説明

皮膚インピーダンスの検出

【課題】生体内に挿入したプローブの位置をほぼリアルタイムで検出する装置と方法を提供する。
【解決手段】電流をプローブ上の1つまたはそれ以上の電極と体表面に配置した複数の電極との間に流す。プローブと体表面電極それぞれとの間のインピーダンスを測定し、プローブの三次元位置座標をインピーダンス測定値に基いて求める。電極の剥離ならびに湿度および温度変化による体表面およびその体表面電極との界面のインピーダンス変化の動的補償を行う。この補償により、とりわけ心臓不整脈の治療のための心臓のマッピングまたは組織の切除などの医療処置の精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は生体内に置かれた物体の位置の検出に関する。特に、本発明はインピーダンス測定により生体内でのプローブの位置検出時に経験するアーティファクトの検出および補償に関する。
〔発明の背景〕
【0002】
多くの医療処置ではセンサー、チューブ、カテーテル、薬剤投与装置、およびインプラントなどの物体が体内に挿入される。多くの場合、治療処置時にリアルタイム撮像方法でそのような物体および周囲の状態を映像化して医師を支援している。しかしながら、ほとんどの場合リアルタイムの三次元撮像は不可能または望まれていない。代わりに、生体内部の物体のリアルタイム空間座標を得るためのシステムが多く利用されている。
【0003】
多くのそのような位置検出システムが従来技術で開発されまたは考えられてきた。いくつかのシステムでは、トランスデュサーまたはアンテナをセンサーとして内部物体に取り付け、体外で発生する磁界、電界、または超音波界を検知する。例えば、ウィットカンプ(Wittkampf)に与えられた米国特許第5,697,377号および第5,983,126号には、これら特許は参照して本明細書に組込まれるものであるが、3つのほぼ直交する交流信号を被験者(subject)に加えるシステムが記載されている。カテーテルに少なくとも1つの測定電極を取り付け、電圧をカテーテルの先端と基準電極間で検出する。電圧信号はその3つの直交信号に対応する信号成分を有し、それに基いて計算を行って体内における三次元のカテーテル先端位置を測定する。
【0004】
電極間の差電圧を検出する同様な方法がファイファー(Pfeiffer)に与えられた米国特許第5,899,860号、パネスク(Panescu)に与えられた米国特許第6,095,150号、スワンソン(Swanson)に与えられた米国特許第6,456,864号、およびナルデラ(Nardella)に与えられた米国特許第6,050,267号および米国特許第5,944,022号に開示されており、これらすべての特許は参照して本明細書に組込まれる。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明の実施例は、生体内部に置かれたプローブの位置をほぼリアルタイムで効率的に測定する装置および方法を示す。これらの実施例では、プローブに取付けた1つまたは複数の電極と体表面に配置した電極との間に電流を流す。このようにして、プローブと体表面上の各電極との間のインピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基いてプローブの三次元の位置座標を求める。体表面およびその電極との接触面の位置によるインピーダンスの変化を、新規な電極設計および駆動回路を使用して動的に補償する。そのようなインピーダンスの変化は、電極が剥がれ落ちたりする場合は急激であり、または、皮膚の湿度もしくは皮膚の温度の変化による場合は緩やかである。この補償により、とりわけ、心臓不整脈(cardiac arrhythmias)を治療するための心臓のマッピングまたは組織の切除(ablation)等の医療処置の精度が向上する。
【0006】
本発明は生体内位置検出方法を提供するものであり、その位置検出方法においては、第1電極および第2電極を複数の表面部位のうちの少なくとも1つに配置し、前記第2電極は前記第1電極とは電気的に絶縁されており、第1電流を前記第1電極から前記1つの表面部位にある生体の表面を介して前記第2電極に流して局部第1インピーダンスを測定し、少なくとも1つのプローブ電極を有するプローブを体内に挿入し、複数の第2電流を前記プローブ電極と前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方との間に前記複数の表面部位の1つ1つにある生体の表面を介して流し、前記第2電流に対するインピーダンスを測定する。この方法は、前記第1インピーダンスを補償することにより前記第2電流の体内インピーダンスを求めること、および、前記体内インピーダンスに応じて前記プローブの位置座標を測定することで、前記第2インピーダンスに応じてさらに実施される。
【0007】
