説明

直流電気モータの保護装置を含むウインドシールドワイパー組立体

本発明は、駆動用の電気モータの保護装置を含むウインドシールドワイパー組立体、及び関連する方法に関する。ウインドシールドワイパー組立体は、ロータと接触する第1、第2、第3カーボンブラシ(10、14、40)を有する直流電気モータを含む。第1カーボンブラシ(10)は接地され、第2カーボンブラシ(14)は選択的に直流電源(17)へ接続され、第3カーボンブラシ(40)は、接地されず直流電源(17)へも接続されない。直流電気モータ(2)の固着を検出するための下部組立体が、電気モータ(2)の固着の情報を供給する。第1カーボンブラシ(10)と第3カーボンブラシ(40)との間の電圧測定手段が、第1電圧測定値を得ることを可能にし、第1電圧測定値は第1閾値と比較され、第1電圧測定値が第1閾値よりも小さいなら、電気モータの固着に関する第2の情報が更に発生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車用のウインドシールドワイパー組立体に関し、このウインドシールドワイパー組立体は、ウインドシールドワイパーの機構を駆動するための直流電気モータを含む。この直流電気モータは、ロータと、該ロータと接触する第1カーボンブラシと第2カーボンブラシと第3カーボンブラシとを含み、第1カーボンブラシは接地され、第2カーボンブラシは接続器を介して選択的に直流電源へ接続され、第3カーボンブラシは接地されず、直流電源へも接続されない。またウインドシールドワイパー組立体は、直流電気モータの固着の情報を発生するための、直流電気モータの固着を検出するための下部組立体と、直流電気モータの直流電源との接続を遮断する接続器へ制御信号を伝達する手段とを含む。
【0002】
また本発明は、ウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの保護装置であって、直流電気モータは、ロータと接触する第1カーボンブラシと第2カーボンブラシと第3カーボンブラシとを含み、第1カーボンブラシは接地され、第2カーボンブラシは、直流電気モータへ直流を供給するための接続器を介して選択的に直流電源へ接続され、第3カーボンブラシは接地されず、上記直流電源へも接続されない、直流電気モータの保護装置にも関する。
【0003】
最後に、本発明は、ウインドシールドワイパーを駆動するための直流電気モータが固着したときに、上述のタイプの直流電気モータを過熱による破壊に対して保護する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
自動車のウインドシールドワイパー組立体は、降雨時に自動車のウインドシールド上におけるワイパーブレードの反復往復運動を生じるように、回転運動を往復運動に変換することを可能にする、連結ロッド及びクランク型の機構を駆動するための電気モータを含む。これらの機構は、通常、降雨状況に適応するために、低速作動モードと高速作動モードにおいて作動することが可能である。両作動モードの間の差は、少なくとも毎分15往復である。ウインドシールドワイパーの始動は、例えばステアリングホイールの下に位置し、運転者によって操作されるスイッチによって、手動で制御される。また、ウインドシールドワイパーは、低速作動モードまたは高速作動モードにおけるウインドシールドワイパーの作動を制御するレインセンサによっても、自動的に始動される。ウインドシールドワイパーの作動要求が送られたときには、この作動要求は、論理・演算ユニットへ伝達される。論理・演算ユニットは、状況に応じて低速作動モードまたは高速作動モードにおいてモータが作動するように、電力リレーを制御する。
【0005】
しかしながら、電気モータは、固着することがありえる。この場合、ロータの巻線における電流が増加し、このことは、電気モータの破壊に至る可能性がある熱を発生させる。このため、ワイパーブレードが固着したときに電気モータを保護するための保護装置が通常設けられる。
【0006】
特許文献US 5 630 009には、過熱状態の場合に、モータへの電流を遮断するバイメタル遮断器からなる熱保護装置を含む、ウインドシールドワイパーの直流電気モータの制御方法及び装置が記載されている。
【0007】
