説明

発光装置、製造装置、成膜方法、およびクリーニング方法

本発明は、成膜室に接続された減圧手段により減圧して、成膜室で蒸発源から有機化合物材料を蒸発させて成膜する際、有機化合物材料の粒子よりも小さい粒子、即ち原子半径の小さい材料からなるガス(シラン系ガス等)を微量に流し、有機化合物膜中に原子半径の小さい材料を含ませる新規な成膜方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は蒸着により成膜可能な材料(以下、蒸着材料という)の成膜に用いる成膜装置、製造装置、クリーニング方法、および成膜方法に関する。特に、本発明は蒸着材料として有機化合物を含む材料を用いる場合に有効な技術である。
【背景技術】
近年、自発光型の素子としてEL素子を有した発光装置の研究が活発化しており、特に、EL材料として有機材料を用いた発光装置が注目されている。この発光装置は有機ELディスプレイ又は有機発光ダイオードとも呼ばれている。
発光装置は、液晶表示装置と異なり自発光型であるため視野角の問題がないという特徴がある。即ち、屋外に用いられるディスプレイとしては、液晶ディスプレイよりも適しており、様々な形での使用が提案されている。
EL素子は一対の電極間にEL層が挟まれた構造となっているが、EL層は通常、積層構造となっている。代表的には、「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という積層構造が挙げられる。この構造は非常に発光効率が高く、現在、研究開発が進められている発光装置は殆どこの構造を採用している。
EL素子の実用化における最大の問題は、素子の寿命が不十分な点である。また、素子の劣化は、長時間発光させると共に非発光領域(ダークスポット)が広がるという形で現れるが、その原因としてEL層の劣化が問題となっている。
EL層を形成するEL材料は、酸素や水等の不純物により劣化を受ける。また、その他の不純物がEL材料に含まれることでEL層の劣化に影響を及ぼすことも考えられる。
また、EL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー系)材料に大別されるが、このうち低分子系材料は主に蒸着により成膜される。真空下で蒸発源から蒸発材料を蒸発させて成膜する真空蒸着法は、物理的な成膜法の代表的な例として知られている。また、化学的な成膜法の代表的な例として、原料ガスを基板上に供給し、気相中または基板表面での化学反応により成膜するCVD(化学蒸着)法が知られている。
従来の蒸着法により成膜を行う際には、蒸発材料をそのまま用いているが、蒸着時の蒸発材料には、不純物が混入していることが考えられる。すなわち、EL素子の劣化原因の一つである酸素や水及びその他の不純物が混入している可能性がある。
また、蒸発材料を予め精製することにより純度を高めることはできるが、蒸着するまでの間に不純物が混入してしまうという可能性もある。
EL材料は極めて劣化しやすく、酸素もしくは水の存在により容易に酸化して劣化する。そのため、成膜後にフォトリソグラフィ工程を行うことができず、パターン化するためには開口部を有したマスク(以下、蒸着マスクという)で成膜と同時に分離させる必要がある。従って、昇華した有機EL材料の殆どが成膜室内の蒸着マスクもしくは防着シールド(蒸着材料が成膜室の内壁に付着することを防ぐための保護板)に付着していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、スループットが高く、且つ、高密度なEL層を形成することができる成膜装置および該成膜装置を一室に備えた製造装置を提供することを課題とする。さらに、本発明の成膜装置を用いた成膜方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、成膜室に接続された減圧手段(ターボ分子ポンプやドライポンプやクライオポンプなどの真空ポンプ)で5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは1×10−3Torr(0.133Pa)以下として成膜室で蒸発源から有機化合物材料を蒸発させて成膜する際、有機化合物材料の粒子よりも小さい粒子、即ち原子半径の小さい材料からなるガスを微量に流し、有機化合物膜中に原子半径の小さい材料を含ませる新規な成膜方法を提供する。本発明は、意図的に無機材料を有機化合物膜中に含ませて信頼性を向上させることを特徴とする。
即ち、本発明は、成膜時に意図的に材料ガスを導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とし、劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングする。
上記原子半径の小さい材料ガスとして、具体的には、シラン系ガス(モノシラン、ジシラン、トリシラン等)、SiF、GeH、GeF、SnH、または炭化水素系ガス(CH、C、C、C等)から選ばれた一種または複数種を用いればよい。なお、これらのガスを水素やアルゴンなどで希釈した混合ガスも含む。装置内部に導入されるこれらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に蒸着装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる残留気体(酸素や水分、その他の不純物など)を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
例えば、モノシランガスを蒸着時に導入することにより、膜中にSiを含ませ、発光素子を完成させた後、ピンホールやショートの不良部分があった場合に、その不良部分が発熱することによってSiが反応してSiOx、SiCxなどの絶縁性の絶縁物を形成し、ピンホールやショートの部分におけるリークが低減され、点欠(ダークスポットなど)が進行しなくなるというセルフヒーリングの効果も得られる。
また、基板を加熱することによって導入した材料ガスの成分が基板上に効率よく堆積するようにしてもよい。
また、プラズマ発生手段によりラジカル化させてもよい。例えば、モノシランの場合、プラズマ発生手段により、SiHx、SiHxOy、SiOyなどの酸化シリコン前駆体が生成され、これらが蒸発源からの有機化合物材料とともに基板上に堆積される。モノシランは酸素や水分と反応しやすく、成膜室内の酸素濃度や水分量を低減することもできる。
本明細書で開示する本発明の構成は、絶縁表面を有する基板上に陽極と、該陽極に接する有機化合物を含む層と、該有機化合物を含む層に接する陰極とを有する発光素子を備えた発光装置であって、前記有機化合物を含む層には、珪素がSIMS測定で1×1018〜5×1020個/cm−3、好ましくは3×1018〜3×1020個/cm−3含有することを特徴とする発光装置である。
シラン系ガスのように材料ガスが酸素や水分と反応する場合には、成膜室内の酸素濃度や水分量を低減することができ、信頼性の高い有機化合物膜を得ることができる。なお、プラズマ発生方法としては、ECR、ICP、ヘリコン、マグネトロン、2周波、トライオードまたはLEP等を適宜用いることができる。
また、本明細書では、新規な成膜装置を提供する。
本発明の成膜装置に関する構成は、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う成膜装置であって、前記基板が配置される成膜室には、有機化合物材料を収納する蒸着源と、該蒸着源を加熱する手段とを有し、前記成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、且つ、材料ガスを導入しうる手段とを有していることを特徴とする成膜装置である。
また、本発明の成膜装置を用い、マルチチャンバー方式の製造装置とすることができ、本発明の製造装置は、ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された成膜室とを有する製造装置であって、前記搬送室は、マスク(蒸着マスク)と基板の位置あわせを行う機能を有し、前記基板が配置される成膜室には、有機化合物材料を収納する蒸着源と、該蒸着源を加熱する手段とを有し、前記成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、且つ、材料ガスを導入しうる手段とを有していることを特徴とする製造装置である。
また、本発明の成膜装置を用い、ロード室と、搬送室と、成膜室とが、直列方向に連結されたインライン方式の製造装置とすることもでき、その構成は、ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に直列方向連結された成膜室とを有する製造装置であって、前記搬送室は、マスクと基板の位置あわせを行う機能を有し、前記基板が配置される成膜室には、有機化合物材料を収納する蒸着源と、該蒸着源を加熱する手段とを有し、前記成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、且つ、材料ガスを導入しうる手段とを有していることを特徴とする製造装置である。
また、上記成膜装置(および上記成膜装置を備えた製造装置)の各構成において、前記蒸着源は、水平を保ったまま、成膜室内をX方向またはY方向に移動可能であることを特徴としている。また、蒸着の際、基板と蒸着源ホルダとの間隔距離dを代表的には30cm以下、好ましくは20cm以下、さらに好ましくは5cm〜15cmに狭め、蒸着材料の利用効率及びスループットを格段に向上させることができる。蒸着源ホルダは、容器(代表的にはルツボ)と、容器の外側に均熱部材を介して配設されたヒータと、このヒータの外側に設けられた断熱層と、これらを収納した外筒と、外筒の外側に旋回された冷却パイプと、ルツボの開口部を含む外筒の開口部を開閉する蒸着シャッターと、膜厚センサーから構成されている。
また、蒸着マスクは熱によって変形しにくく(低熱膨張率であり)、蒸着時の温度に耐えうる金属材料(例えば、タングステン、タンタル、クロム、ニッケルもしくはモリブデンといった高融点金属もしくはこれらの元素を含む合金、ステンレス、インコネル、ハステロイといった材料を用いたメタルマスクとすることが望ましい。例えば、ガラス基板(0.4×10−6〜8.5×10−6)と熱膨張率が近いニッケル42%、鉄58%の低熱膨張合金(42アロイ)、ニッケル36%の低熱膨張合金(36インバー)などが挙げられる。
また、上記成膜装置(および上記成膜装置を備えた製造装置)の各構成において、成膜室には、前記基板を加熱する手段を有してもよい。また、基板を加熱する手段としては、ヒーターや電熱線などが設けられたステージ(基板を固定する機能を有していてもよい)、またはヒーターや電熱線などが設けられたメタルマスクを基板に密接または近接させて加熱することができ、基板の温度は、50〜200℃、好ましくは65〜150℃とすることができる。基板を加熱することによって材料ガスの成分が有機化合物膜中に取り込まれやすくすることができる。
また、上記成膜装置(および上記成膜装置を備えた製造装置)の各構成において、前記材料ガスを導入しうる手段は、プラズマ発生手段によりラジカル化された材料ガスを導入する手段であることを特徴としている。また、材料ガスを導入する系とは別に、成膜室内を常圧にするための不活性ガス(窒素、アルゴンなど)を導入する系を設けてもよい。また、材料ガスを導入する系とは別に、成膜室内をクリーニングするためのクリーニングガス(H、アルゴン、NFなど)を導入する系を設けてもよい。
また、本明細書で開示するクリーニング方法に関する構成は、蒸着源を備えた成膜室内に付着した有機化合物を除去するクリーニング方法であって、成膜室内にプラズマを発生させる、或いは成膜室内にプラズマによってイオン化されたガスを導入して内壁、または該内壁に成膜されることを防止する付着防止手段、またはマスクをクリーニングし、真空排気手段により排気することを特徴とするクリーニング方法である。
上記構成において、前記プラズマは、Ar、H、F、NF、またはOから選ばれた一種または複数種のガスを励起して発生させることを特徴としている。
また、蒸着時に成膜室内でアンテナ方式による放電を行ってプラズマを形成し、イオン化した材料ガスの成分を蒸発している有機化合物に化学付着させてもよい。
また、上記成膜装置の各構成において、成膜室に連結して設けられる真空排気手段は、大気圧から1Pa程度をオイルフリーのドライポンプで真空排気し、それ以上の圧力は磁気浮上型のターボ分子ポンプまたは複合分子ポンプにより真空排気する。成膜室には水分を除去するためにクライオポンプを併設しても良い。こうして排気手段から主に油などの有機物による汚染を防止している。内壁面は、電解研磨により鏡面処理し、表面積を減らしてガス放出を防いでいる。
また、上記各成膜装置において、一つの成膜室に複数の蒸着源を配置して、同一の成膜室において、複数の機能領域を形成し、且つ、混合領域を有する発光素子を形成することができる。従って、発光素子の陽極と陰極の間に複数の機能領域からなる有機化合物膜が形成される場合、従来の明確な界面が存在する積層構造ではなく、第一の機能領域と第二の機能領域との間に、第一の機能領域を構成する材料および第二の機能領域を構成する材料の両方からなる混合領域を有する構造を形成することができる。本発明により、成膜前、または成膜中に材料ガスを導入して膜中に材料ガスの成分を含有させることによって、混合領域における分子間をよりフィットさせることができる。混合領域を形成することにより機能領域間におけるエネルギー障壁は、緩和される。したがって、駆動電圧の低減、および輝度低下の防止が可能となる。
なお、第一の有機化合物および第二の有機化合物は、陽極から正孔を受け取る正孔注入性、電子移動度よりも正孔移動度の方が大きい正孔輸送性、正孔移動度よりも電子移動度の方が大きい電子輸送性、陰極から電子を受け取る電子注入性、正孔または電子の移動を阻止しうるブロッキング性、発光を呈する発光性、の一群から選ばれる性質を有し、かつ、それぞれ異なる前記性質を有する。
なお、正孔注入性の高い有機化合物としては、フタロシアニン系の化合物が好ましく、正孔輸送性の高い有機化合物としては、芳香族ジアミン化合物が好ましく、また、電子輸送性の高い有機化合物としては、キノリン骨格を含む金属錯体、ベンゾキノリン骨格を含む金属錯体、またはオキサジアゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体、またはフェナントロリン誘導体が好ましい。さらに、発光を呈する有機化合物としては、安定に発光するキノリン骨格を含む金属錯体、またはベンゾオキサゾール骨格を含む金属錯体、またはベンゾチアゾール骨格を含む金属錯体が好ましい。
