1発光素子と、
上部がn型、下部がp型で上下両面に電極を備えた第2発光素子と、
第1発光素子の下面の電極が接続される第1リードフレームと、
第2発光素子の下面の電極が接続される第2リードフレームと、
第1発光素子の上面の電極と第2発光素子の上面の電極とを接続するワイヤと、
を有することを特徴とする発光素子の外囲器。
【請求項2】
第1発光素子と第2発光素子が発する光は同じ色であることを特徴とする請求項1記載の発光素子の外囲器。
【請求項3】
第1発光素子と第2発光素子が発する光は異なる色であることを特徴とする請求項1記載の発光素子の外囲器。
【請求項4】
第1発光素子と第2発光素子の組を複数備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子の外囲器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−165097(P2006−165097A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351150(P2004−351150)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】