説明

皮革の孔開け加工方法

【課題】皮革の面剛性低下を防止又は低減しつつ、仕上がり良く貫通孔を形成することにある。
【解決手段】銀面層12と繊維層14を備える皮革に対して貫通孔16を設けるための皮革10の孔開け加工方法において、繊維層14を樹脂層20で被覆したのち、機械的手段又は光学的手段にて貫通孔16を形成する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革の孔開け加工方法に関し、例えば車両用シートの表皮材として使用可能な皮革の孔開け加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の皮革(銀面層と繊維層を備える天然皮革や人工皮革)の孔開け加工方法として特許文献1及び特許文献2に開示の技術が公知である。例えば特許文献1では、自動制御されたパンチ機構(物理的手段)によって皮革に効率よく貫通孔を形成する。
また特許文献2の技術は、レーザ(光学的手段)にて皮革に貫通孔を形成する技術であり、冷却媒体を皮革に噴射しつつ貫通孔を形成することで、レーザの熱による皮革の焦げつきを極力低減することができる。
【0003】
そしてこのように孔開け加工を行った皮革を、音響装置や通風装置などの部材を内蔵する車両用シートの表皮材として使用する。そして貫通孔の形成箇所が部材を覆う位置配置として、車両用シートに皮革を被せることにより、皮革に設けた複数の貫通孔によって部材の音や風を乗員側に伝えることができる。
【特許文献1】特開平10−8100号公報
【特許文献2】特開2001−138081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら皮革の繊維層は、典型的に複数の繊維束にて構成されており、本来ほどけやすいものである。このため上記いずれの公知技術によっても貫通孔周りに繊維層のほつれ(いわゆるバリ)が生じるのは避けられず、貫通孔の切断面がシャープとならないものであった。特にレーザを用いて貫通孔を形成する場合には、このバリが焦げつくことにより、皮革表面に煤が付着するなどして思いのほか見栄えが悪化する。
また皮革に貫通孔を形成すると当該形成箇所の面剛性が低下するのであるが、上記公知技術では面剛性低下に関する工夫が何らなされていない。特に車両用シートの表皮材として皮革を用いる場合には、この面剛性の低下に対する対応が求められていた。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、皮革の面剛性低下を防止又は低減しつつ、仕上がり良く貫通孔を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の孔開け加工方法では、繊維層と銀面層を備える皮革に貫通孔を設ける構成である。そしてこのような構成では、皮革の面剛性低下を抑えつつ、仕上がり良く貫通孔を形成することが望ましい。
そこで本発明では、繊維層を樹脂層で被覆することで比較的強固に一体化した後、機械的手段又は光学的手段にて貫通孔を形成する構成とした。こうすれば樹脂層の補強により皮革の面剛性低下が極力抑えられるとともに、貫通孔周り(繊維層)のほつれを防止又は低減することができる。
【0006】
第2発明の皮革の孔開け加工方法は、第1発明の皮革の孔開け加工方法であって、音響装置や通風装置などの部材を内蔵する車両用シートを皮革にて被覆する構成である。
そこで本発明では、これら部材の配設箇所に対応する繊維層部分(例えば部材と対面する繊維層部分)を樹脂層で被覆したのち貫通孔を形成することとした。このように皮革(繊維層)を部分的に被覆する構成であれば、皮革全面を被覆する場合と比較してその被覆作業を簡便化することができる。
そして貫通孔の形成箇所が部材を覆う位置配置として、車両用シートに皮革を被せることにより、前記箇所の面剛性低下を極力抑えつつ、皮革の貫通孔によって部材の音や風を乗員側に伝えることができる。
【0007】
第3発明の皮革の孔開け加工方法は、第1発明又は第2発明に記載の皮革の孔開け加工方法であって、天然皮革(繊維層としての真皮を備える天然皮革)を用いるとともに光学的手段にて貫通孔を形成する構成とした。
このように天然皮革を用いる場合でも、その貫通孔周りのほつれが樹脂層により極力抑えられることから、きれいな仕上がりとなるとともに、繊維層の焦げつきが原因の臭気発生を防止又は低減することができる。また天然皮革の不均一な繊維層(毛羽立ちのある真皮)を平滑な樹脂層にて被覆することで、音質の低下を招く天然皮革の吸音性能を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1発明によれば、貫通孔形成に伴う皮革の面剛性低下を抑えつつ、仕上がり良く貫通孔を形成することができる。また第2発明の皮革は、車両用シートの表皮材として好適に用いることができる。そして第3発明によれば、天然皮革特有の不具合を改善して、車両用シートの表皮材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図5を参照して説明する。なお各図においては、便宜上一つの貫通孔にのみ符号を付すことがある。