また、モータの出力軸に取り付けられたカムからなる電気モータの保護装置が知られている。このカムは、周波数がモータの周波数と等しい矩形の電気信号が発生されるように電気接点の開閉を制御する。モータが固着すると、信号は変化しなくなる。車載コンピュータ(論理・演算ユニット)は、これに反応して、モータへの電流の供給を遮断する。論理・演算ユニットによって管理されるプログラム(「ON/OFF テストループ」)は、固着されているときの過熱からモータを保護し、固着が消滅したときには直流電気モータが正常に作動することを可能にする。
【0008】
しかしながら、例えば、カムを論理・演算ユニットへ接続する導線の断線のため、またはカムの故障のために矩形信号が検出されないと、論理・演算ユニットは、実際にはモータが正常に回転しているのに、モータが固着されている場合と同様に反応する。この結果、論理・演算ユニットは電気モータへの電流の供給を遮断するので、特に自動車が高速で雨の中を走行中である場合には、深刻な危険が生じることがある。ウインドシールドが拭かれないと、運転者は視界を失い、事故に至る可能性がある。
【0009】
このことが、電気モータが固着したときに、電気モータの過熱に対する保護装置が、以下の条件:
−自動車は、7km/h以下の速度で走行中である、
−7km/h以上の速度になる前に、ウインドシールドワイパーの制御スイッチ44が、自動車の運転者によって「OFF」位置におかれている、
においてのみ、起動される理由である。
【0010】
これらの2つの場合を除いて、保護装置は起動されない。もし固着が実際に存在し、もしこの固着が走行中に持続すると、電気モータは焼損する。このことが、例えば特許文献US 5 630 009に記載されているようなバイメタルによる追加の熱保護装置がしばしば設置される理由である。しかしながら、この解決策は、電気回路の中における追加の部品の使用、したがってコストを必要とする。さらに、この解決策は電気回路における抵抗の増加、したがって電気回路におけるエネルギ損失をもたらす。
【特許文献1】US 5 630 009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解消するウインドシールドワイパー組立体と直流電気モータの保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ウインドシールドワイパー組立体に関しては、上記目的は、ウインドシールドワイパー組立体が、第1電圧測定値を得るための第1カーボンブラシと第3カーボンブラシとの間の電圧の測定手段と、上記第1電圧測定値と第1閾値との比較によって、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことが決定されたら、上記直流電気モータの固着に関する第2の情報を発生するための、上記第1電圧測定値を上記第1閾値とを比較するための比較器とを含むことによって達成される。
【0013】
直流電気モータの固着に関する上記第2の情報は、上記直流電気モータの固着を検出するための下部組立体によって供給された情報を検査する、冗長な情報を形成する。
【0014】
有利には、ウインドシールドワイパー組立体または直流電気モータの保護装置は、上記比較器へ供給する第2電圧測定値を得て、上記第2電圧測定値を第2閾値と比較するために、上記第1カーボンブラシと第2カーボンブラシとの間の電圧の測定手段を更に含む。
【0015】
上記第2電圧測定値は、上記直流電気モータが固着していることを確認することを可能にする、もう一つの冗長な情報を形成することができる。
【0016】
直流電気モータの保護方法によれば、直流電気モータが正常に作動中の最初のステップにおいて、一方では、第1閾値を得るために、第1カーボンブラシと第3カーボンブラシとの間の電圧が測定され、他方では、第2閾値を得るために、上記第1カーボンブラシと第2カーボンブラシとの間の電圧が測定される。
【0017】
これらの値は、測定された後、自動車の論理・演算ユニットのメモリレジスタへ記録され、上記直流電気モータの通常の作動の際に、一方では、上記第1カーボンブラシと上記第3カーボンブラシとの間の電圧が測定され、このようにして測定された第1測定電圧値が上記第1閾値と比較される。他方では、上記第1カーボンブラシと上記第2カーボンブラシとの間の電圧が測定され、このようにして測定された第2測定電圧値が上記第2閾値と比較される。比較によって、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことと、上記第2電圧測定値が上記第2閾値よりも小さいこととの少なくとも一方が決定されたら、上記直流電源への接続が遮断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のその他の特徴及び利点は、例として示される実施の形態の以下の説明を、添付図面を参照して読むことによって明らかとなるであろう。これらの図面において:
