監視装置
【課題】監視領域が暗い状態で監視対象物である金庫や保管庫に存在する人物は人目をさける不審人物として通報する監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置10は、撮像部20にて取得された画像を処理し、追跡手段44による追跡結果と明るさ判定手段45の判定結果から、監視領域が暗いまま金庫などに近づく、または暗いまま金庫の周りに居続ける人物は金品の強奪を企てる不審者と判断し、出力部50を制御し、異常信号を管理者に通知または外部に通報する制御手段47を備える。
【解決手段】監視装置10は、撮像部20にて取得された画像を処理し、追跡手段44による追跡結果と明るさ判定手段45の判定結果から、監視領域が暗いまま金庫などに近づく、または暗いまま金庫の周りに居続ける人物は金品の強奪を企てる不審者と判断し、出力部50を制御し、異常信号を管理者に通知または外部に通報する制御手段47を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケット、ビルなどの建物内における所定の監視領域を各種センサやカメラなどにて監視する監視装置に関し、特に、監視領域に人物が所在する中で、不審な行動をする人物を検出する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域に侵入する人物を検出する監視装置においては、警備セット状態と警備解除状態とを切り替え、警備セット状態において、無人状態であるはずの監視領域に侵入した人物の検出を行うのが一般的である。
【0003】
従来の監視装置は、警備セット状態にて監視領域内に人物を検出すると、電話回線を用いて警備会社などに通報し、警備解除状態では、監視装置が監視領域に人を検出しても警備会社などへの通報はしない。また、かかる警備セット状態と警備解除状態の切替えは、利用者が監視領域から出かける際に手動操作によって行われるのが通常である。すなわち、警備解除状態であった監視領域を警備セット状態に移行させる場合は、監視領域が無人になることを利用者が確認し、利用者認証、ボタン操作を行うことにより警備セット状態へ移行する。また、警備セット状態から警備解除状態への移行は、利用者が監視領域に入ってから所定時間以内に利用者認証がされると警備解除状態に移行する。なお、監視領域に入ってから所定時間以内に利用者認証ができないと侵入者と判断し、警備会社等に異常通報する。
【0004】
また、警備セット状態に切り替えるのを利用者が忘れるのを防止するため、監視領域が無人状態になったら自動的に警備セット状態に移行させる監視装置がある。例えば、監視領域内が暗くなってから、暗い状態が所定時間継続すれば、警備セット状態に自動的に移行させる監視装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
店舗等での盗難事案には、監視領域が警備解除状態のときに、泥棒が金庫の設置されている部屋に忍び込み、金品を盗む場合がある。このような事案は、利用者が監視領域に所在しているが、金庫等の重要物が設置されている部屋でなく、他の部屋にて所在しているときに生じる。従来の監視装置は、金庫が設置されている部屋も含めて警備解除状態のため、泥棒を人体検知センサが検知していたとしても異常と判定しなかった。また、金庫等が設置されている部屋のみを警備セット状態に移行させることも可能であるが、常に警備セット状態にしていては、その部屋の使い勝手が著しく低下してしまう。
【0007】
また、特許文献1のように、監視領域の無人状態を検出して、自動的に警備セット状態に移行させたとしても、無人であると判定するための所定時間が問題となる。他方、特許文献1の方式では、監視領域内にて消灯して利用者が仮眠を取っていた場合など、何らかの理由で照明を消したまま人物が居残っていると、利用者を侵入者と判定して異常通報されてしまうという課題があった。
【0008】
ところで、部屋の利用者は、部屋を十分明るくして作業を行うのが通常である。他方、泥棒等は、利用者に気づかれないように、部屋を暗くしたまま、金庫や重要書類の保管庫の近傍にて作業をすることが多い。部屋の正規の利用者であれば、照明を点灯するはずである。
【0009】
そこで、本発明は、暗い監視領域にて人物を検出し、しかも金庫等の重要物の近辺に所在していることを検出すると、その人物を不審人物と判定する監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、人物検出部からの出力があると異常と判定する異常判定部と、異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置を提供する。
【0011】
かかる監視装置において、異常判定部は、人物検出部からの出力に基づき所定時間以上継続して人物が監視対象物の至近領域に位置していると異常と判定することが好ましい。
【0012】
かかる監視装置は、更に、前記監視領域における監視対象物の位置を予め記憶する記憶部と、監視領域に存在する人物を追跡する追跡する追跡部を有し、異常判定部は、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、人物が監視対象物に接近していると異常と判定することが好ましい。
【0013】
本発明は、監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、監視領域に存在する人物を追跡する追跡部を有し、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、追跡部が所定時間に渡って監視領域内を人物が徘徊していると異常と判定する異常判定部と、異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置を提供する。
【0014】
かかる監視装置において、明るさ判定部は、監視領域内を撮影した画像の平均輝度から照度を判定し、人物検出部は、当該画像から人物を抽出及び抽出位置から監視対象の至近領域に人物の存在を検出し、追跡部は、監視領域を順次撮影した画像から人物を追跡することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる監視装置を、通常は照明を点灯して作業をする監視領域に設置することで、照明を消灯したまま重要物に近づく人物を、人目を避けて金品持ち去りを試みる不審者として検出し、通報することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一つの実施の形態として、本発明装置にかかる監視装置が店舗の事務室に設置された様子を示す模式図である。
【図2】第一の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図3】記憶部に記憶される情報の詳細を示す図である。
【図4】重要物である金庫の至近領域を設定する模式図である。
【図5】第一の実施の形態にかかる監視装置の全体フロー図である。
【図6】不審者の検出と判定にかかるフロー図である。
【図7】不審者の判定にかかる模式図である。
【図8】第二の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図9】第二の実施の形態にかかる監視装置の全体フロー図である。
【図10】第三の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図11】不審者の判定にかかる別の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、本発明にかかる監視装置の一つの実施の形態として、当該監視装置を、スーパーマーケットなどの店舗の事務室に設置した場合を例に取り上げて説明する。事務室には監視対象物である重要物の例として、金庫が設置されているとする。
警備解除となる開店時間中は、店長が売上金の保管のため金庫を操作することを目的に入室可能なことはもちろん、一般従業員やアルバイトも各種業務を遂行するために事務室に入室可能である。
【0018】
ここで、警備解除中は、事務室には基本的には出入りが自由であり、事務担当の従業員をはじめとして人がいるため、事務室の室内照明は点灯した状態なのが通常である。
しかし、業務の都合で人が全員退室し、事務室が無人になることもあり、無人になる際、消費電力節約のため室内照明を消灯する。その都度警備セット状態にすればよいが、店舗の業務運用の都合上、必ずしもそれが求められるとは限らず、警備解除状態で事務室が暗く、無人となることがある。
【0019】
その状態で事務室に入室する人物は、通常、室内照明を点灯するものと考えられる。しかし点灯をせず消灯したまま、すなわち事務室が暗いまま入室し、しかも重要物である金庫に近づくことは通常考えにくい。そのような人物は金庫に収納された金品の持ち去りを企てるなどの不審者ということができる。
さらには、金庫に近づくにとどまらず、金庫に手を伸ばして操作可能な至近領域に留まる(滞留する)ならば、いっそう不審な行動をする人物ということができる。
【0020】
そこで、監視領域である事務室が暗いまま重要物に近づく人物や、重要物の至近領域に一定時間滞留する人物が検出されると、強盗または窃盗が予見される状態として通報するものとする。
【0021】
本発明にかかる監視装置においては、監視領域における人物の位置が重要な情報となる。
以下に述べる第一の実施の形態では、事務室の天井に概略鉛直下向きのカメラを設置し、事務室全体を俯瞰できる画角が確保できる広角レンズを装着してあるものとして説明する。事務室が監視領域である。
このようなカメラから順次時系列に得られる画像を処理することにより、予め設定してある金庫の位置を参照して、金庫に近づいたり、その前で滞留する人物を検出することが可能となる。
【0022】
図1は、本発明にかかる監視装置が、事務室に設置された様子を示す模式図である。設置場所としては事務室の他、店頭に陳列する前の商品が棚に並べられた保管庫があるバックヤードなども例示できる。
図1において、事務室の床3の隅に金庫1が設置されている。点線で示した符号2は、金庫1を操作可能な領域であり、金庫1の至近距離を条件に設定される。本実施の形態ではそれを至近領域と称している。これは監視装置の内部で保持される領域情報であり、床3に実際に描かれているわけではない。
【0023】
カメラ4は、事務室の天井に概略鉛直下向きに設置され、カメラ4から取得された画像は、事務室に存在する人物の追跡処理に用いられる。また、事務室の明るさを検出することにも用いられる。カメラ4から取得された画像を本実施の形態では入力画像と称するものする。なお、カメラ4は、後に監視装置の概略構成図で説明する撮像部を構成する。
【0024】
図2は、一つの実施形態としての本発明にかかる監視装置10の概略構成図である。監視装置10は、撮像部20と、記憶部30と、画像信号処理部40と、出力部50とを有する。
【0025】
撮像部20は、CCDまたはC-MOSなど、可視光および近赤外光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系から構成されるカメラ21、およびカメラ21が十分な感度を有する波長帯の光を発する近赤外照明22を有する。
【0026】
カメラ21には、例えば、NTSC規格に従って、連続的に撮影を行うカメラを用いることができる。あるいは、カメラ21は、いわゆるハイビジョンなど、より高解像度な画像を生成するものでもよい。そしてカメラ21は、本実施の形態では事務室を撮影した画像を、例えば、各画素の輝度が256階調で表される濃淡画像として生成する。
なお、図2におけるカメラ21は、図1に示す模式図ではカメラ4に相当する。
【0027】
撮像部20は、画像信号処理部40の図示しないインターフェース部と接続されており、所定時間ごとに画像を生成し、その生成した画像を入力画像として画像信号処理部40へ出力する。
【0028】
撮像部20の近赤外照明22は、監視領域である事務室が暗いと、後述する明るさ判定手段45が判定した場合に、図示しないインターフェース部を経由して、点灯信号を受けると点灯する。同様に、事務室が明るいと判断されると消灯信号を受け、消灯する。
