説明

発泡ウレタン複合成形品の製造方法および発泡ウレタン複合成形品

【課題】 従来の金型を用いた場合の種々の工程上の問題を改善する製造方法を提供すると共に、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品に替わって使用でき、表面の耐擦傷性が改良された発泡ウレタン複合成型品を提供する。
【解決手段】 熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型して表皮型枠を製造し、該表皮型枠を該表皮型枠と同型の金型にセットし、該表皮型枠内でウレタン発泡を行った後該金型から表皮型枠毎脱型する、表皮型枠と発泡ウレタンが一体化した発泡ウレタン複合成形品の製造方法;および該製造方法で製造された、高密度発泡ウレタン成形品に替る発泡ウレタン複合成形品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡ウレタン複合成形品の製造方法および発泡ウレタン複合成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品は、建材、家具、家庭用電気製品のキャビネットなどの多用途に用いられてきている。この発泡ウレタン成形品は、通常シリコン樹脂製の金型内でウレタン発泡を行い、取り出した後表面のピンホール、ボイドなどを修正する仕上げを行っている(たとえば、特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−13723号公報
【特許文献2】特公昭63−30923号公報
【特許文献3】特開昭59−168020号公報
【特許文献4】特公平4−21690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の製造方法において、シリコンゴム製の金型内でウレタン発泡を行う場合は、シリコンゴムの金型にバリアコートを塗布し強溶剤を使用するため、シリコンゴムの寿命が短く張り替え作業をしばしば行う必要がある。シリコンゴム製以外の金型内でウレタン発泡を行う場合は、離型剤を塗布する。このように、作業が面倒であったり、金型の寿命が短くなり経済的でないという問題がある。また、出来た発泡体の表面のピンホール、ボイドなどのパテ修理、サンドペーパーみがきなどの熟練を要する作業を必要とし成型品の仕上げに大変手間がかかるという問題もある。
また、このようにして製造された発泡ウレタン成形品の品質についても、その表面が軽い衝撃などによる傷や破損事故が発生するという問題が依然としてある。
【0005】
本発明の目的は、従来の金型を用いた場合の種々の工程上の問題を改善する製造方法を提供すると共に、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品に替わって使用でき、表面の耐擦傷性が改良された発泡ウレタン複合成型品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、特定の樹脂の真空成型した型枠を金型にセットし、型枠中でウレタン発泡を行い、発泡終了後型枠毎脱型すれば、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型して表皮型枠を製造し、該表皮型枠を該表皮型枠と同型の金型にセットし、該表皮型枠内でウレタン発泡を行った後該金型から表皮型枠毎脱型する、表皮型枠と発泡ウレタンが一体化した発泡ウレタン複合成形品の製造方法である。
【0008】
請求項1の発明によれば、予め真空成型した硬い表皮型枠内でウレタン発泡し、そのまま硬い表皮型枠毎取り出すので、金型にバリアコートを塗布する必要がなく強溶剤や離型剤を使用しないですみ、工程が簡略化され、経済的でもある。また、発泡ウレタン複合成型品の表面は発泡ウレタンではなく熱可塑性硬質樹脂の表皮であるので、ピンホール、ボイドなどがなく、その修理およびサンドペーパーみがきなどの熟練を要する作業の必要がない。
また、硬い表皮と発泡ウレタンとの密着性が良好で、表皮と発泡ウレタンとが一体化した発泡ウレタン複合成形品であるので、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品に替わって用いることができ、さらに表面の耐擦傷性が改良された発泡ウレタン複合成形品となる。
【0009】
請求項2の発明は、前記ウレタン発泡の発泡倍率が30〜50倍であることを特徴とする請求項1記載の発泡ウレタン複合成形品の製造方法である。
【0010】
請求項2の発明によれば、熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型した表皮型枠の表面は硬く表皮だけで形状が保持されるので、内部の発泡ウレタンを30〜50倍の発泡倍率にしても成形品の形状を保持することができる。発泡倍率が30倍以上であると、従来の高密度表面を有する発泡ウレタン成形品よりも経済的なメリットがでて汎用化が可能であり、50倍以下であると中でウレタン発泡しても表皮として問題がなく、断熱性などの発泡ウレタンの性能を確保できる。また、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品の発泡倍率は10〜20倍のものであったが、本発明の方法では30〜50倍にできるので、従来の1/2〜1/3に軽量化できる。
【0011】
請求項3の発明は、前記熱可塑性硬質樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂またはアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の発泡ウレタン複合成形品の製造方法である。
【0012】
請求項3の発明によれば、熱可塑性硬質樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂またはアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体であるので、内部の発泡ウレタンとの密着性がさらに優れると共に、成形品の曲率半径の小さい曲折部においてもピンホール、亀裂などが発生せず優れた表面仕上がりとなる。また、耐衝撃性、強靭性、耐候性が良好であり、外装用に用いても長期間使用できる。