−図1は、従来のタイプのウインドシールドワイパー組立体の概要図であり;
−図2、3は、図1に示すウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの、それぞれ低速作動モードと高速作動モードにおける回路図であり;
−図4は、モータの軸に取り付けられたカムを用いてモータを保護するための下部組立体を示す、図1に示すウインドシールドワイパー組立体の詳細図であり;
−図5は、カムの信号の電圧を時間の関数として示すグラフであり;
−図6は、本発明によるウインドシールドワイパー組立体の概要図であり;
−図7は、直流電気モータが低速作動モードで作動するときに、高速回路に誘起される起電力を示す回路図であり;
−図8は、直流電気モータが高速作動モードで作動するときに、低速回路に誘起される電圧を示す回路図であり;
−図9は、それぞれ高速作動モードと低速作動モードで作動中の、高速回路における電圧の読み取り値を示す図であり;
−図10は、それぞれ高速作動モードと低速作動モードで作動中の、低速回路における電圧の読み取り値を示す図である。
【0019】
図1に示すウインドシールドワイパー組立体は、直流電気モータ2と、車室制御ユニット(UCH)4と呼ばれる第1の論理・演算ユニットと、モータ隷属ユニット(USM)6と呼ばれる第2の論理・演算ユニットとを含む。
【0020】
直流電気モータ2は、従来からそうであるように、固定部分であるステータと、回転部分であるロータを含む。ステータは、磁場Φを発生する永久磁石からなる。ロータは、細長い円形の金属部品である。ロータは、沢山のノッチを有し、このノッチの中にターンを形成する導電ワイヤが巻かれる。直流電気モータ2は、2つの回転速度を有するモータである。直流電気モータ2は、「低速」と呼ばれる第1回転速度と、「高速」と呼ばれ、第1回転速度よりも高速の第2回転速度で作動することができる。ロータのみが電流を供給される。このため、ブラシ接触を構成する第1カーボンブラシ10が、電気接続12、すなわちこの場合はアースを形成する負端子を介して、直流電源の負端子へ接続される。第2カーボンブラシ14は、例えば自動車のバッテリーである直流電源17の他の1つの端子(正端子)16へ選択的に接続される。接続器である低速リレー18と高速リレー20が、正端子16と第2カーボンブラシ14との間に設けられる。低速リレー18の接極子22は、接地された端子24、または導線28を介して端子16へ接続された端子26と接触する。保護ヒューズ30が、導線28と直列に選択的に配置される。高速リレー20の接極子32は、導線35を介して第2カーボンブラシ14へ接続された端子34、または導線37を介して第3カーボンブラシ40へ接続された端子36と接触する。この例においては、低速リレー18と高速リレー20は、直列に配置される。低速リレー18の接極子22がアースに接続されているときには、このリレーは、「OFF」位置にある。他方、接極子22が端子26と接触しているときには、このリレーは、「ON」位置にある。同様に、高速リレー20の接極子32が端子34と接触しているときには、このリレーは、「OFF」位置にあり、接極子32が端子36と接触しているときには、このリレーは、「ON」位置にある。直流電気モータ2が、低速回転の電流を供給されるためには、低速リレー18は「ON」位置にあり、高速リレー20は「OFF」位置にある必要がある。直流電気モータ2が、高速回転の電流を供給されるためには、低速リレー18と高速リレー20が、ともに「ON」位置にある必要がある。
【0021】
車室制御ユニット4は、例えばステアリングホイールの下に設けられた制御スイッチ44へ接続されている。制御スイッチ44は、4位置、すなわち「OFF」位置と、低速「ON」位置と、高速「ON」位置と、自動位置を有する。制御スイッチ44が自動位置にあるときには、ウインドシールドワイパーのスイッチONとスイッチOFFは、車室制御ユニット4へ接続されたレインセンサ46によって制御される。車室制御ユニット4は、低速リレー18と高速リレー20の各接極子、したがってウインドシールドワイパーのスイッチONとスイッチOFFを制御するために、導線を介して低速リレー18と高速リレー20のコイルへ接続される。モータ隷属ユニット6も、後に説明するように、低速リレー18と高速リレー20を制御することが可能である。
