説明

監視映像配信方法

【課題】監視対象(児童)がどのような状況で通学路を外れたのか詳細な情報が得られ、問題を解決するための対応方法を速やかに導ける児童通学路監視システムの監視映像配信方法を提供する。
【解決手段】児童の通学コースを監視センターのデータベースに予め登録し、位置情報を取得可能な携帯端末を児童に持たせ、児童が通学路を外れた際に、GPS機能で取得した位置情報により、撮像装置を自動制御して児童を自動追尾し、通学路を外れた時からの撮像映像と撮像情報を監視センターに伝送し、監視センターは、問題に速やかに対応できるよう、その受信映像を保護者や警察に配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視映像配信方法に係り、特に位置情報(GPS:Global Positioning System)を利用して位置情報を取得可能な携帯端末を用い、例えば、通学路を移動中の児童が所定の通学コースを外れた場合に、位置情報により撮像装置を制御して通学コースを外れた状況を撮像し、その撮像映像と撮像情報を保護者や警察に配信する児童通学路監視システムの監視映像配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の児童通学路監視システムは、児童が通学路から外れた際、学校や保護者に情報を発信し、固定したカメラの映像を送信するシステムであった。
【0003】
また、以下の特許文献1には、通信網としてインターネット網と、携帯無線電話網を利用し、端末として携帯無線電話端末を用い、監視装置で撮像した撮像映像を、上記通信網を介して複数の端末に監視映像を配信する監視映像配信システムが開示され、その第2実施例には、保育園内の監視装置で撮像された監視映像だけでなく、保育園外のコンビニエンスストアや交差点などに設けられた監視装置で撮像され、かつ、監視対象が識別、確認された監視映像をデータセンターへ送信し、その確認された監視対象の移動経路の軌跡も確認できる監視映像システムが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−74822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した固定カメラの映像を配信する従来の児童通学路監視システムでは、児童がどの様な状況で通学路を外れたのか詳細な情報が判らないため、対応方法が難しいという問題がある。
【0006】
また、特許文献1では、監視対象を識別確認するための監視対象に付着した標識は、例えばラベルやタグであり、ラベルに貼り付けた監視対象の名前やバーコードを撮像した映像を読み取って監視対象の識別をし、タグは出入り口に設置したゲートの出入りの確認を行う。監視対象の位置情報に関しては、撮像装置の設置された場所の監視装置と監視映像信号を基に、監視対象と、撮像装置との相対的な位置関係を演算して位置情報を得るものである。このため、位置情報及び移動方向の情報を得るのに時間がかかる。また、監視対照の映像が、撮像範囲から外れた場合や、不鮮明な映像であったりすると、監視対象の位置情報が得られないので、設置した撮像装置の向きやズームなどを制御して監視対象に合わせることが難しく、自動追尾するのに適していなかった。そのため、どのような状況で通学路を外れたのか詳細な情報が判らず、やはり対応方法が難しいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、監視対象がどのような状況で通学ルートを外れたのか詳細な情報が得られ、問題を解決するための対応方法を速やかに導ける監視映像配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した問題を解決するために、本発明に係る監視映像配信方法は、通信網を介して、監視対象を撮像した撮像映像と撮像情報を複数の予め登録された端末に配信する監視装置の監視映像配信方法において、
監視場所のそれぞれに、監視対象を撮像するための撮像装置と、番号が個別に割り当てられたアクセスポイントとが配置され、
前記監視装置には、前記監視対象毎に予め割り当てられた個別IDと監視対象毎の移動ルートが事前登録され、
位置情報の取得機能と位置情報の発信機能を有すると共に、前記個別IDが記録された標識が付着された監視対象を撮像した撮像映像と撮像情報を複数の予め登録された端末に配信する監視装置の監視映像配信方法であり、
前記監視対象が前記アクセスポイント付近を通ると当該アクセスポイントは、前記標識から送信された前記個別IDと、そのアクセスポイント番号とを前記監視装置に送信し、
