説明

発電装置

【課題】電機子コイルを設けたステータに対して、永久磁石を設けた回転子を回転させて発電を行なう発電装置において、電機子コイルを取り付けたステータの耐久性を向上させることができる発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置における発電部50は、磁石を回転子60と、ステータ70と、回転子80と、スペーサ90とを有していて、ブレード本体部104が回転することにより、回転子60、80がステータ70に対して回転し、発電を行なう。ステータ70は、電機子コイルと、電機子コイルを埋設するステータ本体部74とを有し、ステータ本体部74は、コンクリート又はモルタル、特に、耐熱コンクリート又は耐熱モルタルにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体等の外部からの力により発電する発電装置に関するものであり、特に、風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体による発電装置としての風力発電機として、電機子コイルを設けたステータに対して、永久磁石を設けた回転子を回転させて、発電するものが知られている。例えば、特許文献1の風力発電機に示すように、コイル固定盤12に固定された電機子コイル11の両側に、磁石固定盤13、14に固定された永久磁石15を配置し、風力により風車6が回転すると、コイル固定盤12に対して磁石固定盤13、14が回転し、これにより発電するものが知られている。特許文献1の風力発電機において、電機子コイル11の外延部分は硬化樹脂により固定化されている。
【特許文献1】特開2000−287426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の構成においてコイル固定盤12が回転して電機子コイル11に電流が流れると、電機子コイル11が発熱し、電機子コイル11を固定する樹脂にひびが入ってしまい、電機子コイルを含むステータの耐久性に問題があった。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、電機子コイルを設けたステータに対して、永久磁石を設けた回転子を回転させて発電を行なう発電装置において、電機子コイルを取り付けたステータの耐久性を向上させることができる発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、発電装置であって、外部からの力により所定の軸芯を中心に回転する回転部で、一対の回転子で、複数の磁石が放射状に配設された板状の第1回転子と、複数の磁石が放射状に配設された板状の第2回転子とを有し、第1回転子と第2回転子とが互いに平行に設けられ、一対の回転子において、一方の回転子における磁石が他方の回転子における磁石と対向し、互いに異なる磁極が向き合うように配設された回転子と、を有する回転部と、該回転部を回転自在に支持する支持部と、該支持部に固定され、第1回転子と第2回転子の間の位置に設けられた板状のステータで、放射状に配設された複数の電機子コイルと、該電機子コイルを埋設し、コンクリート又はモルタルにより形成されたステータ本体部とを有するステータと、を有することを特徴とする。
【0006】
この第1の構成の発電装置においては、外部からの力により、回転部全体が支持部に対して回転する。ステータは支持部に固定されているので、ステータの電機子コイルに対して磁石が回転することになり、発電が行われる。電機子コイルに電流が流れることにより電機子コイルが発熱するが、ステータ本体部はコンクリート又はモルタルにより形成されているので、ステータ本体部にひびが入ることがなく、ステータの耐久性を十分に向上させることができる。
【0007】
また、第2には、上記第1の構成において、上記回転部が、流体の力により回転する羽根部を有し、羽根部が回転することにより回転部全体が支持部に対して回転することを特徴とする。つまり、流体の力(例えば、風力や水力)を外部からの力として回転部が回転する。
【0008】
また、第3には、上記第2の構成において、上記流体が風力であることを特徴とする。
【0009】
また、第4には、上記第2の構成において、上記流体が水力であることを特徴とする。
【0010】
また、第5には、風力により発電を行なう発電装置であって、所定の軸心を中心に回転する回転部で、風力により回転する羽根部と、一対の回転子で、複数の磁石が放射状に配設された板状の第1回転子と、複数の磁石が放射状に配設された板状の第2回転子とを有し、第1回転子と第2回転子とが互いに平行に設けられ、一対の回転子において、一方の回転子における磁石が他方の回転子における磁石と対向し、互いに異なる磁極が向き合うように配設された回転子と、を有する回転部と、該回転部を回転自在に支持する支持部と、該支持部に固定され、第1回転子と第2回転子の間の位置に設けられた板状のステータで、放射状に配設された複数の電機子コイルと、該電機子コイルを埋設し、コンクリート又はモルタルにより形成されたステータ本体部とを有するステータと、を有し、上記羽根部に隣接して第1回転子が設けられ、第1回転子における羽根部側とは反対側にステータが設けられ、ステータにおける第1回転子側とは反対側に第2回転子が設けられ、第2回転子のステータ側とは反対側に支持部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この第5の構成の発電装置においては、羽根部に流体が当たると羽根部が回転し、羽根部の回転に伴い、回転部全体が支持部に対して回転する。ステータは支持部に固定されているので、ステータの電機子コイルに対して磁石が回転することになり、発電が行われる。電機子コイルに電流が流れることにより電機子コイルが発熱するが、ステータ本体部はコンクリート又はモルタルにより形成されているので、ステータ本体部にひびが入ることがなく、ステータの耐久性を十分に向上させることができる。
【0012】
また、第6には、上記第1から第5までのいずれかの構成において、上記ステータ本体部が、耐熱コンクリート又は耐熱モルタルにより形成されていることを特徴とする。よって、電機子コイルが発熱しても、よりステータの耐久性を十分に向上させることができる。
【0013】