【0022】
直流電気モータは、例えばワイパーブレードがウインドシールド上の障害物にぶつかって、固着させられることがありえる。この場合、ロータの巻線回路のターンを流れる電流が増加し、このことはロータの過熱と、場合によってはロータの破壊をもたらす。このことを回避するために、図1に示すウインドシールドワイパー組立体には、直流電気モータの固着を検出するための下部組立体が設けられている。周知のように、図4に詳細に示すこの下部組立体は、直流電気モータのロータの軸52に取り付けられたカム50を含む。カム50は、一方の端子はアース12へ接続され、他方の端子は、電子部品組立体56を介してバッテリー(直流電源)17の正極へ接続されたスイッチ54の電気接点の開閉を制御する。電子部品組立体56は、モータ隷属ユニット6へも接続されたスイッチ54の端子における、フィルタリングと調整を可能にする。このようにして、この下部組立体は、直流電気モータの回転と同じ周波数を有する矩形波を発生する。この電圧を図5に示す。スイッチ54が閉じられたときには、この電圧はゼロに等しい。スイッチ54が開かれたときには、モータ隷属ユニット6によって検知されるこの電圧Uは、バッテリー17の電圧に略等しい。
【0023】
直流電気モータが固着されると、電圧Uは変化しなくなる。
【0024】
電圧Uは、直流電気モータが固着された位置に応じて、0または隷属電圧(バッテリー17の電圧)に常続的に等しい。この状態を検出したときには、モータ隷属ユニット6は、直流電気モータへの電流の供給を停止する「OFF」位置へ移行させるように低速リレー18を制御する。モータ隷属ユニット6によって管理されるプログラム(「ON/OFF テストループ」)は、固着されている間の過熱から直流電気モータを保護し、固着が消滅したときには直流電気モータが正常に作動することを可能にする。
【0025】
しかしながら、下部組立体を論理・演算ユニット(モータ隷属ユニット)6へ接続する導線の断線やカムの故障(磨耗)のために、直流電気モータの固着を検出するための下部組立体が、誤った指示を生じることがありえる。この場合、モータ隷属ユニット6は、電圧Uの信号に変化がないことを直流電気モータ2の固着であると解釈し、直流電気モータ2への電流の供給を遮断する。この結果、自動車が高速で強い雨の中を走行中である場合には、突然視界が消失し、深刻な事故の危険が生じる。このことが、ウインドシールドワイパーの作動の安全性を確保するために、下記の条件:
−自動車は、7km/h以下の速度で走行中である、
−7km/h以上の速度になる前に、ウインドシールドワイパーの制御スイッチ44が、自動車の運転者によって「OFF」位置におかれている、
を満たす場合においてのみ、直流電気モータの固着の検出装置が起動される理由である。
【0026】
これらの場合を除いて、直流電気モータの固着の検出装置は、直流電気モータへの電流の供給を遮断しない。したがって、電圧Uの信号に変化がないことの検出が、実際に直流電気モータの固着に該当する場合には、直流電気モータは焼損する。
【0027】
例えば、温度が上昇した場合には直流電気モータへの電流の供給を遮断する、バイメタル素子からなるサーキットブレーカのような追加の保護手段を設けることによって、この問題を解消することが知られている。しかしながら、この熱保護装置の使用はコストを伴う。また熱保護装置は、電気回路における電気の損失を増加させる。
【0028】
図6は、上記の問題を解消する、本発明によるウインドシールドワイパー組立体を示す。このウインドシールドワイパー組立体は、図1〜4を参照して説明したウインドシールドワイパー組立体と全般的に類似している。すなわち、このウインドシールドワイパー組立体も、同様に、直流電気モータ2と、車室制御ユニット4と、モータ隷属ユニット6と、直流電源17と、接続器である低速リレー18と、高速リレー20を含む。3つのカーボンブラシ、すなわち第1カーボンブラシ10、第2カーボンブラシ14、第3カーボンブラシ40が、直流電気モータ2のロータに巻きつけられた電気導線と接触している。このウインドシールドワイパー組立体の動作は、先に説明したウインドシールドワイパー組立体の動作と同一であるので、繰り返して説明することはしない。
【0029】
