説明

白色樹脂成形体及びLED用リフレクタ

【課題】150℃以上の高温の環境や光に長時間曝露されても変色しにくい高い耐熱劣化性と耐光劣化性を有し、さらに加工しやすく生産性に優れる等、LEDのリフレクタ部を構成する材料として好適な特性を有する白色樹脂成形体及びこの白色樹脂成形体からなるLED用リフレクタを提供する。
【解決手段】融点260℃以上のフッ素樹脂(A)と酸化チタン(B)からなる樹脂組成物を成形してなる白色樹脂成形体、及びこの白色樹脂成形体からなるLED用リフレクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色の樹脂成形体に関し、特にLED用リフレクタ等、電子機器部品用の白色の部材として好適に用いられる、白色樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは小型で省電力であり、かつ長寿命であるので、携帯電話機やディスプレイ等の電子機器や他の電気機器に幅広く使用されている。さらに、近年は輝度の高いLEDが安価に製造できるようになってきたため、蛍光灯や白熱電球に替わる光源として、さまざまな用途への展開が期待されている。
【0003】
LEDが、光源として使用される場合や小型化へ対応する場合等は、大きな照度が求められる。そこで、光を所定方向に反射させるリフレクタを外囲器として配置する方式が多用されている。
【0004】
リフレクタを構成する材質には、高い白色度とともに、LEDの生産性を高くするためリフレクタへの加工がしやすいとの性質、LEDチップを実装する際の加熱に耐えうる耐熱性、長期の使用により劣化しないとの性質等が求められる。近年は生産効率の良いハンダリフローによる実装が行われ、融点の高い鉛フリーハンダが使用されるので、鉛フリーハンダによるハンダリフローに耐える高い耐熱性が求められている。
【0005】
リフレクタを構成する材質としては、酸化チタン等のフィラーを添加した光反射性の樹脂や、アルミナ等のセラミックを挙げることができる。セラミックは、耐熱性が高くまた寿命も優れている点では有利であるが、加工しにくいとの問題がある。一方、耐熱樹脂は加工しやすいのでLEDの生産性の点では有利である。そして例えば、大量生産が容易な熱可塑性樹脂であって、ハンダリフローによる実装に耐えうる融点260℃以上の樹脂の使用が考えられており、具体的には、液晶ポリエステル樹脂組成物(特許文献1)やポリアミド組成物(特許文献2)の使用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−231368号公報
【特許文献2】特開2004−75994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、液晶ポリエステル樹脂組成物やポリアミド組成物は、その融点以下でも150℃以上の高温に曝露され続けると表面の酸化が進行し、黄色化、褐色化が発生するとの問題がある。特許文献2では熱や光による変色の防止に関して述べられているが、150℃以上の高温に長時間曝露されても変色しないような高い耐熱劣化性を有する樹脂は開示されていない。すなわち、特許文献2の実施例では170℃2時間程度の曝露しか実施しておらず、150℃以上の高温に長時間曝露されても変色が発生しない高い耐熱劣化性を有しているとは言いがたい。
【0008】
このように従来は、LEDのリフレクタ部を構成する材料として好適な特性を有するとともに、150℃以上の高温の環境や光に長時間曝露されても変色しにくい白色樹脂成形体は知られておらず、これらの特性を併せ持つ白色樹脂成形体の開発が望まれていた。本発明は、150℃以上の高温の環境や光に長時間曝露されても変色しにくい高い耐熱劣化性と耐光劣化性を有し、さらに加工しやすく生産性に優れる等、LEDのリフレクタ部を構成する材料として好適な特性を有する白色樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の問題について鋭意検討した結果、融点260℃以上のフッ素樹脂(A)と酸化チタン(B)からなる樹脂組成物を成形することにより、高い耐熱劣化性と耐光劣化性を併せ持つ白色樹脂成形体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、融点260℃以上のフッ素樹脂(A)及び酸化チタン(B)からなる樹脂組成物を成形してなる白色樹脂成形体(請求項1)を提供する。
【0011】
融点260℃以上のフッ素樹脂(A)としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等を挙げることができる。ただし、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体は、組成比率によっては融点が260℃未満となるため、使用比率が限られる。また、フッ素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレンは、融点260℃以上であるが、溶融成形が困難である。複数のフッ素樹脂をブレンドする場合、ハンダリフローに耐えるためには、融点260℃以上のフッ素樹脂は55重量%以上であり、好ましく60重量%以上であるが、より好ましくは、融点260℃以上の樹脂のみを用いる場合である。