図1に示す車両用シート2は、シートクッション4とシートバック6とヘッドレスト8を備え、これら各構成要素が表皮材(4S、6S、8S)にて被覆されている。そしてシートバック6肩口には一対の音響装置9,9が内蔵されており、これら一対の音響装置9,9に対面する表皮材6S部分に複数の貫通孔16が各々形成されている。この音響装置9は、コーン紙9a、スピーカ本体9b及びスピーカグリル9cを備えている(図3を参照)。
そしてこの表皮材6Sは、典型的に複数の天然皮革のピースを袋状に縫着して構成される。そこで本実施例では、シートバック6肩口を覆うピース(以下、単に天然皮革10と呼ぶ)を一例として、本実施例の孔開け加工方法を説明することとする。
【0010】
ここで天然皮革10は、図2を参照して、表皮(銀面層12)と真皮(繊維層14)を備える皮革であり、例えば、牛革、馬革、豚革、鹿革、羊革、山羊革、カンガルー革などの動物系天然皮革や虫類系天然皮革を例示することができる。
そして天然皮革10は、タンパク質などの有機物にて構成されるとともに、その繊維層14が不均一で解れやすいのが普通である。このような天然皮革10に貫通孔16を形成する場合には、貫通孔形成に伴う面剛性低下を抑えつつ、天然皮革特有の不具合(音質低下や臭気発生)を回避して貫通孔16を形成することが望ましい。
そこで本実施例では、後述する「繊維層に樹脂層を被覆する第一工程」と、「皮革に対して貫通孔を形成する第二工程」にて上述の各不具合を回避することとした。以下、各構成について説明する。
【0011】
[実施例1]
本実施例では、図2を参照して、レーザ照射装置30(光学的手段)により複数の貫通孔16を天然皮革10に形成する例を説明する。
(第一工程)
第一工程では、薄膜状の樹脂フィルム20(樹脂層の一例)を接着剤22にて繊維層14に貼着(被覆)して、ほつれにくくなるよう比較的強固に一体化する。そして本実施例では、後述する貫通孔16に対面する部分及びその周り(天然皮革10の一部)に樹脂フィルム20を貼着する構成である(図1を参照)。
この接着剤22は、樹脂フィルム20と繊維層14を接着可能な樹脂であり、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、グリオキザール系樹脂及びエチレン尿素樹脂を例示することができる。例えば接着剤22として、風合い及び耐久性に優れるウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
(樹脂フィルム)
この樹脂フィルム20は、繊維層14を一体化可能な樹脂(典型的には熱硬化性樹脂)にて構成される。そして樹脂フィルム20は、伸び変形可能な樹脂にて構成されていることが好ましく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)からなる群より選択される一種以上の樹脂にて構成される。
この樹脂フィルム20の厚み(剛性)は、後述する貫通孔16の形成箇所(樹脂フィルム20接着箇所)の面剛性と、貫通孔16が形成されていない箇所の面剛性が極力同等となるよう設定することが望ましい。例えば天然皮革10の厚み寸法T1を100とすると、樹脂フィルム20の厚み寸法T2を、貫通孔16の数や径寸法に応じて、0.1〜100程度に設定する。こうすれば貫通孔16の形成箇所に、天然皮革10が本来有する面剛性や伸縮性を付与することができる。
【0013】
(第二工程)
そして第二工程では、第一工程後の天然皮革10を、その銀面層12を表側として基台(図示省略)に載置する。そして天然皮革10上方に配置のレーザ照射装置30からレーザを照射して、天然皮革10に複数の貫通孔16を形成する。このとき天然皮革10に形成された貫通孔16は、樹脂フィルム20によって繊維層14のほつれが防止又は低減されることから、その切断面が比較的シャープとなる。
そして本実施例では、仮に樹脂フィルム20に繊維層14の焦げつきが原因の煤が付着しても、樹脂フィルム20表面を拭うことで簡単に煤を払拭することができる。
【0014】
