相関及び微分相関の合成に基づく信号処理及び時間遅延測定
状態の不規則な系列を有する2値信号の2つのバージョンが、(i)一方の信号の遷移の時刻において他方の信号の平均時間導関数を表す第1の値と、(ii)2つの信号の相関値とを導出し、その後、第1の値と相関値とを合成することによって処理される。それらの信号間に導入される所与の相対的な遅延に対して、結果として合成された値は、導入された遅延によって、2つの信号の遷移が同時に発生するか否かを示す。その過程は、他の導入された遅延に対しても繰り返され、2つの信号間の遅延の量を求めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理のための方法及び装置、例えば2つの信号間の時間遅延を測定する方法及び装置に関する。本発明は、限定はしないが、特に、2値信号の2つのバージョン間の遅延を測定することに適用することができる。例えば、信号を送信し、その反射を受信し、反射と基準信号との間の遅延を測定するシステムでは、遅延により検出された物体の距離を表すことができる。そのような構成は、測距に適用する際に有用であり、例えば、ランダム2値波形又は擬似ランダム2値波形を利用する自動車用スペクトル拡散システムにおいて、障害物までの距離を推定するのに有用である。他の用途では、既知の場所にある信号源から信号を受信して、受信者の位置を特定することができる。
【背景技術】
【0002】
[従来技術の説明]
1つの重要なタイプの自動車障害物検出システムは、同期2値(ランダム又は擬似ランダム)波形によって適当に変調された連続なマイクロ波搬送波を利用する。その拡散を含む、結果として送信される信号のスペクトルの形状は、変調する2値波形の特性に依存する。所定の距離における障害物の存否に関する判定は、送信信号と、システムの視野内に存在する種々の物体によって後方に反射される信号とを一緒に処理した結果に基づく。
【0003】
測距のために、連続な同期2値波形が用いられるとき、その自己相関関数の最適な形状は三角形を有し、その「半高(half-height)」持続時間が、波形を生成する回路によって用いられるクロックの周期Tcに等しい。図1aは、同期ランダム2値波形x(t)を概略的に示す。図1bは、測距に適用するのに最適である自己相関関数Rxx(τ)の形状を示す。(理論的な)自己相関関数のそのような形状は、純粋にランダムな同期2値波形を特徴付ける。
【0004】
図1cは、双極性(bipolor)同期ランダム2値波形を生成するために用いられる従来の回路のブロック図である。この回路は、広帯域の物理的な雑音源と、その雑音源によって駆動されるゼロクロス検出器と、Dタイプフリップフロップと、それに続く電圧レベル変換器と、クロック発生器とを含む。雑音源の特性は、クロック発生器によって決定される任意の時刻において、統計的に独立な(又は、少なくとも概ね相関のない)ランダムな雑音サンプルが得られるように選択される。
【0005】
擬似ランダム2値系列から、広範な種類の有用な同期2値波形が得られることが当業者によく知られている。図2は、周期的な双極性擬似ランダム2値波形x(t)の自己相関関数Rxx(τ)の一例を示す。図から明らかなように、その自己相関関数も周期的であり、周期的な三角ピークの外側において、0ではなく負の値を有する。従来技術から、この残留する負の値は、「長い」擬似ランダム2値系列を用いることによって、無視できるレベルまで低減できることも知られている。従って、適当に選択された擬似ランダム2値波形の自己相関関数は、1周期にわたって観測すると、純粋にランダムな同期2値波形を特徴付ける自己相関関数の形を十分に近似することができる。
【0006】
マルチユーザ環境では、数多くの類似の障害物検出システムが、同じ周波数帯を共有して、同じ領域内で動作するであろう。結果として、相互の干渉を回避するために、各システムは、好ましくは、他の全てのシステムによって用いられる信号に対して直交する識別可能な(distinct)信号を使用しなければならない。同じ周波数を共有するシステムの数及びタイプはわからないので、各システムに識別可能な擬似ランダム2値系列を割り当てることは、極めて難しい(又は、できるにしても不都合である)。それゆえ、マルチユーザ環境では、純粋にランダムな、又は非周期性の無秩序(chaotic)な2値波形を用いることが好ましいことがある。さらに、純粋にランダムな2値波形は、最大限の予測不可能性を示すので、傍受及び巧妙なジャミングも受けにくい。
【0007】