また、第7には、上記第1から第6までのいずれかの構成において、上記ステータ本体部が、ポルトランドセメントと、アルミナセメントと、骨材と、繊維状のグラスファイバーとから構成され、ステータ本体部における配合割合が、ポルトランドセメント48〜58重量%、アルミナセメント30〜40重量%、骨材5〜10重量%、繊維状のグラスファイバー5〜10重量%であることを特徴とする。よって、電機子コイルが発熱しても、よりステータの耐久性を十分に向上させることができる。
【0014】
また、第8には、上記第1から第7までのいずれかの構成において、上記回転部が、上記第1回転子と第2回転子の間に、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するための円柱状又は円筒状の金属製のスペーサを有し、ステータには、該スペーサを挿通するための円形の開口部が形成され、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする。よって、ステータと一対の回転子間に隙間を形成することにより、電機子コイルの発熱によりステータに蓄積された熱を放熱することができ、ステータの耐久性を向上させることができる。
【0015】
なお、上記第8の構成において、上記第1回転子の第2回転子側の面と、第2回転子の第1回転子側の面には、スペーサが嵌合するための凹部が形成されているものとするのが好ましい。
【0016】
また、第9には、上記第1から第7までのいずれかの構成において、上記回転部が、上記第1回転子と第2回転子の間に、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するための金属製のスペーサを有し、該スペーサは、軸心方向に吸引して遠心方向に送風する遠心ファンにより構成されており、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする。これにより、積極的に外部から空気をスペーサ内に流入させて、一対の回転子とステータの隙間に送るので、電機子コイルの発熱によりステータに蓄積された熱を放熱することができ、ステータの耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、上記第9の構成を以下のようにしてもよい。すなわち、「上記回転部が、上記第1回転子と第2回転子の間に、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するための金属製のスペーサを有し、該スペーサは、中央に開口部を有した円環板状の第1板状部と、中央に開口部を有した円環板状の第2板状部と、第1板状部と第2板状部間に設けられた複数の羽根部とを有し、回転することにより第1板状部の開口部と第2板状部の開口部から吸い込んだ空気を遠心方向に送風する遠心ファンの機能を有するものであり、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする。」ものとしてもよい。
【0018】
また、第10の構成として、以下のような構成としてもよい。すなわち、「上記第8の構成において、上記スペーサは、内側に回転部の軸心に沿って形成された貫通穴を有する円筒状を呈し、貫通穴の内側からスペーサの外側の周面に貫通する開口部が放射状に複数設けられ、一対の回転子には、該貫通穴と連通する開口部が設けられ、該開口部の少なくとも1つは外部から空気が流入可能に形成され、流入した空気が開口部を介して一対の回転子とステータ間の隙間に送出されることを特徴とする。」ものとしてもよい。これにより、電機子コイルの発熱によりステータに蓄積された熱を放熱することができ、ステータの耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、第11の構成として、以下の構成としてもよい。すなわち、「上記第10の構成において、貫通穴の内周面における放射状に設けられた開口部の位置に軸心方向に吸引して遠心方向に送風する遠心ファンが設けられていることを特徴とする。」ものとしてもよい。これにより、積極的に外部から空気をスペーサ内に流入させて、一対の回転子とステータの隙間に送るので、電機子コイルの発熱によりステータに蓄積された熱を放熱することができ、ステータの耐久性を向上させることができる。
【0020】
また、第12には、以下の構成としてもよい。すなわち、「風力により発電を行なう発電装置であって、所定の軸心を中心に回転する回転部で、風力により回転する羽根部で、羽根状の羽根本体部と、羽根本体部を支持する羽根取付部とを有するブレード部と、一対の回転子で、複数の磁石が放射状に配設された板状で中央に円形の開口部が形成され、第2回転子側の面に凹部が形成された第1回転子と、複数の磁石が放射状に配設された板状で中央に円形の開口部が形成され、第1回転子側の面に凹部が形成された第2回転子とを有し、第1回転子と第2回転子とが互いに平行に設けられ、一対の回転子において、一方の回転子における磁石が他方の回転子における磁石と対向し、互いに異なる磁極が向き合うように配設された回転子と、第1回転子と第2回転子の間に第1回転子の凹部と第2回転子の凹部に嵌合して、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するためスペーサで、内側に回転部の軸心に沿って形成された貫通穴を有する円筒状のスペーサと、該ブレード部と第1回転子とスペーサと第2回転子とを支持する回転支持部と、を有する回転部と、該回転支持部を回転自在に支持する支持部と、該支持部に固定され、第1回転子と第2回転子の間の位置に設けられた板状中央に円形の開口部が形成されたステータで、放射状に配設された複数の電機子コイルと、該電機子コイルを埋設し、耐熱コンクリート又は耐熱モルタルにより形成されたステータ本体部とを有するステータと、を有し、上記羽根取付部に隣接して第1回転子が設けられ、第1回転子における羽根部側とは反対側にステータが設けられ、ステータにおける第1回転子側とは反対側に第2回転子が設けられ、第2回転子のステータ側とは反対側に支持部が設けられ、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする発電装置。」としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に基づく発電装置によれば、羽根部に流体が当たると羽根部が回転し、羽根部の回転に伴い、回転部全体が支持部に対して回転する。ステータは支持部に固定されているので、ステータの電機子コイルに対して磁石が回転することになり発電が行われ、その際、電機子コイルに電流が流れることにより電機子コイルが発熱するが、ステータ本体部はコンクリート又はモルタルにより形成されているので、ステータ本体部にひびが入ることがなく、ステータの耐久性を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明においては、電機子コイルを設けたステータに対して、永久磁石を設けた回転子を回転させて発電を行なう発電装置において、電機子コイルを取り付けたステータの耐久性を向上させることができる発電装置を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0023】
