説明

発熱部品用接着剤

【課題】
発熱部品の駆動効率の低下を抑制することができる発熱部品用接着剤を提供する。
【解決手段】
発熱部品と放熱器とを固定するための接着剤に関する。樹脂成分に熱伝導成分として金属シリコン粒子を含有させる。熱伝導成分である金属シリコン粒子により発熱部品から放熱器への熱伝導効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどの発熱部品を放熱器に固定するための接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱部品は駆動により熱が発生した場合、その熱が蓄積されて駆動効率が低下することがあった。例えば、発熱部品であるLEDモジュールでは発光とともに発熱もするが、長時間の発光により熱が蓄積して温度が上昇し、発光効率が低下するという問題があった。そこで、発熱部品に放熱フィン等の放熱器を取り付け、発熱部品からの放熱効率を高めようとすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−180465公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来から発熱部品と放熱器とを固定する接着剤は熱伝導率が低く、発熱部品から放熱器までの熱伝導が十分に行われていない。従って、放熱器を接着した発熱部品であっても蓄熱して駆動効率(発光部品の場合は発光効率)が時間とともに大きく低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、発熱部品の駆動効率の低下を抑制することができる発熱部品用接着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発熱部品用接着剤は、発熱部品と放熱器とを固定するための接着剤であって、樹脂成分に熱伝導成分として金属シリコン粒子を含有させて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る発熱部品用接着剤は、請求項1において、樹脂成分が常温硬化型かつ一液硬化型であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る発熱部品用接着剤は、請求項1又は2において、金属シリコン粒子の含有量が全量に対して重量比で15〜30%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、熱伝導成分である金属シリコン粒子により発熱部品から放熱器への熱伝導効率を高めることができ、発熱部品の蓄熱による駆動効率の低下を抑えることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、加熱することなく樹脂成分を硬化して接着することができ、発熱部品の熱的損傷を抑えることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、ハンドリング性を損なうことなく、熱伝導効率を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例及び比較例の熱伝導率を示すグラフである。
【図2】[温度上昇の計測]で使用したシステムを示す概略図である。
【図3】実施例及び比較例の温度変化の経時変化を示すグラフである。
【図4】発光効率の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明の発熱部品用接着剤は、樹脂成分と熱伝導成分として金属シリコン粒子を含有させたものである。
【0015】
樹脂成分としてはアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの任意の樹脂を単独で用いたり併用したりすることができ、常温硬化型の樹脂を用いるのが好ましい。この場合、発熱部品と放熱器との接着の際に加熱を不要とすることができ、半導体デバイスなどの熱に弱い発熱部品であっても、熱的損傷を抑えることができ、しかも加熱作業や加熱エネルギーが不要となって省コスト化を図ることができるものである。また、樹脂成分としては一液硬化型のものを用いるのが好ましく、これにより、二液型のような混合する手間がなくなり、接着作業を効率よく行うことができる。尚、本発明おいて、「常温」とは15〜35℃のことをいう。
【0016】
熱伝導成分として用いる金属シリコン粒子は金属シリコン(Si)の塊を粉砕して粒子にしたものを用いることができる。この場合、金属シリコン粒子の粒径は0.1〜45μmの範囲にするのが好ましく、10μm以下がより好ましい。粒径がこの範囲よりも大きいと、接着剤を均一に塗布することが難しくなり、均一な熱伝導性が得られないおそれがあり、粒径が上記範囲よりも小さいと、樹脂成分中に均一に分散させることが難しくなり、接着剤の均一な熱伝導性が得られないおそれがある。また、金属シリコン粒子の含有量は接着剤の全量に対して15〜30%であることが好ましい。含有量がこの範囲よりも少ないと、接着剤の熱伝導性が低下するおそれがあり、含有量が上記範囲よりも多いと、接着剤の粘度が高くなりすぎて均一な塗布が難しくなるおそれがある。
【0017】
本発明では、必要に応じて、消泡剤、二酸化チタン、天然無機高分子物(炭酸カルシウムや石英等)、アルコールなどの水溶性媒体、水などを適宜配合することができる。
【0018】
本発明の発熱部品用接着剤は、発熱部品と放熱器とを接着して固定するのに用いられる。発熱部品としてはLEDモジュールなどの半導体デバイスなどを例示することができ、放熱器としては放熱フィンなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明の発熱部品用接着剤は、発熱部品の接着面と放熱器の接着面の片方又は両方に塗布した後、接着面同士を密着させ、樹脂成分を硬化させることによって、発熱部品と放熱器とを接着して固定することができる。塗布する際の発熱部品用接着剤の厚みは、特に限定されないが、0.1〜0.5mmとするのが好ましく、これよりも厚すぎると熱伝導効率が低下するおそれがあり、薄すぎると接着強度が確保できないおそれがある。
【0019】
そして、本発明の発熱部品用接着剤では、金属シリコン粒子により熱伝導性を高くすることができ、発熱部品の駆動時に発生する熱を放熱器に効率よく伝導することができる。従って、発熱部品に蓄熱されることがなくなって、駆動効率の低下を抑えることができるものである。尚、本発明は長期保管では冷暗所が望ましく、短期保管なら常温で可能である。
【実施例】
【0020】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0021】
(実施例1)
粒径が0.1〜6μm(レーザ回折式粒度分布測定による平均的な粒径はほぼ1.1〜1.2μm)の金属シリコン粒子を樹脂組成物(大日技研工業(株)製の珪酸質系塗料「ランデックスコート R800 クール・エコ」)に配合して発熱部品接着剤を調製した。樹脂組成物の組成は樹脂成分としてシリカ変性アクリル樹脂9.3重量%を含み、その他に、アルキル変性シリコーン0.2重量%、添加剤(消泡剤)3.0重量%、二酸化チタン5.0重量%、天然無機高分子(炭酸カルシウム)46.0重量%、水溶性媒体(アルコール)1.5重量%、水35.0重量%を含有するものである。また、金属シリコン粒子の含有量は発熱部品用接着剤の全量に対して15重量%にした。
【0022】
(実施例2)
金属シリコン粒子の含有量を発熱部品用接着剤の全量に対して25重量%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0023】
(実施例3)
金属シリコン粒子の含有量を発熱部品用接着剤の全量に対して30重量%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0024】
(比較例1)
樹脂組成物をそのまま用いて金属シリコン粒子を配合しなかった以外は実施例1と同様にした。
【0025】
(比較例2)
市販の接着剤「MODEL SCV−22」を用いた。
【0026】
(比較例3)
市販の接着剤「KJR−9080」を用いた。
【0027】
[熱伝導率の計測]
接着剤の熱伝導率の測定は、熱伝導率測定装置(京都電子工業製TCR−01)を用いて測定した。熱伝導率測定用の試料は、建材で使用されており、切断加工が容易で、熱伝導性が低いケイカル板(5mm厚み)を使用し、10cm×10cmのサイズの大きさに切り出し、これの片面に接着剤を塗布して製作した。接着剤の塗布方法は、300g/mに均一に塗布した。熱伝導率の測定結果を図1に示す。
【0028】
[温度上昇の計測]
図2に示すように、発熱部品1として、パワー白色LEDモジュール(RGBチップ各2個、計6チップ)を大きさ20mm×20mm×厚み5mmの配線基板2の上に実装したものを用いた。この配線基板2の下面に実施例1〜3及び比較例1〜3を300g/mで塗布し、次に、配線基板2を放熱器4である放熱フィンの上面に載せて、室温で24時間放置することによって、発熱部品1を放熱器4に接着して固定した。硬化後の接着剤Aの厚みはすべて0.5mmになるように塗布量を調整した。尚、比較例3については150℃で4時間加熱することにより、発熱部品1を放熱器4に接着して固定した。
【0029】
次に、上記の発熱部品1と直流電源5とを配線6を用いて電気的に接続した。配線6の途中には可変抵抗器7と電流計10とを直列に設け、可変抵抗器7の抵抗値を変えることによって電流計での電流値が600mAとなるように直流電源5から発熱部品1に通電した。また、温度計8に接続された熱電対9を配線基板2に設けた熱電対差込穴2aに差し込んで接続した。そして、通電しながら配線基板2の温度の経時変化を温度計8で測定した。温度上昇の経時変化を図3にグラフで示す。
【0030】
[発光効率の測定]
上記と同様にして発熱部品1と放熱器4とを接着した後、積分球を用いた全光束システムにより発光効率の経時変化を求めた。結果を図4にグラフで示す。
【0031】
[接着強度の測定]
上記と同様にして接着した発熱部品1と放熱器4との接着強度を測定した。この測定は、JIS A 6909 7.9(2006)「付着強さ試験」に準じ、標準状態(乾燥状態)での引張り試験により行った。そして、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0032】
◎:発熱部品1と放熱器4の剥離が見られなかったもの。
【0033】
△:発熱部品1と放熱器4の微細な剥離が見られるものの、実用上問題がないもの。
【0034】
×:発熱部品1と放熱器4が完全に剥離したもの。
【0035】
[ハンドリング性]
発熱部品1に接着剤を塗布する際の難易を以下の規準で評価した。結果を表1に示す。
【0036】
◎:接着剤の均一な塗布が容易に行えたもの。
【0037】
△:接着剤の均一な塗布が実用上問題なく行えたもの。
【0038】
×:接着剤の均一な塗布が行いにくかったもの。
【0039】
【表1】