さらに好ましくは、発光性領域を、ホスト材料と、ホスト材料よりも励起エネルギーが低い発光材料(ドーパント)とで構成し、ドーパントの励起エネルギーが、正孔輸送性領域の励起エネルギーおよび電子輸送層の励起エネルギーよりも低くなるように設計することである。このことにより、ドーパントの分子励起子の拡散を防ぎ、効果的にドーパントを発光させることができる。また、ドーパントがキャリアトラップ型の材料であれば、キャリアの再結合効率も高めることができる。
また、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料をドーパントとして混合領域に添加した場合も本発明に含めることとする。また、混合領域の形成においては、混合領域に濃度勾配をもたせてもよい。
なお、本木発明における成膜装置は、EL材料で代表される有機化合物のみならず、蒸着に用いる金属材料等のその他の材料の成膜にも用いることができる。
また、本明細書では、新規な成膜方法も提供する。
本発明の成膜方法に関する構成は、成膜室内に配置された基板上に有機化合物を蒸着させる成膜方法であって、前記成膜室内を1×10−3Torrよりも高真空とし、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う際、同時に材料ガスを前記成膜室に導入することを特徴とする成膜方法である。
また、本発明の成膜方法に関する他の構成は、成膜室内に配置された基板上に有機化合物を蒸着させる成膜方法であって、前記成膜室内を1×10Torrよりも高真空とし、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う際、同時にラジカル化された材料ガスを前記成膜室に導入することを特徴とする成膜方法である。
また、上記各構成において、前記材料ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、SiF、GeH、GeF、SnH、CH、C、C、またはCから選ばれた一種または複数種であることを特徴としている。
また、モノシランに加えてフォスフィンガスを導入してもよい。また、モノシランに代えて、AsH、B、BF、HTe、Cd(CH、Zn(CH、(CHIn、HSe、BeH、トリメチルガリウム、またはトリエチルガリウムで示される各種ガスを用いることができる。
また、陰極と陽極との間に配置する有機化合物を含む層として、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3層を積層する例が代表的であるが、特に限定されず、陽極上に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、または正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層する構造や、二層構造や単層構造でも良い。発光層に対して蛍光性色素等をドーピングしても良い。また、発光層としては正孔輸送性を有する発光層や電子輸送性を有する発光層などもある。また、これらの層は、全て低分子系の材料を用いて形成しても良いし、そのうちの1層またはいくつかの層は高分子系の材料を用いて形成しても良い。なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設けられる全ての層を総称して有機化合物を含む層(EL層)という。したがって、上記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。また、有機化合物を含む層(EL層)は、シリコンなどの無機材料をも含んでいてもよい。
なお、発光素子(EL素子)は、電界を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極とを有する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本発明により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用可能である。
なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設けられる全ての層を総称してEL層という。したがって、上述した正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。
また、本発明の発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発光装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
また、本明細書中では、陰極、EL層及び陽極で形成される発光素子をEL素子といい、これには、互いに直交するように設けられた2種類のストライプ状電極の間にEL層を形成する方式(単純マトリクス方式)、又はTFTに接続されマトリクス状に配列された画素電極と対向電極との間にEL層を形成する方式(アクティブマトリクス方式)の2種類がある。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施の形態1を示す本発明の成膜装置の断面図である。
図2は、実施の形態2を示す本発明の成膜装置の断面図である。
図3は、実施の形態3を示す本発明の成膜装置の断面図である。
図4は、実施の形態4を示す本発明の成膜装置の断面図である。
図5は、実施例1を示す本発明の成膜装置により作製される素子構造を説明する図である。
図6は、実施例2を示すマルチチャンバー方式の製造装置を示す図である。
図7は、実施例2を示す設置室におけるルツボ搬送を示す図である。
図8は、実施例2を示す設置室における蒸着源ホルダへのルツボ搬送を示す図である。
図9は、実施例3を示す図である。
図10は、実施例3を示す図である。
図11は、実施例4を示す図である。
図12は、実施例5を示す図である。
図13は、実施例6を示す図である。
図14は、実施例7を示すインライン方式の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
(実施の形態1)
本発明における成膜装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の成膜装置における断面図の一例である。
蒸着法による成膜を行う際、フェイスダウン方式(デポアップ方式ともいう)とすることが好ましく、基板10は、被成膜面を下向きにしてセットされている。フェイスダウン方式とは、基板の被成膜面が下を向いた状態で成膜する方式をいい、この方式によればゴミの付着などを抑えることができる。
図1に示すように、基板10に接して加熱手段、ここでは基板ホルダ12にヒータが備えられている。加熱手段によって、基板の温度は、50〜200℃、好ましくは65〜150℃とすることができる。また、基板10は、基板ホルダに内蔵された永久磁石によってメタルマスク(図示しない)で挟むことによって固定される。また、成膜室内に設置された定盤18には、それぞれ異なる温度に加熱することも可能な蒸着セル(蒸着ホルダとも呼ばれる)13が設けられている。なお、基板に対向するように蒸着源が設けられている。ここでは永久磁石を使って基板をメタルマスクで挟むことにより固定した例を示したが、ホルダで固定してもよい。
ここでは、蒸着源とは、蒸着セル13と、有機化合物を収納する容器(ルツボ、蒸着ボートなど)と、シャッター14と、有機化合物を加熱する加熱手段と、回りを囲む断熱材とで構成されている。加熱手段としては、抵抗加熱型を基本とするが、クヌーセンセルを用いてもよい。
また、成膜室には、蒸着時に材料ガスを成膜室に数sccm導入するガス導入系と、成膜室内を常圧にするガス導入系とが連結されている。材料ガスとしては、モノシラン、ジシラン、トリシラン、SiF、GeH、GeF、SnH、CH、C、C、またはCから選ばれた一種または複数種を用いる。なお、ガス導入口から最短距離でガス排出口に材料ガスが流れないようにすることが望ましい。
チャンバー壁11に囲まれた空間を減圧手段(ターボ分子ポンプ16やドライポンプやクライオポンプ17などの真空ポンプ)で5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは1×10−3Torr(0.133Pa)以下とし、蒸着セルに設けられた加熱手段(電圧が印加された際に生じる抵抗(抵抗加熱))により内部の有機化合物が昇華温度まで加熱されると、気化して基板10の表面へ蒸着される。この蒸着の際に材料ガスを数sccm導入することによって膜中に材料ガスの成分を含有させる。なお、図1では、蒸発させた第1の材料15aと、蒸発させた第2の材料15bとが混ざるように一方のセルを傾けて共蒸着を行っており、さらに導入した材料ガスも混合されて膜が形成される例を示している。共蒸着とは、異なる蒸着源を加熱して同時に気化させ、成膜段階で異なる物質を混合する蒸着法を指している。また、蒸着の際、膜厚を均一にするため、基板ホルダ12は回転させる。
なお、基板10の表面とは本明細書中では、基板とその上に形成された薄膜も含むこととし、ここでは、基板上に陽極または陰極が形成されているものとする。
なお、シャッター14は、気化した有機化合物の蒸着を制御する。つまり、シャッターが開いているとき、加熱により気化した有機化合物を蒸着することができる。さらに基板10とシャッター14との間に別のシャッター(例えば、蒸着源からの昇華が安定するまでの間、蒸着源を覆っておくシャッター)を一つまたは複数設けてもよい。
なお、有機化合物は、蒸着前から加熱して気化させておき、蒸着時にシャッター14を開ければすぐに蒸着ができるようにしておくと、成膜時間を短縮できるので望ましい。
また、本発明における成膜装置においては、一つの成膜室において複数の機能領域を有する有機化合物膜を形成することが可能となっており、蒸着源もそれに応じて複数設けられている。
また、蒸着時に有機化合物が成膜室の内壁に付着することを防止するための防着板19が設けられている。この防着板19を設けることにより、基板上に蒸着されなかった有機化合物を付着させることができる。
また、成膜室には、成膜室内を真空にする複数の真空排気処理室と連結されている。真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ16とクライオポンプ17とが備えられている。これにより成膜室の到達真空度を10−5〜10−6Torrにすることが可能である。なお、クライオポンプ17で真空排気を行った後、クライオポンプ17を停止し、ターボ分子ポンプ16で真空排気を行いつつ、材料ガスを数sccm流しながら蒸着を行うこととする。蒸着が終了したら、ターボ分子ポンプで排気しながら不活性ガスを導入して圧力をある程度上げ、残留している材料ガスを成膜室内から排出し、再び高真空排気を行う。最後に成膜室内からロード室へ真空を保ちつつ蒸着された基板を搬出する。
また、チャンバー壁11に用いる材料としては、その表面積を小さくすることで酸素や水等の不純物の吸着性を小さくすることができるので、電解研磨を施して鏡面化させたアルミニウムやステンレス(SUS)等を内部壁面に用いる。これにより、成膜室内部の真空度を10−5〜10−6Torrに維持することができる。また、気孔がきわめて少なくなるように処理されたセラミックス等の材料を内部部材に用いる。なお、これらは、中心線平均粗さが3nm以下となる表面平滑性を有するものが好ましい。
図1に示す成膜装置を用いれば、成膜時に意図的に材料ガスを導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とすることができる。材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングし、発光素子の信頼性を向上させることができる。
例えば、有機材料を蒸発させて蒸着を行っている成膜室にモノシランガスを数sccm導入すると、蒸着源から蒸発して基板に向かう有機材料と一緒に成膜室内に浮遊しているSiHが有機膜中に取り込まれる。即ち、比較的に粒子半径の大きい有機材料分子の隙間に原子半径の小さいSiHをそのまま、或いはSiHで埋めることになり、有機膜中に含ませることができる。蒸着中、蒸着源は100℃程度には加熱するが、モノシランの分解温度(大気圧での分解温度)は約550℃であるので分解はしない。蒸発させる有機材料によってはSiH、或いはSiHと反応して化合物を形成する場合もある。また、成膜室中に僅かに残っている酸素(または水分)を捕獲してSiOを生成するため、成膜室中および膜中において有機材料を劣化させる要因となる酸素(または水分)を減らすことができ、結果的に発光素子の信頼性を向上させることができる。また、生成されたSiOxはそのまま膜中に含ませてもよい。
膜中において有機材料分子の隙間があると、その隙間に酸素が入りやすく劣化が生じると考えられる。従って、この隙間を埋めればよいため、SiF、GeH、GeF、SnH、または炭化水素系ガス(CH、C、C、C等)を用いても発光素子の信頼性を向上させることができる。
なお、上記有機材料としては、α−NPD(4,4’−ビス−[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル)、BCP(バソキュプロイン)、MTDATA(4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン)、Alq(トリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体)などを挙げることができる。
以下に図1の成膜装置を用い、陽極と、該陽極に接する有機化合物層と、該有機化合物層に接する陰極とを有する発光素子の作製手順の一例を示す。
まず、陽極が形成された基板を搬入室(図示しない)に搬入する。陽極を形成する材料は、透明導電性材料が用いられ、インジウム・スズ化合物や酸化亜鉛などを用いることができる。次いで搬入室(図示しない)に連結された成膜前処理室(図示しない)に搬送する。この成膜前処理室では、陽極表面のクリーニングや酸化処理や加熱処理などを行えばよい。陽極表面のクリーニングとしては、真空中での紫外線照射を行い、陽極表面をクリーニングする。また、酸化処理としては、100〜120℃で加熱しつつ、酸素を含む雰囲気中で紫外線を照射すればよく、陽極がITOのような酸化物である場合に有効である。また、加熱処理としては、真空中で基板が耐えうる50℃以上の加熱温度、好ましくは65〜150℃の加熱を行えばよく、基板に付着した酸素や水分などの不純物や、基板上に形成した膜中の酸素や水分などの不純物を除去する。特に、EL材料は、酸素や水などの不純物により劣化を受けやすいため、蒸着前に真空中で加熱することは有効である。
