説明

発光装置

【課題】 複数の画素を有する発光装置において、画素ごとの輝度バラツキを抑制することを目的とする。
【解決手段】 有機EL素子10と、有機EL素子10を駆動する駆動トランジスタ30と、駆動トランジスタ30を制御する制御信号を保持する保持容量20と、を有する画素を複数有し、有機EL素子10はトランジスタ30のソース電極33とドレイン電極34の一方と接続される発光装置であって、保持容量30は、金属層と絶縁層と半導体層とをこの順で有しており、半導体層は有機EL素子が発光する光を受光し、保持容量20の金属層及び半導体層の一方が駆動トランジスタ30のゲート電極31と電気的に接続され、保持容量20の金属層及び半導体層の他方が一定の電位に規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を複数有する発光装置に係り、特に輝度バラツキを抑制する発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の有機EL素子を用いた発光装置は、薄型化、低消費電力化が期待される自発光型デバイスとして多くの注目を集めている。有機EL素子は、陽極と陰極との間に、有機化合物層を備え、入力信号に応じて、陰極と陽極とからそれぞれ注入される電子と正孔が有機化合物層において再結合するエネルギーを利用して発光する。
【0003】
ところで、有機EL素子は、駆動時間の経過と共に輝度が低下し、駆動電圧が上昇するといった劣化現象が起こることが知られている。また、劣化現象は、有機EL素子ごとで異なるため、複数の有機EL素子を用いた発光装置においては、輝度バラツキが起こってしまう。輝度バラツキとは、同一の入力信号に対して有機EL素子ごとで異なる輝度を発し、視認される輝度差が生じる現象である。この輝度バラツキを補正するために、特許文献1では、画素内にフォトセンサを設け、各有機EL素子の発光量に応じて画素毎に輝度を補償する有機EL表示装置について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−30317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、輝度バラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有機EL素子と、前記有機EL素子を駆動する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタを制御する制御信号を保持する保持容量と、を有する画素を複数有し、前記有機EL素子は前記駆動トランジスタのソース電極とドレイン電極の一方と電気的に接続される発光装置であって、前記保持容量は、金属層と絶縁層と半導体層とをこの順で有しており、前記半導体層は前記有機EL素子が発光する光を受光し、前記保持容量の前記金属層及び前記半導体層の一方が前記駆動トランジスタのゲート電極と電気的に接続され、前記保持容量の前記金属層及び前記半導体層の他方が一定の電位に規定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光装置によれば、輝度バラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の発光装置の一例を示す概略図
【図2】本発明の発光装置に用いられる保持容量の両端電圧の測定図及び測定結果を示す図
【図3】輝度バラツキを補償する動作を説明する図
【図4】本発明の発光装置の部分断面図
【図5】本発明の他の発光装置の画素内の回路図と保持容量の感度と信号電圧との関係を表した図
【図6】本発明の他の発光装置の画素内の回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。図1(a)は複数の画素を有する発光装置の概略斜視図である。画素1は、各画素1に制御信号を送るための信号線3と制御信号を送る画素を順次選択する選択線2との交差部付近に配置されている。図1(b)は、本発明の発光装置が有する画素1の概略平面図である。画素1は、有機EL素子が形成される発光領域4と、有機EL素子を駆動する回路が形成される非発光領域5とから構成されている。画素1の発光領域4には、有機EL素子と制御信号を保持する保持容量とがあり、画素1の非発光領域5には、有機EL素子を駆動する駆動トランジスタがある。制御信号は、駆動トランジスタを制御する信号であり、この信号に応じた電流が駆動トランジスタによって有機EL素子に流される。この制御信号によって、有機EL素子の発光強度が決まる。なお、制御信号は、その信号に応じた電位(以下、信号電位という)として画素に送られる。
【0010】
また、本発明に用いられる保持容量は、金属層と、絶縁層と、半導体層とを、この順で備えている。また、半導体層は、有機EL素子が発する光を受光する位置に設けられ、例えば非晶質シリコン層のような光電変換の機能を有している。