【0013】
請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれか記載の製造方法で製造された、高密度発泡ウレタン成形品に替る発泡ウレタン複合成形品である。
【0014】
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の製造方法により製造された発泡ウレタン複合成形品は、熱可塑性硬質樹脂の硬い表皮と内部の発泡ウレタンとが一体化しており、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品に替わって用いられ、さらに表面の耐擦傷性が改良されている。熱可塑性硬質樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂またはアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体であると、発泡ウレタンとの密着性、耐擦傷性が改良されていることに加えて、さらに曲折部の仕上がり、耐候性が良好である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発泡ウレタン複合成形品の製造方法、得られる発泡ウレタン複合成形品は次の効果を奏する。
(1)金型にバリアコートを塗布する必要がなく強溶剤や離型剤を使用しないですみ、工程が簡略化され、経済的である。
(2)ウレタン発泡成型品の表面にピンホール、ボイドなどがなく、その修理およびサンドペーパーみがきなどの熟練を要する作業の必要がない。
(3)硬い表皮と発泡ウレタンとの密着性が良好で、表皮と発泡ウレタンとが一体化した発泡ウレタン複合成形品となり、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品に替わって用いられると同時に表面の耐擦傷性が改良されている。
(4)発泡ウレタンを30〜50倍の発泡倍率にすると、従来の1/2〜1/3に軽量化できる。
(5)熱可塑性硬質樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂またはアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体であると、発泡ウレタンとの密着性、耐擦傷性が改良されていることに加えて、さらに曲折部の仕上がり、耐候性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0017】
本発明に用いる熱可塑性硬質樹脂は、結晶性を持つ熱可塑性硬質樹脂であれば限定はないが、アクリル・スチレン・アクリロニリトル共重合体、アクリロニリトル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体(AES)、メタクリル・スチレン共重合体、アクリル樹脂、アクリル変性塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ブチレンテレフタレート樹脂、エチレンテレフタレート樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリロニリトル共重合体、カーボネート樹脂から選択される樹脂が好ましい。本発明において「硬質」とは、50℃以下で表面が硬く耐擦傷性を有し、薄い層の成形品であってもその形状を保つことを言う。従来のポリウレタンを型枠中で発泡する場合は、表皮として軟質ポリウレタンが用いられてきた。表皮がポリウレタンでないと内部の発泡ウレタンとの密着性が悪く表皮の曲折部にピンホール、ボイド、亀裂が生じていた。すなわち、曲折部は真空成型時に他の箇所よりも余計に引き伸ばされるため薄い膜厚になり、ウレタン発泡の発泡圧により亀裂が生じやすかった。しかし、驚くべきことに硬質樹脂、特に上記に例示された樹脂を用いると、曲折部においても、ピンホール、亀裂が発生しにくいことを見出した。すなわち、表皮の曲折部の曲率半径が1mm程度であっても曲折部でピンホール、亀裂がみられない。このことは、これらの樹脂を用いると樹脂の強靭性の他に、樹脂が薄くなったときに引き延ばされて生じる新たな樹脂の上面の極性基とウレタン樹脂のNCO基との親和性、および樹脂の活性水素と未反応のNCO基との反応により、樹脂との密着性が向上したことも一つの理由であると推定される。
【0018】
これらの内で特に好ましいのは、表皮として耐候性、強靭性が良好なアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体(AES)、アクリル変性塩化ビニル樹脂であり、これらの樹脂を用いると、さらに曲折部の曲率半径が0.2mm程度のところであってもピンホール、亀裂がみられず、細部においても優れた仕上がりとなる。これらの樹脂が特に優れるのは、ウレタンへの密着性の他に耐衝撃性、強靭性が優れているためと推定できる。アクリル変性塩化ビニル樹脂としては市販品の「カイダック」(登録商標、住友ベークライト社製)が好適に使用できる。
【0019】
本発明において、真空成形に用いて表皮型枠とする熱可塑性硬質樹脂のシートは、真空成形温度(好ましくは、170〜200℃)でよく伸びて、立体的な三次元曲面に形成されるが、伸びた部分が収縮しないことが特性として要求される。シートに可塑剤があれば可塑剤量が少ないほど、シートの収縮は小さくなるが、真空成形時の伸びが悪くなるうえに硬度が落ちる。好ましくは可塑剤がないシートである。用いられるシートの厚さは、好ましくは1mm以上、3mm以下である。1mm以上であると真空成型した後の曲折部が薄くなりピンホールが発生したり亀裂が発生することがないと同時に、保形性が良好であり、3mm以下であると、真空成型時における作業時間も増加せず、成形性が良好であり、これ以上厚くする必要はなく経済的となる。
【0020】
本発明に用いる熱可塑性硬質樹脂には、その他必要に応じてタルクやマイカなどの無機フィラー、および一般の熱可塑性樹脂に用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、滑剤、帯電防止剤、顔料などを添加することができる。