または、カメラ21に画像の明るさの判断機能が搭載されており、接点出力端子が備わっているならば、そのメークブレークにより点灯と消灯を切り替えても良い。近赤外照明22により、事務室の明るさにかかわらず、人物の検出が可能となる。
【0029】
なお、撮像部20に用いられるカメラは、近赤外画像のみならず、同時にカラー画像を取得できるタイプのものを用いることができる。
またカメラ21は、監視領域である事務室全体を視野に収めるため、超広角レンズや魚眼レンズなどの画角の広いレンズを用いるのが望ましい。
【0030】
記憶部30は、フラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、または磁気ディスク(HDD)などの記憶装置を有する。
記憶部30は、監視装置10で使用される各種のプログラム及びデータを記憶する。撮像部20の撮像条件、すなわち、床面からの撮像部20の高さや画角などの情報も記憶しておく。
【0031】
記憶部30は、そのほかに領域情報31、背景画像32、追跡情報33を記憶する。
領域情報31は、監視対象物である金庫1に手が届く領域について、入力画像上での領域情報として記憶しておくものである。図1における符号2に示した至近領域を、監視装置10の管理者権限を持つ操作者が、別途図示しない入力手段および画像表示手段を用いて、入力画像を参照しながら入力する。その入力結果は領域設定手段41により座標情報に変換され、記憶されるものである。
【0032】
背景画像32は、人物が写っていないという条件で取得された入力画像を記憶しておくものである。入力画像との差分処理により、事務室に存在する人物の像を抽出するために用いられる。背景画像32は、後述する背景画像作成手段42にて作成される。
【0033】
追跡情報33は、後述するように、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により時系列に追跡されている人物について、その入力画像中での各時点における各種追跡情報を記憶しておくものである。
追跡情報33は、図3(a)に示すように、人物像数330、人物像番号331、軌跡情報332、特徴量333、接近カウンタ334、滞留カウンタ335からなる。
【0034】
人物像数330は、現時点において、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により追跡されている人物の総数である。
人物像番号331は、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により追跡されている人物について、1人につき1つ付与された番号である。
軌跡情報332は、各人物像番号331の人物が、入力画像に出現してから現時点までの入力画像中での座標情報と、各時点を記憶する。記憶するのは容量との兼ね合いを考慮して、最大T時点分までとする。
【0035】
軌跡情報332の形式の例を図3(b)に示す。過去時点3320が“0”は、現時点を意味しており、現時点の入力画像から得られた人物像について、その入力画像中の位置である重心位置の座標をX座標3321とY座標3322に記憶する。過去時点3320が“1”は、前回時点を意味しており、過去時点“T”が最も古い時点を意味する。
人物像についての新しい情報が得られたら順次、各座標情報を1時点過去の時点のものと置き換え、最新の座標情報を過去時点“0”のものとして記憶する。
人物像の位置は重心位置に限られず、外接矩形の頂点の座標や、外接円の中心の座標や、人物の足下と判断できる座標でもよい。
【0036】
特徴量333は、各人物像番号331の人物についての画像情報に関する特徴量であり、輝度値ヒストグラム、大きさ、形状、アスペクト比、エッジ情報など周知の特徴量を適宜採用して記憶する。
滞留カウンタ335は、各人物像番号331の人物が、入力画像中において、至近領域内部に存在している時点数を保持するものである。
接近カウンタ334は、各人物像番号331の人物が、入力画像中において、金庫1の方向に向かって移動している時点数を保持しておくものである。
【0037】
図2に戻り、画像信号処理部40は、撮像部20から入力された入力画像を用い、記憶部30に記憶された情報を参照して、事務室に存在する人物の追跡や、事務室の明るさの判定、警報信号の送出などの処理を行う。
画像信号処理部40は、領域設定手段41、背景画像作成手段42、人物抽出手段43、追跡手段44、明るさ判定手段45、異常判定手段46、制御手段47から構成される。これらは、記憶部30に記憶されるプログラムモジュールにて実現されるものである。
【0038】
なお、本第一の実施の形態では、撮像部20と明るさ判定手段45が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成し、人物抽出手段43と領域情報31が特許請求の範囲における人物検出部を構成し、追跡手段44と追跡情報33が特許請求の範囲における追跡部を構成する。
【0039】
領域設定手段41は、図示しない入力手段と画像表示手段を用い、監視装置10の管理者権限を持つ人物が入力した金庫1に対する至近領域2の情報を、入力画像中における座標情報に変換し、記憶部30の領域情報31に記憶させる。
【0040】
領域設定をする様子を図4を用いて説明する。符号5は、撮像部20により取得された入力画像であり、事務室を天井から見下ろした様子を示している。符号6が監視装置10の管理者権限を持つ人物が指定した至近領域であり、図1の符号2に相当している。領域設定手段41は、符号6の領域情報を入力画像における座標情報に変換して、記憶部30の領域情報31として記憶する。
【0041】
入力手段と画像表示手段は、適宜公知のものを用いればよい。例えば監視装置10と外部接続可能なマウスと可搬型の小型液晶モニタでよく、入力画像を表示させながら操作者が至近領域2を含むようマウス操作で領域指定すればよい。
【0042】
背景画像作成手段42は、前述のように、監視装置10が起動したとき、あるいは定期的に撮像部20から取得した、人物が写っていないという条件で取得された入力画像を用いて、いわゆる背景画像を作成し、記憶部30の背景画像32に記憶させる。
背景画像32の作成方法は適宜公知の方法を採用すればよい。例えば、定期的に入力画像を背景画像32に記憶し直す、あるいは複数枚の入力画像を平均化して作成しても良いが、明るさの変動に対応できるため、最新の状態になるよう背景画像32は更新されるものとする。
【0043】
人物抽出手段43は、記憶部30に記憶されている背景画像と、現時点で取得された入力画像との画素毎の差分を求め、所定の閾値で2値化する。その結果について、大きさ、形状、外接矩形のアスペクト比など、予め定めておいた人らしい条件を満たす変化領域を特定し、その内部の画像を人物像として抽出する。また、人らしい条件を満たす変化領域の入力画像中における重心位置(座標値)を現時点における追跡位置として、追跡手段44に出力する。
【0044】
入力画像は図4の符号5に例示されているように、事務室の天井付近から概略鉛直下向きに見下ろした画像であるので、人物抽出手段43で抽出される人物像は、頭頂部と両肩を上から見た形状のものとなる。
人物抽出手段43で行われる処理は、画像処理技術の分野では一般的に行われる背景差分処理で十分なので、詳細は省略する。
【0045】
追跡手段44は、前時点までに人物抽出手段43により抽出され、記憶部30に記憶されている各人物像に関する追跡情報33と、現時点にて人物抽出手段43により抽出された各人物像と関連付けることで、人物像の追跡を実現する。
そのために、追跡手段44は、現時点において人物抽出手段43により抽出された人物像から、輝度ヒストグラムやテクスチャ情報などの特徴情報を抽出する。そして、記憶部30に記憶されている各人物像番号331の追跡情報33に関連付けられている特徴量333と比較する。
【0046】
さらに現時点での人物像の重心位置と記憶部30に記憶されている過去時点での軌跡情報332とがある程度近いもの、という条件も加味し、最も類似していると判断される人物像番号331と関連付ける。
追跡手段44は、関連付けられた人物像番号331の軌跡情報332と特徴量333を、現時点における重心と特徴量にて更新する。
【0047】
現時点で抽出された人物像が、記憶部30に記憶されている追跡情報33のいずれにも関連付けられなかった場合には、その人物像は現時点において新たに出現した、つまり事務室に入室した人物である、と判断する。
記憶部30に記憶されている追跡情報33のうちで、現時点で抽出された人物像に関連づけられなかったものがある場合には、その追跡情報33は、入力画像の視野外に移動した、つまりは事務室から外に出たと判断し、記憶部30から消去する。あるいは、一定時間は保持しておき、その間は上記の関連づけ処理を試みるものとしてもよい。
上述した追跡手段44における処理は、画像処理技術の分野における追跡処理として一般的なものであるので、詳細は省略する。
【0048】
明るさ判定手段45は、撮像部20から得られた入力画像を処理し、監視領域である事務室の明るさを判定する。そのために明るさ判定手段45は、入力画像全体の平均輝度を求め、それが所定の明るさ閾値未満の場合に、事務室は室内照明が消灯され、暗い状態であると判定する。事務室が暗いと判定された場合には、図示しないインターフェース部を通じて近赤外照明22を点灯する信号を出力し、同時にその旨を表す信号を異常判定手段46にも出力する。
入力画像全体の平均輝度ではなく、記憶部30に記憶されている領域情報31を参照し、金庫1の付近のみの平均輝度を求めるようにしても良い。
さらには、撮像部20のカメラが明るさ検出の機能を持っている場合には、その情報をそのまま用いてもよい。
【0049】
異常判定手段46は、領域情報31と追跡情報33と明るさ判定手段45の判定結果に基づいて、事務室において異常状態が発生したか否かを判定し、発生した場合には異常信号を制御手段47に出力する。
具体的には、事務室が暗いままで金庫に向かっている人物が検出されたり、事務室が暗いままで至近領域に所定時間以上(例えば30秒以上)留まっている人物が検出された場合に、異常状態と判定して、制御手段47に異常信号を出力する。
【0050】
制御手段47は、異常判定手段46の出力結果を参照し、出力部50を制御して、警報信号を出力させるか否かを決定する手段である。また、入力画像を証跡性の確保を目的として、記憶部30に記憶させてもよい。
【0051】
次に、図5から図7に示す図を用いて、第一の実施の形態にかかる監視装置10の動作を説明する。
図5は、監視装置10の動作のメインフロー図である。
まず、監視装置10を起動すると初期設定を行う(ステップS10)。このステップでは、撮像部20から入力画像を1枚取得し、領域設定手段41により、至近領域2の設定を行う。この際表示される画像と、操作者が入力する至近領域の例は図4に示す通りである。
【0052】
次に、ステップS20にて、監視装置10は、背景画像32の作成を行う。そのために、背景画像作成手段42は、撮像部20より複数枚、例えば10枚の入力画像を取得し、対応する各画素について画素値の平均を求め、背景画像として、記憶部30の背景画像32に記憶する。
【0053】
以下に述べるステップS30からS80は、撮像部20が1枚画像を取得するたびに繰り返し実行される。この撮像部20が1枚画像を取得するごとに1時点進むことになる。
ステップS30にて、画像信号処理部40は、撮像部20より、現時点の入力画像を1枚取得する。
【0054】
ステップS40にて、人物抽出手段43は、記憶部30の背景画像32を読み出し、各画素について、差分を求め、所定の閾値にて2値化することで、変化領域を抽出する。
【0055】
次に人物抽出手段43は、抽出された各差分領域について、大きさや縦横比など、記憶部30の追跡情報33の一部である特徴量333と同じ種類の特徴情報を抽出する。この抽出された特徴情報が事前に定めた撮影条件などに適合する場合には、その変化領域は人物が事務室に入室したことにより抽出されたものとみなし、その内部を人物像として抽出する。そうでなければ何らかの原因によるもの、すなわちノイズであると判断し、以後の処理の対象とはしない。
