説明

皮膚改善剤及び美容健康用経口組成物

【課題】紫外線、活性酸素、加齢等を起因とする代謝機能の低下によってもたらされる生体とりわけ皮膚組織中の前記細胞外マトリックス成分含量の低減を回復させ、皮膚の前記トラブルを予防及び/又は改善するための、快適、安全かつ安定な素材を開発し、これを産業上有効に活用できる態様の組成物を提供。
【解決手段】レモンマートル及び/又はその抽出物は皮膚繊維芽細胞を活性化し、その増殖を促進し、該細胞による前記細胞外成分の産生を増強し、保湿効果を生み出し、皮膚の老化症状を顕著に改善し得る。また、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野に有効利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分としてなる皮膚改善剤及びこれを含有してなる美容健康用経口組成物に関する。より詳細には、前記皮膚改善剤は皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤、皮膚老化防止剤及び保湿剤である。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮及び皮下組織から成り立っている。そのうち真皮組織は、主にコラーゲン等の蛋白質、ヒアルロン酸等のムコ多糖類といった細胞外成分で占められており、細胞及び皮膚組織の支持、細胞間隙における保水、皮膚の潤滑性と柔軟性の保持等の役割を担っている。これらの細胞外成分は繊維芽細胞により産生される(非特許文献1)。繊維芽細胞によって産生される前記細胞外成分は、活性酸素や紫外線照射を受けて分解されて、肌のシワ、シミ、ソバカス等の皮膚トラブルを誘発する。又、加齢にともないヒアルロン酸等の細胞外成分の含量も減少することが知られている(非特許文献2)。皮膚組織中のヒアルロン酸やコラーゲン等の含量が減少すると、弾力性や柔軟性の低下、シワなどの増加等の皮膚トラブルや肌の老化症状をひき起こす。したがって、健康な肌を保つためには前記細胞外成分を補給することが必要であり、このためには前記成分産生細胞である繊維芽細胞を活性化させることが望ましい。
【0003】
皮膚繊維芽細胞の活性化物質は、これまでにハイビスカス抽出物(特許文献1)、L−アスコルビン酸及びその誘導体(特許文献2)、アーモンド、セイヨウタンポポ、センブリ、ホップ等の抽出物(特許文献3)、コラーゲン加水分解トリペプチド(特許文献4)、ゲンクワニンを含有するローズマリー抽出物(特許文献5)、α−D−グルコピラノシルグリセロール(特許文献6)、特定アミノ酸配列を有するポリペプチド(特許文献7)等が提案されている。これら成分や抽出物は、例えば、化粧料や外用剤に配合して皮膚に適用される可能性が開示されているが、皮膚組織の生理的機能を本質的に改善するものではなかった。又、ペプチド類を経口摂取する場合には胃腸内で変質や分解を受けるリスクがあり、実用面において有効性を発現し得るものは数少なかった。
【0004】
また物理的手法、つまり乾燥から肌を守ることによって、皮膚トラブルや肌老化を防ぐことも可能である。この目的で、グリセリン等に代表される水溶性多価アルコール、ヒアルロン酸等に代表される水溶性高分子、ピロリドンカルボン酸塩等に代表される天然保湿因子、セラミドに代表される細胞間脂質等が保湿剤として使用されてきた。水溶性多価アルコール及び水溶性高分子は、べたつき感を有するものが多く、官能特性上好ましいものではなかった。また、天然保湿因子及び細胞間脂質は、皮膚化粧料配合時の濃度及び製剤に制限を受けるため、剤型が制限され、充分に効果を発現し得ない場合があった。このため新規な保湿剤開発が求められており、近年、水分保持力の高い保湿成分としてキチン・キトサン類、蛋白加水分解物、ヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖類等の様々な保湿成分について研究されてきた(特許文献8、9参照)が、これらの保湿成分は不快なべたつきを有しており、また不快臭のため添加量が制限されるなどの欠点があった。
【0005】
ところで、レモンマートルはオーストラリア原産のブッシュハーブの1つで、シトラールという成分がレモンのよりも含まれていることなどから、その抗バクテリア作用、リラクゼーション効果により、石鹸やデオドラントなどへの利用が知られているが、皮膚老化防止剤など皮膚機能改善に使用されたという報告はなく、またその特徴の1つである香気成分は油溶性物質であるため、主にハーブオイルとしての利用が主であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−295928号公報
【特許文献2】特表平10−509735号公報
【特許文献3】特開平10−36279号公報
【特許文献4】特開2002−255847号公報
【特許文献5】特開2004−137217号公報
【特許文献6】特開2004−331578号公報
【特許文献7】特開2006−265221号公報
【特許文献8】特開昭61−37710号公報
【特許文献9】特開平10−279466号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】服部道広、「スキンケアの科学」、第6頁〜第14頁及び第15頁〜第83頁、(株)裳華房、1997年2月25日発行
【非特許文献2】Maria O.Longas等、Carbohydr.Res.、第159巻、第127頁〜第136頁(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紫外線、活性酸素、加齢等を起因とする代謝機能の低下によってもたらされる生体とりわけ皮膚組織中の前記細胞外マトリックス成分含量の低減を回復させ、皮膚の前記トラブルを予防及び/又は改善するための、快適、安全かつ安定な素材を開発し、これを産業上有効に活用できる態様の組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者らは、皮膚組織中の前記細胞外成分の代謝機構とその産生を促進する素材について鋭意検討を重ねた結果、前記皮膚トラブルを改善するためにはレモンマートルが極めて有効であり、レモンマートルには皮膚繊維芽細胞を活性化し、その増殖を促進し、該細胞による前記細胞外成分の産生を増強し、保湿効果を生み出し、皮膚の老化症状を顕著に改善し得ること、又、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野に有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
(1)レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる皮膚繊維芽細胞増殖促進剤。
(2)レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤。
