白色半導体発光装置
【課題】特殊演色評価数R9との間に相関を有する制御可能なパラメータを提供するとともに、該パラメータを最適化することにより得られるR9値の高い白色半導体発光装置を提供する。
【解決手段】白色半導体発光装置は、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体は少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含んでいる。この白色半導体発光装置は、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【解決手段】白色半導体発光装置は、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体は少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含んでいる。この白色半導体発光装置は、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明に適した白色光を出力する白色発光装置に関し、とりわけ、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備える、白色半導体発光装置に関する。
【0002】
本発明および本明細書においては、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲に含まれる光を、白色光と呼ぶものとする。Duv(=1000duv)の定義はJIS Z 8725:1999「光源の分布温度及び色温度・相関色温度測定方法」による。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム系の発光ダイオード(LED)素子と蛍光体とを組み合わせて白色光を出力するように構成された白色LEDが、最近では照明用の光源として使用され始めている。
【0004】
照明用途において、色温度が3500K以下の白色LEDに対する需要が存在する(特許文献1)。このような低色温度の白色LED、しかも、照明に使用できる高輝度のものが製造可能となった大きな要因は、(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN3:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euなどのような、Eu2+を付活剤とするアルカリ土類ケイ窒化物系の高輝度赤色蛍光体が開発されたことである(特許文献2〜4)。この種の赤色蛍光体は、半値全幅が80〜120nmというブロードな発光スペクトルを有する広帯域蛍光体であり、励起源かつ青色光の発生源である青色LED素子、および、緑色光の発生源である緑色蛍光体と組み合せることにより、平均演色評価数(CRI; color rendering index)が80を超える白色LEDを作製することができる。
【0005】
一方、白色LEDに関して、特殊演色評価数(special color rendering index)R9の向上のための検討は未だ十分に行われていない。R9は、彩度の高い赤色に関する再現性の指標である。特に、温白色LED(warm white LED)と呼ばれる色温度2500〜3500Kの白色LEDにおいて、R9の改善に対する強い要求がある。
【0006】
特定の青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体と紫色LED素子と組み合わせることにより、色温度3800K、R9=83の白色LEDを作製した例が特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103443号公報
【特許文献2】特開2006−8721号公報
【特許文献3】特開2008−7751号公報
【特許文献4】特開2007−231245号公報
【特許文献5】特開2006−49799号公報
【特許文献6】国際公開2007−105631号パンフレット
【特許文献7】国際公開2009−072043号パンフレット
【特許文献8】特開2008−150549号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G. Chen, et al., phys. stat. sol. (a) 205, No.5, 1086-1092(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、特定の蛍光体および半導体発光素子を組み合せることによって、特殊演色評価数R9の高い白色LEDを作製した旨の報告はいくつかある。かかる報告においては、殆どの場合、蛍光体が一般式および発光ピーク波長により特定されている。しかし、よく知られているように、同じ一般式で表される蛍光体においても、付活剤濃度や母体結晶を構成する元素の組成比が異なると、その発光特性(発光スペクトルのピーク波長、半値全幅等)も異なったものとなる。また、本発明者等は、実験を通して、白色LEDのR9値は使用する蛍光体の発光ピーク波長のみにより定まるものではないとの知見を得ている。よって、これまでのところ、高いR9値を有する白色LEDのための、利用可能な設計指針は皆無といってよい。それどころか、報告されている白色LEDの高いR9値を再現することすら容易ではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、特殊演色評価数R9との間に相関を有する制御可能なパラメータを提供するとともに、該パラメータを最適化することにより得られるR9値の高い白色半導体発光装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、広帯域赤色蛍光体を用いた白色半導体発光装置において、次の条件が充たされるとき特殊演色評価数R9が85以上という高い値となることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである;
光束で規格化した当該白色半導体発光装置の発光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【0012】
本発明の要旨は以下に存する。
(1)発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む白色半導体発光装置であって、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
(2)放出する白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にある、(1)に記載の白色半導体発光装置。
(3)発光ピーク波長を360〜430nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
(4)前記半導体発光素子が、発光ピーク波長を405〜415nmの範囲内に有するInGaN系LED素子である、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
(5)前記青色蛍光体が、Eu2+で付活されたアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体を含み、かつ、上記緑色蛍光体が、Eu2+で付活されたサイアロン蛍光体およびEu2+で付活されたアルカリ土類ケイ酸窒化物蛍光体の少なくとも一方を含む、(3)または(4)に記載の白色半導体発光装置。
(6)前記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、(5)に記載の白色半導体発光装置。
(7)上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、(3)〜(6)のいずれか1つに記載の白色半導体発光装置。
(8)発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記半導体発光素子、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
(9)上記波長変換部が、更に、上記半導体発光素子により励起され発光する黄色蛍光体を含んでおり、上記白色光は該黄色蛍光体が発する光を含んでいる、(8)に記載の白色半導体発光装置。
(10)上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、(8)に記載の白色半導体発光装置。
(11)上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、(8)〜(10)のいずれか1つに記載の白色半導体発光装置。
(12)それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1および第2の白色発光ユニットを有し、
該第1および第2の白色発光ユニットは、それぞれ、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であり、
該第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光と該第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光との混合により合成される二次白色光を放出可能な白色半導体発光装置。
(13)上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度と、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度の差が、2000K以上である、(12)に記載の白色半導体発光装置。
(14)上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にあり、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が4500〜7000Kの範囲内にある、(13)に記載の白色半導体発光装置。
(15)それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1〜第Nの白色発光ユニットを有し、
該第1〜第Nの白色発光ユニットがそれぞれ放出する一次白色光の混合により合成される二次白色光を放出する白色半導体発光装置であって、
光束で規格化した上記二次白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
(16)上記第1〜第Nの白色発光ユニットの一部または全部は、光束で規格化したその発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の99%以下または111%以上である、(15)に記載の白色半導体発光装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態に係る、特殊演色評価数R9の高い白色半導体発光装置は、高演色照明用の光源として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置の断面図である。
【図2】色度図(CIE 1931)である。
【図3】白色LEDの斜視図である。
【図4】図3に示す白色LEDにおいてLEDチップがリード電極にどのように接続されているかを示す平面図である。
【図5】図3および図4に示す白色LEDの回路構成を示す図である。
【図6】図3および図4に示す白色LEDの断面図である。
【図7】図7(a)は図3および図4に示す白色LEDを複数搭載した発光モジュールの斜視図であり、図7(b)は該発光モジュールにおける該白色LEDの配置について簡略に示す図である。
【図8】図7に示す発光モジュールの回路構成を示す図である。
【図9】図7に示す発光モジュールに搭載された白色LEDへの電流印加パターンの一例を示す図である。
【図10】白色発光ユニットの構成例を示す断面図である。
【図11】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図12】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図13】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図14】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図15】合成スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図16】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図17】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図18】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図19】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図20】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図21】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図22】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図23】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図24】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図25】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図26】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図27】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図28】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図29】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図30】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図31】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図32】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図33】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図34】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図35】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図36】580nm強度比と640nm強度比の関係を示す。
【図37】580nm強度比と640nm強度比の関係を示す。
【図38】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図39】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図40】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図41】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図42】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図43】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図44】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、具体的な実施形態に即して本発明を説明する。
[1]実施形態1
図1は、実施形態1に係る白色半導体発光装置100の構造を示す断面図である。白色半導体発光装置100は、SMD型パッケージ101、半導体発光素子102および波長変換部103を備えている。半導体発光素子102は、発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内、好ましくは440〜460nmの範囲内に有する、青色発光素子である。波長変換部103は、半導体発光素子102により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含有している(蛍光体の図示は省略)。ここで、緑色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「GREEN」または「YELLOWISH GREEN」に区分される蛍光体である。また、赤色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「RED」、「REDDISH ORANGE」または「ORANGE」に区分される蛍光体である。
【0016】
