説明

発光装置及びその製造方法

【課題】発光素子と蛍光体とを用いた光の取り出し効率の高い発光装置を提供すること
【解決手段】発光素子と、その発光素子を配置する支持体と、蛍光体を含有し少なくとも発光素子の表面を被覆するコーティング層と、を備えた発光装置において、発光素子は、支持基板と、該支持基板の一方の主面上に設けられた接合層と、p型窒化物半導体層と、活性層と、1層以上のn型窒化物半導体層とから構成された積層体を含み、n型窒化物半導体層の露出面は、凹凸形状を有しており、コーティング層は、少なくともその凹凸形状を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用光源、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ、各種センサー及び各種インジケータなどに利用される発光装置およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム系化合物半導体を用いて構成された発光素子チップと蛍光体とを組み合わせた、白色光の発光が可能な発光装置(白色発光装置)が開発され、使用されるようになってきている。この発光装置は、発光素子から出力される青色の光の一部を蛍光体により波長変換して、その波長変換された光と発光素子チップからの青色の光との混色により、白色系の混色光を発光させるものである。
【0003】
従来は、発光素子がマウントされたパッケージ等を、蛍光体を含む樹脂でモールドすることにより作製することが一般的であった。また、発光素子の基板面と支持体上面とを有機系の熱硬化性樹脂を用いて接着し固定(ダイボンド)することが一般的であった。
【0004】
例えば、特開2001−144331では、発光素子とリードフレームの間をエポキシ樹脂の中に銀を分散させた銀ペーストによって接着している。また、発光素子がマウントされたカップに、蛍光体を分散したエポキシ樹脂を充填することにより、白色発光素子が構成されている。
【0005】
また、特開2000−183408では、発光素子をリードフレームに固定した後、青色発光蛍光体を有するプレディップ材用の熱硬化性樹脂と、黄橙色発光蛍光体を含有するプレディップ用の熱硬化性樹脂を順に塗布し、熱硬化性樹脂を硬化することによって、白色発光素子が構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−144331
【特許文献2】特開2000−183408
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の白色の発光装置は、蛍光体を含むモールド樹脂を用いて構成しているので、より波長の短い光を用いたり、高い発熱を伴う高出力の光を用いるとモールド樹脂が劣化あるいは変色する。
【0008】
また、従来の白色の発光装置は、発光素子の下面と支持体上面とを有機系の樹脂を用いて接着しているので、より波長の短い光を用いたり、高い発熱を伴う高出力の光を用いると接着用の樹脂が劣化して接着強度の低下を引き起こす。
【0009】
このために、青色より短い波長を含む光を発光する発光素子を用いて十分な信頼性を有する発光装置を構成することが困難であった。
【0010】
また、従来の白色の発光装置は、コーティング層であるモールド樹脂の厚み(蛍光体の量)が発光装置表面の各部分で異なり、発光素子からの光量、蛍光体からの光量が部分的に異なっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の目的は、青色より波長の短い光を発光する発光素子と蛍光体とを用いた、信頼性の高い発光装置とその製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、各方位における色度のずれや、発光観測面から見ての色調むらを極めて小さな発光装置を提供することにある。
【0013】
本件発明の第1の側面によれば、本件発明の発光装置は、発光素子と、その発光素子を配置する支持体と、蛍光体を有し少なくとも前記発光素子の表面を被覆するコーティング層と、を備えた発光装置であって、前記発光素子が、支持基板と、該支持基板の一方の主面上に設けられた接合層と、該接合層の上に設けられた1層以上のp型窒化物半導体層と、該p型窒化物半導体層の上に設けられた活性層と、該活性層の上に設けられた1層以上のn型窒化物半導体層とから構成された積層体を含む発光素子であり、前記n型窒化物半導体層の露出面は、凹凸形状を有しており、前記コーティング層は、少なくとも前記凹凸形状を被覆することを特徴とする
【0014】
コーティング層が、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上を有する酸化物を主成分とする無機物から成ることが好ましく、それにより、蛍光体同士をバインドして、発光素子上に結着させる。これにより、発光素子からの比較的高いエネルギー光が高密度に照射された場合でも、コーティング層が変色劣化することがなくなる。従って、本発明により高輝度、長時間の使用においても、発光効率の低下が極めて少ない発光装置とすることができる。
【0015】
前記コーティング層は、前記酸化物を主たる組成とし、その酸化物中に前記水酸化物を含むことが好ましい。また、前記水酸化物は、前記酸化物と同一の金属元素を含んでいること、即ち、この水酸化物が、前記酸化物が脱水縮合反応によって形成される時の中間体が残存したものであることが好ましい。コーティング層に水酸化物が微量に含まれていることにより、コーティング層の表面に極性のヒドロキシル基が存在することになり、モールド樹脂等との密着性が向上する。
【0016】
また、前記コーティング層は、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む有機金属化合物(より好ましくは、さらに酸素元素を含む有機金属化合物)を有することが好ましい。この有機金属化合物は、前記酸化物の合成出発物質であって、未反応分として残存したものとすることができる。前記コーティング層が上記有機金属化合物を含むことにより、コーティング層を樹脂によってモールドする場合であっても、コーティング層上にモールド部材を接着性よく形成することができる。
【0017】
前記コーティング層中において、前記蛍光体粒子の周囲を、前記酸化物を主成分とする無機粒子が取り囲んでいることが好ましい。好ましくは、平均粒子径が3〜10μmの蛍光体粒子が、平均粒子径が3〜10nm、より好ましくは1〜20nmの無機微粒子によって取り囲まれるようにする。コーティング層中の酸化物が微粒子となっていることにより、コーティング層が熱応力を緩和し易くなり、コーティング層へのクラック発生等を有効に防止できる。また、コーティング層内に入った光は、蛍光体を囲む無機微粒子によって散乱されるため、蛍光体による波長変換が効率良く行われる。
【0018】
また、前記コーティング層は、前記発光素子の上面、側面および角の上における厚みが略等しいことが好ましい。これにより、発光素子から放出された光の光路長差が比較的等しく均一な発光特性を得ることができる。従って、高輝度、長時間の使用においても各方位における色ずれ、発光効率の低下が極めて少ない発光装置とすることができる。また、発光面における色むらや発光装置ごとのバラツキのきわめて少なくすることができる。
【0019】
また、前記コーティング層は、前記支持体表面と前記発光素子表面全体とを被覆する連続した層であり、且つ、前記発光素子の上面、側面および角の上に配置されたコーティング層の厚みと、前記支持体表面に配置されたコーティング層の厚みとが略等しいことが好ましい。支持体上にもコーティング層が形成されていることにより、コーティング層全体が発光素子及び支持体から剥離しにくくなる効果がある。さらに、支持体上にも蛍光体を含むコーティング層が形成されていることにより、モールド部材中を乱反射している波長変換されていない光が、支持体上のコーティング層によって波長変換される確率が向上する。
【0020】
また、前記コーティング層が、少なくとも2層から成り、各層の光屈折率が前記発光素子を構成する窒化物半導体の光屈折率よりも小さく、かつ、各層の光屈折率が前記発光素子から離れるに従って次第に小さくなっていることが好ましい。このような構成にすることにより、発光素子とコーティング層の界面や、コーティング層と外気(又はモールド樹脂)との界面における、急激な屈折率の変化を防止することができる。従って、それらの界面における光反射を抑制して、光の取り出し効率を高めることができる。
【0021】
前記発光素子が接着層を介して前記支持体上面に固定されている場合、その接着層は、前記コーティング層と同様の材料からなることが好ましい。即ち、接着層が、上記コーティング層と同じ材料候補の中から選定された無機材料からなることが好ましい。さらに好ましくは、接着層とコーティング層が同一の材料から成る。接着層がコーティング材料と同様の材料であることにより、青色または青色より短い波長の光を出光する発光素子を使用しても、コーティング層と接着層が劣化や変色を起こさない。このため、信頼性の高い発光装置とすることが可能である。
【0022】
また、前記接着層は、前記酸化物および前記水酸化物の粒子を含むことが好ましい。接着層が、無機物を主成分とする粒径数ナノメートルの粒子が多数密集することによって形成されている場合、それらの粒子間には隙間が存在する。従って、接着層に急激な温度変化が加わっても、それぞれの粒子が膨張あるいは収縮することができるため、全体として熱応力による大きな影響を受けない。これに対し、支持体材料と熱膨張係数が大きく異なる溶融ガラスや樹脂によって発光素子を接着した場合には、熱応力によって接着層の剥離やひび割れ等が生じやすい。本件発明による発光装置は、急激な温度変化が加わる状況下で使用しても、信頼性を維持することが可能である。
【0023】
前記接着層は、前記発光素子の側面に連続して延材していることが好ましい。このことにより、支持体上にダイボンドされた発光素子は、ダイボンドされた位置からズレ動くことがない。また、発光素子の側面に延材して形成された接着層と、後から発光素子上に形成されるコーティング層とが、発光素子の側面において接触し、密着する。特に、接着層とコーティング層を同じ有機金属化合物を出発原料として形成した場合と、同一種類の物質を多く含むようになるため、密着性が向上する。従って、該コーティング層が発光素子上から剥離するのを防ぎ、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0024】
前記発光素子は、主発光ピークを350nmから530nmとし、且つ前記蛍光体を、主発光波長が前記発光素子の主発光ピークよりも長いものとすることが好ましい。本件発明の発光装置では、紫外線によって励起される蛍光体を使用することも可能である。また、青色または青色より短い波長の光を使用してもコーティング層および接着層は劣化、変色しないため、信頼性の高い発光装置となる。
【0025】
前記蛍光体を、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とすることにより、発光色が白色系の混色光の発光装置を構成できる。従って、発光色のばらつきの少ない白色発光装置を提供できる。
【0026】
また、前記発光素子が紫外領域の光を発光する場合、コーティング層に含有させる蛍光体は、
(1)Ca10(POFCl:Sb,Mn
(2)M(POCl:Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)
(3)BaMgAl1627:Eu
(4)BaMgAl1627:Eu、Mn
(5)3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn
(6)YS:Eu
(7)MgAs11:Mn
(8)SrAl1425:Eu
(9)(Zn、Cd)S:Cu
(10)SrAl:Eu
(11)Ca10(POClBr:Mn、Eu
(12)ZnGeO:Mn
(13)GdS:Eu、及び
(14)LaS:Euからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの蛍光体を選択することにより、より発光効率の高い発光装置とすることができる。
【0027】
前記支持体は、発光素子のリード電極から絶縁されていることが好ましい。発光素子は、発光に必要な電力をワイヤから供給され、リード電極を流れる電流による悪影響を受けることが少なく、ノイズ等を発生させることがないため、信頼性の高い発光装置を形成することが可能である。また、支持体がリード電極から絶縁されていない場合、例えば、リード電極自身が支持体となって、発光素子をリード電極に固着された場合、もう一方のリード電極と発光素子を結ぶワイヤが、支持体となっているリード電極とショートを起こし易く、製造歩留まりを低下させる原因となる。従って、本発明のように、正負両方のリード電極から絶縁された支持体上に発光素子を固着させることにより、製造歩留まりを向上させることができる。
【0028】
本件発明の第2の側面によれば、本件発明の発光装置の製造方法は、発光素子と、その発光素子を配置する支持体と、蛍光体を有し少なくとも前記発光素子の表面を被覆するコーティング層と、を備えた発光装置の製造方法であって、支持基板の一方の主面に接合層を設け、前記接合層の上に1層以上のp型窒化物半導体層を設け、前記p型窒化物半導体層の上に活性層を設け、前記活性層の上に1層以上のn型窒化物半導体層を設け、前記n型窒化物半導体層の露出面に凹凸形状を形成することにより前記発光素子を形成する工程と、前記支持体上に前記発光素子を配置する工程と、前記n型窒化物半導体層の露出面に形成された前記凹凸形状を含めて前記発光素子表面を前記コーティング層で被覆する工程と、を備えることを特徴とする。コーティング層は、SiO、Al、ZrO、Y及びMSiO(なお、Mは、Zn、Ca、Mg、Ba、Srから成る群から選択される少なくとも1種)から成る群から選択される少なくとも1種である酸化物を主たる組成とすることが好ましく、さらに、前記酸化物を主たる組成とし、前記酸化物と同一の金属を含む水酸化物を含むことが一層好ましい。また、前記コーティング層の被覆工程は、(1)Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む(好ましくはさらに酸素を含む)有機金属化合物、有機溶剤、及び蛍光体とを含む塗布液を調整する第1の工程と、
(2)前記塗布液を発光素子表面および支持体表面に塗布する第2の工程と、
(3)前記塗布液を乾燥させ、前記蛍光体を固着させる第3の工程とを有することが好ましい。
【0029】
本件発明の製造方法により、紫外線によって劣化しない無機物で蛍光体をバインドした発光装置を製造することができる。
【0030】
前記第1の工程において、前記有機溶剤が沸点100℃以上200℃以下の有機溶剤であることが好ましい。このような有機溶剤であれば、有機金属化合物等の凝固物が発生しにくいため、作業性を向上して塗布することが可能である。
【0031】
また、前記有機金属化合物の溶液が、前記第1の工程において、粘度2.5〜500cps(25℃)の加水分解溶液であることが好ましい。従来は、蛍光体等を混合した塗布液に水分が多く含まれていたため、発光素子の表面状態が悪化し、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼしていた。そこで、発光素子に悪影響を及ぼす水分を殆ど含まないゾル状態の塗布液を予め作製し、それを発光素子表面に塗布し、加熱してコーティング層(主として非晶質)を形成する。こうすれば、発光素子の金属表面の状態を悪化させることなく、蛍光体がバインドされてなるコーティング層を容易に形成することができる。
【0032】
前記第1の工程において、前記塗布液の酸濃度が、20〜500ppmであることが好ましい。これにより、発光素子の金属表面の状態を悪化させることがないため、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼすことなく発光装置を製造することができる。
【0033】
前記第2の工程において、前記支持体上に配置された発光素子を加温した状態で、前記発光素子の上方から前記蛍光体を含有した塗布液を霧状で且つ螺旋状に回転させながら吹き付けても良い。この方法によれば、発光むらがなく、且つ大量に均一発光可能な発光装置を、歩留まりよく形成させることができる。この場合、前記発光素子は50℃以上300℃以下で加温することが好ましい。
【0034】
また、発光素子を加温しながら塗布液を吹き付けることにより、コーティング層内において加水分解物のゲル化及び粒子化を促進することができる。塗布液に含まれる有機金属化合物を微粒子の酸化物とするためには、塗布液を素早く乾燥する必要がある。発光素子が加温され、しかも塗布液が霧状に供給されることにより、塗布液が素早く乾燥し、コーティング層内に酸化物の微粒子が形成され易くなる。コーティング層内に好ましい大きさの微粒子を形成するためには、発光素子を少なくとも50℃以上200℃以下、好ましくは70℃以上120℃以下に加熱しながら、塗布液を吹き付けることが望ましい。
【0035】
前記第1の工程において、前記有機金属化合物がメチルシリケート、エチルシリケート、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムエトキサイド、およびアルミニウムブトキサイドから選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの材料は、紫外線によって劣化しにくい。
【0036】
本件発明の第3の側面によれば、本発明の発光装置は、基板上に窒化ガリウム系化合物半導体が積層されてなる発光素子と、前記発光素子を接着層を介して支持する支持体を備えた発光装置において、前記接着層は、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む酸化物と、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む水酸化物とを有することを特徴とする。
【0037】
この発明によれば、無機物にて接着層を形成し、金属パッケージ等の支持体に発光素子をダイボンドするため、青色より短い波長の光や高出力の光を発光する発光素子と組合せても、発光素子の発光やそれに伴う温度上昇によって接着層が劣化あるいは変色しない。従って、信頼性の高い発光装置とすることが可能である。
【0038】
前記接着層は、前記酸化物および前記水酸化物の粒子を含むことが好ましい。接着層が、無機物を主成分とする粒径数ナノメートルの粒子が多数密集することによって形成されると、粒子間には隙間が存在する。従って、接着層に急激な温度変化が加わっても、それぞれの粒子の体積が膨張あるいは収縮し、接着層全体として熱応力による大きな影響を受けない。これに対し、従来のように、支持体材料と熱膨張係数が大きく異なる溶融ガラスや樹脂によって発光素子を接着した場合は、熱応力によって接着層の剥離やひび割れ等が生じやすい。従って、本件発明による発光装置は、急激な温度変化が加わる状況下で使用しても、信頼性を維持することが可能である。尚、前記酸化物及び水酸化物を含む微粒子の粒子径は、好ましくは1〜20nmであることが望ましい。
【0039】
前記接着層は、前記発光素子の側面に連続して延材していることが好ましい。これにより、支持体上にダイボンドされた発光素子は、ダイボンドされた位置からズレ動くことがないため、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0040】
本件発明の発光装置では、前記発光素子の主発光ピークを、250nmから530nmとすることができる。青色より短い波長の光を発光する発光素子を使用した場合であっても、接着層がそれらの光に対して劣化あるいは変色せず、また、高出力な光とそれに伴う高温に対しても劣化あるいは変色しない。従って、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0041】
前記接着層が、少なくとも前記酸化物又は前記水酸化物より熱伝導率が高いフィラーを有することが好ましい。接着層にそのようなフィラーを含有することにより、高出力な光に伴う高温に対しても放熱効果の高い発光装置とすることができる。
【0042】
本件発明の第4の側面によれば、本件発明の発光装置の製造方法は、基板上に窒化ガリウム系化合物半導体が積層されてなる発光素子と、その発光素子の基板面を接着層を介して支持する支持体を備えた発光装置の製造方法であって、
(1)Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素と酸素元素とを含む有機金属化合物と有機溶剤とを含む接着液を、粘度が2.5〜500cps(25℃)、酸濃度が20〜500ppmの加水分解溶液に調整する第1の工程と、
(2)前記接着液を前記支持体上面に供給し、前記接着液の上に前記発光素子を載置する第2の工程と、
(3)前記接着液を50℃以上300℃以下の温度で乾燥させ、前記支持体上面と前記基板面を接着させる第3の工程とを有することを特徴とする。