本発明に基づく流体による発電装置としての風力発電装置Aは、図1〜図10に示すように構成され、支柱10と、本体部20と、尾翼部40と、発電部50と、ブレード部100とを有している。なお、風力発電装置Aにおいて、ブレード部100が設けられている側を正面側とし、尾翼部40が設けられている側を背面側とする。
【0024】
ここで、支柱10は、柱状(具体的には、円柱状)を呈し、鉛直方向に立設して設けられ、具体的には、地面や建築物の屋上等に立設して設けられる。
【0025】
また、本体部20は、支柱10に対して水平方向に回転自在に支柱10に支持されていて、その正面側に発電部50を支持するとともに、その背面側に尾翼部40を支持しており、筐体部22と、柱状部24と、棒状部26a、26b、26cと、ステータ支持部28とを有している。
【0026】
ここで、筐体部22は、ケース状を呈し、板状の右側面部22aと、板状の底面部22bと、板状の正面部22cと、板状の上面部(図示せず)と、板状の左側面部(図示せず)とを有し、右側面部22aと底面部22bと左側面部と上面部とで筒状を呈し、正面部22cは、該筒状の一方を被覆する構成となっている。この正面部22cの正面側には、後述する回転支持部52を軸支するための軸部34(図4参照)が設けられている。また、柱状部24は、柱状を呈し、底面部22bの底面に固着されているとともに、支柱10に回転自在に軸支されている。つまり、柱状部24は、軸線方向を中心に回転自在に構成されている。また、棒状部26a、26b、26cは棒状を呈し、棒状部26aは、正面部22cの正面側の右端側に固着され鉛直方向に設けられ、棒状部26bは、正面部22cの正面側の左端側に固着され鉛直方向に設けられている。つまり、棒状部26aと棒状部26bとは互いに平行に設けられている。また、棒状部26cは、棒状部26a、26bの正面側に固着して設けられ、水平方向に設けられている。棒状部26a、26bは、筐体部22の正面部22cに対して上方及び下方に突出して設けられ、上方の端部と下方の端部とに指示棒30を挿通するための穴部が設けられている。また、棒状部26cは、筐体部22の正面部22cに対して左右の方向に突出して設けられ、左右の端部のそれぞれにに支持棒30を挿通するための穴部が設けられている。また、ステータ支持部28は、支持棒30と、取付け具32とを有し、支持棒30は、棒状を呈し、棒状部26a〜26cに設けられた穴部に挿通して固定され、横方向(前後方向)に設けられている。また、取付け具32は、支持棒30の正面側の端部に取り付けられ、略コ字状を呈し、ステータ70の端部に嵌合するための切欠きを有している。この本体部20は、上記「回転部を回転自在に支持する支持部」に当たる。
【0027】
また、尾翼部40は、筐体部22に取り付けられ、板状の尾翼本体42と、棒状の尾翼棒44とを有している。つまり、尾翼本体42は、台形形状を2つ接続した形状の板状を呈しており、尾翼棒44の後端部分に取り付けられている。また、尾翼棒44は、筐体部22の筒状部分に挿通されて、筐体部22に固定されている。
【0028】
また、発電部50は、ブレード部100が回転することにより発電を行なうものであり、主として、回転支持部52と、回転子60と、ステータ70と、回転子80と、スペーサ90とを有している。
【0029】
ここで、回転支持部52は、軸部34に対して回転自在に軸部34に取り付けられており、円環状の板状の基部56と、基部56の背面側に設けられ筒状を呈し軸部34が挿通される筒状部54とを有し、筒状部54は、軸部34の軸受けとして機能する。また、基部56の正面側には、ネジ溝が形成された円柱状の棒状部58が設けられ、回転子60、80と、スペーサ90、106と、ブレード取付部102に挿通するように構成されている。なお、当然軸部34は、軸受けとしての筒状部54から容易には抜けない構造となっている。この回転支持部52は、回転子60、80とスペーサ90と、上記ブレード部100とを支持しており、回転支持部52と、回転子60、80とスペーサ90と、上記ブレード部100とで構成される回転部が、回転支持部52の筒状部54の軸心を中止に一体となって回転するように構成されている。
【0030】
また、回転子(第2回転子)60は、回転支持部52の正面側の面に接して設けられ、全体に円盤状を呈し、中央に円形の開口部62aが設けられ、正面側の面に複数の磁石66が放射状に配設されている。この回転子60の構成について詳述すると、回転子60は、板状部62と、磁石固定部64と、磁石66とを有し、板状部62は、金属製(例えば、鉄製)で円形の板状を呈し、中央に円形の開口部62aを有している。つまり、板状部62は、円環状の板状を呈している。また、磁石固定部64は、全体に円形の板状を呈し、中央に円形の開口部64aを有し、内部に磁石66を固定している。開口部64aの径は開口部62aの径よりも大きく形成されている。この磁石固定部64は、合成樹脂により形成されている。これにより、磁石固定部64の内周部と板状部62の磁石固定部64側の面とで凹部が構成され、この凹部に、スペーサ90が嵌合することになる。また、磁石66は、永久磁石(例えば、ネオジウムにより形成された永久磁石)であり、板状部62における磁石固定部64側の面に放射状に配設されている。図4、図5の例では、計20個の磁石66が設けられている。また、各磁石66は、略扇状(又は台形状)の板状を呈し、磁石66における板状部62側の面を除いて磁石固定部64に被覆されている。また、磁石66においては、正面側の面と背面側の面(板状部62側の面)における一方がN極で他方がS極に形成されていて、回転子60に配設された複数の磁石66においては、隣接する磁石66の磁極は逆になるように配置されている。つまり、ステータ70側の面がN極の磁石66の周方向の隣にはステータ70側の面がS極の磁石66が配置され、さらにその隣には、ステータ70側の面がN極の磁石66が配置されている。以上のように、磁石66における板状部62側の面は、板状部62に接し、磁石66の他の面は、磁石固定部64に接している。また、板状部62における磁石固定部64の内径よりも内側の領域には、棒状部58を挿通するための円形の開口部61bが形成されている。
