説明

皮膚の美白のための黒色酵母からの抽出物

本発明は、美白効果を有する量の黒色酵母由来のメラニン分解酵素抽出物を含む局所用皮膚美白組成物および前記組成物を調製する方法に関する。前記組成物は皮膚、毛髪および爪の表面上のメラニンを分解することにより美白効果を与える。酵素抽出物はエクソフィアラ・マンソニーに由来するものであってよい。前記の酵素抽出物を含有する組成物は、コジック酸を含有する同様の組成物よりも、皮膚に美白作用を与える効果が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品の分野に関する。より特定的には、本発明は黒色酵母酵素抽出物を含む美白組成物に関する。前記の酵素抽出物は、局所適用した場合に、皮膚、爪の表面の、または毛髪中のメラニンを分解する。前記の酵素抽出物は、エクソフィアラ(Exophiala)属などの黒色酵母の多くの属の生物体、例えばエクソフィアラ・マンソニー(Exophiala mansonii)に由来するものであってよい。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、さまざまな色をしており、人種集団の中でさえも個体変異を示す。皮膚の外観は主に、表皮の基底細胞の間に見出されるメラニン細胞により製造される色素であるメラニンにより決定される。
【0003】
メラニンは、アミノ酸チロシンに由来する種々の化合物の水不溶性ポリマーである。これはヒトの皮膚および毛髪に見出される2種の色素のうちの一つであり、皮膚の色に褐色を加える。もう一方の色素はカロテンであって、黄色の着色に寄与している。メラニンの合成反応は、酵素チロシナーゼにより触媒される。チロシナーゼは、一つの特殊化したタイプの細胞、メラニン細胞のみに見出され、この細胞においてメラニンはメラノソームと呼ばれる膜結合体の中に見出される。人間の皮膚に見出されるさまざまな色相および色素沈着の程度は、メラニン細胞および他の細胞内のメラノソームの数、大きさ、および分布に直接関係する。その色素沈着における役割に加えて、紫外線を吸収するメラニンは、皮膚が損傷を与える太陽光に曝された場合に保護する役割を担っている。紫外線の刺激に応答して生産され、皮膚の日焼けの原因となっているのはメラニンである。日焼けは紫外線の有害な作用から皮膚を守る機能を有する。
【0004】
例えばそばかすまたはほくろの形での皮膚におけるメラニンの不均一な分布は、「ビューティーマーク(beauty marks)」というように、ある人々からは美しい肌を表す特徴であると見なされるが、他方では、他の人々にはしばしば望ましくないものと考えられており、彼らはこれらの皮膚の暗色の部分を明るくしようと努めている。皮膚が均一に暗色である場合でさえも、しばしば皮膚全体を明るくすることが望まれる。美白剤は典型的にはこれらの目的で使用される。皮膚の外観を明るくする異なる方法を有する種々のクラスの美白剤が知られている。
【0005】
コジック酸などのチロシナーゼ阻害剤は、皮膚のメラニン細胞においてメラニンの合成に干渉する。メラニンは、チロシナーゼの酵素作用により前駆体チロシンが前駆体ドーパに、および別の前駆体ドーパキノンに変換されることにより合成される。次に、酸化によりインドール-5,6-ジヒドロキノンが生成した後、重合してメラニンとなる。合成経路においてチロシナーゼにより製造されるいずれかの前駆体を阻害すると、メラニンの形成が妨げられ、皮膚の脱色素または美白作用を達成することができる。けれども、チロシナーゼ阻害剤は既に形成されたメラニンに対しては効果がない。
【0006】
他の美白剤には漂白剤、例えば過酸化水素、ハイドロキノン、4-イソプロピルカテコールおよびハイドロキノンモノベンジルエーテルが含まれる。これらの薬剤は皮膚の最上層が剥がれ落ちる度に繰り返して適用する必要があるという欠点を有する。漂白剤は、その強さのために刺激性があるという別の欠点を有する。さらに、それらの薬剤は白斑(vitiligo、leucoderma)を起こす可能性がある。
【0007】
アスコルビン酸、サリチル酸および乳酸も美白剤として使用されてきた。これらの酸は皮膚の最上層の剥がれ落ちを引き起こす機能がある。この方法は、美白効果を得るために繰り返し適用する必要および長期間使用する必要がある。
【0008】
皮膚の美白のためのさらに別の方法は、メラニン分解能力を有する担子菌類(Basidiomycetes)またはいずれかの木材腐朽菌の酵素抽出物を使用して既に形成されたメラニンを分解することである。この方法は、例えば、米国特許第5,578,296号に記載されている。しかしながら、皮膚の表面上でのメラニンの分解は、新しい暗色の斑点が皮膚の中に発現することを防止しないので、他の美白法と同様に繰り返し適用する必要がある。この方法はメラニンの生産およびその紫外線保護作用に干渉しない。さらに、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)に由来するメラニン分解酵素抽出物が米国特許第6,514,506号に記載されている。
【0009】