本発明によれば、ウインドシールドワイパー組立体は、第1カーボンブラシ10と第3カーボンブラシ40との間(高速回路)の電圧測定手段を含む。示された例においては、電圧測定手段は、第1カーボンブラシ10と第3カーボンブラシ40との間の電圧(第1電圧測定値)を測定して記録することが可能なレコーダ60を含む。レコーダ60は、測定された電圧の値をモータ隷属ユニット6へ供給する。モータ隷属ユニット6は、第1電圧測定値を第1閾値と比較し、第1電圧測定値が第1閾値よりも小さいときには、直流電気モータ2の固着の情報を発生する。先に説明したように、直流電気モータ2の固着の情報は、直流電気モータ2の電流の供給を遮断するように作用する。
【0030】
このシステム(部分組立体)は独立して作動することができる。あるいは、望ましくは、図4、5を参照して説明したような、カムとスイッチを有する従来の直流電気モータの固着の検出装置(下部組立体)と並行して作動することもできる。この場合、第1電圧測定値と第1閾値との比較による直流電気モータ2の固着の情報は、カムとスイッチを有する検出装置から発生される直流電気モータ2の固着に関する第1の情報を確認または否定する、直流電気モータ2の固着に関する第2の情報を構成する。このようにして、直流電気モータの固着の検出の信頼性を高める冗長な情報を使用することができる。直流電気モータが固着されたときには、カムによって供給される固着の情報は、測定された電圧のレベルによって確認される。故障モード、すなわち、上述したように、モータ隷属ユニット6へ接続する導線の断線や、カムの磨耗によって、カムによる直流電気モータの固着が誤って検出された場合には、第1電圧測定値のレベルが、誤った指示を検出し、その結果、直流電気モータの固着が存在していないことを検出することを可能にする。したがって、このような状況においては、直流電気モータへの電流の供給は遮断されない。この作動モードにおいては、電圧の測定値を用いる固着の検出システムは、カムによって供給される情報に対して優先される。
【0031】
このシステムは、直流電気モータ2へ電流を供給する電気回路の中へ、例えばサーキットブレーカのような熱保護装置を設けることを要しないという利点を有する。電気回路の抵抗は減少される。また、情報の冗長性によって、作動の安全性が向上する。
【0032】
図6には、低速作動モードにおけるウインドシールドワイパー組立体が示されている。このモードにおいては、低速リレー18は「ON」位置にあり、高速リレー20は「OFF」位置にある。このようにして、第2カーボンブラシ14は直流電源17へ接続されるが、第3カーボンブラシ40は電流を供給されない。
【0033】
上述した直流電気モータの固着の検出装置は、ウインドシールドワイパーが、高速作動モードにおいて作動するときにも適用される。この場合、第3カーボンブラシ40が直流電源17へ接続され、第2カーボンブラシ14は電流を供給されないように、低速リレー18と高速リレー20との2つのリレーは、それぞれ「ON」位置にある。この場合、第2カーボンブラシ14と第3カーボンブラシ40の役割は入れ替えられる。この場合、第1カーボンブラシ10と第3カーボンブラシ40との間の電圧を測定することに代えて、第1カーボンブラシ10と第2カーボンブラシ14との間(低速回路)の電圧が測定される。この電圧(第2電圧測定値)は、先の場合と同様に、直流電気モータの固着の情報を発生するために、第1閾値とは異なる第2閾値と比較される。
【0034】
図2に示された低速作動モードにおいては、直流電源へ接続されるのは、第1カーボンブラシ10と直径方向に対向する第2カーボンブラシ14である。直流電気モータ2のような、直流で、一定の励磁または磁束のモータに関する基本方程式は:
【0035】
【数1】

である。
【0036】
これらの方程式において、Uはロータの供給電圧、Rはロータの巻線の抵抗、nはロータの回転速度(ラジアン/秒)、Φは1磁極における平均磁束、Pは磁極の対の数、aは巻線回路の対の数、Nは巻線回路当りの活性な導線の数である。活性な導線とは、この場合は、第1カーボンブラシ10と第2カーボンブラシ14とに接触している巻線の部分を構成する導線である。aとPの値は一定であり(K=P/a)、直流電気モータの回転速度は、次式:
【0037】
【数2】

によって表わされる。
【0038】