【0043】
この発明によれば、無機物により支持体上にダイボンドされた発光装置を容易に提供することができる。この発明によって製造された発光装置は、発光素子から青色より短い波長の光や高出力な光が照射されても、接着層がそれらの光や熱によって劣化あるいは変色しない。従って、有機物を含む従来の樹脂にてダイボンドされる発光装置と比較して、信頼性の高い発光装置を製造できる。また、接着液の酸濃度が20〜500ppmに調整されているため、金属パッケージ表面に供給しても表面は酸やアルカリによる損傷を受けることがない。さらに、前記接着液は50℃以上300℃以下の温度で非晶質化するため、発光素子は載置された位置からズレ動きにくい。
【0044】
尚、接着液を加温して固化することにより、接着液内の加水分解物のゲル化及び粒子化を促進することができる。接着液に含まれる有機金属化合物を微粒子の酸化物とするためには、接着液を素早く乾燥する必要がある。接着液を加温することにより、塗布液が素早く乾燥され、接着層内に酸化物の微粒子が形成され易くなる。接着層内に好ましい大きさの微粒子を形成するためには、接着液を少なくとも150℃以上、好ましくは200℃以上に加熱することが望ましい。
【0045】
前記第2の工程において、ゾル状態の加水分解溶液を接着液として支持体上面の所定の位置に適量スタンピングあるいはディスペンスした後、発光素子を上方から加圧しながらダイボンドすることが好ましい。これにより、発光素子の側面にも接着液が延材するため、発光素子がダイボンドされた位置からズレ動くことのない、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0046】
また、本第3の工程によって形成される接着層は、無機物を主成分とする粒径数ナノメートルの粒子が密集することによって形成され、粒子間には隙間が存在することが好ましい。これにより、接着層に急激な温度変化が加わっても、それぞれの粒子の体積が膨張あるいは収縮するため、熱応力の影響を緩和することができる。そのため、支持体材料と熱膨張係数が大きく異なる溶融ガラスや樹脂によって発光素子を接着した場合と異なり、接着層の剥離やひび割れ等が生じにくい。
【0047】
前記第1の工程において、前記有機溶剤が沸点100℃以上200℃以下の有機溶剤であることが好ましい。このような高沸点の有機溶剤は、常温で液体として存在しているため、接着液が乾燥してSiO等の凝固物が生じることを抑制できる。従って、ディスペンス装置の吐出口の先端部、スタンピング装置の印加バリの先端部などに凝固物が付着して、接着液の供給量が変動することを防止できる。
【0048】
前記第1の工程において、前記有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属ジケトナート、カルボン酸金属塩から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これにより、ダイボンドの接着層を紫外線等によっても劣化しない無機物とすることができる。
【0049】
前記第1の工程において、前記接着液が、接着液を構成する酸化物よりも熱伝導率が高いフィラーを有することが好ましい。フィラーを含有させることにより、高出力な光に伴う高温に対しても放熱効果の高い発光装置を製造することができる。
【0050】
本件発明の第5の側面によれば、本件発明の発光装置の製造方法は、支持体上に配置された発光素子と、該発光素子からの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光する蛍光体と、該蛍光体を保持し、前記支持体表面から前記発光素子表面全体を被覆するコーティング層と、を有する発光装置の製造方法であって、
(1)前記支持体上に発光素子を配置する工程と、
(2)前記支持体上に配置された発光素子を加温した状態で、前記発光素子の上方から前記蛍光体を含有した塗布液を霧状で且つ螺旋状に回転させながら吹き付けることを特徴とする発光装置の製造方法である。
【0051】
この製造方法は、本件発明における無機材料からなるコーティング材料だけでなく、従来の有機樹脂からなるコーティング材料にも適用できる。例えば、フッ素樹脂(PTFE)やシリコーン樹脂に蛍光体を含有するコーティング層を形成する場合にも適用できる。
【0052】
発光観測面における色調むらや発光装置ごとのバラツキは、コーティング層形成時にコーティング層中に含まれる蛍光体の平面分布における傾きが生ずることにより生ずると考えられる。コーティング層は蛍光体を含有させた樹脂を先の細いノズルの如き管から吐出させることによって所望のカップ上に配置させることができるが、バインダー中に含有された蛍光体を発光素子の上に等量均一且つ、高速に塗布させることは極めて難しい。また、バインダーの粘度やコーティング層と接するパッケージ表面などとの表面張力により、最終的に形成されるコーティング層の形状が一定しない。コーティング層の厚み(蛍光体の量)が部分的に異なり、発光素子からの光量、蛍光体からの光量が部分的に異なる。そのため発光観測面上において部分的に発光素子からの発光色が強くなったり、蛍光体からの発光色が強くなり色調むらが生ずる。また、発光装置ごとのバラツキが生ずると考えられる。塗布液を霧状に吹き付ける本発明の製造方法によれば、発光素子の上とそれ以外に形成される蛍光体が均一に配置させることができ、色調むらや指向性などを改善させることができる。
【0053】
塗布液を霧状に吹き付けるには、例えば、スプレー装置を使用することができる。しかし、発光素子上面に垂直に向かうガスの流れに乗せて霧状の塗布液を噴出させると、発光素子側面が塗布液の噴出方向に平行であるため、塗布開始直後、霧状の塗布液は発光素子側面を素通りする。また、導電性ワイヤの陰になる発光素子表面上には塗布されにくく、導電性ワイヤの陰にならない発光素子表面上とコーティング層の厚みが異なっていた。そのため、発光素子の全面を被覆しようとすれば、発光素子あるいはノズルを回転させて塗布液の噴出方向に発光素子の全面を向けるか、発光素子を搭載している支持体表面への塗布を繰り返して形成される厚いコーティング層で発光素子の側面を被覆しなければならなかった。従って、発光素子の角から側面を作業性良く塗布することができず、発光素子表面全体を被覆するコーティング層の厚さが発光素子の上面および側面で異なっていた。さらに、高速で霧状の塗布液が吹き付けることにより、発光素子の正負一対の電極と外部電極とを結ぶ導電性ワイヤが変形したり、断線するなどの問題があった。
【0054】
本発明では、塗布液とガスとをノズルを通して螺旋状に噴出する。この装置のノズルの周囲にはガスの噴出口が数カ所設けられており、それらの噴出口から噴出するガスの噴出方向は、塗布される面に対してそれぞれある一定の角度を付けられている。したがって、塗布液の噴出口を中心に回転しているそれらのガス噴出口に同時にガスが送り込まれると、それぞれの噴出口から噴出するガスを集めた全体のガスの流れは、渦巻き状の流れ、螺旋状の流れ、あるいは竜巻における空気の流れを逆さまにしたような流れとなる。また、この装置のノズルの中心には塗布液の噴出口が設けられており、ガスの噴出と同時に塗布液を噴出すると、霧状となった塗布液が、螺旋状の流れ、あるいは竜巻における空気の流れを逆さまにしたようなガスの流れに乗って拡散していく。
【0055】
この製造方法によれば、蛍光体を保持するコーティング層を均一な厚みに形成することができる。従って、各方位における色度のずれや、発光観測面から見た色調むらを極めて小さくし、波長変換の効率を向上した発光装置を製造することができる。
【0056】
前記螺旋状の径は、前記発光素子上方の噴射開始点から前記発光素子の表面に近づくにつれて大きいことが好ましい。これにより、作業性を向上させ、かつ各方位における色度のずれや、発光観測面から見ての色調むらを極めて小さくし、波長変換の効率を向上した発光装置を提供することができる。
【0057】
前記発光素子上方の噴射開始点から前記発光素子の表面に近づくにつれて、前記塗布液の回転速度を減少させることが好ましい。これにより、塗布液に含まれる蛍光体粒子によって発光素子表面が衝撃を受けることがなく、かつ各方位における色度のずれや、発光観測面から見ての色調むらを極めて小さくし、波長変換の効率を向上した発光装置を提供することができる。
【0058】
さらに、本発明による発光装置の製造方法においては、複数の発光素子が配置されたパッケージ上に蛍光体を固着させることにより、一度に大量の発光装置を量産性良く形成させることができる。発光素子上に配置される蛍光体の量がきわめて少量であっても蛍光体の量(コーティング層の厚み)を均等に制御させることができる。そのため、よりバラツキの少ない発光装置を形成させることができる。
【発明の効果】
【0059】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、無機物によりバインドされた蛍光体を有する発光装置を構成できるので、長時間使用しても発光色のバラツキの少ない発光装置を提供できる。
【0060】
また、コーティングの厚みが発光素子の上面、側面および角の部分でほぼ均一な本発明の発光装置とすることにより各方位による色度のずれが極めて少なく、発光観測面から見て色調ずれがない発光装置とさせることができる。さらに、歩留まりの高い発光装置とすることができる。
【0061】
SiO等の無機物にて接着層を形成し、パッケージ等の支持体に発光素子をダイボンドすると、有機物を含む従来の樹脂を使用してダイボンドすることにより形成される発光装置と比較して、青色より短い波長の光を含む光を発光する発光素子をダイボンドしても、接着層がそれらの光に対して劣化あるいは変色せず、また、高出力な光とそれに伴う高温に対しても劣化あるいは変色しないため、信頼性の高い発光装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本件発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0063】
実施の形態1.
図1および図2に本発明の方法によって製造した発光装置の一例を示す上面図及び断面図である。図1及び図2において、
発光素子であるLED101は、金属製のパッケージ105に実装されている。パッケージ105は、中央部に凹部aを有する。また、前記凹部aの周囲であるベース部bは、厚さ方向に貫通された貫通孔を2つ有し、それぞれの貫通孔は前記凹部aを挟んで対向している。該貫通孔内には、絶縁部材である硬質ガラス103を介して正及び負のリード電極102がそれぞれ挿入されている。また、金属パッケージ105の主面側に、透光性窓部107と金属部からなるリッド106が設置されており、リッド106の金属部と金属パッケージ105の接触面を溶接することによって、窒素ガスとともにパッケージ内の発光素子等が気密封止されている。凹部a内に収納されるLEDチップ101は、青色光または紫外線を発光する発光素子であり、LEDチップ101と金属パッケージ105との接着は、エチルシリケートの加水分解溶液を乾燥焼成して得られる接着層110を介して行われている。
【0064】
さらに、図2に示されるように、リード電極102から絶縁された凹部a内にて、発光素子の上にAlによりCCA−Blue(化学式、Ca10(POClBr、付活材Mn、Eu)蛍光体がバインドされてなるコーティング層109を形成し、その上にSiOによりイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体がバインドされてなるコーティング層108が形成されている。
【0065】
以下、図面を参照しながら本発明の構成部材について詳述する。
【0066】
[コーティング層108、109]
本実施の形態に用いられるコーティング層108、109は、酸化物(SiO、AlO3)を主成分とする。コーティング層は、モールド部材とは別にマウント・リードのカップ内やパッケージの開口部内などに設けられるものであり、LEDチップ101の発光を変換する蛍光体及び蛍光体を結着する材料を含む層である。
【0067】
パッケージなどによる反射により、LEDチップから放出される高エネルギー光などがコーティング層108及び109中で高密度になる。さらに、蛍光体によっても反射散乱され、コーティング層108及び109内は高密度の高エネルギー光に曝される。Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上有する酸化物は、耐光性が高いため、それらを結着剤あるいはバインダとして利用することによって発光装置の信頼性が向上する。
【0068】
コーティング層108及び109は、図2に示すように、前記発光素子101の上面、側面および角の上における厚みが略等しくなっている。これにより、発光素子から放出された光の光路長差が比較的等しく均一な発光特性を得ることができる。従って、高輝度、長時間の使用においても各方位における色ずれ、発光効率の低下が極めて少ない発光装置とすることができる。また、発光面における色むらや発光装置ごとのバラツキのきわめて少なくすることができる。
【0069】
また、コーティング層108及び109は、チップ101の側面において、同様の無機材料から成る接着層110と接合している。このため、コーティング層108及び109は、チップ101に強固固定され、剥離しにくい。
【0070】
また、前記コーティング層108及び109は、各々SiO2及びAl2O3から成るため、発光素子101を構成する窒化物半導体よりも光屈折率が小さく、かつ、発光素子101から離れるに従って光屈折率が次第に小さくなっている。従って、発光素子101とコーティング層109の界面や、コーティング層108と外気との界面における、急激な屈折率の変化が抑制され、効率良く光が取り出される。
【0071】
また、コーティング層108及び109中において、蛍光体粒子の周囲を、SiO又はAlを主成分とする粒子が取り囲んでいる。平均粒子径が3〜10μmの蛍光体粒子が、平均粒子径が1〜20nmの無機微粒子によって取り囲まれている。コーティング層中の酸化物が微粒子となっていることにより、コーティング層が熱応力を緩和し易くなり、コーティング層へのクラック発生等を有効に防止できる。また、コーティング層108及び109内に入った光は、蛍光体を囲む無機微粒子によって散乱されるため、蛍光体による波長変換が効率良く行われる。
【0072】
コーティング層の具体的主材料の一つとしては、SiO2、Al23、MSiO3(なお、Mとしては、Zn、Ca、Mg、Ba、Sr、Zr、Y、Sn、Pb、などが挙げられる。)などの透光性無機部材に蛍光体を含有させたものが好適に用いられる。これらの透光性無機部材により蛍光体同士が結着され、さらに蛍光体は層状にLEDチップや支持体上に堆積され結着される。本発明において、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、あるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む酸化物及び水酸化物は、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、あるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む有機金属化合物(好ましくはさらに酸素を含む)により生成される。ここで、有機金属化合物には、アルキル基,アリール基を含む化合物等が含まれる。このような有機金属化合物として、例えば金属アルコキシド、金属ジケトナート、金属ジケトナート錯体、カルボン酸金属塩等が挙げられる。このような有機金属化合物のうち常温で液体の有機金属化合物を使用すれば、有機溶剤を加えることによって、作業性を考慮した粘度調節や、有機金属化合物等の凝固物の発生防止が容易にできるため作業性を向上させることができる。また、このような有機金属化合物は加水分解等の化学反応を起こしやすいため、容易に、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、あるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む酸化物により蛍光体がバインドされてなるコーティング層を形成させることが可能である。そのため、有機金属化合物を使う方法は、350℃以上の高温下あるいは静電気のかかっている状態でLEDにコーティング層を形成させる他の方法とは異なり、LEDの発光素子としての性能を低下させることなく容易にLEDチップ上にコーティング層を形成させることができ、製造歩留まりが向上する。
【0073】
以下、コーティング層に含まれる具体的主材料として、SiO2、Al23を例にとり説明する。
【0074】
(SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層108)
SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、アルキルシリケートと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるシリカゾル中に蛍光体(粉体)を均一に分散させた塗布液を調整して、その蛍光体が分散されたシリカゾルを発光素子の全面を覆うようにスプレーコーティングあるいはディスペンス他した後、SiO2成分により蛍光体同士を固着させ、さらに発光素子表面に固着させることにより形成することができる。
【0075】
コンクリートの補強剤、プラスチックの顔料、あるいは表面コーティング剤等に使用されるアルキルシリケートは、以下のような一般式で表される単量体(モノマー)が加水分解してさらに縮重合したものである。ここで、Rはアルキル基であり、メチル基の場合メチルシリケート、エチル基の場合エチルシリケート、n−プロピル基の場合N−プロピルシリケート、n−ブチル基の場合N−ブチルシリケートとなる。
【0076】
【化1】

【0077】
アルキルシリケートの一種であるエチルシリケートは、次の図のような構造をもち、主に四塩化ケイ素とエタノールとの反応、あるいは金属ケイ素とエタノールとの反応から合成される無色透明の液体である。即ち、上記一般式において、Rをエチル基とした構造式によって示される単量体(モノマー)が、加水分解してヒドロキシル基(OH基)を含む分子(中間体としてシラノールの単量体等が挙げられる)となり、さらにヒドロキシル基(OH基)を含む分子同士から水分子(HO)が取れて縮合し、SiがO(酸素原子)を介して繋がったシロキサン結合が生成して、次の図のような構造となる。
【0078】
【化2】

【0079】
エチルシリケートの溶液を触媒の存在下で水と反応させると以下のように加水分解反応を起こして、溶液はSiOの微粒子が溶解したゾルとなり(ゾル化)、さらに自然乾燥して溶液濃度が高くなりゲル(ゲル化)となる。反応が進行するに従って粘度が高くなるが、形成するコーティング層の厚み、作業性等を考慮して反応の進行を調節する。
【0080】
加水分解反応は、中性条件では極めて緩やかに進行するが、触媒として酸または塩基が存在すると発熱を伴い急速に進行する。塩基性触媒を使用する場合、得られる加水分解溶液は不安定で過度のゲル化を起こしやすく作業性を低下させるため、本実施の形態では塩酸等の酸性触媒を少量使用し、長時間かけて加水分解反応を起こさせる。
【0081】
【化3】

【0082】
エチルシリケートの加水分解反応は温度が高いほど速く進行し、生成物のエタノールが除去されるとそれはさらに進行し易くなる。また、エチルシリケートの加水分解を進行させて生成するゲルを加熱するとSiO(主として非晶質)が形成される。従って、エチルシリケートの加水分解溶液に蛍光体を含有させて発光素子の表面上、および発光素子の表面上以外の支持体上に塗布し、加熱すると、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の表面上等に形成することができる。特に本実施の形態において、予めエチルシリケートをゾル状態の加水分解溶液とし、該加水分解溶液に蛍光体を含有させた後、発光素子表面に塗布する。従来の方法では、蛍光体等を混合した塗布液に水分が多く含まれていたため、それを塗布すると発光素子の表面状態が悪化し、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼしていた。そこで、本実施の形態における方法によると、ゾル状態のエチルシリケート加水分解溶液は水分を殆ど含まず、加熱されるだけで非晶質のSiOを形成するため、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼすことなく、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の表面上等に容易に形成することができる。
【0083】