そして孔開け加工を行った天然皮革10を他の天然皮革ピースとともに袋状に縫着して、シートバック6の表皮材6Sとして使用する(図1を参照)。そして図3を参照して、表皮材6Sの裏面を、パッド部材6Pよりも柔軟なカバーパッド6CPにて被覆したのち、音響装置9との対面部分に、音のぬけを良くするクッション材7を配設して面出しを行う。このクッション材7は、通気性及び弾力性を備えており、音の減衰防止作用を有するとともにシートバック6の意匠表面形状を保持する部材であることが好ましい。例えばクッション材7として、3Dネット、繊維マット、繊維素材を交絡してなる繊維交絡体(たわし様体)を用いることができる。
そして貫通孔16の形成箇所(クッション材7)が音響装置9を覆う位置配置として、シートバック6(パッド部材6P)に表皮材6Sを被せる。
このようにシートバック6に表皮材6Sを被覆して、表皮材6S(天然皮革10)の面剛性低下を抑えつつ、複数の貫通孔16によって音響装置9の音を乗員側に伝える構成とする。
【0015】
このように本実施例によれば、天然皮革10の繊維層14に樹脂フィルム20を接着することで、天然皮革10の面剛性低下を防止又は低減しつつ、仕上がり良く貫通孔16を形成することができる。
そして本実施例では、貫通孔16の形成箇所に対応して、天然皮革10の一部に樹脂フィルム20を貼着する(余分な樹脂層を極力形成しない)構成であり、樹脂フィルム20の接着作業が簡便である。また貫通孔16の形成箇所には、天然皮革10が本来有する面剛性や伸縮性が付与されているため(天然皮革10本来の感触を備えるため)、表皮材6Sの着座性能がより良いものとなる。
また本実施例では、貫通孔16のほつれが極力抑えられるため、天然皮革10の焦げつきが原因の臭気発生を防止又は低減することができる。さらに天然皮革10の不均一な繊維層14(毛羽立ちのある真皮)を平滑な樹脂フィルム20にて被覆することで、音質の低下を招く天然皮革10の吸音性能を極力抑えることができる。よって本実施例によれば、天然皮革10特有の不具合を改善して、シートバック6の表皮材6Sとして好適に使用することができる。
【0016】
[実施例2]
本実施例の部材及び天然皮革は、上述の実施例1と同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
そして本実施例の第一工程では、図4を参照して、天然皮革10の銀面層12及び繊維層14の両面に、各々樹脂フィルム(第一樹脂フィルム20a、第二樹脂フィルム20b)を貼着する。
そして銀面層12側の第一樹脂フィルム20aの接着強度を、繊維層14側の第二樹脂フィルム20bの接着強度(典型的には3.0N/cm〜6.0N/cm程度)よりも弱くして剥離容易な構成とする。例えば第二樹脂フィルム20bの接着剤量と比較して、第一樹脂フィルム20aの接着剤量を少なくする。また繊維層14側とは種類の異なる接着剤(接着強度の弱い接着剤)を用いることで、第一樹脂フィルム20aを銀面層12に接着してもよい。
【0017】
このとき第一樹脂フィルム20aの接着強度を0.1N/cm〜1.0N/cm程度に設定することで、銀面層12から比較的容易に剥離することができる。ここで第一樹脂フィルム20aの接着強度が0.1N/cm未満であると、第二工程途中で第一樹脂フィルム20aが剥離するおそれがある。また第一樹脂フィルム20aの接着強度が1.0N/cmより強いと第一樹脂フィルム20aを思いのほか剥がしにくくなる(銀面層12を傷めるおそれがある)。そして第一樹脂フィルム20aの接着強度を0.15N/cm〜0.5N/cm程度に設定することが好ましく、こうすることで銀面層12を傷めることなく、第一樹脂フィルム20aを容易に剥離することができる。
【0018】
そして第二工程において、レーザ照射装置30からレーザを照射して天然皮革10に貫通孔16を形成する。このとき天然皮革10両面が第一樹脂フィルム20a及び第二樹脂フィルム20bにて被覆されていることから、レーザの熱による繊維層14及び銀面層12のほつれをより確実に防止又は低減することができる。また仮に銀面層12側の樹脂フィルム20に焦げや煤が付着したとしても銀面層12から樹脂フィルム20を剥離することで確実に払拭することができる。
【0019】
[実施例3]
本実施例の天然皮革10は、上述の実施例1とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
(第一工程)
そして第一工程では、図5を参照して、天然皮革10の繊維層14に対して後述の樹脂組成物(詳細構成は後述)を付与して樹脂コーティング40で被覆する。この樹脂コーティング40では、天然皮革10の繊維層14が被覆されるとともに、繊維層14内部にも樹脂組成物が侵入して硬化するため、より強固に繊維層14を一体化することができる。
【0020】
(樹脂コーティング)