電流を供給するカーボンブラシの位置を、図3に示すように動かすと(第3カーボンブラシ40)、巻線に対称に電流が供給されなくなるので、抵抗Rは減少する。積R×Iは一定であるので、電流は比例的に増加する。主磁束に対して移動された活性な導線は、より少ない磁束を受ける。積N×Φは、直流電気モータの回転速度が増加するように減少する。この結果、ロータの回転速度n1(図2)は、ロータの回転速度n2(図3)よりも小さい。
【0039】
図7は、第1電圧測定値の測定原理を示す。この図において、直流電気モータ2は、低速で回転するように電流を供給されている。第2カーボンブラシ14が直流電源17と接続されている。供給電圧Uは、直流電気モータを回転速度n1で回転させる。図3を参照して先に説明した式が適用される。他方、電流を供給されない回路(高速回路)は、ジェネレータとして動作する。第1カーボンブラシ10と第3カーボンブラシ40との間には、電圧U=E´−(R×I)が生じる。この回路は開いているとして、I=0である。したがって、U=E´=K×N×Φ×n1である。
【0040】
【数3】

図8において、直流電気モータ2は、高速で回転するように電流を供給されている。第3カーボンブラシ40が、直流電気モータを回転速度n2で回転させる電圧Uの直流電源17と接続されている。電流を供給されない回路、すなわち低速回路は、ジェネレータとして動作する。第2カーボンブラシ14には、電圧U=E´=K×N×Φ×n2が生じる。
【0041】
【数4】

図9は、それぞれ高速作動モード(図9の左の部分)と低速作動モード(図9の中央の部分)で作動中の、高速回路における電圧の読み取り値を示す。
【0042】
13.85ボルトの直流電源17の電圧に対して、高速作動モードにおける高速回路の平均電圧は、約12.62ボルトである。この電圧は、約+9ボルトと約+16ボルトの間で変化する。
【0043】
他方では、低速作動モードにおける電圧は、約8.33ボルトである。この電圧は、直流電気モータの回転によって誘起された電圧であり、高速回路はジェネレータとして動作する。この電圧は、直流電気モータが正常に回転するときの図7の場合に相当する第1電圧測定値である。したがって、第1閾値は、13.85ボルトの供給電圧に対して、8.33ボルトである。勿論、供給電圧が変化すれば閾値電圧も変化する。
【0044】
最後に、図9の右の部分(領域B)は、直流電気モータが固着させられた場合の高速回路における電圧を示す。図に見られるように、この電圧は、先の2つの場合とは異なって、安定している。この電圧は約6ボルトである。この結果、この電圧は、8.33ボルトの閾値よりも小さく、このことは、直流電気モータの固着の状況を特徴付ける。
【0045】
図10は、それぞれ高速作動モード(図10の左の部分)と低速作動モード(図10の中央の部分)で作動中の、低速回路における電圧の読み取り値を示す。
【0046】
13.85ボルトの直流電源17の電圧に対して、高速作動モードにおける低速回路の平均電圧は、約17.22ボルトである。この電圧は、図8を参照して先に説明したように、誘起された電圧である。この電圧は、約+10ボルトと約+35ボルトの間で変化するので、極めて変化しやすいことが認められる。更に、図に見られるように、この電圧のレベルは、低速作動モードにおいて高速回路に誘起される電圧よりも高い。このことは、直流電気モータの回転数がより高いことによって説明される。この結果、このジェネレータによって発生される起電力はより大きい。この電圧は、13.85ボルトの供給電圧さえ超える。この結果、17.22ボルトの平均電圧が、高速作動モードにおける第2閾値である。
【0047】
図10の中央部分は、低速作動モードにおける低速回路の電圧を表す。この電圧は、13.85ボルトの供給電圧に対して、平均して12.96ボルトである。この電圧は変化するが、変化は大きくない(+10ボルト〜+15ボルト)。最後に、図10の右の部分(領域B)は、直流電気モータが固着させられた場合における低速回路における電圧の読み取り値を示す。この電圧は、約12ボルトである。この電圧は、上述したような高速作動モード対して定められた第2閾値、すなわち17.22ボルトよりも小さいことがわかる。したがって、モータ隷属ユニット6がこの電圧を検出すると、直流電気モータの電流供給の遮断が起動される。
【0048】
なお、本発明によれば、誘起電圧は、低速回路においても高速回路においてもきわめて大きく変化するのに対して、直流電気モータが固着させられた場合には、同じ電気回路における電圧の読み取り値は厳密に一定であるので、電圧のみではなく、電圧の変化を比較することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のタイプのウインドシールドワイパー組立体の概要図である。