【0012】
そこで、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、さらにその他成分を共重合した低融点品が、使い勝手の点からは、最も好ましいフッ素樹脂(A)として挙げることができる。なお、ハンダリフローが260℃のため、製造上の安全性を考慮すれば、融点270℃以上の樹脂を使用することがより好ましく、成形性やその他の特性より材料は適宜選定すればよい。
【0013】
本発明に用いられる酸化チタン(B)とは、酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン、二酸化チタン等のチタンの酸化物を含む意味である。前記例示のいずれも酸化チタン(B)として使用できるが、中でも、二酸化チタンが特に好ましい。
【0014】
フッ素樹脂(A)と酸化チタン(B)との配合割合は、フッ素樹脂(A)100重量部に対し、酸化チタン(B)5重量部以上、100重量部以下の範囲が好ましい。5重量部未満ではフッ素樹脂(A)の組成によっては、半透明となり、リフレクタに求められる十分な白色が得られない場合がある。一方、100重量部より酸化チタン(B)の添加量が多い場合は、流動性が損なわれ、成形が困難となり、生産性が低下する場合がある。なお、樹脂組成物が、フッ素樹脂(A)及び酸化チタン(B)からなる、とは、樹脂組成物は、フッ素樹脂(A)及び酸化チタン(B)を主な構成成分とするが、後述のように、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分が含まれていてもよいことを意味する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記樹脂組成物が、補強材(C)を、フッ素樹脂(A)100重量部に対し、2重量部以上、50重量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の白色樹脂成形体である。前記樹脂組成物には、寸法精度を向上させるため、又は、弾性率を向上させるために、補強材(C)を添加することが効果的であり、その添加量は、前記の範囲が好ましい。2重量部未満では未添加と比較して弾性率や寸法精度に差異が見られない。一方、50重量部より添加量が多い場合は、樹脂組成物の流動性が著しく損なわれ成形が困難となる。
【0016】
上記補強材(C)の例としては、繊維状充填材や針状充填材が好ましい。繊維状充填材としてはガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維などが挙げられ、針状充填材としてはチタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミウィスカー、炭酸カリウムウィスカーなどが挙げられる。他に、タルク、マイカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、ワラストナイト、モンモリロナイトなどの粉末状充填材を含有していてもよい。これらの充填材はシランカップリング剤や高級脂肪酸で表面処理されたものでもよいし、未処理のものでも良い。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記樹脂組成物が、熱伝導度の高い無機フィラー(D)を、フッ素樹脂(A)100重量部に対し、5重量部以上、80重量部以下含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色樹脂成形体である。前記樹脂組成物には、成形体の放熱性向上のため、熱伝導度の高い無機フィラー(D)を添加することが効果的で、その添加量は前記の範囲が好ましい。5重量部未満では未添加と比較して熱伝導度に差異が見られない。80重量部より添加量が多い場合は、樹脂組成物の流動性が著しく損なわれ成形が困難となる。
【0018】
上記無機フィラー(D)の例としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、リン化ホウ素、リン化アルミニウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム等が挙げられる。
【0019】
前記樹脂組成物には、混合時や成形時、使用時などの高温に曝露される段階で少量でもフッ酸を発生させる可能性がありうるため、フッ酸をトラップできる塩基性フィラーを添加しても良い。上記塩基性フィラーの例としては、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。
【0020】
