説明

皮膚外用剤

【課題】 トリテルペン酸、トリテルペン酸リン酸エステル誘導体を安定に含有できる製剤を提供する。
【解決手段】 油中水剤形に、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等の多価アルコ−ル系保湿剤を併用させることにより、トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を、乳化状態を損ねることなく安定に配合出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料(但し、医薬部外を含む)などに好適な皮膚外用剤に関し、更に詳しくは、トリテルペン酸類を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トリテルペンは、高麗人参などのウコギ科の植物類、チョレイ、サルノコシカケなどの真菌類をはじめとするほとんどの生薬の基源となる植物体中に存在し、これまでにも数多くのトリテルペン骨格を有する化合物が単離精製されている。これらのトリテルペン系化合物中において、カルボキシル基を有するトリテルペン酸類は、メラニン産生抑制作用、抗炎症作用、コラ−ゲン繊維束構造の再構築作用(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)を有しており、有用な化粧品、食品成分として配合されている。しかしながら、多くのトリテルペン骨格を有する化合物は、疎水性の高い化合物であるために水性成分に対する溶解性が極めて低く、化粧料成分として利用する場合には、配合量や処方化形態に制限が加わることが少なくなかった。特に、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの塩は、しわ改善作用、美肌作用、抗酸化作用、メラニン産生抑制作用、抗炎症作用などの様々な生物活性を示すことが知られているが、これらの作用を十分に発揮させるまでの配合が困難であった。このため、溶解性の改善を目指した誘導体化、塩形成などが行われた結果としてウルソ−ル酸ベンジルエステル、リン酸エステルなどが見出された。特に、特に、ウルソ−ル酸の水酸基のひとつをリン酸化したリン酸化ウルソ−ル酸は、美白作用(例えば、特許文献3を参照)及び肌荒れ改善作用(例えば、特許文献4を参照)を示すこと、更には、これらを従来にない高濃度で化粧料に含有させる技術も既に知られている(例えば、特許文献5を参照)。しかしながら、この様な技術においては、系の経時的な安定性が課題となる場合が存し、トリテルペン酸類の可溶化、結晶化などの安定性上の課題の解決手段が求められていた。
【0003】
この様な難溶性成分を、溶解状態で安定に配合できる製剤のひとつに、有機変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物を利用した、界面面積の大きい、高内相油中水剤形を利用する方法が存する(例えば、特許文献6を参照)が、トリテルペン酸類においては、この様な剤形のみでは十分に安定性を確保することは容易ではなかった。即ち、トリテルペン酸類の溶状を安定化しようとすれば乳化安定性を損なう場合が存し、乳化安定性を向上せしめれば、トリテルペン酸類の溶状を損なう場合が存した。
【0004】
一方、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等の多価アルコ−ル類には、優れた保湿作用が存し、化粧料原料として使用されている(例えば、特許文献7を参照)が、この様な成分の存在により、油中水乳化剤形において、前記トリテルペン酸類の溶状を、乳化安定性を損なうことなく、安定化できることは、全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−005727号公報
【特許文献2】特開平9−143050号公報
【特許文献3】WO2006132033号公報
【特許文献4】特開2007−246459号公報
【特許文献5】特開2007−308385号公報
【特許文献6】特開平10−28858号公報
【特許文献7】特開2007−186442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、油中水乳化剤形において、前記トリテルペン酸類の溶状を、乳化安定性を損なうことなく、安定化できる製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、トリテルペン酸類を安定に配合できる製剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、油中水剤形に、糖類系保湿剤を併用することにより、この様な安定化ができることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
<1> 1)多価アルコ−ル、2)トリテルペン酸、その誘導体及びそれらの塩から選択される成分とから選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
<2> 前記多価アルコ−ルが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
<3> 前記トリテルペン酸が、ウルソ−ル酸であることを特徴とする、<1>又は<2>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<4> 油中水乳化形態であることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<5> 更に、有機変性粘土鉱物を含有することを特徴とする、<4>に記載の皮膚外用剤。
<6> 前記有機変性粘土鉱物における有機変性成分は、ジ短鎖アルキル長鎖ジアルキルアンモニウム塩であることを特徴とする、<5>に記載の皮膚外用剤。
<7> 前記有機変性粘土鉱物における粘土鉱物は、モンモリナイト系粘土鉱物であることを特徴とする、<5>又は<6>に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油中水乳化剤形において、前記トリテルペン酸類の溶状を、乳化安定性を損なうことなく、安定化できる製剤を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、トリテルペン酸類を安定に配合できる製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるトリテルペン酸誘導体
本発明の皮膚外用剤は、トリテルペン酸、トリテルペン酸誘導体及びそれらの塩から選択される成分を必須成分として含有することを特徴とする。前記トリテルペン酸誘導体としては、化粧料などの皮膚外用剤の分野で使用されているものであれば特段の限定なく適応することができ、例えばウルソ−ル酸、オレアノ−ル酸、ベツリン酸等が好適に例示できる。また、前記トリテルペン酸誘導体としては、トリテルペン酸のエステル、アミドなどが好適に例示でき、中でも、これらの中ではウルソ−ル酸が特に好ましく例示できる。また、前記トリテルペン誘導体としては、ウルソ−ル酸の炭素数1〜20の炭化水素エステル又はウルソ−ル酸のリン酸エステル等が好適に例示できる。前記炭素数1〜20の炭化水素エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、ラウリルエステル、セチルエステル、ステアリルエステル、イソステアリルエステル、オレイルエステル等の脂肪族エステル、ベンジルエステル、フェネチルエステル等の芳香環を有する炭化水素基エステル等が好適に例示できる。かかる成分は、アルカリ存在下、ハロゲン化炭化水素を反応させるなど、常法に従って、トリテルペン酸より誘導できる。トリテルペン酸エステルは、市販のトリテルペン酸を出発原料とし、水素化ナトリウムを用いてナトリウム塩とした後、ハロゲン化炭化水素を反応させることにより得られる。例えば、リン酸トリテルペン酸は、市販のトリテルペン酸をテトラゾ−ル存在下、1〜3倍当量のジエチル−N,N−ジエチルホスホロアミデ−トと処理し、t−ブチルハイドロパ−オキシドを反応させ、トリテルペン酸のメチルホスフェ−トとした後、更に、トリメチルシリルブロミドを作用させることにより合成することができる。これらの塩としては、皮膚外用剤に使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、モノエタノ−ルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩が好適に例示できる。かかる成分は、皮膚に対して、抗炎症作用、メラニン産生抑制作用、光照射によるコラ−ゲン繊維束構造の再構築促進作用などを発現するが、本発明の皮膚外用剤においては、後記多価アルコ−ルとともに働いて、紫外線照射によって皮膚が受けたダメ−ジを、炎症が起こる前に消去し、重篤な症状発現に至らないように予防する効果を奏する。この様な効果を奏するためには、前記トリテルペン酸、トリテルペン酸誘導体及びそれらの塩から選択される1種乃至は2種以上を、総量で、0.001質量%〜5質量%含有することが好ましく、0.1質量%〜3質量%含有することがより好ましい。これは少なすぎると前記効果を奏しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0011】