尚、反応条件を適宜調整することにより、コーティング層中に、SiO生成の中間体であるSi(OH)や、出発物質であるエチルシリケート、エタノールを微量に含ませることができる。コーティング層にSi(OH)などの無機物、および未反応のエチルシリケートやエタノールなどの有機物が微量に存在することにより、コーティング層表面には、ヒドロキシル基のような極性をもつ官能基や、エチル基などの疎水基(親油基)が存在する。このような官能基の存在により、コーティング層の上に、フッ素樹脂のような極性を有する疎水性材料、あるいは分子構造の末端にヒドロキシル基を有する樹脂材料をモールド部材として使用した場合には、コーティング層表面とモールド部材との馴染み、あるいは濡れ性がよいため、少量のモールド部材を使用しても、コーティング層上にモールド部材を接着性よく配置することができる。
【0084】
また、コーティング層及び接着層にSiO、Si(OH)などの無機物が多量に存在することにより、紫外線による劣化を防ぐことができるだけでなく、LEDチップあるいはパッケージの金属表面との馴染み、あるいは濡れ性がよい(SiO、Si(OH)などと金属イオンとの静電気的な結合が生じていると考えられる)ため、コーティング層あるいは接着層を、金属表面とも接着性よく配置することができる。さらに、モールド部材として使用する樹脂の分子構造中に存在する極性を有する官能基と、コーティング層のSiO、Si(OH)などの極性を有する無機物とは、馴染み、あるいは濡れ性がよいため、コーティング層上に接着性よくモールド部材を配置することができる。即ち、エチルシリケートのような有機金属化合物を使用して、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層あるいは接着層を形成すると、コーティング層あるいは接着層は、ほぼ無機物で形成されていながら、有機物としての性質も僅かながら残しているため、発光装置を構成するLEDチップ表面やパッケージ表面、あるいは場合に応じて使用するモールド部材等に対してよく馴染み、製造歩留まりが向上し、かつ紫外線による劣化もほとんどない。
【0085】
(Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層109)
Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるアルミナゾル中に蛍光体(粉体)を均一に分散させた塗布液を調整して、その蛍光体が分散されたアルミナゾルを発光素子の全面を覆うようにスプレーコーティングあるいはディスペンス他した後、Al成分より蛍光体同士を固着させ、さらに発光素子表面に固着させることにより形成することができる。
【0086】
アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドは、塗料の増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、重合触媒、および顔料の分散剤として使用される有機アルミ化合物である。
【0087】
アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドの一種であるアルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムエトキサイド、およびアルミニウムブトキサイドは、常温で無色透明の液体であり、非常に反応性に富み空気中の水分によって水酸化アルミニウムを生成し、その後熱を加えると酸化アルミニウムを生成する。例えば、アルミニウムイソプロポキサイドは以下のように、水と容易に反応し最終的には、水酸化アルミニウムあるいはアルミナとなる。
【0088】
【化4】

【0089】
従って、アルミニウムイソプロポキサイドを空気中の水分と反応させた後、加熱により生成するAl23にて蛍光体をバインドし、蛍光体を含むAlにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の表面上、および発光素子の表面上以外の支持体上に、コーティング層として形成することができる。
【0090】
以上のSiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層およびAlにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、同一の発光素子上にSiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層のみ、あるいはAlにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層のみ形成させてもよいし、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層と、Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層とを組み合わせて同一の発光素子上に二つ以上の層を形成させてもよい。本発明におけるスプレーによるコーティング層の形成方法によれば、二層の膜厚を制御することも可能であるから、同じ形状のコーティング層を容易に形成させることができる。例えば、同一の発光素子の上に、まずAlによるコーティング層を形成し、その上にSiOによるコーティング層を形成する。ここで、蛍光体は二つの層両方に含まれてもよいし、一つの層のみに含まれてもよいし、二つの層両方に含まれなくても構わない。このように構成すると、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率は、Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率より小さく、Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率は窒化ガリウム系化合物半導体層の屈折率より小さいため、光の取り出し効率が高まるなどの効果がある。一層からなるコーティング層を形成した場合は、そのコーティング層と外気あるいは窒化物半導体発光素子との界面に屈折率の急激な変化が生じ、該界面において発光素子から取り出した光の一部の反射が起こり得るため、光の取り出し効率の低下を招きやすい。
【0091】
このようにして形成された、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層あるいはAlにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、従来の樹脂とは異なり無機物であるため、紫外線による劣化が樹脂に比べて極めて小さく、紫外光を発光する発光装置(紫外域発光装置)と組み合わせて用いることもできる。また、スプレーコーティングにより、波長変換機能を有する蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の全面、即ち上面、側面、および角の部分に同じ膜厚で形成することができるので、発光素子の全面に蛍光体が均一に分散して配置される。それにより、窒化物半導体発光素子の全面、即ち上面、側面、および角の部分からの発光を極めて高い効率で波長変換し、外部に取り出すことが可能である。
【0092】
これに対して、従来例のように樹脂の中に蛍光体を分散させた構成では、ほとんどの樹脂が青色光または紫外線により劣化するために長時間の使用に耐え得る素子を構成することができないので、紫外域で発光する発光素子を用いた白色発光装置の実用化はさらに困難であった。また、従来の方法では波長変換機能を有する蛍光体を含有するSiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層あるいは樹脂を発光素子の全面、即ち上面、側面、角の部分に同じ膜厚で形成することができなかったので、発光素子の全面に蛍光体が均一に分散して配置されなかった。したがって、窒化物半導体発光素子の全面からの発光を極めて高い効率で波長変換し、外部に取り出すことが困難であった。
【0093】
[蛍光体]
本願発明に用いられる蛍光体は、発光素子から放出された可視光や紫外光を他の発光波長に変換するためのものである。
【0094】
本発明に用いられる蛍光体としては、少なくともLEDチップ101の半導体発光層から発光された光で励起されて発光する蛍光体をいう。本実施の形態において、蛍光体として紫外光により励起されて所定の色の光を発生する蛍光体も用いることができ、具体例として、例えば、
(1)Ca10(POFCl:Sb,Mn
(2)M(POCl:Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)
(3)BaMgAl1627:Eu
(4)BaMgAl1627:Eu、Mn
(5)3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn
(6)YS:Eu
(7)MgAs11:Mn
(8)SrAl1425:Eu
(9)(Zn、Cd)S:Cu
(10)SrAl:Eu
(11)Ca10(POClBr:Mn、Eu
(12)ZnGeO:Mn
(13)GdS:Eu、及び
(14)LaS:Eu等が挙げられる。
【0095】
また、これらの蛍光体は、一層からなるコーティング層中に単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。さらに、二層以上が積層されてなるコーティング層中にそれぞれ単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。
【0096】
LEDチップ101が発光した光と、蛍光体が発光した光が補色関係などにある場合、それぞれの光を混色させることで白色系の混色光を発光することができる。具体的には、LEDチップ101からの光と、それによって励起され発光する蛍光体の光がそれぞれ光の3原色(赤色系、緑色系、青色系)に相当する場合やLEDチップ101が発光した青色の光と、それによって励起され発光する蛍光体の黄色の光が挙げられる。
【0097】
発光装置の発光色は、蛍光体と蛍光体の結着剤として働く各種樹脂やガラスなどの無機部材などとの比率、蛍光体の沈降時間、蛍光体の形状などを種々調整すること及びLEDチップの発光波長を選択することにより電球色など任意の白色系の色調を提供させることができる。発光装置の外部には、LEDチップからの光と蛍光体からの光がモールド部材を効率よく透過することが好ましい。
【0098】
具体的な蛍光体としては、銅で付活された硫化カドミ亜鉛やセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,Laからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)などが好ましい。
【0099】
(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが470nm付近などにさせることができる。また、発光ピークも530nm付近にあり720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持たせることができる。
【0100】
本発明の発光装置において、蛍光体は、2種類以上の蛍光体を混合させてもよい。即ち、Al、Ga、Y、La及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体を混合させてRGBの波長成分を増やすことができる。また、現在のところ半導体発光素子の発光波長には、バラツキが生ずるものがあるため2種類以上の蛍光体を混合調整させて所望の白色系の混色光などを得ることができる。具体的には、発光素子の発光波長に合わせて色度点の異なる蛍光体の量を調整し含有させることでその蛍光体間と発光素子で結ばれる色度図上の任意の点を発光させることができる。
【0101】
このような蛍光体は、気相や液相中に分散させ均一に放出させることができる。気相や液相中での蛍光体は、自重によって沈降する。特に液相中においては懸濁液を静置させることで、より均一性の高い蛍光体を持つ層を形成させることができる。所望に応じて複数回繰り返すことにより所望の蛍光体量を形成することができる。
【0102】
以上のようにして形成される蛍光体は、発光装置の表面上において一層からなるコーティング層中に二種類以上存在してもよいし、二層からなるコーティング層中にそれぞれ一種類あるいは二種類以上存在してもよい。このようにすると、異なる蛍光体からの光の混色による白色光が得られる。この場合、各蛍光物質から発光される光をより良く混色しかつ色ムラを減少させるために、各蛍光体の平均粒径及び形状は類似していることが好ましい。ここで本発明において、蛍光体の粒径とは、体積基準粒度分布曲線により得られる値であり、前記体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により蛍光体の粒度分布を測定し得られるものである。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に蛍光体を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmにて測定し得られたものである。
【0103】
本実施の形態において使用される蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体と、赤色系の光を発光可能な蛍光体、特に窒化物蛍光体とを組み合わせたものを使用することもできる。これらのYAG系蛍光体および窒化物系蛍光体は、混合してコーティング層中に含有させてもよいし、複数の層から構成されるコーティング層中に別々に含有させてもよい。以下、それぞれの蛍光体について詳細に説明していく。
【0104】
(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
本実施の形態に用いられるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、YとAlを含み、かつLu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、LEDチップ101から発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。特に本実施の形態において、CeあるいはPrで付活され組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体も利用される。発光層に窒化物系化合物半導体を用いた発光素子から発光した青色系の光と、青色光を吸収させるためボディーカラーが黄色である蛍光体から発光する緑色系及び赤色系の光と、或いは、黄色系の光であってより緑色系及びより赤色系の光を混色表示させると所望の白色系発光色表示を行うことができる。発光装置はこの混色を起こさせるために蛍光体の粉体やバルクをエポキシ樹脂、アクリル樹脂或いはシリコーン樹脂などの各種樹脂や酸化珪素、酸化アルミニウムなどの透光性無機物中に含有させることもできる。このように蛍光体が含有されたものは、LEDチップからの光が透過する程度に薄く形成させたドット状のものや層状ものなど用途に応じて種々用いることができる。蛍光体と透光性無機物との比率や塗布、充填量を種々調整すること及び発光素子の発光波長を選択することにより白色を含め電球色など任意の色調を提供させることができる。
【0105】
また、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子からの入射光に対して順に配置させることによって効率よく発光可能な発光装置とすることができる。即ち、反射部材を有する発光素子上には、長波長側に吸収波長があり長波長に発光可能な蛍光体が含有された色変換部材と、それよりも長波長側に吸収波長がありより長波長に発光可能な色変換部材とを積層などさせることで反射光を有効利用することができる。
【0106】
YAG系蛍光体を使用すると、放射照度として(Ee)=0.1W・cm−2以上1000W・cm−2以下のLEDチップと接する或いは近接して配置された場合においても高効率に十分な耐光性を有する発光装置とすることができる。
【0107】
本実施の形態に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である緑色系が発光可能なYAG系蛍光体では、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpも510nm付近にあり700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。一方、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である赤色系が発光可能なYAG系蛍光体でも、ガーネット構造であり熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpが600nm付近にあり750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0108】
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。YAG系蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加させた場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えた発光装置を形成することができる。
【0109】
このような蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450°Cの温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。また、別の実施の形態の蛍光体の製造方法では、蛍光体の原料を混合した混合原料とフラックスからなる混合物を、大気中又は弱還元雰囲気中にて行う第一焼成工程と、還元雰囲気中にて行う第二焼成工程とからなる、二段階で焼成することが好ましい。ここで、弱還元雰囲気とは、混合原料から所望の蛍光体を形成する反応過程において必要な酸素量は少なくとも含むように設定された弱い還元雰囲気のことをいい、この弱還元雰囲気中において所望とする蛍光体の構造形成が完了するまで第一焼成工程を行うことにより、蛍光体の黒変を防止し、かつ光の吸収効率の低下を防止できる。また、第二焼成工程における還元雰囲気とは、弱還元雰囲気より強い還元雰囲気をいう。このように二段階で焼成すると、励起波長の吸収効率の高い蛍光体が得られる。従って、このように形成された蛍光体にて発光装置を形成した場合に、所望とする色調を得るために必要な蛍光体量を減らすことができ、光取り出し効率の高い発光装置を形成することができる。
【0110】
組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体は、混合させて用いても良いし、それぞれ独立して配置させても良い。蛍光体をそれぞれ独立して配置させる場合、発光素子から光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体の順に配置させることが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0111】
(窒化物系蛍光体)