本発明方法の一面において、前記電極配置は前記第1電極および前記第2電極を含む電気伝導性表面パッドを前記1つの表面部位に接着して行う。
【0008】
本発明方法の他の一面において、前記第1インピーダンスの補償は、前記パッドおよび前記1つの表面部位にある前記表面によって生じる前記第2インピーダンスのうちの1つの成分を求め、その成分を前記1つの第2インピーダンスから差引いて行う。
【0009】
本発明方法のさらに他の一面において、前記第1電流および前記第2電流は交流である。
【0010】
本発明方法のさらに他の一面によれば、前記第1インピーダンスの測定は前記第1電極を前記第2電極と直列に配置することを含み、第2インピーダンスの測定は前記第1電極を前記第2電極と並列に配置することを含む。
【0011】
本発明方法のさらに他の一面は局部第1インピーダンスを所定の間隔で繰返し測定することを含む。
【0012】
本発明方法のさらに他の一面によれば、前記プローブの体内挿入はそのプローブを使用して治療を行うことを含む。
【0013】
本発明方法のある一面によれば、前記プローブはカテーテルを含み、前記治療は心臓のマッピングを含む。
【0014】
本発明は、生体内に挿入するように構成された少なくとも1つのプローブ電極を備えたプローブ等の位置を検出する装置を提供する。複数の電気伝導性体表面パッチ(electroconductive body surface patches)を体表面のそれぞれの表面部位に固定する。前記体表面パッチのそれぞれは第1電極および第2電極を有し、前記第2電極は前記第1電極と電気的に絶縁されている。本発明装置は、較正動作モード時には前記第1電極を前記第2電極に直列接続し、検出動作モード時には前記第1電極を前記第2電極に並列接続する電気回路系と、コントローラとを具備し、前記コントローラは前記電気回路系を制御するように動作可能であり、前記プローブおよび体表面パッチと接続するように構成されていて、前記較正動作モード時には第1電気信号をパッチの前記第1電極および第2電極に流し、第2電気信号をそれぞれ生体を介して前記プローブ電極と前記体表面パッチとの間に流す。前記コントローラは前記較正動作モード時には前記体表面の局部電気インピーダンス、および、前記体表面パッチの1つ1つと前記体表面との界面の局部電気インピーダンスを求め、位置検出動作モード時には前記第2電気信号のそれぞれのインピーダンス特性を測定して前記プローブの位置座標を求める。前記第2電気信号のインピーダンス特性は前記局部電気インピーダンスのそれぞれに場合に応じて前記コントローラが調整する。
【0015】
本発明装置の他の一面によれば、前記コントローラは前記表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電圧を維持し、前記一定電圧で電流を測定してそれぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている。
【0016】
本発明装置のさらに他の一面によれば、前記コントローラは前記表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電流を維持し、前記一定電流で電圧を測定してそれぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている。
【0017】
本発明装置のさらに他の一面によれば、前記プローブは被験者(subject)の治療を行うように構成されている。
【0018】
本発明装置のさらに他の一面によれば、前記体表面パッチは前記体表面に接触する接着層を有する。
【0019】
本発明装置のさらに他の一面においては、前記コントローラはインターバルタイマー(interval timer)により計時した時間間隔に応じて前記較正動作モードと前記検出動作モードとを交互に行うように動作する。
【0020】
本発明は、例証として作成された本発明の詳細な記述を後続の図面と共に読むことで、よりよく理解される。図面では、類似の構成要素に対しては類似の参照符号を付与している。
【0021】
〔発明の詳細な説明〕
以下の記述において、本発明の十分な理解を得るために多くの具体的な詳細説明がなされている。しかし、それらの具体的な詳細がなくとも本発明が実施可能であることは当業者には明らかであろう。他の例では、本発明が不必要に曖昧になるのを避けるため周知の回路、制御ロジック、および従来のアルゴリズムと処理のためのコンピュータプログラム指令の詳細を細かく示していない。
【0022】
システム概要
最初に図1を参照すると、位置検出システム20が図示されており、このシステムは本発明の一実施例により構成され動作する。システム20は、被験者26の心臓24の心房のような体腔に挿入するカテーテル22などのプローブの位置を測定するのに使用する。通常、カテーテルは心臓内の電位のマッピングまたは心臓組織の切除などの診断または治療処置に用いる。カテーテルまたは他の体内挿入装置は他の目的でそれ自体または他の治療装置と組合わせて使用もできる。
