説明

発熱ファブリックおよびその製造方法

本発明は発熱ファブリックに関する。本発明による発熱ファブリックは、合成繊維、再生繊維または天然繊維で形成された基層と、前記基層の上部に予め設計された電気的なパターンによって自由な形成が可能な伝導層と、前記伝導層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が線または面で前記伝導層と接触した発熱層と、前記伝導層および発熱層の上部に形成された絶縁層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導性ファブリックに関するものであり、特に発熱ファブリックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートウェア(smart wear)とは、繊維を用いたファッション製品内に信号伝達性繊維の新規な技術を適用し、各種デジタル装置を内蔵させることによって、いつでもどこでもデジタル機能を使用できるように考案された新種製品である。即ち、繊維または衣類の属性を保持すると共に、必要なデジタル機能を繊維材料および衣類に搭載させた新種の衣類である。そのためには、一般のファブリックと同様の触感と物性を有しつつ、デジタル信号を伝達しなければならない。したがって、繊維や衣服自体が外部刺激を感知し、繊維や衣服自体が反応する素材の高機能性および衣服とファブリック自体が有していないデジタル機能を結合した新概念の衣類を総称すると言える。
【0003】
1990年代半ばから米国やヨーロッパで軍事用として開発され始めたスマートウェアは、現在、衣類分野と医療分野などにおいて最も活発に開発されている。
【0004】
特に、プリンティング電子技術を利用したスマート素材は、ウェアラブル・コンピュータ(wearable computer)の軍事用繊維製品に多様に使用することができる。
【0005】
スマート素材において、衣類の特性と電気的特性を有する伝導性繊維、織物と各種部品を連結するインターコネクション(interconnection)方法としてプリンティング電子技術が用いられる場合は、織物基盤の電子回路の設計が可能なため適用性が高い。
【0006】
例えば、プリンティング電子技術を軍服に適用する場合は、重さ軽減および体積縮小の可能性があり、これにより、負傷治癒機能、通信機能などが一体型になる軍服の開発が可能となる。先端を指向する現代戦でも、軍人は完全武装時には45kgを超える装備を背負わなければならないことから、本発明の開発が要求されている。
【0007】
近年、スマートウェアの製造のために研究される発熱ファブリックは、温度、湿度および紫外線などの外部環境と体温を測定して自動的に発熱させる機能を有するが、さらに心地良い着用感と、洗濯にも問題がないように耐久性に対する要求が増大している実情にある。
【0008】
したがって、電気伝導性素材の開発適用による柔軟な織物基盤の回路板(Flexible Print Fabric Circuit Board、FPFCB)の技術開発および製品開発が要求される。
【0009】
すなわち、電気伝導性物質を織物の上にプリンティングしてデータ送信が可能な織物を開発する技術として、耐久性に優れた電気伝導性素材の開発、織物に伝導性物質をプリンティングできる技術の開発、織物基盤の回路構成技術の開発、プリンティングされた伝導性物質の性能維持および向上のための後加工技術の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、動的着用性に対する制限がなく、ファブリック上に回路の形成が可能であり、発熱部位を形成できる発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、消費電力を低減しつつ、発熱特性が向上した発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、断線による製品欠陥や回路破壊現象のない発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、電気的な物性と衣類に使用できる織物の固有物性を全て充足させることができる発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、発熱ファブリックへの回路設計において、回路の屈曲点の形を変形させ、電流が円滑に流れるようにする発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、発熱層および伝導層のプリンティングの手順を異にして、摩耗強度と耐屈曲性が高い発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、発熱ファブリックの単面または両面に絶縁層コーティング組成物を変化させ、絶縁性の向上と耐久性の発現のための耐洗濯性を備える発熱ファブリックおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するために、本発明は、発熱ファブリックにおいて、合成繊維、再生繊維または天然繊維で形成された基層と、前記基層の上部に予め設計された電気的なパターンによって自由な形成が可能な伝導層と、前記伝導層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が線または面で前記伝導層と接触した発熱層と、前記伝導層および発熱層の上部に形成された絶縁層と、を含む発熱ファブリックを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記基層と伝導層との間に基層の表面均一性のために形成されたプライマ層をさらに含む発熱ファブリックを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記プライマ層がポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコン系樹脂などからなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記プライマ層が撥水層と共に複層構造で形成される発熱ファブリックを提供する。
【0021】
また、本発明は、前記発熱層または伝導層が伝導性物質または伝導性物質とバインダーとの混合物から形成される発熱ファブリックを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記伝導性物質が伝導性高分子、炭素、銀、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、錫、鉄およびニッケルからなる群より選択される1つ以上から形成される発熱ファブリックを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記バインダーがポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記バインダーが水分散性ポリウレタンである発熱ファブリックを提供する。
【0025】
また、本発明は、前記伝導性高分子がポリアニリン、ポリピロールおよびポリチオフェンからなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックを提供する。
【0026】
