説明

発泡型ケミカルグラウト材

本発明は発泡型ケミカルグラウト材に関し、より詳しくは、エポキシ樹脂、ガラス粉末、充填剤、アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物、腐蝕可能金属粉末、硬化剤および溶剤を含む発泡型ケミカルグラウト材、および前記発泡型ケミカルグラウト材を適用することを特徴とする構造物の施工、補修、および補強方法に関する。本発明による発泡型ケミカルグラウト材は、発泡性に優れ特に天井のような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れているだけでなく、湿式および水中環境でも追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で構造物の施工、補修、および補強に優れた効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡型ケミカルグラウト材に関し、より詳しくは、発泡性に優れ、特に天井のような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れているだけでなく、湿式および水中環境でも追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で構造物の施工、補修および補強に優れた効果を有する発泡型ケミカルグラウト材およびこれを適用した構造物の施工、補修および補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウト材とは、土木工事で漏水防止工事または土質安定などのために構造物、地盤の割れた隙間、空洞などに充填剤として注入される注入材をいう。
その注入材は重力またはポンプを用いて充填されたり建築物の亀裂部分の補修、礎石部分、機械台座の支持力などを補強する目的で使用される。
【0003】
グラウト材の種類は施工目的によって止水グラウト、地盤改良グラウト、充填グラウト、補強グラウトなどに分類され、注入場所によって空洞グラウト、空隙グラウトなどに分類され、その主成分によってセメント系グラウト、鉄粉質系グラウト、アスファルト系グラウト、ケミカルグラウトなどに分類される。
【0004】
また、構造物の亀裂をそのまま放置する場合、構造物の外形を傷つけるだけでなく亀裂がさらに悪化して漏水、汚染、配筋された鉄筋の腐蝕によって構造物の寿命が短縮し、聖水大橋の崩壊のような大きな人命被害をもたらすことがあるため適切な補修および補強が要求される。
前記亀裂は大きく材料の不適切な使用、施工上の問題、使用、外部環境などによって発生し、亀裂の形態も発生原因によって色々な形態を有する。
【0005】
従来のグラウト材のうちのアスファルトグラウトは止水と土質安全用に主に使用され、鉄粉質系グラウトはその化学的無収縮作用および高強度によって鉄骨基礎の充填や継ぎ目部分の充填補強用などに幅広く使用されている。
【0006】
初期にはセメント、水、粘土などを使用したセメント系グラウトが主に使用されたが、1919年以後にはケミカルグラウトが主に使用されている。
最近はビニル重合体またはクロムリグニンの発見によりケミカルグラウト材関連技術は急速に発展し、このようなケミカルグラウト材は主に止水や地盤の改良および構造物の補修補完用に使用されている。
【0007】
従来のケミカルグラウト材として最も幅広く使用されているものはエポキシ樹脂を主成分にして充填剤としてケイ酸ソーダを含むケミカルグラウト材である。しかし、エポキシ樹脂を主成分とするケミカルグラウト材は充填剤として添加されるケイ酸ソーダの樹脂に対する高い吸油力によって、亀裂や洗掘部位などに満たされず、吸収されて、充填剤としての本来の機能を発揮できないだけでなく、グラウト材の強度が低下し、クラック間の付着力が低下して再びクラックが発生するという問題点がある。
【0008】
また、一般的な従来のエポキシ樹脂およびケイ酸ソーダを主成分とするグラウト材をクラックに注入する場合、クラック内に存在する水や気泡によってグラウト材の注入が容易でなく、特に幅が狭い導管やクラックでは水や気泡によるグラウト材の注入が決定的な妨害を受けるという問題点があった。また、グラウト材が母体の中に吸収されたり硬化収縮されてクラック内に実質的に完全に充填され難いという問題点があった。
【0009】
また、エポキシ樹脂などを主剤とするグラウト材はコンクリート構造物と粘度および強度において多くの差があり、コンクリートに比べて弾性があるため外部で応力が発生すると接合界面などで材料分離現象の発生頻度が高いという問題点があった。
さらに、従来の構造物の補修および補強方法は施工が複雑であり、復原後正常化されるまで長い時間がかかり、き損された美観を復原することにおいて完全でなく、再亀裂が頻繁に発生するという問題点がある。
【0010】
加えて、建築物の天井のように重力と逆方向の亀裂部分にグラウト材を充填しなければならない場合、従来のグラウト材は充填部位から流れ落ちるため作業性が良くなく、物性も後押しされていなかった。