(3)コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強が皮膚組織中のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の増量である請求項2に記載のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤。
(4)レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる皮膚老化防止剤。
(5)レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる保湿剤。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の剤を含有してなる美容健康用経口組成物。
(7) 経口組成物が飲食品である(6)に記載の美容健康用経口組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るレモンマートル及び/又はその抽出物は、品質安定性に優れ、保湿効果を有し、皮膚繊維芽細胞の増殖を促進し、該繊維芽細胞によるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生を増強し、皮膚のターンオーバーを促して皮膚のシワ、シミ、くすみ、ソバカス、たるみ、かさつき、肌荒れ等の皮膚トラブルを改善する効果を奏する。又、損傷を受けた皮膚の再生を促進して肌の健康維持に寄与する効果を奏する。かかる効果は、本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤、皮膚老化防止剤又は保湿剤を経口的に摂取又は投与することによって顕著に発現される。したがって、本発明の前記各剤はとりわけ飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野において、前記各剤の態様のままで又は前記分野の従来の各種製品に配合した形態で、皮膚改善のために有効利用することが可能となる。本発明の前記各剤を化粧品、皮膚外用剤の分野の製品に適用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のメラニン産生抑制剤に用いるレモンマートルとは、ハーブの1種で学名をBackhousia citriodoraという。特に限定はされないが、本発明で使用する抽出物は主に葉の部分を利用する。また、レモンマートルは一般に広く使用されており、自然乾燥品として容易に入手することができる。
【0014】
抽出物は任意の方法で製造することができるが、水、低級アルコール、ヘキサンやクロロホルム等の抽出溶媒を用いて抽出処理するのが好ましい。低級アルコールは、その炭素数が大きくなると脱脂粕中の油性成分が抽出される傾向が大きくなるため、炭素数が小さいものが望ましく、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール等を例示できる。
【0015】
抽出物を製造する際の方法には、特に制限はないが、レモンマートル1重量部に対して前記抽出溶媒を約1重量部以上加え、1気圧以上の加圧又は1気圧以下の減圧下、30℃以上で、数分以上、必要に応じて撹拌して混合後、冷却して濾過し、濾液を減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の適当な手段により濃縮、乾燥する。尚、レモンマートルは生でも乾燥物でも構わず、適宜に粉砕処理してもよい。このようにして本発明に係る抽出物を得ることができる。前記抽出方法は、一旦抽出処理した抽出残渣を繰り返し抽出処理することも可能である。
【0016】
本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤は、その有効成分としての前記抽出物を固体状、ペースト状又は液体状の形状となし、これをそのまま皮膚繊維芽細胞増殖促進剤としてよいが、必要に応じて本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤が利用される用途の公知の添加物を併用して、常法により含有せしめて組成物として調製することもできる。ここで、公知の添加物は経口摂取するために通常利用されるものが望ましく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤、流動化剤、保存剤、界面活性剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、等張化剤、殺菌剤、防腐剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料等の添加物質を使用でき、又、繊維芽細胞増殖促進作用が既知の素材を用いることができる。
【0017】
繊維芽細胞増殖促進作用が既知の素材として、前記の特許文献に記載のもの以外に、クロレラ、アロエベラ、イネ、ナツメ、月桃、マンゴージンジャー、ノブドウ、ホウライシダ、ハス胚芽、ゴマ、トウガラシ、トウキ、ドクダミ、ハスカップ果実、クスノハガシワ、藻類(カウレルパ、ラセモサ)、オニイチゴ、ハトムギ等の植物や藻類の乾燥物又は抽出物、カテキン類、イミノ基含有ペプチド、α−リポ酸及びその塩、エステル、アミド等の誘導体、ジヒドロリポ酸及びその誘導体、キチン加水分解物、N−アセチル−D−グルコサミン及びそのオリゴマー等を例示できる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0018】
尚、前記組成物の形態は、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等の経口用製剤となすことが可能である。かかる製剤組成物における前記抽出物の含有量は、特に限定されない。併用原料の種類や含有量等により一律に規定し難いが、50重量%以下、より望ましくは10重量%以下である。本発明の繊維芽細胞増殖促進剤は、これを望ましくは経口的に摂取又は投与する態様で利用する。経口摂取又は投与する場合の本発明の繊維芽細胞増殖促進剤の好適な量の目安は、ヒト成人1日あたり3,000mg以下、望ましくは1,000mg以下である。
【0019】
次に、本発明のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤は、生体中のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生を増強する作用を有するものであり、前記抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0020】