前記監視装置は受信した前記アクセスポイント番号と個別IDにより、前記事前登録した移動ルートと同じかを判定し、異なる場合は、受信した前記アクセスポイント番号の撮像装置に前記移動ルートを外れたことを通知し、前記通知を受信した前記アクセスポイント番号の撮像装置は、前記標識から送信された位置情報により撮像装置のズーム及び方位を制御して前記移動ルートを外れた監視対象の自動追尾を開始すると共に、前記監視対象の自動追尾の撮像映像を前記監視装置に送信し、前記監視装置は受信した自動追尾撮像映像と撮像情報を、前記複数の予め登録された端末に配信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、監視対象(児童)の通学コースを監視センターのデータベースに予め登録し、標識として、位置情報を取得可能なGPS機能を備えた携帯端末を児童に持たせ、児童が通学路を外れた場合に、GPS機能で取得した位置情報により、撮像装置を自動制御して児童が通学路を外れた情報と撮像映像を監視センターに伝送し、監視センターは保護者や警察に児童が通学路を外れた内容と撮像映像を配信するので、どのような状況で通学路を外れたのか詳細な情報が得られ、問題に速やかに対応することができる。特に、児童を狙った犯罪への迅速な対応を図ることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を、詳細に説明する。図1は、児童通学路監視システムを説明するための、児童の通学路コースの一例を示した模式図である。
【0011】
先ず、この監視システムについての概略を説明する。図中のA〜Eは、通学路におけるチェックポイントを示し、各チェックポイントには、無線アクセスポイントと撮像装置が配置されている。
【0012】
また、各児童に個別に割り当てる標識として、児童個別IDを持つ小型の携帯端末を持たせる。この小型携帯端末は、GPSを利用して位置情報取得機能と発信機能とを備えている。小型携帯端末は、登下校時に児童のランドセルなどに入れておいても良い。さらに、この小型携帯端末には、図2で後述する監視センターに、個別に事前登録した通学コースのチェックポイントに配置された無線アクセスポイント番号も登録しておく。
【0013】
監視センターのデータベースに事前登録した通学コース上に配置されたチェックポイント付近を、小型携帯端末を持つ児童が通ると、監視センターにチェックポイントに割り当てられた無線アクセスポイント番号と、児童個別IDおよび日時情報が、監視センターに送信され、監視センターのデータベースに登録される。このとき、児童の通過した無線アクセスポイント番号が、事前に登録された無線アクセスポイント番号と異なる場合、そのチェックポイントに配置されている撮像装置は、児童の小型携帯端末から発信される位置情報により撮像装置の方位やズームの制御を行い、監視対照児童の自動追尾を開始する。
【0014】
更に、具体的な例で説明する。例えば、学校10とN君の自宅14との間には、繁華街12へ行く道、河川13の方へ行く道などがある。N君の通学コースは、予め監視センターのデータベースに登録されており、N君の小型携帯端末11には、N君の児童個別IDと、監視センターに事前登録した通学コースのチェックポイントに配置された無線アクセスポイントの番号が、登録されている。図1の例では、N君の児童個別IDは001が割り当てられている。ここでは、通学コースとして監視センターに事前登録したN君の通学路は、太い実線矢印で示したチェックポイントAからBを経由してN君の自宅14へ行く経路であるとする。従って、チェックポイントAからBの経路以外、すなわち、チェックポイントAからEの経路、チェックポイントAからBを経由してDに向かう経路、AからCの経路は、N君が通学コースから外れたことを意味する。図1の場合では、N君の小型携帯端末の位置はA−Eの経路上にあるので、通学コースから外れたことになる。N君の小型携帯端末11がチェックポイントE付近を通ると、監視センターにチェックポイントに配置された無線アクセスポイントの番号と、N君の児童個別IDと、日時とが、インターネット、或いは無線または有線のネットワーク等(以下、単に「ネットワーク等」と言う。)を介して伝送され、監視センターのデータベースに登録される。このとき、N君の通過したチェックポイントEに割り当てられた無線アクセスポイント番号が、N君の小型携帯端末に事前に登録された無線アクセスポイント番号とは異なるので、小型携帯端末からはGPSで取得した位置情報と方位情報を、チェックポイントEに配置された撮像装置に送信する。これを受信した撮像装置は、位置情報と方位情報に基づいて撮像装置の方位制御とズーム制御を行い、監視対象であるN君の自動追尾を開始すると共に、その撮像映像と位置情報とをチェックポイントに配置された送受信機により無線アクセスポイントからネットワーク等を介して監視センターに送信する。