また、本発明は、前記伝導層を形成する伝導性物質とバインダーが重量基準に90:10〜80:20の含有量比で含まれる発熱ファブリックを提供する。
【0027】
また、本発明は、前記伝導層が発熱層と2以上の地点で接触することを特徴とする発熱ファブリックを提供する。
【0028】
また、本発明は、前記発熱層または伝導層の厚さが2〜500μmである発熱ファブリックを提供する。
【0029】
また、本発明は、前記伝導層の幅が10〜20mmである発熱ファブリックを提供する。
【0030】
また、本発明は、前記絶縁層がポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、PVC系樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂からなる群より選択される1つ以上をコーティング、プリンティングまたはラミネーティングによって形成する発熱ファブリックを提供する。
【0031】
また、本発明は、前記伝導層に折れ部分が形成される場合、直線回路よりも相対的に幅が広い形状に形成される発熱ファブリックを提供する。
【0032】
また、本発明は、前記形状が円形または楕円形などである発熱ファブリックを提供する。
【0033】
また、本発明は、前記ファブリックの洗濯前後の抵抗値差が0.5〜4Ωである発熱ファブリックを提供する。
【0034】
また、本発明は、発熱ファブリックの製造方法において、合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に発熱機能を遂行する発熱層を形成するステップと、前記発熱層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が前記発熱層と接触するように伝導層を形成するステップと、前記発熱層および伝導層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0035】
また、本発明は、発熱ファブリックの製造方法において、合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に通電可能な伝導層を形成するステップと、前記伝導層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が前記伝導層と接触するように発熱層を形成するステップと、前記伝導層および発熱層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、発熱ファブリックの製造方法において、合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に発熱層および通電可能な伝導層を同時に形成するステップと、前記発熱層および伝導層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0037】
また、本発明は、前記基層の表面を平滑にし、基層の空隙を埋め、耐屈曲性を補完するために、前記基層のファブリックを圧搾ローラで加圧するカレンダリングステップをさらに含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0038】
また、本発明は、前記伝導層または発熱層を形成する前に、前記基層の上部に伝導層または発熱層の厚さを均一に維持するためのプライマ層を形成するステップをさらに含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0039】
また、本発明は、前記プライマ層がナイフローラ方式、オーバーロールコーティング、フローティングナイフコーティング、ナイフオーバーコーティング、ラミネーティング、プリンティングまたはグラビアコーティングによって形成する発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0040】
また、本発明は、前記プライマ層が撥水層と共に複層構造で形成される発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0041】
また、本発明は、前記プライマ層がポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコン系樹脂からなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0042】
また、本発明は、前記絶縁層を形成した後に、絶縁および耐洗濯性、耐屈曲性を補完するために透湿防水/防水ステップをさらに含む発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0043】
また、本発明は、前記発熱層または伝導層の塗布方式がコーティング、プリンティングおよび転写捺染からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0044】
また、本発明は、前記発熱層または伝導層が伝導性物質または伝導性物質とバインダーが混合されて形成される発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0045】
また、本発明は、前記伝導性物質が伝導性高分子、炭素、銀、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、錫、鉄およびニッケルからなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0046】
また、本発明は、前記バインダーがポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0047】
また、本発明は、前記バインダーが水分散性ポリウレタンである発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0048】
また、本発明は、前記伝導性高分子がポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンからなる群より選択される1つ以上である発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0049】
また、本発明は、前記伝導層を形成する伝導性物質とバインダーが重量基準に90:10〜80:20の含有量比で含まれる発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0050】
また、本発明は、前記伝導層が発熱層と2以上の地点で接触する発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0051】
また、本発明は、前記発熱層または伝導層の厚さが2〜500μmである発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0052】
また、本発明は、前記伝導層の幅が10〜20mmである発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0053】