半導体発光素子102は、SMD型パッケージ101に設けられたカップ101Aの底面上に固定されている。半導体発光素子102は、パッケージ101の底面に形成された配線パターン(図示せず)に接続されており、パッケージ101の外部に置かれた電源から半導体発光素子102に電流を供給することが可能となっている。順方向電流の印加により半導体発光素子102が発する青色光は、カップ101Aの開口部を塞ぐように設置された波長変換部103に入射し、その一部は、波長変換部103が含有する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体により、それぞれ緑色光および赤色光に変換される。波長変換部103の表面からは、青色光、緑色光および赤色光の混合により生じる白色光が外部に向かって放出される。
【0017】
半導体発光素子102はLED素子、スーパールミネッセントダイオード素子、レーザダイオード素子などで有り得るが、好ましくはLED素子である。半導体発光素子102の発光部を構成する半導体の種類は特に限定されるものではなく、窒化ガリウム系、酸化亜鉛系、炭化ケイ素系などの半導体が例示される。半導体発光素子102として特に好ましく用い得るのは、InGaN井戸層を含むMQW活性層をp型およびn型のGaN系クラッド層で挟んだダブルヘテロ構造を備える、InGaN系青色LED素子である。一例では、演色性を高めるために、半導体発光素子102として発光ピーク波長を440〜460nmの範囲内に有する青色発光素子を使用し、それに加えて、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有するLED素子をカップ101Aの内部または外部に配置することができる。
【0018】
白色半導体発光装置100が放出する白色光の相関色温度は、通常、2500〜7000Kである。照明に用いたときの快適さの観点から、この白色光のDuvは、好ましくは−6.0〜+6.0の範囲内、より好ましくは−6.0〜+2.0の範囲内、特に好ましくは−6.0〜0.0の範囲内とされる。
【0019】
波長変換部103には、Eu2+、Ce3+などを付活剤として含む公知の緑色蛍光体を好ましく用いることができる。Eu2+を付活剤とする好適な緑色蛍光体は、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体である。この種の緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euなどがある。サイアロン結晶を母体とするものの具体例には、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:Eu、Sr5Al5Si21O2N35:Euなどがある。ここで、Sr3Si13Al3O2N21:Euは国際公開2007−105631号パンフレット(特許文献6)に、また、Sr5Al5Si21O2N35:Euは国際公開2009−072043号パンフレット(特許文献7)に、それぞれ開示されている。Ce3+を付活剤とする好適な緑色蛍光体としては、ガーネット型酸化物結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCa3(Sc,Mg)2Si3O12:Ceや、アルカリ土類金属スカンジウム酸塩結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCaSc2O4:Ceがある。
【0020】
波長変換部103に用いる広帯域赤色蛍光体とは、半値全幅が80nm以上(通常、120nm以下)のブロードな発光スペクトルを有する赤色蛍光体である。具体例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Euなどがある。SrAlSi4N7:Euは、特開2008−150549号公報(特許文献8)などに開示された赤色蛍光体である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Sr,Ba)3SiO5:Euなどがある。
【0021】
(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euは、CaAlSiN3とSi(3n+2)/4NnOが固溶化した結晶中に発光中心であるEu2+が分布している無機化合物結晶からなる。その母体構造に起因して、この蛍光体の発光スペクトルはCaAlSiN3:Euのそれに比べブロードとなり、ピーク波長は短かく(650nm未満)なる。SrAlSi4N7:EuはCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euと類似した発光特性を有している。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euにおいてn=2の場合に該当する。
【0022】
波長変換部103は、発明の効果が損なわれない範囲で、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体以外の蛍光体を含有し得る。例えば、黄色蛍光体や、狭帯域赤色蛍光体などである。
【0023】
黄色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「YELLOW GREEN」、「GREENISH YELLOW」、「YELLOW」または「YELLOWISH ORANGE」に区分される蛍光体である。代表例としては、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ceなどがある。その他には、Ce3+を付活剤とし、ランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、La3Si6N11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi6N11:Ceなどがある。また、Eu2+を付活剤とするものとして、BOSE(またはBOS)と呼ばれる、アルカリ土類ケイ酸塩系の黄色蛍光体がある。
【0024】
蛍光体の安定性に着目すると、母体結晶がアルカリ土類ケイ窒化物、サイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸窒化物のように窒素を含む蛍光体は、母体結晶中における原子間結合の共有結合性が高く、それゆえに優れた耐久性および耐熱性を示す。緑色蛍光体の場合についていうと、ケイ酸塩系の(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euは室温での発光効率は極めて高いが、高温での発光効率の低下が著しいことから、ハイパワー用途には適していない。発光色を問わず使用が推奨されないのは、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体である。なぜなら、母体結晶から遊離する僅かな硫黄が、半導体発光素子、パッケージ、封止材料などに含まれている金属と反応して着色物質を発生させる場合があるからである。着色物質は可視光を吸収するため、白色発光装置の発光効率を著しく低下させる。
【0025】
波長変換部103において蛍光体を保持するマトリックス材料には、可視波長域において透明な樹脂またはガラスを用いることができる。樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、具体的には、メタアクリル樹脂(ポリメタアクリル酸メチルなど)、スチレン樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂(エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなど)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などが例示される。また、ガラスとしては、リン酸系、ホウリン酸系、バナジウムホウ酸系、アルカリ珪酸系、ビスマス系などの、公知の低融点ガラスが好ましく例示される。
【0026】
耐熱性や耐光性の観点から波長変換部103のマトリックス材料として好ましいのは、ケイ素含有化合物である。ケイ素含有化合物とは、分子中にケイ素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、シリコーン系材料は、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的・熱的応力の緩和特性に優れる等の点から、特に好ましい。シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、硬化機構によって、縮合型、付加型、ゾルゲル型、光硬化型などの種類がある。
【0027】
波長変換部103には、蛍光体以外の微粒子、例えば、光散乱剤を分散させることができる。波長変換部103のマトリックス材料自体が、光学特性、機械特性、耐熱性などの種々の性質を調整する目的でナノサイズの微粒子を樹脂またはガラスに分散させた複合材料であってもよい。
【0028】
波長変換部103は任意の態様で蛍光体を含有することができる。例えば、波長変換部103の内部における蛍光体の分布は一様であってもよいし、不均一であってもよい。また、波長変換部103の内部には、特定の蛍光体のみを含有する部分が存在してもよいし、あるいは、特定の蛍光体のみを含有しない部分が存在してもよい。緑色蛍光体のみを含有する層と赤色蛍光体のみを含有する層を直接または間接に積層した多層構造や、マトリックス材料の異なる複数の層を積層した多層構造なども、適宜採用し得る。波長変換部103は、また、透明な支持フィルムの表面に形成された薄層であり得る。
【0029】
白色半導体発光装置100が半導体発光素子102と波長変換部103との間に有する空間Sは、空洞であってもよいし、その一部または全部が透光性材料、例えば、波長変換部103のマトリックス材料として例示した材料で充填されていてもよい。空間Sを設けることは必須ではなく、一例では、波長変換部103をカップ101Aの内部に半導体発光素子102と接するように配置してもよい。更に、波長変換部103を、半導体発光素子102の表面をコンフォーマルに覆う薄層とすることもできる。
【0030】
[2]実施形態2
実施形態2に係る白色半導体発光装置は、大きくいうと2つの点で実施形態1の白色半導体発光装置と異なる。第1の点は、半導体発光素子として、青色発光素子に代えて、発光ピーク波長を400〜430nmの範囲に有する紫色発光素子または発光ピーク波長が400nm未満(通常、360nm以上)である紫外発光素子を用いることである。第2の点は、波長変換部が青色蛍光体を含有することである。青色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「PURPULISH BLUE」、「BLUE」または「GREENISH BLUE」に区分される蛍光体である。
【0031】
実施形態2に係る白色半導体発光装置で用いる半導体発光素子は、ストークスシフト損失が小さくなるという理由から、好ましくは紫色発光素子である。現在入手できる最も効率の高い紫色半導体発光素子は、InGaN系の紫色LED素子である。InGaN層を活性層とするInGaN系LED素子は、発光ピーク波長を410〜430nmの範囲としたときに発光効率が最大となることが知られている(非特許文献1)。一方で、高効率の青色蛍光体の励起効率は一般に紫外〜近紫外領域において高く、波長405nmよりも長波長側では波長の増加とともに急激に低下する。このような青色蛍光体の励起特性も考慮すると、実施形態2の白色半導体発光装置に最も適した紫色LED素子は、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲、特に405〜415nmの範囲に有する、InGaN系LED素子であるといえる。
【0032】
実施形態2の白色半導体発光装置に用いることのできる青色蛍光体としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする青色蛍光体、例えば、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euなどが挙げられる。中でも好ましいものとして、発光効率が高く、かつ、半値全幅が50nm以上の比較的ブロードな発光スペクトルを有する、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-xBax(PO4)3Cl:Eu(0<x<5)が挙げられる。
【0033】
実施形態2においては、Ce3+を付活剤とする蛍光体(通常、緑色または黄色蛍光体)の使用は好ましくない。なぜなら、かかる蛍光体の多くは励起スペクトルのピークを波長450nm付近に有するため、同時に使用する青色蛍光体の発する光を強く吸収するからである。このような、蛍光体が他の蛍光体を励起する多段励起(カスケード励起ともいう)は、白色半導体発光装置の効率を著しく低下させる。また、実施形態2では、実施形態1に比べて半導体発光素子の発光波長が短いことから、波長変換部のマトリックス材料にはより高い耐光性が要求される。
【0034】
[3]条件(A)
上述の実施形態1および実施形態2のいずれの白色半導体発光装置も、その発光スペクトル(当該白色半導体発光装置が外部に向かって放出する白色光のスペクトル)に関する次の条件(A)を充たすとき、特殊演色評価数R9が概ね85以上の良好な値となる:
(A)光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【0035】
上記条件(A)にいう演色性評価用基準光とは、光源の演色性評価方法を定める日本工業規格JIS Z8726:1990に規定される基準光であり、試料光源たる白色半導体発光装置の相関色温度が5000K未満のときは完全放射体の光、また、該相関色温度が5000K以上のときはCIE昼光である。完全放射体およびCIE昼光の定義はJIS Z8720:2000(対応国際規格 ISO/CIE 10526:1991)に従う。
【0036】
また、上記条件(A)にいう、光束で規格化した光のスペクトルとは、下記数式(1)により決定される光束Φが1(unity)となるように規格化したスペクトル(下記数式(1)中の分光放射束Φe)をいう。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、
Φ:光束[lm]
Km:最大視感度[lm/W]
Vλ:明所視標準比視感度
Φe:分光放射束[W/nm]
λ:波長[nm]、である。
【0039】
以下の説明では、光束で規格化した白色半導体発光装置(試料光源)の発光スペクトルの波長580nmにおける強度(I580-1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I580-2)との比率(I580-1/I580-2)を、「580nm強度比」と呼ぶ場合がある。また、光束で規格化した白色半導体発光装置(試料光源)の発光スペクトルの波長640nmにおける強度(I640-1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度(I640-2)との比率(I640-1/I640-2)を、「640nm強度比」と呼ぶ場合がある。上記条件(A)は、640nm強度比が100〜110%であることと同義である。
【0040】
実施形態1または実施形態2の白色半導体発光装置において、上記条件(A)を充足させるためには、発光ピーク波長を641nm〜648nmの範囲内に有する広帯域赤色蛍光体を波長変換部に用いることが好ましい。発光ピーク波長を640nm以下に有する広帯域赤色蛍光体は、発光ピーク波長を649nm以上に有する広帯域赤色蛍光体と共に使用することが望まれる。ここでいう蛍光体の発光ピーク波長は、白色半導体発光装置において励起源に用いる半導体発光素子の発光ピーク波長λEに近い波長(望ましくはλE±10nmの範囲内の波長)の光で、当該蛍光体を励起したときの値である。
【0041】
更に、実施形態1または実施形態2の白色半導体発光装置の640nm強度比は、その580nm強度比が増加するに従い低下する傾向を有する。従って、580nm強度比を調整することにより、640nm強度比を制御することが可能となる。条件(A)を充足させるためには、580nm強度比が85〜100%の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0042】
580nm強度比を85〜100%とするには、波長変換部に用いる緑色蛍光体と広帯域赤色蛍光体を適切に選択することが重要である。ここでは、説明の便宜のために、蛍光体の発光スペクトルの波長580nmにおける強度を、発光ピーク波長における強度(発光ピーク強度)を1として相対的に表した値を、当該蛍光体の「580nm相対強度」と定義する。緑色蛍光体および赤色蛍光体の場合には、発光ピーク波長が580nmに近い程、また、発光ピークの半値全幅が大きい程、580nm相対強度は高くなる。緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に580nm相対強度の高いものを用いれば、白色半導体発光装置の580nm強度比は高くなる。反対に、緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に580nm相対強度の低いものを用いれば、白色半導体発光装置の580nm強度比は低くなる。黄色蛍光体の使用は、白色半導体発光装置の580nm強度比を高くする。なぜなら、黄色蛍光体は、発光スペクトルに波長580nm近傍の成分を多く含むので、緑色蛍光体や赤色蛍光体と比べて580nm相対強度が高いからである。
【0043】
ひとつの方法として、580nm相対強度が異なる複数の広帯域赤色蛍光体を組合せて用いることにより、白色半導体発光装置の580nm強度比を上記の好ましい範囲内に調節し、ひいては、640nm強度比を100〜110%の範囲内に制御することができる。その他の方法として、580nm相対強度が異なる複数の緑色蛍光体を組み合せて用いることや、あるいは、緑色蛍光体と黄色蛍光体を組み合せて用いることにより、同じ目的を達成することも可能である。