前記樹脂組成物には、前記の成分に加えて、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤等の各種添加剤を混合することができる。さらに、本発明の趣旨を損ねない範囲で、フッ素樹脂(A)以外の樹脂、例えば、融点が260℃未満のフッ素樹脂や、フッ素を含有しない樹脂を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の白色樹脂成形体の構成材料である前記樹脂組成物は、前記の構成材料をオープンロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸混合機、2軸混合機等の既知の混合装置を用いて混合することにより作製することができる。使用するフッ素樹脂(A)の融点以上の温度で溶融混合することが好ましい。
【0022】
本発明の白色樹脂成形体は、成形体本体が高融点であるため、ハンダリフローに耐える耐熱性を有する。さらに、高温や長時間の加熱に対しても変色を起こさないとの特徴を有する。そこで本発明は、前本発明の記白色樹脂成形体であって、白色度90以上であり、かつ280℃で10分の熱曝露や200℃24時間の熱曝露後も白色度90以上を維持できることを特徴とする白色樹脂成形体(請求項4)を提供する。ここで白色度とは色差測定より得られた明度、赤色度、黄色度より算出した値を言う。
【0023】
次に上記にて作製した樹脂組成物の成形方法について説明する。
【0024】
本発明の白色樹脂成形体を製造するための、樹脂組成物の成形方法としては、射出成形、プレス成形、押出成形等、既存の成形方法として広く用いられている方法を採用することができる。特に生産性の観点から射出成形又は押出成形が好ましい。請求項5に記載の発明は、前記樹脂組成物の成形体が、射出成形又は押出成形により成形されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の白色樹脂成形体である。
【0025】
融点が260℃以上300℃未満であるフッ素樹脂を使用する場合は前記の既存の成形方法を容易に適用することができる。また、融点300℃以上であるフッ素樹脂を使用する場合は、フッ化水素による機械の腐食を考慮して、機械等にメッキ処理を施すことが好ましい。
【0026】
成形の際には、材料表面に金型・成形ロール面が転写しやすく、粗い面が転写されると光の散乱を誘発し反射率を低下させる原因となり得るので、直接成形体と接する設備の金型や成形ロール面は面粗度Ra=1.6aレベルに調整されていることが好ましい。
【0027】
前記のようにして製造される本発明の白色樹脂成形体は、高い白色度、加工しやすさとともに、鉛フリーハンダによるハンダリフローに耐える高い耐熱性、及び150℃以上の高温や光に長時間曝露されても変色が発生しない高い耐熱劣化性や耐光劣化性を有する。従って、LED用リフレクタ等の部材として好適に用いられ、又、本発明の白色樹脂成形体からなるLED用リフレクタを使用する素子は、高い耐熱性を有するので回路基板等へハンダリフローで実装することができ、寿命も長い等の優れた性質を有する。本発明は、さらに、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の白色樹脂成形体からなることを特徴とするLED用リフレクタを提供する(請求項6)
【0028】
図1は、本発明のLED用リフレクタが使用されているLEDモジュールの一例の断面図(a)及び平面図(b)を示す。図中、1はアルミ基板であり、2はLEDチップであり、3はボンディングワーヤーであり、4はLED用リフレクタである。図に示されるように、LEDチップ2(光源)は、アルミ基板1上に搭載されボンディングワーヤー3により電極と接続されている。LED用リフレクタは、このLEDチップ2を囲むように載置される。LED用リフレクタの大きさ、形状はLEDモジュールにより種々であるが、例えば数mm×数mmの略四角形の枠状のものが用いられる。図の例のLED用リフレクタ4も、LEDモジュールの周囲に略四角形の枠状のものとして設けられている。
【発明の効果】
【0029】
本発明の白色樹脂成形体は、高い白色度、加工しやすさとともに、高い耐熱性、及び高い耐熱劣化性や耐光劣化性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のLED用リフレクタが使用されているLEDモジュールの一例の断面図(a)及び平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明を実施するための形態を実施例により説明する。なお、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0032】
先ず、下記の実施例、比較例で行った、樹脂組成物ペレット及び評価用プレートの作製について説明する。
【0033】
(樹脂組成物ペレットの作製)