【0023】
カテーテル22の遠位端には以下に述べる電極を1つまたは複数取付けてある。これらの電極は以下に述べるようにカテーテル22の挿入管に通したワイヤで制御装置28内の駆動回路に接続されている。制御装置はケーブル30に通したワイヤで体表面電極に接続されていて、その体表面電極は通常接着性の電気伝導性体表面パッチ32,34,36に組込まれている。パッチ32,34,36はプローブ近辺の体表面上の適宜な位置に配置すればよい。例えば、心臓に適用する場合は、パッチ32,34,36は通常被験者26の胸部のまわりに配置される。
【0024】
通常、パッチ32,34,36は体の外表面上に配されるが、いくつかの適用例では、それらのいくつか、または全部を内表面上に配置できる。パッチ同士または被験者の体の座標に対するパッチの配向については特別な条件はないが、パッチを一箇所に集めるのではなく間隔をおいて配置すればより正確さが増すことになる。パッチを固定した軸に沿って配置する必要はない。従って、パッチは実行中の医療処置にできるだけ邪魔にならないように配置できる。制御装置28は心臓24内のカテーテル22の位置座標を、カテーテル22とパッチ32,34,36との間で測定した調整ずみのインピーダンスに基いて求める。インピーダンスの調整の詳細については以下に述べる。制御装置は表示装置40を駆動し、この表示装置は体内のカテーテルの位置を表示する。カテーテル22は心臓のマップ(map)42、例えば電気的なマップに使用でき、カテーテル上の電極は位置検出および心臓組織内に生じた電気インピーダンスの測定を交互に行うよう使用する。カテーテルの位置はこのマップまたは心臓の他の映像に重ね合せて表示できる。
【0025】
次に図2はカテーテル22(図1)の詳細模式図であり、カテーテルは本発明の一実施例に基いて構成され動作をおこなう。カテーテル22上に配置された電極44,46,48とパッチ32,34,36との間の相互作用が示されている。電極44,46,48は適当な形状および寸法でよく、また電気生理学的検出または組織の切除などの他の目的にも用いることができる。図示の例では、電極44,46,48のそれぞれはパッチ32,34,36(図1)のすべてに連通している。制御装置28(図1)は各カテーテル電極とすべての体表面電極との間に電流を流し、その電流を使ってカテーテル電極とパッチ32、34、36との間のインピーダンスを測定する。この測定インピーダンスに基いて、制御装置28が体表面電極に対するカテーテルの位置を求める。あるいは、より多数またはより少数の電極を用いてもよい。例えば、制御装置28を1つのカテーテル電極と複数の体表面電極との間の電流を多重化するように設定してもよい。他の例としては、4つ以上の体表面電極を用いて精度を上げてもよい。
【0026】
次に図3は本発明の一実施例に基くシステム20(図1)の構成要素を示すブロック図である。上述の制御装置28は電流供給およびインピーダンス測定のための回路系を有する。3つの回路50,52,54のそれぞれはカテーテル電極およびパッチ32,43,36の生体接触面からなる閉ループに電流を流す。具体的には、回路50は電極44とパッチ32,34,36の間に在る体組織58に電流を流し、回路52は電極46とパッチ32,34,36の間に在る体組織60に電流を流し、回路54は電極48とパッチ32,34,36の間に在る体組織62に電流を流す。これら駆動回路により発生した電流はそれぞれ回路50,52,54を異なる周波数で動作するよう設定することで弁別しうる。
【0027】
各回路50,52,54は体組織58,60,62を通るそれぞれのループ内の電気的インピーダンスを測定する。これらのインピーダンス測定値はコントローラまたは処理装置56へ送られ、その測定値を用いて体表面電極に対するカテーテルの位置座標を算出する。これらの位置座標に基いて、処理装置56は上述したように表示装置40に表示されるリアルタイムの情報を発生する。
【0028】
本発明の一実施例では、回路50,52,54は定電圧信号を発生する。回路50,52,54はそれぞれのループを流れる電流を測定してインピーダンスを求め、これらのインピーダンス値を利用して上述の位置座標を算出する。
【0029】
本発明の第2の実施例では、回路50,52,54は定電流信号を発生する。従って、電流ドライバーの電圧は処理装置56により測定されてインピーダンスを求め、これらのインピーダンス値を利用して位置座標を算出する。
【0030】