また、同時に人物抽出手段43は、人物によるものと判定された変化領域について、その位置を表す重心位置を求め、抽出された人物像の数を、記憶部30の、人物像数330に記憶する。
人物抽出手段43は、求めた各情報を追跡手段44に出力する。
【0056】
次にステップS50にて、追跡手段44は、記憶部30から追跡情報33を読み出し、人物抽出手段43から入力された変化領域に関する、対応する情報と比較する。
例えば、特徴量333については、各種類の特徴量についてマハラノビス距離を求めることとし、変化領域の重心位置と追跡情報33の軌跡情報332の前回の位置と距離を求める。追跡手段44は、それらを総合判定して、各差分領域が記憶部30に記憶されている各追跡情報33のいずれに最も類似しているかを判定する。
【0057】
追跡手段44は、最も類似している人物像番号331の軌跡情報332について、変化領域の重心位置にて更新し、特徴量333も差分領域から求められた特徴情報にて更新する。ここでいう軌跡情報332の更新とは、図3(b)に示したように、リスト形式で記憶されている軌跡情報332に、最新の重心位置を追加することである。
【0058】
なお、記憶されている追跡情報33が無い場合、すなわち人物像数が0の場合、または現時点の差分領域の重心位置が、いずれの軌跡情報332の最新の位置情報と所定以上離れた場合には、新たに事務室に入室した人物であるとして、人物像番号331の番号“1”に対応する軌跡情報332と特徴量333に新たに該当する情報を記憶する。
【0059】
上記の処理は、人物抽出手段43が抽出した人物像の数だけ繰り返すものとする。それが0の場合には特に処理は行わず、ステップS30に戻り、次の時点の入力画像を取得する。
【0060】
ステップS60にて、明るさ判定手段45は、撮像部20が取得した入力画像について、画面全体の平均輝度値を求めることにより事務室の明るさを判定する。入力画像の平均輝度が所定の閾値未満の場合、事務室は暗いと判定し、入力画像の平均輝度が所定の閾値以上の場合、事務室は明るいと判定する。
明るさ判定手段45の判定結果は異常判定手段46に出力される。同時に、事務室が暗いと判定された場合には、近赤外照明22を点灯させる。
【0061】
次にステップS70にて、異常判定手段46は、明るさ判定手段45の判定結果、追跡手段44の追跡結果を参照して、事務室に異常な状態が発生しているか否か、すなわち、事務室が暗いまま金庫1に接近したり、その前に居続ける(滞留する)人物が検出されると異常状態と判定する処理を行う。このステップにおける異常判定手段46の動作の詳細を図6を用いて説明する。
【0062】
まず、ステップS700にて、異常判定手段46は、記憶部30に記憶されている各人物像の追跡情報33について、軌跡情報332、滞留カウンタ335、接近カウンタ334を読み出す。
軌跡情報332は、図3(b)に示すように、人物像番号331ごとに過去時点3320、X座標3321、Y座標3322とが対応付けられて記憶されている。
【0063】
ステップS705にて、異常判定手段46は、現時点の座標情報と前回時点の座標情報から、着目する人物像が、入力画像上で移動した方向を求める。
異常判定手段46は、図3(b)において符号3323に示す現時点でのX座標、符号3324に示す現時点でのY座標、符号3325に示す前回時点でのX座標、符号3326に示す前回時点でのY座標を用い、移動軌跡を求める。
【0064】
これを図7を用いて説明する。図7において、符号700が前回時点における着目する人物の入力画像中での重心位置、符号701が同じく現時点における重心位置、符号702が着目する人物の移動軌跡であり、ベクトルとして描画してある。
異常判定手段46は、移動軌跡702を前回時点における位置700から現時点における位置701の方向に、符号703で示すように延長し、その先に至近領域6が存在するか否かを調べる(ステップS710)。
【0065】
図7に示すように、延長した先に至近領域6が存在する場合には、着目する人物は金庫に接近しているとして、異常判定手段46は該当する人物の接近カウンタ334を1増やす(ステップS715)。そうでない場合には接近カウンタ334を0にする(ステップS720)。
【0066】
次に異常判定手段46は、記憶部30の領域情報31を参照し、着目する人物が至近領域2の内部に位置しているか否かを判定する(ステップS730)。
着目する人物が至近領域2の内部に位置している場合には、滞留カウンタ335を1増やす(ステップS735)。そうでない場合には滞留カウンタ335を0にする(ステップS740)。
【0067】
そして、異常判定手段46は、接近カウンタ334と滞留カウンタ335のいずれかが所定の閾値以上であるか否かを調べ(ステップS750)、そのいずれかが閾値を超えている場合には制御手段47に異常信号を出力する(ステップS755)。いずれも閾値を超えていない場合には処理をステップS760に移し、次の人物像を処理対象とする。
なお、いずれかの人物像について異常信号を出力することになった場合には、図6に示す異常判定処理全体を終了させてもよい。
【0068】
なお、接近カウンタ334が所定の閾値以上ということは、着目する人物が継続して金庫に向かっていることを意味する。また、滞留カウンタ335が所定の閾値以上ということは、着目する人物が継続して金庫の至近領域に留まっていることを意味する。
ここで、不審人物の行動として、事務室に入室後、金庫に一直線に向かう場合には接近カウンタ334と滞留カウンタ335の両方が、それぞれ事前に設定した所定の閾値を越えるが、事務室内を物色した後に金庫の至近領域に留まることも考えられるので、接近カウンタ334と滞留カウンタ335のいずれかが所定の閾値を越えた場合に異常判定をすることが望ましい。
【0069】
図5に戻り、ステップS80にて、異常判定手段46が異常信号を制御手段47に出力している場合には、制御手段47は、出力部50に対して、所定の出力処理を行う。例えば、異常信号を図示しない通信回線を用いて外部の警備センタに送信したり、店舗の責任者が持ち歩く携帯電話に電子メールを送信する。あるいは入力画像を記憶部30に記憶しておき、証跡性を確保することもできる。
【0070】
以上述べてきた、本発明にかかる第一の実施の形態では、事務室に存在する人物に関して、その事務室内の位置の検出と、事務室の明るさの検出には撮像部20から得られた入力画像を処理していた。
本発明を実施するには、それに限られない。すなわち人物の位置の検出には測距型のセンサ、明るさの検出には照度センサを用いてもよい。測距型センサには、マイクロ波を使ったものをはじめ、超音波やレーザー光を使ったものなどが周知である。
【0071】
以下、本発明にかかる第二の実施の形態として、人物の位置の検出にマイクロ波による測距センサを使った場合について説明する。なお、これまで述べてきた、第一の実施の形態であるカメラを用いた方法と異なる部分を中心に説明するものとし、共通する箇所は適宜簡略化して説明する、または省略する。
【0072】
図8に、第二の実施の形態にかかる監視装置100の概略説明図を示す。本図において、図2と異なるのは、撮像部20に代わりに位置情報取得部200および明るさ取得部210、背景画像32に代わり背景情報320、背景画像作成手段42に代わり背景情報作成手段420、画像信号処理部40に代わり位置情報処理部400を設けたことである。
そのほか、機能はほぼ第一の実施の形態と同様な要素は、同名とし、異なる符号を付与している。
【0073】
なお、本第二の実施の形態では、明るさ取得部210と明るさ判定手段450が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成し、位置情報取得部200と人物抽出手段430と領域情報310が特許請求の範囲における人物検出部を構成し、追跡手段440と追跡情報330が特許請求の範囲における追跡部を構成する。
【0074】
位置情報取得部200は、本第二の実施の形態ではマイクロ波センサを用い、その設置位置から物体までの距離を取得するものである。設置位置は事務室において、水平面方向の距離情報が取得できる位置とする。位置情報取得部200を1つのみ設置するのであれば、金庫までの距離を直接計測できるよう金庫の近傍に、事務室の中心に向けて設置するのが望ましい。
【0075】
位置情報取得部200に、マイクロ波を使ったセンサの中でもレーダー型のものを使うのであれば、走査方向として水平方向に設定することで、物体までの距離のみならず水平方向の位置も検出可能である。
位置情報取得部200にレーダー型のものではなく、簡易に距離のみを取得するセンサを用いる場合には、例えば事務室の隅に事務室の中心方向を向けて3つ以上設置すれば、三点測量の原理により、事務室内での水平方向の位置を検出できる。
【0076】
位置情報取得部200は、所定時間ごとに事務室内部に存在する物体までの距離を求め、順次位置情報処理部400に出力する。この所定時間間隔は、カメラ21を用いた場合における画像取得間隔、いわゆるフレーム間隔に相当する。どれだけの間隔で位置情報処理部400に出力するかは、具体的な位置情報取得部200などのハードウェア性能を考慮して決定すればよい。
【0077】
明るさ取得部210は、一般的な照度センサを用いればよく、事務室全体の明るさを計測するものとする。あるいは適宜光学系を調整し、金庫付近のみの明るさを計測するようにしてもよい。あるいは事務室の照明スイッチのON/OFF情報を取得できる状況にあるのであれば、それを直接位置情報処理部400に入力してもよい。照明スイッチがONのときは事務室は明るい、OFFの時は暗いと判断できるからである。ただし、事務室の採光条件により、照明スイッチがOFFでも事務室が十分明るい場合もあるので、照明スイッチの情報は補助的なものに留めるのが望ましい。
明るさ取得部210は、所定時間ごとに明るさ情報を位置情報処理部400に出力する。
【0078】
記憶部30の領域情報310は、位置情報取得部200の計測結果を用いて、事務室において金庫1の至近領域2を特定できる形式で保存される。第一の実施の形態と同様に領域設定手段41にて設定される。
例えば、領域情報310は、位置情報取得部200からの所定の範囲の距離として保存される。あるいは、距離情報を距離画像に変換して保存しても良い。その場合、第一の実施の形態と同様な処理が可能となる。
【0079】
背景情報320は、事務室が無人という条件の下で位置情報取得部200から得られた計測結果を記憶しておく。事務室に、例えば棚が置かれている場合には、その棚までの距離情報も含めて背景情報となる。背景情報320は、画像処理による場合と同様に、現時点での位置情報取得部200からの入力情報との差分を求めることで、事務室に存在する人物の検出に用いられる。
背景情報320も、領域情報310と同様に距離画像に変換して記憶しておくと第一の実施の形態と同様な処理が可能となる。
【0080】
位置情報処理部400は、位置情報取得部200と明るさ取得部210からの入力と、記憶部30に記憶されている情報を参照し、所定の異常状態であれば警報信号を外部に出力する機能を持つ。図2の画像信号処理部40に相当する。
【0081】
背景情報作成手段410は、監視装置100の起動時や、事務室が無人であるという条件下で位置情報取得部200にて取得された複数時点での距離情報を平均して、背景情報320を作成する。また適宜、最新の情報に更新するものとする。前述のように距離画像に変換してもよい。
【0082】
人物抽出手段430は、記憶部30の背景情報320と位置情報取得部200より入力された最新の距離情報を基に、物体までの距離を求め、適当な条件で閾値処理をし、人物の抽出を行う。
背景情報320が距離画像に変換されて記憶されており、人物抽出手段430においても、前処理として位置情報取得部200から得られた最新の距離情報を距離画像に変換するのであれば、第一の実施の形態と同様に背景差分処理により人物を抽出できる。
【0083】
追跡手段440は、人物抽出手段430により抽出された人物までの距離情報を基に、各時点間における同一人物とみなせる条件を満たす人物を公知の方法で追跡する。