【0031】
また、ステータ(固定子としてもよい)70は、回転子60の正面側に設けられ、図4、図7、図8に示すように、全体に円盤状を呈し、中央の円形の開口部70aを有しており、内部に複数の電機子コイル72を有している。このステータ70の構成について詳述すると、ステータ70は、電機子コイル72と、ステータ本体部74と、ケーブル76とを有し、ステータ本体部74の内部に複数(図7の例では15個)の電機子コイル72が埋設されている。この電機子コイル72は、銅線によりコイル状に形成され、複数の電機子コイル72がステータ本体部74内に放射状に配設されていて、図9に示すように、三相交流電流が出力されるように複数の電機子コイル72が結線され、ケーブル76内に接続されている。より具体的には、電機子コイル72は、図7に示すように、扇状に形成され、放射方向(ステータ70の外形である円形の中心を通る方向)に形成された放射方向部72aと、周方向(円弧の方向)に形成された周方向部72bとを有している。各電機子コイル72は、巻き線状態を保持するために、図7、図8、図10に示すように、帯状のシート状部72−1により束ねられている。また、この電機子コイル72は、コアレス構造となっている。また、ステータ本体部74は、円環状の板状を呈し、コンクリートにより形成されている。具体的には、ステータ本体部74は、耐熱コンクリートにより形成され、より具体的には、ステータ本体部74を構成する耐熱コンクリートは、ポルトランドセメントと、アルミナセメントと、骨材と、繊維状のグラスファイバーとから構成され、ステータ本体部74全体に対する配合割合は、ポルトランドセメント48〜58重量%、アルミナセメント30〜40重量%、骨材5〜10重量%、繊維状のグラスファイバー5〜10重量%となっている。骨材は、セラミック(例えば、粒状のセラミック)により形成されている。また、化学式で示すと、SiO2が48〜58重量%、Al2O3が30〜40重量%含まれている。なお、コンクリートにおいては、骨材の粒径は5mm以上であるのが一般的であるので、上記骨材の粒径も5mm以上となる。
【0032】
なお、上記骨材の粒径を5mm未満の細骨材としてもよく、その場合には、コンクリートではなくモルタルとなり、耐熱モルタルであるといえる。
【0033】
なお、コンクリート及びモルタルは、ポルトランドセメントと、アルミナセメントと、骨材と、繊維状のグラスファイバーとを有するコンクリート又はモルタルであれば、他の配合割合でもよく、また、繊維状のグラスファイバーを有さない構成であってもよい。また、他の耐熱コンクリート又は耐熱モルタルでもよく、さらには、耐熱コンクリートや耐熱モルタル以外のコンクリートやモルタルでもよい。
【0034】
なお、ステータ支持部28によりステータ70を支持しつつ、回転子60、80の回転に支障がないようにするために、ステータ70の外径S1は、回転子60、80の外径K1よりも大きく形成されている。また、後述するように、ステータ70の開口部70a内にはスペーサ90が設けられ、このスペーサ90の外径は、回転子60、80における磁石固定部64の内径と同一であり、スペーサ90が回転する際にステータ70と接触しないように、ステータ70の開口部70aの径S2は、回転子60、80の磁石固定部64の内径K2及びスペーサ90の外径よりも大きく形成されている。
【0035】
各電機子コイル72は、ステータ本体部74内に埋設されており、各電機子コイル72の周囲には、ステータ本体部74が密着している。
【0036】
また、回転子(第1回転子)80は、ステータ70の正面側に設けられており、その構成は、上記回転子60と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
【0037】
また、スペーサ90は、回転子60と回転子80の間隔を規定するための部材であり、回転子60と回転子80の間で、ステータ70の開口部70aの内側に設けられ、金属製(具体的には、鉄製)の円筒状を呈している。つまり、スペーサ90は、前後方向に所定幅を有する円環状部材であり、中央に円柱状の貫通穴92を有している。また、互いに対称となる位置に棒状部58を挿通するための穴部94が設けられている。このスペーサ90の前後方向の幅Tは、発電部50を組み立てた際に、ステータ70と回転子60、80との間に隙間W(図10参照)ができるように、ステータ70の厚みS3と、回転子60、80の磁石固定部64の厚みK3(この厚みK3が、スペーサ90が回転子60、80に入り込む厚みとなる)の2つ分とを加算した長さよりも長く形成されている。つまり、T>S3+2×K3となる。また、ステータ70と回転子60、80との間の隙間は、回転子60、80が回転する際にステータ70に接しないようにすればよく、また、ステータ70と回転子60、80間の隙間をあまり大きくしてしまうと発電効率が落ちるので、1.0〜3.0mmとするのが好ましい。また、スペーサ90の外径は、回転子60、80の凹部に嵌合するように、磁石固定部64の内径と同一に形成されている。なお、スペーサ90は、円筒状ではなく、内部に貫通穴が設けられていない円柱状でもよい。
【0038】
また、ブレード部(羽根部)100は、回転子80の正面側に設けられ、ブレード取付部(羽根部取付部)102と、羽根状のブレード本体部(羽根部本体部)104とを有している。
【0039】
ここで、ブレード取付部102は、2枚の円形の板状部材により構成されていて、各板状部材には、4つの棒状部58を挿通するための穴部102bが設けられている。
【0040】