【図2】図1に示すウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの低速作動モードにおける回路図である。
【図3】図1に示すウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの高速作動モードにおける回路図である。
【図4】モータの軸に取り付けられたカムを用いてモータを保護するための下部組立体を示す、図1に示すウインドシールドワイパー組立体の詳細図である。
【図5】カムの信号の電圧を時間の関数として示すグラフである。
【図6】本発明によるウインドシールドワイパー組立体の概要図である。
【図7】直流電気モータが低速作動モードで作動するときに、高速回路に誘起される起電力を示す回路図である。
【図8】直流電気モータが高速作動モードで作動するときに、低速回路に誘起される電圧を示す回路図である。
【図9】それぞれ高速作動モードと低速作動モードで作動中の、高速回路における電圧の読み取り値を示す図である。
【図10】それぞれ高速作動モードと低速作動モードで作動中の、低速回路における電圧の読み取り値を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、上記ロータと接触する第1カーボンブラシ(10)と第2カーボンブラシ(14)と第3カーボンブラシ(40)とを含み、上記第1カーボンブラシ(10)は接地され、接続器を介して、上記第2カーボンブラシ(14)は選択的に直流電源(17)へ接続され、上記第3カーボンブラシ(40)は選択的に上記直流電源(17)へ接続される、自動車用のウインドシールドワイパーの機構を駆動するための直流電気モータ(2)と、上記直流電気モータ(2)の固着の情報を発生するために上記直流電気モータ(2)の固着を検出するための下部組立体と、上記直流電気モータの上記直流電源(17)との接続を遮断する上記接続器へ制御信号を伝達する手段とを含む、ウインドシールドワイパー組立体において、第1電圧測定値を得るための上記第1カーボンブラシ(10)と上記第3カーボンブラシ(40)との間の電圧の測定手段と、上記第1電圧測定値と第1閾値との比較によって、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことが決定されたら、上記直流電気モータ(2)の固着に関する第2の情報を発生するための、上記第1電圧測定値を上記第1閾値とを比較するための比較器とを含むことを特徴とする、ウインドシールドワイパー組立体。
【請求項2】
上記直流電気モータの固着に関する上記第2の情報を発生するための上記直流電気モータの固着を検出するための部分組立体を含み、上記直流電気モータの固着に関する上記第2の情報は、上記直流電気モータの固着を検出するための上記下部組立体によって供給された上記情報を検査する冗長な情報を形成することを特徴とする、請求項1に記載のウインドシールドワイパー組立体。
【請求項3】
ウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの保護装置であって、上記直流電気モータは、ロータと接触する第1カーボンブラシと第2カーボンブラシと第3カーボンブラシとを含み、上記第1カーボンブラシは接地され、上記第2カーボンブラシは、上記直流電気モータへ直流を供給するための接続器を介して選択的に直流電源へ接続され、上記第3カーボンブラシは接地されず、上記直流電源へも接続されない、直流電気モータの保護装置において、第1電圧測定値を得るための上記第1カーボンブラシと上記第3カーボンブラシとの間の電圧の測定手段と、上記第1電圧測定値を第1閾値と比較して、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことが決定されたら、上記直流電気モータへの電流の供給を遮断する接続器に対する制御信号を発生するための比較器とを含むことを特徴とする、直流電気モータの保護装置。
【請求項4】
上記直流電気モータに、上記直流電気モータの固着の情報を発生するために、上記直流電気モータの固着を検出するための下部組立体が設けられたことを特徴とする、請求項3に記載の直流電気モータの保護装置。
【請求項5】
