説明

発泡成形体の製造方法

【課題】発泡成形体の重量のばらつきが小さく、かつ、発泡均一性に優れる発泡成形体を提供する。
【解決手段】内部にスクリュを備える成形機のバレル内で前記スクリュ位置を変動させてバレル内の溶融状熱可塑性樹脂の量を所定量計量する計量工程と、前記スクリュを、前記計量工程で計量された射出ストロークの95%以上100%以下となるまで前進させ、前記計量工程で計量された溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填する充填工程と、前記充填工程で前進させた前記スクリュの位置を、0.1秒以上2秒以下の間固定又は前進させるスクリュ固定工程と、前記金型キャビティの容積を拡大して充填された溶融情熱可塑性樹脂を発泡させる発泡工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品は、熱可塑性樹脂の発泡成形体が用いられている。熱可塑性樹脂の発泡成形体の一般的な製造方法としては、特許文献1に開示されているように、熱可塑性樹脂成形材料を、金型及び加熱シリンダを備えた射出成形機を用いて射出成形することにより成形品を製造する方法であって、a)加熱シリンダ内で溶融した発泡性熱可塑性樹脂成形材料を、前記成形品の容積の10〜95%の容積とした前記金型のキャビティ内に射出充填する射出工程、b)射出充填した後、前記金型面に接する表面層が固化し、内層が溶融している状態まで冷却する一次冷却工程、c)前記キャビティの容積を成形品の容積まで拡大し、前記内層の一部を発泡させる発泡工程、及びd)さらに冷却を行った後、前記金型から成形品を取り出す二次冷却工程を含む方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、得られる成形体の重量にバラツキが生じることがあった。また、キャビティ内に充填された溶融状熱可塑性樹脂の密度は、ゲートから近い部分(樹脂の流動の上流部)と、ゲートから遠い部分(樹脂の流動の下流部)とで差が生じてしまい、発泡状態が均一にならない等の問題があった。
【0005】
以上の課題に鑑み、本発明は発泡成形体の重量のばらつきが小さく、かつ、発泡均一性に優れる発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部にスクリュを備える成形機のバレル内で前記スクリュ位置を変動させてバレル内の溶融状熱可塑性樹脂の量を所定量計量する計量工程と、前記スクリュを、前記計量工程で計量された射出ストロークの95%以上100%以下となる位置まで前進させ、前記計量工程で計量された溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填する充填工程と、前記充填工程で前進させた前記スクリュの位置を、0.1秒間以上2秒間以下固定又は前進させるスクリュ固定工程と、前記金型キャビティの容積を拡大して充填された溶融情熱可塑性樹脂を発泡させる発泡工程と、を有する発泡成形体の製造方法及びこの方法により得られる発泡成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発泡成形体の重量のばらつきが小さく、かつ、発泡均一性に優れる発泡成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る製造方法は、溶融状熱可塑性樹脂の量を所定量計量する計量工程と、計量された溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填する充填工程と、スクリュの位置を固定するスクリュ固定工程と、溶融情熱可塑性樹脂を発泡させる発泡工程と、を有する。以下各工程を具体的に説明する。
〔計量工程〕
本発明における計量工程とは、内部にスクリュを備える成形機のバレル内でスクリュ位置を変動させてバレル内の溶融状熱可塑性樹脂の量を所定量計量する工程である。成形機は樹脂を可塑化・溶融するバレルを有するインラインスクリュ方式の射出成形機であることが好ましい。熱可塑性樹脂はこの射出成形機のバレル内に投入され、可塑化・溶融され、発泡剤と混合され、溶融状熱可塑性樹脂となる。なお、発泡剤は熱可塑性樹脂が可塑化・溶融される前に混合されてもよく、可塑化・溶融された後に混合されてもよい。
溶融状熱可塑性樹脂の計量は、射出成形機のスクリュを回転・移動させることにより行う。溶融状熱可塑性樹脂は、所定の計量値までスクリュを後退させてバレルの先端に蓄えられる。このときの計量値は、キャビティ内への充填率が、100%以下であり、好ましくは80%以上100%未満、さらに好ましくは85%以上99%以下である。充填率が100%を超えると射出工程での樹脂が過充填となってしまう。また、80%を下回るとキャビティ内への樹脂の充填量が不十分となり、得られる成形体に欠けが生じてしまう(ショートショットとなる)おそれがある。
【0009】
ここで、充填率とは成形に使用される金型で発泡剤未含有の熱可塑性樹脂を用いて成形された成形体の質量を100%とし、同一の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させて得られる本発明の発泡成形体の質量を百分率で表したものである。
計量工程でスクリュにかかる圧力は、2MPa以上30MPa以下であることが好ましく、2MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。スクリュにかかる圧力を、このような範囲とすることにより、溶融状樹脂組成物がバレル内で発泡してしまうことを防止することができる。
【0010】
〔充填工程〕
本発明における充填工程とは、スクリュを前進させ、計量工程で計量された溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填する工程である。計量工程でバレルの先端に蓄えられた溶融状熱可塑性樹脂は、スクリュの前進によってキャビティ内へ流入する(射出される)。