次いで、上記前処理が終わった基板を大気にふれさせることなく、成膜室に搬入する。成膜室には、基板10の被成膜面を下向きにしてセットする。なお、基板を搬入する前に成膜室内は真空排気しておくことが好ましい。
成膜室に連結して設けられる真空排気手段は、大気圧から1Pa程度をオイルフリーのドライポンプで真空排気し、それ以上の圧力は磁気浮上型のターボ分子ポンプ16により真空排気する。さらに成膜室には水分を除去するためにクライオポンプ17を併設している。こうして、1×10−6Torrまでの真空度を実現する。
成膜室内を真空排気する際、同時に成膜室内壁やメタルマスクや防着シールドなどに付着した吸着水や吸着酸素を除去することも可能である。さらに、基板を搬入する前に成膜室を加熱しておくことが好ましい。前処理で加熱した基板を徐冷させて、成膜室に搬入した後、再び加熱することは長時間かかり、スループットの低下を招くことになる。望ましくは、前処理で行った加熱処理で加熱した基板を冷却することなく、そのまま加熱された成膜室に搬入及びセットする。なお、図1に示す装置は、基板ホルダ12に基板を加熱する加熱手段が設けられているため、前処理である真空中での加熱処理を成膜室で行うことも可能である。
ここでは、蒸着を行う前に成膜室で真空中での加熱処理(アニール)を行う。このアニール(脱気)によって基板に付着した酸素や水分などの不純物や、基板上に形成した膜中の酸素や水分などの不純物を除去する。こうして除去された不純物を成膜室から除去するため、真空排気を行うことが好ましく、さらに真空度を高めてもよい。
次いで、材料ガスを数sccm導入しながら、真空度が5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4〜10−6Torrまで真空排気された成膜室で蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により第一の有機化合物は気化されており、蒸着時にシャッター14が開くことにより基板10の方向へ飛散する。気化された有機化合物は、上方に飛散し、材料ガスと混ざり、メタルマスクに設けられた開口部(図示せず)を通って基板10に蒸着される。なお、蒸着の際、基板を加熱する手段により基板の温度は、50〜200℃、好ましくは65〜150℃とする。
図1に示す装置では、基板を加熱する加熱手段が設けられ、成膜中において真空中での加熱処理が行われる。蒸着時の蒸発材料には、酸素や水分などの不純物が混入している恐れがあるため、蒸着中に真空中で加熱処理を行って膜中に含まれるガスを放出させることは有効である。このように、真空中で基板を加熱しながら蒸着を行い、所望の膜厚まで成膜を行うことによって、高密度な有機化合物層を形成することができる。なお、ここでいう有機化合物とは、陽極から正孔を受け取る正孔注入性、電子移動度よりも正孔移動度の方が大きい正孔輸送性、正孔移動度よりも電子移動度の方が大きい電子輸送性、陰極から電子を受け取る電子注入性、正孔または電子の移動を阻止しうるブロッキング性、発光を呈する発光性、といった性質を有する有機化合物である。
こうして、有機化合物の蒸着が終了し、有機化合物からなる膜が、陽極上に形成される。
さらに、得られた有機化合物層中の水分や酸素の不純物を低減するために、1×10−4Torr以下の圧力で加熱処理を行い、蒸着時に混入した水分などを放出させる加熱処理を行っても良い。蒸着時の蒸発材料には、酸素や水分などの不純物が混入している恐れがあるため、蒸着後に真空中で加熱処理を行って膜中に含まれるガスを放出させることは有効である。蒸着後のアニールを行う場合、大気にふれることなく、成膜室とは別の処理室に基板を搬送して、真空中でアニールを行うことが好ましい。
図1に示す装置は、基板を加熱する加熱手段が設けられているため、成膜後に真空中での加熱処理を成膜室で行うことも可能である。蒸着の際の真空度よりもさらに高真空として、蒸着後、100〜200℃のアニールを行うことが好ましい。この成膜後のアニール(脱気)によって基板上に形成した有機化合物層中の酸素や水分などの不純物をさらに除去し、高密度な有機化合物層を形成する。
有機化合物層中には、材料ガスまたは材料ガスの主成分、例えば蒸着の際にモノシランガスを導入した場合、珪素がSIMS測定で0.01atoms%〜5atoms%、好ましくは0.1atoms%〜2atoms%程度含まれるようにする。図1に示す成膜装置を用いて成膜された有機化合物を含む膜は、材料ガスまたは材料ガスの主成分を含み、酸素や水分を取り込みにくい膜となるため、この有機化合物を含む膜を用いた発光素子は信頼性が向上する。
ここまで示した工程は、有機化合物の単層を形成する場合である。
以降、上記単層の形成工程を繰り返すことによって、所望の有機化合物層を積層し、最後に陰極を積層形成する。なお、異なる蒸着材料(有機化合物や陰極の材料)を積層する場合、別々の成膜室で行ってもよいし、全て同一の成膜室で積層してもよい。陰極の材料は、仕事関数の小さいマグネシウム(Mg)、リチウム(Li)若しくはカルシウム(Ca)を含む材料を用いる。好ましくはMgAg(MgとAgをMg:Ag=10:1で混合した材料)でなる電極を用いれば良い。他にも、イッテルビウム(Yb)、MgAgAl電極、LiAl電極、また、LiFAl電極が挙げられる。こうして、陽極と、該陽極に接する有機化合物層と、該有機化合物層に接する陰極とを有する発光素子を作製できる。また、成膜前のアニールを成膜室で行うことが可能であり、その場合、スループットが向上する。また、成膜後のアニールを成膜室で行うことが可能であり、その場合、スループットが向上する。
(実施の形態2)
ここでは、実施の形態1と異なる成膜装置を図2に示す。
図2には、膜が均一に成膜されるように、蒸着源が移動(または回転)する成膜装置の例を示す。
図2中、20は基板、21はチャンバー壁、22は基板ホルダ、23はセル、25aは蒸発させた第1の材料、25bは蒸発させた第2の材料、26はターボ分子ポンプ、27はクライオポンプ、28はセルを移動させる移動機構である。基板を回転させる必要がないため、大面積基板に対応可能な蒸着装置を提供することができる。また、蒸着セル23が基板に対してX軸方向及びY軸方向に移動することにより、蒸着膜を均一に成膜することが可能となる。
本発明の蒸着装置においては、蒸着の際、基板20と蒸着セル23との間隔距離dを代表的には30cm以下、好ましくは20cm以下、さらに好ましくは5cm〜15cmに狭め、蒸着材料の利用効率及びスループットを格段に向上させている。
また、蒸着セル23に備えられる有機化合物は必ずしも一つまたは一種である必要はなく、複数であってもよい。例えば、蒸着源ホルダに発光性の有機化合物として備えられている一種類の材料の他に、ドーパントとなりうる別の有機化合物(ドーパント材料)を一緒に備えておいても良い。蒸着させる有機化合物層として、ホスト材料と、ホスト材料よりも励起エネルギーが低い発光材料(ドーパント材料)とで構成し、ドーパントの励起エネルギーが、正孔輸送性領域の励起エネルギーおよび電子輸送層の励起エネルギーよりも低くなるように設計することが好ましい。このことにより、ドーパントの分子励起子の拡散を防ぎ、効果的にドーパントを発光させることができる。また、ドーパントがキャリアトラップ型の材料であれば、キャリアの再結合効率も高めることができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料をドーパントとして混合領域に添加した場合も本発明に含めることとする。また、混合領域の形成においては、混合領域に濃度勾配をもたせてもよい。
さらに、一つの蒸着源ホルダに備えられる有機化合物を複数とする場合、互いの有機化合物が混ざりあうように蒸発する方向を被蒸着物の位置で交差するように斜めにすることが望ましい。また、共蒸着を行うため、蒸着セルに、4種の蒸着材料(例えば、蒸着材料aとしてホスト材料2種類、蒸着材料bとしてドーパント材料2種類)を備えてもよい。
また、蒸着させるEL材料や金属材料に対して、酸素や水等の不純物が混入する恐れのある主な過程を挙げた場合、蒸着前にEL材料を成膜室にセットする過程、蒸着過程などが考えられる。
そこで、成膜室に連結した前処理室にグローブを備え、蒸着源ごと成膜室から前処理室に移動させ、前処理室で蒸着源に蒸着材料をセットすることが好ましい。即ち、蒸着源が前処理室まで移動する製造装置とする。こうすることによって、成膜室の洗浄度を保ったまま、蒸着源をセットすることができる。
図2に示す成膜装置においても、成膜時に意図的に材料ガスを導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とすることができる。材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングし、発光素子の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることが可能である。
(実施の形態3)
ここでは、実施の形態1と異なる成膜装置を図3に示す。なお、図1と同じ箇所には同じ符号を用いる。
図3に示す成膜装置は、予めプラズマ発生手段によってラジカル化させた材料ガスを成膜室に導入しながら蒸着を行う例である。
図3に示すように、マイクロ波ソース30aが導波管30bに接続されている。この導波管30bは、放電管中の材料ガスに照射を行ってグロー放電によるプラズマ30cを形成する。ここで用いるマイクロ波ソースからは、約2.45GHzのμ波が放射される。
例えば、材料ガスとしてモノシランガスを用いた場合、SiHx、SiHxOy、SiOyなどの酸化シリコン前駆体が生成され、成膜室内に導入される。これらのラジカルは、酸素や水分と反応しやすく、成膜室内の酸素濃度や水分量を低減することができ、結果的に信頼性の高い有機化合物膜を得ることができる。
また、これらのラジカルは、より温度の高い場所に移動、または堆積しやすいため、基板ホルダ12に設けられているヒータ31で基板を加熱しながら蒸着を行うことが好ましい。また、蒸着セル13に移動、または堆積するのを防ぐため、蒸着セル13は断熱材で覆うことが好ましい。
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることが可能である。
(実施の形態4)
ここでは、実施の形態1と異なる成膜装置を図4に示す。
図4に示す成膜装置は、イオンプレーティング法を用い、成膜室内で材料ガスをイオン化させ、蒸発させた有機材料65に付着させながら蒸着を行う例である。
図4中、60は基板、61はチャンバー壁、62は基板ホルダ、63はセル、65は蒸発させた有機材料、66はターボ分子ポンプ、67はクライオポンプ、68は定盤、69防着板である。
図4に示す成膜装置には、材料51を収納したルツボ52に電子ビームを照射する電子銃50、プラズマ53を発生させるプラズマ発生手段64が設けられている。
電子銃50により電子ビームをルツボ52に照射してルツボ内の材料51を溶解、蒸発させて材料51の蒸発流を形成し、プラズマ発生手段64によりイオン化させ、イオン化した蒸発流と、蒸着セル63から蒸発させた有機材料65とを混合させ、これらを基板に衝突させて成膜する。
図4に示す成膜装置においては、有機材料の蒸着の途中で蒸発した材料51を化学付着させ、材料51の成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とすることができる。材料51の成分を有機化合物膜中に含ませることによって劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングし、発光素子の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【実施例】
【実施例1】
本実施例では、有機化合物膜中に存在するエネルギー障壁を緩和してキャリアの移動性を高めると同時に、なおかつ積層構造の機能分離と同様に各種複数の材料の機能を有する発光素子を作製する例を示す。
積層構造におけるエネルギー障壁の緩和に関しては、キャリア注入層の挿入という技術に顕著に見られる。つまり、エネルギー障壁の大きい積層構造の界面において、そのエネルギー障壁を緩和する材料を挿入することにより、エネルギー障壁を階段状に設計することができる。これにより電極からのキャリア注入性を高め、確かに駆動電圧をある程度までは下げることができる。しかしながら問題点は、層の数を増やすことによって、有機界面の数は逆に増加することである。このことが、単層構造の方が駆動電圧・パワー効率のトップデータを保持している原因であると考えられる。逆に言えば、この点を克服することにより、積層構造のメリット(様々な材料を組み合わせることができ、複雑な分子設計が必要ない)を活かしつつ、なおかつ単層構造の駆動電圧・パワー効率に追いつくことができる。
そこで本実施例において、発光素子の陽極と陰極の間に複数の機能領域からなる有機化合物膜が形成される場合、従来の明確な界面が存在する積層構造ではなく、第一の機能領域と第二の機能領域との間に、第一の機能領域を構成する材料および第二の機能領域を構成する材料の両方からなる混合領域を有する構造を形成する。
このような構造を適用することで、機能領域間に存在するエネルギー障壁は従来の構造に比較して低減され、キャリアの注入性が向上すると考えられる。すなわち機能領域間におけるエネルギー障壁は、混合領域を形成することにより緩和される。したがって、駆動電圧の低減、および輝度低下の防止が可能となる。
以上のことから、本実施例では第一の有機化合物が機能を発現できる領域(第一の機能領域)と、前記第一の機能領域を構成する物質とは異なる第二の有機化合物が機能を発現できる領域(第二の機能領域)と、を少なくとも含む発光素子、及びこれを有する発光装置の作製において、図1に示す成膜装置を用い、前記第一の機能領域と前記第二の機能領域との間に、前記第一の機能領域を構成する有機化合物と前記第二の機能領域を構成する有機化合物、とからなる混合領域を作製する。
図1に示す成膜装置において、一つの成膜室において複数の機能領域を有する有機化合物膜が形成されるようになっており、蒸着源もそれに応じて複数設けられている。なお、陽極が形成されている基板を搬入しセットする。
はじめに、第一の材料室に備えられている、第一の有機化合物が蒸着される。なお、第一の有機化合物は予め抵抗加熱により気化されており、蒸着時に第1のシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。蒸着の際には材料ガス、ここではモノシランガスを導入し、膜中に含有させる。これにより、図5(A)に示す第一の機能領域210を形成することができる。