【0015】
図2は、児童通学路監視システムの全体図であり、図に示すように、無線アクセスポイントには、監視カメラ(撮像装置)と送受信機が配置されている。監視センター20には、児童個別の通学コースを事前登録した事前登録マスタデータベース21と、チェックポイントに配置された無線アクセスポイントから送信される児童通過情報を記録する通過経路のデータベース22と、チェックポイントに配置された撮像装置から伝送される映像データを蓄積する映像データベース23が、備えられている。制御部24は、これらのデータベースの全体を制御する。また、児童が通学路を外れた場合、通学路を外れた際の映像情報と共に異常情報を所定の連絡先へ通報したり、配信するなどの制御を行う。
【0016】
ここで、この児童通学路監視システムに、例えば、N君の通学路を事前登録する方法について説明する。N君の保護者が入学時などに、通学路を明記した登録申請書を学校経由などで監視センターに登録する。監視センターでは申請者の通学路から、学校10とN君の自宅14との間の正常な通学コースとして、図1のチェックポイントAからBを経由するルートの情報、すなわち、チェックポイントA、Bに配置された無線アクセスポイント情報を、正常ルートとして事前登録マスタデータベース21に登録すると共に、N君の固有IDである番号「001」を事前登録マスターベース21に登録することにより事前登録が完了する。
【0017】
次に、図3を用いてチェックポイントに配置される無線アクセスポイントを説明する。図3に示すように、通学路沿いのチェックポイントには、撮像装置として、水平方向に回転移動制御が可能な雲台式カメラ31と、児童の小型携帯端末11からの位置情報・方位情報を受信可能な無線アクセスポイントとなる送受信機32とが取り付けられた支柱30が設置されている。
【0018】
N君が無線アクセスポイントと送受信可能な距離に近づくとN君の小型携帯端末11からは、N君の固有IDと位置情報とが送受信機32に送信される。送受信機32は、無線アクセスポイント番号と、小型携帯端末11から受信したN君の固有IDを、ネットワーク等を介して監視センター20へ送信する。監視センター20では、受信した無線アクセスポイント番号およびN君の固有IDと、事前登録マスタデータベース21に登録されたデータとを比較して、N君が異常かどうかを判定する。
【0019】
以下では、この判定処理に関して、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、図1で述べたように、N君の事前登録した通学コースが、AからBであるのに、事前登録した通学ルートを外れてチェックポイントAからEの経路を通ったときの、監視センターと、無線アクセスポイントの処理フローフローである。
【0020】
先ず、通学路のチェックポイントA〜Eに配置された各無線アクセスポイントは、GPS位置情報を受信する機能と受信した位置情報を発信する機能とを有する小型携帯端末を持ったN君が、通過するのを待っている通過待ち状態である。なお、小型携帯端末には、監視センター20に事前登録されたN君の固定IDが記録されている(S1)。
【0021】
N君がチェックポイントAを通過すると、チェックポイントAに配置された送受信機32は、チェックポイントAに配置された無線アクセスポイントに割り当てられている無線アクセス番号と、N君の小型携帯端末11から送信されたN君の固有IDを、監視センター20に送信し、通過経路データベース22に登録する(S2)。監視センター20では、受信した無線アクセスポイント番号と、固有IDがN君の事前登録された内容と同じか判定する。この場合は、YESであるので、チェックポイントAに設置されたカメラ(撮像装置)の制御はせず(S4)、再び通過待ち状態となる(S5)。
【0022】
次に、図1の場合、N君は、事前登録された通学ルートを外れてチェックポイントEを通過する。N君がチェックポイントEを通過すると、チェックポイントEに配置された送受信機は、チェックポイントEに配置された無線アクセスポイントに割り当てられているアクセスポイント番号と、N君の小型携帯端末11から送信された固有IDとを、送受信機によりネットワーク等を介して監視センター20に伝送し、通過経路データベース22に登録する(S6)。監視センター20では、受信した無線アクセスポイント番号と、固有IDがN君の事前登録された内容と同じか判定する(S7)。同じであればS5に再び戻り、通過待ちとなる。しかし、この場合は、NOであるので、チェックポイントEに設置されたカメラ(撮像装置)を、N君の小型携帯端末11から送信された位置情報と方位情報により、有線で接続されたカメラの制御を行い、N君の自動追尾を開始すると共に、その映像を監視センターに送信する(S8)。