したがって、建築物などの亀裂や洗掘部位を容易で簡単な方法で施工でき、再亀裂の発生がないグラウト材に関する研究がさらに必要であるのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のような従来の技術の問題点を解決しようと、本発明は発泡性に優れ、特に天井のような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し、圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れているだけでなく、湿式および水中環境でも追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で構造物の施工、補修、および補強に優れた効果を有する発泡型ケミカルグラウト材を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はクラック内の完全な充填が可能でクラック間の付着力に優れているだけでなく、耐酸性、耐アルカリ性、注入性、流入性、耐衝撃性、耐クラック性、付着力、および貯蔵性を同時に満足させる発泡型ケミカルグラウト材を提供することを他の目的とする。
【0013】
本発明は副資材との親和性を有しており簡便な施工と迅速な硬化にって短時間に構造物の機能および形状を完全に復元でき、引張強度など構造物の物性を補完し構造物に強力に付着して構造物の寿命を延長させ、き損された美観を完全に復元させ、優れた構造物の補修および補強方法を提供することをまた他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、
a)エポキシ樹脂(固形分基準)100重量部;
b)ガラス粉末10〜500重量部;
c)充填剤10〜500重量部;
d)アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物1〜500重量部;
e)金属粉末1〜500重量部;
f)硬化剤10〜100重量部;および
g)溶剤10〜500重量部
を含む発泡型ケミカルグラウト材を提供する。
【0015】
また、本発明は構造物の補修および補強方法において、前記発泡型ケミカルグラウト材を亀裂部位、洗掘部位またはショクリート施工に適用することを特徴とする構造物の補修および補強方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による発泡型ケミカルグラウト材は発泡性に優れ特に天井のような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れているだけでなく、湿式および水中環境でも追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で構造物の施工、補修、および補強に優れた効果を有する。また、本発明の発泡型ケミカルグラウト材は耐酸性、耐アルカリ性、注入性、流入性、耐衝撃性、耐クラック性、付着力、および貯蔵性を同時に満足させることができるだけでなく、副資材との親和性を有しており簡便な施工と迅速な硬化によって短時間に構造物の機能および形状を完全に復元でき、引張強度など構造物の物性を補完し構造物に強力に付着して構造物の寿命を延長させ、き損された美観を完全に復元させることができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の発泡型ケミカルグラウト材はエポキシ樹脂、ガラス粉末、充填剤、アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物、金属粉末、硬化剤、および溶剤を含むことを特徴とする。
【0018】
好ましくは、本発明は、
イ)i)エポキシ樹脂(固形分基準)100重量部;
ii)ガラス粉末10〜500重量部;
iii)充填剤10〜490重量部;
iv)アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物1〜500重量部;
v)溶剤10〜500重量部
を含有する主剤、並びに
ロ)i)金属粉末1〜500重量部;
ii)充填剤10〜490重量部;および
iii)硬化剤10〜100重量部
を含有する硬化剤を含む。
【0019】
本発明に使用される前記a)のエポキシ樹脂は、通常使用されるエポキシ樹脂であれば、特に制限されない。
前記エポキシ樹脂はジグリシジルタイプ及びトリグリシジルタイプの分子量が350〜3,000MWの範囲である無溶剤エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
特に、前記エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、またはこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などの公知のエポキシ系樹脂を使用することができる。
【0021】