そして、第一の有機化合物17aを蒸着したまま、第2のシャッターを開け、第二の材料室に備えられている、第二の有機化合物を蒸着する。なお、第二の有機化合物も予め抵抗加熱により気化されており、蒸着時に第2のシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。蒸着の際には材料ガス、ここではモノシランガスを導入し、膜中に含有させる。ここで、第一の有機化合物と第二の有機化合物とからなる第一の混合領域211を形成することができる。
そして、しばらくしてから第1のシャッターのみを閉じ、第二の有機化合物を蒸着する。蒸着の際には材料ガス、ここではモノシランガスを導入し、膜中に含有させる。これにより、第二の機能領域212を形成することができる。
なお、本実施例では、二種類の有機化合物を同時に蒸着することにより、混合領域を形成する方法を示したが、第一の有機化合物を蒸着した後、その蒸着雰囲気下で第二の有機化合物を蒸着することにより、第一の機能領域と第二の機能領域との間に混合領域を形成することもできる。
次に、第二の有機化合物を蒸着したまま、第3のシャッターを開け、第三の材料室に備えられている、第三の有機化合物を蒸着する。なお、第三の有機化合物も予め抵抗加熱により気化されており、蒸着時に第3のシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。蒸着の際には材料ガス、ここではモノシランガスを導入し、膜中に含有させる。ここで、第二の有機化合物と第三の有機化合物とからなる第二の混合領域213を形成することができる。
そして、しばらくしてから第2のシャッターのみを閉じ、第三の有機化合物を蒸着する。蒸着の際には材料ガス、ここではモノシランガスを導入し、膜中に含有させる。そして第3のシャッターを閉じて第三の有機化合物の蒸着を完了させる。これにより、第三の機能領域214を形成することができる。
最後に、陰極を形成することにより本発明の成膜装置により形成される発光素子が完成する。
さらに、その他の有機化合物膜としては、図5(B)に示すように、第一の有機化合物を用いて第一の機能領域220を形成した後、第一の有機化合物と第二の有機化合物とからなる第一の混合領域221を形成し、さらに、第二の有機化合物を用いて第二の機能領域222を形成する。そして、第二の機能領域222を形成する途中で、一時的に第3のシャッターを開いて第三の有機化合物17cの蒸着を同時に行うことにより、第二の混合領域223を形成する。
しばらくして、第3のシャッターを閉じることにより、再び第二の機能領域222を形成する。そして、陰極を形成することにより発光素子が形成される。
以上のような有機化合物膜を形成することができる図2の成膜装置は、同一の成膜室において複数の機能領域を有する有機化合物膜を形成することができるので、機能領域界面に混合領域を形成することができる。以上により、明瞭な積層構造を示すことなく(すなわち、明確な有機界面がなく)、かつ、複数の機能を備えた発光素子を作製することができる。
また、図1の成膜装置は、成膜時に意図的に材料ガス(モノシランガス)を導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることが可能であり、有機化合物膜中に原子半径の小さい材料(代表的にはシリコン)を含ませることによって、混合領域における分子間をよりフィットさせることができる。したがって、さらに駆動電圧の低減、および輝度低下の防止が可能となる。また、材料ガスによって成膜室内の酸素や水分などの不純物をさらに除去することもでき、高密度な有機化合物層を形成することができる。
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、または実施の形態4と自由に組み合わせることが可能である。
【実施例2】
本実施例では、第1の電極から封止までの作製を全自動化したマルチチャンバー方式の製造装置の例を図6に示す。
図6は、ゲート500a〜500yと、搬送室502、504a、508、514、518と、受渡室505、507、511と、仕込室501と、第1成膜室506Hと、第2成膜室506Bと、第3成膜室506Gと、第4成膜室506R、第5成膜室506Eと、その他の成膜室509、510、512、513、531、532と、蒸着源を設置する設置室526R、526G、526B、526E、526Hと、前処理室503a、503bと、封止室516と、マスクストック室524と、封止基板ストック室530と、カセット室520a、520bと、トレイ装着ステージ521と、取出室519と、を有するマルチチャンバーの製造装置である。なお、搬送室504aには基板504cを搬送するための搬送機構504bが設けており、他の搬送室も同様にそれぞれ搬送機構が設けてある。
以下、予め陽極(第1の電極)と、該陽極の端部を覆う絶縁物(隔壁)とが設けられた基板を図6に示す製造装置に搬入し、発光装置を作製する手順を示す。なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合、予め基板上には、陽極に接続している薄膜トランジスタ(電流制御用TFT)およびその他の薄膜トランジスタ(スイッチング用TFTなど)が複数設けられ、薄膜トランジスタからなる駆動回路も設けられている。また、単純マトリクス型の発光装置を作製する場合にも図6に示す製造装置で作製することが可能である。
まず、カセット室520aまたはカセット室520bに上記基板をセットする。基板が大型基板(例えば300mm×360mm)である場合はカセット室520bにセットし、通常基板(例えば、127mm×127mm)である場合には、カセット室520aにセットした後、トレイ装着ステージ521に搬送し、トレイ(例えば300mm×360mm)に複数の基板をセットする。
カセット室にセットした基板(陽極と、該陽極の端部を覆う絶縁物とが設けられた基板)は搬送室518に搬送する。
また、カセット室にセットする前には、点欠陥を低減するために第1の電極(陽極)の表面に対して界面活性剤(弱アルカリ性)を含ませた多孔質なスポンジ(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で洗浄して表面のゴミを除去することが好ましい。洗浄機構として、基板の面に平行な軸線まわりに回動して基板の面に接触するロールブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよいし、基板の面に垂直な軸線まわりに回動しつつ基板の面に接触するディスクブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよい。また、有機化合物を含む膜を形成する前に、上記基板に含まれる水分やその他のガスを除去するために、脱気のためのアニールを真空中で行うことが好ましく、搬送室518に連結された前処理室523に搬送し、そこでアニールを行えばよい。
次いで、基板搬送機構が設けられた搬送室518から仕込室501に搬送する。本実施例の製造装置では、仕込室501には、基板反転機構が備わっており、基板を適宜反転させることができる。仕込室501は、真空排気処理室と連結されており、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にしておくことが好ましい。
次いで仕込室501に連結された搬送室502に搬送する。搬送室502内には極力水分や酸素が存在しないよう、予め、真空排気して真空を維持しておくことが好ましい。
また、上記の真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。これにより仕込室と連結された搬送室の到達真空度を10−5〜10−6Torrにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。装置内部に不純物が導入されるのを防ぐため、導入するガスとしては、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いる。装置内部に導入されるこれらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に蒸着装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
また、不用な箇所に形成された有機化合物を含む膜を除去したい場合には、前処理室503aに搬送し、有機化合物膜の積層を選択的に除去すればよい。前処理室503aはプラズマ発生手段を有しており、Ar、H、F、およびOから選ばれた一種または複数種のガスを励起してプラズマを発生させることによって、ドライエッチングを行う。また、陽極表面処理として紫外線照射が行えるように前処理室503aにUV照射機構を備えてもよい。
また、シュリンクをなくすためには、有機化合物を含む膜の蒸着直前に真空加熱を行うことが好ましく、前処理室503bに搬送し、上記基板に含まれる水分やその他のガスを徹底的に除去するために、脱気のためのアニールを真空(5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4〜10−6Torr)で行う。前処理室503bでは平板ヒータ(代表的にはシースヒータ)を用いて、複数の基板を均一に加熱する。特に、層間絶縁膜や隔壁の材料として有機樹脂膜を用いた場合、有機樹脂材料によっては水分を吸着しやすく、さらに脱ガスが発生する恐れがあるため、有機化合物を含む層を形成する前に100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃、例えば30分以上の加熱を行った後、30分の自然冷却を行って吸着水分を除去する真空加熱を行うことは有効である。
次いで、上記真空加熱を行った後、搬送室502から受渡室505に基板を搬送し、さらに、大気にふれさせることなく、受渡室505から搬送室504aに基板を搬送する。
その後、搬送室504aに連結された成膜室506R、506G、506B、506Eへ基板を適宜、搬送して、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、または電子注入層となる低分子からなる有機化合物層を適宜形成する。また、搬送室502から基板を成膜室506Hに搬送して、蒸着を行うこともできる。
また、成膜室512ではインクジェット法やスピンコート法などで高分子材料からなる正孔注入層を形成してもよい。また、基板を縦置きとして真空中でインクジェット法により成膜してもよい。第1の電極(陽極)上に、正孔注入層(陽極バッファー層)として作用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ショウノウスルホン酸水溶液(PANI/CSA)、PTPDES、Et−PTPDEK、またはPPBAなどを全面に塗布、焼成してもよい。焼成する際にはベーク室523で行うことが好ましい。スピンコートなどを用いた塗布法で高分子材料からなる正孔注入層を形成した場合、平坦性が向上し、その上に成膜される膜のカバレッジおよび膜厚均一性を良好なものとすることができる。特に発光層の膜厚が均一となるため均一な発光を得ることができる。この場合、正孔注入層を塗布法で形成した後、蒸着法による成膜直前に真空加熱(100〜200℃)を行うことが好ましい。真空加熱する際には前処理室503bで行えばよい。例えば、第1の電極(陽極)の表面をスポンジで洗浄した後、カセット室に搬入し、成膜室512に搬送してスピンコート法でポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全面に膜厚60nmで塗布した後、ベーク室523に搬送して80℃、10分間で仮焼成、200℃、1時間で本焼成し、さらに前処理室503bに搬送して蒸着直前に真空加熱(170℃、加熱30分、冷却30分)した後、成膜室506R、506G、506Bに搬送して大気に触れることなく蒸着法で発光層の形成を行えばよい。特に、ITO膜を陽極材料として用い、表面に凹凸や微小な粒子が存在している場合、PEDOT/PSSの膜厚を30nm以上の膜厚とすることでこれらの影響を低減することができる。
また、PEDOT/PSSはITO膜上に塗布すると濡れ性があまりよくないため、PEDOT/PSS溶液をスピンコート法で1回目の塗布を行った後、一旦純水で洗浄することによって濡れ性を向上させ、再度、PEDOT/PSS溶液をスピンコート法で2回目の塗布を行い、焼成を行って均一性良く成膜することが好ましい。なお、1回目の塗布を行った後、一旦純水で洗浄することによって表面を改質するとともに、微小な粒子なども除去できる効果が得られる。
また、スピンコート法によりPEDOT/PSSを成膜した場合、全面に成膜されるため、基板の端面や周縁部、端子部、陰極と下部配線との接続領域などは選択的に除去することが好ましく、前処理室503aでOアッシングなどで除去することが好ましい。
ここで、成膜室506R、506G、506B、506E、506Hについて説明する。
各成膜室506R、506G、506B、506E、506Hには、移動可能な蒸着源ホルダ(蒸着セル)が設置されている。即ち、上記実施の形態2の図2で示した成膜室に相当する。上記実施の形態2に示したように、蒸着の際に材料ガスを導入しながら蒸着を行う。材料ガスとして、具体的には、シラン系ガス(モノシラン、ジシラン、トリシラン等)、SiF、GeH、GeF、SnH、または炭化水素系ガス(CH、C、C、C等)から選ばれた一種または複数種を用いればよい。成膜時に意図的に材料ガスを導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とすることができる。材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングし、発光素子の信頼性を向上させることができる。
なお、この蒸着源ホルダは複数用意されており、適宜、EL材料が封入された容器(ルツボ)を複数備え、この状態で成膜室に設置されている。フェイスダウン方式で基板をセットし、CCDなどで蒸着マスクの位置アライメントを行い、抵抗加熱法で蒸着を行うことで選択的に成膜を行うことができる。なお、蒸着マスクはマスクストック室524にストックして、適宜、蒸着を行う際に成膜室に搬送する。また、成膜室532は有機化合物を含む層や金属材料層を形成するための予備の蒸着室である。