本発明で使用される蛍光体は、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された窒化物系蛍光体も使用することができる。また、本実施の形態に用いられる窒化物系蛍光体としては、LEDチップ101から発光された可視光、紫外線、及びYAG系蛍光体からの発光を吸収することによって励起され発光する蛍光体をいう。例えば、Ca−Ge−N:Eu,Z系、Sr−Ge−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Ge−N:Eu,Z系、Ca−Ge−O−N:Eu,Z系、Sr−Ge−O−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Ge−O−N:Eu,Z系、Ba−Si−N:Eu,Z系、Sr−Ba−Si−N:Eu,Z系、Ba−Si−O−N:Eu,Z系、Sr−Ba−Si−O−N:Eu,Z系、Ca−Si−C−N:Eu,Z系、Sr−Si−C−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Si−C−N:Eu,Z系、Ca−Si−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Si−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Si−C−O−N:Eu,Z系、Mg−Si−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Sr−Si−N:Eu,Z系、Sr−Mg−Si−N:Eu,Z系、Mg−Si−O−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Sr−Si−O−N:Eu,Z系、Sr−Mg−Si−O−N:Eu,Z系、Ca−Zn−Si−C−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Si−C−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Zn−Si−C−N:Eu,Z系、Ca−Zn−Si−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Si−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Zn−Si−C−O−N:Eu,Z系、Mg−Zn−Si−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Zn−Sr−Si−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Mg−Si−N:Eu,Z系、Mg−Zn−Si−O−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Zn−Sr−Si−O−N:Eu,Z系、Sr−Mg−Zn−Si−O−N:Eu,Z系、Ca−Zn−Si−Sn−C−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Si−Sn−C−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Zn−Si−Sn−C−N:Eu,Z系、Ca−Zn−Si−Sn−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Si−Sn−C−O−N:Eu,Z系、Sr−Ca−Zn−Si−Sn−C−O−N:Eu,Z系、Mg−Zn−Si−Sn−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Zn−Sr−Si−Sn−N:Eu,Z系、Sr−Zn−Mg−Si−Sn−N:Eu,Z系、Mg−Zn−Si−Sn−O−N:Eu,Z系、Mg−Ca−Zn−Sr−Si−Sn−O−N:Eu,Z系、Sr−Mg−Zn−Si−Sn−O−N:Eu,Z系など種々の組み合わせの蛍光体を製造することができる。希土類元素であるZは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luのうち少なくとも1種以上が含有されていることが好ましいが、Sc、Sm、Tm、Ybが含有されていてもよい。これらの希土類元素は、単体の他、酸化物、イミド、アミド等の状態で原料中に混合する。希土類元素は、主に安定な3価の電子配置を有するが、Yb、Sm等は2価、Ce、Pr、Tb等は4価の電子配置を有する。酸化物の希土類元素を用いた場合、酸素の関与が蛍光体の発光特性に影響を及ぼす。つまり酸素を含有することにより発光輝度の低下を生じる場合もある。その反面、残光を短くするなどの利点もある。但し、Mnを用いた場合は、MnとOとのフラックス効果により粒径を大きくし、発光輝度の向上を図ることができる。
例えば、共付活剤としてLaを使用する。酸化ランタン(La2O3)は、白色の結晶で、空気中に放置すると速やかに炭酸塩に代わるため、不活性ガス雰囲気中で保存する。
例えば、共付活剤としてPrを使用する。酸化プラセオジム(Pr6O11)は、通常の希土類酸化物Z2O3と異なり、非化学量論的酸化物で、プラセオジムのシュウ酸塩、水酸化物、炭酸塩などを空気中で焼く800℃に加熱するとPr6O11の組成をもつ黒色の粉体として得られる。Pr6O11はプラセオジム化合物合成の出発物質となり、高純度のものも市販されている。
【0112】
特に本発明に係る蛍光体は、Mnが添加されたSr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Eu系シリコンナイトライドである。この蛍光体の基本構成元素は、一般式LSi(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLSi(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。一般式中、X及びYは、X=2、Y=5又は、X=1、Y=7であることが好ましいが、任意のものも使用できる。具体的には、基本構成元素は、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Eu、SrSi:Eu、CaSi:Eu、SrCa1−XSi10:Eu、SrSi10:Eu、CaSi10:Euで表される蛍光体を使用することが好ましいが、この蛍光体の組成中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。但し、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。
【0113】
Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれかである。SrとCaは、所望により配合比を変えることができる。
【0114】
蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な蛍光体を提供することができる。
【0115】
発光中心に希土類元素であるユウロピウムEuを用いる。ユウロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つ。本発明の蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を付活剤として用いる。Eu2+は、酸化されやすく、3価のEuの組成で市販されている。しかし、市販のEuでは、Oの関与が大きく、良好な蛍光体が得られにくい。そのため、EuからOを、系外へ除去したものを使用することが好ましい。たとえば、ユウロピウム単体、窒化ユウロピウムを用いることが好ましい。但し、Mnを添加した場合は、その限りではない。
【0116】
SrSi:Eu,Pr、BaSi:Eu,Pr、MgSi:Eu,Pr、ZnSi:Eu,Pr、SrSi10:Eu,Pr、BaSi10:Eu,Ce、MgSi10:Eu,Ce、ZnSi10:Eu,Ce、SrGe:Eu,Ce、BaGe:Eu,Pr、MgGe:Eu,Pr、ZnGe:Eu,Pr、SrGe10:Eu,Ce、BaGe10:Eu,Pr、MgGe10:Eu,Pr、ZnGe10:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、SrSi:Pr、BaSi:Pr、SrSi:Tb、BaGe10:Ceなどが製造できるがこれに限定されない。
【0117】
添加物であるMnは、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光効率の向上を図る。Mnは、原料中に含有させるか、又は、製造工程中にMn単体若しくはMn化合物を含有させ、原料と共に焼成する。但し、Mnは、焼成後の基本構成元素中に含有されていないか、含有されていても当初含有量と比べて少量しか残存していない。これは、焼成工程において、Mnが飛散したためであると思われる。
【0118】
蛍光体には、基本構成元素中に、若しくは、基本構成元素とともに、Mg、Ga,In,Li、Na,K、Re、Mo、Fe,Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。これらの元素は、粒径を大きくしたり、発光輝度を高めたりする等の作用を有している。また、B、Al、Mg、Cr及びNiは、残光を抑えることができるという作用を有している。
【0119】
このような窒化物系蛍光体は、LEDチップ101によって発光された青色光の一部を吸収して黄から赤色領域の光を発光する。窒化物系蛍光体をYAG系蛍光体と共に上記の構成を有する発光装置に使用して、LEDチップ101により発光された青色光と、窒化物系蛍光体による黄色から赤色光とが混色により暖色系の白色系の混色光を発光する発光装置を提供する。窒化物系蛍光体の他に加える蛍光体には、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質が含有されていることが好ましい。前記イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質を含有することにより、所望の色度に調節することができるからである。セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質は、LEDチップ101により発光された青色光の一部を吸収して黄色領域の光を発光する。ここで、LEDチップ101により発光された青色光と、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の黄色光とが混色により青白い白色に発光する。従って、このイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と赤色発光する蛍光体とを、透光性を有するコーティング部材101中に一緒に混合し、LEDチップ101により発光された青色光とを組み合わせることにより白色系の混色光を発光する発光装置を提供することができる。特に好ましいのは、色度が色度図における黒体放射の軌跡上に位置する白色の発光装置である。但し、所望の色温度の発光装置を提供するため、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の蛍光体量と、赤色発光の蛍光体量を適宜変更することもできる。この白色系の混色光を発光する発光装置は、特殊演色評価数R9の改善を図っている。従来の青色発光素子とセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質との組合せのみの白色系発光装置は、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9がほぼ0に近く、赤み成分が不足していた。そのため特殊演色評価数R9を高めることが解決課題となっていたが、本発明において赤色発光の蛍光体をイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と共に用いることにより、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9を40付近まで高めることができる。
【0120】
次に、本発明に係る蛍光体((SrCa1−XSi:Eu)の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。上記蛍光体には、Mn、Oが含有されている。
【0121】
原料のSr、Caを粉砕する。原料のSr、Caは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。また原料Sr、Caには、B、Al、Cu、Mg、Mn、MnO、Mn、Alなどを含有するものでもよい。原料のSr、Caは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。粉砕により得られたSr、Caは、平均粒径が約0.1μmから15μmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。Sr、Caの純度は、2N以上であることが好ましいが、これに限定されない。より混合状態を良くするため、金属Ca、金属Sr、金属Euのうち少なくとも1以上を合金状態としたのち、窒化し、粉砕後、原料として用いることもできる。
【0122】
原料のSiを粉砕する。原料のSiは、単体を使用することが好ましいが、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。例えば、Si、Si(NH、MgSiなどである。原料のSiの純度は、3N以上のものが好ましいが、Al、Mg、金属ホウ化物(CoB、NiB、CrB)、酸化マンガン、HBO、B、CuO、CuOなどの化合物が含有されていてもよい。Siも、原料のSr、Caと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0123】
次に、原料のSr、Caを、窒素雰囲気中で窒化する。この反応式を、以下の式1および式2にそれぞれ示す。
3Sr + N → Sr ・・・(式1)
3Ca + N → Ca ・・・(式2)
【0124】
Sr、Caを、窒素雰囲気中、600〜900℃、約5時間、窒化する。Sr、Caは、混合して窒化しても良いし、それぞれ個々に窒化しても良い。これにより、Sr、Caの窒化物を得ることができる。Sr、Caの窒化物は、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。
【0125】
原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。この反応式を、以下の式3に示す。
3Si + 2N → Si ・・・(式3)
【0126】
ケイ素Siも、窒素雰囲気中、800〜1200℃、約5時間、窒化する。これにより、窒化ケイ素を得る。本発明で使用する窒化ケイ素は、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。
【0127】
Sr、Ca若しくはSr−Caの窒化物を粉砕する。Sr、Ca、Sr−Caの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
【0128】
同様に、Siの窒化物を粉砕する。また、同様に、Euの化合物Euを粉砕する。Euの化合物として、酸化ユウロピウムを使用するが、金属ユウロピウム、窒化ユウロピウムなども使用可能である。このほか、原料のZは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユウロピウムは、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化ケイ素及び酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0129】
上記原料中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。また、Mg、Zn、B等の上記元素を以下の混合工程において、配合量を調節して混合することもできる。これらの化合物は、単独で原料中に添加することもできるが、通常、化合物の形態で添加される。この種の化合物には、HBO、Cu、MgCl、MgO・CaO、Al、金属ホウ化物(CrB、Mg、AlB、MnB)、B、CuO、CuOなどがある。
【0130】
上記粉砕を行った後、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Euを混合し、Mnを添加する。これらの混合物は、酸化されやすいため、Ar雰囲気中、又は、窒素雰囲気中、グローブボックス内で、混合を行う。
【0131】
最後に、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Euの混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。焼成により、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Euで表される蛍光体を得ることができる。この焼成による基本構成元素の反応式を、以下に示す。
【0132】
【化5】

ただし、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0133】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1700℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質のるつぼ、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質のるつぼの他に、アルミナ(Al)材質のるつぼを使用することもできる。
【0134】
以上の製造方法を使用することにより、目的とする蛍光体を得ることが可能である。
【0135】
本発明の実施例において、赤味を帯びた光を発光する蛍光体として、特に窒化物系蛍光体を使用するが、本発明においては、上述したYAG系蛍光体と赤色系の光を発光可能な蛍光体とを備える発光装置とすることも可能である。このような赤色系の光を発光可能な蛍光体は、波長が400〜600nmの光によって励起されて発光する蛍光体であり、例えば、YS:Eu、LaS:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、ZnS:Mn、ZnCdS:Ag,Al、ZnCdS:Cu,Al等が挙げられる。このようにYAG系蛍光体とともに赤色系の光を発光可能な蛍光体を使用することにより発光装置の演色性を向上させることが可能である。
【0136】
[接着層110]
本実施の形態に用いられる接着層110は、発光素子と支持体とをゾル状態の有機材料を介して密着後、加熱乾燥させた後に形成される無機物の層である。さらに本発明の接着層は、支持体上面と発光素子の基板面との間に存在する連続した無色透明の層であり、且つ、発光素子の側面に延材している。
【0137】
パッケージなどによる反射により、LEDチップから放出される高エネルギー光などが接着層中で高密度になる。そのため、発光強度が強く高エネルギー光が発光可能な窒化物系半導体をLEDチップとして利用した場合は、それらの高エネルギー光に対して耐光性のあるSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上有する酸化物を発光素子と支持体との接着液として利用することが好ましい。
【0138】
接着層の具体的主材料の一つとしては、SiO2、Al23、ZrO、Y、MSiO3(なお、Mとしては、Zn、Ca、Mg、Ba、Srなどが挙げられる。)などの透光性無機部材が好適に用いられる。これらの透光性無機部材を介して発光素子の基板面と支持体表面とを対向させ、発光素子は支持体に対して固定される。本発明において、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Yあるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む酸化物は、コーティング層を形成させる材料と同様に有機金属化合物により生成される。このような常温で液体の有機金属化合物を使用すれば、有機溶剤を加えることによって、作業性を考慮した粘度調節や、有機金属化合物等の凝固物の発生防止が容易にできるため作業性を向上させることができる。また、このような有機金属化合物は加水分解等の化学反応を起こし酸化物や水酸化物等の無機物を生成しやすいため、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Yあるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む酸化物等により、接着層をLEDの発光素子としての性能を低下させることなく容易に形成させることが可能である。さらに、接着層が発光素子の側面にも延材する場合、金属はんだで発光素子をダイボンドすると、発光素子から出光する近紫外から青色の光を吸収する金属が金属はんだに含まれる場合がある。例えば、Au−Sn共晶はんだで発光素子をダイボンドするとAuは発光素子から出光する近紫外から青色の光を吸収してしまうため、発光装置の出力を下げる問題があるが、本発明による接着層は発光素子から出光する近紫外から青色の光を吸収しないため、発光効率の高い発光装置を形成することが可能である。
【0139】
以下、接着層に含まれる具体的主材料として、SiO2、Al23を例にとり説明する。
【0140】
(SiOによる接着層)
SiOにより形成される接着層は、アルキルシリケートと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるシリカゾルの接着液を調整して、該シリカゾルを支持体表面の所定の位置にスタンピングあるいはディスペンス等により供給した後、該シリカゾルを介して発光素子の基板面と支持体表面を対向させ、加熱してSiO2成分を固化させることにより形成することができる。ここで、スタンピングとは、印加バリの先端を接着液に押し付け、該接着液の付着した印加バリの先端を支持体表面の所定の位置の直上まで移動させた後、該支持体表面に印加バリを押し付けることにより支持体表面の所定の位置に接着液を供給する方法をいう。また、ディスペンスとは、ダイボンド材の供給装置のシリンダ内を接着液で満たした後、該接着液をピストンで押し出す、あるいは空気圧等で押し出すことにより支持体表面の所定の位置に接着液を定量吐出して供給する方法をいう。
【0141】