(2) 本発明の皮膚外用材の必須成分である多価アルコ−ル
本発明の皮膚外用剤は、多価アルコ−ルから選択される成分を含有することを特徴とする。多価アルコ−ル系保湿剤としては、例えば、多価アルコ−ルを1種乃至は2種以上を必須成分として含有することを特徴とする。ここで言う多価アルコ−ルとしては、具体的には、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、ペンタメチレングリコ−ル、2−ブテン−1,4−ジオ−ル、ヘキシレングリコ−ル、オクチレングリコ−ル等の2価の多価アルコ−ル類;グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,2,6−ヘキサントリオ−ル等の3価の多価アルコ−ル 類;ペンタエリスリト−ル等の4価の多価アルコ−ル 類;キシリト−ル、フルクト−ス等の5価の多価アルコ−ル 類;ソルビト−ル、マンニト−ル等の6価の多価アルコ−ル 類;デンプン分解糖還元アルコ−ル等の多価アルコ−ル 類;ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、テトラエチレングリコ−ル、ジグリセリン、ポリエチレングリコ−ル、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール 重合体;POE−テトラハイドロフルフリルアルコ−ル、POP−ブチルエ−テル、POP・POE−ブチルエ−テル、トリポリオキシプロピレングリセリンエ−テル、POP−グリセリンエ−テル、POP・POE−ジグリセリンエ−テル、POP−グリセリンエ−テルリン酸、POP・POE−ペンタエリスリト−ルエ−テル等のポリアルキレンオキシドエ−テル等が挙げられる。より好ましくは、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルから選択されるものが例示でき、ポリエチレングリコ−ル200〜1000、1,3−ブチレングリコ−ル、グリセリン、プロピレングリコ−ルが特に好ましく、ポリエチレングリコ−ル200〜1000が取り分け好ましい。これらは唯一種を含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の皮膚外用組成物に於ける該多価アルコ−ルの好ましい含有量は、0.1〜40重量%であり、更に好ましくは、0.1〜20重量%である、これは、多すぎると皮膚刺激などの副作用が生じる場合があり、少なすぎるとリパ−ゼのエステル化の作用がでない場合があるからである。
【0012】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、通常皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定なく適応することができ、医薬部外品を含有する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、化粧料である。これは化粧料に於いては、真皮到達性が望まれて、且つ、該真皮到達が為されにくい有効成分が多いためである。かかる化粧料としては、例えば、化粧料などのロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。更にその剤形としては、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ロ−ション製剤、水中油入荷製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に好ましく例示できる。
【0013】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物などが好ましく例示できる。
【0014】
この様な任意成分の内、特に好ましいものは、有機変性粘土鉱物が例示できる。ここで有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物が例示される。クオタニウムとは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。中でも、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリドが特に好ましい。これは1分子中に長鎖アルキル基を2つ有するため、立体的に油相を保持する構造を作りやすい為である。ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等は、粘土鉱物とともに安定な油中水性成分乳化構造を形成することができるので好ましい。特に、水性成分が水中油乳化物であった場合には、前記水中油乳化物にあまり影響を与えずに連続相を油相とする乳化物を形成できるので、油中水中油乳化剤形には好ましい。
一方、4級アミノ基を有する化合物で変性される粘土鉱物(未変性粘土鉱物)としては、従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物であれば特段の限定無く使用することができる。従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリーン粘土鉱物(海泥);デザ−トロ−ズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。これらのうち、油中水乳化構造を安定化させることができるベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト又はカオリナイトが好ましく例示される。中でも鉱物における層構造が堅固で、ここにカチオン分子を配向させやすい、ヘクトライトやモンモリナイトが特に好ましい。
本発明の皮膚外用剤に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。
前記未変性粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、乳化系において、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
本発明における変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている変性粘土鉱物には、化粧料などの皮膚外用剤などとして用いられているものもある。市販されている変性粘土鉱物としては、例えば、エレメンティス社より「ベントン38V」の名称で販売されている、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどが好ましく例示される。
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5質量%〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1質量%〜5質量%含有される。かかる範囲において、前記一般式(1)に表される化合物の溶状を安定させて、油中水乳化剤形へと製剤化することが出来る。ここで、本発明に言う油中水乳化剤形とは、最外相に油相が存在する乳化剤形の総称であり、油相中に水相滴が分散する形態、油相中に水中油乳化滴が分散する形態の何れも採用しうる。尚、この様な油中水乳化剤形を採用する場合には、補助的な界面活性剤としてポリエ−テル変性メチルポリシロキサンを0.1〜5質量%含有させることが好ましい。この様なポリエ−テル変性メチルポリシロキサンは市販されているものが存し、かかる市販品を購入して使用することが出来る。好ましい市販品としては、信越化学工業株式会社製の「シリコ−ンKF6017」が好適に例示できる。本発明において、油中水乳化剤形とは、最外相に油相が連続相として存在する形態の乳化物を意味し、該連続相中に水滴が分散した乳化剤形も、水中油乳化物が分散滴として存在するO/W/O乳化剤も包含する。
【0015】
本発明の皮膚外用材は、前記の任意成分や必須成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0016】
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0017】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形である化粧料を製造した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加温し、イの中にハを加えて溶解させ、混練りしてゲルを形成させ、これに撹拌下徐々にロを加えて乳化し、撹拌冷却して、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料1を得た。また、表1に示した成分の中、多価アルコ−ルであるポリエチレングリコ−ル600を水に置換した比較例1を同様の操作方法に従い製造した。
【0018】
【表1】

