説明

発振回路

【課題】発振ゲートの切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ、効率的な切り替えを行って低消費電流で且つ低電圧動作可能な発振回路を提供する。
【解決手段】発振開始当初は負荷回路2を第一の状態に、発振安定後は負荷回路2を第二の状態にする発振回路に、CMOS型発振ゲート1の出力端子からの発振パルス数に応じて負荷回路2を第一の状態から第二の状態に緩やかに遷移させる遷移手段を設けて、負荷回路2の等価インピーダンスを発振クロックパルス数によって緩やかに増大させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振子またはセラミック発振子等を用いる発振回路に係わり、特に低電圧動作、低消費電流を必要とするマイクロプロセッサ等の半導体集積回路に搭載するのに好適な発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な発振回路の構成として、CMOSインバータ、またはNAND型、NOR型、クロックドインバータ型として停止制御機能を有したCMOSゲートから成る発振ゲートと、その発振ゲートの入出力端子に並列接続した水晶発振子またはセラミック発振子(以下、単に発振子と称す)の構成がよく知られている。CMOSインバータは反転増幅器として機能し、発振子との正帰還ループを形成して発振することになる。携帯機器など電池駆動によって使用されるマイクロプロセッサにとしては、特に消費電流低減を図る必要があり、低電圧下での動作が要求され、このようなマイクロプロセッサに搭載する発振回路としては、当然に低電圧動作が求められることになる。一般的なCMOSインバータから成る発振ゲートの場合、それが反転増幅器として機能するためには少なくともCMOSインバータを構成するPMOSトランジスタとNMOSトランジスタそれぞれのしきい値電圧Vthの和を超える電源電圧が必要となる。例えばPMOSトランジスタのしきい値電圧Vthpと、NMOSトランジスタのしきい値電圧Vthnとがいずれも1Vであったとすれば、電源電圧としては少なくとも2V以上が必要となる。実際には、反転増幅器として十分な利得を持つ必要があり、さらに高い電源電圧で使用しなければならず、低電圧対応への障害となる。
【0003】
それに対して、例えばCMOSインバータのPMOSトランジスタ側を定電流源、或いは抵抗などの負荷回路に置き換えてNMOSインバータ型の発振ゲート構成とすれば、そのNMOSトランジスタのしきい値電圧Vthn近傍の低電圧下でも反転増幅器として機能することが可能となり、低電圧動作には好適な発振ゲート構成を得ることができる。しかし、その場合NMOSトランジスタに貫通電流が流れるため、発振振幅が拡大して定常的な発振状態にあるときは、CMOSインバータの場合に比べて消費電流の点で不利となる。
【0004】
そこで、発振起動時は低電圧動作に有利なNMOSインバータ等の発振ゲート構成で起動し、発振振幅が拡大して定常状態になったとき、消費電流上有利なCMOS型の発振ゲートに切り替える方式が多数提案されている。これは、発振起動時においては、発振ゲートの入出力端子電位が発振ゲートの論理しきい値電圧VLT近傍にあって反転増幅器として機能することになるため、CMOS型の発振ゲートではそれを構成するPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタそれぞれが能動状態にある必要があり、それぞれのしきい値電圧Vthの和以上の電源電圧を要するのに対し、NMOSインバータ等による発振ゲートであればNMOSトランジスタのしきい値電圧Vthn以上の電源電圧で動作可能であること、また発振振幅が拡大した定常状態においては、発振ゲートの入出力端子振幅が電源電圧にほぼ等しい振幅となることにより、CMOS型の発振ゲートであってもそれを構成するPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧VGSとして各しきい値電圧Vthを上回る十分な電圧振幅が得られ、電源電圧は低くとも反転増幅器として機能できることによる。
【0005】
図6は、従来の発振ゲートの切り替えを行っている発振回路を示す回路図である。
端子X1と端子X2との間に、発振子XLと帰還抵抗RFとを並列接続し、端子X1と基準電位(以下、単にGNDと称す)との間、また端子X2とGNDとの間にそれぞれ容量C1、C2を接続している。端子X1にゲートを接続すると共に端子X2にドレインをそれぞれ接続したPMOSトランジスタP9およびNMOSトランジスタN6と、PMOSトランジスタP9と電源端子VCCとの間に接続したPMOSトランジスタP8と、NMOSトランジスタN6とGNDとの間に接続すると共にそのゲートを制御端子CSに接続したNMOSトランジスタN7とによってCMOS型発振ゲート1を構成している。端子X2と電源端子VCCとの間には、端子X2に一端を接続した抵抗R1と、この抵抗R1のもう一端と電源端子VCCとの間に接続したPMOSトランジスタP10とから成る負荷回路2が設けられている。また端子X1に一方の入力を接続したシュミット型NANDゲートG6から成る発振検出手段3が設けられ、その出力はパルス計数回路7を介して負荷回路2内のPMOSトランジスタP10のゲートに接続している。
【0006】
パルス計数回路7は、一端をGNDに接続した容量C6、C7と、発振検出手段3の出力にゲートを接続すると共に容量C6のもう一端と電源端子VCCとの間に接続したPMOSトランジスタP11と、発振検出手段3の出力にインバータG7を介してゲートを接続すると共に容量C6とPMOSトランジスタP11の接続点と容量C7のもう一端との間に接続したPMOSトランジスタP12と、容量C7とPMOSトランジスタP12との接続点に入力を接続したインバータG8と、このインバータG8の出力に入力を接続したインバータG9とから構成され、インバータG9の出力がパルス計数回路7の出力となっている。またパルス計数回路7の出力に入力を接続したインバータG4が設けられ、その出力は発振ゲート1内のPMOSトランジスタP8のゲートおよび発振検出手段3内のシュミット型NANDゲートG6のもう一方の入力端子に接続している。端子X2の発振振幅は、端子X2に入力を、クロックパルス出力端子CKOUTに出力をそれぞれ接続したインバータG5によって波形整形されて出力される。
【0007】
次に、上述した発振回路の動作について説明する。
電源端子VCCに電圧が印加されると共に制御端子CSをHigh(電源端子VCCレベル)にすることで発振起動状態に入るが、その時点ですぐに端子X1、X2に発振振幅が得られる訳ではないので発振検出手段3のパルス出力はされず、発振起動当初はHighレベルまたはLowレベル(GNDレベル)のいずれかに固定されている。このときパルス計数回路7においては、PMOSトランジスタP11、P12のいずれか一方がON状態となっているものの、電源端子VCCから容量C7への充電パスは形成されないため、容量C7の端子電圧はGNDレベルにあり、パルス計数回路7の出力としてはLow状態にある。さらに、それを受けて負荷回路2内のPMOSトランジスタP10がON状態となるので、発振ゲート1内のNMOSトランジスタN6、N7と負荷回路2とでNMOSインバータが形成され、これによって発振起動が開始されることになる。このとき、帰還抵抗RFによってこのNMOSインバータの入出力間が短絡されているため、端子X1、X2の電位はいずれもこのNMOSインバータの論理しきい値電圧VLTに遷移し、それによってこのNMOSインバータが反転増幅器として機能し得る状態となり、発振子XLとの間で正帰還ループが形成されることになる。