また、本発明は、前記絶縁層がポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、PVC系樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂からなる群より選択される1つ以上をコーティング、プリンティングまたはラミネーティングによって形成する発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0054】
また、本発明は、前記絶縁層が直接コーティングの場合は乾燥式方式で、ラミネーティングの場合はホットメルト型ドット式またはグラビア方式で形成される発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0055】
また、本発明は、前記伝導層に折れ部分が形成される場合、直線回路よりも相対的に幅が広い形状に形成される発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0056】
また、本発明は、前記形状が円形または楕円形などである発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【0057】
また、本発明は、前記ファブリックの洗濯前後の抵抗値差が0.5〜4Ωである発熱ファブリックの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0058】
上述したように、本発明による発熱ファブリックおよびその製造方法は、自由なパターンの形成が可能なため、様々な動的着用性を保障すると同時に発熱機能の実現が可能である。
【0059】
また、本発明による発熱ファブリックおよびその製造方法は、繊維ファブリックの特徴である弾力性、柔軟性および耐屈曲性による屈曲や折れに関係なく、回路設計が可能であり、また、これによる断線のような回路損傷の可能性が極めて小さいという効果がある。
【0060】
また、本発明による発熱ファブリックおよびその製造方法は、連続工程による生産が可能だという利点がある。
【0061】
また、本発明による発熱ファブリックおよびその製造方法は、被覆性、快適性、透湿防水性のようなファブリック(衣類)としての機能を保有すると共に、積極的に発熱機能を発現できるという効果がある。
【0062】
また、本発明によるファブリックおよびその製造方法は、プライマ層が存在することから発熱層/伝導層が均一に維持され、これにより一定の電流の通電が可能だという利点がある。
【0063】
また、本発明による発熱ファブリックおよびその製造方法は、ファブリック上にプリンティング回路パターンを形成する時に、回路パターンの屈曲点が円形に形成されることにより、断面積が広くなり、電流の流れが円滑になるという効果がある。
【0064】
また、本発明によるファブリックおよびその製造方法は、絶縁層を発熱層および/または伝導層と相溶性がある物質の混合物から形成することにより、引張強度および伸度を向上させるという効果がある。
【0065】
また、本発明によるファブリックおよびその製造方法は、発熱層および/または伝導層に伝導層および発熱層のプリンティングの手順により摩耗強度と耐屈曲性を調節できるという効果がある。
【0066】
また、本発明によるファブリックおよびその製造方法は、絶縁層をファブリックの単面または両面にコーティングして形成することにより、洗濯に対する耐久性を有するという効果がある。
【0067】
また、本発明によるファブリックおよびその製造方法は、絶縁層をファブリックの単面または両面にコーティングして形成することにより、洗濯に対する耐久性を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の望ましい一実施例に係る発熱ファブリックの断面図
【図2】本発明の望ましい一実施例に係る発熱ファブリックの断面図
【図3】本発明の望ましい一実施例に係る発熱ファブリックの断面図
【図4】本発明の望ましい一実施例に係る発熱ファブリックの製造工程図
【図5】本発明の望ましい一実施例に係る発熱ファブリックの製造工程図
【図6】本発明の望ましい一実施例に係る回路の屈曲点の形状を示す断面図
【図7】バインダーの種類に応じた引張強度および伸度の変化を示すグラフ
【図8】バインダーの種類に応じた引張強度および伸度の変化を示すグラフ
【図9】バインダーの種類に応じた引張強度および伸度の変化を示すグラフ
【図10】バインダーの種類に応じた引張強度および伸度の変化を示すグラフ
【図11】発熱層および/または伝導層の形成手順による抵抗変化率を示すグラフ
【図12】発熱層および/または伝導層の形成手順による抵抗変化率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明の添付の図面を参照して本発明の望ましい一実施例を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
なお、図面中、同一の構成要素または部品に対してはできるだけ同一の符号を付す。また、本発明の説明において、関連公知の機能あるいは構成についての具体的な説明は、本発明の要旨を明確にするために省略する。
【0071】
本明細書において使われる程度の用語“約”、“実質的に”等は、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時に、その数値またはその数値に近接した意味として使用され、本発明の理解のために正確にまたは絶対的な数値が言及されている開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用する。
【0072】
本明細書において使われる“ファブリック(fabric)”とは、製織または編織によって製造される物品、不織布および繊維状ウェブ(web)などを全て含む意味として使用する。
【0073】
図1〜3は本発明の望ましい一実施例に係るファブリックの断面図である。
【0074】
図1〜3に示すように、本発明に係る発熱ファブリック10は、基層100、選択的プライマ層200、発熱層300、伝導層400、および絶縁層500で構成することができる。
【0075】
本発明の望ましい一実施例によるファブリックにおいて、基層100は、あらゆる形態の織物、編物、不織布または繊維状のウェブなどである。その素材と形成方法に制限なく適用でき、例えば、ポリエステル/ポリアミド/ポリウレタンなどの合成繊維、レーヨン/アセテートなどのセルロース再生繊維、綿/羊毛などの天然繊維からなる。
【0076】
基層100は、微視的に見ると表面が非常に不均一であり、繊維間の間隙により微細な気孔が極めて多く存在する。したがってこのような表面の均一性を確保し後述する発熱層およびまたは伝導層を均一な厚さで形成させて、発熱層などを形成する物質が基層100の裏面へ浸透しないように、前記基層100の上部にプライマ層200を形成することができる。但し、前記プライマ層は、ファブリックに選択的に形成できることを意味し、ファブリックの特性に応じて除外可能であることはもちろんである。
【0077】
プライマ層200は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、およびシリコン系樹脂などからなる群より選択される1つ以上である。
【0078】