また、ブレード本体部104は、ブレード取付部102に取り付けられ、3つのブレード本体部104がブレード取付部102を構成する2枚の板状部材に挟まれた状態で設けられている。なお、ブレード取付部102と回転子80との間には、棒状部58が挿通して管状のスペーサ106が設けられている。つまり、スペーサ106は、正面側はブレード取付部102と接し、背面側は回転子80と接して取り付けられる。
【0041】
また、ブレード取付部102の正面側には、棒状部58に螺着されたナット部110が設けられる。
【0042】
また、ブレード本体部104は、風力発電装置Aの正面側から風を受けると、正面側から見て右方向に回転するように構成されている。なお、左方向に回転するような構成であってもよい。
【0043】
なお、発電部50の組立て状態においては、棒状部58が、回転子60の開口部61b、スペーサ90の穴部94、回転子80の開口部61b、スペーサ106、ブレード取付部102の順に挿通され、棒状部58にはナット部110が螺着されて、回転支持部52と、回転子60と、スペーサ90と、回転子80と、ブレード部100とが一体に固定される。また、ステータ70は、回転子60と回転子80の間に設けられ、ステータ支持部28により支持されて本体部20側に固定されている。なお、図10に示すように、回転子60、80においては、磁石66が設けられている側の面(板状部62が設けられている側とは反対側の面)がステータ70側に向いている。つまり、一対の回転子60、80は、ステータ70を挟んで互いに対向した構成となっている。
【0044】
また、上述したように、ステータ70と回転子60との間と、ステータ70と回転子80との間には、隙間Wが設けられる。
【0045】
また、回転子60と回転子80とが対向した状態では、互いに対向する一対の磁石66においては、互いに異なる磁極が対向するように設けられ、ステータ70側の面がN極の磁石66とステータ70側の面がS極の磁石66とが対向するように配設されている。つまり、回転子60においてステータ70側の面がN極の磁石66には、回転子80においてはステータ70側の面がS極の磁石66が対向し、また、回転子60においてステータ70側の面がS極の磁石66には、回転子80においてはステータ70側の面がN極の磁石66が対向して、互いに異なる磁極の磁石が対向している。
【0046】
また、ステータ70における電機子コイル72は、回転子60と回転子80において互いに対向する磁石66の間の位置となるように設けられている。つまり、電機子コイル72における放射方向部72aの領域が互いに対向する磁石66の間の位置となるように設けられている。
【0047】
また、スペーサ90は、ステータ70の開口部70aに挿通され、回転子60と回転子80の間に設けられ、回転子60、80の凹部に嵌合された状態となり、正面側の端面は回転子80の板状部62と接し、背面側の端面は回転子60の板状部62と接した状態となる。
【0048】
また、ケーブル76には、制御装置(図示せず)が接続され、該制御装置には、バッテリー(図示せず)が接続される。該制御装置には、発電量を監視するための電流計と、発電装置に電磁ブレーキをかけるためのブレーキ用スイッチと、保護用ヒューズと、過充電・過放電防止回路が設けられている。また、該制御回路とバッテリー間には、余分な電力を廃棄するためのレギュレータが接続されている。
【0049】
なお、上記発電部50における回転支持部52と、回転子60、80とスペーサ90と、上記ブレード部100とで上記回転部が構成され、この回転部は、回転部を構成する各部が一体となって所定の軸心、つまり、回転部を構成する各部の回転中心を中心に回転する。回転部を構成する各部の軸心は一致している。
【0050】
なお、図11に示すように、上記回転子60、80において、磁石66の板状部62とは反対側の面にシート状部68を設けるようにしてもよい。つまり、シート状部68は、円環状のシート状を呈し、磁石66の板状部62とは反対側の面に接して設けられている。このシート状部材68は、シート状のグラスファイバーにより形成され、磁石66を回転子60に対してより強固に固定している。つまり、この場合、磁石66における板状部62側の面は、板状部62に接し、板状部62と反対側の面は、シート状部68に接し、他の面は、磁石固定部64に接している。
【0051】
なお、上記回転子60、80の製造工程を簡単に説明すると、図12に示すような製造用部材Bを用いる。製造用部材Bは、板状基部200と、枠状部210と、磁石配置用枠状部220と、円形板状部230とを有している。
【0052】
板状基部200は、正方形状の板状を呈し、角部にボルト240を挿通するための穴部200aが設けられ、その中央領域には、図示しないボルトを挿通するための穴部200bが設けられている。
【0053】
また、枠状部210は、正方形状の板状に円形の開口部212を形成した形状を呈し、角部にボルト240を挿通するための穴部210aが設けられている。この枠状部210の外形は板状基部200と同じ大きさであり、開口部212の径は、回転子60、80の径K1と同じに形成されている。この枠状部210の厚みは、回転子60、80の厚みK4と同じに形成されている。
【0054】
また、磁石配置用枠状部220は、円形の外形を有する板状部材で、放射状に磁石66の配置位置に対応した開口部220aが形成され、また、その中央領域には、図示しないボルトを挿通するための穴部220b(つまり、穴部200bと同じ位置に設けられた穴部)が設けられている。この磁石配置用枠状部220の外形は、枠状部210の開口部212の径と同じに形成されていて、開口部212内に配置可能に形成されている。
【0055】
また、円形板状部230は、円形の板状部材であり、穴部200b、220bと同じ位置に設けられた穴部230aが形成されている。この円形板状部230の径は、磁石固定部64の内径K2と同じに形成されている。
【0056】