上述の2つの実施例のいずれにおいても、測定したインピーダンスは電極およびパッチ間の距離に比例する。これらの距離を利用してカテーテルの先端位置を、例えば米国特許第5,443,489号およびベン‐ハイム(Ben-Haim)等によるPCT特許公報WO96/05768に記載の周知な方法によって三角測量できる。これらの先行文献は参照して本明細書に組込まれる。この場合、最初の基準測定を既知の解剖学的(anatomical)位置(例えば、心臓内の目標位置)にあるカテーテル、または既知の位置にある別の基準カテーテルを用いて行ってインピーダンススケールを較正することで測定精度をさらに上げることができる。
【0031】
システム20(図1)はカテーテルを用いて不整脈のような心臓の状態の診断または治療に使用できる、このシステムは本発明の一実施例を示している。システム20はまた血管形成(angioplasty)またはアテローム切除(atherectomy)を伴うかもしれない血管内疾患(intravascular ailments)の診断または治療にも使用できる。システム20の原理はまた、必要な変更を加えて、脳、脊柱、骨格関節(skeletal joints)、膀胱、消化管(gastrointestinal tract)、前立腺(prostrate)および子宮(uterus)などの他の身体構造の診断または治療用の位置検出システムにも準用できる。
【0032】
体表面パッチ
次に図4は電気伝導性体表面パッチ70とそれに関連して位置検出動作用に構成された回路系を示す概略図である。体表面パッチ70はパッチ32、34、36(図1)のうちの1つまたは複数として使われる。普通、すべてのパッチ32、34、36は体表面パッチ70の例として挙げたものである。上述のインピーダンス測定を正確に行うために、体表面のインピーダンス、例えば皮膚のインピーダンスのベースラインが必要である。体表面パッチ70を本発明に基いて使用すれば、体表面インピーダンスの変化によるカテーテル22(図1)の位置測定への影響を減らすことができる。
【0033】
体表面パッチ70は接着性電極パッドで、接着層78により体表面76に接着される2つの電気的に絶縁された体表面電極72、74を有している。電極72、74は絶縁部材80により分離されている。上述したように、カテーテル22(図2)は電流を被験者の体を介して電極72、74に流す。二重ワイヤ82、84はそれぞれの電極72、74から処理装置56およびドライバー86に電流を送る。ドライバー86は回路50、52、54(図3)のそれぞれにおけるAC電圧または電流源でよい。または、ドライバー86は他の電源でもよい。カテーテル22の位置を検知しているときは、ワイヤ82、84はスイッチ88により電気的に相互接続されて、図4に示すように電極72、74がドライバー86に並列に接続される。アメリカ合衆国コロラド州、80301-3299、ボウルダー、ロングバゥ・ドライブ5920所在のバレイラブ(Valleylab, 5920 Longbow Drive, Boulder, Colorado 80301-3299)が市販しているREMポリヘシブ(REM PolyHesive)(商標)II患者側リターン電極(Patient Return Electrodes)が体表面パッチ70として使用するのに適している。
【0034】
ドライバー86から見た全インピーダンスZは体表面および体表面と体表面パッチ70との界面の局部電気インピーダンスZlocalと、カテーテル22および体表面76の間の体内インピーダンスZbとの和である。局部電気インピーダンスZlocalの成分は電極72および体表面76のインピーダンスZs1、ならびに並列な電極74および体表面76のインピーダンスZs2である。
【数1】


【0035】
処理装置56で算出した全インピーダンスZは次式で近似できる。
【数2】



この動作モードにおいては、体表面パッチ70は従来の単一構造の体表面電極として機能する。
【0036】
次に図5は体表面パッチ70と較正動作モード用に構成した関連回路系を示す概略図である。図5は図4と類似である。しかしながら、カテーテル22はここではスイッチ90によりドライバー86から切離されている。スイッチ88は電極72、74をドライバー86に直列に接続している。したがって、ドライバー86はインピーダンスZs1とZs2が並列である較正インピーダンスZcalを生じる。処理装置56は次のようにZcal計算する。
【数3】

【0037】


【数4】



および、
【数5】


【0038】
処理装置56は、スイッチ90、88を図4の状態と図5の状態との間で切換えるための適当な間隔計時回路系またはソフトウエアを有している。
【0039】
必要ならば、もし順次測定された較正インピーダンスZcalの変化が閾値以上になったときは、警報を発するようにしてもよい。そのような変化は電極の剥離または断線を示し、いずれにしても補償後であってもそれぞれの身体インピーダンス測定の信頼性を損なうものである。
【0040】
動作