前記エポキシ樹脂は、ケミカルグラウト材が注入されるクラックまたは空隙に付着されるセメント、コンクリートなどへの付着性を付与するバインダーとして作用し、ケミカルグラウト材に耐酸性および耐アルカリ性を付与する。
前記エポキシ樹脂の含量が過度に低い場合にはセメント、コンクリートなどへの付着性が低下し、その含量が高すぎる場合には硬度、強度およびその他グラウト材としての物性が悪くなる。
【0022】
本発明に使用される前記b)のガラス粉末は、ケミカルグラウト材の強度及び粘度を増加させるために用いられ、耐衝撃性および引張力を最大限に発揮させ、温度上昇及び硬化収縮による体積の膨張を抑制する。
【0023】
前記ガラス粉末は多様な粒子形状と大きさのものを使用することができる。ガラス粉末の粒子はガラス、破ガラス、ガラス繊維またはガラスカレットなどを粉砕して得るものであり、ガラス組成はA、C、E、耐アルカリ性ガラス粉末組成などを含み、樹脂との相溶性があるものであれば特に限定されない。特にE−ガラス組成のガラス粉末が、各種樹脂に対する付着性の面でさらに好ましい。
【0024】
前記ガラス粉末の粒径は特に限定されるのではないが、10□〜1□であるのが好ましく、さらに好ましくは50□〜1□である。また、ガラス粉末は空隙を埋める作用を有し、できれば粒径が小さいものを使用するのが好ましい。前記ガラス粉末の粒径が小さすぎる場合には、グラウト材の粘度が大きく増加することがあり、大きすぎる場合には空隙を埋める作用が低下してグラウト材の強度が低下したり、収縮および膨張性が増加することがある。
【0025】
前記ガラス粉末は樹脂や水を吸収しないため、グラウト材中に多量で使用することができ、特にガラス粉末の含量が高くても樹脂中へ良好に分散され、体積充填効果が優れている。
特に、ガラス粉末は前記エポキシ樹脂固形分100重量部に対して10〜500重量部で含まれるのが好ましい。その含量が10重量部未満である場合には収縮および膨張が増加し、500重量部を超える場合には粘度が過度に高くなってクラックに注入するのが困難で、相対的にエポキシ樹脂の含量が減少してケミカルグラウト材の付着力が低下することがある。また、本発明のケミカルグラウト材が主剤と硬化剤とに分けて使用される場合、前記ガラス粉末は適正量に分けて主剤と硬化剤に含まれることができ、特に主剤と硬化剤にそれぞれ10〜490重量部で含まれるのが良い。
【0026】
したがって、クラックの大きさだけでなくクラックの深さおよびクラックの間の気泡などの異物の含量を考慮して決定することが望ましい。例えば、深いクラックに注入する場合には、多少ガラス粉末の含量を少なくしながら充填剤(特に、ガラスビーズ)を添加して、流動性および注入性に優れたグラウト材で注入するのが好ましい。
【0027】
また、前記ガラス粉末をケミカルグラウト材に添加する場合、グラウト材注入条件が低温であれば、ガラス粉末の含量を低下させて粘度を低くして使用することができ、グラウト材注入条件が高温であれば、ガラス粉末の含量を増加させて粘度を高くして使用することもできる。
前記ガラス粉末は合成樹脂に比べてコンクリートと同一であるか類似している成分であって、強度や硬度など物理的特性が類似しているため、界面分離を抑制し、外部から作用する衝撃を吸収及び伝達して損傷が顕著に低下するグラウト組織を形成する。
【0028】
本発明に使用される前記c)の充填剤は亀裂または洗掘部位の材質または使用する樹脂の種類と量によってその種類と量を変化させて使用することができろ。特に、ガラスビーズ、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどのような軽炭類、白クレイ、ディクスクレイまたは黄クレイなどのようなクレイ類、灰分のような珪藻土類、またはシリカ(SiO2)などを使用することができ、好ましくはガラスビーズを使用するのが良い。
【0029】
前記ガラスビーズは球形、楕円形またはこれに準ずる全ての形状のガラスビーズを使用することができ、多様な大きさが分布したものから一定の大きさだけを選別したものまで全て使用することができる。
【0030】
前記ガラスビーズの粒径は施工用途と施工深さによって適切に選定して使用することができ、好ましくは1□〜3□であるものを使用することができる。また、これらは数□の小さい粒度と数□の大きい粒度のビーズの組み合わせによって多様な形態および物性を有するようにすることができる。しかし、粒径が3□を超える場合には分散性が低くなったり、クラックの大きさが3□以下である所では効率的に使用されることができない。特に、前記ガラスビーズはクラックの間隔が広いところには粒度が大きいビーズを相対的に多量で使用するのが好ましく、クラックの間隔が狭いところには粒度が小さいビーズを少量で使用するのが好ましい。
【0031】
前記ガラスビーズはエポキシ樹脂に充填剤として添加されボールベアリング効果によって非常に優れた流動性を提供してクラックなどに優れた注入性を提供し、その他の添加剤に対して優れた分散性を提供し、注入後に無欠陥を提供する。また、樹脂と充填剤の混合物が長期保管された後にも単純攪拌だけでよく混合される優れた貯蔵性を有する。また、前記ガラスビーズは一般シリカやシリカヒュームより強度および硬度が高く、前記のように球状に近い形状を有するので外部からの衝撃をよく吸収し、分散させるようになる。したがって、ガラスビーズが充填剤として添加された本発明の発泡型ケミカルグラウト材は優れた耐衝撃性を有する。