【0044】
なお、本発明者等が試作を通して見出しているところによれば、相関色温度6700Kの白色LEDにおいては、条件(A)が充足されない場合であってもR9が90以上となり得る。従って、少なくとも相関色温度6700Kの白色半導体発光装置において、条件(A)は高いR9を備えるための十分条件であるが、必要十分条件ではないといえる。
【0045】
[4]実施形態3
次に、本発明を、調色可能な照明用の発光モジュールに適用した例について説明する。
【0046】
図3は、照明用の発光モジュール30(後述する図7を参照。)に搭載される白色LED8の斜視図であり、図4は、図3に示す白色LED8においてLEDチップ3A、3Bがリード電極20A、20Bにどのように接続されているかを示す平面図である。また、図5は、図3及び図4に示す白色LED8の回路構成を示す図である。更に、図6は、図3及び図4に示す白色LED8を、リード電極20A、20Bを含む面で切断した場合の断面図である。
【0047】
図3に示すように、白色LED8は2つのカップを有するパッケージ1を含んで構成されている。該パッケージ1は、絶縁基板2と、その表面にパターニングされたリード電極20A、20B(図3には表示せず)と、絶縁基板2の上に接合された環状の枠体10と、第1カップ12Aと第2カップ12Bとを隔てる間仕切り11とを有している。絶縁基板2は、例えば、アルミナ基板、金属ベース基板、ガラスエポキシ基板などである。リード電極20A、20Bはプリント基板の導体パターン形成技術を用いて形成されている。
【0048】
枠体10および間仕切り11は、LEDチップ3A、3Bが放射する光および後述する蛍光部14A、14Bで生じる光を透過させないように、少なくともその表面が、可視波長域における反射率の高い材料を用いて形成されている。かかる材料としては、アルミナなどの白色セラミック、白色樹脂(白色顔料の添加により白色を呈す樹脂)、Ag、Al、Pt、Rh、Niなどの銀白色を呈す金属(合金を含む)が例示される。枠体10と間仕切り11は接着剤を用いて絶縁基板2上に固定されている。枠体10と間仕切り11は一体成形することもできる。
【0049】
第1カップ12A内、第2カップ12B内には、LEDチップ3A、3Bがそれぞれ4個ずつ実装されている。各カップ内の4個のLEDチップは同種であり、図4に示すようにリード電極によって並列に接続されている。LEDチップ3A、3Bは、それぞれリード電極20A、20Bを通して電力供給を受け、発光する。LEDチップ3A、3Bは、青色光を発するInGaN系LEDチップである。図6に示すように、第1カップ12A内、第2カップ12B内には、それぞれ、蛍光部14A、14Bが、LEDチップ3A、3Bを覆って設けられている。蛍光部14A、14Bは、それぞれ、LEDチップ3A、3Bが発する光を吸収して発光する蛍光体を含有している。蛍光部14A、14Bは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、低融点ガラスなど、LEDチップの封止保護用に適した透光性材料中に蛍光体を分散させた組成物により形成される。
【0050】
第1カップ12A内では、LEDチップ3Aと蛍光部14Aとが、相関色温度Tcp1の白色光を生成する白色発光ユニット(「白色発光ユニットA」)を構成している。第2カップ12B内では、LEDチップ3Bと蛍光部14Bとが、相関色温度Tcp2の白色光を生成する別の白色発光ユニット(「白色発光ユニットB」)を構成している。白色発光ユニットAと白色発光ユニットBを同時に点灯させると、各白色発光ユニットで生成される白色光(一次白色光)が混合した白色の合成光(二次白色光)が白色LED8から放出される。この合成光の相関色温度は、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBに供給する電力の比率を調節することにより、Tcp1とTcp2との間で変化させることができる。なお、ここでいう「同時に点灯させる」とは、ヒトの視覚で同時と感じられるように点灯させることを意味する。
【0051】
室内照明の場合、部屋の雰囲気を変えるのに十分な調色を可能とするには、照明光の相関色温度の可変範囲が2000K以上であることが望まれる。このような理由から、Tcp1とTcp2との差は、2000K以上とされる。例えば、Tcp1は2500K〜3500Kの範囲内に、Tcp2は4500K〜7000Kの範囲内に、それぞれ設定する。
【0052】
白色発光ユニットAと白色発光ユニットBの平均演色評価数(CRI;Ra)は、両方を80以上とすることが望ましい。美術館用の照明のように高い演色性が要求される用途では、更に、両方を90以上とすることが望ましい。本発明者等が実験を通して確認したところによれば、通常、両方の白色発光ユニットのRaが80以上であれば、可変範囲内のあらゆる相関色温度において白色LED8のRaは80以上となる。
【0053】
更に、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBは、その両方が前述の条件(A)を充たしている。それ故に、白色LED8は、その放出する合成光が各白色発光ユニットからの一次白色光をいかなる比率で含む場合であっても、条件(A)を充足する。換言すれば、放出する合成光の相関色温度がTcp1〜Tcp2の範囲内のいかなる値であっても、白色LED8の特殊演色評価数R9は良好な値となる。
【0054】
図7は、白色LED8を複数搭載した発光モジュールの構成例を示す図であり、図7(a)は発光モジュールの斜視図、図7(b)は、図7(a)に示す発光モジュール上の5台の白色LEDの配置状態を模式的に示す平面図である。図7(b)に示すように、5台の白色LED8は、円盤状の回路基板31の中心点を中心とする円周上に等角配置されている。発光モジュール30においては、各白色LED8が第1カップ12A内に有するLEDチップ群(並列に接続された4個のLEDチップ3Aからなる)の間が配線層34により直列に結線され、各白色LED8が第2カップ12B内に有するLEDチップ群(並列に接続された4個のLEDチップ3Bからなる)の間が配線層35により直列に結線されている。この回路構成を示したものが図8である。このように同種のLEDチップ群の間を直列に結線することで、白色発光ユニットAに印加する電流と白色発光ユニットBに印加する電流を別個に変化させることができる。
【0055】
図9は発光モジュール30における電流印加パターンの一例を示す図であり、図9(a)は各白色LED8の第1カップ12A内に配置されるLEDチップ3Aに供給される電流と時間との関係を示しており、図9(b)は各白色LED8の第2カップ12B内に配置されるLEDチップ3Bに供給される電流と時間との関係を示している。この例のように、各LEDチップ3に矩形状の電流を印加する場合、LEDチップ3Aに電流を流す時間とLEDチップ3Bに電流を流す時間との比率を変えることによって、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBのそれぞれが単位時間当たりに放出する光の量の比率を変えることができるので、発光モジュール30の出力光の色温度を簡便に制御することができる。
【0056】
発光モジュール30が前述の条件(A)を充たすようにするには、発光モジュール30に搭載する複数の白色LED8の全てが条件(A)を充たすようにすることが望ましい。ただし、複数の白色LED8の一部または全部が条件(A)を充たさないのに、発光モジュール30が条件(A)を充たすことも有り得る。
【0057】
発光モジュール30においては、図3Aに示す2カップ型のパッケージ1を用いて白色発光ユニットAと白色発光ユニットBを一体化した白色LED8を用いる代わりに、通常の1カップ型のパッケージを用いてそれぞれ形成された、相関色温度Tcp1の白色LED(白色発光ユニットA)と相関色温度Tcp2の白色LED(白色発光ユニットB)とを、それぞれ回路基板31上に搭載することもできる。あるいは、パッケージを用いないで、回路基板31の配線層をLEDチップの実装に適したパターンに形成し、LEDチップを回路基板31上に直接実装するチップ・オン・ボード型構成を採用することもできる。
【0058】
図10は、カップを用いない白色発光ユニットの構成例を示す断面図であり、絶縁基板2(金属基板2A、リード電極20C、20Dおよび絶縁層2Dを有する)上に実装されたLEDチップ3を、ドーム状にモールド成形された蛍光部14が覆っている。LEDチップ3と配線層20Cとの間は、ハンダや銀ペーストのような導電性接着剤5により接続されている。LEDチップ3と配線層20Dとの間は、金線6により接続されている。
【0059】
[5]その他の実施形態
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、レンズ、光ファイバ、導光板、反射鏡、フィルタ、その他様々な光学素子を備えたものであり得る。このような光学素子は、半導体発光素子と蛍光体との間に配置し得る他、半導体発光素子または蛍光体が発する光が発光装置の外部に放出されるまでに通過する経路上に配置し得る。また、本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、電源、制御回路などを備えていてもよい。
【0060】
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、白色発光ユニット、白色LEDまたは白色発光モジュールが組み込まれた照明装置を包含する。かかる照明装置は、白色発光ユニット、白色LEDまたは白色発光モジュールが発する光が当該照明装置の外部に放出されるまでに通過する経路上に配置されたフィルタ素子を有し、該フィルタ素子によって当該照明装置の発光スペクトルの形状を制御することによって、条件(A)を充足するものであり得る。
【0061】
[6]実験結果
以下には、本発明者等が行った、実験(シミュレーションを含む)の結果を記載する。前述の条件(A)に関連する知見は、この実験を通して得られたものである。表1は、実験に用いた蛍光体のリストである。
【0062】
【表1】
【0063】
表1には、各蛍光体について、本明細書で用いる名称、発光色に基づく種別、一般式を示すとともに、発光特性として、発光スペクトルのピーク波長(発光ピーク波長)および半値全幅と、580nm相対強度を示している。発光特性として記載された値はいずれも、発光ピーク波長の欄に括弧書きで記された波長で励起したときの値である。580nm相対強度とは、前述の通り、発光ピーク波長における発光スペクトルの強度(発光ピーク強度)を1として、波長580nmにおける発光スペクトルの強度を相対的に表した値である。
【0064】
蛍光体の発光スペクトルの測定は、当該分野における常法に従って行った。ただし、SBSの励起波長402nmにおける発光スペクトル特性は例外で、赤色LEDの発光スペクトル測定結果に基づいている。この赤色LEDは、発光ピーク波長402nmのInGaN系LEDチップ1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状のSBSを添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。発光ダイオードチップのサイズは350μm角、発光スペクトル測定時の該赤色LEDへの印加電流は20mAである。
【0065】
表1に示す通り、使用した赤色蛍光体はいずれも発光スペクトルの半値全幅が80nm以上の広帯域蛍光体である。このうち、SCASN−1およびSCASN−2は、同じ一般式SrxCa1-xAlSiN3:Euで表されるが、発光特性が異なっている。CASON−1およびCASON−2も、同じ一般式Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euで表されるが、発光特性が異なっている。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euの母体はCaAlSiN3とSi2N2Oとの固溶体であり、(CaAlSiN3)1-x(Si2N2O)xと表されることもある。
【0066】
CASN−1およびCASN−2も、また、同じ一般式CaAlSiN3:Euで表されるが、異なる発光特性を有している。同一の一般式で表される蛍光体が、付活剤濃度の違い、不純物濃度の違い、母体組成の違い、母体組成の一般式からのズレなどの原因によって異なる発光特性を示すという事実、また、この事実を利用して、市場の要求に応じた種々の発光特性を有する蛍光体が生産されていることは、当該技術分野ではよく知られている。
【0067】
表1に掲げた蛍光体を用いて作製した白色LEDのリストを、表2および表3に示す。表2に示すV−1からV−15までの15種類の白色LEDは、発光ピーク波長を約405nmに有する紫色LED素子を蛍光体の励起源に用いている。一方、表3に示すB−1からB−12までの12種類の白色LEDは、発光ピーク波長を約450nmに有する青色LED素子を、青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いている。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
全ての白色LEDは、350μm角のInGaN系LED素子(チップ)1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状の蛍光体を添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。表2および表3には、各サンプルに用いた蛍光体の名称と、LED素子を封止するシリコーン樹脂組成物における各蛍光体の配合比(濃度)を示している。例えば、V−1は、青色蛍光体BAM、緑色蛍光体BSSおよび赤色蛍光体CASON−1を、それぞれ9.0wt%、1.2wt%および4.3wt%の濃度で含むシリコーン樹脂組成物により、紫色LED素子が封止された構造を有している。
【0071】
表4および表5に、V−1〜V−15、B−1〜B−12のそれぞれの発光特性を示す。相関色温度、Duv、Ra、R9、赤色スペクトル領域(590〜780nm)における極大波長、580nm強度比および640nm強度比の各値は、いずれも、1個の白色LEDに電流20mAを印加して発光させたときの発光スペクトルに基づいている。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
最初に、温白色光を放出する白色LEDに関して得た結果について述べる。
赤色蛍光体としてCASON−1を用いたV−1と、CASON−2を用いたV−2に着目すると、表4に示すように、平均演色評価数Raが前者では97、後者では96と、いずれも極めて高い。一方、特殊演色評価数R9については、V−1が88と良好な値を示したのに対し、V−2のそれは76というやや低い値である。
【0075】
図11は、V−1とV−2の発光スペクトルを、赤色スペクトル領域(波長590〜780nm)に存する極大波長(V−1では631nm、V−2では624nm)におけるスペクトル強度(赤色スペクトル領域におけるピーク強度)で規格化し、ひとつのグラフ上に示したものである。440〜500nmおよび540〜620nmでV−1のスペクトル強度をV−2のスペクトル強度が上回っており、630nmよりも長波長の領域では両者のスペクトルは略重なっている。
【0076】
図12は、V−1の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−1と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、ひとつのグラフ上に示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が同一となるように規格化されている。また、図13は、V−2の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−2と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、ひとつのグラフ上に示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0077】
図12および図13によれば、V−1でもV−2でも、520〜580nmという視感度が最も高い波長領域では、発光スペクトル曲線は基準光のスペクトル曲線に概ね沿っている。590nmよりも長波長側では、V−1の発光スペクトル強度は波長640nmまで基準光の発光スペクトル強度を上回っている。V−1の640nm強度比は、表4に示すように100%である。それに対し、V−2では、630nmと640nmの間で発光スペクトル曲線が基準光のスペクトル曲線と交わっており、640nm相対強度は97%である。つまり、640nmでは発光スペクトルの強度が基準光のスペクトル強度を下回っている。
【0078】
表6に示すのは、V−2とV−7とがそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−1の発光特性をシミュレートした結果である。ここで、V−7は、今回使用した赤色蛍光体の中では発光ピーク波長が最も長波長であるCASN−1を、赤色蛍光体として用いた白色LEDである。図14に、V−7の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(V−7と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとともに示す。図14において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0079】
【表6】
【0080】