表1〜3に示す配合処方の材料を、二軸混合機(30mmφ、L/D=30)を使用し、バレル温度を樹脂融点より20℃高温に設定し、スクリュー回転数100rpmで溶融混合して樹脂組成物を作製した。その後、ストランドカットペレタイザで樹脂組成物ペレットを作製した。
【0034】
(評価用プレートの作製)
評価用プレートは上記で得られた樹脂組成物ペレットを用いて、以下に示す射出成形、押出成形を行い作製した。
【0035】
(1)射出成形
樹脂組成物ペレットを型締力40tクラスの射出成形機(日精樹脂社製)に投入し、面粗度Ra=1.6aレベルで無電解ニッケルめっきされた金型を用いて、射出成形を実施し、肉厚1mmのプレートを作製した。
【0036】
(2)押出成形
樹脂組成物ペレットを20mmφ押出機(東洋機械社製の単軸タイプ)に投入し、10mm幅、1.5mm厚のダイス孔より、1.0mm厚のプレートとなるように調整して押出した。
【0037】
[シートの評価方法]
次に、上記のようにして得られた評価用プレートの評価方法について説明する。
【0038】
(1)色差測定
上記プレートを用い、分光測色計(CM−2600d コニカミノルタ製)を用いて、明度(L値)、赤色度(a値)、黄色度(b値)を求めた。また以下の式(1)に従って、白色度を算出した。式(1)中、aは赤色度、bは黄色度、Lは明度を表す。
【0039】
W=100−〔(100−L)+a+b0.5 (1)
【0040】
(2)280℃曝露
表1〜3に記載の処方で作製したプレートを、280℃に設定した恒温槽(熱風循環型)に投入し、槽内温度が280℃となってから30分間曝露した。取り出してから室温になるまで冷却したプレートにて色差を測定し、白色度を算出した。
【0041】
(3)200℃曝露
表1〜3に記載の処方で作製したプレートを、200℃設定の恒温槽(熱風循環型)に投入し、槽内温度が200℃となってから24時間曝露した。取り出してから室温になるまで冷却したプレートにて色差を測定し、白色度を算出した。
【0042】
(4)UV照射
表1〜3に記載の処方で作製したプレートを室温下、UV光(アズワン社製のUVハンディーライトSUV−4を使用:波長254nm、UV照度610μW/cm)を、24時間毎に変色を目視で確認しつつ照射した。照射は、変色が確認できるまで行い、変色が確認できない場合は96時間行った。変色が確認できた段階、又は96時間の照射後にプレートの色差を測定し、白色度を算出した。UV積算光量は、以下の式(2)より算出した。なお、96時間の照射の場合のUV積算光量は、210J/cmである。
【0043】
UV積算光量(μJ/cm)=UV照度(μW/cm)×照射時間(秒) (2)
【0044】
上記評価にて形状を維持し、色差測定より算出した白色度にて90以上を良好とした。
【0045】
次に、下記の実施例、比較例で使用した材料を以下に示す。
[フッ素樹脂]
・テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(以下、MFAと表す。) :Hyflon MFA1041 ソルベイソレクシス社製 融点280〜290℃
・テトラフルオロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと表す。) :ネオフロンPFA AP−201 ダイキン社製 融点301℃
・テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(以下、ETFEと表す。)
:フルオンC−88AP 旭硝子社製 融点267℃
・ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体(以下FEPと表す。) :ネオフロンFEP NP−101 ダイキン社製 融点255℃
[添加剤]
酸化チタン:FTR700 堺化学社製 一次粒子径 0.2μm
強化材(エポキシシラン処理されたガラス繊維):ECS−187 日本電気硝子社製 径13mmφ、繊維長3mm
窒化ホウ素:HP−40 水島合金鉄社製 平均粒径5〜40μm
[その他樹脂]
ナイロン9Tコンパウンド:ジェネスタTA112 クラレ社製LED反射板用銘柄(強熱減量62%)
【0046】
実施例1〜7
表1〜3に示す配合及び条件にて上記方法により評価用プレートを作製し、この評価用プレートを用いて上記評価方法を実施した。280℃30分、200℃24時間の曝露後も変形が全くみられなかった。白色度は90以上であり、目視でも着色は確認できなかった。この結果より、高い白色度、優れた耐熱劣化性、耐光劣化性(光に対する安定性)が確認された。
【0047】
実施例8
フッ素樹脂として、融点267℃のETFEを使用した以外は、実施例1と同様にして評価用プレートを作製し評価を実施した。樹脂の融点以上である280℃30分の曝露にて、成形品の溶融があり、形状の維持が十分と言えなかった。一方、200℃24時間の曝露では白色度は90以上であり、目視でも着色は確認できなかった。
【0048】
比較例1