一方、本発明によるプライマ層200は、前記物質からなる単一層で形成することができ撥水層(図示せず)と共に複層構造で形成できる。前記撥水層は、一般の撥水加工法によって行え、非制限的な例として、ふっ素またはシリコン材質からなる。前記撥水層は、発熱層および/または伝導層が形成される表面および/または裏面に形成できる。これにより、製造工程で発熱層および/または伝導層を構成する樹脂成分がファブリックに染み込む現象を防止できるという利点がある。
【0079】
前記プライマ層200の上部には発熱層300が形成される。発熱層300は予め設計された形態に、伝導性物質または伝導性物質およびバインダーの混合物を塗布して形成できるが、前記伝導性物質は、高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどであり、ここに導電性カーボンブラックを混合できる。また、炭素、銀、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、錫、鉄およびニッケルからなる群より選択される1つ以上である。
【0080】
図1は、発熱層300の上部に伝導層400が形成された一実施例を示す図であり、伝導層400は、予め設計された形態に形成された発熱層300の上部または下部の一部に形成される。
【0081】
一方、図2は、伝導層400が発熱層300と同一平面上に形成された他の実施例を示す図であり、伝導層400は発熱層300と同一のパターンまたは他のパターンで形成される。
【0082】
また、図3は伝導層400が発熱層300の下部に形成されたまた他の実施例を示す図である。
【0083】
伝導層400を構成する素材は、伝導性高分子、炭素、銀のような金属物質または前記物質とバインダーとの混合物であり、具体的に導電性フィラーを媒質に分散したもので、プリンティング後の硬化膜が導電性を有する素材を指し、通常、LCD電極プリンティング、タッチスクリーンプリンティング、回路基板の通電パターンプリンティング、薄膜スイッチ板の接点部およびパターン部のプリンティング、電磁波シールド用として使用されている。前記導電性フィラーは導電性金属(銀、金、白金、パラジウム、銅およびニッケルなど)の中で銀系が望ましい。
【0084】
前記伝導層のバインダーの素材は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上である。
【0085】
一方、前記金属物質とバインダーは90:10〜80:20(重量基準)の割合で混合されることが望ましいが、バインダーが前記の範囲を超える場合は伝導機能が低下するという問題があり、前記の範囲未満の場合は接着力が低下するという欠点がある。
【0086】
前記発熱層300および/または伝導層400の厚さは2〜500μmが望ましいが、前記の範囲未満の場合は、伝導層の厚さ均一性を確保しにくいという問題点があり、前記の範囲を超える場合は、同一の電圧下で抵抗値が下降し電流値は増加し、結局、電力消耗が増加するという問題がある。また、伝導層400の幅は10〜20mm程度が望ましく、伝導層の幅が増加するほど抵抗値が低下し電流が安定的に通電されるが、伝導層の幅が無制限に増加すると製造コストおよび被覆性に問題が発生する。一方、本発明によるファブリックの洗濯前後の抵抗値差が0.5〜4Ωを維持することが望ましいが、前記の範囲未満の場合は現実的に実現しにくく、前記の範囲を超える場合は電流の安定的な通電に問題が生じる。
【0087】
前記発熱層300および/または伝導層400の上部には絶縁層500が形成される。絶縁層500は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、PVC系樹脂およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂からなる群より選択される1つ以上をコーティング、プリンティングまたはラミネーティングによって形成できる。絶縁層500は伝導層に生じるクラックのような損傷を防止し、ファブリックに柔軟性を付与すると共に、透湿防水または防水機能を遂行することができる。
【0088】
以下、本発明の望ましい一実施例による発熱ファブリックの製造方法を説明する。
【0089】
図4および図5は、本発明の望ましい一実施例による発熱ファブリックの製造方法を示す製造工程図である。
【0090】
上述したように、基層100を形成するファブリックの準備が完了したら、織物や編物の場合は表面凹凸のような欠点を補償するために、2つの圧搾ローラの間に前記基層のファブリックを供給する。これにより、基層100の表面は平滑になり、基層100の空隙が埋められ、耐屈曲性を補完することができる(カレンダリングステップ)。このカレンダリングステップはファブリックの特性に応じて選択的に行える工程である。
【0091】
前記カレンダリングステップを経た、またはカレンダリングしない基層を備えたファブリックは、表面空隙をより積極的に制御し、伝導層300および/または伝導層400の厚さ均一性のためにプライマ層200を形成することができる。プライマ層200は、ナイフローラ方式、オーバーロールコーティング、フローティングナイフコーティング、またはナイフオーバーコーティング、ラミネーティング、プリンティングまたはグラビアコーティングによって形成することができる(プライマ層形成ステップ)。上述したように、前記プライマ層も選択的に形成することができる。
【0092】
一方、プライマ層は、撥水層と共に複層構造で構成することができるが、前記撥水層の形成工程はカレンダリングステップの前または後に実施できる。図4の工程図では、カレンダリングステップの前に撥水層を形成するステップを例示しており、図5の工程図では、カレンダリングステップの後に撥水層および/またはプライマ層を形成するステップを例示しているが、これに限定されるのではない。
【0093】
プライマ層200が形成されているか、或いは基層が備えられたファブリックに対し、その上部に予め設計された形態によって発熱層300および/または伝導層400が形成される。発熱層300および/または伝導層400の塗布方式にはコーティング、プリンティング、転写捺染などの様々な方式が適用される。本発明の望ましい実施例ではプリンティングによって発熱層300および/または伝導層400を形成する方法を例として説明する。プリンティング法による場合、用いられる電子機器の取り付け位置などに制限がなく、設計された形態によってファブリックに回路を設計することができる。
【0094】
このような点から本発明によるファブリックは、柔軟性織物基盤の印刷回路基板(Flexible Printed Fabric Circuit Board、FPFCB)と称することができる。
【0095】
前記印刷回路基板のパターンの形成は、導線の幅と長さ、これにより発熱パターンが決定され、各発熱体別抵抗値が測定されるように設計される。
【0096】
図6は、本発明の一実施例に係るファブリックに伝導層および発熱層を形成させた例を示す図であり、伝導層400の回路パターンにおいて折れ部分430が直線回路410よりも相対的に幅が広い形状450に形成された例を示す図である。図6では、前記形状として円形の形状を例示しているが、その形状はこれに限定されるのではなく、直線回路の幅より広い形状であれば、円形、楕円形などの他の形状の採択も可能であることはもちろんである。
【0097】
前記折れ部分430を相対的に幅が広い形状に形成することがより望ましいが、その理由は下式により裏付けられる。
【0098】
W=I
R=ρ・L/S