次に図6は、本発明の開示した実施例に基いてインピーダンス測定を利用して生体内のプローブの位置を検知するために体表面インピーダンスを検出する方法を示すフローチャートである。このプロセスの各ステップを提示を分かり易くするために図6において一定の順序で示している。しかし、ステップの多くは平行、非同期または別の順序で行えることは明らかである。
【0041】
最初のステップ92では、二重電極体表面パッドを、図4および図5に関して上述したように、被験者の体表面の通常挿入し写像されるプローブの位置の近くの都合のよいところに定置する。
【0042】
次に、ステップ94で体表面パッドの1つを選択する。
【0043】
次に、ステップ96で選択した体表面パッドの電極を図5に示す直列回路として接続する。試験電流を一方の電極から被験者の皮膚または他の体表面を介して他方の電極に流す。ベースラインインピーダンスを測定し記憶しておく。
【0044】
ここで制御は判定ステップ98に進み、さらに他の体表面パッドもテストすべきかどうかを調べる。判定ステップ98の判定がYesならば、制御はステップ94に戻る。
【0045】
判定ステップ98の判定がNoであれば、制御はステップ100に進む。プローブを構成し体の動作領域、例えば被験者の心臓の左心室に挿入する。
【0046】
次に、ステップ102で間隔計時タイマーをセットする。このタイマーの目的は時間間隔を設定することで、その時間間隔毎にステップ94、ステップ96および判定ステップ98で行ったインピーダンス測定が繰返される。この時間間隔の長さは重要ではない。しかし、時間間隔が長すぎると、その間に発生する1つまたはそれ以上の体表面インピーダンスの変化によりプローブの位置検出に誤差を生じかねない。もし間隔が短すぎると、体表面パッドのテスト中に生じたシステム負荷(system overhead)がプローブの位置測定ができる回数を制限する可能性がある。約1秒の間隔が実用的であることが分かっている。
【0047】
次に、ステップ104で体表面パッドを図4に示すように構成して体内のプローブの位置をマップして、プローブと体表面パッドとの間のインピーダンスを測定し、そして上述したように三角測量を行う。三角測量の計算に利用するインピーダンスを測定するときに、各隊表面パッドの局部インピーダンスの記憶値をプローブと体表面との間の実際の体内インピーダンスを求めるために全インピーダンス値から差引く。このようにして、体表面インピーダンスの変化の影響を取除く。これによりプローブ位置の測定精度が向上する。
【0048】
ここで制御は判定ステップ106に進み、ステップ102で設定したタイマーが終了したかどうかを調べる。もし判定ステップ106の判定がNoであれば、制御はステップ104に戻り、プローブ位置の決定を更新する。
【0049】
もし判定ステップ106の判定がYesならば、体表面インピーダンスを新たに測定することになる。制御はステップ108、ステップ110および判定ステップ112からなる一連のステップに進む。これらのステップはそれぞれステップ94、ステップ96およびステップ98と同様に行われ、簡略にするためその詳細は再記しない。判定ステップ112の判定が一連のステップの終了を示すと、制御はステップ102に戻り、間隔計時タイマーをリセットする。ここでプローブの位置座標は、上述したように更新された体表面インピーダンスを補償することにより求められる。
【0050】
本発明はここに示し説明したことに限定されないことは当業者には理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、これまでの記述から当業者であれば想到するであろう、従来技術にはない本発明の変更および変形のみならず、上述した様々の特徴の組合わせまたは部分的な組合わせも含まれる。
【0051】
〔実施の態様〕
(1)生体内の位置検出方法であって、前記生体が表面および前記表面上にある複数の表面部位を有する、方法において、
第1電極および第2電極を、前記複数の表面部位の1つに配置するステップであって、前記第2電極は前記第1電極とは電気的に絶縁されている、ステップと、
前記1つの表面部位にある前記生体の前記表面を介して、前記第1電極から前記第2電極へ第1電流を流すことにより、局部第1インピーダンスを測定するステップと、
少なくとも1つのプローブ電極を有するプローブを、前記生体内に挿入するステップと、
前記複数の表面部位のそれぞれにある前記生体の前記表面を介して、前記プローブ電極と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方との間に複数の第2電流を流すステップと、
前記第2電流に対する第2インピーダンスを測定するステップと、
前記第2インピーダンスに応じて、前記第1インピーダンスを補償することにより前記第2電流の体内インピーダンスを測定するステップと、
前記体内インピーダンスに応じて前記プローブの位置座標を求めるステップと、
を含む、方法。
(2)実施の態様1に記載の方法において、