【0008】
やがて発振振幅が拡大し、発振検出手段3内のシュミット型NANDゲートが感応し始めると、その出力パルスによってパルス計数回路7内のPMOSトランジスタP11、P12が交互にON/OFF動作を繰り返すことになる。PMOSトランジスタP11がON、PMOSトランジスタP12がOFFのときは、容量C6の充電が行われ、次いでPMOSトランジスタP11がOFF、PMOSトランジスタP12がONすると、容量C6の充電電荷が容量C7側へ分配されて容量C7の端子電位が上昇する。この容量C7の端子電位VC7は数1の理論式で表すことができる。
[数1]
VC7=VCC[1−{C7/(C6+C7)}
ここで、VCCは電源端子VCCに印加された電圧、nは容量C6から容量C7への電荷分配回数であり、これはすなわち発振検出手段3の出力パルス数に相当する。
【0009】
上述した数1によれば、容量C6、C7の容量比によって、容量C7の端子電位VC7が所定の電位に上昇するのに必要な電荷分配の回数、すなわち発振検出手段3からの出力パルス数が決まることになるから、容量C7の端子電位VC7について所定の電位を規定しておけば、パルス計数回路として機能させることができる。この従来例においては、インバータG8の論理しきい値電圧VLTによって規定していることになる。発振検出手段3の出力パルスによって、容量C7の端子電位VC7がこれを受けるインバータG8の論理しきい値VLTに到達すると、インバータG8の出力はLow、これを受けるインバータG9の出力すなわちパルス計数回路7の出力はHighにそれぞれ反転する。これにより負荷回路2内のPMOSトランジスタP10はOFF状態となり、電源端子VCCから負荷回路2を介して発振ゲート内NMOSトランジスタN6、N7への電流パスは切断され、NMOSインバータの構成は解消される。それと同時に、パルス計数回路7のHigh出力を受けてインバータG4の出力はLowとなり、発振ゲート1内のPMOSトランジスタP8がONし、PMOSトランジスタP8、P9とNMOSトランジスタN6、N7とによるCMOS型の発振ゲートが構成され、以降の発振はCMOS型で維持されることになる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000-31740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の発振回路においては、パルス計数回路7のHigh反転と同時に一瞬でNMOSインバータ型からCMOS型への発振ゲートの切り替えが行われる。その場合、NMOSインバータ型とCMOS型とでは、論理しきい値電圧VLTおよび反転増幅器としての利得特性などが必ずしも一致してはいないため、切り替え動作の時点で端子X1、X2の直流的な動作点(発振振幅の中心電位)や発振振幅に変動を来たすことになる。その変動により、端子X2の振幅を受けているインバータG5が一瞬でも感応できない状態が発生すると、出力端子CKOUTのクロックパルスが欠損することとなり、これをシステムクロックとするマイクロプロセッサなどが異常動作に陥る可能性がある。またそのようなクロックパルスの欠損に至らない場合でも、インバータG5の出力デューティに変動を来たすことも十分考えられ、やはりマイクロプロセッサ内の誤動作につながる恐れがある。また、上述した従来の発振回路においては、端子X1側の振幅を発振検出手段3によって検出し、またパルス計数回路7によって発振ゲートの切り替えタイミングを遅らせることにより、十分発振振幅が拡大してから切り替えを行い、出力クロックパルスの欠損防止を図っている。しかしその場合、端子X2側の発振振幅に関する変動を極力小さくするため、例えば、ほぼ電源端子VCCの電圧振幅にまで発振振幅が拡大するような十分マージンを持った遅延設計を行うこととなり、NMOSインバータ型で発振している期間が長くなり、これは消費電流の観点で不利となる。さらに、上述した従来の発振回路においては、一旦発振ゲート切り替えを行った後に、電源端子VCCの電圧が瞬停などの原因によって発振を維持し得る電圧以下にまで一旦低下し、再び復帰した場合、電源電圧復帰後はCMOS型発振ゲートでの起動となってしまうことが起こり得る。その場合、電源端子VCC電圧如何によっては発振起動が不能となってしまう。
【0011】
本発明の目的は、発振ゲートの切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ、効率的な切り替えを行って低消費電流で且つ低電圧動作可能な発振回路を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的は、さらに電源電圧が低下して発振が停止しても、電圧が復帰すれば再び発振を開始できるフォールトトレランスに優れた発振回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、第一の電源端子と第二の電源端子との間に接続したCMOS型発振ゲートと、上記第一の電源端子と上記CMOS型発振ゲートの出力端子との間に接続すると共に電圧制御入力端子を有する負荷回路と、上記CMOS型発振ゲートの入出力間に並列接続して発振動作を行う発振子とを備え、発振開始当初は上記負荷回路を第一の状態に、発振安定後は上記負荷回路を第二の状態にする発振回路において、上記CMOS型発振ゲートの出力端子からの発振パルス数に応じて上記負荷回路を上記第一の状態から上記第二の状態に緩やかに遷移させる遷移手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路を設け、この制御回路の出力端子電圧を発振パルス数に応じて上記第二の電源端子の電圧から上記第一の電源端子の電圧に向けて緩やかに変化させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路と、入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共に上記CMOS型発振ゲートの入力または出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段とを設け、この発振振幅検出手段のパルス出力に応じて上記制御回路の出力端子電圧を緩やかに変化させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路と、入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共に上記CMOS型発振ゲートの入力または出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段と、上記発振振幅検出手段の入力しきい値電圧ヒステリシス特性よりも大なるヒステリシス幅を有すると共に、その入力を上記発振振幅検出手段の入力と共通接続した第二の発振振幅検出手段とを設け、この第二の発振振幅検出手段側からのパルス出力数に応じて上記負荷回路または上記制御回路の出力端子電圧を緩やかに遷移させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、請求項1に記載のものにおいて、上記遷移手段は、上記負荷回路の等価インピーダンスを緩やかに変化させるように構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載のものにおいて、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき上記負荷回路を第一の状態に戻す電源低下検出手段を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の本発明は、請求項2に記載のものにおいて、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき上記制御回路の出力端子電圧を上記第二の電源端子の電圧に初期化する電源低下検出手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載のものにおいて、上記負荷回路は、上記第一の電源端子にソースを接続し上記電圧制御入力端子にゲートを接続すると共に、上記CMOS型発振ゲートの出力端子にドレインを接続したMOSトランジスタで構成したことを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の本発明は、請求項2〜8のいずれか一つに記載のものにおいて、上記制御回路は、電源端子と、入力端子と、一端を基準電位に接続した第一の容量と、一端を基準電位に接続した第二の容量と、上記第一の容量のもう一端と上記電源端子との間に接続した第一のスイッチング手段と、この第一のスイッチング手段と上記第一の容量との接続点と上記第二の容量のもう一端との間に接続した第二のスイッチング手段とを備え、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子のうち高電位側に上記電源端子を接続し、上記第一のスイッチング手段と上記第二のスイッチング手段で上記入力端子の入力パルスに同期して排他的にON、OFF動作を繰り返し、上記第二のスイッチング手段と上記第二の容量との接続点から電圧出力を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の発振回路によれば、負荷回路の状態をCMOS型発振ゲートの出力端子からの発振パルス数に応じて第一の状態から第二の状態までを緩やかに段階的に遷移させるようにしたため、NMOSインバータ型からCMOS型発振ゲートへ連続して緩やかに移行させて、発振ゲート切り替えに伴う発振振幅の変動を軽微なものとすることができ、これにより発振ゲート切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ効率的な発振ゲートの切り替えが可能となる。また、発振ゲート切り替え時における発振ゲートの論理しきい値電圧VLTおよび利得の変化を緩やかなものとすることができるので、発振ゲートの出力振幅の変動も抑えられることになり、負荷回路が最終的に第二の状態に至る時間すなわち発振ゲート切り替えタイミングが従来例と同じであったとしても、それに至るまでの間、負荷回路の等価インピーダンスが徐々に増加して負荷回路による消費電流を低減することができる。
【0023】
また請求項2に記載の本発明の発振回路によれば、負荷回路の状態を第一の状態から第二の状態までを緩やかに段階的に遷移させるために、制御回路の出力端子電圧を発振パルス数に応じて第二の電源端子の電圧から第一の電源端子の電圧に向けて緩やかに変化させているため、発振ゲート切り替えに伴う発振振幅の変動を軽微なものとし、これにより発振ゲート切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ効率的な発振ゲートの切り替えが可能となる。また、発振ゲートの出力振幅の変動も抑えられることになり、負荷回路が最終的に第二の状態に至る時間すなわち発振ゲート切り替えタイミングが従来例と同じであったとしても、それに至るまでの間、負荷回路の等価インピーダンスが徐々に増加して負荷回路による消費電流を低減することができる。
【0024】
また請求項3に記載の本発明の発振回路によれば、発振振幅検出手段のパルス出力に応じて制御回路の出力端子電圧を緩やかに変化させているため、さらに効果的な切り替え動作を実現することができる。
【0025】
さらに請求項4に記載の本発明の発振回路によれば、第二の発振振幅検出手段のヒステリシス幅を第一の発振振幅検出手段よりも大きくしたことにより、切り替え動作時の発振振幅変動に対して、これら発振振幅検出手段の出力パルスが停止するとすれば第二の発振検出手段側が先にパルス出力を停止することになる。第二の発振振幅検出手段の出力パルスが停止した場合、制御回路の出力電圧変化が停止するから発振ゲートの状態は同一状態に維持され、それ以上の発振振幅の変動は抑制され、一方、第二の発振検出手段側の出力パルスが停止してもヒステリシス幅のより小さい第一の発振振幅検出手段側はパルス出力を維持することができるので、クロックパルス出力を継続して得ることができ、やがて発振振幅が拡大し、再び第二の発振検振幅出手段が感応し始めると制御回路の出力電圧が先程停止した状態からまた変化を始め、負荷回路の出力電圧をまた増加させ、再びCMOS型発振ゲートへと切り替えが進行することになるので、出力クロックパルスの欠損を確実に防止しつつ、自動的に最適なタイミングで効率的な発振ゲート切り替えを行うことができる。
【0026】
さらに請求項5に記載の本発明の発振回路によれば、上記負荷回路の等価インピーダンスを緩やかに変化させるように遷移手段を構成したため、発振ゲート切り替えに伴う発振振幅の変動を軽微なものとし、これにより発振ゲート切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ効率的な発振ゲートの切り替えが可能となり、また、負荷回路の等価インピーダンスが徐々に増加して負荷回路による消費電流を低減することができるもで、同様の効果を得ることができる。
【0027】
さらに請求項6に記載の本発明の発振回路によれば、第一の電源端子と第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき負荷回路を第一の状態に戻す電源低下検出手段を設けたため、さらに、電源電圧が低下して発振が停止しても、電圧が復帰すれば再び発振を開始できるフォールトトレランスに優れた発振回路とすることができる。
【0028】
さらに請求項7に記載の本発明の発振回路によれば、第一の電源端子と第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき制御回路の出力端子電圧を第二の電源端子の電圧に初期化する電源低下検出手段を設けたため、先の場合と同様に、電源電圧が低下して発振が停止しても、電圧が復帰すれば再び発振を開始できるフォールトトレランスに優れた発振回路とすることができる。