【0011】
図1(c)は本実施形態の画素内の回路図である。図1(c)において、6は選択トランジスタであり、選択トランジスタ6のゲート電極は選択線2に接続され、選択トランジスタ6のドレイン電極は信号線3に接続されている。そして、選択トランジスタ6のソース電極は駆動トランジスタ30のゲート電極と接続されている。また、7は有機EL素子10に駆動電流を供給する給電線であり、給電線7と有機EL素子10と駆動トランジスタ30とGND線8は直列に電気的に接続されている。なお、有機EL素子10と駆動トランジスタ30の間に発光期間を制御するトランジスタが直列に電気的に接続されていてもよい。また、保持容量20の一方の端子N1は駆動トランジスタ30のゲート電極31に電気的に接続され、保持容量20の他方の端子N2は駆動トランジスタ30のソース電極33とGND線8に電気的に接続されている。GND線8によって、保持容量20の端子N2には一定の電位に規定されている。この構成により、画素内の構成で、後述するように輝度バラツキの補償をすることが可能となる。
【0012】
発光装置の駆動時には、まず選択線2に順次、選択トランジスタ6をオンまたはオフする2値の電位が印加される。選択線2に選択トランジスタ6をオンする電位が印加された画素には、データ線3を通して制御信号が印加され、その制御信号が保持容量20に保持される。具体的には、信号電位とGND線8に印加される電位との電位差(以下、信号電圧という)の分の電荷量が保持容量20に保持される。その後、有機EL素子10が発光する発光期間において、選択線2に選択トランジスタ6をオフする電位が印加されても、保持容量20には信号電圧に応じた電荷量が保持されたままである。そして、駆動トランジスタ30のゲート−ソース間の電位差、つまり、保持容量20に保持された制御信号に応じた駆動電流が給電線7から有機EL素子10に供給されて、制御信号に応じた発光強度で有機EL素子10は発光する。
【0013】
次に、図2を用いて、本発明の保持容量20が光を受光して保持容量の両端電圧が減少する作用を説明する。図2(a)において、保持容量20にあらかじめ所望の電圧Vに対応する電荷量を保持させておく。そして、保持容量20に様々な強度の異なる光(1Lx、0.1Lx、0.01Lx)を受光させて、保持容量20の両端電圧を電圧計にて検出する。その検出結果が図2(b)に示されている。この図により、本発明の保持容量20は、光を受光することで、その両端電圧が減少する特性を有していることが分かる。これは、本発明の保持容量20にある半導体層23にて、光を受光して電荷(電子と正孔)が生成されることに起因する。あらかじめ保持容量20の両端電圧を電圧Vにするのは、保持容量20の両端子間に電界が生じる状態にするためである。この電界によって、生成された電荷の一方が、保持容量20の一端から取り出され、他方の電荷は半導体層の絶縁層側の界面に貯まり、容量を構成する部位が変化する。より詳しくは、金属層と半導体層の金属層とは反対側の界面との間で形成されていた容量が、金属層と半導体層の金属層側の界面との間で形成されるようになる。この結果、保持容量20の容量が大きくなる。一方、電荷量の総和は変化しないので保持容量20の両端電圧が減少する。また、半導体層において生成される電荷量は、入射光の強度に応じて異なる。よって、図2(b)で示すように、入射光の強度が大きいほど、所望の時刻t経過したときにおける保持容量20の保持する電荷量の減少量が大きなり、両端電圧が小さくなる。
【0014】
次に、この作用を応用した本発明の発光装置において、画素の輝度バラツキが抑制される動作について説明する。図1(c)の回路図において、保持容量20が有機EL素子10の光を受光すると、保持容量20の容量は増えるが保持される電荷量は変わらないので、保持容量20の両端電圧である信号電圧が減少する。そして、保持容量20の端子N2は駆動トランジスタ30のソース電極33と、GND線8と電気的に接続されて、その電位が信号電位より小さい一定の電位に固定されているので、保持容量20の端子N1の電位(駆動トランジスタ30のゲート電極31の電位)が降下する。このため、駆動トランジスタ30のゲート−ソース間の電位差が小さくなり、有機EL素子10に供給される駆動電流が1フレーム中の発光期間(例えば、1/60秒)の初期の駆動電流より小さくなる。
【0015】
図3は、有機EL素子の劣化が小さい画素Xと有機EL素子の劣化が大きい画素Yにおける、図1(c)で本発明の保持容量20を用いた場合(補償あり)と、図1(c)で本発明の保持容量の代わりに従来の保持容量を用いた場合(補償なし)の比較を示した図である。なお、画素Xと画素Yの保持容量には、同じ信号電圧に対応する同じ電荷量が保持されている。また、従来の保持容量とは半導体層を有さない構成のものである。有機EL素子が劣化すると、保持容量が同じ電荷量を保持していても、発光する発光強度は異なってしまう。さらに、人間の目は、1フレーム中の発光期間の発光強度の積算値、つまり、図3の斜線で示した面積(A,B,C,D)を輝度の大きさとして認識する。よって、従来の保持容量を用いた場合、画素Xと画素Yは、初期の発光強度の差が発光期間分積算されて、面積Aと面積Bとの面積差が人間の目に輝度差として認識されてしまう。