フッ素樹脂として、融点255℃のFEPを使用した以外は、実施例1と同様にして評価用プレートを作製し評価を実施した。樹脂の融点以上である280℃30分の曝露にて成形品の溶融が確認され、形状を維持していなかった。この点から、高温曝露に対しては耐えることができないと判断し、耐熱劣化性、耐光劣化性の評価は行わなかった。
【0049】
比較例2
市販のLED用リフレクタ用材料を用いて評価を実施したところ、280℃30分、200℃24時間の曝露にて形状は維持するものの、目視にて茶色に変色し、白色度も90以下となった。また、UV光照射にても24時間照射後に黄変が確認され、白色度は90以下となったため、高い白色度が要求される用途では使用が困難であると判断した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表1〜3に示された結果より明らかなように、本発明例である実施例1〜7で得られた白色樹脂成形体は、高い白色度、優れた耐熱劣化性、耐光劣化性を有する。又、本発明例であるが、融点267℃のETFEを使用した実施例8で得られた白色樹脂成形体も、高い白色度、優れた耐熱劣化性、耐光劣化性を有することが示されたが、実施例8では、280℃30分の曝露にて、形状の維持が十分と言えなかったので、ハンダリフロー温度より10℃以上高いフッ素樹脂を使用することがより望ましいと言える。
【0054】
なお、実施例2は、成形方法を押出成形とした場合であるが、射出成形の場合の他の実施例と同様な結果が得られており、前記の優れた効果は押出成形でも得られることが示されている。実施例3は、酸化チタンの添加量をフッ素樹脂100重量部に対して5重量部とした場合であり、実施例4は、酸化チタンの添加量をフッ素樹脂100重量部に対して100重量部とした場合であるが、いずれも酸化チタンの添加量が30重量部の場合と同様な結果が得られており、前記の優れた効果は酸化チタンの添加量5〜100重量部の範囲で得られることが示されている。
【0055】
又、実施例5は、フッ素樹脂(A)として融点が301℃のPFAを用いた場合であるが、同様な結果が得られており、前記の優れた効果は使用するフッ素樹脂の融点が301℃と高くても得られることが示されている。実施例6は、強化剤を添加した場合であるが、同様な結果が得られており、前記の優れた効果は強化剤を添加しても得られることが示されている。実施例7は、熱伝導度の高いフィラーを添加した場合であるが、同様な結果が得られており、前記の優れた効果は熱伝導度の高いフィラーを添加しても得られることが示されている
【0056】
一方、フッ素樹脂として、融点255℃のFEPを使用した比較例1は、ハンダリフローに耐える耐熱性は得られていない。又、市販品(比較例2)も、耐熱劣化性、耐光劣化性が低く、高い白色度が要求される用途では使用が困難であることが比較例2の結果より明らかである。
【符号の説明】
【0057】
1. アルミ基板
2. LEDチップ
3. ボンディングワーヤー
4. LED用リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点260℃以上のフッ素樹脂(A)及び酸化チタン(B)からなる樹脂組成物を成形してなる白色樹脂成形体。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、補強材(C)を、フッ素樹脂(A)100重量部に対し、2重量部以上、50重量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の白色樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、熱伝導度の高い無機フィラー(D)を、フッ素樹脂(A)100重量部に対し、5重量部以上、80重量部以下含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色樹脂成形体。
【請求項4】
白色度90以上であり、かつ280℃で10分の熱曝露や200℃24時間の熱曝露後も白色度90以上を維持できることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の白色樹脂成形体。
【請求項5】
前記樹脂組成物の成形体が、射出成形又は押出成形により成形されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の白色樹脂成形体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の白色樹脂成形体からなることを特徴とするLED用リフレクタ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−195710(P2011−195710A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64184(P2010−64184)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】