前記第1電極および前記第2電極を配置するステップは、前記第1電極および前記第2電極を含む電気伝導性接着パッドを前記1つの表面部位に接着することにより行われる、方法。
(3)実施の態様2に記載の方法において、
前記第1インピーダンスを補償するステップは、前記パッドおよび前記1つの表面部位にある前記体表面によって生じる前記第2インピーダンスのうちの1つの成分を求め、前記成分を前記1つの第2インピーダンスから差引くことにより行われる、方法。
(4)実施の態様1に記載の方法において、
前記第1電流および前記第2電流は交流である、方法。
(5)実施の態様1に記載の方法において、
前記第1インピーダンスを測定するステップは、前記第1電極を前記第2電極に直列回路として接続するステップを含み、
前記第2インピーダンスを測定するステップは、前記第1電極を前記第2電極に対し並列回路として接続するステップを含む、
方法。
(6)実施の態様1に記載の方法において、
局部第1インピーダンスを所定の時間間隔で繰返し測定するステップをさらに含む、方法。
(7)実施の態様1に記載の方法において、
前記プローブを挿入するステップは、前記プローブを使用して前記生体に治療を施すステップを含む、方法。
(8)実施の態様7に記載の方法において、
前記プローブはカテーテルを含み、
前記治療を施すステップは、前記生体の心臓をマッピングするステップを含む、
方法。
(9)位置検出用装置において、
プローブであって、前記プローブは少なくとも1つのプローブ電極を有し、かつ、被験者の生体内に挿入するように構成されており、前記生体は体表面を有する、プローブと、
複数の電気導電性体表面パッチであって、前記体表面パッチは前記体表面のそれぞれの表面部位に固定するように構成され、かつ、それぞれ第1電極および第2電極を有し、前記第2電極は前記第1電極とは電気的に絶縁されている、体表面パッチと、
較正動作モードでは前記第1電極を前記第2電極に直列回路として接続し、位置検出動作モードでは前記第1電極を前記第2電極に対し並列回路として接続する電気回路系と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電気回路系を制御するように動作可能であり、かつ、前記プローブおよび前記体表面パッチと接続するよう構成されており、前記較正動作モードでは第1電気信号を前記体表面パッチの前記第1電極および第2電極に流し、第2電気信号をそれぞれ前記生体を介して前記プローブ電極と前記体表面パッチとの間に流し、前記コントローラが、前記較正動作モードでは前記体表面および前記体表面と前記体表面パッチとの界面の局部電気インピーダンスを求め、前記位置検出動作モードでは前記第2電気信号のそれぞれのインピーダンス特性を測定して前記プローブの位置座標を求め、前記第2電気信号の前記インピーダンス特性を前記局部電気インピーダンスのそれぞれの場合に応じて調整するように動作可能である、コントローラと、
を有する、装置。
(10)実施の態様9に記載の装置において、
前記コントローラは前記体表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電圧を維持し、前記一定電圧で電流を測定して前記それぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている、装置。
(11)実施の態様9に記載の装置において、
前記コントローラは前記体表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電流を維持し、前記一定電流で電圧を測定して前記それぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている、装置。
(12)実施の態様9に記載の装置において、
前記プローブは前記被験者の治療を行うように構成されている、装置。
(13)実施の態様9に記載の装置において、
前記体表面パッチは前記体表面に接触する接着層を有する、装置。
(14)実施の態様9に記載の装置において、
タイマーをさらに有し、
前記コントローラは前記タイマーにより計時した時間間隔に応じて前記較正動作モードと前記検出動作モードとを交互に行うように動作する、
装置。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の開示された実施例に基いて構成し動作する位置検出システムを示す図。
【図2】本発明の開示された実施例に基いて構成し動作する図1に示す位置検出システムに使用するカテーテルの概略図。
【図3】本発明の開示された実施例に基いて構成し動作する図1に示す位置検出システムの電気回路系および制御装置を示すブロック図。
【図4】本発明の開示された実施例に基いて位置検出動作モード用に構成された電気伝導性体表面パッチとそれに関連する電気回路系を示す概略図。