【0029】
さらに請求項8に記載の本発明の発振回路によれば、負荷回路は、第一の電源端子にソースを接続し電圧制御入力端子にゲートを接続すると共に、CMOS型発振ゲートの出力端子にドレインを接続したMOSトランジスタで構成したため、従来の発振回路と類似の構成で容易に実現することができる。
【0030】
さらに請求項9に記載の本発明の発振回路によれば、制御回路の具体的な構成によって比較的簡単な構成で発振ゲートの切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ、効率的な切り替えを行って低消費電流で且つ低電圧動作可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の最良の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による発振回路を示す回路図である。
端子X1と端子X2との間には、図6の場合と同様に発振子XLと帰還抵抗RFとを並列接続し、端子X1とGNDとの間および端子X2とGNDとの間にそれぞれ容量C1、C2を設けている。また電源端子VCCにソースを接続し端子X1にゲートを接続すると共に端子X2にドレインを接続したPMOSトランジスタP1と、GNDにソースを接続し端子X1にゲートを接続すると共に端子X2にドレインを接続したNMOSトランジスタN1とによってCMOS型発振ゲート1を構成している。また端子X2には入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共に、CMOS型発振ゲート1の出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行うシュミットゲートによる発振振幅検出手段3が設けられ、この発振振幅検出手段3の出力を出力端子CKOUTに接続している。
【0032】
電源端子VCCと端子X2との間には、電源端子VCCにソースを接続し端子X2にドレインを接続したPMOSトランジスタP2から成る負荷回路2が設けられ、このPMOSトランジスタP2は、制御回路4の出力によってそのゲート電圧を制御される。この制御回路4は、クロック入力端子INと、一端をGNDに接続する容量C3、C4と、クロック入力端子INにゲートを接続し電源端子VCCにソースを接続すると共に容量C3のもう一端にドレインを接続したPMOSトランジスタP3と、クロック入力端子INからインバータG1を介してゲートを接続し容量C3とPMOSトランジスタP3の接続点にソースまたはドレインを接続し容量C4のもう一端にドレインまたはソースを接続したPMOSトランジスタP4とから構成され、容量C4とPMOSトランジスタP4との接続点が制御回路4の出力となっている。
【0033】
クロック入力端子INには出力端子CKOUTからのクロックパルスを入力する以外に、例えば出力端子CKOUTのクロックパルスを分周したパルス、あるいは当該発振回路を搭載したマイクロプロセッサ等のチップ外部からの入力であっても良い。また、ここではCMOS型発振ゲート1にその停止制御を行うための制御端子を持たせていないが、他の実施の形態で示すように、これは必要に応じて付加すれば良い。
【0034】
次に、上述した発振回路の動作について説明する。
電源端子VCCに電圧が印加されると、まずCMOS型発振ゲート1内のNMOSトランジスタN1と負荷回路2によるNMOSインバータ型の発振ゲート構成で発振起動が行われることになる。CMOS型発振ゲート1内のPMOSトランジスタP1がどの程度関与するかは、電源端子VCCに印加された電圧の大きさによる。その電圧が、PMOSトランジスタP1、NMOSトランジスタN1の各しきい値電圧の和程度かそれを下回るものであれば、端子X1、X2の電位は少なくともNMOSトランジスタN1のしきい値電圧Vthn以上にはバイアスされるから、その場合、PMOSトランジスタP1側はほとんど遮断状態にあることになる。それに対して負荷回路2内のPMOSトランジスタP2は、制御回路4の出力容量C4によって電圧印加直後はGNDレベルのゲートバイアスを受けるため、最初からON状態となってNMOSトランジスタN1の負荷回路として機能する。
【0035】
端子X1、X2の電位は、帰還抵抗RFによって上述のNMOSインバータ型発振ゲートの論理しきい値電圧VLTに遷移し、NMOSインバータ型発振ゲートと発振子XL間の正帰還ループが形成され、発振振幅が徐々に増幅されて行く。端子X2の発振振幅がまだ発振振幅検出手段3の入力しきい値電圧のヒステリシス幅に至らない場合は、発振振幅検出手段3の出力からクロックパルスが出力されることはなく、HighもしくはLowレベルに固定されている。この状態では、制御回路4内のPMOSトランジスタP3あるいはPMOSトランジスタP4のいずれかがOFF状態で停止しているから、容量C4への充電パスが形成されることはなく、制御回路4出力電位はGNDレベルを維持し、よって負荷回路2内のPMOSトランジスタP2はON状態に置かれる。
【0036】
やがて端子X2の発振振幅が拡大し、発振振幅検出手段3のヒステリシス幅を超える振幅になると、発振振幅検出手段3は出力端子CKOUTにパルス出力を開始する。この時点から、当該発振回路を搭載したマイクロプロセッサなどにおいては出力端子CKOUTのクロックパルスをシステムクロックとして利用できることになり、それ以降は出力端子CKOUTのクロックパルス出力にパルスの欠損などが起きてはならない。
【0037】
発振振幅検出手段3がパルス出力を開始すると、それを受けて制御回路4が動作を開始する。いまクロック入力端子INがLowレベル入力であった場合、クロック入力端子INにゲートを接続したPMOSトランジスタP3はON、またインバータG1によってクロック入力端子INの反転信号をゲートに印加されるPMOSトランジスタP4はOFFとなって、容量C3側が電源端子VCCからPMOSトランジスタP3を介して充電される。次いで、クロック入力端子INがHighレベル入力となると、上述の場合とは逆にPMOSトランジスタP3がOFF、PMOSトランジスタP4がONとなり、容量C3の充電電荷がPMOSトランジスタP4を介して容量C4側へ分配され、容量C4の端子電位すなわち制御回路4出力電圧が上昇する。その出力電圧VC4は、次の数2の理論式で表される。
【0038】
[数2]
VC4=VCC[1−{C4/(C3+C4)}
ここで、VCCは電源端子VCCに印加された電圧、nは容量C3から容量C4への電荷分配回数であり、これはすなわちクロック入力端子INの入力パルス数に相当する。
【0039】
発振振幅検出手段3からのパルス出力によって、制御回路4の出力電圧VC4は数2に基づいて徐々に上昇することになるが、それを受けて負荷回路2内のPMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧VGSは徐々に減少し、よってPMOSトランジスタP2すなわち負荷回路2の等価インピーダンスは徐々に増大していくことになる。その出力電圧VC4の電圧上昇率は、制御回路4内の容量C3、C4の容量比設定によって容易に決定することができ、その容量比を大きく設定することで負荷回路2の等価インピーダンスの変化率を小さく抑えることができる。従って、負荷回路2の等価インピーダンスが変化することに伴う端子X2の発振振幅の変動も軽微に抑えることができるので、発振振幅検出手段3は安定してパルス出力を継続できる。