これら成膜室へEL材料の設置は、以下に示す製造システムを用いると好ましい。すなわち、EL材料が予め材料メーカーで収納されている容器(代表的にはルツボ)を用いて成膜を行うことが好ましい。さらに設置する際には大気に触れることなく行うことが好ましく、材料メーカーから搬送する際、ルツボは第2の容器に密閉した状態のまま成膜室に導入されることが好ましい。望ましくは、各成膜室506R、506G、506B、506H、506Eに連結した真空排気手段を有する設置室526R、526G、526B、526H、526Eを真空、または不活性ガス雰囲気とし、この中で第2の容器からルツボを取り出して、成膜室にルツボを設置する。なお、図7、または図8に設置室の一例が示してある。
ここで、搬送する容器の形態について図7(A)を用いて具体的に説明する。搬送に用いる上部(721a)と下部(721b)に分かれる第2の容器は、第2の容器の上部に設けられた第1の容器を固定するための固定手段706と、固定手段に加圧するためのバネ705と、第2の容器の下部に設けられた第2の容器を減圧保持するためガス経路となるガス導入口708と、上部容器721aと下部容器721bとを固定するOリングと、留め具702と有している。この第2の容器内には、精製された蒸着材料が封入された第1の容器701が設置されている。なお、第2の容器はステンレスを含む材料で形成され、第1の容器701はチタンを有する材料で形成するとよい。
材料メーカーにおいて、第1の容器701に精製した蒸着材料を封入する。そして、Oリングを介して第2の上部721aと下部721bとを合わせ、留め具702で上部容器721aと下部容器721bとを固定し、第2の容器内に第1の容器701を密閉する。その後、ガス導入口708を介して第2の容器内を減圧し、更に窒素雰囲気に置換し、バネ705を調節して固定手段706により第1の容器701を固定する。なお、第2の容器内に乾燥剤を設置してもよい。このように第2の、容器内を真空や減圧、窒素雰囲気に保持すると、蒸着材料へのわずかな酸素や水の付着でさえも防止することができる。
この状態で発光装置メーカーへ搬送され、第1の容器701を蒸着室へ設置する。その後、加熱により蒸着材料は昇華し、蒸着膜の成膜が行われる。
また、その他の部品、例えば膜厚モニタ(水晶振動子など)、シャッターなども同様にして大気にふれることなく搬送し、蒸着装置内に設置することが好ましい。
また、大気にふれることなく容器内に真空封止されたルツボ(蒸着材料が充填されている)を容器から取り出し、蒸着ホルダにルツボをセットするための設置室が成膜室に連結されており、大気にふれることなく設置室から搬送ロボットでルツボを搬送する。設置室にも真空排気手段を設け、さらにルツボを加熱する手段も設けることが好ましい。
図7(A)および図7(B)を用いて、第2の容器721a、721bに密閉されて搬送される第1の容器701を成膜室へ設置する機構を説明する。
図7(A)は、第1の容器が収納された第2の容器721a、721bを載せる回転台707と、第1の容器を搬送するための搬送機構と、持ち上げ機構711とを有する設置室705の断面が記載されている。また、設置室は成膜室と隣り合うように配置され、ガス導入口を介して雰囲気を制御する手段により設置室の雰囲気を制御することが可能である。なお、搬送機構は、図7(B)に記載されるように第1の容器701の上方から、該第1の容器を挟んで(つまんで)搬送する構成に限定されるものではなく、第1の容器の側面を挟んで搬送する構成でも構わない。
このような設置室内に、留め具702を外した状態で第2の容器を回転設置台713上に配置する。内部は真空状態であるので留め具702を外しても取れない。次いで、雰囲気を制御する手段により、設置室内を減圧状態とする。設置室内の圧力と第2の容器内の圧力とが等しくなるとき、容易に第2の容器は開封できる状態となる。そして持ち上げ機構711により第2の容器の上部721aを取り外し、回転設置台713が回転軸712を軸として回転することによって第2の容器の下部および第1の容器を移動させる。そして、第1の容器701を搬送機構により蒸着室へ搬送して第1の容器701を蒸着源ホルダ(図示しない)に設置する。
その後、蒸着源ホルダに設けられた加熱手段により、蒸着材料は昇華され、成膜が開始される。この成膜時に、蒸着源ホルダに設けられたシャッター(図示しない)が開くと、昇華した蒸着材料は基板の方向へ飛散し、基板に蒸着され、発光層(正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層を含む)が形成される。
そして、蒸着が完了した後、蒸着源ホルダから第1の容器を持ち上げ、設置室に搬送して、回転台804に設置された第2の容器の下部容器(図示しない)に載せられ、上部容器721aにより密閉される。このとき、第1の容器と、上部容器と、下部容器とは、搬送された組み合わせで密閉することが好ましい。この状態で、設置室805を大気圧とし、第2の容器を設置室から取り出し、留め具702を固定して材料メーカーへ搬送される。
また、第1の容器911を複数設置可能な設置室の例を図8に示す。図8(A)において、設置室905には、第1の容器911または第2の容器912を複数載せることができる回転台907と、第1の容器を搬送するための搬送機構902bと、持ち上げ機構902aとを有し、成膜室906には蒸着源ホルダ903と、蒸着ホルダを移動させる機構(ここでは図示しない)とを有している。図8(A)は上面図を示し、図8(B)には設置室内の斜視図を示している。また、設置室905は成膜室906と隣り合うようにゲート弁900を介して配置され、ガス導入口を介して雰囲気を制御する手段により設置室の雰囲気を制御することが可能である。なお図示しないが、取り外した上部(第2の容器)912を配置する箇所は別途設けられる。
或いは、成膜室に連結した前処理室(設置室)にロボットを備え、蒸着源ごと成膜室から前処理室に移動させ、前処理室で蒸着源に蒸着材料をセットしてもよい。即ち、蒸着源が前処理室まで移動する製造装置としてもよい。こうすることによって、成膜室の洗浄度を保ったまま、蒸着源をセットすることができる。
こうすることにより、ルツボおよび該ルツボに収納されたEL材料を汚染から防ぐことができる。なお、設置室526R、526G、526B、526H、526Eには、メタルマスクをストックしておくことも可能である。
成膜室506R、506G、506B、506H、506Eに設置するEL材料を適宜選択することにより、発光素子全体として、単色(具体的には白色)、或いはフルカラー(具体的には赤色、緑色、青色)の発光を示す発光素子を形成することができる。例えば、緑色の発光素子を形成する場合、成膜室506Hで正孔輸送層または正孔注入層、成膜室506Gで発光層(G)、成膜室506Eで電子輸送層または電子注入層を順次積層した後、陰極を形成すれば緑色の発光素子を得ることができる。例えば、フルカラーの発光素子を形成する場合、成膜室506RでR用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(R)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、成膜室506GでG用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(G)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、成膜室506BでB用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(B)、電子輸送層または電子注入層を順次積層した後、陰極を形成すればフルカラーの発光素子を得ることができる。
なお、白色の発光を示す有機化合物層は、異なる発光色を有する発光層を積層する場合において、赤色、緑色、青色の3原色を含有する3波長タイプと、青色/黄色または青緑色/橙色の補色の関係を用いた2波長タイプに大別される。一つの成膜室で白色発光素子を形成することも可能である。例えば、3波長タイプを用いて白色発光素子を得る場合、複数のルツボを搭載した蒸着源ホルダを複数備えた成膜室を用意して、第1の蒸着源ホルダには芳香族ジアミン(TPD)、第2の蒸着源ホルダにはp−EtTAZ、第3の蒸着源ホルダにはAlq、第4の蒸着源ホルダにはAlqに赤色発光色素であるNileRedを添加したEL材料、第5の蒸着源ホルダにはAlqが封入され、この状態で各成膜室に設置する。そして、第1から第5の蒸着源ホルダが順に移動を開始し、基板に対して蒸着を行い、積層する。具体的には、加熱により第1の蒸着源ホルダからTPDが昇華され、基板全面に蒸着される。その後、第2の蒸着源ホルダからp−EtTAZが昇華され、第3の蒸着源ホルダからAlqが昇華され、第4の蒸着源ホルダからAlq:NileRedが昇華され、第5の蒸着源ホルダからAlqが昇華され、基板全面に蒸着される。この後、陰極を形成すれば白色発光素子を得ることができる。
上記工程によって適宜、有機化合物を含む層を積層した後、搬送室504aから受渡室507に基板を搬送し、さらに、大気にふれさせることなく、受渡室507から搬送室508に基板を搬送する。
次いで、搬送室508内に設置されている搬送機構により、基板を成膜室510に搬送し、陰極を形成する。この陰極は、抵抗加熱を用いた蒸着法により形成される金属膜(MgAg、MgIn、CaF、LiF、CaNなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜、またはこれらの積層膜)である。また、スパッタ法を用いて陰極を形成してもよい。
また、上面出射型の発光装置を作製する場合には、陰極は透明または半透明であることが好ましく、上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)、或いは上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)と透明導電膜との積層を陰極とすることが好ましい。この場合、スパッタ法を用いて成膜室509で透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−Zno)、酸化亜鉛(ZnO)等)からなる膜を形成すればよい。
以上の工程で積層構造の発光素子が形成される。
また、搬送室508に連結した成膜室513に搬送して窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜からなる保護膜を形成して封止してもよい。ここでは、成膜室513内には、珪素からなるターゲット、または酸化珪素からなるターゲット、または窒化珪素からなるターゲットが備えられている。例えば、珪素からなるターゲットを用い、成膜室雰囲気を窒素雰囲気または窒素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって陰極上に窒化珪素膜を形成することができる。また、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)を保護膜として形成してもよく、別途、CVD法を用いた成膜室を設けてもよい。ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜とも呼ばれる)は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法、熱フィラメントCVD法など)、燃焼炎法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、レーザー蒸着法などで形成することができる。成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH、C、Cなど)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。また、CN膜は反応ガスとしてCガスとNガスとを用いて形成すればよい。なお、DLC膜やCN膜は、可視光に対して透明もしくは半透明な絶縁膜である。可視光に対して透明とは可視光の透過率が80〜100%であることを指し、可視光に対して半透明とは可視光の透過率が50〜80%であることを指す。
本実施例では、陰極上に第1の無機絶縁膜と、応力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積層からなる保護層を形成する。例えば、陰極を形成した後、成膜室513に搬送して第1の無機絶縁膜を形成し、成膜室532に搬送して蒸着法で吸湿性および透明性を有する応力緩和膜(有機化合物を含む層など)を形成し、さらに再度、成膜室513に搬送して第2の無機絶縁膜を形成すればよい。
次いで、発光素子が形成された基板を大気に触れることなく、搬送室508から受渡室511に搬送し、さらに受渡室511から搬送室514に搬送する。次いで、発光素子が形成された基板を搬送室514から封止室516に搬送する。
封止基板は、ロード室517に外部からセットし、用意される。なお、水分などの不純物を除去するために予め真空中でアニールを行うことが好ましい。そして、封止基板に発光素子が設けられた基板と貼り合わせるためのシール材を形成する場合には、シーリング室でシール材を形成し、シール材を形成した封止基板を封止基板ストック室530に搬送する。なお、シーリング室において、封止基板に乾燥剤を設けてもよい。なお、ここでは、封止基板にシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基板にシール材を形成してもよい。
次いで、封止室516、基板と封止基板と貼り合わせ、貼り合わせた一対の基板を封止室516に設けられた紫外線照射機構によってUV光を照射してシール材を硬化させる。なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定されない。
次いで、貼り合わせた一対の基板を封止室516から搬送室514、そして搬送室514から取出室519に搬送して取り出す。
以上のように、図6に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封入するまで大気に曝さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。なお、搬送室514、518においては、真空と、大気圧での窒素雰囲気とを繰り返すが、搬送室502、504a、508は常時、真空が保たれることが望ましい。
なお、ここでは図示しないが、基板を個々の処理室に移動させる経路を制御して自動化を実現するコントロール制御装置を設けている。