この樹脂コーティング40(伸縮性を備える平滑な樹脂層の他例)は、例えばスクリーン印刷、スプレー塗布、漬け込みによる含浸等の手法を用いて樹脂組成物を繊維層14に付与することにより形成可能である。
特にスクリーン印刷では、コーティング作業が極めて簡便となり、また所望の面剛性を天然皮革10に比較的簡単に付与することができるため好ましい。すなわちスクリーン印刷(典型的にはコンピュータ制御)では、例えば樹脂コーティング40の厚み寸法を制御することで、貫通孔16の形成箇所(樹脂コーティング40の形成箇所)と、貫通孔16が形成されていない箇所との面剛性や伸縮性を比較的簡単に同等とすることができる。
【0021】
ここで樹脂組成物とは、真皮表面に比較的平滑な樹脂層を形成可能な樹脂組成物であり、付加重合系樹脂組成物、エポキシ・ウレタン系樹脂組成物及び縮合重合系樹脂組成物を例示することができる。
より詳しくは付加重合系樹脂組成物として、アクリル樹脂(熱可塑性アクリル樹脂,熱硬化性アクリル樹脂)、ビニル樹脂、炭化水素樹脂又はゴムを例示することができる。またエポキシ・ウレタン系樹脂組成物として、エポキシ樹脂(グリシジルエーテル系,グリシジルエステル系,グリシジルアミン系)、ウレタン樹脂(一液型,二液型)又はポリ尿素樹脂を例示することができる。また縮合重合系樹脂組成物として、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂又はケトン樹脂を例示することができる。またこれら樹脂又はその誘導体からなる群より選択される一種以上の樹脂を樹脂組成物としてもよい。
【0022】
(第二工程)
そして第二工程では、第一工程後の天然皮革10を基台54に載置する。この基台54上方には、先端に刃先を備えるパンチ部材50(円柱状)が配置しており、このパンチ部材50が、基台54に設けた凹部52に向かって昇降自在とされて支持部(図示省略)に取付けられている。
そして基台54に載置された天然皮革10に向かってパンチ部材50を下降させて、天然皮革10に貫通孔16を形成する。このとき天然皮革10は、樹脂コーティング40によって繊維層14がより強固に一体化されているため、パンチ部材50により銀面層12及び繊維層14をきれいに打ち抜くことができる。このため貫通孔16周りの繊維層14のほつれがより確実に防止又は低減されて、貫通孔16の切断面がよりシャープとなる。
【0023】
このように本実施例によれば、天然皮革10の繊維層14を樹脂コーティング40で被覆することで、天然皮革10の面剛性低下をさらに確実に防止又は低減しつつ、仕上がり良く貫通孔16を形成することができる。
そして天然皮革10の不均一な繊維層14(毛羽立ちのある真皮)をより平滑な樹脂コーティング40にて被覆することで、天然皮革10の吸音性能をより確実に抑えることができる。
【0024】
本実施形態の皮革の孔開け加工方法は、上述した実施例に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)実施例1では、レーザ照射装置30により、樹脂フィルム20で被覆した天然皮革10に貫通孔16を形成する例を説明した。これとは異なり、パンチ機構により、樹脂フィルム20で被覆した天然皮革10に貫通孔16を形成する構成としてもよい。
(2)また実施例2では、天然皮革10の両面に樹脂フィルム20を貼着する例を説明した。これとは異なり、天然皮革10の繊維層14に樹脂コーティング40を施すとともに、銀面層12に、樹脂フィルム20を剥離自在に貼着する構成としてもよい。
【0025】
(3)また実施例3では、パンチ機構により、樹脂コーティング40で被覆した天然皮革10に貫通孔16を形成する例を説明した。これとは異なり、レーザ照射装置30により、樹脂コーティング40で被覆した天然皮革10に貫通孔16を形成する構成としてもよい。樹脂コーティング40で被覆した天然皮革10は、その繊維層14がより強固に一体化されているため、繊維層14の焦げつきが原因の臭気発生がほとんどない。
【0026】
(4)また本実施例では、天然皮革10を一例として孔開け加工方法を説明した。本実施例の方法は、少なくとも繊維層14を備える皮革であれば適用可能な技術であり、例えば人工皮革(銀面層及び繊維層を樹脂にて構成した皮革)に適用することができる。
また本実施例では、複数の天然皮革10のピースを袋状に縫着して表皮材6Sを構成する例(表皮材6S全てを皮革にて構成する例)を説明した。これとは異なり、表皮材6Sの一部を天然皮革10で構成するとともにその他の部分を他の素材(例えば織物や人工皮革)で構成してもよい。
(5)また本実施例では、貫通孔16に対面する部分及びその周り(天然皮革10の一部)を樹脂層で被覆する例を説明したが、表皮材6Sを構成する天然皮革全てを樹脂層で被覆する構成としてもよい。