上述したように、エチルシリケートの加水分解反応は温度が高いほど速く進行し、生成物のエタノールが除去されるとそれはさらに進行し易くなる。また、エチルシリケートの加水分解を進行させて生成するゲルを加熱すると主として非晶質のSiOが形成される。従って、ゲル状態のエチルシリケートの加水分解溶液を接着液として支持体上にスタンピングあるいはディスペンスし、該接着液を介して支持体と発光素子の基板面を対向させた後、加熱するとSiOにより発光素子が支持体表面に接着されてなる発光装置を形成することができる。特に本実施の形態において、予めエチルシリケートを粘度の高いゾル状態の加水分解溶液とし、該加水分解溶液を接着液として支持体上面の所定の位置に適量スタンピングあるいはディスペンスした後、発光素子を上方から加圧しながらダイボンドすることで、発光素子の側面にも接着液は延材する。そのため、発光素子は載置された位置からズレ動くことはなく、接着液を加熱して形成されるSiOにより支持体上に固着される。即ち、従来の方法では、ゾル状態とする前のエチルシリケートに水分が多く含まれていたため、加熱前に接着液の流動により発光素子がズレ動いたり、水分により発光素子の表面状態が悪化し、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼしていた。そこで、本実施の形態における方法によると、ゾル状態のエチルシリケート加水分解溶液は水分を殆ど含まず、加熱されるだけで主として非晶質のSiOを形成するため、発光素子のダイボンド位置のズレ、および光学特性に悪影響を及ぼすことなく、SiOにより接着層を容易に形成させ、発光素子を支持体上に固定させることができる。また、発光素子の側面に延材して形成されたSiOによる接着層と、後に発光素子上に形成されるSiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層とは、発光素子の側面にて接触し密着する。両者は、同じ有機金属化合物を出発原料として形成されることで同一種類の物質を多く含み、そのため密着性がよい。従って、発光素子の側面に延材して形成されたSiOによる接着層は、該コーティング層が発光素子上から剥離するのを防ぎ、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0142】
(Alによる接着層)
Alによる接着層は、アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるアルミナゾルにて接着液を調整して、該アルミナゾルを支持体上の所定の位置にスタンピングあるいはディスペンス他した後、該アルミナゾルを介して発光素子の基板面と支持体表面を対向させ、Al23成分を非晶質化させることにより形成することができる。
【0143】
上述したように、アルミニウムイソプロポキサイドは、水と容易に反応し最終的には、水酸化アルミニウムあるいはアルミナとなる。
【0144】
従って、アルミニウムイソプロポキサイドを空気中の水分と反応させた後、接着液として支持体上にスタンピングあるいはディスペンスし、該接着液を介して支持体と発光素子の基板面を対向させた後、加熱すると、Al23により発光素子が支持体表面に接着されてなる発光装置を形成することができる。また、発光素子の側面に延材して形成されたAl23による接着層と、後に発光素子上に形成されるAl23により蛍光体がバインドされてなるコーティング層とは、該側面にて接触し密着する。両者は、同じ有機金属化合物を出発原料として形成されることで同一種類の物質を多く含み、そのため密着性がよい。従って、発光素子の側面に延材して形成されたAl23による接着層は、該コーティング層が発光素子上から剥離するのを防ぎ、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0145】
このようにして形成された、SiOによる接着層あるいはAlによる接着層は、従来の樹脂による接着とは異なり無機物による接着であるため、紫外線による劣化が樹脂に比べて極めて小さく、青色より短い波長を含む光を発光する発光素子、あるいは紫外光を発光する発光素子(紫外域発光素子)と組み合わせて用いても接着強度の低下を招くことがない。
【0146】
本実施の形態において、接着液を温度50℃以上300℃以下の加温状態におくことにより発光素子は支持体上にダイボンドされる。このように加温状態におく方法として、発光素子をヒーター上に設置したり、オーブン等の加温装置内で加温する方法を使用してもよい。加温により、エタノール、ゲル状態の加水分解溶液に僅かに含まれる水分、および溶剤を蒸発させると、ゲル状態の接着液からSiOを主成分とする粒径数ナノメートルの粒子が多数密集して形成される接着層が得られる。該接着層は、無機物を主成分とする直径数ナノメートルの粒子が密集することによって形成され、粒子間には隙間が存在する。接着層に急激な温度変化が加わると、熱応力によりそれぞれの粒子の体積が膨張あるいは収縮する。そのため、上記粒子が存在せず、支持体材料と熱膨張係数が大きく異なる溶融ガラスや樹脂によって発光素子を接着した場合と異なり、本発明による接着層は全体として熱応力による大きな影響を受けず、接着層の剥離やひび割れ等が生じない。したがって急激な温度変化が加わる状況下で使用する発光装置としても、本発明による発光装置は、信頼性を維持することが可能である。
【0147】
さらに本実施の形態おける接着液は、高粘度に調整されているため、発光素子の基板面と支持体表面との間に介在し、さらに発光素子の側面に延材した場所から流動することはなく、それらの場所でダイボンド後に加温され固化される。これにより、発光素子が最初に載置された位置からズレることはなく、SiOにより支持体表面にダイボンドされてなる発光装置を形成することができる。
【0148】
[フィラー]
上記接着層は、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Yあるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む酸化物、あるいは少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Yあるいはアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む水酸化物より熱伝導率が高いフィラーを有してもよい。このようなフィラーを加えることにより発光装置の放熱効果が向上する。このようなフィラーとして、SiOにて接着層を形成しLEDチップをダイボンドする場合のアルミナ、Ag等の金属粉が考えられる。
【0149】
[LEDチップ101]
本実施の形態において発光素子として用いられるLEDチップ101とは、蛍光体を励起可能なものである。発光素子であるLEDチップ101は、MOCVD法等により基板上にGaAs、InP、GaAlAs、InGaAlP、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の半導体を発光層として形成させる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。好ましくは、蛍光体を効率良く励起できる比較的短波長を効率よく発光可能な窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i、0≦j、0≦k、i+j+k=1)である。
【0150】
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、半導体基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化ガリウムを形成させるためにはサファイア基板を用いることがより好ましい。サファイア基板上に半導体膜を成長させる場合、GaN、AlN等のバッファ層を形成しその上にPN接合を有する窒化ガリウム半導体を形成させることが好ましい。また、サファイア基板上にSiO2をマスクとして選択成長させたGaN単結晶自体を基板として利用することもできる。この場合、各半導体層の形成後SiO2をエッチング除去させることによって発光素子とサファイア基板とを分離させることもできる。窒化ガリウム系化合物半導体は、不純物をドープしない状態でN型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のN型窒化ガリウム半導体を形成させる場合は、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、P型窒化ガリウム半導体を形成させる場合は、P型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。
【0151】
窒化ガリウム系化合物半導体は、P型ドーパントをドープしただけではP型化しにくいためP型ドーパント導入後に、炉による加熱、低速電子線照射やプラズマ照射等によりアニールすることでP型化させることが好ましい。具体的な発光素子の層構成としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウムなどを低温で形成させたバッファ層を有するサファイア基板や炭化珪素上に、窒化ガリウム半導体であるN型コンタクト層、窒化アルミニウム・ガリウム半導体であるN型クラッド層、Zn及びSiをドープさせた窒化インジュウムガリウム半導体である活性層、窒化アルミニウム・ガリウム半導体であるP型クラッド層、窒化ガリウム半導体であるP型コンタクト層が積層されたものが好適に挙げられる。LEDチップ101を形成させるためにはサファイア基板を有するLEDチップ101の場合、エッチングなどによりP型半導体及びN型半導体の露出面を形成させた後、半導体層上にスパッタリング法や真空蒸着法などを用いて所望の形状の各電極を形成させる。SiC基板の場合、基板自体の導電性を利用して一対の電極を形成させることもできる。
【0152】
次に、形成された半導体ウエハー等をダイヤモンド製の刃先を有するブレードが回転するダイシングソーにより直接フルカットするか、又は刃先幅よりも広い幅の溝を切り込んだ後(ハーフカット)、外力によって半導体ウエハーを割る。あるいは、先端のダイヤモンド針が往復直線運動するスクライバーにより半導体ウエハーに極めて細いスクライブライン(経線)を例えば碁盤目状に引いた後、外力によってウエハーを割り半導体ウエハーからチップ状にカットする。このようにして窒化物系化合物半導体であるLEDチップ101を形成させることができる。
【0153】
本発明の発光装置において発光させる場合は、蛍光体との補色等を考慮してLEDチップ101の主発光波長は350nm以上530nm以下が好ましい。
【0154】
[金属パッケージ105]
本発明の一実施例における発光装置に用いられる金属パッケージ105は、発光素子を収納する凹部aと、リード電極が配置されたベース部bとからなり、発光素子の支持体として働く。前記凹部の底面と前記リード電極の底面はほぼ同一面上に位置している。
【0155】
発光装置において、熱の放熱性及び小型化を考慮すると、パッケージは薄膜で形成されることが好ましい。一方、リード電極との界面に設けられる絶縁部材との熱膨張率等の差を緩和させ信頼性を向上させるためには、それぞれの接触面を大きくする必要がある。そこで本発明者は、金属パッケージにおいて、発光素子が配置される部分とリード電極を固定する部分とに分別し、それぞれの領域に合わせて形状及び膜厚を設定することにより、信頼性の向上を図る。
【0156】
以下、それぞれの構成部材について詳述する。
【0157】
(凹部a)
本実施の形態の発光装置は、パッケージの一部に発光素子101、コーティング層108、109および接着層110を配置するための凹部aを有する。前記凹部底面は、発光装置の実装面、つまりリード電極の底面とほぼ同一平面上に位置しており、実装基板と接するように構成されている。前記凹部底面の膜厚は、良好な放熱性を有するように薄膜に形成されている。前記底面の膜厚は、0.05mm〜0.2mmが好ましく、より好ましくは0.05mm〜0.1mmである。このように設定された凹部底面は、前記凹部内に配置された発光素子からの発熱を良好に実装基板へ放熱することができる。このように、本発明の発光装置は、発光素子からの発熱を短い放熱経路にて直接実装基板に放熱することができ、低熱抵抗化が実現された発光装置である。
【0158】
前記凹部は、発光装置の中央部に位置することが好ましく、これにより良好な指向特性が得られる。
【0159】
また凹部は、前記発光素子全体を収納することが可能な容積を有することが好ましい。これにより、前記凹部内に配置された前記発光素子全体を色変換層で被覆することが可能となる。本発明に用いられる金属パッケージは、特に発光素子が配置される凹部の放熱性が優れているため、良好な光学特性が得られる。また、前記凹部の内壁がテーパー形状であると、更に高輝度に発光することが可能な発光装置が得られる。
【0160】
一方、外壁側である前記凹部の背面は、逆凸形状となっており、凹部底面とリード電極の底面との間に溝を有する。これにより良好に実装することが可能となる。前記溝がない場合、前記リード底面に付着される半田が隣接するベース部等に付着し各電極間の絶縁が取れなくなりショートしてしまう恐れがある。
【0161】
前記凹部は、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成される。本実施の形態では、金属平板の主面方向から絞り加工を施して金属を背面方向に流し凹部を形成する。この流れた金属が凹部底面の一部となるように構成することで、実装面の面積を大きくすることができるとともに、凹部側面の底面側の膜厚を太くすることができる。これにより、放熱性が向上される他、パッケージの機械的強度が増し、好ましい。また、前記凹部底面は発光装置の支持部の1つとなるので、精度良く実装することが可能となり、好ましい指向特性が得られる。
【0162】
(ベース部b)
本明細書では、金属パッケージの平板部分をベース部bとする。前記ベース部は、厚さ方向に貫通された貫通孔を少なくとも1つ有する。前記貫通孔はリード電極を固定するためのものであり、本実施の形態の発光装置は、前記貫通孔を2つ有する。それぞれの貫通孔は、凹部aを挟んで対向して設けられ、各内部に絶縁体を介して正又は負のリード電極が挿入されている。このように構成することにより、リード電極間の中心に発光素子を配置させることができ、良好な指向特性が得られる。
【0163】
ここで、本発明の発光装置の正及び負のリード電極は、少なくとも一方がベース部の貫通孔内に絶縁体を介して挿入されていれば良く、図2の如く他方のリード電極は金属パッケージと一体成形されていてもよい。このように構成すると、パッケージの発光素子配置面から一方のパッケージ端面までの間に絶縁体を有しないため、放熱性が向上され好ましい。
【0164】
また、本発明の発光装置において、金属パッケージのベース部の膜厚は前記凹部の底面厚より厚いことを特徴とする。ベース部の厚みは0.3mm〜1.0mmが好ましく、より好ましくは0.5mm〜1.0mmである。0.3mmより薄い場合、パッケージ全体の強度が低下してしまう。またリッドとの溶接時に起こる応力歪により溶接界面にクラックが生じる恐れがあり、このように気密性が不完全になると、水分が内部に侵入しワイヤや発光素子が腐食され信頼性が低下してしまう。また1.0mm以上の膜厚にすると、前記溶接界面にパルス電流が伝わりにくくなり、シールが不完全になる恐れがある。また発光装置が厚型化するとともにコストが高くなる。
【0165】
また、前記ベース部の外側縁部は、ベース部底面に沿って鍔部を有することが好ましい。このように構成することにより、前記鍔部を設けることにより露出されるパッケージ端面と発光面側に配置されるリッドの内壁、及び前記鍔部の上面と前記リッド上面とが合わさり、これらの位置決めを容易に行うことができ、量産性が向上され好ましい。
【0166】
また、前記ベース部の背面側に支持体を設けても良い。前記背面側から突出している各リード電極の間に、前記支持体がそれぞれ均等間隔で配置されると、発光装置の実装安定性が向上され好ましい。前記支持体は、前記ベース部と同様の材料にて構成されることが好ましく、これにより発光装置の放熱性が向上される。
【0167】
前記リード電極及び金属パッケージの熱伝導率はそれぞれ、10W/m・K以上100W/m・K以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは15W/m・K以上80W/m・K以下、更に好ましくは15W/m・K以上50W/m・K以下である。信頼性を維持しながら大電流を長時間投下することが可能な発光装置が得られる。
【0168】
またそれぞれの熱膨張率は、0.05×10−4/deg以上0.20×10−4/deg以下の範囲であることが好ましい。
【0169】
金属パッケージの熱膨張率は、前記絶縁部材の熱膨張率と同様の値か、若しくは大きい値であることが好ましい。前者の場合、互いの部材が破損されることなく熱密着させることができる。また後者の場合、これらの熱膨張率の差が0.01×10−4/deg以下であれば、互いの接触面積を出来るだけ大きくすることで熱膨張率の差による破損を回避しつつ前記熱膨張率の差の効果によりほどよく金属パッケージが貫通孔の内部方向に収縮され、前記貫通孔の内壁に基材の酸化膜を設けなくても、前記金属パッケージと前記絶縁部材とを密着させることができる。これにより、作業工程が簡略化され生産性が良好な発光装置が得られる。
【0170】
また、金属パッケージの基材は、強い強度を有することが好ましく、これにより薄型のパッケージを形成することができる。金属パッケージの好ましい基材として、コバール、鉄などが挙げられる。コバールとはFe−Ni−Co合金であり、絶縁部材に用いられる低融点ガラスと近似の熱膨張率を有するので良好に気密封止を行うことができる。これら基材の最表面にはAgメッキを施すことが好ましい。このように構成すると、パッケージ表面の光反射散乱率が向上される他、Ag層が溶接用ろう材となり、発光素子、ワイヤ、及びリッドと、金属パッケージ本体との密着性が向上され好ましい。更に、Ag層を無光沢にメッキするとこれらの効果は増殖される。
【0171】
本発明で用いられる金属パッケージは、上記のように構成され、これにより高い信頼性を有する発光装置を安価に得ることができる。
【0172】
[リード電極102]
本発明の一実施例における発光装置は、正及び負のリード電極102を有し、金属パッケージのベース部に設けられた貫通孔内に絶縁部材を介して挿入されている。前記リード電極の先端部は、前記ベース部の表面から突出しており、且つ前記リード電極の底面は前記凹部の実装面側底面と略同一平面上に位置している。
【0173】
リード電極102のワイヤ接続面である上面は、0.02mm〜0.2mmの範囲の面積を有することが好ましく、より好ましくは0.05mm〜0.15mmである。このように構成されることにより、ワイヤボンディングの精度が良好で且つ小型化の発光装置が得られる。
【0174】
また、リード電極の実装面側である底面は、前記上面より広い面積を有することが好ましい。これにより前記リード電極が発光装置の支持体となり、安定して表面実装することが可能となると共に、実装基板との接触面積が広くなるため放熱性が向上される。このような形状のリード電極は、例えば柱状に形成されたリード電極の底面側をプレス加工することにより得ることができる。リード電極の底面側の好ましい形状として、逆T字型、末広がり型、逆テーパ型等が挙げられる。
【0175】
[リッド106]
本発明の一実施例における発光装置は、金属パッケージ105の主面側に、透光性窓部107と金属部とからなるリッド106を有する。前記窓部107は、発光装置の発光面であり中央部に配置されることが好ましい。
【0176】
本実施例において、前記窓部107は、前記金属パッケージ105の凹部aに配置された発光素子101の上面に位置しており、前記凹部aの内壁の延長線と交点を有する。前記発光素子101の端部からから発光される光は、前記凹部aの側面にて反射散乱され正面方向に取り出される。これらの反射散乱光の存在範囲は、ほぼ前記凹部aの側面の延長線内であると考えられる。そこで、上記のように発光面である窓部107の面積を調整することにより、前記反射散乱光は効率よく前記窓部107に集光され、高輝度な光を発光することが可能な発光装置が得られる。
【0177】
リッド106の基材は、パッケージ105本体及び窓部107の透光性部材と熱膨張係数が近似していることが好ましい。また、リッド106の材質の表面は基材の保護膜としてNiメッキ層を有することが好ましい。
【0178】
上記リッド106は、例えば、カーボン製の封着治具を用いて、リッド106本体に形成された開口部内にタブレット状のガラスを配置し通炉させることによりガラスとリッド106本体とを気密絶縁的に封着させることができる。
【0179】
リッド106の形状は、パッケージ105の溶接部と密接可能な滑らかな平面を有し且つパッケージ105を気密封止できれば特に限定されるものではない。中央部が凸形状のリッドを用いると、前記リッド106の窓部107の背面に色変換部材を良好にバインダさせることができ、歩留まり良く発光装置を形成することができる。
【0180】
更に、前記窓部表面を曲線を帯びたレンズ形状とすると、光の収束が良好となり、正面方向の光度が高い発光装置が得られる。
【0181】
実施の形態2.