白色発光装置S−1の発光特性シミュレーションでは、それぞれ光束で規格化したV−2およびV−7の発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9、580nm強度比および640nm強度比を算出している。表6において、例えば、「合成スペクトル中の白色LED(a)の発光スペクトルの比率」が0.4、「合成スペクトル中の白色LED(b)の発光スペクトルの比率」が0.6である列には、光束で規格化したV−2の発光スペクトルと光束で規格化したV−7の発光スペクトルとを4:6の比率で合算した合成スペクトルが出力光のスペクトルである、白色発光装置S−1の発光特性が示されている。
【0081】
表6のシミュレーション結果によれば、白色発光装置S−1のRaおよびR9が最大となるのは、その出力光のスペクトルが、V−2の規格化された発光スペクトルとV−7の規格化された発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトルのときである(Ra=98、R9=95)。このときの640nm強度比は104%である。図15には、この合成スペクトルを、演色性評価用基準光のスペクトルとともに示す。図15において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0082】
図16および図17は、実際にCASON−2およびCASN−1を赤色蛍光体に用いて作製した白色LEDであるV−3およびV−4の発光スペクトルを、それぞれ示している。いずれの図にも、演色性評価用基準光のスペクトルを併せて表示している。それぞれの図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0083】
表6のシミュレーション結果は、また、同じ励起源(紫色LED素子)と同じ蛍光体(BAM、BSS、CASON−2およびCASN−1)を用いて構成される略同一色温度の白色LEDが、1から95までの様々なR9値を有し得るという、興味深い事実を示している。つまり、同じ種類の励起源および蛍光体を用いたからといって、同等の演色性を備える白色LEDが必ず得られるとは限らないのである。
【0084】
図16に発光スペクトルを示すV−3は、Ra値もR9値も極めて良好である(Ra=97、R9=98)。図17に発光スペクトルを示すV−4も同様である(Ra=96、R9=93)。V−3の640nm相対強度は104%、V−4の640nm相対強度は108%である。
【0085】
図18〜23は、それぞれ、V−5、V−6、V−8〜V−11の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(白色LEDと同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0086】
更に、図24〜32は、それぞれ、B−1〜B−9の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(白色LEDと同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0087】
図33は、20種類の温白色LED、すなわち、紫色LED素子を用いたV−1〜V−11と、青色LED素子を用いたB−1〜B−9の、それぞれの640nm強度比と特殊演色評価数R9を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。グラフは横軸が640nm強度比、縦軸がR9である。プロットの結果は、使用するLED素子および蛍光体の種類に依存しない、特定の傾向が存在することを示している。すなわち、640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるときR9は最も高い値となり、640nm強度比が100%より低くなっても、また、100%より高くなっても、R9は低下する。
【0088】
図34は、前述の白色発光装置S−1の発光特性シミュレーションにおいて、その出力光スペクトルを合成する際のV−1の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルとの合算比率を種々変化させたときの、640nm強度比と特殊演色評価数R9との関係をプロットしたグラフである。図34は、図33と同様の傾向を示している。
【0089】
かかる傾向の存在を更に確認するために行った、4つのシミュレーションの結果を次に示す。
【0090】
表7に示すのは、V−6およびV−7がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−2の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0091】
【表7】
【0092】
表8に示すのは、V−5およびV−7がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−3の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0093】
【表8】
【0094】
表9に示すのは、V−5およびV−1がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−4の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0095】
【表9】
【0096】
表10に示すのは、B−5およびB−6がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−5の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0097】
【表10】
【0098】
図35は、シミュレーションにより得た、上述の4つの白色発光装置S−2〜S−5のそれぞれの640nm強度比と特殊演色評価数R9との関係を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。図35においても、図33および図34と同様の傾向が見られる。
それは、640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるときR9は最も高い値となり、640nm強度比が100%より低くなっても、また、110%より高くなっても、R9が低下する傾向である。
【0099】
図36には、20種類の温白色LED、すなわち、紫色LED素子を用いたV−1〜V−11と、青色LED素子を用いたB−1〜B−9の、それぞれの580nm強度比と640nm強度比とを、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。グラフは横軸が580nm強度比、縦軸が640nm強度比である。プロットの結果は、580nm強度比が増加するに従い、640nm強度比が減少する傾向を示している。
【0100】
図37は、シミュレーションにより得た、上述の5つの仮想的な白色発光装置S−1〜S−5のそれぞれの580nm強度比と640nm強度比との関係を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。図37においても、図36と同様に、580nm強度比が増加するに従い、640nm強度比が減少する傾向が見られる。
【0101】
次に、冷白色光を放出する白色LEDに関して得た結果を記す。
【0102】
図38〜41は、それぞれ、相関色温度が5500K前後であるV−12〜V−15の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(CIE昼光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。640nm強度比が111%であるV−12の特殊演色評価数R9は81であり、悪くない値である。640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるV−13〜V−15のR9は、より高い値であり、いずれも90以上となっている。
【0103】
図42〜44は、それぞれ、相関色温度が6400〜6500KであるB−10〜B−12の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(CIE昼光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。640nm強度比が105%であるB−10の特殊演色評価数R9は95と極めて良好である。それに対して、640nm強度比がそれぞれ79%、53%であるB−11とB−12のR9は、それぞれ45、−34と劣悪である。
【0104】
最後に、冷白色光を放出する白色LEDと温白色光を放出する白色LEDとを組み合わせることにより得られる、色温度可変の白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果について記す。
【0105】
表11に示すのは、B−10が発する冷白色光とB−2が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−6の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−1の場合と同じであり、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDの発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9、580nm強度比および640nm強度比を算出している。
【0106】
【表11】
【0107】
表11に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−6の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−10の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとの合算比率に応じて、B−10の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が可変範囲内のいかなる値であっても、白色発光装置S−6の640nm強度比は100%と110%の間にあり、その特殊演色評価数R9は89〜98という良好な値となっている。
【0108】
表12に示すのは、B−11が発する冷白色光とB−2が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−7の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−6の場合と同じである。
【0109】
【表12】
【0110】
表12に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−7の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−11の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとの合算比率に応じて、B−11の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が3036〜3820Kのとき、白色発光装置S−7の640nm強度比は100%と102%の間にあり、その特殊演色評価数R9は89〜91という良好な値となっている。
【0111】
表13に示すのは、B−10が発する冷白色光とB−4が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−8の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−6の場合と同じである。
【0112】
【表13】
【0113】
表13に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−8の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−10の発光スペクトルとB−4の発光スペクトルの合算比率に応じて、B−10の相関色温度とB−4の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が5042〜6488Kのとき、白色発光装置S−8の640nm強度比は100%と105%の間にあり、その特殊演色評価数R9は93〜97という高い値となっている。
【符号の説明】
【0114】
1・・・・パッケージ
2・・・・絶縁基板
3A、3B・・・・LEDチップ
8・・・・白色LED
10・・・・枠体
11・・・・間仕切り
12A・・・・第1カップ
12B・・・・第2カップ
14A、14B・・・・蛍光部
20A、20B・・・・リード電極
30・・・・発光モジュール
31・・・・回路基板
34、35・・・・配線層
100・・・・白色半導体発光装置
101・・・・SMD型パッケージ
102・・・・半導体発光素子
103・・・・波長変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明に適した白色光を出力する白色発光装置に関し、とりわけ、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備える、白色半導体発光装置に関する。
【0002】
本発明および本明細書においては、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲に含まれる光を、白色光と呼ぶものとする。Duv(=1000duv)の定義はJIS Z 8725:1999「光源の分布温度及び色温度・相関色温度測定方法」による。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム系の発光ダイオード(LED)素子と蛍光体とを組み合わせて白色光を出力するように構成された白色LEDが、最近では照明用の光源として使用され始めている。
【0004】
照明用途において、色温度が3500K以下の白色LEDに対する需要が存在する(特許文献1)。このような低色温度の白色LED、しかも、照明に使用できる高輝度のものが製造可能となった大きな要因は、(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN3:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euなどのような、Eu2+を付活剤とするアルカリ土類ケイ窒化物系の高輝度赤色蛍光体が開発されたことである(特許文献2〜4)。この種の赤色蛍光体は、半値全幅が80〜120nmというブロードな発光スペクトルを有する広帯域蛍光体であり、励起源かつ青色光の発生源である青色LED素子、および、緑色光の発生源である緑色蛍光体と組み合せることにより、平均演色評価数(CRI; color rendering index)が80を超える白色LEDを作製することができる。
【0005】
一方、白色LEDに関して、特殊演色評価数(special color rendering index)R9の向上のための検討は未だ十分に行われていない。R9は、彩度の高い赤色に関する再現性の指標である。特に、温白色LED(warm white LED)と呼ばれる色温度2500〜3500Kの白色LEDにおいて、R9の改善に対する強い要求がある。
【0006】
特定の青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体と紫色LED素子と組み合わせることにより、色温度3800K、R9=83の白色LEDを作製した例が特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103443号公報
【特許文献2】特開2006−8721号公報
【特許文献3】特開2008−7751号公報
【特許文献4】特開2007−231245号公報
【特許文献5】特開2006−49799号公報
【特許文献6】国際公開2007−105631号パンフレット
【特許文献7】国際公開2009−072043号パンフレット
【特許文献8】特開2008−150549号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G. Chen, et al., phys. stat. sol. (a) 205, No.5, 1086-1092(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、特定の蛍光体および半導体発光素子を組み合せることによって、特殊演色評価数R9の高い白色LEDを作製した旨の報告はいくつかある。かかる報告においては、殆どの場合、蛍光体が一般式および発光ピーク波長により特定されている。しかし、よく知られているように、同じ一般式で表される蛍光体においても、付活剤濃度や母体結晶を構成する元素の組成比が異なると、その発光特性(発光スペクトルのピーク波長、半値全幅等)も異なったものとなる。また、本発明者等は、実験を通して、白色LEDのR9値は使用する蛍光体の発光ピーク波長のみにより定まるものではないとの知見を得ている。よって、これまでのところ、高いR9値を有する白色LEDのための、利用可能な設計指針は皆無といってよい。それどころか、報告されている白色LEDの高いR9値を再現することすら容易ではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、特殊演色評価数R9との間に相関を有する制御可能なパラメータを提供するとともに、該パラメータを最適化することにより得られるR9値の高い白色半導体発光装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、広帯域赤色蛍光体を用いた白色半導体発光装置において、次の条件が充たされるとき特殊演色評価数R9が85以上という高い値となることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである;