【0040】
やがて制御回路4の出力電圧VC4が電源端子VCCの電圧近傍まで上昇して、負荷回路2内PMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧VGSがそのしきい値電圧Vthp以下となると、PMOSトランジスタP2は遮断状態となり負荷回路2の等価インピーダンスは極めて大きなものとなり、負荷回路2とNMOSトランジスタN1とによるNMOSインバータは解消され、それ以降はPMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1とから成るCMOS型発振ゲート1が発振を継続して行く。
【0041】
本実施の形態による発振回路は、上述したように負荷回路2を発振開始当初は第一の状態(ON状態)に置き、発振安定後は第二の状態(遮断状態)に切り替えるように構成し、しかも負荷回路2の状態を、CMOS型発振ゲートの出力端子からの発振パルス数に応じて上記第一の状態から上記第二の状態までを緩やかに段階的に遷移させるようにしたため、NMOSインバータ型からCMOS型発振ゲートへ連続して緩やかに移行させることができ、発振ゲート切り替えに伴う発振振幅の変動を軽微なものとすることができる。これにより発振ゲート切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止すると共に、負荷回路2の等価インピーダンスを徐々に増大させることにより、負荷回路2からNMOSトランジスタN1側への貫通電流を徐々に減少させることができ、効率的な発振ゲート切り替え動作を実現した低電圧動作に好適な発振回路を得ることができる。
【0042】
また本実施の形態による発振回路は、制御回路4における負荷回路2への出力端子電圧を、発振パルス数に応じて第二の電源端子の電圧から第一の電源端子の電圧に向けて段階的に変化させるようにしたため、NMOSインバータ型からCMOS型発振ゲートへ連続して緩やかに移行させることができ、発振ゲート切り替えに伴う発振振幅の変動を軽微なものとすることができる。これにより発振ゲート切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止すると共に、負荷回路2の等価インピーダンスを徐々に増大させることにより、負荷回路2からNMOSトランジスタN1側への貫通電流を徐々に減少させることができ、効率的な発振ゲート切り替え動作を実現した低電圧動作に好適な発振回路を得ることができる。
【0043】
上述した負荷回路2としては、第一の電源端子VCCにソースを接続し電圧制御入力端子にゲートを接続すると共に、CMOS型発振ゲート1の出力端子にドレインを接続したMOSトランジスタP2で構成したため、従来の発振回路と類似の構成で容易に実現することができる。また、制御回路4は、電源端子VCCと、入力端子INと、一端を基準電位に接続した第一の容量C3と、一端を基準電位に接続した第二の容量C4と、第一の容量C3のもう一端と電源端子VCCとの間に接続した第一のスイッチング手段P3と、この第一のスイッチング手段P3と第一の容量C3との接続点と第二の容量C4のもう一端との間に接続した第二のスイッチング手段P4とを備え、第一の電源端子と第二の電源端子のうち高電位側に電源端子VCCを接続し、第一のスイッチング手段P3と第二のスイッチング手段P4で入力端子の入力パルスに同期して排他的にON、OFF動作を繰り返し、第二のスイッチング手段P4と第二の容量C4との接続点から電圧出力を得るように構成しているため、この具体的な制御回路4の構成によって比較的簡単な構成で発振ゲートの切り替えに伴うクロックパルス出力の欠損を防止しつつ、効率的な切り替えを行って低消費電流で且つ低電圧動作可能となる。
【0044】
本実施例においては、負荷回路2をPMOSトランジスタP2のみで構成したが、これに限定されるものではなく、例えば図6に示したようにPMOSトランジスタP2のドレインに抵抗を挿入しても良い。その場合、発振起動直後の負荷回路2の等価インピーダンスを該抵抗値で決めることができる。これに対して、負荷回路2をPMOSトランジスタP2のみで構成した場合、そのW/L定数設定によって所定の等価インピーダンスを設計することになる。
【0045】
図2は、本発明の他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
CMOS型発振ゲート1は、電源端子VCCにソースを接続し制御端子STPNにゲートを接続すると共に端子X2にドレインを接続したPMOSトランジスタP5と、ソースおよびドレインをPMOSトランジスタP5と並列接続すると共にゲートを端子X1に接続したPMOSトランジスタP6と、GNDにソースを接続し制御端子STPNにゲートを接続したNMOSトランジスタN2と、NMOSトランジスタN2のドレインにソースを接続し端子X1にゲートを接続すると共に端子X2にドレインを接続したNMOSトランジスタN3とから、NAND型論理ゲートのCMOS型発振ゲート1を構成している。
【0046】
また、制御端子STPNに入力を接続したインバータG2と、負荷回路2内のPMOSトランジスタP2のゲートにドレインを接続しインバータG2の出力にゲートを接続すると共にGNDにソースを接続したNMOSトランジスタN4と、第二のクロックパルス出力端子CK1と、端子X2にその入力を接続し出力端子CK1に出力を接続した第二の発振振幅検出手段5とが新たに設けられ、制御回路4のクロック入力端子INには発振振幅検出手段5側の出力パルスを印加するようにしている。ここで、発振振幅検出手段5の入力しきい値電圧のヒステリシス幅は、発振振幅検出手段3に比べて広く設定されているものとする。その他の構成は、先の実施の形態と同様であるので、同等物には同一符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0047】
次に、上述した発振回路の動作について説明する。
電源端子VCCに電圧を印加し、制御端子STPNをHigh状態とすると、CMOS型発振ゲート1内のNMOSトランジスタN2がONすると共に、NMOSトランジスタN4がOFFし、負荷回路2内のPMOSトランジスタP2がONとなって、先の実施の形態の場合と同様、NMOSインバータ型の発振ゲートが形成されて発振起動が行われる。端子X2の発振振幅が拡大し、発振振幅検出手段3の入力しきい値電圧のヒステリシス幅を超えたとき、出力端子CKOUTからクロックパルスが出力されるが、発振振幅検出手段5の入力しきい値電圧のヒステリシス幅まで至っていない段階では、出力端子CK1側はまだHighまたはLowレベルに固定された状態にある。従って、制御回路4も初期状態のままで容量C4への充電は行われないからGNDレベル出力となっており、これを受けて負荷回路2内のPMOSトランジスタP2はON状態を継続する。
【0048】