W:電力、R:抵抗、ρ:比抵抗、L:導線の長さ、S:断面積
【0099】
上式により面積が増加するにつれ抵抗は小さくなり、同時に電流の流れは大きくなる。したがって、基本的に折れ部分430が広い形状450からなることから電流量を増加させる要因となる。
【0100】
もし、導線の折れ部分430が直角乃至角のある形状になる場合は、不意な電流の流れの変化によりサージ(Surge)現象が起き、発熱反応が発生する恐れがある。
【0101】
前記のサージ現象とは、電線または電気回路に沿って伝達され、短時間に急速に増加し徐々に減少する特性を有する電気的電流、電圧または電力の過度な波形をいう。雷の日に停電になり電話が不通になったり、又は敏感な半導体が破壊される主要原因となる。電力線での急激な過電圧、特にサージが強いか或いは長いと絶縁破壊や電子機器に障害を与える恐れがあるため、サージ保護器やサージ抑制装置を電源端子とコンピュータ端子との間に設置することにより、電流の変化を抑制したり最小化する。
【0102】
したがって、本発明では、折れ部分430の面積を変化させることにより抵抗値を低下させ、サージ現象の発生を最小化し、電流量が増加しても円滑に流れるようにする。
【0103】
前記発熱層300および/または伝導層400は、厚さが2〜500μm、幅が10〜20mm、ファブリックの洗濯前後の抵抗値差が0.5〜4Ωを維持することが望ましい。また、電極において、炭素が使用される場合は1〜30重量%、銀の場合は1〜70重量%である。発熱層および/または伝導層に使用可能なバインダーは、プライマ層200と相溶性があるポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上である(発熱層形成ステップおよび/または伝導層形成ステップ)。
【0104】
発熱層300および/または伝導層400が形成された後、その上部に絶縁層500を形成することができる。絶縁層500は、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂からなる群より選択される1つ以上を直接コーティング、プリンティング、ラミネーティングによって形成することができる。前記コーティング方式の場合は乾燥式方法が望ましく、ラミネーティング方式の場合はホットメルト型ドット式またはグラビア方式が望ましい(絶縁層形成ステップ)。
【0105】
前記絶縁層形成ステップにおいて、コーティング方式の場合は、コーティング組成物により抵抗値が変わり、これにより、耐久性に影響を与えることがある。
【0106】
また、前記絶縁層は単面だけでなく両面に形成させることができる。
【0107】
したがって、ファブリックの特性上、数回の洗濯が要求されることを勘案すると、長期的に絶縁現象を発生させるための、すなわち、優れた耐洗濯性が発揮できるコーティング組成物の選択は重要な要素である。
【0108】
一方、前記カレンダリングステップの後に基層100を選択的に構成するファブリックに透湿防水加工または防水加工を処理することができる。透湿防水または防水処理により形成される気孔は、基層を構成するファブリックの空隙を埋めるだけでなく、絶縁および耐洗濯性、耐屈曲性を補完する役割をする。透湿防水加工に使用される物質は、伝導性素材と相溶性のある樹脂を塗布することが望ましい(透湿防水/防水ステップ)。
【0109】
次の実施例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0110】
ポリエステル平織物のファブリックに溶剤型ポリウレタン樹脂でプライマ層を形成させた後、前記プライマ層の上部に銀ペースト成分で伝導層を先に形成させ、前記伝導層の上部にポリピロール系樹脂でプリンティング方式により1回プリンティングして発熱層を形成させる。この時、バインダーはアクリル系架橋剤を使用した。また、回路の屈曲点の形状を円形の予め設計された発熱パターンで形成させた。その後、水分散性ポリウレタン組成物でコーティングして、単面に絶縁層を形成させた。
【実施例2】
【0111】
前記の実施例1と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例3】
【0112】
前記の実施例1と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例4】
【0113】
前記の実施例2と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例5】
【0114】
前記の実施例1と同一であるが、先に発熱層をプリンティングしてから伝導層を形成させた。
【実施例6】
【0115】
前記の実施例5と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例7】
【0116】
前記の実施例5と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例8】
【0117】
前記の実施例6と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例9】
【0118】
前記の実施例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として溶剤分散型シリコン(A社)を使用して単面に絶縁層を形成させた。
【実施例10】
【0119】
前記の実施例9と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例11】
【0120】
前記の実施例9と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例12】
【0121】
前記の実施例10と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例13】
【0122】
前記の実施例9と同一であるが、先に発熱層を形成してから伝導層をプリンティング形態で形成させた。
【実施例14】
【0123】
前記の実施例13と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例15】
【0124】
前記の実施例13と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例16】
【0125】
前記の実施例14と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例17】
【0126】
前記の実施例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として溶剤分散型シリコン(B社)を使用して単面に絶縁層を形成させた。
【実施例18】
【0127】
前記の実施例17と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例19】
【0128】
前記の実施例17と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例20】
【0129】
前記の実施例18と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例21】
【0130】
前記の実施例17と同一であるが、先に発熱層を形成してから伝導層を形成させた。
【実施例22】