サッカロミセス属に属する酵母抽出物または生きている酵母を含むメラニン分解作用またはメラニン抑制機能により皮膚の色を明るくする化粧品組成物が文献に記載されている。例えば、日本国特許第09-124438号、日本国特許第07-274977号、日本国特許第07-010734号、米国特許第5,643,587号、および米国特許第6,337,320号を参照されたい。
【発明の開示】
【0010】
今回、驚くべきことに、化粧品または皮膚科用組成物の中の黒色酵母由来の酵素抽出物が皮膚および爪の美白剤として、および毛髪の色を明るくする薬剤として有用であることが発見された。
【0011】
本発明によれば、前記の他の方法の欠点を伴わずに、かつ他のタイプの美白処理と組み合わせる必要がなく、皮膚および爪に適用すると美白効果を、および毛髪において色を明るくする効果を与えることができる美白組成物が提供される。
【0012】
発明の概要
本発明は、美白効果のある量の黒色酵母に由来する酵素抽出物を含む、皮膚および爪に適用するための局所用化粧品または皮膚科用組成物に関する。本発明はまた、色を明るくする効果のある量の黒色酵母に由来する酵素抽出物を含む、毛髪に適用するための局所用化粧品または皮膚科用組成物に関する。酵素抽出物はエクソフィアラ(Exophiala)属に属するものを含むさまざまな種の黒色酵母から得ることができる。メラニン分解酵素抽出物はエクソフィアラ・マンソニー(Exophiala mansonii)(エクソフィアラ・カステラニー(Exophiala castellanii))に由来するものであってよい。好ましくは、粗酵素抽出物を化粧品または皮膚科用組成物に加える前に精製する。
【0013】
本発明はまた、黒色酵母由来の酵素抽出物を含有する組成物を皮膚に局所適用することにより皮膚を美白化する方法に関する。黒色酵母由来の酵素抽出物を含有する組成物を毛髪に局所適用することにより毛髪の色を明るくする方法についても論じる。さらに、本発明の組成物を局所適用することにより、皮膚の中のメラニンを分解する方法、およびUV-Bに誘導される日焼けを阻害する方法について記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
菌類の分野は重要性において動物および植物に等しい意義深い真核生物の群である。動物はそれらの栄養となる物質を消化するために胃を必要とするが、菌類は事実上それらの食物源の中または上で生活しており、その局所的な環境の栄養が枯渇した場合には単に新しい食物源に移って成長する。本質として、一般的に菌類は第一に分解生物である。菌類は、死んだ素材を分解し、それらの生態系を通じて栄養をリサイクルするという重要な生態学的役割を有する。菌類は腐敗した木性物質、土壌、落ち葉、水、死んだ動物および動物浸出液の中で自由生活できる。他のものは植物、動物および原核生物と共生群集を形成する。さらに別のものはヒトの感染の原因となる。
【0015】
黒色酵母は、その黒いコロニーを特徴とする酵母様菌類であり、その色素はメラニンの生産の結果である。黒色酵母は、エクソフィアラ、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ホルタエ(Hortae)、ワンギエラ(Wangiella)、ファエオアネロミケス(Phaeoannellomyces)等の属の生物体を含む。種々の研究により、前記の黒色菌類の毒性はメラニンの存在に影響されることが示されている。ワンギエラ・デルマチチディス(Wangiella dermatitidis)のメラニン生合成経路の遺伝子を破壊した後に、得られた突然変異体は好中球により殺されやすくなり、急性マウスモデルにおいて毒性が低くなることが示された。「ジヒドロキシナフタレンメラニン生合成およびワンギエラ(エクソフィアラ)・デルマチチディスにおける毒性に関与する遺伝子であるWdPKS1 の分子クローニングおよび解析」(Molecular Cloning and Characterization of WdPKS1, a Gene Involved in Dihydroxynaphthalene Melanin Biosynthesis and Virulence in Wangiella (Exophiala) dermatitiidis), Infection and Immunity, vol. 69, No. 3, pp.1781-1794 (March 2001)に論じられるように、前記の突然変異体は、野生型遺伝子の相補性によりメラニン生合成が再構成されると、好中球による殺傷に対して再び抵抗性を獲得し、マウスにおいて正常な毒性を示すことが示された。
【0016】
今回、驚くべきことに、メラニンを生産する黒色酵母は、メラニン分解酵素活性をも有すること、および黒色酵母に由来する酵素抽出物を含有する化粧品または皮膚科用製剤を皮膚に局所適用すると皮膚の美白に効果的であること、および黒色酵母に由来する酵素抽出物を含有する化粧品または皮膚科用製剤を毛髪に局所適用すると毛髪の色を明るくするのに効果的であることが発見された。
【0017】