上記比較器へ供給する第2電圧測定値を得て、上記第2電圧測定値を第2閾値と比較するために、上記第1カーボンブラシと上記第2カーボンブラシとの間の電圧の測定手段を更に含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のウインドシールドワイパー組立体、または請求項3または4に記載の直流電気モータの保護装置。
【請求項6】
上記比較器は、比較によって、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことと、上記第2電圧測定値が上記第2閾値よりも小さいこととの少なくとも一方が決定されたら、上記直流電気モータの上記直流電源との接続を遮断する制御信号を発生することを特徴とする、請求項5に記載のウインドシールドワイパー組立体または直流電気モータの保護装置。
【請求項7】
少なくとも1つの論理・演算ユニットを含み、上記論理・演算ユニットへ決定アルゴリズムが挿入され、上記直流電気モータの固着を検出するための上記下部組立体によって発生される固着に関する上記情報と、上記比較器によって発生される固着に関する上記情報とが、上記直流電気モータへの供給電流を遮断する制御信号を発生させ、または発生させないようにするために、上記論理・演算ユニットへ供給されることを特徴とする、請求項1または2に記載のウインドシールドワイパー組立体、または請求項4または5に記載の直流電気モータの保護装置。
【請求項8】
上記直流電気モータの固着を検出するための上記下部組立体はカムを含み、上記カムは、上記直流電気モータの軸に取り付けられ、上記直流電気モータの回転の周波数と等しい周波数の信号を発生するようにスイッチの開閉を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載のウインドシールドワイパー組立体、または請求項4〜7のいずれかの1つに記載の直流電気モータの保護装置。
【請求項9】
接地された第1カーボンブラシ(10)と、直流電源(17)へ選択的に接続される第2カーボンブラシ(14)とを含み、上記第1カーボンブラシと上記第2カーボンブラシは直流電気モータのロータと接触する、自動車のウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの保護方法において、接地されず、上記直流電源へも接続されない、第3カーボンブラシ(40)が設けられ、上記直流電気モータが回転中の最初のステップにおいて、一方では、第1閾値を得るために、上記第1カーボンブラシと上記第3カーボンブラシとの間の電圧が測定され、他方では、第2閾値を得るために、上記第1カーボンブラシと上記第2カーボンブラシとの間の電圧が測定され、上記直流電気モータの通常の作動の際に、一方では、上記第1カーボンブラシ(10)と上記第3カーボンブラシ(40)との間の電圧が測定され、このようにして測定された第1測定電圧値が上記第1閾値と比較され、他方では、上記第1カーボンブラシと上記第2カーボンブラシとの間の電圧が測定され、このようにして測定された第2測定電圧値が上記第2閾値と比較され、比較によって、上記第1電圧測定値が上記第1閾値よりも小さいことと、上記第2電圧測定値が上記第2閾値よりも小さいこととの少なくとも一方が決定されたら、上記直流電源への接続が遮断されることを特徴とする、自動車のウインドシールドワイパー組立体の直流電気モータの保護方法。
【請求項10】
上記直流電気モータは、低速作動モードと高速作動モードとにおいて作動することができ、上記直流電気モータが上記低速作動モードにおいて作動するときには、上記第2カーボンブラシが上記直流電源へ接続され、上記直流電気モータが高速作動モードにおいて作動するときには、上記第3カーボンブラシが上記直流電源へ接続されることを特徴とする、請求項9に記載の直流電気モータの保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−526181(P2008−526181A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548872(P2007−548872)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/FR2005/051083
【国際公開番号】WO2006/072720
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】