本発明のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤に適用する抽出物は、その抽出方法及び条件、配合量、併用原材料、組成物及びその形態、利用方法、摂取量等は、前述の繊維芽細胞増殖促進剤の場合と同じである。本発明のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤において、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生は、より望ましくは真皮組織中の繊維芽細胞によるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生である。
【0021】
又、本発明の皮膚老化防止剤及び保湿剤は、肌のシワ、シミ、ソバカス等の皮膚トラブルや損傷を改善する作用を有するものであり、前記抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0022】
本発明の皮膚老化防止剤及び保湿剤に適用する抽出物は、その抽出方法及び条件、配合量、併用原材料、組成物及びその形態、利用方法、摂取量等について、前述の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤の場合と同じである。本発明の皮膚老化防止剤において、皮膚老化の症状は皮膚のシワ、シミ、くすみ、ソバカス、たるみ、かさつき及び肌荒れからなる群から選ばれる少なくとも1つの症状を含むものがより望ましい。
【0023】
本発明においては、前述した皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤、皮膚老化防止剤及び保湿剤のうち少なくとも1つの剤をそのままの形態で飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、その他産業分野の様々な製品とすることができ、あるいは該各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけ美容及び/又は健康のための経口組成物となすことが好ましく、この経口組成物の最も好適な態様は飲食品である。この例を以下に述べるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0024】
飲食品の具体例としては、特に制限はないが、野菜ジュース、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶等の飲料類、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。また、インスタント食品に本発明の美肌用組成物を添加しても良い。例えば、美肌用組成物を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥したものを、粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品に含有させることができる。
【0025】
これらの飲食品を製造するには、本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤、皮膚老化防止剤及び保湿剤のうち少なくとも1つの剤と公知の原材料を用い、あるいは公知の原材料の一部を前記剤の少なくとも1種で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤と、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般加工食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルを成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
【0026】
かかる飲食品に配合する本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤、皮膚老化防止剤及び保湿剤のうち少なくとも1つの剤の比率は、飲食品の種類や形態、本発明の前記剤中の本発明に係る水性成分の含量、他の配合原料の種類や成分や配合量等のちがいにより一律に規定しがたいが、飲食品中の前記水性成分の含量が50重量%以下、より望ましくは10重量%以下となるように、本発明の皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強剤、皮膚老化防止剤及び保湿剤のうち少なくとも1つの剤をその他の飲食品製造用公知原料と適宜に組み合わせて処方を設計し、常法に従い目的とする飲食品を調製すればよい。本発明の飲食品は、ヒト成人の場合1日あたりの前記水性成分の摂取量の目安を3,000mg以下、望ましくは1,000mg以下として任意の方法、例えば、食事の摂取と同時又は前後に、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はいずれも重量基準である。
【0028】
(製造例1)
レモンマートルの葉の部分の乾燥物60gを細切し、200mlの水を加え、1時間、70℃で加熱した後、室温まで冷却し、不溶物を濾過で除去した後、減圧濃縮、次いで、凍結乾燥し、約2gの抽出物(試料1とする)を得た。
【0029】
(製造例2)
レモンマートルの葉の部分の乾燥物60gにエタノール(純度99.5%)120mLを加え、80℃で1時間加熱還流した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度エタノール(純度99.5%)120mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過して濾液を採取した。両濾液を合わせて減圧下に濃縮し、凍結乾燥及び粉砕して、本発明に係る抽出物(試料2とする)2gを得た。
【0030】
(実施例1)
本発明者らは、ヒト由来正常皮膚繊維芽細胞をもとに、MTT還元法を用いて繊維芽細胞増殖促進作用評価試験を行った(TIM Mosmann;Journal of Immunological Methods p55−63,1983参照)。
【0031】
<試験方法>5%FBS(牛胎児血清;日冷より購入)含有DMEM(Gibco社)を用い、ヒト由来正常皮膚繊維芽細胞(クラボウ社製)を96穴プレートに2×104cells/wellの密度で播種し、37℃、5%CO2にて24時間培養した。Medium除去後PBS(−)(日水製薬)で洗浄し、試料を各濃度で含有する1%FBS含有DMEMに交換し、37℃、5%CO2にて培養した。このとき、ブランクは試験試料を含まない1%FBS含有MEMとする。48時間培養した後、MTT還元法により、550nmの吸光度を測定することによりMTT還元量を求めた。その結果を表1に示した。なお、細胞賦活率は試料無添加の培養細胞(コントロール)の吸光度を100とした百分率%で表わした。
【0032】
(表1)MTT還元法による繊維芽細胞に対する細胞賦活活性
【0033】
【表1】