また、図6に示す製造装置では、陽極として透明導電膜(または金属膜(TiN)が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、透明または半透明な陰極(例えば、薄い金属膜(Al、Ag)と透明導電膜の積層)を形成することによって、上面出射型(或いは両面出射)の発光素子を形成することも可能である。なお、上面出射型の発光素子とは、陰極を透過させて有機化合物層において生じた発光を取り出す素子を指している。
また、図6に示す製造装置では、陽極として透明導電膜が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、金属膜(Al、Ag)からなる陰極を形成することによって、下面出射型の発光素子を形成することも可能である。なお、下面出射型の発光素子とは、有機化合物層において生じた発光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出し、さらに基板を通過させる素子を指している。
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4または実施例1と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
本実施例では、絶縁表面を有する基板上に、有機化合物層を発光層とする発光素子を備えた発光装置(上面出射構造)を作製する例を図9に示す。
なお、図9(A)は、発光装置を示す上面図、図9(B)は図9(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された1101はソース信号線駆動回路、1102は画素部、1103はゲート信号線駆動回路である。また、1104は透明な封止基板、1105は第1のシール材であり、第1のシール材1105で囲まれた内側は、透明な第2のシール材1107で充填されている。なお、第1のシール材1105には基板間隔を保持するためのギャップ材が含有されている。
なお、1108はソース信号線駆動回路1101及びゲート信号線駆動回路1103に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1109からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。
次に、断面構造について図9(B)を用いて説明する。基板1110上には駆動回路及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路としてソース信号線駆動回路1101と画素部1102が示されている。
なお、ソース信号線駆動回路1101はnチャネル型TFT1123とpチャネル型TFT1124とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。また、ポリシリコン膜を活性層とするTFTの構造は特に限定されず、トップゲート型TFTであってもよいし、ボトムゲート型TFTであってもよい。
また、画素部1102はスイッチング用TFT1111と、電流制御用TFT1112とそのドレインに電気的に接続された第1の電極(陽極)1113を含む複数の画素により形成される。電流制御用TFT1112としてはnチャネル型TFTであってもよいし、pチャネル型TFTであってもよいが、陽極と接続させる場合、pチャネル型TFTとすることが好ましい。また、保持容量(図示しない)を適宜設けることが好ましい。なお、ここでは無数に配置された画素のうち、一つの画素の断面構造のみを示し、その一つの画素に2つのTFTを用いた例を示したが、3つ、またはそれ以上のTFTを適宜、用いてもよい。
ここでは第1の電極1113がTFTのドレインと直接接している構成となっているため、第1の電極1113の下層はシリコンからなるドレインとオーミックコンタクトのとれる材料層とし、有機化合物を含む層と接する最上層を仕事関数の大きい材料層とすることが望ましい。例えば、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造とすると、配線としての抵抗も低く、且つ、良好なオーミックコンタクトがとれ、且つ、陽極として機能させることができる。また、第1の電極1113は、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層としてもよいし、3層以上の積層を用いてもよい。
また、第1の電極(陽極)1113の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる)1114が形成される。絶縁物1114は有機樹脂膜もしくは珪素を含む絶縁膜で形成すれば良い。ここでは、絶縁物1114として、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いて図9に示す形状の絶縁物を形成する。
カバレッジを良好なものとするため、絶縁物1114の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物1114の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物1114の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物1114として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
また、絶縁物1114を窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。
また、第1の電極(陽極)1113上には、モノシランガスを導入しながら蒸着法によって有機化合物を含む層1115を選択的に形成する。さらに、有機化合物を含む層1115上には第2の電極(陰極)1116が形成される。陰極としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、またはCaN)を用いればよい。ここでは、発光が透過するように、第2の電極(陰極)1116として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いる。こうして、第1の電極(陽極)1113、有機化合物を含む層1115、及び第2の電極(陰極)1116からなる発光素子1118が形成される。本実施例では、有機化合物を含む層1115として、芳香族ジアミン層(TPD)と、p−EtTAZ層と、Alq層と、ナイルレッドをドープしたAlq層と、Alq層とを順次積層させて白色発光を得る。本実施例では発光素子1118は白色発光とする例であるので着色層1131と遮光層(BM)1132からなるカラーフィルター(簡略化のため、ここではオーバーコート層は図示しない)を設けている。
また、R、G、Bの発光が得られる有機化合物を含む層をそれぞれ選択的に形成すれば、カラーフィルターを用いなくともフルカラーの表示を得ることができる。
また、発光素子1118を封止するために透明保護層1117を形成する。この透明保護層1117としてはスパッタ法(DC方式やRF方式)やPCVD法により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜など)、またはこれらの積層を用いることが好ましい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、水分やアルカリ金属などの不純物に対してブロッキング効果の高い窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、透明保護層は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。また、透明保護層に発光を通過させるため、透明保護層の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
また、発光素子1118を封止するために不活性気体雰囲気下で第1シール材1105、第2シール材1107により封止基板1104を貼り合わせる。なお、第1シール材1105、第2シール材1107としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第1シール材1105、第2シール材1107はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
また、本実施例では封止基板1104を構成する材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。また、第1シール材1105、第2シール材1107を用いて封止基板1104を接着した後、さらに側面(露呈面)を覆うように第3のシール材で封止することも可能である。
以上のようにして発光素子を第1シール材1105、第2シール材1107に封入することにより、発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素といった有機化合物層の劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
また、第1の電極1113として透明導電膜を用いれば両面発光型の発光装置を作製することができる。
また、本実施例では陽極上に有機化合物を含む層を形成し、有機化合物を含む層上に透明電極である陰極を形成するという構造(以下、上面出射構造とよぶ)とした例を示したが、陽極上に有機化合物を含む層が形成され、有機化合物層上に陰極が形成される発光素子を有し、有機化合物を含む層において生じた発光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出す(以下、下面出射構造とよぶ)という構造としてもよい。
ここで、下面出射構造の発光装置の一例を図10に示す。
なお、図10(A)は、発光装置を示す上面図、図10(B)は図10(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された1201はソース信号線駆動回路、1202は画素部、1203はゲート信号線駆動回路である。また、1204は封止基板、1205は密閉空間の間隔を保持するためのギャップ材が含有されているシール材であり、シール材1205で囲まれた内側は、不活性気体(代表的には窒素)で充填されている。シール材1205で囲まれた内側の空間は乾燥剤1207によって微量な水分が除去され、十分乾燥している。
なお、1208はソース信号線駆動回路1201及びゲート信号線駆動回路1203に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1209からビデオ信号やクロック信号を受け取る。
次に、断面構造について図10(B)を用いて説明する。基板1210上には駆動回路及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路としてソース信号線駆動回路1201と画素部1202が示されている。なお、ソース信号線駆動回路1201はnチャネル型TFT1223とpチャネル型TFT1224とを組み合わせたCMOS回路が形成される。
また、画素部1202はスイッチング用TFT1211と、電流制御用TFT1212とそのドレインに電気的に接続された透明な導電膜からなる第1の電極(陽極)1213を含む複数の画素により形成される。
ここでは第1の電極1213が接続電極と一部重なるように形成され、第1の電極1213はTFTのドレイン領域と接続電極を介して電気的に接続している構成となっている。第1の電極1213は透明性を有し、且つ、仕事関数の大きい導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)を用いることが望ましい。
また、第1の電極(陽極)1213の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる)1214が形成される。カバレッジを良好なものとするため、絶縁物1214の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。また、絶縁物1214を窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。
また、第1の電極(陽極)1213上には、モノシランガスを導入しながら有機化合物材料の蒸着を行い、有機化合物を含む層1215を選択的に形成する。さらに、有機化合物を含む層1215上には第2の電極(陰極)1216が形成される。陰極としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、またはCaN)を用いればよい。こうして、第1の電極(陽極)1213、有機化合物を含む層1215、及び第2の電極(陰極)1216からなる発光素子1218が形成される。発光素子1218は、図10中に示した矢印方向に発光する。ここでは発光素子1218はR、G、或いはBの単色発光が得られる発光素子の一つであり、R、G、Bの発光が得られる有機化合物を含む層をそれぞれ選択的に形成した3つの発光素子でフルカラーとする。
また、発光素子1218を封止するために保護層1217を形成する。この透明保護層1217としてはスパッタ法(DC方式やRF方式)やPCVD法により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜、または炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜など)、またはこれらの積層を用いることが好ましい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、水分やアルカリ金属などの不純物に対してブロッキング効果の高い窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、保護層は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。
また、発光素子1218を封止するために不活性気体雰囲気下でシール材1205により封止基板1204を貼り合わせる。封止基板1204には予めサンドブラスト法などによって形成した凹部が形成されており、その凹部に乾燥剤1207を貼り付けている。なお、シール材1205としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール材1205はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