【0084】
明るさ判定手段450は、明るさ取得部210が取得した、事務室の明るさ情報を基に、事務室が明るいか暗いかを判定する。明るさ取得部210から入力される情報が例えば電圧値であれば、電圧の次元を持つ閾値、明るさ取得部210からは既にA/D変換された明るさ情報が入力されるならば、その値に関する閾値を定義しておき、事務室の明るさを判定する。
【0085】
異常判定手段460は、領域情報310と追跡情報330と明るさ判定手段450からの入力とを用いて異常を判定する。例えば、明るさ判定手段450が事務室は暗いと判定している状態で、追跡手段440が追跡している人物が継続して至近領域2方向に移動している場合、あるいは同じく事務室が暗いと判定されている状態で人物が所定時間以上至近領域2内に留まっていると判定された場合には異常状態が発生しているとして、異常信号を制御手段470に出力する。
【0086】
図9に、第二の実施の形態にかかる、監視装置100の動作フローを示す。これは第一の実施の形態にかかる動作フローである図5とほぼ同じであるが、背景画像作成(ステップS20)に代わり背景情報作成(ステップS200)、入力画像取得(ステップS30)に代わりセンサ情報取得(ステップS300)としたものである。第一の実施の形態である図5と共通する名称のステップでは、画像情報を処理する代わりに距離情報を処理する程度の変更点であるので、適宜説明を簡略化または省略する。
【0087】
これらの処理内容は第一の実施の形態とほぼ同様で、画像情報の代わりに距離情報を用い、それに適した処理を行えばよい。特に距離情報を距離画像に変換すれば、第一の実施の形態に沿った処理で異常判定が可能である。以下では距離情報を距離画像に変換する場合を例に説明する。
【0088】
ステップS100では、位置情報取得部200から距離情報を1時点分取得し、事務室を俯瞰した距離画像に変換して、第一の実施の形態と同様に至近領域2を設定する。
ステップS200の背景情報作成処理では、背景情報作成手段410は、位置情報取得部200から取得した距離情報を距離画像に変換し、記憶部30の背景情報320に記憶する。
【0089】
ステップS400では、人物抽出手段430は、ステップS300にて位置情報取得部200から取得した最新の距離情報を距離画像に変換し、背景情報320との差分を求めることで人物を抽出する。この際、追跡処理に必要な情報を抽出しておくのは第一の実施の形態と同様である。
ステップS500では、追跡手段440は、前ステップで取得した人物に関する追跡処理を行う。処理の流れは第一の実施の形態と同様である。
ステップS600では、明るさ判定手段450が、明るさ取得部210の出力結果を参照して、事務室の明るさを判定する。その判定内容は明るさ判定手段450の説明で述べた通りである。
【0090】
ステップS700では、異常判定手段460が、事務室において異常状態が発生したか否かを判定する。すなわち、明るさ判定手段450にて、事務室が暗いと判定された状態で、検出された人物が金庫1に近づいている、または至近領域2に留まっていると判定される場合に異常状態の発生を判断する。
【0091】
位置情報取得部200において取得された距離情報を距離画像に変換してあるので、第一の実施の形態と同様な方法で、金庫への接近や至近領域内部での滞留を判定すればよい。
距離情報を距離画像に変換しない場合には、位置情報処理部400において世界座標系を定義して、処理してもよい。
【0092】
他の処理は、第一の実施の形態と同様、または監視技術分野における通常の技術的知識を持つ者にとっては説明を要しないと思われるので、詳細な説明を省略する。
【0093】
次に本発明かかる第三の実施の形態について説明する。第一の実施の形態および第二の実施の形態では、入力画像中における人物像についての追跡処理が重要な意味を持っていたが、第三の実施の形態では、構成を簡略化し、至近領域付近のみを検出の対象とするものである。
【0094】
第三の実施の形態にかかる監視装置1000の概略構成図を図10に示す。本実施の形態では、監視装置1000は、第二の実施の形態にかかる概略構成図である図8と比較すると、位置情報取得部200の代わりに人物検出部250、位置情報処理部400の代わりに信号処理部4000を有している。そのほかの、図8に示した各構成要素とほぼ同機能のものは同名で異符号が付与されており、以下では説明を簡略化する、あるいは省略する。
なお、明るさ取得部210と明るさ判定手段4500が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成するのは第二の実施の形態と同様である。
【0095】
人物検出部250は、人物を検出する機能を有するセンサ類であり、特に限定されない。これまでに述べてきたように、画像センサでもよいし、マイクロ波センサでもよい。あるいは受動型赤外線センサ(PIR)でもよいし、超音波センサでもよい。ただし、いずれのセンサであっても、設置にあたっては、検知範囲を至近領域6を必要十分に含むよう調整が行われるものとする。これにより、人物検出部250は、金庫の至近領域に存在する人物に限って検出が可能となる。
【0096】
異常判定手段4600は、明るさ判定手段4500から、事務室が暗い旨の出力を受けている場合であって、人物検出部250が金庫の至近領域に人物が存在していると出力している場合に、異常状態が発生していると判断して、制御手段4700に異常信号を出力する。
あるいは、計時手段を備え、人物検出部250が金庫の至近領域に所定時間以上(例えば30秒以上)人物が存在している場合に異常が発生していると判断してもよい。
【0097】
次に本発明かかる第四の実施の形態について説明する。第一の実施の形態または第二の実施の形態では、図7の模式図にて示したように、事務室が暗い中、金庫に一直線に向かっている場合に、金品の強奪を企てる不審者として検出するものとしていた。
これとは異なる性質の不審者には、通常は室内照明を点灯して明るくするはずが暗いまま事務室内部を徘徊する(うろつく)人物も例示できる。この場合、例えば金庫以外にも何らかの貴重品が無いか、あるいは重要書類が置かれていないか探すなどの犯行の予備的な意図を持っていると考えられる。第四の実施の形態ではこのような事務室が暗いまま事務室内部を徘徊する人物を検出する。
【0098】
第四の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図は第一の実施の形態あるいは第二の実施の形態のものと同様に実現できるので省略する。
第四の実施の形態において、検出対象となる人物の動きの模式図を図11に示す。
【0099】
図11において、前回時点における人物の位置750から現時点における人物の位置751に移動したとする。その軌跡がベクトル752にて示されている。ベクトル752を延長した直線が符号753に示す点線であるが、第一の実施の形態および第二の実施の形態では点線753を伸ばした先に至近領域6が存在していることが時間的に継続しているか否かを判定していたが、第四の実施の形態では、逆に、図11に示すように、点線753を伸ばした先に至近領域6が存在していないことが時間的に継続しているか否かを判定するものとする。時間的に継続している場合には、人物が徘徊している(うろついている)と判定する。
【0100】
処理の流れとしては、図6に示すフロー図において、ステップS750の判断処理に変え、接近カウンタ334および滞留カウンタ335がそれぞれ0であるが、同一人物が所定の時間に渡って継続的に追跡されている場合に、異常判定手段46が異常判定するものとすればよいので、詳細なフロー図は省略する。
または、金庫に一直線に向かっている状態をも検出して異常状態と判定したい場合には、第一の実施の形態あるいは第二の実施の形態と同様に接近カウンタ334と滞留カウンタ335の値も参照して異常判定してもよい。
【0101】
本発明にかかる監視装置は、以上に述べてきた実施の形態に限られない。
前述のように、監視領域である事務室における人物の検出には、マイクロ波センサのほかにも超音波センサやレーザー光センサを用いても同様に実現できる。
あるいは、送受信機を複数備えることが望ましいが、RFIDによる手段でも同様に人物の位置情報の取得は可能となる。
【0102】
さらには、上記のような非接触タイプの測距センサではなく、事情が許すならば、事務室の床一面にマット型のセンサを敷き詰めることで、人物の体重により反応した位置を直接位置情報として用いることもできる。
また、事務室における不審な行動をする人物は複数人であっても、画像処理技術やセンサ技術における周知の方法を用いて同様に処理できる。
【0103】
さらには、本発明にかかる実施の形態では、店舗における事務室を監視領域に例示したが、解除状態で無人となり、出入り自由な状態にはなるが室内照明を消灯するのが通常の運用となる一方で、室内照明を消灯したまま入室し、所定の行動をとると不審とみなせる場所であれば、同様に本発明の監視装置を適用できる。
他には警備解除、警備セットという区別の無い運用で、人の出入りは自由である一方で常に異常状態の検出を行っている場所にも適用できる。
【0104】
さらには、重要物である金庫に近づく行為と、金庫の至近領域で留まる行為の両方を警備センタなどへの通報の条件としたが、前者が検出された場合にはその人物に対して音声やLED表示などで、接近行為は不審な行為であるとして警告し、その警告にも関わらず金庫の至近領域に立ち入り、所定時間留まったらはじめて警備センタなどへ通報する、と行為により、監視装置の対応のレベル分けをすることもできる。
【符号の説明】
【0105】
1・・・金庫
2・・・至近領域
10・・・監視装置
20・・・撮像部
30・・・記憶部
40・・・画像信号処理部
45・・・明るさ判定手段
50・・・出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケット、ビルなどの建物内における所定の監視領域を各種センサやカメラなどにて監視する監視装置に関し、特に、監視領域に人物が所在する中で、不審な行動をする人物を検出する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域に侵入する人物を検出する監視装置においては、警備セット状態と警備解除状態とを切り替え、警備セット状態において、無人状態であるはずの監視領域に侵入した人物の検出を行うのが一般的である。
【0003】
従来の監視装置は、警備セット状態にて監視領域内に人物を検出すると、電話回線を用いて警備会社などに通報し、警備解除状態では、監視装置が監視領域に人を検出しても警備会社などへの通報はしない。また、かかる警備セット状態と警備解除状態の切替えは、利用者が監視領域から出かける際に手動操作によって行われるのが通常である。すなわち、警備解除状態であった監視領域を警備セット状態に移行させる場合は、監視領域が無人になることを利用者が確認し、利用者認証、ボタン操作を行うことにより警備セット状態へ移行する。また、警備セット状態から警備解除状態への移行は、利用者が監視領域に入ってから所定時間以内に利用者認証がされると警備解除状態に移行する。なお、監視領域に入ってから所定時間以内に利用者認証ができないと侵入者と判断し、警備会社等に異常通報する。
【0004】
また、警備セット状態に切り替えるのを利用者が忘れるのを防止するため、監視領域が無人状態になったら自動的に警備セット状態に移行させる監視装置がある。例えば、監視領域内が暗くなってから、暗い状態が所定時間継続すれば、警備セット状態に自動的に移行させる監視装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
店舗等での盗難事案には、監視領域が警備解除状態のときに、泥棒が金庫の設置されている部屋に忍び込み、金品を盗む場合がある。このような事案は、利用者が監視領域に所在しているが、金庫等の重要物が設置されている部屋でなく、他の部屋にて所在しているときに生じる。従来の監視装置は、金庫が設置されている部屋も含めて警備解除状態のため、泥棒を人体検知センサが検知していたとしても異常と判定しなかった。また、金庫等が設置されている部屋のみを警備セット状態に移行させることも可能であるが、常に警備セット状態にしていては、その部屋の使い勝手が著しく低下してしまう。