【0021】
表皮型枠中で発泡される発泡ウレタンの原料としては、通常発泡ウレタンで用いられるものが使用でき、ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤、発泡剤、触媒、整泡剤などを含有する発泡体原料を反応及び発泡させてなる。
ポリオールとしては、ポリウレタンに通常使用できるものが用いられ、たとえばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ひまし油、およびこれらのポリオールの中でビニルモノマーを重合させて得られる重合体ポリオールが挙げられる。ポリオールの価数、分子量は特に限定はないが後記の架橋剤として記載されるものは除く。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンに通常使用できるものが用いられる。たとえば、炭素数(NCO基中の炭素数を除く)6〜20の芳香族ポリイソシアネート[2,4−、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート(PAPI)など];炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート[ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなど];炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート[イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなど];炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート[キシリレンジイソシアネートなど];これらのポリイソシアネートの変性物[ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビュウレット基、ウレトジオン基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは、TDI、MDI、粗製MDI、カルボジイミド基含有変性MDIおよびこれらの2種以上の併用である。
【0023】
架橋剤としては、多価アルコール、多価フェノール、アルカノールアミン、ポリアミンたとえばエチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール;トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられ、これらの架橋剤は、単独または混合して使用することができる。
発泡剤としては、たとえば、水のほかペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガスなど公知のものが使用できる。
【0024】
触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を促進するためのものであり、たとえば、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなどの3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)などの有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラートなどが使用できる。
整泡剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物などが用いられる。その他、難燃剤なども必要に応じて使用できる。
【0025】
本発明における発泡ウレタンは、軟質、半硬質、硬質のいずれでもよく用途によって変更でき、上記の原料の種類およびその混合比率、架橋度、発泡倍率、発泡条件(たとえば、温度50〜150℃)を変えて得ることができる。
【0026】
本発明の発泡ウレタン複合成形品は、熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型して表皮型枠を製造し、該表皮型枠を該表皮型枠と同型の金型にセットし、該表皮型枠内でウレタン発泡を行った後、該金型から表皮型枠毎脱型して製造される。
【0027】
まず、真空成型装置に熱可塑性硬質樹脂のシートをセットし、たとえば170〜200℃の温度で通常の真空プレス条件により表皮型枠となる薄い層の成形品を作る。表皮型枠はウレタン発泡ができる程度の凹部を有していなければならない。表皮型枠の層厚は、好ましくは0.3〜0.8mmである。0.3mm以上であると曲折部が薄くなりすぎず曲折部にピンホール、ボイド、亀裂が発生しにくい。0.8mm以下であると、成形が良好に仕上がり、これ以上厚くする必要がなく経済的である。また、表皮の曲折部においては曲率半径が1mm以上であることが好ましい。1mm以上であると曲折部にピンホール、亀裂が発生しにくい。真空成型装置は市販品が使用できる。
【0028】
次に、ウレタン発泡を行うために、表皮型枠と同型の金型にセットする。金型はシリコン金型が好ましい。シリコンゴム金型であるとウレタン発泡後の脱型が容易である。しかし、表皮型枠毎脱型するので、シリコン金型にはバリアコートや離型剤の塗布は必要がない。同型の金型にセットするのは、表皮型枠の局部にウレタン発泡による過剰の負荷がかかり亀裂などを発生させないためである。
セットが終われば表皮型枠に密閉にして、内部を所定の温度に設定する。次に上記ウレタン発泡の原料混合物を表皮型枠内に注入する。
ポリウレタンフォーム原料の密閉型枠への注入方法については特に制限されず、通常用いられる条件で注入される。
【0029】
ウレタン発泡には、通常ワンショット法又はプレポリマー法が採用される。ワンショット法は、ポリオールとポリイソシアネートとを直接反応させる方法である。プレポリマー法は、ポリオールとポリイソシアネートとの各一部を事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するプレポリマーを得、それにポリオール又はポリイソシアネートを反応させる方法である。ワンショット法はプレポリマー法に比べて製造工程が一工程で済み、製造条件の制約も少ないことから好ましい方法であり、製造コストを低減させることができる。