【0032】
前記のような充填剤はエポキシ樹脂固形分100重量部に対して10〜500重量部で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部で含まれる。その含量が10重量部未満である場合にはケミカルグラウト材の流動性が低くなり、硬化後に強度および硬度が低くなることがあり、500重量部を超える場合には相対的にエポキシ樹脂の含量が減少してケミカルグラウト材の強度が低くなることがあり、ケミカルグラウト材が硬化された後に脱落されることもある。また、本発明のケミカルグラウト材が主剤と硬化剤に分けて使用される場合、前記充填剤は適正量に分けて主剤と硬化剤に含まれることができ、特に主剤と硬化剤にそれぞれ10〜490重量部で含まれるのが良い。
【0033】
本発明に使用される前記d)のアルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物は発泡型ケミカルグラウト材の発泡程度を制御する作用をする。
前記アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)またはフランシウム(Fr)を含有するアルカリ金属系化合物、またはベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)またはラジウム(Ra)を含有するアルカリ土類金属系化合物を使用することができる。特にナトリウムを含有するナトリウム系アルカリ金属を使用するのが好ましく、その例としてはNaClまたはNaCO3などがある。
【0034】
前記アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物は要求される発泡程度によってその含量を調節することができ、特にエポキシ樹脂固形分100重量部に対して1〜500重量部で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部で含まれる。その含量が1重量部未満である場合には発泡が過度に少なくなり、500重量部を超える場合には発泡が過度に多くなる。
【0035】
本発明に使用される前記e)の金属粉末は金属が反応して気泡を形成する作用をする。
前記金属粉末はアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)または銅(Cu)を含有する金属粉末を使用することができ、特にアルミニウムを含有する合金または金属粉末を使用するのが発泡性が良いため好ましく、さらに好ましくはアルミニウム粉末を使用する。
【0036】
前記金属粉末はエポキシ樹脂固形分100重量部に対して1〜500重量部で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは1〜100重量部で含まれる。その含量が前記範囲内である場合には気泡を形成することにおいてさらに良い。
【0037】
本発明に使用される前記f)の硬化剤はケミカルグラウト材を常温で硬化させる作用をする。
前記硬化剤は通常の硬化剤を使用することができ、特に通常のエポキシ系硬化剤を使用するのが良い。
前記硬化剤はエポキシ樹脂固形分100重量部に対して10〜100重量部で含まれるのが好ましく、その含量が前記範囲内である場合にはグラウト材の硬化においてさらに良い。
【0038】
前記のような成分以外に本発明のケミカルグラウト材は溶剤を含み、その含量はエポキシ樹脂固形分100重量部に対して10〜500重量部で含まれるのが好ましい。
前記溶剤は前記アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物が溶解され得る(イオン化され得る)溶剤であれば厳しく制限されない。
【0039】
前記のような成分を含む本発明のケミカルグラウト材は必要に応じてガラス繊維を追加的に含むことができる。前記ガラス繊維は、ケミカルグラウト材が硬化される場合、硬化されたグラウト材の引張力および耐クラック性を増加させる作用をする。
【0040】
前記ガラス繊維は、E組成の長ガラス繊維または耐アルカリ性組成の繊維を用いることができ、具体的に繊維径が10〜20□であるガラス繊維または炭素繊維を均一なストランド長さに切断した切断繊維、または平均繊維長さに粉砕して製造した粉砕繊維を使用することができる。特に、切断繊維は2〜12mm程度の繊維長さに裁断されたのが好ましく、粉砕繊維は平均繊維長さが100〜300□であるのが好ましい。粉砕繊維は、ケミカルグラウト材の引張力補強および分散性面を考慮して好ましく、切断繊維と粉砕繊維を混合して使用することもできる。
【0041】