【0007】
また、特許文献1のように、監視領域の無人状態を検出して、自動的に警備セット状態に移行させたとしても、無人であると判定するための所定時間が問題となる。他方、特許文献1の方式では、監視領域内にて消灯して利用者が仮眠を取っていた場合など、何らかの理由で照明を消したまま人物が居残っていると、利用者を侵入者と判定して異常通報されてしまうという課題があった。
【0008】
ところで、部屋の利用者は、部屋を十分明るくして作業を行うのが通常である。他方、泥棒等は、利用者に気づかれないように、部屋を暗くしたまま、金庫や重要書類の保管庫の近傍にて作業をすることが多い。部屋の正規の利用者であれば、照明を点灯するはずである。
【0009】
そこで、本発明は、暗い監視領域にて人物を検出し、しかも金庫等の重要物の近辺に所在していることを検出すると、その人物を不審人物と判定する監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、人物検出部からの出力があると異常と判定する異常判定部と、異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置を提供する。
【0011】
かかる監視装置において、異常判定部は、人物検出部からの出力に基づき所定時間以上継続して人物が監視対象物の至近領域に位置していると異常と判定することが好ましい。
【0012】
かかる監視装置は、更に、前記監視領域における監視対象物の位置を予め記憶する記憶部と、監視領域に存在する人物を追跡する追跡する追跡部を有し、異常判定部は、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、人物が監視対象物に接近していると異常と判定することが好ましい。
【0013】
本発明は、監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、監視領域に存在する人物を追跡する追跡部を有し、明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、追跡部が所定時間に渡って監視領域内を人物が徘徊していると異常と判定する異常判定部と、異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置を提供する。
【0014】
かかる監視装置において、明るさ判定部は、監視領域内を撮影した画像の平均輝度から照度を判定し、人物検出部は、当該画像から人物を抽出及び抽出位置から監視対象の至近領域に人物の存在を検出し、追跡部は、監視領域を順次撮影した画像から人物を追跡することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる監視装置を、通常は照明を点灯して作業をする監視領域に設置することで、照明を消灯したまま重要物に近づく人物を、人目を避けて金品持ち去りを試みる不審者として検出し、通報することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一つの実施の形態として、本発明装置にかかる監視装置が店舗の事務室に設置された様子を示す模式図である。
【図2】第一の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図3】記憶部に記憶される情報の詳細を示す図である。
【図4】重要物である金庫の至近領域を設定する模式図である。
【図5】第一の実施の形態にかかる監視装置の全体フロー図である。
【図6】不審者の検出と判定にかかるフロー図である。
【図7】不審者の判定にかかる模式図である。
【図8】第二の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図9】第二の実施の形態にかかる監視装置の全体フロー図である。
【図10】第三の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図である。
【図11】不審者の判定にかかる別の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、本発明にかかる監視装置の一つの実施の形態として、当該監視装置を、スーパーマーケットなどの店舗の事務室に設置した場合を例に取り上げて説明する。事務室には監視対象物である重要物の例として、金庫が設置されているとする。
警備解除となる開店時間中は、店長が売上金の保管のため金庫を操作することを目的に入室可能なことはもちろん、一般従業員やアルバイトも各種業務を遂行するために事務室に入室可能である。
【0018】
ここで、警備解除中は、事務室には基本的には出入りが自由であり、事務担当の従業員をはじめとして人がいるため、事務室の室内照明は点灯した状態なのが通常である。
しかし、業務の都合で人が全員退室し、事務室が無人になることもあり、無人になる際、消費電力節約のため室内照明を消灯する。その都度警備セット状態にすればよいが、店舗の業務運用の都合上、必ずしもそれが求められるとは限らず、警備解除状態で事務室が暗く、無人となることがある。
【0019】
その状態で事務室に入室する人物は、通常、室内照明を点灯するものと考えられる。しかし点灯をせず消灯したまま、すなわち事務室が暗いまま入室し、しかも重要物である金庫に近づくことは通常考えにくい。そのような人物は金庫に収納された金品の持ち去りを企てるなどの不審者ということができる。
さらには、金庫に近づくにとどまらず、金庫に手を伸ばして操作可能な至近領域に留まる(滞留する)ならば、いっそう不審な行動をする人物ということができる。
【0020】
そこで、監視領域である事務室が暗いまま重要物に近づく人物や、重要物の至近領域に一定時間滞留する人物が検出されると、強盗または窃盗が予見される状態として通報するものとする。
【0021】
本発明にかかる監視装置においては、監視領域における人物の位置が重要な情報となる。
以下に述べる第一の実施の形態では、事務室の天井に概略鉛直下向きのカメラを設置し、事務室全体を俯瞰できる画角が確保できる広角レンズを装着してあるものとして説明する。事務室が監視領域である。
このようなカメラから順次時系列に得られる画像を処理することにより、予め設定してある金庫の位置を参照して、金庫に近づいたり、その前で滞留する人物を検出することが可能となる。
【0022】
図1は、本発明にかかる監視装置が、事務室に設置された様子を示す模式図である。設置場所としては事務室の他、店頭に陳列する前の商品が棚に並べられた保管庫があるバックヤードなども例示できる。
図1において、事務室の床3の隅に金庫1が設置されている。点線で示した符号2は、金庫1を操作可能な領域であり、金庫1の至近距離を条件に設定される。本実施の形態ではそれを至近領域と称している。これは監視装置の内部で保持される領域情報であり、床3に実際に描かれているわけではない。
【0023】
カメラ4は、事務室の天井に概略鉛直下向きに設置され、カメラ4から取得された画像は、事務室に存在する人物の追跡処理に用いられる。また、事務室の明るさを検出することにも用いられる。カメラ4から取得された画像を本実施の形態では入力画像と称するものする。なお、カメラ4は、後に監視装置の概略構成図で説明する撮像部を構成する。
【0024】
図2は、一つの実施形態としての本発明にかかる監視装置10の概略構成図である。監視装置10は、撮像部20と、記憶部30と、画像信号処理部40と、出力部50とを有する。
【0025】
撮像部20は、CCDまたはC-MOSなど、可視光および近赤外光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系から構成されるカメラ21、およびカメラ21が十分な感度を有する波長帯の光を発する近赤外照明22を有する。
【0026】
カメラ21には、例えば、NTSC規格に従って、連続的に撮影を行うカメラを用いることができる。あるいは、カメラ21は、いわゆるハイビジョンなど、より高解像度な画像を生成するものでもよい。そしてカメラ21は、本実施の形態では事務室を撮影した画像を、例えば、各画素の輝度が256階調で表される濃淡画像として生成する。
なお、図2におけるカメラ21は、図1に示す模式図ではカメラ4に相当する。
【0027】
撮像部20は、画像信号処理部40の図示しないインターフェース部と接続されており、所定時間ごとに画像を生成し、その生成した画像を入力画像として画像信号処理部40へ出力する。
【0028】
撮像部20の近赤外照明22は、監視領域である事務室が暗いと、後述する明るさ判定手段45が判定した場合に、図示しないインターフェース部を経由して、点灯信号を受けると点灯する。同様に、事務室が明るいと判断されると消灯信号を受け、消灯する。
または、カメラ21に画像の明るさの判断機能が搭載されており、接点出力端子が備わっているならば、そのメークブレークにより点灯と消灯を切り替えても良い。近赤外照明22により、事務室の明るさにかかわらず、人物の検出が可能となる。
【0029】
なお、撮像部20に用いられるカメラは、近赤外画像のみならず、同時にカラー画像を取得できるタイプのものを用いることができる。
またカメラ21は、監視領域である事務室全体を視野に収めるため、超広角レンズや魚眼レンズなどの画角の広いレンズを用いるのが望ましい。
【0030】
記憶部30は、フラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、または磁気ディスク(HDD)などの記憶装置を有する。
記憶部30は、監視装置10で使用される各種のプログラム及びデータを記憶する。撮像部20の撮像条件、すなわち、床面からの撮像部20の高さや画角などの情報も記憶しておく。
【0031】
記憶部30は、そのほかに領域情報31、背景画像32、追跡情報33を記憶する。
領域情報31は、監視対象物である金庫1に手が届く領域について、入力画像上での領域情報として記憶しておくものである。図1における符号2に示した至近領域を、監視装置10の管理者権限を持つ操作者が、別途図示しない入力手段および画像表示手段を用いて、入力画像を参照しながら入力する。その入力結果は領域設定手段41により座標情報に変換され、記憶されるものである。
【0032】
背景画像32は、人物が写っていないという条件で取得された入力画像を記憶しておくものである。入力画像との差分処理により、事務室に存在する人物の像を抽出するために用いられる。背景画像32は、後述する背景画像作成手段42にて作成される。
【0033】
追跡情報33は、後述するように、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により時系列に追跡されている人物について、その入力画像中での各時点における各種追跡情報を記憶しておくものである。
追跡情報33は、図3(a)に示すように、人物像数330、人物像番号331、軌跡情報332、特徴量333、接近カウンタ334、滞留カウンタ335からなる。
【0034】
人物像数330は、現時点において、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により追跡されている人物の総数である。
人物像番号331は、人物抽出手段43により抽出され、追跡手段44により追跡されている人物について、1人につき1つ付与された番号である。
軌跡情報332は、各人物像番号331の人物が、入力画像に出現してから現時点までの入力画像中での座標情報と、各時点を記憶する。記憶するのは容量との兼ね合いを考慮して、最大T時点分までとする。
【0035】
軌跡情報332の形式の例を図3(b)に示す。過去時点3320が“0”は、現時点を意味しており、現時点の入力画像から得られた人物像について、その入力画像中の位置である重心位置の座標をX座標3321とY座標3322に記憶する。過去時点3320が“1”は、前回時点を意味しており、過去時点“T”が最も古い時点を意味する。