【0131】
前記の実施例21と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例23】
【0132】
前記の実施例21と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例24】
【0133】
前記の実施例22と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例25】
【0134】
前記の実施例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として液状シリコンゴムを使用して単面に絶縁層を形成させた。
【実施例26】
【0135】
前記の実施例25と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例27】
【0136】
前記の実施例25と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例28】
【0137】
前記の実施例26と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例29】
【0138】
前記の実施例25と同一であるが、発熱層および/または伝導層において先に発熱層を形成してから伝導層を形成させた。
【実施例30】
【0139】
前記の実施例29と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【実施例31】
【0140】
前記の実施例29と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【実施例32】
【0141】
前記の実施例30と同一であるが、絶縁層を両面にコーティングして形成させた。
【0142】
(比較例1)
ポリエステル平織物のファブリックに溶剤型ポリウレタン樹脂でプライマ層を形成させたことの他に、発熱層および/または伝導層も絶縁層も形成させないファブリックを準備した。
【0143】
(比較例2)
比較例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として溶剤分散型ポリウレタンを使用して単面に絶縁層を形成させた。
【0144】
(比較例3)
比較例2と同一であるが、絶縁層を両面に形成させた。
【0145】
(比較例4)
比較例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として溶剤分散型シリコンAを使用して単面に絶縁層を形成させた。
【0146】
(比較例5)
比較例4と同一であるが、絶縁層を両面に形成させた。
【0147】
(比較例6)
比較例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として溶剤分散型シリコンBを使用して単面に絶縁層を形成させた。
【0148】
(比較例7)
比較例6と同一であるが、絶縁層を両面に形成させた。
【0149】
(比較例8)
比較例1と同一であるが、絶縁層のコーティング組成物として液状シリコンゴムを使用して単面に絶縁層を形成させた。
【0150】
(比較例9)
比較例8と同一であるが、絶縁層を両面に形成させた。
【0151】
(比較例10)
実施例1と同一であるが、絶縁層を形成しなかった。
【0152】
(比較例11)
比較例10と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【0153】
(比較例12)
比較例10と同一であるが、発熱層および/または伝導層において先に発熱層を形成してから伝導層を形成させた。
【0154】
(比較例13)
比較例12と同一であるが、発熱層および/または伝導層のバインダーはウレタン系架橋剤を使用した。
【0155】
【表1】

【0156】
*試験方法
1.抵抗変化率の測定
オーム計にて絶縁層のコーティング前と後の抵抗を測定して抵抗変化率を求め絶縁性を確認する。
【0157】
抵抗変化率(%)={(コーティング後の抵抗−コーティング前の抵抗)/コーティング前の抵抗}×100
【0158】
【表2】


【0159】
前記の試験結果、絶縁層において、ウレタン系(実施例1、3)よりはシリコン系(実施例9、27)、特に溶剤分散型シリコン(実施例9、19)でコーティングした時に、抵抗変化率がより一層大きかった。また、単面より両面の場合にコーティング後の抵抗がより一層増加し、抵抗変化率も上昇したことを確認した。その反面、液状シリコンゴム(実施例25)の場合、単面コーティング時はむしろ抵抗が減少したが、両面コーティング時は抵抗が僅かに増加した。
【0160】
2.引張強度:KSK0520
実施例および比較例の伸度と引張強度を3回反復測定して平均値を求めた。この時、グリップ間隔は76mm、引張速度は5mm/min、荷重は1KN(100kgf)、温度は73F、湿度は50%にした。下記表3は各実施例および比較例の試験結果を示す。
【0161】
【表3】

【0162】
図7〜10は、バインダーの種類に応じた引張強度および伸度の変化を示すグラフであって、図7は伝導性物質に添加したバインダーの種類に応じたシリコン/ポリウレタンコーティング時の引張強度の変化を示す図であり、図8は伝導性物質に添加したバインダーの種類に応じたシリコン/ポリウレタンコーティング時の伸度の変化を示す図であり、図9はシリコン単/両面コーティングによる発熱パターンのプリンティングの有/無時におけるファブリックの引張強度を示す図であり、図10はシリコン単/両面コーティングによる発熱パターンのプリンティングの有/無時におけるファブリックの伸度を示す図である。前記グラフで“untreated”は、発熱パターンがプリンティングされコーティング処理はしないことを、“Silicon C/T”は、発熱パターンがプリンティングされシリコン系樹脂で単面コーティング処理することを、“PU C/T”は、発熱パターンがプリンティングされポリウレタン系樹脂で単面コーティング処理することを、“PU−A”はポリウレタン系バインダーを、“AC−A”はアクリル系バインダーを意味する。
【0163】
前記グラフから、ポリウレタン系バインダーを添加した時、ポリウレタンでコーティングした発熱パターンが、コーティング処理しない発熱パターンと引張強度が類似していることが分かったが、シリコンでコーティングをすると引張強度が減少することが観察された。また、アクリル系バインダーを添加した時はコーティング後に引張強度が増加し、シリコンコーティングよりもポリウレタンコーティングで処理した時に、引張強度が高いことが観察された。
【0164】
一方、伸度の変化は、バインダーの種類に関係なく、コーティング後に伸度が増加し、これは柔軟性が増加したものと判断できる。
【0165】
図9および図10と関連して、“発熱パターンの印刷X”は、伝導性高分子と電極を印刷しなくコーティング処理のみをしたことを、“発熱パターンの印刷O”は、伝導性高分子(アクリル系バインダーを含む)と電極を印刷しコーティング処理したことを意味するが、単面コーティングの場合にも、両面コーティングの場合にも発熱パターンを印刷すると、引張強度が減少する現象が見られた。これは、発熱パターンの印刷により弱い力によってもファブリックが切れることを意味し、単面コーティングよりも両面コーティング時にさらに切れやすいと判断できる。伸度の場合は、単面コーティングよりも両面コーティング時に増加し、発熱パターンが印刷されると伸度は減少した。