子嚢菌門(嚢菌類)の黒色酵母エクソフィアラは、腐敗した木、有機廃棄物により栄養価が高まった土壌、汚水および水の中に広く見出される腐生菌類の広く分布する属である。
【0018】
エクソフィアラは最初は酵母様で、湿って、色は褐色から緑色がかった黒色であり、その後、短く軽い灰色がかった菌糸の発達のためにビロードまたは綿毛のような外観を示す。成熟したコロニーは、前側はオリーブブラックで、裏側は黒色である。この属には有性世代の形態学的証拠がない。培養物が成熟すると、最終的に分生子を有する有隔菌糸が形成される。この菌類は菌糸からの分生子の放出により拡散する。
【0019】
エクソフィアラ属は多くの種を含む。最も一般的なものには、エクソフィアラ・ジェアンセルメイ(E. jeanselmei)、エクソフィアラ・デルマチチディス(E. dermatitiidis)、エクソフィアラ・スピニフェラ(E. spinifera)、エクソフィアラ・カテラニー(E. catellanii)(マンソニー(mansonii))、エクソフィアラ・ベルゲリ(E. bergeri)、エクソフィアラ・モニリアエ(E. moniliae)、エクソフィアラ・ファエオムリホルミス(E. phaeomuriformis)、エクソフィアラ・ピシフィラ(E. pisciphila)、およびエクソフィアラ・サルモニス(E. salmonis)が含まれる。
【0020】
本発明のメラニン分解酵素抽出物は、American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, Vaが繁殖し、市販している、モルト寒天培地中のエクソフィアラ・マンソニーのコロニーを26℃で増殖させることにより調製することができる。好ましい株は、CBS 158.58と呼ばれるもので、凍結乾燥された形で入手できる。ATCCより入手したエクソフィアラ・マンソニーを、1リットルのスピナーフラスコ中で、好ましくはモルト酵素抽出物ブロス中、26℃の発酵プロセスで増殖させ、約106〜107コロニー形成単位/ml (cfu/ml)の範囲の密度に増殖させる。
【0021】
500 mlのバッチの培養液を遠心分離することにより酵素抽出物を収集し、約150 mM NaCl、約50 mMトリス緩衝液、および約1% NP40界面活性剤中に再懸濁した後、再懸濁液を約30分間音波処理する。次に、酵素抽出物を、粗生成物の形で、直接化粧品または皮膚科用製剤に加えてもよい。しかしながら、好ましくは、酵素抽出物を0.22μmフィルターにより濾過することにより精製する。精製された酵素抽出物溶液中の酵素の量は、精製した溶液の約1〜約95%、好ましくは約80〜95%である。
【0022】
酵素抽出物は、美白効果を有する量で化粧品または皮膚科用製剤に組み入れる。本明細書において使用する「美白効果を有する量」という用語は、Minolta Chromameterを用いて測定した場合に、皮膚または爪または毛髪の色を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%減少させる酵素抽出物の量を意味する。美白効果を有する量は、組成物全体の約0.01〜約99.9重量%の範囲の酵素抽出物であり得る。好ましくは、美白効果を有する量は、組成物全体の約0.05〜約20重量%の範囲の酵素抽出物である。より好ましくは、美白効果を有する量は、組成物全体の約0.05〜約5.0重量%の範囲の酵素抽出物である。最も好ましくは、美白効果を有する量は、組成物全体の約0.1〜2重量%の範囲の酵素抽出物である。
【0023】
本発明はまた、化粧品または皮膚科用製剤に美白(色を明るくする)効果を有する量の酵素抽出物を組み入れて、前記の組成物を皮膚、爪または毛髪に適用することによる、皮膚および爪を美白化する、および毛髪の色を明るくする方法を含む。美白組成物は、皮膚および爪に約2 mg/cm2皮膚表面で擦り込むことにより適用し、必要に応じて、例えば毎日再適用する。本発明の組成物は皮膚、爪、または毛髪への局所適用に便利な形に調製することができる。前記の形には、ゲル、クリーム、コロイド分散物、乳液(油中水型または水中油型)、懸濁液、溶液、ローション、泡、ムース、スプレー等が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、組成物は皮膚にはクリームの形で、爪にはクリームまたはスプレーの形で適用する。流さないローションまたはスプレーが毛髪に適用するための本発明の組成物の好ましい形である。
【0024】