人物像についての新しい情報が得られたら順次、各座標情報を1時点過去の時点のものと置き換え、最新の座標情報を過去時点“0”のものとして記憶する。
人物像の位置は重心位置に限られず、外接矩形の頂点の座標や、外接円の中心の座標や、人物の足下と判断できる座標でもよい。
【0036】
特徴量333は、各人物像番号331の人物についての画像情報に関する特徴量であり、輝度値ヒストグラム、大きさ、形状、アスペクト比、エッジ情報など周知の特徴量を適宜採用して記憶する。
滞留カウンタ335は、各人物像番号331の人物が、入力画像中において、至近領域内部に存在している時点数を保持するものである。
接近カウンタ334は、各人物像番号331の人物が、入力画像中において、金庫1の方向に向かって移動している時点数を保持しておくものである。
【0037】
図2に戻り、画像信号処理部40は、撮像部20から入力された入力画像を用い、記憶部30に記憶された情報を参照して、事務室に存在する人物の追跡や、事務室の明るさの判定、警報信号の送出などの処理を行う。
画像信号処理部40は、領域設定手段41、背景画像作成手段42、人物抽出手段43、追跡手段44、明るさ判定手段45、異常判定手段46、制御手段47から構成される。これらは、記憶部30に記憶されるプログラムモジュールにて実現されるものである。
【0038】
なお、本第一の実施の形態では、撮像部20と明るさ判定手段45が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成し、人物抽出手段43と領域情報31が特許請求の範囲における人物検出部を構成し、追跡手段44と追跡情報33が特許請求の範囲における追跡部を構成する。
【0039】
領域設定手段41は、図示しない入力手段と画像表示手段を用い、監視装置10の管理者権限を持つ人物が入力した金庫1に対する至近領域2の情報を、入力画像中における座標情報に変換し、記憶部30の領域情報31に記憶させる。
【0040】
領域設定をする様子を図4を用いて説明する。符号5は、撮像部20により取得された入力画像であり、事務室を天井から見下ろした様子を示している。符号6が監視装置10の管理者権限を持つ人物が指定した至近領域であり、図1の符号2に相当している。領域設定手段41は、符号6の領域情報を入力画像における座標情報に変換して、記憶部30の領域情報31として記憶する。
【0041】
入力手段と画像表示手段は、適宜公知のものを用いればよい。例えば監視装置10と外部接続可能なマウスと可搬型の小型液晶モニタでよく、入力画像を表示させながら操作者が至近領域2を含むようマウス操作で領域指定すればよい。
【0042】
背景画像作成手段42は、前述のように、監視装置10が起動したとき、あるいは定期的に撮像部20から取得した、人物が写っていないという条件で取得された入力画像を用いて、いわゆる背景画像を作成し、記憶部30の背景画像32に記憶させる。
背景画像32の作成方法は適宜公知の方法を採用すればよい。例えば、定期的に入力画像を背景画像32に記憶し直す、あるいは複数枚の入力画像を平均化して作成しても良いが、明るさの変動に対応できるため、最新の状態になるよう背景画像32は更新されるものとする。
【0043】
人物抽出手段43は、記憶部30に記憶されている背景画像と、現時点で取得された入力画像との画素毎の差分を求め、所定の閾値で2値化する。その結果について、大きさ、形状、外接矩形のアスペクト比など、予め定めておいた人らしい条件を満たす変化領域を特定し、その内部の画像を人物像として抽出する。また、人らしい条件を満たす変化領域の入力画像中における重心位置(座標値)を現時点における追跡位置として、追跡手段44に出力する。
【0044】
入力画像は図4の符号5に例示されているように、事務室の天井付近から概略鉛直下向きに見下ろした画像であるので、人物抽出手段43で抽出される人物像は、頭頂部と両肩を上から見た形状のものとなる。
人物抽出手段43で行われる処理は、画像処理技術の分野では一般的に行われる背景差分処理で十分なので、詳細は省略する。
【0045】
追跡手段44は、前時点までに人物抽出手段43により抽出され、記憶部30に記憶されている各人物像に関する追跡情報33と、現時点にて人物抽出手段43により抽出された各人物像と関連付けることで、人物像の追跡を実現する。
そのために、追跡手段44は、現時点において人物抽出手段43により抽出された人物像から、輝度ヒストグラムやテクスチャ情報などの特徴情報を抽出する。そして、記憶部30に記憶されている各人物像番号331の追跡情報33に関連付けられている特徴量333と比較する。
【0046】
さらに現時点での人物像の重心位置と記憶部30に記憶されている過去時点での軌跡情報332とがある程度近いもの、という条件も加味し、最も類似していると判断される人物像番号331と関連付ける。
追跡手段44は、関連付けられた人物像番号331の軌跡情報332と特徴量333を、現時点における重心と特徴量にて更新する。
【0047】
現時点で抽出された人物像が、記憶部30に記憶されている追跡情報33のいずれにも関連付けられなかった場合には、その人物像は現時点において新たに出現した、つまり事務室に入室した人物である、と判断する。
記憶部30に記憶されている追跡情報33のうちで、現時点で抽出された人物像に関連づけられなかったものがある場合には、その追跡情報33は、入力画像の視野外に移動した、つまりは事務室から外に出たと判断し、記憶部30から消去する。あるいは、一定時間は保持しておき、その間は上記の関連づけ処理を試みるものとしてもよい。
上述した追跡手段44における処理は、画像処理技術の分野における追跡処理として一般的なものであるので、詳細は省略する。
【0048】
明るさ判定手段45は、撮像部20から得られた入力画像を処理し、監視領域である事務室の明るさを判定する。そのために明るさ判定手段45は、入力画像全体の平均輝度を求め、それが所定の明るさ閾値未満の場合に、事務室は室内照明が消灯され、暗い状態であると判定する。事務室が暗いと判定された場合には、図示しないインターフェース部を通じて近赤外照明22を点灯する信号を出力し、同時にその旨を表す信号を異常判定手段46にも出力する。
入力画像全体の平均輝度ではなく、記憶部30に記憶されている領域情報31を参照し、金庫1の付近のみの平均輝度を求めるようにしても良い。
さらには、撮像部20のカメラが明るさ検出の機能を持っている場合には、その情報をそのまま用いてもよい。
【0049】
異常判定手段46は、領域情報31と追跡情報33と明るさ判定手段45の判定結果に基づいて、事務室において異常状態が発生したか否かを判定し、発生した場合には異常信号を制御手段47に出力する。
具体的には、事務室が暗いままで金庫に向かっている人物が検出されたり、事務室が暗いままで至近領域に所定時間以上(例えば30秒以上)留まっている人物が検出された場合に、異常状態と判定して、制御手段47に異常信号を出力する。
【0050】
制御手段47は、異常判定手段46の出力結果を参照し、出力部50を制御して、警報信号を出力させるか否かを決定する手段である。また、入力画像を証跡性の確保を目的として、記憶部30に記憶させてもよい。
【0051】
次に、図5から図7に示す図を用いて、第一の実施の形態にかかる監視装置10の動作を説明する。
図5は、監視装置10の動作のメインフロー図である。
まず、監視装置10を起動すると初期設定を行う(ステップS10)。このステップでは、撮像部20から入力画像を1枚取得し、領域設定手段41により、至近領域2の設定を行う。この際表示される画像と、操作者が入力する至近領域の例は図4に示す通りである。
【0052】
次に、ステップS20にて、監視装置10は、背景画像32の作成を行う。そのために、背景画像作成手段42は、撮像部20より複数枚、例えば10枚の入力画像を取得し、対応する各画素について画素値の平均を求め、背景画像として、記憶部30の背景画像32に記憶する。
【0053】
以下に述べるステップS30からS80は、撮像部20が1枚画像を取得するたびに繰り返し実行される。この撮像部20が1枚画像を取得するごとに1時点進むことになる。
ステップS30にて、画像信号処理部40は、撮像部20より、現時点の入力画像を1枚取得する。
【0054】
ステップS40にて、人物抽出手段43は、記憶部30の背景画像32を読み出し、各画素について、差分を求め、所定の閾値にて2値化することで、変化領域を抽出する。
【0055】
次に人物抽出手段43は、抽出された各差分領域について、大きさや縦横比など、記憶部30の追跡情報33の一部である特徴量333と同じ種類の特徴情報を抽出する。この抽出された特徴情報が事前に定めた撮影条件などに適合する場合には、その変化領域は人物が事務室に入室したことにより抽出されたものとみなし、その内部を人物像として抽出する。そうでなければ何らかの原因によるもの、すなわちノイズであると判断し、以後の処理の対象とはしない。
また、同時に人物抽出手段43は、人物によるものと判定された変化領域について、その位置を表す重心位置を求め、抽出された人物像の数を、記憶部30の、人物像数330に記憶する。
人物抽出手段43は、求めた各情報を追跡手段44に出力する。
【0056】
次にステップS50にて、追跡手段44は、記憶部30から追跡情報33を読み出し、人物抽出手段43から入力された変化領域に関する、対応する情報と比較する。
例えば、特徴量333については、各種類の特徴量についてマハラノビス距離を求めることとし、変化領域の重心位置と追跡情報33の軌跡情報332の前回の位置と距離を求める。追跡手段44は、それらを総合判定して、各差分領域が記憶部30に記憶されている各追跡情報33のいずれに最も類似しているかを判定する。
【0057】
追跡手段44は、最も類似している人物像番号331の軌跡情報332について、変化領域の重心位置にて更新し、特徴量333も差分領域から求められた特徴情報にて更新する。ここでいう軌跡情報332の更新とは、図3(b)に示したように、リスト形式で記憶されている軌跡情報332に、最新の重心位置を追加することである。
【0058】
なお、記憶されている追跡情報33が無い場合、すなわち人物像数が0の場合、または現時点の差分領域の重心位置が、いずれの軌跡情報332の最新の位置情報と所定以上離れた場合には、新たに事務室に入室した人物であるとして、人物像番号331の番号“1”に対応する軌跡情報332と特徴量333に新たに該当する情報を記憶する。
【0059】
上記の処理は、人物抽出手段43が抽出した人物像の数だけ繰り返すものとする。それが0の場合には特に処理は行わず、ステップS30に戻り、次の時点の入力画像を取得する。
【0060】
ステップS60にて、明るさ判定手段45は、撮像部20が取得した入力画像について、画面全体の平均輝度値を求めることにより事務室の明るさを判定する。入力画像の平均輝度が所定の閾値未満の場合、事務室は暗いと判定し、入力画像の平均輝度が所定の閾値以上の場合、事務室は明るいと判定する。
明るさ判定手段45の判定結果は異常判定手段46に出力される。同時に、事務室が暗いと判定された場合には、近赤外照明22を点灯させる。
【0061】
次にステップS70にて、異常判定手段46は、明るさ判定手段45の判定結果、追跡手段44の追跡結果を参照して、事務室に異常な状態が発生しているか否か、すなわち、事務室が暗いまま金庫1に接近したり、その前に居続ける(滞留する)人物が検出されると異常状態と判定する処理を行う。このステップにおける異常判定手段46の動作の詳細を図6を用いて説明する。
【0062】
まず、ステップS700にて、異常判定手段46は、記憶部30に記憶されている各人物像の追跡情報33について、軌跡情報332、滞留カウンタ335、接近カウンタ334を読み出す。
軌跡情報332は、図3(b)に示すように、人物像番号331ごとに過去時点3320、X座標3321、Y座標3322とが対応付けられて記憶されている。
【0063】
ステップS705にて、異常判定手段46は、現時点の座標情報と前回時点の座標情報から、着目する人物像が、入力画像上で移動した方向を求める。