【0166】
3.耐屈曲性:(KS K 0855:2004、C法(Crumple/Flex法))
長方形のコーティング織物を円筒形状に裁縫した後、対向する2つのディスクに両端をそれぞれ把持して円筒形状の試験片を作る。その後、片方のディスクは90度ねじれ運動をさせ、同時に他の片方のディスクは軸方向に往復運動させて試験片を屈曲させ、ねじれと圧縮運動を1,000回、5,000回、10,000回持続させた後、抵抗を測定した。
【0167】
衣服に着用させた時の耐久性を調べるために、発熱層および/伝導層において、発熱層と伝導層のプリンティングの手順による耐屈曲性の試験後の抵抗差を調べ、絶縁層においてコーティング前と後の抵抗差を比較した。
【0168】
【表4】

【0169】
前記の結果から、発熱層および/または伝導層において、先に伝導層をプリンティングしてから発熱層をプリンティングした場合は抵抗の変化が比較的安定的であることが分かり、大体で両面コーティング時に抵抗の変化がより大きいと判断される。図10〜11は発熱層および/または伝導層の形成手順による抵抗変化率を示すグラフである。
【0170】
4.耐洗濯性
本試験の試験条件を表5に示す。
【0171】
【表5】

【0172】
前記実施例および比較例で準備された試料を、前記の条件(表5参照)で各回洗濯別抵抗を測定した。
【0173】
抵抗変化率(%)={(洗濯後の抵抗−コーティング後の抵抗)/洗濯後の抵抗}×100
【0174】
下記表6のように、洗濯回数が多くなるにつれ抵抗が大きくなるが、洗濯前と比較してみると抵抗変化率は減少することが分かる。また、単面(実施例25)コーティングよりは、両面(実施例27)コーティング時の抵抗がより低かった。したがって、洗濯回数が増加しても抵抗の上昇が低くなることから、洗濯耐久性があることを確認した。
【0175】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の説明において、スマート衣類に適用される例だけを説明したが、本発明による電気伝導性ファブリックは、それ自体を電子機器の回路基板や部品に適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0177】
10 発熱ファブリック
100 基層
200 プライマ層
300 発熱層
400 伝導層
500 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱ファブリックにおいて、
合成繊維、再生繊維または天然繊維で形成された基層と、
前記基層の上部に予め設計された電気的なパターンによって自由な形成が可能な伝導層と、
前記伝導層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が線または面で前記伝導層と接触した発熱層と、
前記伝導層および発熱層の上部に形成された絶縁層と、を含むことを特徴とする発熱ファブリック。
【請求項2】
前記基層と伝導層との間に基層の表面均一性のために形成されたプライマ層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項3】
前記プライマ層は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコン系樹脂などからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の発熱ファブリック。
【請求項4】
前記プライマ層は、撥水層と共に複層構造で形成されることを特徴とする請求項2に記載の発熱ファブリック。
【請求項5】
前記発熱層または伝導層は、伝導性物質または伝導性物質とバインダーとの混合物から形成されることを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項6】
前記伝導性物質は、伝導性高分子、炭素、銀、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、錫、鉄およびニッケルからなる群より選択される1つ以上から形成されることを特徴とする請求項5に記載の発熱ファブリック。
【請求項7】
前記バインダーは、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の発熱ファブリック。
【請求項8】
前記バインダーは、水分散性ポリウレタンであることを特徴とする請求項7に記載の発熱ファブリック。
【請求項9】
前記伝導性高分子は、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリチオフェンからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の発熱ファブリック。
【請求項10】
前記伝導層を形成する伝導性物質とバインダーは、重量基準に90:10〜80:20の含有量比で含まれることを特徴とする請求項5に記載の発熱ファブリック。
【請求項11】
前記伝導層は、発熱層と2以上の地点で接触することを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項12】
前記発熱層または伝導層は厚さが2〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項13】
前記伝導層は幅が10〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項14】
前記絶縁層は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、PVC系樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂からなる群より選択される1つ以上をコーティング、プリンティングまたはラミネーティングによって形成することを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項15】
前記伝導層に折れ部分が形成される場合、直線回路よりも相対的に幅が広い形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項16】
前記形状は円形または楕円形などであることを特徴とする請求項15に記載の発熱ファブリック。
【請求項17】
前記ファブリックの洗濯前後の抵抗値差は0.5〜4Ωであることを特徴とする請求項1に記載の発熱ファブリック。
【請求項18】
発熱ファブリックの製造方法において、
合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に発熱機能を遂行する発熱層を形成するステップと、
前記発熱層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が前記発熱層と接触するように伝導層を形成するステップと、
前記発熱層および伝導層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含むことを特徴とする発熱ファブリックの製造方法。
【請求項19】
発熱ファブリックの製造方法において、