【0016】
一方、本発明の保持容量を用いた場合は、画素の発光は発光期間中に一様ではなくなる。すなわち、図2(b)で示したように、有機EL素子が発光し始め、有機EL素子の発光を受光した保持容量の両端電圧が、画素内の有機EL素子の発光強度に応じて減少する。そして、画素Yでは、画素Xに比べてあらかじめ保持容量の両端にかかっていた信号電圧の減少量が小さくなる。このため、本発明の保持容量を用いた画素Xと画素Yの発光期間中の発光強度の積算値との差は、従来の保持容量を用いた劣化の大きい画素と劣化の小さい画素との発光期間中の発光強度の積算値との差よりも小さくなる。つまり、面積Cと面積Dとの面積差の方が面積Aと面積Bとの面積差よりも小さくなり、人間の目に画素Xと画素Yとの輝度差として認識されにくくなる。よって、本発明の保持容量を備えた回路では、画素内の回路によって輝度バラツキが抑制される。なお、発光期間が1/60秒程度であれば、発光期間中の発光強度の変化は認識できないので問題とはならない。
【0017】
図4は図1(b)のA−A’の概略断面図である。発光領域4には基板40の上に、保持容量20が配置され、その上に、有機EL素子10が配置されている。この構成によって、有機EL素子10の下部電極11を透過した光が保持容量20に入射されるようになる。
【0018】
有機EL素子10は、ガラス、石英、セラミック等の絶縁性のある基板40の上に、基板40側から順に下部電極11、有機化合物層12、上部電極13を有する構成であり、発光領域4に配置されている。また、有機EL素子10は保持容量20の上に、SiOxやSiNxまたはそれらの積層膜からなる絶縁層41を介して積層されている。有機EL素子10の発光は、下部電極11と上部電極13からそれぞれ電子または正孔が有機化合物層12内に注入され、その電子と正孔が有機化合物層12内で再結合する際のエネルギーを利用している。本実施形態では、基板40側とは反対側(上部電極13側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の発光装置について説明する。
【0019】
下部電極11は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属層を用いることができる。なお、下部電極11は、有機EL素子10の光を反射させる機能を有するが、後に説明する保持容量20に有機EL素子の光の一部(0.01%以上10%以下)を透過させるため、膜厚30nm以上200nm以下で用いる必要がある。より好ましくは、膜厚30nm以上50nm以下である。さらに、その金属層の上に、酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの、光透過性が高い金属酸化物導電層を積層する構成を用いることもできる。なお、本発明において光透過性が高いとは、有機EL素子から取り出される光のスペクトルの最大ピーク波長における透過率が50%以上100%以下であることをいう。
【0020】
有機化合物層12は、少なくとも発光層を備え、必要に応じて正孔輸送層や電子輸送層などの電荷輸送層を備える。有機化合物層を構成する層は、公知材料を用いて、抵抗加熱蒸着法やスピンコート法などの従来の方法を用いて形成することができる。
【0021】
上部電極13は、有機EL素子10で発生した光を60%以上透過させる必要があるため、上述した金属層を膜厚5nm以上20nm以下で用いたり、上述した光透過性が高い金属酸化物導電層を単層で用いたりすることができる。さらに、それらを積層する構成を採ることもできる。
【0022】
42は、下部電極11と上部電極13とがショートするのを防ぐための絶縁層で、アクリル樹脂やポリイミド樹脂などを1μm以上3μm以下の膜厚で用いることができる。
【0023】
保持容量20は、基板40の上に、基板40側から順に金属層21、絶縁層22、半導体層23、導電層24が配置された構成を採っている。半導体層23として、光を受光することで電荷を生成する光電変換層を用いる。本実施形態で保持容量20は有機EL素子10の下部電極11と基板40との間に配置され、有機EL素子10で発光した光は下部電極11を透過して保持容量20の半導体層23に受光される。この半導体層23で有機EL素子10の光が受光されることによって、受光素子を保持容量20と兼ねることができ、さらに輝度バラツキを補償する補償手段として利用することができる。
【0024】