射出時にスクリュにかかる圧力は、2MPa以上30MPa以下であることが好ましく、2MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。スクリュにかかる圧力を、このような範囲とすることにより、溶融状樹脂組成物がバレル内で発泡してしまうことを防止することができる。
【0011】
また、本工程において、スクリュは、計量工程で計量された射出ストロークの95%以上100%以下となる位置まで前進させる。スクリュが射出ストロークの95%未満のところまでしか前進していない場合、後のスクリュ固定工程で、バレル内に残留していた溶融状熱可塑性樹脂が金型キャビティ内に多量に流入してしまい、本工程で充填された溶融状熱可塑性樹脂と、後から流入した溶融状熱可塑性樹脂と、で発泡倍率が異なってしまう可能性がある。また、金型キャビティ内に流入する樹脂の量にもバラツキが生じてしまうことがある。さらに、キャビティ内への樹脂の充填量が不十分となり、得られる成形体に欠けが生じてしまう(ショートショットとなる)おそれがある。
ここで、本発明における「射出ストローク」とは、充填工程においてスクリュを前進させることのできる移動距離のことをいい、前記計量工程において決められた計量値と同等の値となる。
【0012】
〔スクリュ固定工程〕
本発明におけるスクリュ固定工程とは、充填工程で前進させたスクリュの位置を、0.1秒間以上2秒間以下固定、又は更に前進させる工程である。スクリュの固定時間は、0.2秒以上2秒以下であることが好ましく、0.3秒以上1.5秒以下であることがより好ましい。スクリュの固定時間が2秒を超えると溶融状熱可塑性樹脂が金型キャビティ内で冷却され過ぎてしまい、発泡不良が生じる可能性がある。また、スクリュの固定時間が0.1秒を下回ると本工程による効果が薄れてしまう可能性がある。
なお、本発明における「スクリュの固定時間」とは、スクリュの位置を固定又は前進させる時間、即ちスクリュ固定工程の時間を意味する。スクリュを前進させる場合は、前進速度は特に限定されるものではない。
【0013】
スクリュの固定方法は、スクリュの一端に所定の圧力を加えるという方法、又はスクリュを機械的に固定する方法が挙げられる。
スクリュに加える圧力としては0.1MPa以上、好ましくは0.1MPa以上10MPa以下、より好ましくは0.5MPa以上5MPa以下である。スクリュにかかる圧力が0.1MPaを下回るとスクリュ固定工程による効果が薄れてしまう可能性がある。
【0014】
〔発泡工程〕
本発明における発泡工程とは、金型キャビティの容積を拡大して充填された溶融情熱可塑性樹脂を発泡させる工程である。
金型キャビティの容積を拡大させる方法としては、例えば、金型キャビティ面を後退させてキャビティ全体を拡大する方法、スライドコアを用いて部分的及び/又はキャビティ全体を拡大する方法が挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法より得られる発泡成形体の形状は、特に限定されず、公知の如何なる形状のものであってもよい。なお、発泡成形体の発泡倍率は、樹脂組成物の密度を発泡成形体1全体の密度で除した値であり、1倍を越え10倍以下であることが好ましく、1.1倍以上5倍以下であることがより好ましく、1.5倍以上3倍以下であることがさらに好ましい。
【0016】
また本発明の発泡成形体の製造方法は、ガスアシスト成形、メルトコア成形、インサート成形、2色成形等の成形方法と組み合して行ってもよい。
【0017】
続いて、本発明で用いられる熱可塑性樹脂及び発泡剤について説明する。
〔熱可塑性樹脂〕
本発明で使用する熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性エステル系樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちオレフィン系樹脂又はオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーの混合物を用いることが好ましい。
【0018】
ここで、上記オレフィン系樹脂とは、オレフィン由来の繰返し単位を50質量%以上含有する樹脂をいう。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等の炭素原子数が20以下のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンの中から選ばれる少なくとも2種類のモノマーを共重合させて得られる共重合体、及び前記α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体と前記α−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
α−オレフィンと共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキルエステル誘導体;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又は酸無水物;アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、マレイン酸のモノ又はジエチルエステル、N−フェニルマレイミド、N,N´−メタフェニレンビスマレイミド等の不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸の誘導体等が挙げられる。本発明では、熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を用いる場合には、プロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
プロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体及びプロピレン−エチレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
プロピレン−エチレン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。ここで、プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体をいう。
上記プロピレン単独重合体及びプロピレン−エチレン共重合体の中で、発泡成形体の剛性、耐熱性又は硬度を高めるという観点から、プロピレン系樹脂として、プロピレン単独重合体又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂のメルトフローレート(測定温度は230℃、荷重は2.16kg、JIS K7210に準拠)は、好ましく20g/10分以上200g/10分以下であり、より好ましくは25g/10分以上150g/10分以下であり、さらに好ましくは25g/10分以上120g/10分以下である。上記範囲内であると、流動性が好適であり、発泡成形時にバリ等の外観不良が発生しにくくなる。
【0021】
熱可塑性樹脂として、プロピレン単独重合体を用いる場合、そのメルトフローレート(測定温度は230℃、荷重は2.16kg、JIS K7210に準拠)は、0.1g/10分以上400g/10分以下であり、好ましくは1g/10分以上300g/10分以下である。また、熱可塑性樹脂として、プロピレン−エチレン共重合体を用いる場合、そのメルトフローレート(測定温度は230℃、荷重は2.16kg、JIS K7210に準拠)は、0.1g/10分以上200g/10分以下であり、好ましくは5g/10分以上150g/10分以下である。
【0022】
〔発泡剤〕
本発明で用いられる発泡剤は、化学発泡剤や物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤等が挙げられる。無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウムが挙げられる。有機系化学発泡剤としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸等のポリカルボン酸;、アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、イソシアネート化合物が挙げられる。
【0023】
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素、窒素が好ましい。また、物理発泡剤は単独又は2種以上組み合わせて用いても、化学発泡剤と組み合わせてもよい。
【0024】
また、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は、樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状態の熱可塑性樹脂中に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造を有する発泡成形体を得ることができる。
【0025】
化学発泡剤を添加する方法としては、化学発泡剤を熱可塑性樹脂に予め混合してもよく、成形機のバレルの途中から注入してもよい。また、化学発泡剤は粉末状のものでもよく、マスターバッチ状のものでもよい。
物理発泡剤を添加する方法としては、物理発泡剤を成形装置のバレル内に注入する方法が挙げられる。
【0026】
〔無機フィラー〕
本発明では、熱可塑性樹脂に、無機フィラーを添加していてもよい。
無機フィラーとしては、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、マイカ、セピオライト、ワラストナイト、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、硫酸バリウム、ガラスフレーク等が挙げられるが、好ましくはタルク及び繊維状マグネシウムオキシサルフェートであり、より好ましくはタルクである。これらの無機フィラーは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
無機フィラーの平均粒子径としては、好ましくは0.01μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上5μm以下である。ここで無機フィラーの平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0028】
無機フィラーは、無処理のまま使用してもよく、熱可塑性樹脂との界面接着強度を向上させるために、又は、溶融状熱可塑性樹脂中での無機フィラーの分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で無機フィラーの表面を処理して使用してもよい。
【0029】
無機フィラーの含有量としては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上60質量部以下、より好ましくは1質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。
【0030】
〔添加剤〕
本発明では、必要に応じて熱可塑性樹脂に、添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができる。例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0031】
本発明に係る発泡成形体は電気部品や自動車用部品、その他の工業用製品等の用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いた。