図3は、本発明に係る発光装置の別の実施形態を示す模式断面図である。
【0182】
本実施の形態においては、実施の形態1と異なり、樹脂パッケージに実装したLEDに本件発明を適用する例について説明する。図3は、支持体であるLEDパッケージ114に、LED101を実装した状態の構造を表す。104は導電性ワイヤ、113はモールド部材、111はLEDチップ上のコーティング層、112は支持体上のコーティング層、110は接着層である。本実施の形態において、コーティング層111及び112は、蛍光体を含有し、SiO2を主成分とする酸化物の単層から成る。また、発光素子101及びコーティング層111及び112は、実施の形態1と異なり、モールド樹脂113によって封止されている。LEDチップ101はパッケージ114内に納められ、一方の外部電極上にエチルシリケートを加水分解して生成させたシリカ110を介して接着されている。LEDチップの正負一対の電極102は、導電性ワイヤ104によってそれぞれ外部電極とワイヤーボンディングされている。
【0183】
図3に示されるように、本発明のコーティング層111及び112は、LEDチップ101の上面、側面、および角の上だけでなく、支持体上にも形成されている。LEDチップ101の上面、側面および角の上に設けられたコーティング層111の厚みとLEDチップ以外の支持体上に設けられたコーティング層112の厚みとが略等しい。また、コーティング層はLEDチップ101の角の部分でも途切れることがなく、コーティング層は連続した層である。
【0184】
コーティング層がこのような形状で形成されていることにより、発光素子から放出された光の光路長が比較的等しく、均一な発光特性を得ることができる。また、支持体上にもコーティング層が形成されていることにより、コーティング層全体が発光素子及び支持体から剥離しにくくなる効果がある。さらに、支持体上にも蛍光体を含むコーティング層が形成されていることにより、モールド部材中を乱反射している波長変換されていない光が、支持体上のコーティング層によって波長変換される確率が向上する。
【0185】
また、図3に示すように、コーティング層111及び112が薄膜に形成されている結果、導電性ワイヤ104のボンディング位置の近傍にコーティング層111及び112とモールド樹脂113との界面が存在している。このことにより、コーティング層111及び112とモールド樹脂113との熱膨張係数の違いによって生じる熱応力によって、導電性ワイヤ104に断線が発生することを抑制できる。
【0186】
以下、各部材について詳細に説明する。
【0187】
[パッケージ114]
図3に示されるように、本発明の別の実施例において使用されるパッケージ114は、LEDチップ101を凹部内に固定保護する支持体として働く。また、外部との電気的接続が可能な外部電極102を有する。LEDチップ101の数や大きさに合わせて複数の開口部を持ったパッケージ114とすることもできる。また、好適には遮光機能を持たせるために黒や灰色などの暗色系に着色させる、或いはパッケージ114の発光観測表面側が暗色系に着色されている。パッケージ114は、LEDチップ101をさらに外部環境から保護するためにコーティング層111、112に加えて透光性保護体であるモールド部材113を設けることもできる。パッケージ114は、コーティング層111、112やモールド部材113との接着性がよく剛性の高いものが好ましい。LEDチップ101と外部とを電気的に遮断させるために絶縁性を有することが望まれる。さらに、パッケージ114は、LEDチップ101などからの熱の影響をうけた場合、モールド部材113との密着性を考慮して熱膨張率の小さい物が好ましい。
【0188】
パッケージ114の凹部内表面は、エンボス加工させて接着面積を増やしたり、プラズマ処理してモールド部材との密着性を向上させることもできる。また、パッケージ114の凹部は、その側面が開口方向に向かって広くなる形状(テーパー形状)を有していることが好ましい。このようにすると、発光素子から出光した光は凹部の側面に反射してパッケージ正面に向かうため、光取り出し効率が向上するなどの効果がある。パッケージ114は、外部電極102と一体的に形成させてもよく、パッケージ114が複数に分かれ、はめ込みなどにより組み合わせて構成させてもよい。このようなパッケージ114は、インサート成形などにより比較的簡単に形成することができる。パッケージ材料としてポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂やセラミック、金属などを用いることができる。紫外線を含む光を発光するLEDチップを用いた発光装置を高出力で使用する場合、樹脂が紫外線によって劣化し、樹脂の黄変などによる発光効率低下や、機械的強度の低下による発光装置の寿命の低下などが生じることが考えられる。そこで、パッケージ材料として金属を使用することは、紫外線を含む光を発光するLEDチップを高出力で使用した場合でも樹脂のようにパッケージが劣化することがないためより好ましい。
【0189】
また、パッケージ114を暗色系に着色させる着色剤としては種々の染料や顔料が好適に用いられる。具体的には、Cr23、MnO2、Fe23やカーボンブラックなどが好適に挙げられる。
【0190】
LEDチップ101とパッケージ114との接着は熱硬化性樹脂などによって行うこともできる。具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂などが挙げられる。紫外線を含む光を発光するLEDチップを用いた発光装置を高出力で使用する場合、LEDチップ101とパッケージ114との接着部分は、LEDチップから放出された紫外線などが封止部材の樹脂やあるいはそれに含まれる蛍光体などによっても反射され、パッケージ内においても特に高密度になる。そのため、接着部分の樹脂が紫外線によって劣化し、樹脂の黄変などによる発光効率低下や、接着強度の低下による発光装置の寿命の低下などが生じることが考えられる。このような紫外線による接着部分の劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させた樹脂や、より好ましくは本発明による無機物などが使用される。特に、パッケージに金属材料を使用した場合は、LEDチップ101とパッケージ114との接着は、本発明による無機物が使用される他、Au−Snなどの共晶はんだ等を使用しても行われる。そのため、接着に樹脂を使用した場合と異なり、紫外線を含む光を発光するLEDチップを用いた発光装置を高出力で使用した場合でも接着部分は劣化しない。
【0191】
また、LEDチップ101を配置固定させると共にパッケージ114内の外部電極102と電気的に接続させるためにはAgペースト、カーボンペースト、ITOペースト、金属バンプ等が好適に用いられる。
【0192】
[外部電極102]
図3に示されるような外部電極102は、パッケージ114外部からの電力を内部に配置されたLEDチップ101に供給させるために用いられるためのものである。そのためパッケージ114上に設けられた導電性を有するパターンやリードフレームを利用したものなど種々のものが挙げられる。また、外部電極102は放熱性、電気伝導性、LEDチップ101の特性などを考慮して種々の大きさに形成させることができる。外部電極102は、各LEDチップ101を配置すると共にLEDチップ101から放出された熱を外部に放熱させるため熱伝導性がよいことが好ましい。外部電極102の具体的な電気抵抗としては300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。また、具体的な熱伝導度は、0.01cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは 0.5cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上である。
【0193】
このような外部電極102としては、銅やりん青銅板表面に銀、パラジュウム或いは金などの金属メッキや半田メッキなどを施したものが好適に用いられる。外部電極102としてリードフレームを利用した場合は、電気伝導度、熱伝導度によって種々利用できるが加工性の観点から、板厚は0.1mmから2mmであることが好ましい。ガラスエポキシ樹脂やセラミックなどの支持体上などに設けられた外部電極102としては、銅箔やタングステン層を形成させることができる。プリント基板上に金属箔を用いる場合は、銅箔などの厚みとして18〜70μmとすることが好ましい。また、銅箔等の上に金、半田メッキなどを施しても良い。
【0194】
[導電性ワイヤ104]
導電性ワイヤ104としては、LEDチップ101の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上である。また、高出力の発光装置を形成する場合や、作業性などを考慮して導電性ワイヤー104の直径は、好ましくは、Φ10μm以上、Φ70μm以下である。このような導電性ワイヤ104として具体的には、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤが挙げられる。このような導電性ワイヤ104は、各LEDチップ101の電極と、インナー・リード及びマウント・リードなどと、をワイヤボンディング機器によって容易に接続させることができる。
【0195】
[モールド部材113]
モールド部材113は、発光装置の使用用途に応じてLEDチップ101、導電性ワイヤ104、蛍光体が含有されたコーティング層111、112などを外部から保護するため、あるいは光取り出し効率を向上させるために設けることができる。モールド部材113は、各種樹脂や硝子などを用いて形成させることができる。モールド部材113の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。また、モールド部材に拡散剤を含有させることによってLEDチップ101からの指向性を緩和させ視野角を増やすこともできる。このような、モールド部材113は、コーティング層の結着剤、バインダと同じ材料を用いても良いし異なる材料としても良い。
【0196】
なお、金属パッケージを使用して、窒素ガスなどと共にLEDチップ101を気密封止する場合は、モールド部材113は本発明に必須の構成部材ではない。また、紫外線を発光するLEDチップを使用して発光装置を形成する場合であっても、フッ素樹脂等のように紫外線に強い樹脂をモールド部材として使用することができる。
【0197】
実施の形態3.
本実施の形態では、支持体上に配置された発光素子を加温した状態で、発光素子の上方から蛍光体を含有した塗布液を霧状で且つ螺旋状に回転させながら吹き付ける具体的な方法について説明する。この方法は、本件発明における無機材料からなるコーティング材料だけでなく、従来の有機樹脂からなるコーティング材料にも適用できる。
【0198】
図4は、支持体の上に固定された発光素子に塗布液を吹き付ける様子を示した模式図である。本実施の形態では、塗布液203とガス(本実施の形態では空気)がノズル201を通して螺旋状に噴出されることを特徴とする装置を使用する。この装置のノズル201の周囲にはガスの噴出口が数カ所設けられており、それらの噴出口から噴出するガスの噴出方向は、塗布される面に対してそれぞれある一定の角度を付けられている。したがって、塗布液の噴出口を中心に回転しているそれらのガス噴出口に同時にガスが送り込まれると、それぞれの噴出口から噴出するガスを集めた全体のガスの流れは、渦巻き状の流れ、螺旋状の流れ、あるいは竜巻における空気の流れを逆さまにしたような流れとなる。また、この装置のノズル201の中心には塗布液の噴出口が設けられており、ガスの噴出と同時に塗布液を噴出すると、霧状となった塗布液203が、螺旋状の流れ、あるいは竜巻における空気の流れを逆さまにしたようなガスの流れに乗って拡散していく。
【0199】
螺旋状に拡散した噴霧全体の径は、図4に示すように、発光素子101上方の噴射開始点から発光素子101の表面に近づくにつれて大きい。また、発光素子101上方の噴射開始点から発光素子101の表面に近づくにつれて塗布液203からなる噴霧の回転速度が減少している。即ち、霧状の塗布液203がノズルから噴出されて空気中で拡散すると、噴射開始点であるノズルの付近では円錐状に噴霧が広がるが、ノズルから離れた所では、円柱状に噴霧が広がる。そこで、本実施例では、発光素子101の上面からノズル201下端までの距離を調節して円柱状に噴霧が広がった状態の所に発光素子101の表面がくるように設置することが好ましい。このとき噴霧は、螺旋状に回転し、かつ速度が弱まっているため、導電性ワイヤの陰になる発光素子101表面上にも回り込み、発光素子101の上面全体だけでなく、その側面全体にも十分吹き付けられる。これにより、発光素子101あるいはノズル201を固定した状態で作業を行うことができる。また、円柱状に噴霧が広がった状態の所では噴霧の速度が弱まっているため、噴霧が発光素子101の表面に吹き付けられたとき、含まれる蛍光体粒子202によって発光素子101の表面が衝撃を受けることがない。また、導電性ワイヤの変形や断線がなく歩留まりが向上する。
【0200】
これにより、作業性を向上させ、かつSiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層で発光素子表面全体、即ち発光素子の上面、側面および角の部分を同じ膜厚で被覆することができる。
【0201】
ところで、本実施の形態においては、複数個のパッケージ204が配列した状態で、発光素子101をパッケージ204にそれぞれダイボンドし、発光素子101の電極を外部電極とワイヤーボンドした後に、塗布液203を発光素子101の上方から吹き付けることができる。しかしながら、パッケージ204の凹部側面をテーパー形状とし、パッケージの正面方向における光の取り出し効率を上げる反射部として利用する場合に、該凹部の側面に塗布液が付着すると発光素子から出光した光は該側面で乱反射するため、パッケージ204正面方向における光取り出し効率の向上が図れない。
【0202】
そこで、本実施の形態では、パッケージ204の凹部側面、および外部電極に塗布液が付着するのを防ぐため、図4に示すように、マスク206の上方から発光素子101の表面上に塗布液を吹き付ける。マスク206は、パッケージ204の凹部側面および外部電極(図示せず)を完全に覆い、発光素子101の上面、側面および角には塗布液が吹き付けられるような大きさの貫通孔が設けられた板であり、金属製マスク、強化プラスチック製マスク等がある。
【0203】
また、図4に示されるように、本実施の形態おける塗布後の発光素子101はヒーター205上において温度50℃以上300℃以下の加温状態におかれる。このように発光素子101を加温状態におく方法として、発光素子101をオーブン等の加温装置内で加温する方法を使用してもよい。加温により、エタノール、ゾル状態の加水分解溶液に僅かに含まれる水分および溶剤を蒸発させ、かつ、ゾル状態の塗布液から主として非晶質のSiOが得られる。さらに本実施の形態おける塗布液203は、粘度調節されているため、発光素子101の上面、側面および角、さらに支持体表面に吹き付けられた後に吹き付けられた場所から流れ出すことはなく、それらの場所で塗布直後に加温される。これにより、SiOにより蛍光体202がバインドされてなるコーティング層により発光素子の上面、側面および角の部分を覆うことができる。
【0204】
図5は、本発明に使用するスプレー装置300の構造を示す模式図である。
【0205】
図5に示されるように、塗布液を収納する容器301、塗布液の流量を調節するバルブ302、塗布液をノズル201に搬送した後ノズル201から容器301に搬送する循環ポンプ303、及び螺旋状に塗布液を噴出するノズル201が、それぞれ搬送管307、308、309で結ばれたスプレー装置300を用いる。
【0206】
(容器301)
塗布液を収納する容器301には撹拌機304が取り付けてあり、塗布作業中は塗布液を常に撹拌している。容器301に収納されている塗布液は、撹拌機304によって常に撹拌されており、塗布液に含まれる蛍光体は溶液中で常に均一に分散している。
【0207】
(バルブ302)
バルブ302は、容器301から搬送管309を通して搬送されてくる塗布液の流量をバルブの開け閉めによって調節する。
【0208】
(循環ポンプ303)
循環ポンプ303は、塗布液を容器301からバルブ302およびコンプレッサー305を経由させてノズル201の先端部まで搬送管309を通して搬送し、その後、ノズル201から噴出されずに残った塗布液を、搬送管308を通して容器301まで搬送する。塗布液は、循環ポンプ303によって容器301からバルブ302を経由してノズル201の先端部まで搬送管309を通して搬送され、その後搬送管308を通して容器301まで搬送されているため、常にスプレー装置内を循環している状態にある。従って、塗布液はスプレー装置全体にわたって撹拌、または循環状態にあるため、塗布液に含まれる蛍光体は、塗布作業中常に均一な分散状態にある。
【0209】
(コンプレッサー305)
コンプレッサー305は、搬送管307あるいは309を介して装置内に設置されており、搬送管307を通して搬送される空気を圧縮し、搬送管309を通して搬送される塗布液の圧力を調節する。コンプレッサー305により、圧縮空気および圧力調節された塗布液がそれぞれノズル201に搬送される。ここで圧縮空気の圧力は圧力計306によって監視される。
【0210】
また、ノズルの手前には操作ハンドルが取り付けてあり、ハンドルの握り具合を調節することで、ノズルの先端から噴出する塗布液の量を調節することが可能な構造となっている。
【0211】
以上のようなスプレー装置300を使用して、塗布液を高圧のガスと共に高速で噴出させて、発光素子の上面、側面および角の上に塗布する。
【0212】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は具体的実施例のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0213】
(実施例1)
本実施例では、図1及び2に示す発光装置を作製する。
(1)LEDチップ作製
LEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成させた。ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム系半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム系半導体を形成しPN接合を形成させる。半導体発光素子として、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成させた。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmであり、単一量子井戸構造とされるノンドープInGaNの活性層を形成させた。(なお、サファイア基板上には低温で窒化ガリウム半導体を形成させバッファ層とさせてある。また、P型導電性を有する半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。)
【0214】
エッチングによりサファイア基板上のPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成させた。こうして出来上がった半導体ウエハーを、スクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として350μm角のLEDチップを形成させた。
【0215】
(2)パッケージ作製
パッケージ105は金属からなり、中央部に凹部aを有する。また、前記凹部の周囲であるベース部bは、厚さ方向に貫通された貫通孔を2つ有し、それぞれの貫通孔は前記凹部を挟んで対向している。該貫通孔内には、絶縁部材である硬質ガラス103を介して正及び負のリード電極102がそれぞれ挿入されている。
【0216】
(3)ダイボンド
凹部a内に収納されるLEDチップ101は、紫外線を発光する発光素子である。LEDチップ101と金属パッケージ105との接着は、Au−Snなどの共晶はんだ等を使用して行うこともできるが、本実施例では、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上を有する酸化物である無機物にてダイボンド(接着)する。
【0217】
SiOによりLEDチップがダイボンドされてなる発光装置は、アルキルシリケートと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるシリカゾルを接着液として調整し、該接着液を、パッケージの所定の位置にディスペンスした後、接着液の上からLEDチップの基板面を下にして加圧しながら載置し、加熱することにより形成する。
【0218】
以下、本発明における、SiOによりLEDチップをダイボンドする方法について、エチルシリケートの加水分解溶液を接着液として使用する場合を例にとり順を追って説明する。ここで使用するエチルシリケート加水分解溶液については、触媒として加える塩酸が微量であるため、塩酸濃度が20〜500ppmのほぼ中性に調整されており、金属パッケージ表面に供給する場合であっても表面は酸やアルカリによる損傷を受けることがない。
【0219】
工程1.
アルキルシリケートとしてメチルシリケート、エチルシリケート、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、が使用できるが、本実施例では、SiOを30〜50wt%含むエチルシリケートを縮合させた無色透明のオリゴマー液体を使用する。シリカ分30〜50wt%という数値は、接着強度、その他粘度、比重、保存安定性、使用時の取り扱い易さ等を考慮し、経験的に適当とされたものである。これにより、ワイヤーボンディング時に、発光素子が支持体表面から剥離しない程度の接着強度を維持できる。接着強度が弱いと、ボンディング材料を供給した直後のキャピラリーを引き戻す際に、発光素子が該キャピラリーに引っ張られて、該発光素子が支持体表面から剥離する問題が生じる。また、エチルシリケートは、予め触媒(HCl)存在下において水と反応させて加水分解反応を進行させ、ゾル状態にしたものを使用する。本実施例では、SiOを30〜50wt%含むエチルシリケートと、溶媒と、水と、1規定塩酸(HCl)とが、重量比で75:16:8:1となるように混合しエチルシリケートを加水分解反応させ、25℃における混合溶液の粘度が約120cpsとなるようなゾル状態としたものを使用する。
【0220】
まず、エチルシリケートの加水分解溶液とエチレングリコールが重量比で1:1となる混合溶液を調整し、撹拌して接着液とした。ここで、ゾル状態のエチルシリケートは自然乾燥してゲル化しやすいため、エチレングリコール、ブタノール、酢酸ブチルのような高沸点(100℃〜200℃)の有機溶剤と混合することが好ましい。このような高沸点の有機溶剤は、常温で液体として存在しているため、エチルシリケートと有機溶剤を混合すると、乾燥したSiO等の凝固物が、ディスペンス装置の吐出口の先端部、スタンピング装置の印加バリの先端部などに付着し接着液の吐出に対して障害物となること等による接着液の供給量の変動を防ぐことができ、作業性をよくすることができる。
【0221】
工程2.
上記接着液を供給装置に投入し、ディスペンスあるいはスタンピングにより接着液をパッケージ上の所定の位置に供給する。実施例1において、接着液は凹部aの底面中央に供給され、供給される接着液の量は、供給された接着液の上に発光素子を加圧しながら載置したときに該接着液が発光素子の基板側面を覆う程度に経験的に調節された量である。
【0222】
工程3.
接着液を介して支持体上面とLEDチップの基板面を対向させ、LEDチップを上方から加圧しながらダイボンドする。その後、室温で放置すると、ゾル状態のエチルシリケート加水分解溶液は次第に自然乾燥してゲル状態となる。
【0223】
工程4.