また、光をより面積は効率よく半導体層に受光させるために、保持容量20の基板40の面内方向における面積は、発光領域4にある有機EL素子10の発光面積より大きく形成されることが望ましい。なお、発光、発光領域の面積であり、下部電極11と有機化合物層12と上部電極13が基板40に垂直方向において重なり、隔壁42が配置されていない領域の、基板40の面内方向の面積である。また、図4では、保持容量20の上に、有機EL素子10が形成される構成を採っている。これは、通常のフォトトランジスタのような受光素子と異なり、保持容量が受光素子を兼ねる構成を用いているため、受光素子の上部の平坦性が十分に確保されることに起因する。このため、保持容量20(受光素子)と有機EL素子10との間に膜厚がミクロンオーダーの樹脂からなる平坦化層を設ける必要がなく、保持容量20の半導体層23に有機EL素子10の光を効率よく吸収させることができる。
【0025】
光電変換層としての半導体層23は、n型、p型のどちらの半導体層を用いることができる。具体的には、非晶質シリコン層や微結晶シリコン層を用いることができるが、光電変換効率の観点から非晶質シリコン層が好ましい。また、非晶質シリコン層と不純物がドープされたn型あるいはp型の非晶質シリコン層とを積層した構成を採ってもよい。なお、半導体層23の膜厚は好適には50nm以上300nm以下である。以下では、半導体層23はn型の非晶質シリコン層を用いて説明する。
【0026】
金属層21は、Mo、Ti、W、Ni、Ta、Cu、Al、あるいはそれらの合金、それらの積層構造体を用いることができる。また、その膜厚は、5nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0027】
絶縁層22、41は、SiOxやSiNxまたはそれらの積層膜を用いることができ、その膜厚は100nm以上500nm以下が好ましい。また、絶縁層22の膜厚によって保持容量20の容量を変化させることができる。
【0028】
導電層24は、金属層21と同じ材料を用いることができる。ただし、有機EL素子10の光は、導電層24を透過し、半導体層23まで達する必要があるため、導電層24の透過率が1%以上となるように、5nm以上200nm以下であることが好ましい。なお、導電層24は、酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層の光透過性が高い金属酸化物導電層を用いることも可能である。
【0029】
なお、図1(c)における保持容量20の、駆動トランジスタ30のゲート電極31と電気的に接続する端子N1は、図4の導電層24に対応し、半導体層23はこの導電層24を介して駆動トランジスタ30のゲート電極31と電気的に接続される。また、保持容量20の他方の端子N2は、図4の金属層21に対応している。
【0030】
駆動トランジスタ30は、ゲート電極31と、絶縁層22と、半導体層32と、ソース電極33と、ドレイン電極34とで構成され、非発光領域5に形成されている。また、ドレイン電極34は有機EL素子10の下部電極11と電気的に接続されている。そして、半導体層32は非晶質シリコンを用い、半導体層32のソース電極33とドレイン電極34とが形成される領域には、n型の不純物がドープされている。この構成のため、駆動トランジスタ30はn型のトランジスタとなる。ゲート電極31、ソース電極33、ドレイン電極34は、保持容量20の金属層21として用いられる材料を用いることができる。
【0031】
なお、図4では、駆動トランジスタ30の絶縁層22は、保持容量20の絶縁層22と一体で配置された構成であるが、必ずしもこの構成である必要はない。つまり、駆動トランジスタ30の絶縁層22と保持容量20の絶縁層22は異なる材料、あるいは異なる膜厚でそれぞれ配置されていてもよい。
【0032】
また、半導体層32は、保持容量20の半導体層23と同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0033】
本実施形態では、有機EL素子10は駆動トランジスタ30のドレイン電極34に接続されているが、駆動トランジスタ30のソース電極33に接続されていもよい。
【0034】
また、画素1は、保持容量20とは別に、駆動トランジスタ30のゲート電極31と接続される補助容量(不図示)を有する構成であってもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図5(a)は本実施形態の画素内の回路図である。第1の実施形態とは、保持容量20の駆動トランジスタ30のゲート電極31と電気的に接続されている端子N1とは異なる端子N2が一定の電位を供給する電位線9に接続されている点が異なる。この電位線9によって保持容量20の端子N2に一定の電位に規定されている。
【0036】
なお、図5(a)における保持容量20の、駆動トランジスタ30のゲート電極31と電気的に接続する端子N1は、金属層に対応し、保持容量20の他方の端子N2は、半導体層に対応している。
【0037】