【0034】
表1から明らかなように、被験物質を加えたものは被験物質を加えてないものに比べて細胞賦活率が高くなり、よってヒト皮膚由来正常繊維芽細胞を賦活化したと考えられる。
【0035】
(調製例1)
調製例1として、皮膚用化粧水の処方を表2に示す。表2中、(1)〜(7)の成分を(9)に混合、溶解して均一とし、(8)を添加混合した後(9)で全量を100重量%とした。
(表2)レモンマートル抽出物含有皮膚用化粧水処方
【0036】
【表2】

【0037】
(調製例2)
調製例2として、皮膚用乳液の処方を表3に示す。表3中、(1)〜(5)の油相成分を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱した。一方、(6)、(7)、(9)、(10)、(13)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱した。次いで、上記の水相成分に油相成分を添加して予備乳化し、これに(8)を加えた後ホモミキサーにて均一に乳化した。その後冷却し、(10)を加えてpHを調整し、50℃にて(12)を添加、混合した。
【0038】
(表3)レモンマートル抽出物含有皮膚用乳液処方
【0039】
【表3】

【0040】
(調製例3)
調製例3として、皮膚用クリームの処方を表4に示す。表4中、(1)〜(7)の油相成分を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱した。一方、(8)、(9)、(10)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱した。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化した。その後冷却し、50℃にて(11)を添加、混合した。
(表4)レモンマートル抽出物含有皮膚クリーム処方
【0041】
【表4】

【0042】
(調製例4)
調製例4として、O/W型乳剤性軟膏タイプの皮膚外用剤の処方を表5に示す。表5中、(1)〜(5)の油相成分を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱した。一方、(5)、(6)、(7)、(10)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱した。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して乳化し、冷却後、50℃にて(8)、(9)を添加、混合した。
【0043】
(表5)レモンマートル抽出物含有O/W型皮膚用軟膏処方
【0044】
【表5】

【0045】
(調製例5)
試料1を160部、ミツロウ30部及び中性脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオ社製)60部を約50℃に加熱混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取できる栄養補助食品として利用できる。
【0046】
(調製例6)
試料1を50部、α−リポ酸(ドイツ・デグサ社製、商品名:ALIPURE(登録商標))20部、ハス胚芽エキス末(丸善製薬(株)製)20部、クレアチン(ドイツ・デグサ社製、「クレアピュア」)25部、リボフラビン(DSMニュートリション・ジャパン(株)製)18部、マルチトール(東和化成(株)製)92部、リン酸三カルシウム(米山化学工業(株)製)100部及びセルロース25部を混合機に仕込み、10分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、重量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の食品を試作した。
【0047】
(調製例7)
市販のグレープジュース100mLに本発明に係る試料1を0.1gを加えて十分に混合し均質なグレープ風味飲料を試作した。これは冷蔵庫で3週間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる皮膚繊維芽細胞増殖促進剤。
【請求項2】
レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤。
【請求項3】
コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強が皮膚組織中のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の増量である請求項2に記載のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強剤。
【請求項4】
レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる皮膚老化防止剤。
【請求項5】
レモンマートル及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなる保湿剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤を含有してなる美容健康用経口組成物。
【請求項7】
経口組成物が飲食品である請求項6に記載の美容健康用経口組成物。

【公開番号】特開2010−202520(P2010−202520A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46348(P2009−46348)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(505028897)株式会社香寺ハーブ・ガーデン (3)
【Fターム(参考)】