(6)また本実施例の樹脂コーティング40や接着剤22に、活性炭やチタンなどの消臭剤を混入しておけば、より確実に天然皮革10の臭気を除去することができる。
また本実施例の樹脂フィルム20(樹脂コーティング40)に孔部や切欠き部を設けて、天然皮革10を撓みやすい構成としてもよい。こうすれば車両用シートの湾曲形状に沿ってきれいに表皮材6S(天然皮革10)を被覆することができる。
【0027】
(7)また本実施例では、専ら音響装置9を内蔵する車両用シート2を一例として説明した。本実施例の技術は、皮革にて被覆される各種の部材に適用可能な技術である。特に通気装置、光源又は音響装置を内蔵する各種部材(車両用シートやドアトリム等の車両内装部材)に好適に使用することができる。また皮革表面に貫通孔16によって飾り文字を作成する場合にも、本実施例の技術を適用することができる。
また本実施例では、貫通孔16の形成例として、シートバック6(表皮材6S)を説明したが、シートクッション4(表皮材4S)やヘッドレスト8(表皮材8S)に貫通孔16を形成する場合にも本実施例を好適に用いることができる。
【0028】
(8)また本実施例では、天然皮革10の銀面層12側からレーザ等にて貫通孔16を形成する例を説明した。これとは異なり、天然皮革10の繊維層14側からレーザ等にて貫通孔16を形成する構成としてもよい。この場合には、繊維層14に対して(部分的に)形成された樹脂層が一目でわかるため、貫通孔16の形成位置を容易に位置決めすることができる。
(9)また本実施例では、専ら一枚の皮革に貫通孔16を形成する例を説明した。これとは異なり複数枚の皮革を重ねた状態で、それらに同時に貫通孔16を形成することもできる。この場合、皮革と皮革の間には樹脂層が介層された状態となるため、これらの積み重ね安定性が向上した状態となる。このため、例えばパンチ部材50を挿通したとしても皮革に撚れ等が生じにくくなり、きれいな貫通孔16を形成することができる。
また積み重ね状態の皮革を樹脂層(熱硬化性樹脂)で区分けしておけば、レーザの熱により皮革同士が接着することがない。このため貫通孔16形成後において、積み重ね状態の皮革を一枚ずつきれいに分離することができる(仕分作業が容易となる)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両用シートの一部透視斜視図である。
【図2】(a)は、皮革の縦断面図であり、(b)は、樹脂層を被覆した皮革の縦断面図であり、(c)は、貫通孔を形成した皮革の縦断面図である。
【図3】図1のIII−III線縦断面図である。
【図4】(a)は、実施例2の樹脂層を被覆した皮革の縦断面図であり、(b)は、貫通孔を形成した皮革の縦断面図であり、(c)は、樹脂層剥離時の皮革の縦断面図である。
【図5】(a)は、実施例3の樹脂層を被覆した皮革の縦断面図であり、(b)は、貫通孔を形成した皮革の縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
6P パッド部材
6S 表皮材
9 音響装置
10 天然皮革
12 銀面層
14 繊維層
16 貫通孔
20 樹脂フィルム
22 接着剤
30 レーザ照射装置
40 樹脂コーティング
50 パンチ部材
52 凹部
54 基台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀面層と繊維層を備える皮革に対して貫通孔を設けるための皮革の孔開け加工方法において、
前記繊維層を樹脂層で被覆したのち、機械的手段又は光学的手段にて前記貫通孔を形成する構成とした孔開け加工方法。
【請求項2】
音響装置や通風装置などの部材を内蔵する車両用シートを前記皮革にて被覆する構成として、
前記部材の配設箇所に対応する前記繊維層を前記樹脂層で被覆したのち前記貫通孔を形成するとともに、前記貫通孔の形成箇所が前記部材を覆う位置配置として、前記車両用シートに前記皮革を被せる構成とした請求項1に記載の皮革の孔開け加工方法。
【請求項3】
天然皮革を前記皮革として用いるとともに、前記光学的手段にて前記貫通孔を形成する構成とした請求項1又は請求項2に記載の皮革の孔開け加工方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−249422(P2009−249422A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96111(P2008−96111)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】