本発明の組成物は、化粧品または皮膚科用に許容される媒体または担体、すなわち、美白効果または色を明るくする効果を有する量の酵素抽出物および組成物中に存在する他の活性成分を、酵素抽出物および他の活性物質に有害な作用を与えることなく、安全に標的領域に送達する担体と共に製剤する。好適な担体には、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルおよび鉱油が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の組成物は、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンゾフェノン、p-アミノ安息香酸(PABA)、オクチルジメチルPABA、アミルジメチルPABA、オクチルメトキシシンナメート、2-エトキシp-メトキシシンナメート、オキシベンゾン、ホモサレート、サリチル酸フェニル、グリセリルp-アミノベンゾエート、エチル-p-グリコシルイミドベンゾエート等を含むがこれらに限定されない1種以上のサンスクリーン剤と組み合わせてもよい。サンスクリーン剤はそれらの薬剤の典型的な使用量で使用する。
【0026】
芳香剤、香水、香味料、保存剤、皮膚軟化剤、防腐剤、色素、染料、着色剤、保湿剤、噴射剤、防水剤、被膜形成剤、ビタミンならびにその存在が化粧品的に、皮膚科的に、薬理的に、または他の理由で望ましい他のクラスの物質を含むがこれらに限定されない、種々の他の成分を場合により本発明の組成物に加えることができる。一般的な例が、「CTFA国際化粧品成分事典」(CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary)、第12版、The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association, Inc., Washington, D.C., 2004に記載されており、その内容を本明細書に組み入れる。美白組成物はメイクアップ製品に使用してもよい。
【0027】
本発明の組成物は、他の公知の美白剤、たとえば、コジック酸およびその誘導体、ヒドロキノンおよびその誘導体(前記のヒドロキノン誘導体の一つはアルブチンである)、甘草酵素抽出物およびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、およびアゼライン酸などのチロシナーゼ阻害剤;抗酸化剤;抗微生物薬;鎮痛薬;麻酔薬;ニキビ抑制薬;皮膚炎治療薬;かゆみ止め薬;抗炎症薬;角化防止剤;乾燥皮膚防止剤;制汗剤;乾癬治療薬;抗脂漏薬;老化防止剤;しわ防止剤;セルフタンニング剤;創傷治療薬;副腎皮質ステロイド;およびホルモンを含むがこれらに限定されない別の有用な活性成分を含んでもよい。製剤への前記の活性成分の混合は、本発明の黒色酵母由来のメラニン分解酵素抽出物と組み合わせた場合のその溶解度および/または安定性により決定される。しかしながら、別の活性成分の送達方式の選択は、美白組成物のために選択した送達方式に限定される。
【0028】
下記の限定を目的としない実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0029】
(実施例1)メラニン分解におけるエクソフィアラ・マンソニー抽出物の有効性
メラニン分解におけるエクソフィアラ・マンソニー抽出物の有効性を、発酵プロセスで酵母を増殖させ、第1、5、7、8、9、12および15日に0.22μmで濾過した発酵物を100μlアリコートの[3H]-合成メラニンの入った個々の微小遠心管に導入することにより証明する。PBSおよび成長培地を対照として用いる。管をパルスボルテックスした後、37℃の振動インキュベーターの中に置く。管を3日間インキュベートし、メラニンの分解を促進するために1日1回管をパルスボルテックスする。3日後に管をインキュベーターから取り出し、パルスボルテックスして、最大gで10分間遠心分離する。それぞれの管の上清をペレット化した物質から注意深く分離し、シンチレーションバイアルに導入する。それぞれの管のペレットを200μlのPBSに再懸濁し、別のシンチレーションバイアルに移す。それぞれのバイアルに、5 mlのシンチレーションカクテルを加える。[3H]の崩壊をプログラムA12を用いるLKB Wallacシンチレーションカウンターを使用して測定する。発酵物のメラニン分解における有効性を次の式により決定する。
【数1】

【0030】
図1に示されるように、[3H]の回収率は第9日から始まって直線的に増加し、第15日に最大の回収となる。第15日の発酵物による合成メラニンの分解の結果、49.2%の[3H]が回収される。
【0031】
(実施例2)メラニン分解におけるエクソフィアラ・マンソニー抽出物の有効性
第15日に濾過したエクソフィアラ・マンソニーの発酵物のメラニンの分解における有効性を実施例1に説明した通りに分析する。成長培地を対照として使用した。結果を図2に示す。第15日のエクソフィアラ発酵物による合成メラニンの分解の結果、37%の[3H]が回収される。**は、p=<0.01を表す。エラーバーはSD、n=3を表す。
【0032】
(実施例3)メラニン分解におけるエクソフィアラ・マンソニー抽出物の有効性
メラニンの分解におけるエクソフィアラ・マンソニー抽出物の有効性を、第15日に濾過した発酵物を50%、25%および12.5%の最終濃度でアッセイする点を除いて実施例2と同様の方法により証明する。25%および12.5%のサンプルは成長培地により希釈する。図3から、第15日の発酵物が用量に依存して合成メラニンを分解することが観察される。[3H]の回収率は、エクソフィアラ・マンソニー抽出物の最終濃度12.5%、25%および50%で、それぞれ26.6%、30.5%および40.4%である。***は、p=<0.001を表す。エラーバーはSD、n=3を表す。