【実施例2】
【0019】
一方、剤形の比較のために、下記に示す処方に従って、水中油乳化剤形の皮膚外用剤である、化粧料2を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、可溶化を確認した後、撹拌下、イに徐々にロを加えて乳化した。乳化粒子をホモミキサ−で整えた後、撹拌下ハの成分を加え中和し、撹拌冷却し、化粧料2を得た。
【0020】
【表2】

【0021】
<試験例1>
化粧料1及び化粧料2と比較例1に付いて、経時変化を観察した。即ち、これらの検体を5℃、20℃、20℃→40℃→20℃の温度周期変動保存庫(高温エ−ジング)に3ケ月保存し、20℃に戻した後、20mgをスライドグラス(2X5cm)に取り、上からスライドグラスをかぶせ、スライドグラスで挟まれた部分における、ゲル状塊(半透明に抜ける部分)、固形析出物(白く際立つ部分)を計数した。結果を表3に示す。何れのサンプルも実使用上の不都合はないが、化粧料2及び比較例1においてはゲル状塊、固形析出物共に検知され、長期に亘る使用期間中、使用性に影響を与えることが危惧された。また、ゲル状塊及び固形析出物の検出数は、比較例1が顕著であり、ゲル状塊は比較例1に比べ、化粧料2において多く検出された。これにより、ポリエチレングリコ−ル600が固形析出物の出現抑制に優れ、この作用は油中水乳化剤形においてより顕著に発現されることが判る。
【0022】
【表3】


* 高温エ−ジング:20℃→40℃(24時間かけての昇温)→40℃で24時間保持→40℃→20℃(24時間かけての降温)→20℃で24時間保持のサイクルでの保存
【0023】
多価アルコ−ルを変えて、実施例1と同様に、本発明の化粧料3〜13を作製した。これらにおいても、高温エ−ジングでの固形物の析出は表5に示すとおり抑制されていた。
【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)多価アルコ−ル、2)トリテルペン酸、その誘導体及びそれらの塩から選択される成分とから選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記多価アルコ−ルが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記トリテルペン酸が、ウルソ−ル酸及びその誘導体であることを特徴とする、請求項1又は2の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
油中水乳化形態であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、有機変性粘土鉱物を含有することを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記有機変性粘土鉱物における有機変性成分は、ジ短鎖アルキル長鎖ジアルキルアンモニウム塩であることを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記有機変性粘土鉱物における粘土鉱物は、モンモリナイト系粘土鉱物であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−30933(P2010−30933A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193124(P2008−193124)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】