光束で規格化した当該白色半導体発光装置の発光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【0012】
本発明の要旨は以下に存する。
(1)発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む白色半導体発光装置であって、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
(2)放出する白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にある、(1)に記載の白色半導体発光装置。
(3)発光ピーク波長を360〜430nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
(4)前記半導体発光素子が、発光ピーク波長を405〜415nmの範囲内に有するInGaN系LED素子である、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
(5)前記青色蛍光体が、Eu2+で付活されたアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体を含み、かつ、上記緑色蛍光体が、Eu2+で付活されたサイアロン蛍光体およびEu2+で付活されたアルカリ土類ケイ酸窒化物蛍光体の少なくとも一方を含む、(3)または(4)に記載の白色半導体発光装置。
(6)前記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、(5)に記載の白色半導体発光装置。
(7)上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、(3)〜(6)のいずれか1つに記載の白色半導体発光装置。
(8)発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記半導体発光素子、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
(9)上記波長変換部が、更に、上記半導体発光素子により励起され発光する黄色蛍光体を含んでおり、上記白色光は該黄色蛍光体が発する光を含んでいる、(8)に記載の白色半導体発光装置。
(10)上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、(8)に記載の白色半導体発光装置。
(11)上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、(8)〜(10)のいずれか1つに記載の白色半導体発光装置。
(12)それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1および第2の白色発光ユニットを有し、
該第1および第2の白色発光ユニットは、それぞれ、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であり、
該第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光と該第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光との混合により合成される二次白色光を放出可能な白色半導体発光装置。
(13)上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度と、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度の差が、2000K以上である、(12)に記載の白色半導体発光装置。
(14)上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にあり、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が4500〜7000Kの範囲内にある、(13)に記載の白色半導体発光装置。
(15)それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1〜第Nの白色発光ユニットを有し、
該第1〜第Nの白色発光ユニットがそれぞれ放出する一次白色光の混合により合成される二次白色光を放出する白色半導体発光装置であって、
光束で規格化した上記二次白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
(16)上記第1〜第Nの白色発光ユニットの一部または全部は、光束で規格化したその発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の99%以下または111%以上である、(15)に記載の白色半導体発光装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態に係る、特殊演色評価数R9の高い白色半導体発光装置は、高演色照明用の光源として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置の断面図である。
【図2】色度図(CIE 1931)である。
【図3】白色LEDの斜視図である。
【図4】図3に示す白色LEDにおいてLEDチップがリード電極にどのように接続されているかを示す平面図である。
【図5】図3および図4に示す白色LEDの回路構成を示す図である。
【図6】図3および図4に示す白色LEDの断面図である。
【図7】図7(a)は図3および図4に示す白色LEDを複数搭載した発光モジュールの斜視図であり、図7(b)は該発光モジュールにおける該白色LEDの配置について簡略に示す図である。
【図8】図7に示す発光モジュールの回路構成を示す図である。
【図9】図7に示す発光モジュールに搭載された白色LEDへの電流印加パターンの一例を示す図である。
【図10】白色発光ユニットの構成例を示す断面図である。
【図11】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図12】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図13】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図14】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図15】合成スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図16】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図17】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図18】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図19】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図20】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図21】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図22】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図23】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図24】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図25】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図26】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図27】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図28】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図29】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図30】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図31】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図32】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図33】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図34】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図35】640nm強度比とR9の関係を示す。
【図36】580nm強度比と640nm強度比の関係を示す。
【図37】580nm強度比と640nm強度比の関係を示す。
【図38】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図39】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図40】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図41】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図42】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図43】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図44】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、具体的な実施形態に即して本発明を説明する。
[1]実施形態1
図1は、実施形態1に係る白色半導体発光装置100の構造を示す断面図である。白色半導体発光装置100は、SMD型パッケージ101、半導体発光素子102および波長変換部103を備えている。半導体発光素子102は、発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内、好ましくは440〜460nmの範囲内に有する、青色発光素子である。波長変換部103は、半導体発光素子102により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含有している(蛍光体の図示は省略)。ここで、緑色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「GREEN」または「YELLOWISH GREEN」に区分される蛍光体である。また、赤色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「RED」、「REDDISH ORANGE」または「ORANGE」に区分される蛍光体である。
【0016】
半導体発光素子102は、SMD型パッケージ101に設けられたカップ101Aの底面上に固定されている。半導体発光素子102は、パッケージ101の底面に形成された配線パターン(図示せず)に接続されており、パッケージ101の外部に置かれた電源から半導体発光素子102に電流を供給することが可能となっている。順方向電流の印加により半導体発光素子102が発する青色光は、カップ101Aの開口部を塞ぐように設置された波長変換部103に入射し、その一部は、波長変換部103が含有する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体により、それぞれ緑色光および赤色光に変換される。波長変換部103の表面からは、青色光、緑色光および赤色光の混合により生じる白色光が外部に向かって放出される。
【0017】
半導体発光素子102はLED素子、スーパールミネッセントダイオード素子、レーザダイオード素子などで有り得るが、好ましくはLED素子である。半導体発光素子102の発光部を構成する半導体の種類は特に限定されるものではなく、窒化ガリウム系、酸化亜鉛系、炭化ケイ素系などの半導体が例示される。半導体発光素子102として特に好ましく用い得るのは、InGaN井戸層を含むMQW活性層をp型およびn型のGaN系クラッド層で挟んだダブルヘテロ構造を備える、InGaN系青色LED素子である。一例では、演色性を高めるために、半導体発光素子102として発光ピーク波長を440〜460nmの範囲内に有する青色発光素子を使用し、それに加えて、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有するLED素子をカップ101Aの内部または外部に配置することができる。
【0018】
白色半導体発光装置100が放出する白色光の相関色温度は、通常、2500〜7000Kである。照明に用いたときの快適さの観点から、この白色光のDuvは、好ましくは−6.0〜+6.0の範囲内、より好ましくは−6.0〜+2.0の範囲内、特に好ましくは−6.0〜0.0の範囲内とされる。
【0019】
波長変換部103には、Eu2+、Ce3+などを付活剤として含む公知の緑色蛍光体を好ましく用いることができる。Eu2+を付活剤とする好適な緑色蛍光体は、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体である。この種の緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euなどがある。サイアロン結晶を母体とするものの具体例には、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:Eu、Sr5Al5Si21O2N35:Euなどがある。ここで、Sr3Si13Al3O2N21:Euは国際公開2007−105631号パンフレット(特許文献6)に、また、Sr5Al5Si21O2N35:Euは国際公開2009−072043号パンフレット(特許文献7)に、それぞれ開示されている。Ce3+を付活剤とする好適な緑色蛍光体としては、ガーネット型酸化物結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCa3(Sc,Mg)2Si3O12:Ceや、アルカリ土類金属スカンジウム酸塩結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCaSc2O4:Ceがある。
【0020】
波長変換部103に用いる広帯域赤色蛍光体とは、半値全幅が80nm以上(通常、120nm以下)のブロードな発光スペクトルを有する赤色蛍光体である。具体例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Euなどがある。SrAlSi4N7:Euは、特開2008−150549号公報(特許文献8)などに開示された赤色蛍光体である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Sr,Ba)3SiO5:Euなどがある。
【0021】
(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euは、CaAlSiN3とSi(3n+2)/4NnOが固溶化した結晶中に発光中心であるEu2+が分布している無機化合物結晶からなる。その母体構造に起因して、この蛍光体の発光スペクトルはCaAlSiN3:Euのそれに比べブロードとなり、ピーク波長は短かく(650nm未満)なる。SrAlSi4N7:EuはCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euと類似した発光特性を有している。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euにおいてn=2の場合に該当する。
【0022】
波長変換部103は、発明の効果が損なわれない範囲で、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体以外の蛍光体を含有し得る。例えば、黄色蛍光体や、狭帯域赤色蛍光体などである。
【0023】
黄色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「YELLOW GREEN」、「GREENISH YELLOW」、「YELLOW」または「YELLOWISH ORANGE」に区分される蛍光体である。代表例としては、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ceなどがある。その他には、Ce3+を付活剤とし、ランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、La3Si6N11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi6N11:Ceなどがある。また、Eu2+を付活剤とするものとして、BOSE(またはBOS)と呼ばれる、アルカリ土類ケイ酸塩系の黄色蛍光体がある。