やがて端子X2の発振振幅が発振振幅検出手段5の入力しきい値電圧のヒステリシス幅を超えるまで拡大すると、発振振幅検出手段5から出力端子CK1へパルス出力が開始され、これによって制御回路4も動作を開始する。発振振幅検出手段3側については、発振振幅検出手段5よりも入力しきい値電圧のヒステリシス幅が狭いため、端子X2の発振振幅に十分感応することができ、出力端子CKOUTからは継続的にクロックパルスを得ることができる。
【0049】
出力端子CK1のパルス出力によって、制御回路4は上述した数2の出力電圧VC4を出力し、負荷回路2の等価インピーダンスを徐々に増大させて行く。ここで、制御回路4内の容量C3、C4の容量比を下げて出力電位VC4の変化率を大きくすれば、負荷回路2の等価インピーダンスの増加率も大きくなり、負荷回路2が遮断状態になるタイミング、すなわちCMOS型発振ゲートへの切り替えタイミングを早めることができる。しかし、それは負荷回路2の等価インピーダンス変化に伴う端子X2の振幅変動が大きくなることを意味する。先の実施の形態においては、その変動によって発振振幅検出手段3が一瞬でも感応できない状態が起こると、出力クロックパルスの欠損につながるため、切り替えタイミングの短縮については難しい面がある。
【0050】
これに対して本実施の形態では、端子X2の振幅変動によってその出力パルスが停止するとすれば、入力しきい値電圧のヒステリシス幅の関係から発振振幅検出手段5側が先に停止することになる。そして発振振幅検出手段5側のパルス出力が停止すれば、制御回路4の動作も停止し、それ以上の負荷回路2の等価インピーダンス変化は抑止されるから、端子X2の発振振幅もそれ以上変動することはない。一方、発振検出手段5側の出力パルスが停止してもヒステリシス幅のより小さい発振振幅検出手段3側はパルス出力を維持することができるので、発振振幅検出手段3側はクロックパルス出力を継続して出力端子CKOUTからは欠損の無いクロックパルス得ることができ、やがて発振振幅が拡大し、再びの発振検振幅出手段5が感応し始めると制御回路の出力電圧が先程停止した状態からまた変化を始め、負荷回路の出力電圧をまた増加させ、再びCMOS型発振ゲート1へと切り替えが進行することになるので、出力クロックパルスの欠損を確実に防止しつつ、自動的に最適なタイミングで効率的な発振ゲート切り替えを行うことができる。つまり、発振振幅の変動を発振振幅検出手段5によって感知し、負荷回路2の等価インピーダンスの変化を自律的に制御して発振振幅検出手段3側の安定動作を図ることになる。
【0051】
本実施の形態においては、制御端子STPNを設けてCMOS型発振ゲート1をNAND論理ゲートの構成としたが、上述した初期動作に関しては特に必須用件ではなく、他の構成、例えばインバータやNOR論理ゲートであっても良い。この制御端子STPNは、当該発振回路を停止状態とするためのものである。図2において、制御端子STPNにLowレベルの信号を入力すると、発振ゲート1出力はHigh固定となって、端子X2を電源端子VCCレベルに固定する。またNMOSトランジスタN4がONし、制御回路4内の容量C4の充電電荷を放電してその端子電圧をGNDレベルとして初期状態に戻す。これによって、制御端子STPNをHigh入力として再び発振起動を行う際に、当初の電源投入時と同様に負荷回路2内PMOSトランジスタP2をON状態から発振起動を開始することができる。
【0052】
このような発振回路によれば、発振振幅検出手段3のパルス出力に応じて制御回路4の出力端子電圧を緩やかに変化させているため、発振振幅の変動を感知して負荷回路2の等価インピーダンス変化を自律的に制御することができるから発振ゲート1の切り替えタイミングの短縮を図ることも容易となり、先の実施の形態の効果に加え、さらに効率的な発振回路を得ることができる。
【0053】
また、第二の発振振幅検出手段5のヒステリシス幅を第一の発振振幅検出手段3よりも大きくしたことにより、切り替え動作時の発振振幅変動に対して、これら発振振幅検出手段の出力パルスが停止するとすれば第二の発振検出手段5側が先にパルス出力を停止することになる。第二の発振振幅検出手段5の出力パルスが停止した場合、制御回路4の出力電圧変化が停止するから発振ゲート1の状態は同一状態に維持され、それ以上の発振振幅の変動は抑制され、一方、第二の発振検出手段5側の出力パルスが停止してもヒステリシス幅のより小さい第一の発振振幅検出手段3側はパルス出力を維持することができるので、クロックパルス出力を継続して得ることができ、やがて発振振幅が拡大し、再び第二の発振検振幅出手段5が感応し始めると制御回路4の出力電圧が先程停止した状態からまた変化を始め、負荷回路2の出力電圧をまた増加させ、再びCMOS型発振ゲートへと切り替えが進行することになるので、出力クロックパルスの欠損を確実に防止しつつ、自動的に最適なタイミングで効率的な発振ゲート切り替えを行うことができる。
【0054】
図3は、本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
この実施の形態は、図2に示した構成に加えて電源低下検出手段6を設け、またインバータG2をNANDゲートG3に置換えて、その一方の入力端子を電源低下検出手段6の出力に接続したものである。この電源低下検出手段6は、制御回路4の出力ノードすなわち容量C4の端子ノードAにアノードを接続したダイオードD1と、このダイオードD1のカソードとGNDとの間に接続した容量C5と、一方の入力を電源端子VCCに接続すると共に他方の入力をダイオードD1のカソードにそれぞれ接続した電圧比較手段CMPとから構成され、この電圧比較手段CMPの出力が電源低下検出手段6の出力となってNANDゲートG3の入力に接続している。その他の構成は、図2の場合と同様であるから同等物に同一符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0055】
発振振幅が拡大し、安定してCMOS型発振ゲート1への切り替えも完了したとき、制御回路4の出力、すなわちノードAはほぼ電源端子VCCと同電位となり、負荷回路2内のPMOSトランジスタP2はOFF状態となっている。このとき瞬停などによって一時的に電源端子VCCの電圧が低下した場合を考える。その電圧低下が、CMOS型発振ゲート1が発振を維持し得る電圧下限VSTOPを下回った場合、発振は停止する。
【0056】
このとき、先の実施の形態の場合、制御回路4内の容量C4の充電電荷は、PMOSトランジスタP4、P3の寄生ダイオードを介して電源端子VCC側へ放電されることになる。但し、それは寄生ダイオードパスが形成されるような回路構成をとった場合であり、寄生ダイオードパスがなければ充電電荷はそのまま温存されることになる。しかし、寄生ダイオードの順電圧降下や、あるいは電源端子VCCの到達電圧(GNDまで低下するとは限らない)によって完全に放電されることはない。従って、その後電源端子VCC電圧が当初の電圧に復帰したとき、既にノードAはある電位に上昇していることになる。
【0057】