前記ガラス繊維はエポキシ樹脂の固形分100重量部に対して1〜100重量部で含まれるのが好ましい。前記ガラス繊維の含量が前記範囲内である場合には硬化された建築材グラウト材の引張強度が優れ、亀裂、収縮および膨張が発生しない。また、本発明のケミカルグラウト材が主剤と硬化剤に分けて使用される場合、前記ガラス繊維は適正量に分けて主剤と硬化剤に含まれることができ、特に主剤と硬化剤にそれぞれ10〜90重量部で含まれるのが良い。
【0042】
前記のような成分を含む本発明の発泡型ケミカルグラウト材は混合反応して硬化時従来のケミカルグラウト材と比較して1.5倍以上に体積が膨張し、前記のように発泡性に優れ、特に天井、壁面などのような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して、重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し、圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れている。さらに、本発明の発泡型ケミカルグラウト材は湿式または水中環境でも作業が容易で、前記ケミカルグラウト材が膨張しながら亀裂部位にある水を押し出して、亀裂または洗掘および空洞部位を隙間がないように塞ぐことができ、追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で、構造物の施工、補修および補強に優れる効果がある。
また、本発明は前記のような発泡型ケミカルグラウト材を亀裂部位、空洞、洗掘部位、またはショクリート施工に適用することを特徴とする構造物の施工、補修および補強方法を提供する。
【0043】
前記構造物の施工、補修および補強方法は目的、亀裂の発生原因、亀裂の形態および大きさ、構造物の重要度、構造形式、環境条件または補修後の耐用年数などを考慮して適切に選択して適用することができ、その例としては構造物の亀裂または空洞、洗掘された空隙部分に充填または注入する方法がある。
【0044】
前記構造物の亀裂または洗掘された空隙部分に充填または注入する方法は、所望部位に前記発泡型ケミカルグラウト材を充填または注入して行われる。
前記注入方法は、機械式注入工法、手動注入工法、ペダル式注入工法、油圧工法などが当業者によって適切に選択されて適用することができる。例えば、亀裂または洗掘があるトンネル天井部位の補強の場合、本発明の発泡型ケミカルグラウト材を亀裂または洗掘の上部に注入パックを設置し、主剤と硬化剤を混合して圧力を与えて上部まで注入し、注入パックを除去した後、亀裂表面を仕上げ処理することによって構造物の施工、補修および補強が行われ、貫通された場合には、貫通された亀裂または空洞、洗掘の一面に保護膜を設置した後に前記のように行って構造物の施工、補修および補強が行われる。
【0045】
前記本発明の注入による構造物の施工、補修、および補強方法は前記発泡型ケミカルグラウト材が母体に侵入して硬化しながら発泡されて母体の強度を強化し、密閉亀裂または洗掘内で気泡および水を突き抜け、亀裂または洗掘深部まで到達し、亀裂隙を完全に埋めて復元するようになる。また、母体のぜい弱性である引張強度を補完しながら硬化するので、再亀裂を予防し、温度変化に柔軟に適用され、硬化時収縮がない。さらに、前記のように注入されたケミカルグラウト材は優れた発泡力によって少量を使用しても広い亀裂または空洞、洗掘部位を効率的に復元することができ、比重が構造物と類似しているため、土木または建築物に無理とならないだけでなく、経済的である。
【0046】
また、前記構造物の補修および補強方法のうちの構造物のひび割れた空隙部分に充填または注入する方法は重力と逆方向の亀裂部位、空洞、洗掘部位またはショクリート施工、特に湿式または水中環境の亀裂または洗掘部位に好ましい。
【0047】
前記方法は、別途の事前作業無しに充填部位を清掃した後、発泡型ケミカルグラウト材を通常の方法を利用して充填部位に充填することによって行われる。従来のケミカルグラウト材を適用した充填方法は、トンネルの天井部分のように重力の逆方向に亀裂が生じて亀裂または洗掘部位に注入する時、高い比重によって外部に流れ出たり吸収されながら、亀裂隙が完全に埋められなかったが、本発明の発泡型ケミカルグラウト材を適用した充填方法は、前記発泡型ケミカルグラウト材の優れた発泡性によって少量でも亀裂隙を完全に埋めて復元することができ、硬化後付着面の脱落がなく、特に水中および湿潤環境での施工に優れた効果がある。
【0048】
また、前記ショクリート施工は、トンネル施工時、発破後にショクリート剤として本発明の発泡型ケミカルグラウト材を打設し迅速に硬化させることによって後続トンネルライニング工事を短時間内に連続施工して工期を短縮させ材料分離現象を防止し、土石の相互付着とライニング剤の結合を強化することができる。
【0049】
さらに、本発明の施工方法は水中環境である船舶の船底部分に亀裂など欠陥が発生して補修補強をする場合にも本発明の発泡型ケミカルグラウト材を注入、充填、または被覆して船舶の船底部分、機械部品などを補修および補強することができる。
【0050】