合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に通電可能な伝導層を形成するステップと、
前記伝導層の上部、下部または同一の平面に、その一部または全部が前記伝導層と接触するように発熱層を形成するステップと、
前記伝導層および発熱層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含むことを特徴とする発熱ファブリックの製造方法。
【請求項20】
発熱ファブリックの製造方法において、
合成繊維、再生繊維または天然繊維からなる基層の上部に発熱層および通電可能な伝導層を同時に形成するステップと、
前記発熱層および伝導層の上部に電気的遮蔽のために絶縁層を形成するステップと、を含む発熱ファブリックの製造方法。
【請求項21】
前記基層の表面を平滑にし、基層の空隙を埋め、耐屈曲性を補完するために、前記基層のファブリックを圧搾ローラで加圧するカレンダリングステップをさらに含むことを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項22】
前記伝導層または発熱層を形成する前に、前記基層の上部に伝導層または発熱層の厚さを均一に維持するためのプライマ層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項23】
前記プライマ層は、ナイフローラ方式、オーバーロールコーティング、フローティングナイフコーティング、ナイフオーバーコーティング、ラミネーティング、プリンティングまたはグラビアコーティングによって形成することを特徴とする請求項22に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項24】
前記プライマ層は、撥水層と共に複層構造で形成されることを特徴とする請求項22に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項25】
前記プライマ層は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコン系樹脂からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項22に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項26】
前記絶縁層を形成した後に、絶縁および耐洗濯性、耐屈曲性を補完するために透湿防水/防水ステップをさらに含むことを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項27】
前記発熱層または伝導層の塗布方式は、コーティング、プリンティングおよび転写捺染からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項28】
前記発熱層または伝導層は、伝導性物質または伝導性物質とバインダーが混合されて形成されることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項29】
前記伝導性物質は、伝導性高分子、炭素、銀、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、錫、鉄およびニッケルからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項28に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項30】
前記バインダーは、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項28に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項31】
前記バインダーは水分散性ポリウレタンであることを特徴とする請求項30に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項32】
前記伝導性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする請求項29に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項33】
前記伝導層を形成する伝導性物質とバインダーは、重量基準に90:10〜80:20の含有量比で含まれることを特徴とする請求項29に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項34】
前記伝導層は、発熱層と2以上の地点で接触することを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項35】
前記発熱層または伝導層は厚さが2〜500μmであることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項36】
前記伝導層は幅が10〜20mmであることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項37】
前記絶縁層は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、PVC系統樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂からなる群より選択される1つ以上をコーティング、プリンティングまたはラミネーティングによって形成することを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項38】
前記絶縁層は、直接コーティングの場合は乾燥式方式で、ラミネーティングの場合はホットメルト型ドット式またはグラビア方式で形成されることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項39】
前記伝導層に折れ部分が形成される場合、直線回路よりも相対的に幅が広い形状に形成されることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項40】
前記形状は円形または楕円形などであることを特徴とする請求項39に記載の発熱ファブリックの製造方法。
【請求項41】
前記ファブリックの洗濯前後の抵抗値差は0.5〜4Ωであることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発熱ファブリックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−513084(P2010−513084A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542651(P2009−542651)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006703
【国際公開番号】WO2008/075915
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509135094)コロン グロテック,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】