また、本実施例では凹部を有する封止基板1204を構成する材料として金属基板、ガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。また、内側に乾燥剤を貼りつけた金属缶で封止することも可能である。
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1、または実施例2のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【実施例4】
本実施例では、一つの画素の断面構造、特に発光素子およびTFTの接続、画素間に配置する隔壁の形状について説明する。
図11(A)中、40は基板、41は隔壁(土手とも呼ばれる)、42は絶縁膜、43は第1の電極(陽極)、44は有機化合物を含む層、45は第2の電極(陰極)46はTFTである。
TFT46において、46aはチャネル形成領域、46b、46cはソース領域またはドレイン領域、46dはゲート電極、46e、46fはソース電極またはドレイン電極である。ここではトップゲート型TFTを示しているが、特に限定されず、逆スタガ型TFTであってもよいし、順スタガ型TFTであってもよい。なお、46fは第1の電極43と一部接して重なることによりTFT46とを接続する電極である。
また、図11(A)とは一部異なる断面構造を図11(B)に示す。
図11(B)においては、第1の電極と電極との重なり方が図11(A)の構造と異なっており、第1の電極をパターニングした後、電極を一部重なるように形成することでTFTと接続させている。
また、図11(A)とは一部異なる断面構造を図11(C)に示す。
図11(C)においては、層間絶縁膜がさらに1層設けられており、第1の電極がコンタクトホールを介してTFTの電極と接続されている。
また、隔壁41の断面形状としては、図11(D)に示すようにテーパー形状としてもよい。フォトリソグラフィ法を用いてレジストを露光した後、非感光性の有機樹脂や無機絶縁膜をエッチングすることによって得られる。
また、ポジ型の感光性有機樹脂を用いれば、図11(E)に示すような形状、上端部に曲面を有する形状とすることができる。
また、ネガ型の感光性樹脂を用いれば、図11(F)に示すような形状、上端部および下端部に曲面を有する形状とすることができる。
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、実施例1、実施例2、または実施例3と自由に組み合わせることができる。
【実施例5】
本実施例ではパッシブマトリクス型の発光装置(単純マトリクス型の発光装置とも呼ぶ)を作製する例を示す。
まず、ガラス基板上にストライプ状に複数の第1配線をITOなどの材料(陽極となる材料)で形成する。次いで、レジストまたは感光性樹脂からなる隔壁を発光領域となる領域を囲んで形成する。次いで、蒸着法により、隔壁で囲まれた領域に有機化合物を含む層を形成する。フルカラー表示とする場合には、適宜、材料を選択してモノシランガスを導入しながら蒸着法により有機化合物を含む層を形成する。次いで、隔壁および有機化合物を含む層上に、ITOからなる複数の第1配線と交差するようにストライプ状の複数の第2配線をAlまたはAl合金などの金属材料(陰極となる材料)で形成する。以上の工程で有機化合物を含む層を発光層とした発光素子を形成することができる。
次いで、シール材で封止基板を貼り付ける、或いは第2配線上に保護膜を設けて封止する。封止基板としては、ガラス基板、ポリプロピレン、ポリプロピレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルフォン、またはポリフタールアミドからなる合成樹脂からなるプラスチック基板を用いる。
図12(A)に本実施例の表示装置の断面図の一例を示す。
基板1300の主表面上に第1電極と第2電極とが交差してその交差部に発光素子が形成された画素部1321が設けられている。すなわち、発光性の画素がマトリクス状に配列した画素部1321が形成されている。画素数はVGA仕様であれば640×480ドット、XGA仕様であれば1024×768ドット、SXGA仕様であれば1365×1024ドット、またUXGA仕様となれば1600×1200ドットであり、第1電極及び第2電極の本数はそれに応じて設けられている。さらに、基板1301の端部であり、画素部1321の周辺部には、外部回路と接続する端子パットが形成された入力端子部が設けられている。
図12(A)で示す表示装置において、画素部には基板1300の主表面上に、左右方向に延びる第1電極1302と、その上層に形成されている発光体を含む薄膜1305(エレクトロルミネセンスで発光する媒体を含むので、以下の説明において便宜上EL層と呼ぶ)と、その上層に形成され上下方向に延びる第2電極1306とが形成され、その交差部に画素が形成されている。すなわち、第1電極1302と第2電極1306とを、行方向と列方向に形成することによりマトリクス状に画素を配設している。入力端子は、第1電極又は第2電極と同じ材料で形成している。この入力端子の数は、行方向と列方向に配設した第1電極及び第2電極の本数と同じ数が設けられている。
隔壁1304の断面形状は、第1電極1302と接する下端部から上端部にかけて曲面形状を有している。その曲面形状は、隔壁又はその下層側に中心がある少なくとも一つの曲率半径を有する形状、又は、第1電極1302と接する下端部で隔壁1304の外側に中心がある少なくとも一つの第1の曲率半径と、隔壁1304の上端部で隔壁又はその下層側に中心がある少なくとも一つの第2の曲率半径を有する形状である。その断面形状は、隔壁1304の下端部から上端部にかけて曲率が連続して変化するものであって良い。EL層はその曲面形状に沿って形成され、その曲面形状により応力が緩和される。すなわち、異なる部材を積層した発光素子において、その熱ストレスによる歪みを緩和する作用がある。
画素部1321を封止する対向基板1350がシール材1341で固着されている形態を示している。基板1301と対向基板1350との間の空間には、不活性気体が充填されていても良いし、有機樹脂材料1340を封入しても良い。いずれにしても、画素部1321における発光素子は、バリア性の絶縁膜1307で被覆されているので、乾燥材などを特段設けなくても外因性の不純物による劣化を防ぐことができる。
また、図12(A)は、画素部1321の各画素に対応して、対向基板1350側に着色層1342〜1344が形成されている。平坦化層1345は着色層による段差を防いでいる。一方、図12(B)は、基板1301側に着色層1342〜1344を設けた構成であり、平坦化膜1345の上に第1電極1302が形成されている。また、図12(B)は、図12(A)と発光方向が異なっている。なお、同一の部分には同一の符号を用いる。
また、フルカラーの表示装置に限らず、単色カラーの発光装置、例えば、面光源、電飾用装置にも本発明を実施することができる。
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1、または実施例2のいずれか一と自由に組みあわせることができる。
【実施例6】
本発明を実施して得た発光装置を表示部に組み込むことによって電子機器を作製することができる。電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図13に示す。
図13(A)はテレビであり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明は表示部2003に適用することができる。なお、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用のテレビが含まれる。
図13(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明は、表示部2102に適用することができる。
図13(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明は、表示部2203に適用することができる。
図13(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明は、表示部2302に適用することができる。
図13(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明は表示部A、B2403、2404に適用することができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
図13(F)はゲーム機器であり、本体2501、表示部2505、操作スイッチ2504等を含む。
図13(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609等を含む。本発明は、表示部2602に適用することができる。
図13(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明は、表示部2703に適用することができる。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電流を抑えることができる。
以上の様に、本発明を実施して得た表示装置は、あらゆる電子機器の表示部として用いても良い。なお、本実施の形態の電子機器には、実施の形態1乃至4、実施例1乃至5のいずれの構成を用いて作製された発光装置を用いても良い。
【実施例7】
本実施例では、第1の電極から封止までの作製を全自動化したインライン方式の製造装置の例を図14に示す。
図14は、ゲート1000a〜1000uと、搬送室1002、1004a、1014と、受渡室1011と、第1成膜室1006Hと、第2成膜室1006Bと、第3成膜室1006Gと、第4成膜室1006R、第5成膜室1006Eと、予備成膜室1006G”と、予備成膜室1006R”と、予備成膜室1006B”と、その他の成膜室1009、1010、1013と、蒸着源を設置する設置室1026R、1026G、1026B、1026R”、1026G”、1026B”、1026E、1026Hと、前処理室1003aと、シーリング室1018と、封止室1016と、封止基板ストック室1030と、基板導入室1020と、取出室1019と、を有するインライン方式の製造装置である。なお、搬送室1004aには基板1004cを搬送、または反転するための複数のアームを有する搬送機構1004bが設けており、他の搬送室も同様にそれぞれ搬送機構が設けてある。
以下、予め陽極(第1の電極)と、該陽極の端部を覆う絶縁物(隔壁)とが設けられた基板を図14に示す製造装置に搬入し、発光装置を作製する手順を示す。
まず、基板導入室1020に上記基板をセットする。基板が大型基板(例えば600mm×720mm)である場合や、通常基板(例えば、127mm×127mm)である場合に対応可能とする。基板導入室1020は、真空排気処理室と連結されており、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にしておくことが好ましい。
基板導入室にセットした基板(陽極と、該陽極の端部を覆う絶縁物とが設けられた基板)は搬送室1002に搬送する。搬送室1002内には極力水分や酸素が存在しないよう、予め、真空排気して真空を維持しておくことが好ましい。
また、カセット室にセットする前には、点欠陥を低減するために第1の電極(陽極)の表面に対して界面活性剤(弱アルカリ性)を含ませた多孔質なスポンジ(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で洗浄して表面のゴミを除去することが好ましい。また、有機化合物を含む膜を形成する前に、上記基板に含まれる水分やその他のガスを除去するために、脱気のためのアニールを真空中で行うことが好ましく、搬送室1002、もしくは前処理室1003aでアニールを行えばよい。
また、搬送室1002に設けられた基板搬送機構には、基板反転機構が備わっており、基板を適宜反転させることができる。
また、上記の真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。
また、不必要な箇所に形成された有機化合物を含む膜を除去したい場合には、前処理室1003aに搬送し、有機化合物膜の積層を選択的に除去すればよい。前処理室1003aはプラズマ発生手段を有しており、Ar、H、F、およびOから選ばれた一種または複数種のガスを励起してプラズマを発生させることによって、ドライエッチングを行う。また、陽極表面処理として紫外線照射が行えるように前処理室1003aにUV照射機構を備えてもよい。
また、シュリンクをなくすためには、有機化合物を含む膜の蒸着直前に真空加熱を行うことが好ましく、搬送室1002で、上記基板に含まれる水分やその他のガスを徹底的に除去するために、脱気のためのアニールを真空(5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4〜10Torr)で行う。
次いで、上記真空加熱を行った後、成膜室1006Hに搬送して、蒸着を行う。次いで、搬送室1002から搬送室1004aに連結された成膜室1006R、1006G、1006B、1006R”、1006G”、1006B”、1006Eへ基板を適宜、搬送して、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、または電子注入層となる低分子からなる有機化合物層を適宜形成する。
また、インクジェット法やスピンコート法などで高分子材料からなる正孔注入層を形成する成膜室を別途設けてもよい。また、基板を縦置きとして真空中でインクジェット法により成膜してもよい。
また、スピンコート法によりPEDOT/PSSを成膜した場合、全面に成膜されるため、基板の端面や周縁部、端子部、陰極と下部配線との接続領域などは選択的に除去することが好ましく、前処理室1003aでOアッシングなどで除去することが好ましい。
ここで、成膜室1006R、1006G、1006B、1006R”、1006G”、1006B”、1006E、1006Hについて説明する。