例えば電源端子VCCに2Vを印加して発振回路を動作させていたときに、印加電圧が1Vまで低下して発振が停止し、その後2Vに復帰した場合を想定してみる。上述した寄生ダイオードの順電圧降下を0.5V程度とすると、電圧低下時のノードAは電源端子VCC電圧(=1V)+順電圧降下(=0.5V)となって1.5Vまでしか放電されないことになる。その後、印加電圧が2Vへ復帰した時点で、ノードAは既に1.5Vの電位になっているため、負荷回路2内のPMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧VGSは0.5Vとなってしまい、負荷回路2の等価インピーダンスがかなり高い状態からの発振起動を行うことになり、発振起動ができなくなる恐れがある。
【0058】
これに対して図3に示した発振回路は、電源低下検出手段6により上述した問題を解決するようにしている。つまり、図3において、上述の如く発振ゲート切り替えが完了して、ノードAがほぼ電源端子VCC電圧に充電されたとき、ダイオードD1のカソードと容量C5の接続点であるノードBの電位は、ノードAからダイオードD1の順電圧降下分低い電位にある。電圧比較手段CMPは電源端子VCC側の入力端子がノードB側の入力端子より高電位にあるときHigh出力するものとすると、電源端子VCCの電圧がダイオードD1の順電圧降下程度低下すると、電圧比較手段CMP出力はLow反転する。これを受けてNANDゲートG3出力がHighとなり、NMOSトランジスタN4がONしてノードAの充電電荷を放電する。これにより、その後印加電圧が復帰したとき、ノードAはGNDレベルにあるから、負荷回路2内PMOSトランジスタP2がON状態となって初期の発振起動を行うことができる。
【0059】
この実施の形態では、ノードAの電位がほぼ電源端子VCCの電圧に到達するため、比較基準電圧としてダイオードD1により電源端子VCCの電圧より若干低い電圧を作り、その比較基準電圧と電源端子VCCの電圧との比較によって、電源端子VCCの印加電圧低下を検出したが、電圧低下を検出する方法はこれに限定されるものではなく、例えば電圧比較手段CMPそのものに入力オフセット電圧を持たせるなどしても良い。
【0060】
このような発振回路によれば、第一の電源端子と第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき負荷回路2を第一の状態に戻す電源低下検出手段6、あるいは第一の電源端子と第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき制御回路4の出力端子電圧を第二の電源端子の電圧に初期化する電源低下検出手段6を設けたため、さらに、電源電圧が低下して発振が停止しても、電圧が復帰すれば再び発振を開始できるフォールトトレランスに優れた発振回路とすることができる。
【0061】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
この実施の形態では、図1に示した負荷回路2に替えて、負荷回路7を端子X2とGNDとの間に設けている。負荷回路7は、GNDにソースを接続し制御回路4の出力にゲートを接続すると共に端子X2にドレインを接続したNMOSトランジスタN5で構成している。また制御回路4は、図1に示した構成に加えて、電源端子VCCにソースを接続すると共に容量C4とPMOSトランジスタP4との接続点にゲートを接続したPMOSトランジスタP7と、このPMOSトランジスタP7のドレインとGNDとの間に接続した抵抗R1とを設け、PMOSトランジスタP7のドレインと抵抗R1の接続点が制御回路4の出力としている。その他の構成は、図1の場合と同様であるから同等物に同一符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0062】
負荷回路7とPMOSトランジスタP1とによってPMOSインバータを構成して発振起動が行われることになる。すなわち、先の実施の形態と同様に発振起動時、制御回路4内の容量C4の端子電位はGNDレベルにあるからPMOSトランジスタP7がONし、制御回路4の出力としてはHighとなり、これを受けて負荷回路7内のNMOSトランジスタN5がON状態となる。やがて発振振幅が拡大し、出力端子CKOUTからクロックパルス出力が開始されると、制御回路4内の容量C4の端子電位VC4が徐々に上昇して行く。それに伴ってPMOSトランジスタP7のゲート・ソース間電圧VGSが減少し、PMOSトランジスタP7の等価インピーダンスが増大するから、抵抗R1との分圧比が低下し、制御回路4の出力電位としては徐々に低下することになる。従って、負荷回路7内のNMOSトランジスタN5のゲート・ソース間電圧VGSも減少し、徐々にその等価インピーダンスが増大し、最終的にはNMOSトランジスタN5がOFF状態となって、PMOSインバータ型からCMOS型への発振ゲートの切り替えが完了する。
【0063】
この実施の形態における発振回路は、負荷回路7をGND側に設けた一例を示したものであり、上述した図2および図3に示した発振回路においても同様な負荷回路7による構成とすることも可能である。尚、図3に示した発振回路に適用した場合は、電圧比較手段CMPの比較基準電圧としては、図4における制御回路4内の容量C4の端子電位を用いることになる。
【0064】
図5は、本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
電源端子VCCと端子X2との間には、ソースおよびドレインを並列接続したn個のPMOSトランジスタp1〜pnから成る負荷回路2が設けられており、各PMOSトランジスタp1〜pnは、制御回路4の出力によってそれぞれのゲート電圧を制御される。制御回路4は、nビットシフトレジスタS1〜Snで構成し、これら各シフトレジスタS1〜Snの各ビット出力は負荷回路2内のPMOSトランジスタp1〜pnのゲートにそれぞれ接続している。その他の構成は、先の実施の形態における同等物に同一符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0065】
1ビット目のシフトレジスタS1の入力は電源端子VCC、すなわちHighに固定されており、発振振幅検出手段5の出力パルスの立ち上がりもしくは立ち下がりエッジに同期して、1ビット目のシフトレジスタS1の出力から順次High出力になる。しかし、シフトレジスタS1〜Snの各ビット出力は、発振開始前は全てLow(0V)出力の状態にある。
【0066】
発振開始時、PMOSトランジスタp1〜pnは全てON状態にあり、つまり負荷回路2は第一の状態(ON)にある。その後、発振振幅が拡大し、発振振幅検出手段5がパルス出力を開始すると、その第一パルス目でシフトレジスタS1の出力がHighとなって、負荷回路2内のPMOSトランジスタp1がOFFとなり、続いて第二パルス目でシフトレジスタS2の出力がHighとなってPMOSトランジスタp2がOFFとなる。それ以降、同様に負荷回路2内のPMOSトランジスタp3〜pnが順次OFFしてゆき、第nパルス目が到来した時点で全PMOSトランジスタOFFとなる。つまり、負荷回路2内は第二の状態(OFF)となる。このようにして第一の状態から第二の状態に遷移させた遷移手段を構成していることになる。
【0067】