回転子60、80を製造するには、上記の製造用部材Bを用いて、板状基部200の穴部200aにボルト240を挿通するとともに、穴部200bにもボルトを挿通した状態で、枠状部210の穴部210aにもボルト240を挿通し、板状基部200の上面に枠状部210を配置するその状態で、金属製(例えば、鉄製)の板状部62を開口部212内に配置し、その後、磁石配置用枠状部220を開口部212内に配置する。つまり、穴部220bに穴部200bに挿通されたボルトを挿通する。そして、磁石配置用枠状部220内の開口部220aに磁石を配置する。磁石66を配置し終わったら、磁石配置用枠状部220を取外し、その後、穴部230aに穴部200bに挿通されたボルトを挿通して、円形板状部230を開口部212内に配置し、その後、液状の樹脂を流し込む。樹脂が硬化することにより、磁石固定部64が形成されて、回転子60、80が製造される。なお、上記シート状部材68を取り付ける場合には、樹脂を流し込む前に、磁石66の上面にシート状部68を配置することになる。
【0057】
次に、ステータ70の製造工程を簡単に説明すると、図13に示すような製造用部材Cを用いる。製造用部材Cは、板状基部300と、枠状部310と、円形板状部320とを有している。
【0058】
板状基部300は、正方形状の板状を呈し、角部にボルト330を挿通するための穴部300aが設けられ、その中央領域には、図示しないボルトを挿通するための穴部300bが設けられている。また、板状基部300の上面には、電機子コイル72の配置位置を示すイラストが表示されている。
【0059】
また、枠状部310は、正方形状の板状に円形の開口部312を形成した形状を呈し、角部にボルト330を挿通するための穴部310aが設けられている。この枠状部310の外形は板状基部300と同じ大きさであり、開口部312の径は、ステータ70の径S1と同じに形成されている。この枠状部310の厚みは、ステータ70の厚みS3と同じに形成されている。
【0060】
また、円形板状部320は、円形の板状部材であり、穴部300bと同じ位置に設けられた穴部320aが形成されている。この円形板状部320の径は、ステータ70の開口部70aの内径S2と同じに形成されている。
【0061】
ステータ70を製造するには、上記の製造用部材Cを用いて、板状基部300の穴部300aにボルト330を挿通するとともに、穴部300bにもボルトを挿通した状態で、枠状部310の穴部310aにもボルト330を挿通し、板状基部300の上面に枠状部310を配置する。また、穴部300bに挿通されたボルトを円形板状部320の穴部320aにも挿通し、板状基部300の上面に円形板状部320を配置する。その状態で、板状基部300に表示されたイラストに従い、電機子コイル72を配置し、複数の電機子コイル72同士を結線する。その後、セメント(具体的には、耐熱セメント)に水を加えて液状としたものを枠状部310の開口部312内に流し込む。セメントが硬化することにより、ステータ70が製造される。
【0062】
上記構成の風力発電装置Aの使用状態について説明する。風力発電装置Aの正面側から風が当たると、外部からの力としての該風の力によりブレード部100が回転し、ブレード部100の回転に伴い、回転子60、80と、スペーサ90と、回転支持部52とが回転する。ステータ70は、本体部20側に固定されているので回転はしない。すると、電機子コイル72に対して磁石66が回転することになり、回転子60と回転子80において互いに対向する磁石66の間を対向する一対の磁石間の磁力線の方向に対して直角に電機子コイルが相対的に通過するので、ケーブル76から三相交流電流が取り出され、制御回路を介してバッテリーに充電される。
【0063】
その際、電機子コイル72に電流が流れることにより電機子コイル72が発熱するが、ステータ本体部74はコンクリート又はモルタル、特に、耐熱コンクリート又は耐熱モルタルにより形成されているので、ステータ本体部74にひびが入ることがなく、ステータ70の耐久性を十分に向上させることができる。
【0064】
また、上記スペーサ90は、鉄製であるので、回転子60と回転子80において互いに対向する一対の磁石66において、磁力線は、ステータ70側がN極である磁石66(これを第1磁石とする)のN極からステータ70を通ってステータ70側がS極である磁石66(これを第2磁石とする)のS極に至り、該磁石66のS極からN極に至り、さらには、スペーサ90を介して第1磁石のS極に至るので、良好に磁力線を形成することができ、発電効率を向上させることができる。
【0065】
なお、スペーサ90の代わりに、図14に示すスペーサ190を用いてもよい。すなわち、このスペーサ190は、軸心方向に空気を吸い込み遠心方向に送風を行なう遠心ファンであり、具体的には、ターボファンにより構成されている。すなわち、スペーサ190は、中央に円形の開口部192aを有する円環状の板状の板状部192と、同じく中央に円形の開口部194aを有する円環状の板状の板状部194と、板状部192と板状部194間に設けられた羽根部196とを有していて、スペーサ190が回転することにより、開口部192a、194aから空気を吸い込み、遠心方向に送風するものである。また、板状部192には、棒状部58を挿通するための穴部192bが設けられ、同様に、板状部194には、棒状部58を挿通するための穴部194bが設けられている。各穴部192bと各穴部194bとは、前後方向に対応する位置に設けられている。また、スペーサ190の前後方向の幅は、上記スペーサ90の幅Tと同様であり、ステータ70と回転子60、80との間に隙間ができるように、ステータ70の厚みと、回転子60、80の磁石固定部64の厚みとを加算した長さよりも長く形成されている。また、スペーサ190の外径は、回転子60、80の凹部に嵌合するように、磁石固定部64の内径と同一に形成されている。このスペーサ190は、金属製(例えば、鉄製)である。
【0066】
上記構成のスペーサ190を用いた場合の回転子60、80とステータ70とスペーサ190の組立て状態は、図15に示すようになり、スペーサ190は、ステータ70の開口部70aに挿通され、回転子60と回転子80の間に設けられ、回転子60、80の凹部に嵌合された状態となる。
【0067】
上記構成のスペーサ190を用いることにより、回転支持部52と、回転子60、80とスペーサ190と、上記ブレード部100とで構成される回転部が回転すると、スペーサ190が回転することにより、スペーサ190の正面側の開口部192aと背面側の開口部194aから空気が吸い込まれ、遠心方向(つまり、周方向)に送風され、回転子60、80とステータ70間の隙間を通って外部に放出される。このように、積極的に外部から空気をスペーサ内に流入させて、一対の回転子とステータの隙間に送ることにより、電機子コイル72が発熱してもステータ70に蓄積された熱を放熱することができ、ステータ本体部74の耐久性をより高めることができる。