各成膜室1006R、1006G、1006B、1006R”、1006G”、1006B”、1006E、1006Hには、移動可能な蒸着源ホルダ(蒸着セル)が設置されている。即ち、上記実施の形態2の図2で示した成膜室に相当する。上記実施の形態2に示したように、蒸着の際に材料ガスを導入しながら蒸着を行う。材料ガスとして、具体的には、シラン系ガス(モノシラン、ジシラン、トリシラン等)、SiF、GeH、GeF、SnH、または炭化水素系ガス(CH、C、C、C等)から選ばれた一種または複数種を用いればよい。成膜時に意図的に材料ガスを導入し、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって高密度な膜とすることができる。材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませることによって劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングし、発光素子の信頼性を向上させることができる。
なお、この蒸着源ホルダは複数用意されており、適宜、EL材料が封入された容器(ルツボ)を複数備え、この状態で成膜室に設置されている。フェイスダウン方式で基板をセットし、CCDなどで蒸着マスクの位置アライメントを行い、抵抗加熱法で蒸着を行うことで選択的に成膜を行うことができる。なお、蒸着マスクを保管するマスクストック室を設けてもよい。
これら成膜室へEL材料の設置は、上記実施例1の図7、図8に示した製造システムを用いると好ましい。すなわち、EL材料が予め材料メーカーで収納されている容器(代表的にはルツボ)を用いて成膜を行うことが好ましい。さらに設置する際には大気に触れることなく行うことが好ましく、材料メーカーから搬送する際、ルツボは第2の容器に密閉した状態のまま成膜室に導入されることが好ましい。望ましくは、各成膜室1006R、1006G、1006B、1006R”、1006G”、1006B”、1006E、1006Hに連結した真空排気手段を有する設置室1026R、1026G、1026B、1026R”、1026G”、1026B”、1026H、1026Eを真空、または不活性ガス雰囲気とし、この中で第2の容器からルツボを取り出して、成膜室にルツボを設置する。
こうすることにより、ルツボおよび該ルツボに収納されたEL材料を汚染から防ぐことができる。なお、設置室1026R、1026G、1026B、1026R”、1026G”、1026B”、1026H、1026Eには、メタルマスクをストックしておくことも可能である。
成膜室1006R、1006G、1006B、1006R”、1006G”、1006B”、1006E、1006Hに設置するEL材料を適宜選択することにより、発光素子全体として、単色(具体的には白色)、或いはフルカラー(具体的には赤色、緑色、青色)の発光を示す発光素子を形成することができる。例えば、緑色の発光素子を形成する場合、成膜室1006Hで正孔輸送層または正孔注入層、成膜室1006Gで発光層(G)、成膜室1006Eで電子輸送層または電子注入層を順次積層した後、陰極を形成すれば緑色の発光素子を得ることができる。例えば、フルカラーの発光素子を形成する場合、成膜室1006RでR用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(R)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、成膜室1006GでG用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(G)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、成膜室1006BでB用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(B)、電子輸送層または電子注入層を順次積層した後、陰極を形成すればフルカラーの発光素子を得ることができる。
また、予備成膜室1006R”、1006G”、1006B”を利用することによって、成膜室1006R、1006G、1006Bでクリーニングを行っている間もラインを止めることなく、パネルを作製することができる。また、両方稼動させて作製パネル枚数を増やすことも可能である。
上記工程によって適宜、有機化合物を含む層を積層した後、搬送室1004a内に設置されている搬送機構により、基板を成膜室1010に搬送し、陰極を形成する。この陰極は、抵抗加熱を用いた蒸着法により形成される金属膜(MgAg、MgIn、CaF、LiF、CaNなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜、またはこれらの積層膜)である。また、スパッタ法を用いて陰極を形成してもよい。
また、上面出射型の発光装置を作製する場合には、陰極は透明または半透明であることが好ましく、上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)、或いは上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)と透明導電膜との積層を陰極とすることが好ましい。この場合、スパッタ法を用いて成膜室1009で透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)からなる膜を形成すればよい。
以上の工程で積層構造の発光素子が形成される。
また、搬送室1004aに連結した成膜室1013に搬送して窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜からなる保護膜を形成して封止してもよい。ここでは、成膜室1013内には、珪素からなるターゲット、または酸化珪素からなるターゲット、または窒化珪素からなるターゲットが備えられている。例えば、珪素からなるターゲットを用い、成膜室雰囲気を窒素雰囲気または窒素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって陰極上に窒化珪素膜を形成することができる。また、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)を保護膜として形成してもよく、別途、CVD法を用いた成膜室を設けてもよい。
次いで、発光素子が形成された基板を大気に触れることなく、搬送室1004aから受渡室1011に搬送し、さらに受渡室1011から搬送室1014に搬送する。次いで、発光素子が形成された基板を搬送室1014から封止室1016に搬送する。
封止基板は、封止基板ロード室1017に外部からセットし、用意される。なお、水分などの不純物を除去するために予め真空中でアニールを行うことが好ましい。そして、封止基板に発光素子が設けられた基板と貼り合わせるためのシール材を形成する場合には、シーリング室でシール材を形成し、シール材を形成した封止基板を封止基板ストック室1030に搬送する。なお、シーリング室1018において、封止基板に乾燥剤を設けてもよい。なお、ここでは、封止基板にシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基板にシール材を形成してもよい。
次いで、封止室1016、基板と封止基板と貼り合わせ、貼り合わせた一対の基板を封止室1016に設けられた紫外線照射機構によってUV光を照射してシール材を硬化させる。なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定されない。
次いで、貼り合わせた一対の基板を封止室1016から搬送室1014、そして搬送室1014から取出室1019に搬送して取り出す。
以上のように、図14に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封入するまで大気に曝さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。なお、搬送室1014においては、真空と、大気圧での窒素雰囲気とを繰り返すが、搬送室1002、1004aは常時、真空が保たれることが望ましい。
なお、ここでは図示しないが、基板を個々の処理室に移動させる経路を制御して自動化を実現するコントロール制御装置を設けている。
また、図14に示す製造装置では、陽極として透明導電膜(または金属膜(TiN)が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、透明または半透明な陰極(例えば、薄い金属膜(Al、Ag)と透明導電膜の積層)を形成することによって、上面出射型(或いは両面出射)の発光素子を形成することも可能である。
また、図14に示す製造装置では、陽極として透明導電膜が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、金属膜(Al、Ag)からなる陰極を形成することによって、下面出射型の発光素子を形成することも可能である。
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1のいずれか一と自由に組みあわせることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明により、材料ガスを導入しながら有機化合物膜の蒸着を行い、材料ガスの成分を有機化合物膜中に含ませ、所望の膜厚まで成膜を行うことによって、高密度な有機化合物層を形成することができる。本発明により、成膜時に意図的に材料ガスを導入することによって高密度な膜となり、劣化を引き起こす酸素や水分などの不純物が膜中に侵入、拡散することをブロッキングする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上に陽極と、該陽極に接する有機化合物を含む層と、該有機化合物を含む層に接する陰極とを有する発光素子を備えた発光装置であって、
前記有機化合物を含む層には、SIMS測定で1×1018〜5×1020個/cm−3の珪素を含有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う成膜装置であって、
前記基板が配置される成膜室には、有機化合物材料を収納する蒸着源と、該蒸着源を加熱する手段とを有し、
前記成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、且つ、材料ガスを導入しうる手段とを有していることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された成膜室とを有する製造装置であって、
前記搬送室は、マスクと基板の位置あわせを行う機能を有し、
前記基板が配置される成膜室には、有機化合物材料を収納する蒸着源と、該蒸着源を加熱する手段とを有し、
前記成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、且つ、材料ガスを導入しうる手段とを有していることを特徴とする製造装置。
【請求項4】
前記蒸着源は、成膜室内をX方向またはY方向に移動可能であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記成膜室には、前記基板を加熱する手段を有することを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一に記載の製造装置。
【請求項6】
前記材料ガスを導入しうる手段は、プラズマ発生手段によりラジカル化された材料ガスを導入する手段であることを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一に記載の製造装置。
【請求項7】
前記材料ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、SiF、GeH、GeF、SnH、CH、C、C、またはCから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一に記載の製造装置。
【請求項8】
成膜室内に配置された基板上に有機化合物を蒸着させる成膜方法であって、
前記成膜室内を1×10−3Torrよりも高真空とし、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う際、同時に材料ガスを前記成膜室に導入することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
成膜室内に配置された基板上に有機化合物を蒸着させる成膜方法であって、
前記成膜室内を1×10−3Torrよりも高真空とし、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う際、同時にラジカル化された材料ガスを前記成膜室に導入することを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記材料ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、SiF、GeH、GeF、SnH、CH、C、C、またはCから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
成膜室内に配置された基板上に有機化合物を蒸着させる成膜方法であって、
前記成膜室内を1×10−3Torrよりも高真空とし、基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物材料を蒸着させて前記基板上に成膜を行う際、同時にプラズマによってイオン化された材料を蒸発させて前記有機化合物材料と化学的に付着させながら基板上に成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
蒸着源を備えた成膜室内に付着した有機化合物を除去するクリーニング方法であって、
成膜室内にプラズマを発生させる、或いは成膜室内にプラズマによってイオン化されたガスを導入して内壁、または該内壁に成膜されることを防止する付着防止手段、またはマスクをクリーニングし、真空排気手段により排気することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項13】
前記プラズマは、Ar、H、F、NF、またはOから選ばれた一種または複数種のガスを励起して発生させることを特徴とする、請求項12に記載のクリーニング方法。

【国際公開番号】WO2004/054325
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558424(P2004−558424)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015617
【国際出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】