自然乾燥してゲル状態となった接着液から非晶質のSiOを得るため、またエチルシリケートの加水分解によって生成したエタノール、および溶剤等を飛ばすため、発光素子および金属パッケージはヒーター上において50〜300℃、好ましくは150〜200℃の温度で約2時間加温状態におく。これにより、発光素子が接着液を介して最初に載置された位置からズレ動くことはなく、SiOにより発光素子がダイボンドされてなる発光装置を形成させることができる。またここで、接着液に急激な温度変化を与えるのではなく、徐々に温度を上げていくことが好ましい。ゲル状態にある接着液の温度をゆっくり上昇させた方が、接着液中の残留有機物を少なくできることが確認されており、これにより青色より波長の短い光を発光する発光素子を使用しても、接着層の劣化や変色のない信頼性の高い発光装置を実現できる。
【0224】
ここで、窒化物系発光素子は350℃以上の温度下に置かれると、発光素子としての性能が低下するため、150℃〜200℃の温度下で非晶質化するアルキルシリケートは、発光素子をパッケージ等に支持体にダイボンドするための接着液としての使用に適している。また、本工程において200℃まで温度が上昇したときに生成するSi(OH)は、300℃の温度で2時間乾燥させることにより、SiOに分解する。
【0225】
このようにSiO等の無機物にて接着層を形成し、パッケージ等の支持体に発光素子をダイボンドすると、有機物からなる従来の樹脂を使用してダイボンドすることにより形成される発光装置と比較して、青色より短い波長の光を含む光を発光する発光素子をダイボンドしても、接着層がそれらの光に対して劣化あるいは変色しにくい。また、高出力な光とそれに伴う高温に対して劣化あるいは変色しにくい。
【0226】
(4)ワイヤーボンド
LEDチップ101上に設けられた電極と正及び負のリード電極102とは、金線によりワイヤーボンディングされる。このとき、LEDチップ101の電極面は、約180℃に加熱される。
【0227】
(5)蛍光体バインドコーティング層の作製
図2に示されるように、本実施例では2重のコーティング層を形成する。まず、発光素子の上にAlによりCCA−Blue(化学式、Ca10(POClBr、付活材Mn、Eu)蛍光体がバインドされてなるコーティング層109を形成し、その上にSiOによりイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体がバインドされてなるコーティング層108を形成する。
【0228】
まず、蛍光体を作製する。CCA−Blue蛍光体は、以下のように作製した。CCA−Blue蛍光体の構成元素のリン酸塩酸化物もしくは熱分解によって酸化物などのなり得る各種化合物と塩化アンモニウムを所定量秤量し、ボールミル等で混合した後、坩堝に入れ、N、H等の還元雰囲気において、800℃から1200℃の温度で3〜7時間焼成する。得られた完成品を湿式で粉砕、篩後、脱水、乾燥してCCA−Blue蛍光体を得ることができる。イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して(Y0.8Gd0.23Al512:Ce蛍光体を形成させた。
【0229】
コーティング層108及び109は、所定の有機金属化合物と高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるゾル中に蛍光体(粉体)を均一に分散させた塗布液を調整して、該塗布液をパッケージ内にダイボンドされた後ワイヤーボンディングされた発光素子の全面を覆うようにスプレーコーティングした後、加熱して非晶質化させることにより形成される。
【0230】
以下、コーティング層のスプレーコーティングによる形成方法について、コーティング層108を、エチルシリケートを使用して形成する場合を例にとって説明する。ここで使用するエチルシリケート加水分解溶液については、触媒として加える塩酸が微量であるため、塩酸濃度が20〜500ppmのほぼ中性に調整されており、発光素子表面に塗布しても表面は酸やアルカリによる損傷を受けることがない。また、金属パッケージに使用されるAg、Ni等を腐食することがない。
【0231】
工程1.
アルキルシリケートとしてメチルシリケート、エチルシリケート、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、が使用できるが、本実施例では、SiOを10wt%含むエチルシリケートを縮合させた無色透明のオリゴマー液体を使用する。シリカ分10wt%という数値は、粘度、比重、保存安定性、使用時の取り扱い易さ等を考慮し、経験的に最適とされたものである。また、エチルシリケートは、予め触媒(HCl)存在下において水と反応させて加水分解反応を進行させ、ゾル状態にしたものを使用する。本実施例では、SiOを10wt%含むエチルシリケートと、溶媒と、水と、1規定塩酸(HCl)とが、重量比で75:16:8:1となるように混合しエチルシリケートを加水分解反応させ、25℃における混合溶液の粘度が2.5〜500cpsとなるようなゾル状態としたものを使用する。
【0232】
まず、エチルシリケートの加水分解溶液とエチレングリコールと蛍光体が重量比で1:1:1となる混合溶液を調整し、平均粒子径3〜10μmの蛍光体が塗布液中で均一に分散するように撹拌して塗布液を調整した。ここで、ゾル状態のエチルシリケートは自然乾燥してゲル化しやすいため、エチレングリコール、ブタノール、酢酸ブチルのような高沸点(100℃〜200℃)の有機溶剤と混合することが好ましい。このような高沸点の有機溶剤は、常温、室温、あるいは本発明におけるスプレー装置が置かれる系において想定しうる温度のもとで液体として存在しているため、エチルシリケートと有機溶剤を混合すると、乾燥したSiO等の凝固物がノズルの先端部などに付着し塗布液の噴出に対して障害物となることによる塗布液の噴出量の低下を防ぐことができ、作業性をよくすることができる。また、ゲル化したエチルシリケートの加水分解溶液中の蛍光体は、均一に分散した状態であることが確認された。
【0233】
工程2.
上記塗布液を図5に示す装置を用いて塗布する。まず、容器301に入れ、循環ポンプ303によって塗布液を容器からノズル201に搬送する。塗布液の流量はバルブ302によって調節する。
【0234】
ここで、霧状の塗布液がノズル201から噴出されると、ノズルの付近では円錐状に噴霧が広がるが、ノズルから離れた所では、円柱状に噴霧が広がる。そこで、本実施例では、発光素子の上面からノズル下端までの距離を40〜50mmとして円柱状に噴霧が広がった状態の所に発光素子の表面がくるように設置する。このとき、発光素子は塗布液と同じ材料によってパッケージ上にダイボンドされ、さらに発光素子の電極と外部電極は金線等でワイヤーボンドされている。さらに、パッケージの正面方向には金属マスクが配置され、金属マスクの上方から見ると、金属マスクに設けられた貫通孔を通して、発光素子の上面、側面および角が露わになっているが、パッケージの側面およびリード電極は金属マスクによって完全に覆われている。したがって、金属マスクの上方から貫通孔内に向かって塗布液を吹き付けた場合に塗布されるのは、発光素子の上面、側面および角の部分である。
【0235】
このスプレーによるコーティングを行うことにより、均一に蛍光体が分散した状態で、SiOにより蛍光体をバインドしたコーティング層で発光素子の上面、側面および角の部分を覆うことができる。
【0236】
工程3.
工程2を行った後、室温で放置すると、ゾル状態のエチルシリケート加水分解溶液は次第に自然乾燥してゲル状態となる。
【0237】
工程4.
自然乾燥してゲル状態となった塗布液から主として非晶質のSiOを得るため、またエチルシリケートの加水分解によって生成したエタノール、および溶剤等を飛ばすため、発光素子はヒーター205上において150℃の温度で30分間加温状態におく。これにより、塗布液が発光素子の上面、側面および角、さらに支持体表面に吹き付けられた後に流れ出すことはなく、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の上面、側面および角、さらに支持体表面に形成させることができる。またここで、塗布液に急激な温度変化を与えるのではなく、徐々に温度を上げていくことが好ましい。ゲル状態にある塗布液の温度をゆっくり上昇させた方が、コーティング層中の残留有機物を少なくできることが確認されており、これにより青色より波長の短い光を発光する発光素子を使用しても信頼性の高い発光装置を実現できる。
【0238】
ここで、窒化物系発光素子は350℃以上の温度下に置かれると、発光素子としての性能が低下するため、50℃〜300℃の温度下で発光素子表面への固着が可能なアルキルシリケートは、蛍光体のバインダとしての使用に適している。また、本工程において200℃まで温度が上昇したときに生成するSi(OH)は、300℃の温度で2時間乾燥させることにより、ほとんどSiOに分解する。
【0239】
以上の工程により、均一に分散した状態の蛍光体を含み、層厚が約20μmのコーティング層が発光素子の上面、側面および角の上に形成される。ここで、コーティング層は、平均粒子径3〜10μmの蛍光体粒子の周囲を、平均粒子径が数nm程度であって、SiOやSi(OH)などの無機物を主成分とする非晶質の粒子が密集して取り囲む状態で蛍光体粒子が固着されることによって形成される。
【0240】
なお、分析の結果、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層中および接着層中には、エチルシリケートを加水分解する工程で触媒として使用される塩化水素(HCl)や、工程4において生成するSi(OH)などの無機物、および未反応のエチルシリケートやエタノールなどの有機物が、それぞれ数ppmから数十ppmの単位で存在している。従って、SiOにより蛍光体がバインドされてなる、厚さ約20μmのコーティング層は、SiOと蛍光体からなる無機物により、99.9%以上の比率で形成されていると考えてよい。
【0241】
(4)封止
金属パッケージの主面側に透光性窓部107と金属部からなるリッド106を取り付け、金属部と金属パッケージ105との接触面を溶接することによって、窒素ガスとともにパッケージ内の発光素子等を気密封止する。
【0242】
このように構成すると、青色より短い波長の光を含む光を発光する発光素子を使用しても、接着層およびコーティング層がそれらの光に対して劣化あるいは変色せず、また、高出力な光とそれに伴う高温に対して劣化あるいは変色しないため、信頼性の高い発光装置を提供できた。さらに、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約1.4)はAlにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約1.7)より小さく、Alにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率は窒化ガリウム系化合物半導体層の屈折率(約2.5)より小さいため、発光素子からの光の取り出し効率が高まり出力を向上させることができ、放熱性も向上するなどの効果がある。
【0243】
本実施の形態では、コーティング層に含まれる蛍光体の含有量は、出力される光が実質的に蛍光体によって波長変換された白色光のみになるように、すなわち、発光素子により発光された青色光のほとんどが蛍光体に吸収されて該蛍光体を励起するように比較的大きく設定することが好ましい。このようにすると発光効率(発光素子に入力された電力に対する出力される光の比)を高くすることができる。
【0244】
また、蛍光体がバインドされてなるコーティング層に含有させる蛍光体の量は、所望の色調に対応させて種々の値に設定されるものであり、本発明は蛍光体の含有量により限定されるものではないが、本発明者らの検討によると、酸化物により蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、蛍光体を少しでも含むと、発光素子表面上への付着強度が強くなり、また割れにくくなることも確認されている。
【0245】
以上のように構成された実施例1の発光装置は、紫外線による劣化がほとんどない無機物によって発光素子がダイボンドされ、さらに前記無機物により蛍光体がバインドされてなるコーティング層が発光素子の全面に形成されているので、LEDチップとして紫外域で発光する発光素子を用いることも可能となる。
【0246】
さらにコーティング層および接着層をリード電極から絶縁された凹部a内に形成し、発光素子を凹部a内に固着させることにより、発光素子は、発光に必要な電力をワイヤから供給され、リード電極を流れる電流による悪影響を受けることがなく、ノイズ等を発生させることがないため、信頼性の高い発光装置を形成することが可能である。また、発光素子をリード電極に固着させて発光装置を形成すると、発光素子を固着させていない他方のリード電極と発光素子の電極とを結ぶワイヤが、発光素子を固着させているリード電極に接触した状態となり、製造歩留まりを低下させる原因となり得るが、本発明のように正負一対の両リード電極から絶縁された支持体上に発光素子を固着させることで製造歩留まりを向上させることが可能である。
【0247】
(実施例2)
実施例1におけるスプレーを使用して、上記塗布液を発光素子上に塗布する代わりに、上記塗布液を発光素子および支持体の表面にディスペンス、スピンコート、スクリーン印刷あるいはその他の塗布方法によって発光素子の上に付着させる他は実施例1と同様に発光装置を形成した。
【0248】
以上の実施例2により形成された発光装置の断面は、発光素子の上面および支持体の表面には蛍光体を含むSiO層が形成されているものの、発光素子の角の部分には蛍光体を含むSiO層が形成されておらず、そこには蛍光体が存在しなかった。しかしながら、紫外線を発光する発光素子を用い、紫外線によって劣化しない無機物によりバインドされた蛍光体を有する発光装置を構成できるので、長時間使用しても発光色のバラツキの少ない発光装置を提供できた。
【0249】
(実施例3)
青色、あるいは青色より短い波長の光を発光する発光素子の上に、主成分としてジルコニア(ZrO)を含み、蛍光体を含まないコーティング層を形成し、該コーティング層の上に主成分としてSiOを含み、蛍光体を含まないコーティング層を形成する他は実施例1と同様にして、発光装置を形成した。上述したように蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、蛍光体を少しでも含むと発光素子表面上への付着強度が強くなり、また割れにくくなる。しかし、本実施例においては蛍光体を含まない。そこで、コーティング層の発光素子表面との付着強度を一定に保ち、発光素子表面からコーティング層が剥離するのを防ぐため、粘度が130cps(25℃)程度の塗布液を使用した。
【0250】
このように構成すると、青色より短い波長の光を含む光を発光する発光素子を使用しても、接着層およびコーティング層がそれらの光に対して劣化あるいは変色せず、また、高出力な光とそれに伴う高温に対して劣化あるいは変色しないため、信頼性の高い発光装置を提供できた。さらに、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約1.4)はZrOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約2.0)より小さく、ZrOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率は窒化ガリウム系化合物半導体層の屈折率(約2.5)より小さいため、発光素子からの光の取り出し効率が高まり出力を向上させることができるなどの効果がある。
【0251】
(実施例4)
青色、あるいは青色より短い波長の光を発光する発光素子の上に、主成分としてイットリア(Y)を含み、蛍光体を含まないコーティング層を形成し、該コーティング層の上に主成分としてSiOを含み、蛍光体を含まないコーティング層を形成する他は実施例4と同様にして、発光装置を形成した。
【0252】
このように構成すると、青色より短い波長の光を含む光を発光する発光素子を使用しても、接着層およびコーティング層がそれらの光に対して劣化あるいは変色せず、また、高出力な光とそれに伴う高温に対して劣化あるいは変色しないため、信頼性の高い発光装置を提供できた。さらに、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約1.40)はYにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率(約1.78)より小さく、Yにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層の屈折率は窒化ガリウム系化合物半導体層の屈折率(約2.50)より小さいため、発光素子からの光の取り出し効率が高まり出力を向上させることができるなどの効果がある。
【0253】
(実施例5)
蛍光体粒子を予めエチルシリケートでコーティングして、蛍光体粒子の表面にSiOの膜を形成し、塗布液を調整する他は実施例1と同様に発光装置を形成した。このようにすると、蛍光体粒子間の接着強度が増し、実施例1より製造歩留まりが向上した。
【0254】
(実施例6)
接着液を調整する工程において、アルミナをフィラーとして混合した接着液を調整する以外は、実施例1と同様にして発光装置を形成した。このように構成すると、アルミナはSiOより熱伝導性がよいため、実施例1における発光装置より放熱効果が改善された。
【0255】
(実施例7)
本実施例では、図3に示す発光装置を作製する。実施例1と同様の工程については、説明を省略する。
(1)パッケージ形成
インサート成形によりポリカーボネート樹脂を用いてチップタイプLEDのパッケージ114を形成させた。チップタイプLEDのパッケージ114内は、LEDチップが配される開口部を備えている。パッケージ114中には、銀メッキした銅板を外部電極として配置させてある。
【0256】
(2)ダイボンド
次に、実施例1と同様にして、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上を有する酸化物である無機物にてLEDチップをパッケージにダイボンド(接着)する。
【0257】
(3)ワイヤーボンド
LEDチップ101上に設けられた電極と正及び負のリード電極102とは、金線によりワイヤーボンディングされる。このとき、LEDチップ101の電極面は、約180℃に加熱される。
【0258】
(4)蛍光体バインドコーティング層の作製
次に、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y及びアルカリ土類金属の1種又は2種以上を有する酸化物で蛍光体をバインドしたコーティング層を形成する。本実施例では、一般的に使用されるSiOにて蛍光体をバインドし、図3に示すように、SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層を発光素子の表面上、および発光素子の表面上以外の支持体上に、コーティング層として形成する。
【0259】
SiOにより蛍光体がバインドされてなるコーティング層は、アルキルシリケートと高沸点有機溶剤とを所定の割合で混合してなるシリカゾル中に蛍光体(粉体)を均一に分散させた塗布液を調整して、該塗布液をパッケージ内にダイボンドされた後ワイヤーボンディングされた発光素子の全面を覆うようにスプレーコーティングした後、SiO2成分を加熱することにより形成される。
【0260】
塗布液のスプレーコーティングは、実施例1と同様にして行うことができる。図3に示されるように、塗布液とガスを発光素子の上面、側面および角、さらに支持体表面に所望の膜厚になるまで繰り返し吹き付けて塗布液を付着させる。ここで、所望の膜厚とは、コーティング層内に含まれる蛍光体によってLEDからの光が十分に波長変換され、蛍光体粒子によって光の透過率の低下を招かない程度のコーティング層の厚さをいう。このスプレーによるコーティングを行うことにより、均一に蛍光体が分散した状態で、SiOにより蛍光体をバインドしたコーティング層で発光素子の上面、側面および角の部分、さらに支持体の上をほぼ均一な膜厚で覆うことができる。
【0261】
(5)封止
パッケージ114の凹部内にモールディング樹脂を充填し、LED101やワイヤ104を封止する。
【0262】
得られた発光装置に電力を供給させることによって白色系の混色光を発光させることができる。本発明による発光装置の発光光率は24.0lm/wであった。
【0263】
(実施例8)
以下、図面を参照して本実施例に係る窒化物半導体発光素子ついて説明する。本実施例にかかる発光素子は、支持基板と、該支持基板の一方の主面上に形成され、共晶層を有する接合層と、該接合層の上に形成された1層以上のp型窒化物半導体層と、該p型窒化物半導体層の上に形成された活性層と、該活性層の上に形成された1層以上のn型窒化物半導体層とからなる積層体を含む発光素子である。
【0264】