異常判定手段46は、図3(b)において符号3323に示す現時点でのX座標、符号3324に示す現時点でのY座標、符号3325に示す前回時点でのX座標、符号3326に示す前回時点でのY座標を用い、移動軌跡を求める。
【0064】
これを図7を用いて説明する。図7において、符号700が前回時点における着目する人物の入力画像中での重心位置、符号701が同じく現時点における重心位置、符号702が着目する人物の移動軌跡であり、ベクトルとして描画してある。
異常判定手段46は、移動軌跡702を前回時点における位置700から現時点における位置701の方向に、符号703で示すように延長し、その先に至近領域6が存在するか否かを調べる(ステップS710)。
【0065】
図7に示すように、延長した先に至近領域6が存在する場合には、着目する人物は金庫に接近しているとして、異常判定手段46は該当する人物の接近カウンタ334を1増やす(ステップS715)。そうでない場合には接近カウンタ334を0にする(ステップS720)。
【0066】
次に異常判定手段46は、記憶部30の領域情報31を参照し、着目する人物が至近領域2の内部に位置しているか否かを判定する(ステップS730)。
着目する人物が至近領域2の内部に位置している場合には、滞留カウンタ335を1増やす(ステップS735)。そうでない場合には滞留カウンタ335を0にする(ステップS740)。
【0067】
そして、異常判定手段46は、接近カウンタ334と滞留カウンタ335のいずれかが所定の閾値以上であるか否かを調べ(ステップS750)、そのいずれかが閾値を超えている場合には制御手段47に異常信号を出力する(ステップS755)。いずれも閾値を超えていない場合には処理をステップS760に移し、次の人物像を処理対象とする。
なお、いずれかの人物像について異常信号を出力することになった場合には、図6に示す異常判定処理全体を終了させてもよい。
【0068】
なお、接近カウンタ334が所定の閾値以上ということは、着目する人物が継続して金庫に向かっていることを意味する。また、滞留カウンタ335が所定の閾値以上ということは、着目する人物が継続して金庫の至近領域に留まっていることを意味する。
ここで、不審人物の行動として、事務室に入室後、金庫に一直線に向かう場合には接近カウンタ334と滞留カウンタ335の両方が、それぞれ事前に設定した所定の閾値を越えるが、事務室内を物色した後に金庫の至近領域に留まることも考えられるので、接近カウンタ334と滞留カウンタ335のいずれかが所定の閾値を越えた場合に異常判定をすることが望ましい。
【0069】
図5に戻り、ステップS80にて、異常判定手段46が異常信号を制御手段47に出力している場合には、制御手段47は、出力部50に対して、所定の出力処理を行う。例えば、異常信号を図示しない通信回線を用いて外部の警備センタに送信したり、店舗の責任者が持ち歩く携帯電話に電子メールを送信する。あるいは入力画像を記憶部30に記憶しておき、証跡性を確保することもできる。
【0070】
以上述べてきた、本発明にかかる第一の実施の形態では、事務室に存在する人物に関して、その事務室内の位置の検出と、事務室の明るさの検出には撮像部20から得られた入力画像を処理していた。
本発明を実施するには、それに限られない。すなわち人物の位置の検出には測距型のセンサ、明るさの検出には照度センサを用いてもよい。測距型センサには、マイクロ波を使ったものをはじめ、超音波やレーザー光を使ったものなどが周知である。
【0071】
以下、本発明にかかる第二の実施の形態として、人物の位置の検出にマイクロ波による測距センサを使った場合について説明する。なお、これまで述べてきた、第一の実施の形態であるカメラを用いた方法と異なる部分を中心に説明するものとし、共通する箇所は適宜簡略化して説明する、または省略する。
【0072】
図8に、第二の実施の形態にかかる監視装置100の概略説明図を示す。本図において、図2と異なるのは、撮像部20に代わりに位置情報取得部200および明るさ取得部210、背景画像32に代わり背景情報320、背景画像作成手段42に代わり背景情報作成手段420、画像信号処理部40に代わり位置情報処理部400を設けたことである。
そのほか、機能はほぼ第一の実施の形態と同様な要素は、同名とし、異なる符号を付与している。
【0073】
なお、本第二の実施の形態では、明るさ取得部210と明るさ判定手段450が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成し、位置情報取得部200と人物抽出手段430と領域情報310が特許請求の範囲における人物検出部を構成し、追跡手段440と追跡情報330が特許請求の範囲における追跡部を構成する。
【0074】
位置情報取得部200は、本第二の実施の形態ではマイクロ波センサを用い、その設置位置から物体までの距離を取得するものである。設置位置は事務室において、水平面方向の距離情報が取得できる位置とする。位置情報取得部200を1つのみ設置するのであれば、金庫までの距離を直接計測できるよう金庫の近傍に、事務室の中心に向けて設置するのが望ましい。
【0075】
位置情報取得部200に、マイクロ波を使ったセンサの中でもレーダー型のものを使うのであれば、走査方向として水平方向に設定することで、物体までの距離のみならず水平方向の位置も検出可能である。
位置情報取得部200にレーダー型のものではなく、簡易に距離のみを取得するセンサを用いる場合には、例えば事務室の隅に事務室の中心方向を向けて3つ以上設置すれば、三点測量の原理により、事務室内での水平方向の位置を検出できる。
【0076】
位置情報取得部200は、所定時間ごとに事務室内部に存在する物体までの距離を求め、順次位置情報処理部400に出力する。この所定時間間隔は、カメラ21を用いた場合における画像取得間隔、いわゆるフレーム間隔に相当する。どれだけの間隔で位置情報処理部400に出力するかは、具体的な位置情報取得部200などのハードウェア性能を考慮して決定すればよい。
【0077】
明るさ取得部210は、一般的な照度センサを用いればよく、事務室全体の明るさを計測するものとする。あるいは適宜光学系を調整し、金庫付近のみの明るさを計測するようにしてもよい。あるいは事務室の照明スイッチのON/OFF情報を取得できる状況にあるのであれば、それを直接位置情報処理部400に入力してもよい。照明スイッチがONのときは事務室は明るい、OFFの時は暗いと判断できるからである。ただし、事務室の採光条件により、照明スイッチがOFFでも事務室が十分明るい場合もあるので、照明スイッチの情報は補助的なものに留めるのが望ましい。
明るさ取得部210は、所定時間ごとに明るさ情報を位置情報処理部400に出力する。
【0078】
記憶部30の領域情報310は、位置情報取得部200の計測結果を用いて、事務室において金庫1の至近領域2を特定できる形式で保存される。第一の実施の形態と同様に領域設定手段41にて設定される。
例えば、領域情報310は、位置情報取得部200からの所定の範囲の距離として保存される。あるいは、距離情報を距離画像に変換して保存しても良い。その場合、第一の実施の形態と同様な処理が可能となる。
【0079】
背景情報320は、事務室が無人という条件の下で位置情報取得部200から得られた計測結果を記憶しておく。事務室に、例えば棚が置かれている場合には、その棚までの距離情報も含めて背景情報となる。背景情報320は、画像処理による場合と同様に、現時点での位置情報取得部200からの入力情報との差分を求めることで、事務室に存在する人物の検出に用いられる。
背景情報320も、領域情報310と同様に距離画像に変換して記憶しておくと第一の実施の形態と同様な処理が可能となる。
【0080】
位置情報処理部400は、位置情報取得部200と明るさ取得部210からの入力と、記憶部30に記憶されている情報を参照し、所定の異常状態であれば警報信号を外部に出力する機能を持つ。図2の画像信号処理部40に相当する。
【0081】
背景情報作成手段410は、監視装置100の起動時や、事務室が無人であるという条件下で位置情報取得部200にて取得された複数時点での距離情報を平均して、背景情報320を作成する。また適宜、最新の情報に更新するものとする。前述のように距離画像に変換してもよい。
【0082】
人物抽出手段430は、記憶部30の背景情報320と位置情報取得部200より入力された最新の距離情報を基に、物体までの距離を求め、適当な条件で閾値処理をし、人物の抽出を行う。
背景情報320が距離画像に変換されて記憶されており、人物抽出手段430においても、前処理として位置情報取得部200から得られた最新の距離情報を距離画像に変換するのであれば、第一の実施の形態と同様に背景差分処理により人物を抽出できる。
【0083】
追跡手段440は、人物抽出手段430により抽出された人物までの距離情報を基に、各時点間における同一人物とみなせる条件を満たす人物を公知の方法で追跡する。
【0084】
明るさ判定手段450は、明るさ取得部210が取得した、事務室の明るさ情報を基に、事務室が明るいか暗いかを判定する。明るさ取得部210から入力される情報が例えば電圧値であれば、電圧の次元を持つ閾値、明るさ取得部210からは既にA/D変換された明るさ情報が入力されるならば、その値に関する閾値を定義しておき、事務室の明るさを判定する。
【0085】
異常判定手段460は、領域情報310と追跡情報330と明るさ判定手段450からの入力とを用いて異常を判定する。例えば、明るさ判定手段450が事務室は暗いと判定している状態で、追跡手段440が追跡している人物が継続して至近領域2方向に移動している場合、あるいは同じく事務室が暗いと判定されている状態で人物が所定時間以上至近領域2内に留まっていると判定された場合には異常状態が発生しているとして、異常信号を制御手段470に出力する。
【0086】
図9に、第二の実施の形態にかかる、監視装置100の動作フローを示す。これは第一の実施の形態にかかる動作フローである図5とほぼ同じであるが、背景画像作成(ステップS20)に代わり背景情報作成(ステップS200)、入力画像取得(ステップS30)に代わりセンサ情報取得(ステップS300)としたものである。第一の実施の形態である図5と共通する名称のステップでは、画像情報を処理する代わりに距離情報を処理する程度の変更点であるので、適宜説明を簡略化または省略する。
【0087】
これらの処理内容は第一の実施の形態とほぼ同様で、画像情報の代わりに距離情報を用い、それに適した処理を行えばよい。特に距離情報を距離画像に変換すれば、第一の実施の形態に沿った処理で異常判定が可能である。以下では距離情報を距離画像に変換する場合を例に説明する。
【0088】
ステップS100では、位置情報取得部200から距離情報を1時点分取得し、事務室を俯瞰した距離画像に変換して、第一の実施の形態と同様に至近領域2を設定する。
ステップS200の背景情報作成処理では、背景情報作成手段410は、位置情報取得部200から取得した距離情報を距離画像に変換し、記憶部30の背景情報320に記憶する。
【0089】
ステップS400では、人物抽出手段430は、ステップS300にて位置情報取得部200から取得した最新の距離情報を距離画像に変換し、背景情報320との差分を求めることで人物を抽出する。この際、追跡処理に必要な情報を抽出しておくのは第一の実施の形態と同様である。
ステップS500では、追跡手段440は、前ステップで取得した人物に関する追跡処理を行う。処理の流れは第一の実施の形態と同様である。
ステップS600では、明るさ判定手段450が、明るさ取得部210の出力結果を参照して、事務室の明るさを判定する。その判定内容は明るさ判定手段450の説明で述べた通りである。
【0090】
ステップS700では、異常判定手段460が、事務室において異常状態が発生したか否かを判定する。すなわち、明るさ判定手段450にて、事務室が暗いと判定された状態で、検出された人物が金庫1に近づいている、または至近領域2に留まっていると判定される場合に異常状態の発生を判断する。
【0091】
位置情報取得部200において取得された距離情報を距離画像に変換してあるので、第一の実施の形態と同様な方法で、金庫への接近や至近領域内部での滞留を判定すればよい。