【0033】
(実施例4)美白組成物の調製
【表1】

【0034】
室温および大気圧において、相Iの成分、相IIの成分、相IIIの成分、相IVの成分および相Vの成分を別々の容器の中で合わせる。相II、IVおよびVの成分をそれらの別々の容器の中で、手で混合する。相IIIの成分をプロペラミキサーを用いて混合する。相Iの成分をホモジナイジングミキサーの中に入れて撹拌する。合わせた相IIの成分を、合わせた相Iの成分に撹拌しながら加えて、均一になるまで撹拌する。次に、合わせた相IIIの成分を、相IおよびIIの成分の均一な混合物に合わせて、混合物を均一になるまで撹拌する。次に、合わせた相IVの成分、および次いで相Vの成分を、均一な相I、IIおよびIIIの成分の混合物に別々に加えて、均一になるまで撹拌し、最終生成物の柔らかいクリームを形成する。
【0035】
(実施例5)エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物の美白作用
エクソフィアラ・マンソニー由来の酵素抽出物の美白有効性を、公知のチロシナーゼ阻害剤であるコジック酸の有効性と比較して測定するために比較研究をおこなう。より具体的には、前記の研究は、マーカーとしてUV-Bに誘導される日焼けの退色を用いて、これらの物質の色を明るくする効果(日焼けの減少)を研究するように設計した。2つのサンプルを調製する。第1のサンプルは実施例4に記載された組成物を含有する。第2のサンプルは1%エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物に換えて2%コジック酸を用いる点を除いて、実施例4に記載されたものと同様の組成を有する。
【0036】
9人の協力者が研究に参加する。参加者は皮膚病を含む急性または慢性の病気の徴候の見られない正常な健康状態である。参加者は、18〜45歳の範囲の年齢の女性であり、皮膚タイプI-IIを有する。参加者は、試験の結果の分析に干渉する可能性がある炎症のある日焼け、発疹、擦過傷または火傷の痕を示していない。妊娠または授乳している協力者は研究から除く。さらにそれぞれの参加者の皮膚試験部位を、試験結果の分析に干渉する可能性がある過度の疣、母斑、ほくろ、日焼け(炎症を起こしているもの、健康なもの)、傷跡または活性な皮膚病変が存在するかどうか検査する。研究に選ばれた参加者は、研究の開始の2週間前から研究の間中、レチノイド、抗ヒスタミン薬または同様の薬剤を全身または局所使用していない。
【0037】
試験物質に対応して異なる領域、およびさらに未処理の照射した対照の領域を、それぞれの参加者の背中に印を付ける。各領域はおよそ4 cm2である。各参加者は各部位にUV-BのMEDを2回受ける。部位をフィルター(mm UG-5)を付けたXenon Arc Solar Simulator (150ワット)により照射して、皮膚をUV-BおよびUV-A照射に曝す。照射の後6日間日焼けを観察する。その時点で、皮膚の反射率の差異、Lを測定するMinolta Chromameterを用いて色の測定をおこなう。第6日に測定した未処理の照射した皮膚の基準の皮膚色値に対して、反射率の差異の値における変化、ΔL*を測定する。彼らのそれぞれの部位に試験物質を2 mg/cm2の量で適用して、10分間乾燥させる。製品による処理を1日1回、15日間続ける(すなわち、試験の第6日から第20日)。Chromameterの測定を第6、8、11、13および15日におこなう。
【0038】
結果を図4および5に示す。図4は、1%エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物の美白効果は対照の2%コジック酸のそれよりも大きいことを示している。比較は、第6日に測定された未処理の照射した皮膚の基準値と比較した、第6、8、11および15日のそれぞれの皮膚の反射率の差異の値における変化(ΔL*)により測定した。その結果は、本発明の酵素抽出物を含有する組成物が、2倍の量のコジック酸を含有する組成物と比較して、反射率の変化がより小さく、したがってより大きい美白効果を有する、すなわち、誘導された日焼けがより迅速に脱色することを示している。
【0039】
すべての時点の観察された反射率の値を記録し、それぞれの試験部位について曲線の下の面積を計算した。美白因子を、処理した部位の曲線の下の面積を未処理の部位から引いたものとして計算し、図5に示す。図5において観察されるように、エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物を含む組成物は3.1の美白因子を有し、1.8の美白因子を示す2倍の量のコジック酸を含有する組成物と比較して優れた美白作用を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、第1、5、7、8、9、12および15日に[3H]の回収率(%)により測定したエクソフィアラ・マンソニー発酵物の合成メラニンを分解する能力を示す図である。