本発明による発泡型ケミカルグラウト材は耐酸性、耐アルカリ性、注入性、耐衝撃性、耐クラック性、付着力および貯蔵性を同時に満足させることができ、簡便な施工と迅速な硬化によって短時間に構造物の機能および形状を完全に復元することができ、引張強度など構造物の物性を補完し、構造物に強力に付着して構造物の寿命を延長させ、き損された美観を完全に復元させることができる。
【0051】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
実施例
実施例1
エポキシ液状樹脂1kgに平均粒度が200メッシュ、比重が2.54であるガラス粉末1kg、充填剤として平均粒度が0.1mmであるガラスビーズ300g、アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物としてNaCl50g、および溶剤300gを均一に混合して主剤を準備した。
その後、アルミニウム粉末500g、充填剤として平均粒度が0.1mmであるガラスビーズ300g、およびエポキシ硬化剤400gを均一に混合して硬化剤を準備した。
前記のように準備した主剤と硬化剤を混合して発泡型ケミカルグラウト材を製造した。
【0052】
実施例2
前記実施例1で主剤に平均繊維厚さ13.5□、平均繊維長さ300□の粉砕ガラス繊維100gを追加的に添加したことを除いては前記実施例1と同様の方法で主剤および硬化剤を製造し混合して発泡型ケミカルグラウト材を製造した。
【0053】
実施例3
前記実施例1で充填剤としてガラスビーズの代わりに炭酸カルシウム(CaCO3)を使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法で主剤および硬化剤を製造し混合して発泡型ケミカルグラウト材を製造した。
【0054】
比較例1
エポキシ液状樹脂1kgにベンジルアルコール100gを混合し、ここに平均粒度が0.1mmであるガラスビーズ3kgを一般混合器で混合してケミカルグラウト材を製造した。
【0055】
前記実施例1および比較例1で製造したグラウト材を使用してひび割れた天井にそれぞれ注入した結果、本発明によって製造した実施例1のケミカルグラウト材はひび割れた部分の外部に流れることなく硬化され、その使用量も比較例1のグラウト材と比較して1/2程度だけがかかるのを確認することができた。反面、比較例1のグラウト材は使用量が実施例1の2倍以上であり、亀裂部分からの流れが観察された。これから、本発明による発泡型ケミカルグラウト材は少量を使用しながらも、重力と逆方向の亀裂部分でも流れることなく優れた補修および補強が可能であるのが分かった。
【0056】
また、前記実施例1および比較例1で製造したケミカルグラウト材の発泡性を測定した結果、図1〜3に示したように本発明によって製造した実施例1のケミカルグラウト材は発泡程度が比較例1と比較して2倍以上であるのを確認することができた。
また、図4は本発明で製造したケミカルグラウト材を内部が空いている円柱状の筒に注入した後に発泡させて硬化した後に断面を切断したものであって、円柱全部分にクラック無しに均等に充填されているのを確認することができた。これから本発明のケミカルグラウト材は亀裂部分に注入されて発泡されることによってクラックや空隙の隙間無しに完全補修および補強が可能であるのが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明による発泡型ケミカルグラウト材は発泡性に優れ、特に天井のような重力と逆方向を有する亀裂および洗掘部位で注入後発泡して重力方向上部で充填性が優れ、高強度の閉鎖気孔構造を有し、圧力や荷重を受ける場所でも充填効果が優れており、湿式および水中環境でも追加工程無しに単一工程で付着性と作業性に優れ、施工が容易かつ簡便で構造物の施工、補修および補強に優れた効果を有する。また、本発明の発泡型ケミカルグラウト材は、耐酸性、耐アルカリ性、注入性、流入性、耐衝撃性、耐クラック性、付着力および貯蔵性を同時に満足させることができ、副資材との親和性を有しており、簡便な施工と迅速な硬化によって、短時間に構造物の機能および形状を完全に復元でき、引張強度など構造物の物性を補完し、構造物に強力に付着して構造物の寿命を延長させ、き損された美観を完全に復元させることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例によって製造した発泡型ケミカルグラウト材と従来のケミカルグラウト材を硬化した結果を示す正面写真である。
【図2】本発明の一実施例によって製造した発泡型ケミカルグラウト材と従来のケミカルグラウト材を硬化した結果を示す側面写真である。
【図3】本発明の一実施例によって製造した発泡型ケミカルグラウト材と従来のケミカルグラウト材を硬化した結果を示す側面写真である。
【図4】本発明で製造したケミカルグラウト材を内部が空いている円柱状の筒に注入した後に発泡させて硬化した後に断面を切断した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エポキシ樹脂(固形分基準)100重量部;
b)ガラス粉末10〜500重量部;
c)充填剤10〜500重量部;