距離情報を距離画像に変換しない場合には、位置情報処理部400において世界座標系を定義して、処理してもよい。
【0092】
他の処理は、第一の実施の形態と同様、または監視技術分野における通常の技術的知識を持つ者にとっては説明を要しないと思われるので、詳細な説明を省略する。
【0093】
次に本発明かかる第三の実施の形態について説明する。第一の実施の形態および第二の実施の形態では、入力画像中における人物像についての追跡処理が重要な意味を持っていたが、第三の実施の形態では、構成を簡略化し、至近領域付近のみを検出の対象とするものである。
【0094】
第三の実施の形態にかかる監視装置1000の概略構成図を図10に示す。本実施の形態では、監視装置1000は、第二の実施の形態にかかる概略構成図である図8と比較すると、位置情報取得部200の代わりに人物検出部250、位置情報処理部400の代わりに信号処理部4000を有している。そのほかの、図8に示した各構成要素とほぼ同機能のものは同名で異符号が付与されており、以下では説明を簡略化する、あるいは省略する。
なお、明るさ取得部210と明るさ判定手段4500が特許請求の範囲における明るさ判定部を構成するのは第二の実施の形態と同様である。
【0095】
人物検出部250は、人物を検出する機能を有するセンサ類であり、特に限定されない。これまでに述べてきたように、画像センサでもよいし、マイクロ波センサでもよい。あるいは受動型赤外線センサ(PIR)でもよいし、超音波センサでもよい。ただし、いずれのセンサであっても、設置にあたっては、検知範囲を至近領域6を必要十分に含むよう調整が行われるものとする。これにより、人物検出部250は、金庫の至近領域に存在する人物に限って検出が可能となる。
【0096】
異常判定手段4600は、明るさ判定手段4500から、事務室が暗い旨の出力を受けている場合であって、人物検出部250が金庫の至近領域に人物が存在していると出力している場合に、異常状態が発生していると判断して、制御手段4700に異常信号を出力する。
あるいは、計時手段を備え、人物検出部250が金庫の至近領域に所定時間以上(例えば30秒以上)人物が存在している場合に異常が発生していると判断してもよい。
【0097】
次に本発明かかる第四の実施の形態について説明する。第一の実施の形態または第二の実施の形態では、図7の模式図にて示したように、事務室が暗い中、金庫に一直線に向かっている場合に、金品の強奪を企てる不審者として検出するものとしていた。
これとは異なる性質の不審者には、通常は室内照明を点灯して明るくするはずが暗いまま事務室内部を徘徊する(うろつく)人物も例示できる。この場合、例えば金庫以外にも何らかの貴重品が無いか、あるいは重要書類が置かれていないか探すなどの犯行の予備的な意図を持っていると考えられる。第四の実施の形態ではこのような事務室が暗いまま事務室内部を徘徊する人物を検出する。
【0098】
第四の実施の形態にかかる監視装置の概略構成図は第一の実施の形態あるいは第二の実施の形態のものと同様に実現できるので省略する。
第四の実施の形態において、検出対象となる人物の動きの模式図を図11に示す。
【0099】
図11において、前回時点における人物の位置750から現時点における人物の位置751に移動したとする。その軌跡がベクトル752にて示されている。ベクトル752を延長した直線が符号753に示す点線であるが、第一の実施の形態および第二の実施の形態では点線753を伸ばした先に至近領域6が存在していることが時間的に継続しているか否かを判定していたが、第四の実施の形態では、逆に、図11に示すように、点線753を伸ばした先に至近領域6が存在していないことが時間的に継続しているか否かを判定するものとする。時間的に継続している場合には、人物が徘徊している(うろついている)と判定する。
【0100】
処理の流れとしては、図6に示すフロー図において、ステップS750の判断処理に変え、接近カウンタ334および滞留カウンタ335がそれぞれ0であるが、同一人物が所定の時間に渡って継続的に追跡されている場合に、異常判定手段46が異常判定するものとすればよいので、詳細なフロー図は省略する。
または、金庫に一直線に向かっている状態をも検出して異常状態と判定したい場合には、第一の実施の形態あるいは第二の実施の形態と同様に接近カウンタ334と滞留カウンタ335の値も参照して異常判定してもよい。
【0101】
本発明にかかる監視装置は、以上に述べてきた実施の形態に限られない。
前述のように、監視領域である事務室における人物の検出には、マイクロ波センサのほかにも超音波センサやレーザー光センサを用いても同様に実現できる。
あるいは、送受信機を複数備えることが望ましいが、RFIDによる手段でも同様に人物の位置情報の取得は可能となる。
【0102】
さらには、上記のような非接触タイプの測距センサではなく、事情が許すならば、事務室の床一面にマット型のセンサを敷き詰めることで、人物の体重により反応した位置を直接位置情報として用いることもできる。
また、事務室における不審な行動をする人物は複数人であっても、画像処理技術やセンサ技術における周知の方法を用いて同様に処理できる。
【0103】
さらには、本発明にかかる実施の形態では、店舗における事務室を監視領域に例示したが、解除状態で無人となり、出入り自由な状態にはなるが室内照明を消灯するのが通常の運用となる一方で、室内照明を消灯したまま入室し、所定の行動をとると不審とみなせる場所であれば、同様に本発明の監視装置を適用できる。
他には警備解除、警備セットという区別の無い運用で、人の出入りは自由である一方で常に異常状態の検出を行っている場所にも適用できる。
【0104】
さらには、重要物である金庫に近づく行為と、金庫の至近領域で留まる行為の両方を警備センタなどへの通報の条件としたが、前者が検出された場合にはその人物に対して音声やLED表示などで、接近行為は不審な行為であるとして警告し、その警告にも関わらず金庫の至近領域に立ち入り、所定時間留まったらはじめて警備センタなどへ通報する、と行為により、監視装置の対応のレベル分けをすることもできる。
【符号の説明】
【0105】
1・・・金庫
2・・・至近領域
10・・・監視装置
20・・・撮像部
30・・・記憶部
40・・・画像信号処理部
45・・・明るさ判定手段
50・・・出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、
前記監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、
前記監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、
前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記人物検出部からの出力があると異常と判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記人物検出部からの出力に基づき所定時間以上継続して人物が前記監視対象物の至近領域に位置していると異常と判定する請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
更に、前記監視領域における前記監視対象物の位置を予め記憶する記憶部と、
前記監視領域に存在する人物を追跡する追跡する追跡部を有し、
前記異常判定部は、前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記人物が前記監視対象物に接近していると異常と判定する請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項4】
監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、
前記監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、
前記監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、
前記監視領域に存在する人物を追跡する追跡部を有し、
前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記追跡部が所定時間に渡って前記監視領域内を前記人物が徘徊していると異常と判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置。
【請求項5】
前記明るさ判定部は、前記監視領域内を撮影した画像の平均輝度から照度を判定し、
前記人物検出部は、当該画像から人物を抽出及び抽出位置から監視対象の至近領域に人物の存在を検出し、
前記追跡部は、監視領域を順次撮影した前記画像から人物を追跡する請求項3又は請求項4の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項1】
監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、
前記監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、
前記監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、
前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記人物検出部からの出力があると異常と判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記人物検出部からの出力に基づき所定時間以上継続して人物が前記監視対象物の至近領域に位置していると異常と判定する請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
更に、前記監視領域における前記監視対象物の位置を予め記憶する記憶部と、
前記監視領域に存在する人物を追跡する追跡する追跡部を有し、
前記異常判定部は、前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記人物が前記監視対象物に接近していると異常と判定する請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項4】
監視領域内に配置された監視対象物を監視する監視装置であって、
前記監視領域内の照度を検出し所定照度以下であると出力する明るさ判定部と、
前記監視対象の至近領域に人物の存在を検出すると出力する人物検出部と、
前記監視領域に存在する人物を追跡する追跡部を有し、
前記明るさ判定部が所定照度以下であると出力しているときに、前記追跡部が所定時間に渡って前記監視領域内を前記人物が徘徊していると異常と判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常と判定すると異常信号を出力させる制御部とを有することを特徴とした監視装置。
【請求項5】
前記明るさ判定部は、前記監視領域内を撮影した画像の平均輝度から照度を判定し、
前記人物検出部は、当該画像から人物を抽出及び抽出位置から監視対象の至近領域に人物の存在を検出し、
前記追跡部は、監視領域を順次撮影した前記画像から人物を追跡する請求項3又は請求項4の何れか1項に記載の監視装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図1】
【図8】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図1】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2012−48690(P2012−48690A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192966(P2010−192966)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
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