【図2】図2は、第15日に[3H]の回収率(%)により測定した第15日のエクソフィアラ・マンソニー発酵物の合成メラニンを分解する能力を示す図である。
【図3】図3は、[3H]の回収率(%)により測定した第15日のエクソフィアラ・マンソニー発酵物による用量に依存する合成メラニンの分解を示す図である。
【図4】図4は、処理計画の第6、8、11、13および15日に測定した、反射率の値の変化により示された、2%コジック酸を含有する組成物および1%エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物を含有する本発明の組成物による、UV-Bに誘導される日焼けに対する皮膚美白効果を表すグラフである。
【図5】図5は、1%エクソフィアラ・マンソニー酵素抽出物を含有する本発明の組成物の皮膚美白効果と比較した2%コジック酸を含有する組成物の皮膚美白効果を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
美白効果を有する量の黒色酵母由来の酵素抽出物および化粧品または皮膚科用に許容される担体を含む、皮膚または爪に適用するための局所用化粧品または皮膚科用組成物。
【請求項2】
抽出物がエクソフィアラ由来の酵素抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酵素抽出物がエクソフィアラ・マンソニーから得られる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
酵素抽出物が精製された溶液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.05重量%〜約20重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.05重量%〜約5重量%の範囲の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.1重量%〜約2重量%の範囲の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
さらに別の美白剤、サンスクリーン剤、セルフタンニング剤、および皮膚軟化剤のうちの1種以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
黒色酵母由来のメラニン分解酵素抽出物を含む組成物を皮膚または爪に局所適用することを含む、皮膚または爪の美白の方法。
【請求項10】
メラニン分解酵素抽出物がエクソフィアラ由来の酵素抽出物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エクソフィアラ由来の酵素抽出物がエクソフィアラ・マンソニーから得られる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.05重量%〜約20重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.05重量%〜約5重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酵素抽出物が、組成物全体の約0.1重量%〜約2重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項4の組成物を皮膚または爪に局所適用することを含む、皮膚または爪においてメラニンを分解する方法。
【請求項16】
請求項4の組成物を皮膚に局所適用することを含む、UV-Bに誘導される日焼けを阻害する方法。
【請求項17】
黒色酵母由来のメラニン分解酵素抽出物および化粧品または皮膚科用に許容される担体を含む、毛髪に適用するための局所用化粧品または皮膚科用組成物であって、酵素抽出物が組成物全体の約0.05〜20重量%の範囲の量で存在する、前記組成物。
【請求項18】
酵素抽出物がエクソフィアラ・マンソニーから得られる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項17の組成物を毛髪に局所適用することを含む、毛髪の色を明るくする方法。
【請求項20】
請求項17の組成物を毛髪に局所適用することを含む、毛髪においてメラニンを分解する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−522308(P2009−522308A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548842(P2008−548842)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/062641
【国際公開番号】WO2007/097827
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】