【0068】
また、上記のようにステータ70に蓄積された熱を放熱することにより、電機子コイル72を構成する銅線の許容温度内に電機子コイル72の発熱を抑えることができ、また、電機子コイル72の抵抗損が小さくなるので、発電効率を向上させることができる。
【0069】
また、磁石66にネオジウムを用いる場合には、磁力は強いが熱に弱く磁力が低下するという特性があるので、上記のようにステータ70に蓄積された熱を放熱すると、熱による磁石の磁力の低下を防ぐことができる。
【0070】
また、スペーサとして、図16に示す構成のスペーサ290を用いてもよい。このスペーサ290は、スペーサ本体292と、遠心ファン300と、遠心ファン310とを有し、スペーサ本体292は、金属製(具体的には、鉄製)で円筒状を呈し円柱状の貫通穴294を有するとともに、貫通穴294の内周面とスペーサ本体292の外周面とを貫通する複数の開口部296を有している。この開口部296は、貫通穴294の内周面とスペーサ本体292の外周面に向けて放射状に複数設けられていて、前後方向には、回転子60とステータ70間の隙間の位置と、回転子80とステータ70間の隙間の位置にそれぞれ設けられている。スペーサ本体292の軸心は、回転部を構成する他の部材の軸心と一致している。
【0071】
また、遠心ファン300と遠心ファン310とは、軸心方向に空気を吸い込み遠心方向に送風を行なうファンであり、例えば、ターボファンにより構成され、スペーサ190と同様の構成となっている。遠心ファン300は、前後方向には、背面側の開口部296(すなわち、回転子60とステータ70間の隙間の位置に対応して設けられた開口部296)の位置に設けられていて、遠心方向に送風された空気が該開口部296内に送られるように構成されている。また、遠心ファン310は、前後方向には、正面側の開口部296(すなわち、回転子80とステータ70間の隙間の位置に対応して設けられた開口部296)の位置に設けられていて、遠心方向に送風された空気が該開口部296内に送られるように構成されている。
【0072】
上記構成のスペーサ290を用いることにより、回転支持部52と、回転子60、80とスペーサ290と、上記ブレード部100とで構成される回転部が回転すると、スペーサ290が回転することにより遠心ファン300、310が回転し、スペーサ本体292の貫通穴294の正面側と背面側から空気が吸い込まれ、遠心ファン300、310はその軸心方向から空気を吸い込み、遠心方向(つまり、周方向)に送風し、回転子60、80とステータ70間の隙間を通って外部に放出される。このように、積極的に外部から空気をスペーサ内に流入させて、一対の回転子とステータの隙間に送ることにより、電機子コイル72が発熱してもステータ70に蓄積された熱を放熱することができ、ステータ本体部74の耐久性をより高めることができる。
【0073】
また、上記のようにステータ70に蓄積された熱を放熱することにより、電機子コイル72を構成する銅線の許容温度内に電機子コイル72の発熱を抑えることができ、また、電機子コイル72の抵抗損が小さくなるので、発電効率を向上させることができる。
【0074】
また、磁石66にネオジウムを用いる場合には、磁力は強いが熱に弱く磁力が低下するという特性があるので、上記のようにステータ70に蓄積された熱を放熱すると、熱による磁石の磁力の低下を防ぐことができる。
【0075】
また、特にスペーサ290においては、スペーサ本体292を有するので、スペーサ90の場合と同様に、回転子60と回転子80において互いに対向する一対の磁石66において、磁力線は、ステータ70側がN極である磁石66(これを第1磁石とする)のN極からステータ70を通ってステータ70側がS極である磁石66(これを第2磁石とする)のS極に至り、該磁石66のS極からN極に至り、さらには、スペーサ290を介して第1磁石のS極に至るので、良好に磁力線を形成することができ、発電効率を向上させることができる。上記スペーサ190も金属製であるので、良好な磁力線を形成することはできるが、スペーサ290は、スペーサ本体292を有するので、より良好な磁力線を形成することができる。
【0076】
また、スペーサ190、290を使用する場合には、ブレード部100におけるブレード取付部102の中央には開口部を設けて、スペーサ190、290内に空気を流入しやすいようにするのが好ましい。
【0077】
また、回転子60と回転支持部52間に他のスペーサを設けて、回転子60と回転支持部52の間に隙間を形成し、スペーサ190、290の背面側からも空気が流入しやすくなるように構成してもよい。
【0078】
なお、スペーサ290において、遠心ファン300、310を除いた構成としても開口部296が設けられているので、一対の回転子とステータの隙間に空気を流入させて、放熱することができる。
【0079】
なお、上記の例では、遠心ファンとして、ターボファンの例をとったが、他の遠心ファンでもよく、例えば、シロッコファンを用いてもよい。シロッコファンの場合には、軸線方向の開口側を正面側にして設置する。
【0080】
また、上記説明においては、風力発電装置を例にとって説明したが、上記構成のステータの両面に上記構成の回転子を回転可能に取り付け、該回転子を流体の力(外部からの力)によって回転させるものであればよく、例えば、ブレード部100の代わりに水車を取り付け、外部からの力としての水力により回転子を回転させる構成としてもよい。また、ブレード部100の代わりに蒸気タービンを設け、流体としての蒸気の力により回転部を回転させる構成としてもよい。
【0081】
また、上記風力発電装置Aの上記構成において、ブレード部100を設けない構成として、回転部を回転支持部52と、回転子60、80とスペーサ90と、原動機の回転出力軸を接続するための接続部(この接続部の軸心は回転部の軸心と当然一致する)とで構成し、該接続部に原動機の回転出力軸を接続することにより回転部を回転させて、発電を行なう構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例に基づく風力発電装置の構成を示す前方斜視図である。
【図2】本発明の実施例に基づく風力発電装置の構成を示す前方要部斜視図である。