d)アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物1〜500重量部;
e)金属粉末1〜500重量部;
f)硬化剤10〜100重量部;および
g)溶剤10〜500重量部
を含む発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項2】
前記発泡型ケミカルグラウト材が、
イ)i)エポキシ樹脂(固形分基準)100重量部;
ii)ガラス粉末10〜500重量部;
iii)充填剤10〜490重量部;
iv)アルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物1〜500重量部;
v)溶剤10〜500重量部
を含有する主剤、ならびに
ロ)i)金属粉末1〜500重量部;
ii)充填剤10〜490重量部;および
iii)硬化剤10〜100重量部
を含有する硬化剤を含む請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項3】
前記a)のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノールのジグリシジルエーテル化物、アルコールのジグリシジルエーテル化物、およびこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物または水素添加物及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項4】
前記b)のガラス粉末の粒径が10□〜1□である請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項5】
前記c)の充填剤が、ガラスビーズ、炭酸カルシウ(CaCO3)、 硫酸カルシウム、 硫酸バリウム、白クレイ、ディクスクレイ、黄クレイ、灰分、シリカ(SiO2)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項6】
前記充填剤は粒径が1□〜3□のガラスビーズである請求項5に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項7】
前記d)のアルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)からなる群より選択される1種以上のアルカリ金属系化合物またはアルカリ土類金属系化合物を含有する化合物である請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項8】
前記ケミカルグラウト材が、繊維径が10〜20□であるガラス繊維または炭素繊維を均一なストランド長さに切断した切断繊維または平均繊維長さを100〜300□に粉砕し、エポキシ樹脂固形分100重量部に対して1〜100重量部で含まれる粉砕繊維を、さらに含む請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項9】
前記e)の金属粉末が、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)および銅(Cu)からなる群より選択される1種以上の金属を含有する化合物である請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項10】
前記f)の硬化剤がエポキシ系硬化剤である請求項1に記載の発泡型ケミカルグラウト材。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか一項の発泡型ケミカルグラウト材が混合して硬化されたグラウト材。
【請求項12】
請求項1〜10のうちのいずれか一項の発泡型ケミカルグラウト材を亀裂部位、洗掘部位、空洞またはショクリート施工に適用することを特徴とする構造物の施工、補修および補強方法。
【請求項13】
前記構造物の施工、補修および補強が発泡型ケミカルグラウト材を乾式、湿式、または水中環境の構造物の亀裂または洗掘された空隙部分に充填または注入することによりで実施される請求項12に記載の構造物の施工、補修および補強方法。
【請求項14】
前記構造物がトンネルの天井、構造物の亀裂部位、構造物の洗掘部位または構造物の劣化部位である請求項12に記載の構造物の補修および補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−535600(P2007−535600A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510626(P2007−510626)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001256
【国際公開番号】WO2005/105694
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(505076979)
【Fターム(参考)】