【0024】
蛍光体の安定性に着目すると、母体結晶がアルカリ土類ケイ窒化物、サイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸窒化物のように窒素を含む蛍光体は、母体結晶中における原子間結合の共有結合性が高く、それゆえに優れた耐久性および耐熱性を示す。緑色蛍光体の場合についていうと、ケイ酸塩系の(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euは室温での発光効率は極めて高いが、高温での発光効率の低下が著しいことから、ハイパワー用途には適していない。発光色を問わず使用が推奨されないのは、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体である。なぜなら、母体結晶から遊離する僅かな硫黄が、半導体発光素子、パッケージ、封止材料などに含まれている金属と反応して着色物質を発生させる場合があるからである。着色物質は可視光を吸収するため、白色発光装置の発光効率を著しく低下させる。
【0025】
波長変換部103において蛍光体を保持するマトリックス材料には、可視波長域において透明な樹脂またはガラスを用いることができる。樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、具体的には、メタアクリル樹脂(ポリメタアクリル酸メチルなど)、スチレン樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂(エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなど)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などが例示される。また、ガラスとしては、リン酸系、ホウリン酸系、バナジウムホウ酸系、アルカリ珪酸系、ビスマス系などの、公知の低融点ガラスが好ましく例示される。
【0026】
耐熱性や耐光性の観点から波長変換部103のマトリックス材料として好ましいのは、ケイ素含有化合物である。ケイ素含有化合物とは、分子中にケイ素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、シリコーン系材料は、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的・熱的応力の緩和特性に優れる等の点から、特に好ましい。シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、硬化機構によって、縮合型、付加型、ゾルゲル型、光硬化型などの種類がある。
【0027】
波長変換部103には、蛍光体以外の微粒子、例えば、光散乱剤を分散させることができる。波長変換部103のマトリックス材料自体が、光学特性、機械特性、耐熱性などの種々の性質を調整する目的でナノサイズの微粒子を樹脂またはガラスに分散させた複合材料であってもよい。
【0028】
波長変換部103は任意の態様で蛍光体を含有することができる。例えば、波長変換部103の内部における蛍光体の分布は一様であってもよいし、不均一であってもよい。また、波長変換部103の内部には、特定の蛍光体のみを含有する部分が存在してもよいし、あるいは、特定の蛍光体のみを含有しない部分が存在してもよい。緑色蛍光体のみを含有する層と赤色蛍光体のみを含有する層を直接または間接に積層した多層構造や、マトリックス材料の異なる複数の層を積層した多層構造なども、適宜採用し得る。波長変換部103は、また、透明な支持フィルムの表面に形成された薄層であり得る。
【0029】
白色半導体発光装置100が半導体発光素子102と波長変換部103との間に有する空間Sは、空洞であってもよいし、その一部または全部が透光性材料、例えば、波長変換部103のマトリックス材料として例示した材料で充填されていてもよい。空間Sを設けることは必須ではなく、一例では、波長変換部103をカップ101Aの内部に半導体発光素子102と接するように配置してもよい。更に、波長変換部103を、半導体発光素子102の表面をコンフォーマルに覆う薄層とすることもできる。
【0030】
[2]実施形態2
実施形態2に係る白色半導体発光装置は、大きくいうと2つの点で実施形態1の白色半導体発光装置と異なる。第1の点は、半導体発光素子として、青色発光素子に代えて、発光ピーク波長を400〜430nmの範囲に有する紫色発光素子または発光ピーク波長が400nm未満(通常、360nm以上)である紫外発光素子を用いることである。第2の点は、波長変換部が青色蛍光体を含有することである。青色蛍光体とは、その発光色が、図2に示すxy色度図(CIE 1931)における「PURPULISH BLUE」、「BLUE」または「GREENISH BLUE」に区分される蛍光体である。
【0031】
実施形態2に係る白色半導体発光装置で用いる半導体発光素子は、ストークスシフト損失が小さくなるという理由から、好ましくは紫色発光素子である。現在入手できる最も効率の高い紫色半導体発光素子は、InGaN系の紫色LED素子である。InGaN層を活性層とするInGaN系LED素子は、発光ピーク波長を410〜430nmの範囲としたときに発光効率が最大となることが知られている(非特許文献1)。一方で、高効率の青色蛍光体の励起効率は一般に紫外〜近紫外領域において高く、波長405nmよりも長波長側では波長の増加とともに急激に低下する。このような青色蛍光体の励起特性も考慮すると、実施形態2の白色半導体発光装置に最も適した紫色LED素子は、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲、特に405〜415nmの範囲に有する、InGaN系LED素子であるといえる。
【0032】
実施形態2の白色半導体発光装置に用いることのできる青色蛍光体としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする青色蛍光体、例えば、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euなどが挙げられる。中でも好ましいものとして、発光効率が高く、かつ、半値全幅が50nm以上の比較的ブロードな発光スペクトルを有する、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-xBax(PO4)3Cl:Eu(0<x<5)が挙げられる。
【0033】
実施形態2においては、Ce3+を付活剤とする蛍光体(通常、緑色または黄色蛍光体)の使用は好ましくない。なぜなら、かかる蛍光体の多くは励起スペクトルのピークを波長450nm付近に有するため、同時に使用する青色蛍光体の発する光を強く吸収するからである。このような、蛍光体が他の蛍光体を励起する多段励起(カスケード励起ともいう)は、白色半導体発光装置の効率を著しく低下させる。また、実施形態2では、実施形態1に比べて半導体発光素子の発光波長が短いことから、波長変換部のマトリックス材料にはより高い耐光性が要求される。
【0034】
[3]条件(A)
上述の実施形態1および実施形態2のいずれの白色半導体発光装置も、その発光スペクトル(当該白色半導体発光装置が外部に向かって放出する白色光のスペクトル)に関する次の条件(A)を充たすとき、特殊演色評価数R9が概ね85以上の良好な値となる:
(A)光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である。
【0035】
上記条件(A)にいう演色性評価用基準光とは、光源の演色性評価方法を定める日本工業規格JIS Z8726:1990に規定される基準光であり、試料光源たる白色半導体発光装置の相関色温度が5000K未満のときは完全放射体の光、また、該相関色温度が5000K以上のときはCIE昼光である。完全放射体およびCIE昼光の定義はJIS Z8720:2000(対応国際規格 ISO/CIE 10526:1991)に従う。
【0036】
また、上記条件(A)にいう、光束で規格化した光のスペクトルとは、下記数式(1)により決定される光束Φが1(unity)となるように規格化したスペクトル(下記数式(1)中の分光放射束Φe)をいう。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、
Φ:光束[lm]
Km:最大視感度[lm/W]
Vλ:明所視標準比視感度
Φe:分光放射束[W/nm]
λ:波長[nm]、である。
【0039】
以下の説明では、光束で規格化した白色半導体発光装置(試料光源)の発光スペクトルの波長580nmにおける強度(I580-1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I580-2)との比率(I580-1/I580-2)を、「580nm強度比」と呼ぶ場合がある。また、光束で規格化した白色半導体発光装置(試料光源)の発光スペクトルの波長640nmにおける強度(I640-1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度(I640-2)との比率(I640-1/I640-2)を、「640nm強度比」と呼ぶ場合がある。上記条件(A)は、640nm強度比が100〜110%であることと同義である。
【0040】
実施形態1または実施形態2の白色半導体発光装置において、上記条件(A)を充足させるためには、発光ピーク波長を641nm〜648nmの範囲内に有する広帯域赤色蛍光体を波長変換部に用いることが好ましい。発光ピーク波長を640nm以下に有する広帯域赤色蛍光体は、発光ピーク波長を649nm以上に有する広帯域赤色蛍光体と共に使用することが望まれる。ここでいう蛍光体の発光ピーク波長は、白色半導体発光装置において励起源に用いる半導体発光素子の発光ピーク波長λEに近い波長(望ましくはλE±10nmの範囲内の波長)の光で、当該蛍光体を励起したときの値である。
【0041】
更に、実施形態1または実施形態2の白色半導体発光装置の640nm強度比は、その580nm強度比が増加するに従い低下する傾向を有する。従って、580nm強度比を調整することにより、640nm強度比を制御することが可能となる。条件(A)を充足させるためには、580nm強度比が85〜100%の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0042】
580nm強度比を85〜100%とするには、波長変換部に用いる緑色蛍光体と広帯域赤色蛍光体を適切に選択することが重要である。ここでは、説明の便宜のために、蛍光体の発光スペクトルの波長580nmにおける強度を、発光ピーク波長における強度(発光ピーク強度)を1として相対的に表した値を、当該蛍光体の「580nm相対強度」と定義する。緑色蛍光体および赤色蛍光体の場合には、発光ピーク波長が580nmに近い程、また、発光ピークの半値全幅が大きい程、580nm相対強度は高くなる。緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に580nm相対強度の高いものを用いれば、白色半導体発光装置の580nm強度比は高くなる。反対に、緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に580nm相対強度の低いものを用いれば、白色半導体発光装置の580nm強度比は低くなる。黄色蛍光体の使用は、白色半導体発光装置の580nm強度比を高くする。なぜなら、黄色蛍光体は、発光スペクトルに波長580nm近傍の成分を多く含むので、緑色蛍光体や赤色蛍光体と比べて580nm相対強度が高いからである。
【0043】
ひとつの方法として、580nm相対強度が異なる複数の広帯域赤色蛍光体を組合せて用いることにより、白色半導体発光装置の580nm強度比を上記の好ましい範囲内に調節し、ひいては、640nm強度比を100〜110%の範囲内に制御することができる。その他の方法として、580nm相対強度が異なる複数の緑色蛍光体を組み合せて用いることや、あるいは、緑色蛍光体と黄色蛍光体を組み合せて用いることにより、同じ目的を達成することも可能である。
【0044】
なお、本発明者等が試作を通して見出しているところによれば、相関色温度6700Kの白色LEDにおいては、条件(A)が充足されない場合であってもR9が90以上となり得る。従って、少なくとも相関色温度6700Kの白色半導体発光装置において、条件(A)は高いR9を備えるための十分条件であるが、必要十分条件ではないといえる。
【0045】
[4]実施形態3
次に、本発明を、調色可能な照明用の発光モジュールに適用した例について説明する。
【0046】
図3は、照明用の発光モジュール30(後述する図7を参照。)に搭載される白色LED8の斜視図であり、図4は、図3に示す白色LED8においてLEDチップ3A、3Bがリード電極20A、20Bにどのように接続されているかを示す平面図である。また、図5は、図3及び図4に示す白色LED8の回路構成を示す図である。更に、図6は、図3及び図4に示す白色LED8を、リード電極20A、20Bを含む面で切断した場合の断面図である。
【0047】
図3に示すように、白色LED8は2つのカップを有するパッケージ1を含んで構成されている。該パッケージ1は、絶縁基板2と、その表面にパターニングされたリード電極20A、20B(図3には表示せず)と、絶縁基板2の上に接合された環状の枠体10と、第1カップ12Aと第2カップ12Bとを隔てる間仕切り11とを有している。絶縁基板2は、例えば、アルミナ基板、金属ベース基板、ガラスエポキシ基板などである。リード電極20A、20Bはプリント基板の導体パターン形成技術を用いて形成されている。
【0048】
枠体10および間仕切り11は、LEDチップ3A、3Bが放射する光および後述する蛍光部14A、14Bで生じる光を透過させないように、少なくともその表面が、可視波長域における反射率の高い材料を用いて形成されている。かかる材料としては、アルミナなどの白色セラミック、白色樹脂(白色顔料の添加により白色を呈す樹脂)、Ag、Al、Pt、Rh、Niなどの銀白色を呈す金属(合金を含む)が例示される。枠体10と間仕切り11は接着剤を用いて絶縁基板2上に固定されている。枠体10と間仕切り11は一体成形することもできる。
【0049】
第1カップ12A内、第2カップ12B内には、LEDチップ3A、3Bがそれぞれ4個ずつ実装されている。各カップ内の4個のLEDチップは同種であり、図4に示すようにリード電極によって並列に接続されている。LEDチップ3A、3Bは、それぞれリード電極20A、20Bを通して電力供給を受け、発光する。LEDチップ3A、3Bは、青色光を発するInGaN系LEDチップである。図6に示すように、第1カップ12A内、第2カップ12B内には、それぞれ、蛍光部14A、14Bが、LEDチップ3A、3Bを覆って設けられている。蛍光部14A、14Bは、それぞれ、LEDチップ3A、3Bが発する光を吸収して発光する蛍光体を含有している。蛍光部14A、14Bは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、低融点ガラスなど、LEDチップの封止保護用に適した透光性材料中に蛍光体を分散させた組成物により形成される。
【0050】
第1カップ12A内では、LEDチップ3Aと蛍光部14Aとが、相関色温度Tcp1の白色光を生成する白色発光ユニット(「白色発光ユニットA」)を構成している。第2カップ12B内では、LEDチップ3Bと蛍光部14Bとが、相関色温度Tcp2の白色光を生成する別の白色発光ユニット(「白色発光ユニットB」)を構成している。白色発光ユニットAと白色発光ユニットBを同時に点灯させると、各白色発光ユニットで生成される白色光(一次白色光)が混合した白色の合成光(二次白色光)が白色LED8から放出される。この合成光の相関色温度は、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBに供給する電力の比率を調節することにより、Tcp1とTcp2との間で変化させることができる。なお、ここでいう「同時に点灯させる」とは、ヒトの視覚で同時と感じられるように点灯させることを意味する。
【0051】
室内照明の場合、部屋の雰囲気を変えるのに十分な調色を可能とするには、照明光の相関色温度の可変範囲が2000K以上であることが望まれる。このような理由から、Tcp1とTcp2との差は、2000K以上とされる。例えば、Tcp1は2500K〜3500Kの範囲内に、Tcp2は4500K〜7000Kの範囲内に、それぞれ設定する。
【0052】
白色発光ユニットAと白色発光ユニットBの平均演色評価数(CRI;Ra)は、両方を80以上とすることが望ましい。美術館用の照明のように高い演色性が要求される用途では、更に、両方を90以上とすることが望ましい。本発明者等が実験を通して確認したところによれば、通常、両方の白色発光ユニットのRaが80以上であれば、可変範囲内のあらゆる相関色温度において白色LED8のRaは80以上となる。
【0053】
更に、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBは、その両方が前述の条件(A)を充たしている。それ故に、白色LED8は、その放出する合成光が各白色発光ユニットからの一次白色光をいかなる比率で含む場合であっても、条件(A)を充足する。換言すれば、放出する合成光の相関色温度がTcp1〜Tcp2の範囲内のいかなる値であっても、白色LED8の特殊演色評価数R9は良好な値となる。
【0054】