住友化学株式会社製、商品名:TSOP−SC6B R29、メルトフローレート:40g/10分
発泡剤として重曹系発泡剤を用いた。
三協化成株式会社製 「セルマイク MB3274」
【0034】
[評価方法]
(1)平均重量
成形体の平均重量は同一の成形条件において製造した成形体10個の重量を測定し、その平均値を求めた。
【0035】
(2)成形体の重量のバラツキ(製造安定性)
製造安定性の評価方法としては、同一の成形条件において製造した成形体10個の重量を測定し、その分散値を求めた。
【0036】
(3)充填率
溶融状熱可塑性樹脂の充填率は、下記の参考例1によって得られた未発泡成形体の平均重量を100とし、得られた発泡成形体の平均重量から百分率を計算した。
【0037】
(4)発泡性
発泡成形体の発泡性は、目視により評価した。発泡成形体の表面に凹がなく良好に発泡しているものを○、凹が発生しているものを×とした。
【0038】
〔実施例1〕
射出成形機として、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)、金型として、寸法が290mm×370mm、高さ45mm、厚み2.0mmtの箱型形状(ゲート構造:バルブゲート、成形体中央部分)のキャビティを有する雌雄一対の金型を用いて発泡成形を実施した。
まず、熱可塑性樹脂100質量部に対して化学発泡剤を2.5質量部添加し、樹脂温度が230℃となるよう溶融混練し、射出ストロークが63mmとなるよう計量した(計量工程)。
【0039】
次いで、射出ストロークの98.4%となるまで(射出ストロークが残り1mmとなるまで(表1中のスクリュ固定工程開始時のスクリュ位置参照))スクリュを前進させ、金型温度を50℃にした金型キャビティ中に上記の溶融状熱可塑性樹脂を充填した(充填工程)。
次いで、スクリュを1秒間前進させた。このときにスクリュにかかる圧力は、4MPaだった(スクリュ固定工程)。
次いで、金型キャビティ壁面を1.5mm後退させてキャビティの内容積を増加させて充填された溶融情熱可塑性樹脂を発泡させ、発泡成形体を得た(発泡工程)。
得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0040】
〔実施例2〕
充填工程で、射出ストロークの96.9%(射出ストロークが残り2mmとなるまで)となるまでスクリュを前進させたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例3〕
充填工程で、射出ストロークの95.2%(射出ストロークが残り3mmとなるまで)となるまでスクリュを前進させたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例4〕
スクリュ固定工程の、スクリュを前進させる時間を2秒としたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0043】
〔比較例1〕
スクリュ固定工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0044】
〔比較例2〕
充填工程で、射出ストロークの93.7%(射出ストロークが残り4mmとなるまで)となるまでスクリュを前進させたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
〔比較例3〕
充填工程で、射出ストロークの92.1%(射出ストロークが残り5mmとなるまで)となるまでスクリュを前進させたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例4〕
スクリュ固定工程の、スクリュを前進させる時間を3秒としたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0047】
〔参考例1〕
上記実施例1〜4及び比較例1〜4の充填率を算出するために、以下の手順で成形体を作成した。
実施例1の熱可塑性樹脂のみを用い、実施例1と同様の射出成形機及び金型を用いて、樹脂温度が230℃となるよう溶融混練し、射出ストロークが75mmとなるよう計量した(計量工程)。
次いで、射出ストロークの86.7%となるまで(射出ストロークが残り10mmとなるまで)スクリュを前進させ、金型温度を50℃にした金型キャビティ中に上記の溶融状熱可塑性樹脂を充填した(充填工程)。
次いで、スクリュを5秒間前進させ未発泡の成形体を得た。このときにスクリュにかかる圧力は、4MPaだった(スクリュ固定工程)。
得られた未発泡の成形体の平均重量は277gであった。































【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスクリュを備える成形機のバレル内で前記スクリュ位置を変動させてバレル内の溶融状熱可塑性樹脂の量を所定量計量する計量工程と、
前記スクリュを、前記計量工程で計量された射出ストロークの95%以上100%以下となる位置まで前進させ、前記計量工程で計量された溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に充填する充填工程と、
前記充填工程で前進させた前記スクリュの位置を、0.1秒間以上2秒間以下固定又は更に前進させるスクリュ固定工程と、
前記金型キャビティの容積を拡大して充填された溶融情熱可塑性樹脂を発泡させる発泡工程とを有する発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により製造された発泡成形体。

【公開番号】特開2012−35585(P2012−35585A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180017(P2010−180017)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】