【図3】本発明の実施例に基づく風力発電装置の構成を示す後方要部斜視図である。
【図4】本発明の実施例に基づく風力発電装置の要部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】回転子の構成を示す正面図である。
【図6】図5におけるP−P断面図である。
【図7】ステータの構成を示す正面図である。
【図8】図7におけるQ−Q断面図である。
【図9】複数の電機子コイルにおける結線の例を示す説明図である。
【図10】回転子とステータとスペーサの位置関係を示す断面図である。
【図11】回転子の他の例を示す断面図である。
【図12】回転子を製造するための製造用部材を示す分解斜視図である。
【図13】ステータを製造するための製造用部材を示す分解斜視図である。
【図14】スペーサの他の例を示す斜視図である。
【図15】図14に示すスペーサを用いた場合の回転子とステータとスペーサの位置関係を示す断面図である。
【図16】スペーサの他の例を示すとともに、回転子とステータとスペーサの位置関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
A 風力発電装置
10 支柱
20、91 本体部
40 尾翼部
50 発電部
52 回転支持部
60、80 回転子
62 板状部
64 磁石固定部
66 磁石
70 ステータ
72 電機子コイル
74 ステータ本体部
90、106、190、290 スペーサ
92 貫通穴
100 ブレード部
102 ブレード取付部
104 ブレード本体部
62a、64a、61b、70a、96、192a、194a、296 開口部
97、196 羽根部
300、310 遠心ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置であって、
外部からの力により所定の軸芯を中心に回転する回転部で、
一対の回転子で、複数の磁石が放射状に配設された板状の第1回転子と、複数の磁石が放射状に配設された板状の第2回転子とを有し、第1回転子と第2回転子とが互いに平行に設けられ、一対の回転子において、一方の回転子における磁石が他方の回転子における磁石と対向し、互いに異なる磁極が向き合うように配設された回転子と、
を有する回転部と、
該回転部を回転自在に支持する支持部と、
該支持部に固定され、第1回転子と第2回転子の間の位置に設けられた板状のステータで、放射状に配設された複数の電機子コイルと、該電機子コイルを埋設し、コンクリート又はモルタルにより形成されたステータ本体部とを有するステータと、
を有することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
上記回転部が、流体の力により回転する羽根部を有し、羽根部が回転することにより回転部全体が支持部に対して回転することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
上記流体が風力であることを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
上記流体が水力であることを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
風力により発電を行なう発電装置であって、
所定の軸心を中心に回転する回転部で、
風力により回転する羽根部と、
一対の回転子で、複数の磁石が放射状に配設された板状の第1回転子と、複数の磁石が放射状に配設された板状の第2回転子とを有し、第1回転子と第2回転子とが互いに平行に設けられ、一対の回転子において、一方の回転子における磁石が他方の回転子における磁石と対向し、互いに異なる磁極が向き合うように配設された回転子と、
を有する回転部と、
該回転部を回転自在に支持する支持部と、
該支持部に固定され、第1回転子と第2回転子の間の位置に設けられた板状のステータで、放射状に配設された複数の電機子コイルと、該電機子コイルを埋設し、コンクリート又はモルタルにより形成されたステータ本体部とを有するステータと、
を有し、
上記羽根部に隣接して第1回転子が設けられ、第1回転子における羽根部側とは反対側にステータが設けられ、ステータにおける第1回転子側とは反対側に第2回転子が設けられ、第2回転子のステータ側とは反対側に支持部が設けられていることを特徴とする発電装置。
【請求項6】
上記ステータ本体部が、耐熱コンクリート又は耐熱モルタルにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の発電装置。
【請求項7】
上記ステータ本体部が、ポルトランドセメントと、アルミナセメントと、骨材と、繊維状のグラスファイバーとから構成され、ステータ本体部における配合割合が、ポルトランドセメント48〜58重量%、アルミナセメント30〜40重量%、骨材5〜10重量%、繊維状のグラスファイバー5〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6に記載の発電装置。
【請求項8】
上記回転部が、上記第1回転子と第2回転子の間に、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するための円柱状又は円筒状の金属製のスペーサを有し、ステータには、該スペーサを挿通するための円形の開口部が形成され、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7に記載の発電装置。
【請求項9】
上記回転部が、上記第1回転子と第2回転子の間に、第1回転子と第2回転子との間の間隔を規定するための金属製のスペーサを有し、該スペーサは、軸心方向に吸引して遠心方向に送風する遠心ファンにより構成されており、ステータと第1回転子間には隙間が形成され、ステータと第2回転子間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−219327(P2009−219327A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63372(P2008−63372)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(501181145)
【Fターム(参考)】