図7は、白色LED8を複数搭載した発光モジュールの構成例を示す図であり、図7(a)は発光モジュールの斜視図、図7(b)は、図7(a)に示す発光モジュール上の5台の白色LEDの配置状態を模式的に示す平面図である。図7(b)に示すように、5台の白色LED8は、円盤状の回路基板31の中心点を中心とする円周上に等角配置されている。発光モジュール30においては、各白色LED8が第1カップ12A内に有するLEDチップ群(並列に接続された4個のLEDチップ3Aからなる)の間が配線層34により直列に結線され、各白色LED8が第2カップ12B内に有するLEDチップ群(並列に接続された4個のLEDチップ3Bからなる)の間が配線層35により直列に結線されている。この回路構成を示したものが図8である。このように同種のLEDチップ群の間を直列に結線することで、白色発光ユニットAに印加する電流と白色発光ユニットBに印加する電流を別個に変化させることができる。
【0055】
図9は発光モジュール30における電流印加パターンの一例を示す図であり、図9(a)は各白色LED8の第1カップ12A内に配置されるLEDチップ3Aに供給される電流と時間との関係を示しており、図9(b)は各白色LED8の第2カップ12B内に配置されるLEDチップ3Bに供給される電流と時間との関係を示している。この例のように、各LEDチップ3に矩形状の電流を印加する場合、LEDチップ3Aに電流を流す時間とLEDチップ3Bに電流を流す時間との比率を変えることによって、白色発光ユニットAと白色発光ユニットBのそれぞれが単位時間当たりに放出する光の量の比率を変えることができるので、発光モジュール30の出力光の色温度を簡便に制御することができる。
【0056】
発光モジュール30が前述の条件(A)を充たすようにするには、発光モジュール30に搭載する複数の白色LED8の全てが条件(A)を充たすようにすることが望ましい。ただし、複数の白色LED8の一部または全部が条件(A)を充たさないのに、発光モジュール30が条件(A)を充たすことも有り得る。
【0057】
発光モジュール30においては、図3Aに示す2カップ型のパッケージ1を用いて白色発光ユニットAと白色発光ユニットBを一体化した白色LED8を用いる代わりに、通常の1カップ型のパッケージを用いてそれぞれ形成された、相関色温度Tcp1の白色LED(白色発光ユニットA)と相関色温度Tcp2の白色LED(白色発光ユニットB)とを、それぞれ回路基板31上に搭載することもできる。あるいは、パッケージを用いないで、回路基板31の配線層をLEDチップの実装に適したパターンに形成し、LEDチップを回路基板31上に直接実装するチップ・オン・ボード型構成を採用することもできる。
【0058】
図10は、カップを用いない白色発光ユニットの構成例を示す断面図であり、絶縁基板2(金属基板2A、リード電極20C、20Dおよび絶縁層2Dを有する)上に実装されたLEDチップ3を、ドーム状にモールド成形された蛍光部14が覆っている。LEDチップ3と配線層20Cとの間は、ハンダや銀ペーストのような導電性接着剤5により接続されている。LEDチップ3と配線層20Dとの間は、金線6により接続されている。
【0059】
[5]その他の実施形態
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、レンズ、光ファイバ、導光板、反射鏡、フィルタ、その他様々な光学素子を備えたものであり得る。このような光学素子は、半導体発光素子と蛍光体との間に配置し得る他、半導体発光素子または蛍光体が発する光が発光装置の外部に放出されるまでに通過する経路上に配置し得る。また、本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、電源、制御回路などを備えていてもよい。
【0060】
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、白色発光ユニット、白色LEDまたは白色発光モジュールが組み込まれた照明装置を包含する。かかる照明装置は、白色発光ユニット、白色LEDまたは白色発光モジュールが発する光が当該照明装置の外部に放出されるまでに通過する経路上に配置されたフィルタ素子を有し、該フィルタ素子によって当該照明装置の発光スペクトルの形状を制御することによって、条件(A)を充足するものであり得る。
【0061】
[6]実験結果
以下には、本発明者等が行った、実験(シミュレーションを含む)の結果を記載する。前述の条件(A)に関連する知見は、この実験を通して得られたものである。表1は、実験に用いた蛍光体のリストである。
【0062】
【表1】
【0063】
表1には、各蛍光体について、本明細書で用いる名称、発光色に基づく種別、一般式を示すとともに、発光特性として、発光スペクトルのピーク波長(発光ピーク波長)および半値全幅と、580nm相対強度を示している。発光特性として記載された値はいずれも、発光ピーク波長の欄に括弧書きで記された波長で励起したときの値である。580nm相対強度とは、前述の通り、発光ピーク波長における発光スペクトルの強度(発光ピーク強度)を1として、波長580nmにおける発光スペクトルの強度を相対的に表した値である。
【0064】
蛍光体の発光スペクトルの測定は、当該分野における常法に従って行った。ただし、SBSの励起波長402nmにおける発光スペクトル特性は例外で、赤色LEDの発光スペクトル測定結果に基づいている。この赤色LEDは、発光ピーク波長402nmのInGaN系LEDチップ1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状のSBSを添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。発光ダイオードチップのサイズは350μm角、発光スペクトル測定時の該赤色LEDへの印加電流は20mAである。
【0065】
表1に示す通り、使用した赤色蛍光体はいずれも発光スペクトルの半値全幅が80nm以上の広帯域蛍光体である。このうち、SCASN−1およびSCASN−2は、同じ一般式SrxCa1-xAlSiN3:Euで表されるが、発光特性が異なっている。CASON−1およびCASON−2も、同じ一般式Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euで表されるが、発光特性が異なっている。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euの母体はCaAlSiN3とSi2N2Oとの固溶体であり、(CaAlSiN3)1-x(Si2N2O)xと表されることもある。
【0066】
CASN−1およびCASN−2も、また、同じ一般式CaAlSiN3:Euで表されるが、異なる発光特性を有している。同一の一般式で表される蛍光体が、付活剤濃度の違い、不純物濃度の違い、母体組成の違い、母体組成の一般式からのズレなどの原因によって異なる発光特性を示すという事実、また、この事実を利用して、市場の要求に応じた種々の発光特性を有する蛍光体が生産されていることは、当該技術分野ではよく知られている。
【0067】
表1に掲げた蛍光体を用いて作製した白色LEDのリストを、表2および表3に示す。表2に示すV−1からV−15までの15種類の白色LEDは、発光ピーク波長を約405nmに有する紫色LED素子を蛍光体の励起源に用いている。一方、表3に示すB−1からB−12までの12種類の白色LEDは、発光ピーク波長を約450nmに有する青色LED素子を、青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いている。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
全ての白色LEDは、350μm角のInGaN系LED素子(チップ)1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状の蛍光体を添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。表2および表3には、各サンプルに用いた蛍光体の名称と、LED素子を封止するシリコーン樹脂組成物における各蛍光体の配合比(濃度)を示している。例えば、V−1は、青色蛍光体BAM、緑色蛍光体BSSおよび赤色蛍光体CASON−1を、それぞれ9.0wt%、1.2wt%および4.3wt%の濃度で含むシリコーン樹脂組成物により、紫色LED素子が封止された構造を有している。
【0071】
表4および表5に、V−1〜V−15、B−1〜B−12のそれぞれの発光特性を示す。相関色温度、Duv、Ra、R9、赤色スペクトル領域(590〜780nm)における極大波長、580nm強度比および640nm強度比の各値は、いずれも、1個の白色LEDに電流20mAを印加して発光させたときの発光スペクトルに基づいている。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
最初に、温白色光を放出する白色LEDに関して得た結果について述べる。
赤色蛍光体としてCASON−1を用いたV−1と、CASON−2を用いたV−2に着目すると、表4に示すように、平均演色評価数Raが前者では97、後者では96と、いずれも極めて高い。一方、特殊演色評価数R9については、V−1が88と良好な値を示したのに対し、V−2のそれは76というやや低い値である。
【0075】
図11は、V−1とV−2の発光スペクトルを、赤色スペクトル領域(波長590〜780nm)に存する極大波長(V−1では631nm、V−2では624nm)におけるスペクトル強度(赤色スペクトル領域におけるピーク強度)で規格化し、ひとつのグラフ上に示したものである。440〜500nmおよび540〜620nmでV−1のスペクトル強度をV−2のスペクトル強度が上回っており、630nmよりも長波長の領域では両者のスペクトルは略重なっている。
【0076】
図12は、V−1の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−1と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、ひとつのグラフ上に示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が同一となるように規格化されている。また、図13は、V−2の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−2と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、ひとつのグラフ上に示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0077】
図12および図13によれば、V−1でもV−2でも、520〜580nmという視感度が最も高い波長領域では、発光スペクトル曲線は基準光のスペクトル曲線に概ね沿っている。590nmよりも長波長側では、V−1の発光スペクトル強度は波長640nmまで基準光の発光スペクトル強度を上回っている。V−1の640nm強度比は、表4に示すように100%である。それに対し、V−2では、630nmと640nmの間で発光スペクトル曲線が基準光のスペクトル曲線と交わっており、640nm相対強度は97%である。つまり、640nmでは発光スペクトルの強度が基準光のスペクトル強度を下回っている。
【0078】
表6に示すのは、V−2とV−7とがそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−1の発光特性をシミュレートした結果である。ここで、V−7は、今回使用した赤色蛍光体の中では発光ピーク波長が最も長波長であるCASN−1を、赤色蛍光体として用いた白色LEDである。図14に、V−7の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(V−7と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとともに示す。図14において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0079】
【表6】
【0080】
白色発光装置S−1の発光特性シミュレーションでは、それぞれ光束で規格化したV−2およびV−7の発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9、580nm強度比および640nm強度比を算出している。表6において、例えば、「合成スペクトル中の白色LED(a)の発光スペクトルの比率」が0.4、「合成スペクトル中の白色LED(b)の発光スペクトルの比率」が0.6である列には、光束で規格化したV−2の発光スペクトルと光束で規格化したV−7の発光スペクトルとを4:6の比率で合算した合成スペクトルが出力光のスペクトルである、白色発光装置S−1の発光特性が示されている。
【0081】
表6のシミュレーション結果によれば、白色発光装置S−1のRaおよびR9が最大となるのは、その出力光のスペクトルが、V−2の規格化された発光スペクトルとV−7の規格化された発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトルのときである(Ra=98、R9=95)。このときの640nm強度比は104%である。図15には、この合成スペクトルを、演色性評価用基準光のスペクトルとともに示す。図15において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0082】
図16および図17は、実際にCASON−2およびCASN−1を赤色蛍光体に用いて作製した白色LEDであるV−3およびV−4の発光スペクトルを、それぞれ示している。いずれの図にも、演色性評価用基準光のスペクトルを併せて表示している。それぞれの図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0083】
表6のシミュレーション結果は、また、同じ励起源(紫色LED素子)と同じ蛍光体(BAM、BSS、CASON−2およびCASN−1)を用いて構成される略同一色温度の白色LEDが、1から95までの様々なR9値を有し得るという、興味深い事実を示している。つまり、同じ種類の励起源および蛍光体を用いたからといって、同等の演色性を備える白色LEDが必ず得られるとは限らないのである。
【0084】
図16に発光スペクトルを示すV−3は、Ra値もR9値も極めて良好である(Ra=97、R9=98)。図17に発光スペクトルを示すV−4も同様である(Ra=96、R9=93)。V−3の640nm相対強度は104%、V−4の640nm相対強度は108%である。
【0085】
図18〜23は、それぞれ、V−5、V−6、V−8〜V−11の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(白色LEDと同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0086】
更に、図24〜32は、それぞれ、B−1〜B−9の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(白色LEDと同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0087】
図33は、20種類の温白色LED、すなわち、紫色LED素子を用いたV−1〜V−11と、青色LED素子を用いたB−1〜B−9の、それぞれの640nm強度比と特殊演色評価数R9を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。グラフは横軸が640nm強度比、縦軸がR9である。プロットの結果は、使用するLED素子および蛍光体の種類に依存しない、特定の傾向が存在することを示している。すなわち、640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるときR9は最も高い値となり、640nm強度比が100%より低くなっても、また、100%より高くなっても、R9は低下する。
【0088】
図34は、前述の白色発光装置S−1の発光特性シミュレーションにおいて、その出力光スペクトルを合成する際のV−1の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルとの合算比率を種々変化させたときの、640nm強度比と特殊演色評価数R9との関係をプロットしたグラフである。図34は、図33と同様の傾向を示している。
【0089】
かかる傾向の存在を更に確認するために行った、4つのシミュレーションの結果を次に示す。
【0090】
表7に示すのは、V−6およびV−7がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−2の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0091】
【表7】
【0092】
表8に示すのは、V−5およびV−7がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−3の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0093】
【表8】
【0094】
表9に示すのは、V−5およびV−1がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−4の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0095】
【表9】
【0096】
表10に示すのは、B−5およびB−6がそれぞれ発する一次白色光が完全に混合された合成光を放出する白色発光装置S−5の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は、前述の白色発光装置S−1の場合と同じである。
【0097】
【表10】
【0098】