このような構成の負荷回路2および制御回路4を有する発振回路によっても、負荷回路2を発振開始当初は第一の状態に置き、発振安定後は第二の状態に切り替えるように構成し、しかも負荷回路2の状態を、CMOS型発振ゲートの出力端子からの発振パルス数に応じて第一の状態から第二の状態までを緩やかに段階的に遷移させるようにしたため、NMOSインバータ型からCMOS型発振ゲートへ連続して緩やかに移行させることができ、段階的遷移によって負荷回路2のインピーダンスを徐々に増加させることができ、他の実施の形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による発振回路は、図示の回路構成に限らず、携帯機器など電池駆動で用いられるマイクロプロセッサに搭載するのに好適な発振回路として用いることができる。また、上述した各実施の形態では、入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共にCMOS型発振ゲート1の出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段3を設けているが、図6に示したようにCMOS型発振ゲート1の入力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段3としても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施の形態による発振回路を示す回路図である。
【図2】本発明の他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の形態による発振回路を示す回路図である。
【図6】従来の発振回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0070】
1 CMOS型発振ゲート
2、7 負荷回路
3、5 発振振幅検出手段
4 制御回路
6 電源低下検出手段
XL 発振子
RF 帰還抵抗
C1〜C7 容量
CS、STPN 制御端子
CKOUT、CK1 出力端子
IN クロック入力端子
VCC 電源端子
R1 抵抗
P1〜P12 PMOSトランジスタ
N1〜N7 NMOSトランジスタ
G1、G2、G4、G5、G7〜G9 インバータ
G3 NANDゲート
G6 シュミット型NANDゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電源端子と第二の電源端子との間に接続したCMOS型発振ゲートと、上記第一の電源端子と上記CMOS型発振ゲートの出力端子との間に接続すると共に電圧制御入力端子を有する負荷回路と、上記CMOS型発振ゲートの入出力間に並列接続して発振動作を行う発振子とを備え、発振開始当初は上記負荷回路を第一の状態に、発振安定後は上記負荷回路を第二の状態にする発振回路において、上記CMOS型発振ゲートの出力端子からの発振パルス数に応じて上記負荷回路を上記第一の状態から上記第二の状態に緩やかに遷移させる遷移手段を設けたことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路を設け、この制御回路の出力端子電圧を発振パルス数に応じて上記第二の電源端子の電圧から上記第一の電源端子の電圧に向けて緩やかに変化させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路と、入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共に上記CMOS型発振ゲートの入力または出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段とを設け、この発振振幅検出手段のパルス出力に応じて上記制御回路の出力端子電圧を緩やかに変化させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、上記負荷回路の上記電圧制御入力端子にその出力端子を接続した制御回路と、入力しきい値電圧にヒステリシス特性を有すると共に上記CMOS型発振ゲートの入力または出力端子の発振振動電圧を受けてパルス出力を行う発振振幅検出手段と、上記発振振幅検出手段の入力しきい値電圧ヒステリシス特性よりも大なるヒステリシス幅を有すると共に、その入力を上記発振振幅検出手段の入力と共通接続した第二の発振振幅検出手段とを設け、この第二の発振振幅検出手段側からのパルス出力数に応じて上記負荷回路または上記制御回路の出力端子電圧を緩やかに遷移させて上記遷移手段を構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、上記遷移手段は、上記負荷回路の等価インピーダンスを緩やかに変化させるように構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のものにおいて、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき上記負荷回路を第一の状態に戻す電源低下検出手段を設けたことを特徴とする発振回路。
【請求項7】
請求項2に記載のものにおいて、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子との間の電位差低下を検知したとき上記制御回路の出力端子電圧を上記第二の電源端子の電圧に初期化する電源低下検出手段を設けたことを特徴とする発振回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載のものにおいて、上記負荷回路は、上記第一の電源端子にソースを接続し上記電圧制御入力端子にゲートを接続すると共に、上記CMOS型発振ゲートの出力端子にドレインを接続したMOSトランジスタで構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一つに記載のものにおいて、上記制御回路は、電源端子と、入力端子と、一端を基準電位に接続した第一の容量と、一端を基準電位に接続した第二の容量と、上記第一の容量のもう一端と上記電源端子との間に接続した第一のスイッチング手段と、この第一のスイッチング手段と上記第一の容量との接続点と上記第二の容量のもう一端との間に接続した第二のスイッチング手段とを備え、上記第一の電源端子と上記第二の電源端子のうち高電位側に上記電源端子を接続し、上記第一のスイッチング手段と上記第二のスイッチング手段で上記入力端子の入力パルスに同期して排他的にON、OFF動作を繰り返し、上記第二のスイッチング手段と上記第二の容量との接続点から電圧出力を得ることを特徴とする発振回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−101385(P2006−101385A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287190(P2004−287190)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000233273)日立原町電子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】