図6は、本実施例に係る窒化物半導体発光素子の製造方法における製造工程の一例を示す模式断面図である。成長用基板1の表面に、バッファ層3と高温成長層4とから成る下地層2を形成する(図6A)。次に、下地層2上にn型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、p型コンタクト層8、そして、1層以上の金属層から成る第1の接合層9を形成する(図6B)。ここで、第1の接合層9において、p型コンタクト層8上にp電極を形成した後、オーミック接触を得るためのアニール処理を行う。次に、1層以上の金属層から成る第2の接合層11を表面に形成した支持基板10を、第1の接合層9と第2の接合層11とが対向するように成長用基板1の上に積層し、加熱圧接して接合する(図6C)。
【0265】
次に、支持基板10と接合した成長用基板1を研磨器に設置し、成長用基板1のラッピングを行い、成長用基板1と下地層2を除去して、n型クラッド層5を露出させる(図6D)。
【0266】
次に、露出させたn型クラッド層5の表面をポリシングした後、n型クラッド層5上にn電極12を形成する一方、支持基板10上にはp電極用パッド電極13を全面に形成する。次に、ダイシングにより発光素子をチップ状に分離する。これにより、支持基板上に窒化物半導体層が積層され、電極が支持基板上に形成された発光素子を得ることができる(図6E)。
【0267】
本実施例の方法において、成長用基板には、C面、R面及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgAl2O4のような絶縁性基板)、そして窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等を挙げることができるが、サファイアやスピネルが好ましい。さらに、成長用基板は、オフアングルしたものを用いることが好ましい。この場合ステップ状にオフアングルしたものを用いることにより、窒化ガリウムから成る下地層の結晶性を向上させることができる。
【0268】
また、成長用基板1上に窒化物半導体層を積層する場合、下地層上にELO(Epitaxially Lateral Overgrowth)成長させることにより結晶性の向上した窒化物半導体を得ることができる。具体的には、成長用基板上に下地層を成長させ、その下地層上にストライプ状のマスクを複数形成し、マスクの開口部から窒化物半導体を選択成長させ、横方向の成長を伴った成長により成膜された窒化物半導体層(横方向成長層)を形成する。この横方向成長層は貫通転位が低減されているので、横方向成長層の上に形成する窒化物半導体の結晶性を向上させることができる。
【0269】
成長用基板1としては、成長用基板となる材料の主面をオフアングルさせた基板、さらにステップ状にオフアングルさせた基板を用いるほうが好ましい。オフアングルさせた基板を用いると、表面の3次元成長が見られず、ステップ成長があらわれ表面が平坦になり易い。
【0270】
さらに、支持基板10には、Ag,Cu,Au,Pt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W,Mo,Cr,Ni等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属と、から成るものを用いることができる。このように支持基板10が導電性を有することにより、支持基板10により発光素子の電気的導通をとることができる。さらに、放熱性を高める支持基板10としては、Cu−WあるいはCu−Moの複合体を用いることが好ましい。熱伝導率の高いCuを有することにより放熱性が優れているからである。また、支持基板10には、Si、SiC等の半導体、Cu−ダイヤ等の金属とセラミックスの複合体などを用いることもできる。なお、支持基板10の厚さは、放熱性を高めるため50〜500μmが好ましい。
【0271】
また、第1の接合層9は、少なくとも、p型窒化物半導体層とオーミック接触し、高い反射率を有するp電極をp型窒化物半導体層に接して有することが好ましい。p電極には、Rh,Ag,Ni−Au,Ni−Au−RhO及びRh−Irのいずれか、より好ましくは、Rhを用いることができる。ここで、p電極は、n型窒化物半導体層に比べ抵抗率の高いp型窒化物半導体層上に形成するため、p型窒化物半導体層のほぼ全面に形成することが好ましい。なお、p電極の厚さは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0272】
また、第1の接合層9のp電極を形成したp型窒化物半導体層の露出面に絶縁性の保護膜を形成することが好ましい。この保護膜の材料には、SiO、Al、ZrO、TiO等から成る単層膜あるいは多層膜を用いることができる。さらに、その保護膜の上にAl、Ag、Rh等の高反射率の金属膜を形成しても良い。この金属膜により反射率が高くなり、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0273】
また、第1の接合層9のp電極の上に第1の共晶形成層を設けるとともに、第2の接合層11に、支持基板10の主面の上に第2の共晶形成層を設けることが好ましい。第1及び第2の共晶形成層は、接合時に互いに拡散して共晶層を形成する層であり、それぞれ、Au、Sn、Pd、In等の金属から成る。第1及び第2の共晶形成層の組合せは、Au−Sn、Sn−Pd、又はIn−Pdが好ましい。さらに好ましくは、第1の共晶形成層にSnを、そして第2の共晶形成層にAuを用いる組合せである。
【0274】
また、第1の接合層9の第1の共晶形成層とp電極との間に、p電極側から密着層とバリア層を設けることが好ましい。密着層はp電極との間に高い密着性を確保する層であり、Ti、Ni、W及びMoのいずれかの金属が好ましい。また、バリア層は、第1の共晶形成層を構成する金属が密着層へ拡散するのを防止する層であり、PtあるいはWが好ましい。また、第1の共晶形成層の金属が密着層へ拡散するのをさらに防止するため、バリア層と第1の共晶形成層との間に、0.3μm程度の厚さのAu膜を形成しても良い。なお、第2の共晶層と支持基板との間に、上記の密着層とバリア層及びAu膜を設けることが好ましい。
【0275】
また、接合用積層体と支持基板10とを加熱圧接する際の温度は、150℃〜350℃が好ましい。150℃以上とすることにより、共晶形成層の金属の拡散が促進され均一な密度分布の共晶が形成され、接合用積層体と支持基板との密着性を向上させることができる。350℃より大きいと、共晶形成層の金属がバリア層、さらには密着層まで拡散して、良好な密着性が得られないからである。
【0276】
また、支持基板を接合後に成長用基板を除去するには、研磨、エッチング、電磁波照射、あるいはこれらの方法を組み合わせた方法を用いることができる。電磁波照射は、電磁波に例えばレーザを用い、支持基板を接合後、成長用基板の下地層の形成されていない面の全面にレーザを照射して、下地層を分解させることにより成長用基板と下地層とを除去することができる。さらに、成長用基板と下地層とを除去した後、露出した窒化物半導体層の表面をCMP処理して所望の膜を露出させる。これにより、ダメージ層の除去や、窒化物半導体層の厚み及び表面粗さの調整を行うことができる。
【0277】
なお、電磁波照射には、以下の方法を用いることもできる。すなわち、成長用基板上に窒化物半導体からなる下地層を形成し、次いで、その下地層を部分的に成長用基板までエッチングして凹凸を形成した後、凹凸を有する下地層上にELO成長させて横方向成長層を形成する。次いで、横方向成長層の上にn型窒化物半導体層、活性層、p型窒化物半導体層を順次形成した後、p型窒化物半導体層の上に支持基板を接合する。次いで、成長用基板の下地層の形成されていない面の全面にレーザを照射して、下地層を分解させることにより成長用基板と下地層とを除去することができる。この方法によれば、電磁波照射時に窒化物半導体の分解により発生するN2ガスが上記の凹凸と横方向成長層との間に形成された空隙に広がり、ガス圧による成長用基板の割れを防止し、さらにその割れに起因する下地層のえぐれ傷を防止して、面状態及び結晶性の良好な窒化物半導体基板を得ることができる。また、研磨による方法に比べ、作業工程を簡略化することができるので、歩留まりが向上するという効果も得られる。
【0278】
また、n型窒化物半導体層の露出面に形成するn電極には、Ti−Al−Ni−AuあるいはW−Al−W−Pt−Auの多層電極を用いることができる。n電極の厚さは、0.1〜1.5μmが好ましい。また、n電極以外の露出面を覆うように、SiO、Al、ZrO、TiO等の絶縁性の保護膜を設けることが好ましい。
【0279】
本実施例におけるLED素子は、サイズが1mm×1mmであり、順方向電流20mAにおいて、460nmの青色発光を呈した。また、LED素子の膜厚は、支持基板の厚さを除くと、窒化物系半導体層の総膜厚が5〜10μmであった。なお、本実施例においては、p電極およびn電極が互いに素子の反対方向に位置する構成としたが、図6Eに示される積層体の一部をRIEによりp型コンタクト層8までエッチング処理を行って、p電極あるいはp電極用パッド電極13を設けることにより、図9に示されるような同一方向にp電極およびn電極を有する発光素子とすることができる。
【0280】
続いて、金属パッケージ105上にLED素子を載置し、導電性ワイヤ104にて外部電極102とLED素子との電気的導通を図った後、以下の方法により窒化物系半導体を含む発光素子の上に図7に示されるようなコーティング層14を形成する。
【0281】
[1]まず、LED素子の電極上にレジストあるいはポリイミドによる膜を形成する。[2]次に、上述したように、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とエチルシリケートの加水分解溶液と高沸点溶媒との混合溶液を調整し、蛍光体が均一に分散するように撹拌して塗布液を調整する。[3]上述したスプレーコーティング方法により、支持基板上および保護膜を形成した部分を除くLED素子の上面および側面上に塗布液を付着させる。[4]150℃の温度で30分間乾燥させることにより一次硬化を行い膜厚数十μmの層を形成する。[5]形成された層上に蛍光体を含まないエチルシリケートの加水分解溶液を含浸させる。[6]最後に、レジストあるいはポリイミドによる膜を除去し、240℃の温度で30分間乾燥させることにより二次硬化を行う。以上[1]から[6]の工程により、総膜厚が5〜10μmである窒化物系半導体層の少なくとも露出面上にある連続した層であり、且つ、LED素子の電極上を除く素子の上面、側面および角の上に配置され、ほぼ均一な膜厚20〜30μmのコーティング層14が形成された。
【0282】
本実施例にかかる発光装置は、青色から紫外線領域の光を出光する発光素子を共に使用しても劣化しない無機物を材料として蛍光体を発光素子の上に固着しており、長時間使用しても発光色のバラツキの少ない発光装置を提供できる。また、少なくとも発光素子の発光観測面をほぼ均一な膜厚で覆うコーティング層14を形成することにより、本実施例に係る発光装置は、発光観測方向が異なっても、色温度の変化が少ない発光装置とすることが可能である。さらに、発光素子からの発光が観測される全ての面に蛍光体を含有するコーティング層が形成され、支持基板を光が透過することはないため、従来のサファイア基板を使用した発光素子と比較して、蛍光体により波長変換された光の取り出し効率が向上した。また、熱伝導性の良い支持基板を使用することにより、従来のサファイア基板を使用した発光素子と比較して、放熱性が向上した。
【0283】
(実施例9)
図7に示されるようにエッチングにより支持基板上のPN各半導体側面を露出させた後、実施例8と同様に調製した塗布液、あるいはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体をシリコーン樹脂に含有させた材料を用いたスクリーン印刷によりコーティング層を形成させた。ここで、蛍光体をシリコーン樹脂に含有させた材料を使用する場合は、温度150℃1時間の条件のもとで硬化を行った。こうして出来上がった半導体ウエハを、スクライブラインを引いた後、ダイシングにより分割させ発光素子としてLEDチップを形成させた。
【0284】
このように、ウエハ状態のときに蛍光体を含むコーティング層14を形成することにより、金属パッケージ等にLEDチップを載置して発光装置を形成する前段階、即ち蛍光体を含むコーティング層が形成されたLEDチップの段階で発光色の検査および選別を行うことが可能であるため、発光装置の製品歩留まりが向上する。また、本実施例に係るLEDチップは、上記コーティング層14を形成したLEDチップに対する発光観測方向が異なっても、色温度の変化が少ない発光素子とすることが可能である。
【0285】
(実施例10)
図8は、本実施例にかかる半導体発光素子の模式的な断面図を示す。
【0286】
成長用基板を除去した後、光の取り出しを向上させるため、n型窒化物半導体層の露出面および/または半導体層の側面をRIEにより凹凸(ディンプル加工)を形成する。本実施例においては、図8に示されるように特にn型クラッド層5に対してディンプル加工を行ったが、n型クラッド層5から活性層6p型クラッド層およびp型コンタクト層にかけてディンプル加工を行っても構わない。その凹凸の断面形状は、メサ型あるいは逆メサ型、そして、平面形状は島状、格子状、矩形状、円状あるいは多角形状とすることができる。このようなディンプル加工を行った露出面および半導体層の側面に対して、実施例8と同様にコーティング層14を形成する。
【0287】
このように形成することにより、発光素子からの光の取り出し効率を向上させ、また、長時間使用しても発光色のバラツキの少ない発光装置を提供できる。
【0288】
(実施例11)
実施例8と同様の条件により、窒化物半導体素子を作製したが、本実施例では支持基板上に複数の窒化物半導体素子をドット状などに配列させて形成した。エッチングにより窒化物半導体素子の側面の一部に露出面を設け、実施例8と同様の方法によりコーティング層14を形成した。最後に、支持基板を金属パッケージ等の支持体上に載置し、発光素子の正負一対の両電極と外部電極との電気的導通を図ることにより発光装置を形成した。
【0289】
これにより、発光素子からの光と、蛍光体により該発光素子からの光が波長変換された光との混色光が出光可能な発光素子が複数個配列し、大面積で混色光を発することが可能な発光装置とすることができた。このような発光装置は、照明用光源として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1】図1は、本発明のある実施の形態における発光装置を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示す発光装置の模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態における発光装置を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、発光素子に霧状で螺旋状に塗布液を吹き付ける工程を示す模式図である。
【図5】図5は、塗布液を吹き付ける装置の構成を示す概略図である。
【図6】図6A〜Eは、支持基板(金属基板)の上に半導体層を形成した発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図7】図7は、支持基板(金属基板)の上に半導体層を形成した発光素子の構造の一例を示す断面図である。
【図8】図8は、支持基板(金属基板)の上に半導体層を形成した発光素子の構造の別の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、支持基板(金属基板)の上に半導体層を形成した発光素子の構造のまた別の一例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、その発光素子を配置する支持体と、蛍光体を含有し少なくとも前記発光素子の表面を被覆するコーティング層と、を備えた発光装置であって、
前記発光素子が、支持基板と、該支持基板の一方の主面上に設けられた接合層と、該接合層の上に設けられた1層以上のp型窒化物半導体層と、該p型窒化物半導体層の上に設けられた活性層と、該活性層の上に設けられた1層以上のn型窒化物半導体層とから構成された積層体を含む発光素子であり、
前記n型窒化物半導体層の露出面は、凹凸形状を有しており、前記コーティング層は、少なくとも前記凹凸形状を被覆することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記コーティング層は、SiO、Al、ZrO、Y及びMSiO(なお、Mは、Zn、Ca、Mg、Ba、Srから成る群から選択される少なくとも1種)から成る群から選択される少なくとも1種である酸化物を主たる組成とすることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記コーティング層は、さらにSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む水酸化物を有することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記コーティング層中において、前記蛍光体の粒子の周囲を、前記酸化物を主成分とする粒子が取り囲んでいることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記コーティング層が、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む有機金属化合物を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記コーティング層は、前記発光素子の上面、側面および角の上における厚みが略等しいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記コーティング層が、少なくとも2層から成り、各層の光屈折率が前記発光素子を構成する窒化物半導体の光屈折率よりも小さく、かつ、各層の光屈折率が前記発光素子から離れるに従って次第に小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
発光素子と、その発光素子を配置する支持体と、蛍光体を含有し少なくとも前記発光素子の表面を被覆するコーティング層と、を備えた発光装置の製造方法であって、
支持基板の一方の主面に接合層を設け、前記接合層の上に1層以上のp型窒化物半導体層を設け、前記p型窒化物半導体層の上に活性層を設け、前記活性層の上に1層以上のn型窒化物半導体層を設け、前記n型窒化物半導体層の露出面に凹凸形状を形成することにより前記発光素子を形成する工程と、
前記支持体上に前記発光素子を配置する工程と、
前記n型窒化物半導体層の露出面に形成された前記凹凸形状を含めて前記発光素子表面を前記コーティング層で被覆する工程と、
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記コーティング層は、SiO、Al、ZrO、Y及びMSiO(なお、Mは、Zn、Ca、Mg、Ba、Srから成る群から選択される少なくとも1種)から成る群から選択される少なくとも1種である酸化物を主たる組成とすることを特徴とする請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング層は、さらに前記酸化物を主たる組成とし、前記酸化物と同一の金属を含む水酸化物を含むことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記コーティング層で被覆する工程は、
Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、又はアルカリ土類金属の群から選択される1種以上の元素を含む有機金属化合物、有機溶剤、及び蛍光体とを含む塗布液を調整する第1の工程と、
前記塗布液を発光素子表面および支持体表面に塗布する第2の工程と、
前記塗布液を乾燥させ、前記蛍光体を固着させる第3の工程とを有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の工程において、前記有機金属化合物がメチルシリケート、エチルシリケート、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムエトキサイド、およびアルミニウムブトキサイドから選択される少なくとも一種である請求項11に記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−205511(P2008−205511A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129473(P2008−129473)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【分割の表示】特願2003−537131(P2003−537131)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】