【0030】
ウレタン発泡を押さえ込む方法としては、プレス方式、クランプ方式が適用できるが、好ましいのは型角度を自由に設定できるクランプ方式である。
【0031】
発泡倍率については低発泡〜高発泡が可能であるが、特に内部の発泡ウレタンを30〜50倍の発泡倍率にしても、表皮が硬く成形品の形状を保持でき、断熱性などの発泡ウレタンの特性を有する成形品が得られるので30〜50倍の発泡倍率が好ましい。発泡倍率が30倍以上であると、従来の高密度表面層を有する発泡ウレタン成形品より経済的なメリットが出て汎用化が可能である。50倍以下であると中でウレタン発泡することが可能であり、断熱性などの発泡ウレタンの性能を確保できる。また、従来の発泡ウレタンの発泡倍率は10〜20倍のものであったが、本発明の方法では30〜50倍にできるので、従来の1/2〜1/3に軽量化ができる。ウレタン発泡の発泡倍率が高いとそれだけ発泡圧が大きくなり、膜厚が薄くなった曲折部において亀裂が生じウレタンが漏れ易くなる。しかし、本発明の製造方法では、30〜50倍の発泡倍率でも曲折部において亀裂が生じることがない。従来のウレタン発泡製品では考えられなかったことである。
【0032】
ウレタン発泡後冷却して取り出す。その後バリ取りを行い仕上げる。従来は、発泡ウレタンの表面のピンホール、ボイドなどのパテ修理、サンドペーパーみがきなどの熟練を要する作業を行っていたが、本発明の製造法においては、そのような作業の必要がなく、工程が簡略化できる。
【0033】
(実施例1)
膜厚2mmの「カイダック#3000」(登録商標、アクリル変性塩化ビニル樹脂、住友ベークライト社)の熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型機(布施真空社製「CUPF−1015−PWB」)にセットし、180℃、圧力3.0Kg/cm2で2分間真空成型を行い、凹部を有する層状の成形品を作成した。曲折部の曲率半径が0.2mmのところでもピンホールや亀裂は発生していなかった。平面状部分の膜厚は0.5mmであった。次にこれと同型のシリコン金型(バリアコートを塗布していない)にセットして密閉にして、ポリエーテルポリオールとTDIを主体に構成した発泡原料をワンショット法で注入してウレタン発泡した。注入条件は、液温25℃、循環圧3.5kg/cm、吐出圧3.5kg/cm、注入量200g/秒であった。発泡率は40%であった。20分後に脱型して取り出し、バリ取りをして仕上げ、発泡ウレタン複合成形品Aを得た。表面は爪でも傷つかなかった。また、サンシャインウエザオメーター1000時間後の光沢保持率は95%で、最初の表面状態をほぼ保持していた。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、熱可塑性硬質樹脂としてアクリル変性塩化ビニル樹脂に替えて「ダイヤラックXE60」(登録商標、AES樹脂、三菱化学社製)を用いる以外は実施例1と同様にして発泡ウレタン複合成形品Bを得た。表面は爪でも傷つかなかった。また、サンシャインウエザオメーター1000時間後の光沢保持率は93%で、最初の表面状態をほぼ保持していた。
【0035】
(比較例1)
シリコン金型を30〜40℃に加温し、バリアコートをシリコン金型に塗布し3〜5分後に実施例1に用いたと同じウレタン原料を注入して発泡を行った。20分後に脱型して高密度表面層を有するウレタン発泡製品を製造した。発泡倍率は15%であった。発泡耐表面のピンホール、ボイドなどをパテ修理し、表面をサンドペーパーで磨いた。表面は爪で傷がついた。また、サンシャインウエザオメーター500時間後に表面にクラックが発生した。
【0036】
(比較例2)
実施例1において、熱可塑性硬質樹脂としてアクリル変性塩化ビニル樹脂に替えてポリプロピレンシート(日本ポリプロ社製)を用いる以外は実施例1と同様にして発泡ウレタン複合成形品Cを得た。金型から脱型するときに発泡ウレタンが表皮型枠から剥がれが生じ、一体化されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の発泡ウレタン複合成形品は、高密度表面層を有するポリウレタン発泡成形品の代替品として好適に使用できる。たとえば、自動車部品、家具用部品、外装建材などの用途に用いられる。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性硬質樹脂のシートを真空成型して表皮型枠を製造し、該表皮型枠を該表皮型枠と同型の金型にセットし、該表皮型枠内でウレタン発泡を行った後該金型から表皮型枠毎脱型する、表皮型枠と発泡ウレタンが一体化した発泡ウレタン複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ウレタン発泡の発泡倍率が30〜50倍であることを特徴とする請求項1記載の発泡ウレタン複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性硬質樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂またはアクリロニリトル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の発泡ウレタン複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか記載の製造方法で製造された、高密度発泡ウレタン成形品に替る発泡ウレタン複合成形品。

【公開番号】特開2011−31410(P2011−31410A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177290(P2009−177290)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(507277103)株式会社アイ・イー・ジェー (32)
【出願人】(309024815)タック産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】