【図5】本発明の開示された実施例に基いて較正動作モード用に構成された図4の電気伝導性体表面パッチと電気回路系を示す概略図。
【図6】本発明の開示された実施例に基いて生体の体表面インピーダンスを検出する方法を示すフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の位置検出方法であって、前記生体が表面および前記表面上にある複数の表面部位を有する、方法において、
第1電極および第2電極を、前記複数の表面部位の1つに配置するステップであって、前記第2電極は前記第1電極とは電気的に絶縁されている、ステップと、
前記1つの表面部位にある前記生体の前記表面を介して、前記第1電極から前記第2電極へ第1電流を流すことにより、局部第1インピーダンスを測定するステップと、
少なくとも1つのプローブ電極を有するプローブを、前記生体内に挿入するステップと、
前記複数の表面部位のそれぞれにある前記生体の前記表面を介して、前記プローブ電極と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方との間に複数の第2電流を流すステップと、
前記第2電流に対する第2インピーダンスを測定するステップと、
前記第2インピーダンスに応じて、前記第1インピーダンスを補償することにより前記第2電流の体内インピーダンスを測定するステップと、
前記体内インピーダンスに応じて前記プローブの位置座標を求めるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
位置検出用装置において、
プローブであって、前記プローブは少なくとも1つのプローブ電極を有し、かつ、被験者の体内に挿入するように構成されており、前記生体は体表面を有する、プローブと、
複数の電気導電性体表面パッチであって、前記体表面パッチは前記体表面のそれぞれの表面部位に固定するように構成され、かつ、それぞれ第1電極および第2電極を有し、前記第2電極は前記第1電極とは電気的に絶縁されている、体表面パッチと、
較正動作モードでは前記第1電極を前記第2電極に直列回路として接続し、位置検出動作モードでは前記第1電極を前記第2電極に対し並列回路として接続する電気回路系と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電気回路系を制御するように動作可能であり、かつ、前記プローブおよび前記体表面パッチと接続するよう構成されており、前記較正動作モードでは第1電気信号を前記体表面パッチの前記第1電極および第2電極に流し、第2電気信号をそれぞれ前記生体を介して前記プローブ電極と前記体表面パッチとの間に流し、前記コントローラが、前記較正動作モードでは前記体表面および前記体表面と前記体表面パッチとの界面の局部電気インピーダンスを求め、前記位置検出動作モードでは前記第2電気信号のそれぞれのインピーダンス特性を測定して前記プローブの位置座標を求め、前記第2電気信号の前記インピーダンス特性を前記局部電気インピーダンスのそれぞれの場合に応じて調整するように動作可能である、コントローラと、
を有する、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記コントローラは前記表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電圧を維持し、前記一定電圧で電流を測定して前記それぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている、装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置において、
前記コントローラは前記表面部位のそれぞれと前記プローブ電極との間で一定電流を維持し、前記一定電流で電圧を測定して前記それぞれのインピーダンス特性を測定するように構成されている、装置。
【請求項5】
請求項2に記載の装置において、
前記プローブは前記被験者の治療を行うように構成されている、装置。
【請求項6】
請求項2に記載の装置において、
前記体表面パッチは前記体表面に接触する接着層を有する、装置。
【請求項7】
請求項2に記載の装置において、
タイマーをさらに有し、
前記コントローラは前記タイマーにより計時した時間間隔に応じて前記較正動作モードと前記検出動作モードとを交互に行うように動作する、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−61612(P2007−61612A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−229614(P2006−229614)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】