図35は、シミュレーションにより得た、上述の4つの白色発光装置S−2〜S−5のそれぞれの640nm強度比と特殊演色評価数R9との関係を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。図35においても、図33および図34と同様の傾向が見られる。
それは、640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるときR9は最も高い値となり、640nm強度比が100%より低くなっても、また、110%より高くなっても、R9が低下する傾向である。
【0099】
図36には、20種類の温白色LED、すなわち、紫色LED素子を用いたV−1〜V−11と、青色LED素子を用いたB−1〜B−9の、それぞれの580nm強度比と640nm強度比とを、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。グラフは横軸が580nm強度比、縦軸が640nm強度比である。プロットの結果は、580nm強度比が増加するに従い、640nm強度比が減少する傾向を示している。
【0100】
図37は、シミュレーションにより得た、上述の5つの仮想的な白色発光装置S−1〜S−5のそれぞれの580nm強度比と640nm強度比との関係を、ひとつのグラフ上にプロットしたものである。図37においても、図36と同様に、580nm強度比が増加するに従い、640nm強度比が減少する傾向が見られる。
【0101】
次に、冷白色光を放出する白色LEDに関して得た結果を記す。
【0102】
図38〜41は、それぞれ、相関色温度が5500K前後であるV−12〜V−15の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(CIE昼光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。640nm強度比が111%であるV−12の特殊演色評価数R9は81であり、悪くない値である。640nm強度比が100〜110%の範囲内にあるV−13〜V−15のR9は、より高い値であり、いずれも90以上となっている。
【0103】
図42〜44は、それぞれ、相関色温度が6400〜6500KであるB−10〜B−12の発光スペクトルを、演色性評価用基準光(CIE昼光)のスペクトルと共に示している。各図において、白色LEDの発光スペクトルの強度と基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。640nm強度比が105%であるB−10の特殊演色評価数R9は95と極めて良好である。それに対して、640nm強度比がそれぞれ79%、53%であるB−11とB−12のR9は、それぞれ45、−34と劣悪である。
【0104】
最後に、冷白色光を放出する白色LEDと温白色光を放出する白色LEDとを組み合わせることにより得られる、色温度可変の白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果について記す。
【0105】
表11に示すのは、B−10が発する冷白色光とB−2が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−6の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−1の場合と同じであり、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDの発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9、580nm強度比および640nm強度比を算出している。
【0106】
【表11】
【0107】
表11に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−6の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−10の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとの合算比率に応じて、B−10の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が可変範囲内のいかなる値であっても、白色発光装置S−6の640nm強度比は100%と110%の間にあり、その特殊演色評価数R9は89〜98という良好な値となっている。
【0108】
表12に示すのは、B−11が発する冷白色光とB−2が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−7の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−6の場合と同じである。
【0109】
【表12】
【0110】
表12に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−7の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−11の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとの合算比率に応じて、B−11の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が3036〜3820Kのとき、白色発光装置S−7の640nm強度比は100%と102%の間にあり、その特殊演色評価数R9は89〜91という良好な値となっている。
【0111】
表13に示すのは、B−10が発する冷白色光とB−4が発する温白色光とが完全に混合された合成光を放出する、白色発光装置S−8の発光特性をシミュレートした結果である。シミュレーションの方法は前述の白色発光装置S−6の場合と同じである。
【0112】
【表13】
【0113】
表13に示すように、シミュレーションにより得られた白色発光装置S−8の出力光の相関色温度は、そのスペクトルを合成する際のB−10の発光スペクトルとB−4の発光スペクトルの合算比率に応じて、B−10の相関色温度とB−4の相関色温度との間で変化している。出力光の相関色温度が5042〜6488Kのとき、白色発光装置S−8の640nm強度比は100%と105%の間にあり、その特殊演色評価数R9は93〜97という高い値となっている。
【符号の説明】
【0114】
1・・・・パッケージ
2・・・・絶縁基板
3A、3B・・・・LEDチップ
8・・・・白色LED
10・・・・枠体
11・・・・間仕切り
12A・・・・第1カップ
12B・・・・第2カップ
14A、14B・・・・蛍光部
20A、20B・・・・リード電極
30・・・・発光モジュール
31・・・・回路基板
34、35・・・・配線層
100・・・・白色半導体発光装置
101・・・・SMD型パッケージ
102・・・・半導体発光素子
103・・・・波長変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む白色半導体発光装置であって、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
【請求項2】
放出する白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にある、請求項1に記載の白色半導体発光装置。
【請求項3】
発光ピーク波長を360〜430nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
【請求項4】
上記半導体発光素子が、発光ピーク波長を405〜415nmの範囲内に有するInGaN系LED素子である、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項5】
上記青色蛍光体が、Eu2+で付活されたアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体を含み、かつ、上記緑色蛍光体が、Eu2+で付活されたサイアロン蛍光体およびEu2+で付活されたアルカリ土類ケイ酸窒化物蛍光体の少なくとも一方を含む、請求項3または4に記載の白色半導体発光装置。
【請求項6】
上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、請求項5に記載の白色半導体発光装置。
【請求項7】
上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項8】
発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記半導体発光素子、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
【請求項9】
上記波長変換部が、更に、上記半導体発光素子により励起され発光する黄色蛍光体を含んでおり、上記白色光は該黄色蛍光体が発する光を含んでいる、請求項8に記載の白色半導体発光装置。
【請求項10】
上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、請求項8に記載の白色半導体発光装置。
【請求項11】
上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項12】
それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1および第2の白色発光ユニットを有し、
該第1および第2の白色発光ユニットは、それぞれ、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であり、
該第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光と該第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光との混合により合成される二次白色光を放出可能な白色半導体発光装置。
【請求項13】
上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度と、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度の差が、2000K以上である、請求項12に記載の白色半導体発光装置。
【請求項14】
上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にあり、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が4500〜7000Kの範囲内にある、請求項13に記載の白色半導体発光装置。
【請求項15】
それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1〜第Nの白色発光ユニットを有し、
該第1〜第Nの白色発光ユニットがそれぞれ放出する一次白色光の混合により合成される二次白色光を放出する白色半導体発光装置であって、
光束で規格化した上記二次白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
【請求項16】
上記第1〜第Nの白色発光ユニットの一部または全部は、光束で規格化したその発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の99%以下または111%以上である、請求項15に記載の白色半導体発光装置。
【請求項1】
発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む白色半導体発光装置であって、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
【請求項2】
放出する白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にある、請求項1に記載の白色半導体発光装置。
【請求項3】
発光ピーク波長を360〜430nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記青色蛍光体、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
【請求項4】
上記半導体発光素子が、発光ピーク波長を405〜415nmの範囲内に有するInGaN系LED素子である、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項5】
上記青色蛍光体が、Eu2+で付活されたアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体を含み、かつ、上記緑色蛍光体が、Eu2+で付活されたサイアロン蛍光体およびEu2+で付活されたアルカリ土類ケイ酸窒化物蛍光体の少なくとも一方を含む、請求項3または4に記載の白色半導体発光装置。
【請求項6】
上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、請求項5に記載の白色半導体発光装置。
【請求項7】
上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項8】
発光ピーク波長を430〜470nmの範囲内に有する半導体発光素子と、該半導体発光素子により励起され発光する緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む波長変換部とを備え、
上記半導体発光素子、緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体がそれぞれ発する光を含む白色光を放出し、
光束で規格化した上記白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%である、白色半導体発光装置。
【請求項9】
上記波長変換部が、更に、上記半導体発光素子により励起され発光する黄色蛍光体を含んでおり、上記白色光は該黄色蛍光体が発する光を含んでいる、請求項8に記載の白色半導体発光装置。
【請求項10】
上記広帯域赤色蛍光体が、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euを含む、請求項8に記載の白色半導体発光装置。
【請求項11】
上記白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項12】
それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1および第2の白色発光ユニットを有し、
該第1および第2の白色発光ユニットは、それぞれ、光束で規格化した発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であり、
該第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光と該第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光との混合により合成される二次白色光を放出可能な白色半導体発光装置。
【請求項13】
上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度と、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度の差が、2000K以上である、請求項12に記載の白色半導体発光装置。
【請求項14】
上記第1の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が2500〜3500Kの範囲内にあり、上記第2の白色発光ユニットが放出する一次白色光の相関色温度が4500〜7000Kの範囲内にある、請求項13に記載の白色半導体発光装置。
【請求項15】
それぞれが、発光材料として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備え、該蛍光体が少なくとも緑色蛍光体および広帯域赤色蛍光体を含む、第1〜第Nの白色発光ユニットを有し、
該第1〜第Nの白色発光ユニットがそれぞれ放出する一次白色光の混合により合成される二次白色光を放出する白色半導体発光装置であって、
光束で規格化した上記二次白色光のスペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の100〜110%であることを特徴とする白色半導体発光装置。
【請求項16】
上記第1〜第Nの白色発光ユニットの一部または全部は、光束で規格化したその発光スペクトルの波長640nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長640nmにおける強度の99%以下または111%以上である、請求項15に記載の白色半導体発光装置。
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図35】
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【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2012−60097(P2012−60097A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279901(P2010−279901)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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