正常な通学コースから外れたN君の異常を検知した監視センター20では、N君が正常な通学コースから外れたことを検知した時点から撮像を開始した自動追尾映像により、N君がどの様な状況なのかを監視センターの監視員が確認し、通報の判断を行う(S9)。問題がない場合、例えば、親と一緒に繁華街へ向かっていることが確認された場合には、何処にも通報しない(S10)、また、特に緊急に連絡する程度で無かった場合、例えば、正常な通学ルートに引き返したことが確認できた場合には、自宅のみに連絡すると共に、その映像を配信する(S11)。一方、不審者と一緒にいるようだと判断した場合には、速やかに自宅と警察や学校に連絡すると共に、状況によっては、その映像情報も送信する。
【0023】
このように、GPSを利用した位置情報の取得機能と発信機能とを備えた小型携帯端末を児童に持たせ、この位置情報により、通学路に設置した無線アクセスポイントのカメラの方位やズームを制御して監視対象の児童を追尾するので、児童が通学路から外れた時の状況をいち早く知ることができ、警察に通報するべきか、両親のみに連絡すべきかなどの迅速な対応を図ることができる。
【0024】
また、図4のフローチャートで、監視センター通報の判断を、ステップS9〜S12で監視センターで受信した映像から判断してから連絡又は通報を行うとして説明したが、より迅速に対応できるよう、ステップS8で監視センターに送信された監視対象の自動追尾撮像映像と撮像情報とを予め監視センターに登録した学校、自宅、警察等の各端末に、自動送信し、送信先に対応を任せるようにしても良い。
【0025】
なお、本発明の児童通学路監視システムは、リアルタイム監視ではなく、異常時、すなわち、児童が事前登録した通学ルートから外れた場合にだけ自動追尾して映像を撮影するので、児童の自動追尾映像情報を監視センターで配信する画面表示は、簡易的でよく、日時と撮影ポイントを付加するだけでよい。
【0026】
以上、本発明の好適な実施例について述べたが、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の監視システムの通学路に設置するチェックポイントの配置例を示す図。
【図2】本発明の監視システムの構成図。
【図3】本発明の監視システムにおける無線アクセスポイントの構成を示す図
【図4】本発明の監視システムのフローチャート。
【符号の説明】
【0028】
10…学校、11…小型携帯端末、A〜E…チェックポイント、20…監視センター、21…事前登録マスタデータベース、22…通過経路データベース、23…映像データベース、24…制御部、30…支柱、31…撮像装置(監視カメラ)、32…送受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して、監視対象を撮像した撮像映像と撮像情報を複数の予め登録された端末に配信する監視装置の監視映像配信方法において、
監視場所のそれぞれに、監視対象を撮像するための撮像装置と、番号が個別に割り当てられたアクセスポイントとが配置され、
前記監視装置には、前記監視対象毎に予め割り当てられた個別IDと監視対象毎の移動ルートが事前登録され、
位置情報の取得機能と位置情報の発信機能を有すると共に前記個別IDが記録された標識が付着された監視対象を撮像した撮像映像と撮像情報を複数の予め登録された端末に配信する監視装置の監視映像配信方法であり、
前記監視対象が前記アクセスポイント付近を通ると当該アクセスポイントは、前記標識から送信された前記個別IDと、そのアクセスポイント番号とを前記監視装置に送信し、
前記監視装置は受信した前記アクセスポイント番号と個別IDにより、前記事前登録した移動ルートと同じかを判定し、異なる場合は、受信した前記アクセスポイント番号の撮像装置に前記移動ルートを外れたことを通知し、前記通知を受信した前記アクセスポイント番号の撮像装置は、前記標識から送信された位置情報により撮像装置のズーム及び方位を制御して前記移動ルートを外れた監視対象の自動追尾を開始すると共に、前記監視対象の自動追尾の撮像映像を前記監視装置に送信し、前記監視装置は受信した自動追尾撮像映像と撮像情報を、前記複数の予め登録された端末に配信することを特徴とする監視映像配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193408(P2008−193408A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25765(P2007−25765)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】