図1において、実施例1〜3と比較例1〜3を対比すると、実施例1〜3は比較例1〜3と同等かそれ以上の熱伝導率を示し、また、図3に示すように、温度上昇も比較例1〜3と同等かそれよりも小さくなった。特に、金属シリコン粒子の含有量が25重量%以上の実施例2、3では比較例1〜3よりも熱伝導率の向上と温度低下が顕著となった。また、図4から明らかなように、発光効率も実施例1と比較例1とはほぼ同等であるが、金属シリコン粒子の含有量が25重量%以上の実施例2、3では比較例1〜3よりも発光効率が高くなった。従って、本発明の接着剤は従来の接着剤よりも熱伝導率が高く、発熱部品から放熱器への熱伝導が大きくなり、発光部品での蓄熱が少なくなって発光効率が高まったものである。また、実施例1〜3は接着強度とハンドリング性が実用上問題なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と放熱器とを固定するための接着剤であって、樹脂成分に熱伝導成分として金属シリコン粒子を含有させて成ることを特徴とする発熱部品用接着剤。
【請求項2】
樹脂成分が常温硬化型かつ一液硬化型であることを特徴とする請求項1に記載の発熱部品用接着剤。
【請求項3】
金属シリコン粒子の含有量が全量に対して重量比で15〜30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発熱部品用接着剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−3648(P2011−3648A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144264(P2009−144264)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(500264320)有限会社コム・インスティチュート (3)
【Fターム(参考)】