第1の実施形態では、保持容量20の両端にかかる信号電圧は、そのまま駆動トランジスタ30のゲート−ソース間電圧である。このため、有機EL素子に発光させる発光強度が小さい場合には、保持容量20の両端電圧である信号電圧が小さく、図5(b)で示されるように保持容量20の光を感知する感度が小さくなってしまう。これに対して、本実施形態では、電位線9に信号電位よりも低く、さらにGND線8よりも低い一定の電位が供給される。このため保持容量20の端子N2の電位は第1の実施形態のそれよりも小さくなる。有機EL素子10の発光強度は駆動トランジスタ30のゲート−ソース間電圧であるので、第1の実施形態と同じ発光強度で有機EL素子10を光らせるには、保持容量20の駆動トランジスタ30のゲート電極31側には第1の実施形態と同じ電位にする必要がある。このため、保持容量20の両端にかかる信号電圧は、第1の実施形態よりも大きくなり、図5(b)で示されるように、保持容量の光に対する感度が向上し、さらに、より感度の安定した領域にて保持容量20を使用することができる。このため、より精度よく画素の輝度バラツキを抑制することができる。
【0038】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態はともに駆動トランジスタ30がn型のものを用いて説明したが、p型の駆動トランジスタを用いることも可能である。例えば、図6のような回路構成を形成するために、図4において、駆動トランジスタ30の半導体層32に微結晶シリコン層を用い、保持容量20の半導体層23と駆動トランジスタ30のゲート電極31とを電気的に接続させる構成を採ればよい。この構成では、保持容量20の他方の一端N2である半導体層23側に一定の電位を印加する電位線9に電気的に接続させて、一定の電位を信号電位より大きくすればよい。
【0039】
また、駆動トランジスタがn型で、保持容量の半導体層としてp型半導体層を用いる場合には、駆動トランジスタのゲート電極に保持容量の金属層を電気的に接続させ、保持容量の半導体層を信号電位より小さい一定の電位に規定すればよい。また、駆動トランジスタがp型で、保持容量の半導体層としてn型半導体層を用いる場合には、駆動トランジスタのゲート電極に保持容量の金属層を電気的に接続させ、保持容量の半導体層を信号電位より大きい一定の電位に規定すればよい。
【0040】
補償の効果を大きくするには、上述したように保持容量の両端電圧を大きくする方法の他に、保持容量の容量を大きくする方法が挙げられる。具体的には、保持容量の基板の面内方向の面積を大きくしたり、保持容量の絶縁層の膜厚を薄くしたりする方法が考えられる。または、保持容量と有機EL素子との間の絶縁層、もしくは有機EL素子の下部電極の膜厚を薄くする方法も考えられる。
【0041】
本発明の発光装置は、表示装置用のバックライト等の様々な用途に適用することができる。また、テレビ受像機やパーソナルコンピュータ、デジタルカメラや携帯電話のディスプレイなどにも適用することができる。
【0042】
なお、図1(a)で示したように、本発明の発光装置は、画素が2次元的に配列されているが、画素を1次元的に配列された発光装置においても適用可能であり、この発光装置は露光装置の光源として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 有機EL素子
20 保持容量
30 駆動トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子と、前記有機EL素子を駆動する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタを制御する制御信号を保持する保持容量と、を有する画素を複数有し、前記有機EL素子は前記駆動トランジスタのソース電極とドレイン電極の一方と電気的に接続される発光装置であって、
前記保持容量は、金属層と絶縁層と半導体層とをこの順で有しており、
前記半導体層は前記有機EL素子が発光する光を受光し、
前記保持容量の前記金属層及び前記半導体層の一方が、前記駆動トランジスタのゲート電極と電気的に接続され、且つ、他方が一定の電位に規定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
基板を有し、前記保持容量は前記基板と前記有機EL素子との間に配置され、前記保持容量の前記基板の面内方向の面積は、前記有機EL素子の発光面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記保持容量の前記金属層及び前記半導体層の前記他方は、前記駆動トランジスタのソース電極とドレイン電極の一方と接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−95605(P2011−95605A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250832(P2009−250832)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】