図3は、同期2値波形によって位相変調される連続なマイクロ波搬送波を利用する、従来の障害物検出システムのブロック図である。このシステムは、各時刻において2つの値、+1又は−1のうちの一方だけを有することができる同期2値波形を生成する発生器BWGを備える。その波形は、周期Tcのクロックパルスを生成するクロック発生器CKGによって決定される時刻において、別の状態に切り替わることができる。このシステムはさらに、必要とされる搬送波周波数の正弦波を生成する発振器OSCと、搬送波信号の位相を0/πの2相で変調する位相変調器PMDと、位相変調された搬送波周波数を要求されるレベルまで増幅する電力増幅器PAMと、変調された搬送波信号を表す電磁波を障害物OBSに向かって放射する送信素子TELと、障害物OBSによって後方に反射される電磁波を受信する適当な受信センサRELと、受信センサRELによって与えられる信号を増幅し、予備処理する信号調整ユニットSCUと、発生器BWGによって生成される送信(基準)2値波形x(t)と、信号調整ユニットSCUによって供給される受信波形y(t)とを一緒に処理して、所定の距離における障害物の存否に関する判定DECを与える相関器CORとを備える。
【0008】
距離を求めるために、基準波形x(t)及び以下の形の受信信号y(t)から、時間遅延推定値が得られる。
y(t)=αx(t−Δt)+n(t)
ただし、x(t)は送信波形であり、αは減衰を表し、Δtは時間遅延であり、n(t)は、背景雑音及び他の干渉を表す。その後、L=c(Δt/2)から、障害物までの距離Lが求められる。ただし、cは光の速さである。
時間遅延Δtの値は通常、2つの信号x(t)及びy(t)の相互相関をとることによって、すなわち、以下の演算を実行することによって求められる。
【0009】
【数1】
【0010】
ただし、その積分は、持続時間Tの観測区間にわたって、且つ仮定された時間遅延τの範囲τmin<τ<τmaxにわたって計算される。相互相関関数Rxy(τ)を最大にする変数τの値、たとえばτ0は、未知の時間遅延Δtの推定値を与える。
一般的に、相互相関の演算は以下のステップを含む。
1.対象となる遅延の範囲τmin<τ<τmaxから1つの値τを選択する。
2.基準信号x(t)をこの値だけ遅延させる。
3.受信信号y(t)の値と、遅延した基準x(t−τ)の値とを乗算する。
4.ステップ3において得られた積値を所定の観測時間間隔Tにわたって積分する。
上記の手順は、範囲τmin<τ<τmaxからの対象となる全ての遅延値τに対して繰り返される。
【0011】
実際には、相互相関の前に、受信信号y(t)を適当に予めフィルタリングして、信号対雑音比(SNR)が最も高い周波数を強調して背景雑音を減衰させることができ、それにより、結果として生じる全SNRを高めることができる。信号プレフィルタリングを利用する相互相関器が、汎用の相互相関器として従来技術において知られている。
【0012】
従来の相互相関器システムのブロック図が図4に示される。このシステムは、プレフィルタPFと、乗算器MXYと、可変遅延線と、有限時間積分器と、ピーク検出器とを備える。このシステムは、選択された遅延時間τ毎に相互相関の値を求めるために必要とされる演算を実行する。
【0013】
プレフィルタリングを含む相互相関過程は、信号の十分なサンプリング及び量子化が用いられる場合には、ディジタル形式で実施することもできる。
【0014】
従来技術では、図4に示される相関器システムはシリアル相関器と呼ばれ、種々の遅延値τの場合の相関値が同時に求められるパラレル(又はマルチチャネル)構成とは対照的である。
【0015】
米国特許第6,539,320号は、主基準信号と、その時間的に遅延したレプリカとの間の遅延を求める代替の方法を開示する。以下の説明において、開示される方法は、クロスレーションと呼ばれ、その方法を実施するシステムは、クロスレータと呼ばれる。米国特許第6,539,320号の内容は参照により本明細書に援用される。クロスレーション技法は、一方の信号からの事象(ゼロクロス等)を用いて、他方の信号をサンプリングすることを含む。それらの事象は不規則な間隔で生じ、少なくとも概ね非周期的であることが好ましい。それらのサンプルを合成して、そのサンプリングが、その事象に対応する第2の信号の特徴と一致する程度を表す値が導出される。この過程を第1の信号と第2の信号との間の種々の異なる遅延の場合に繰り返すことによって、事象の最も大きな一致度を表す値を生じる遅延、すなわち2つの信号間の遅延を見つけることができる。
【0016】
上記の開示によれば、2値双極性信号x(t)が未知の遅延を受けて信号y(t)が生成される。そして、信号のx(t)の基準バージョンを調べることにより、そのレベルが、正の傾き(アップクロス)又は負の傾き(ダウンクロス)のいずれかで0をクロスする時刻が求められる。これらのクロス事象の時刻を用いて、信号y(t)の個々のセグメントが得られ、それらのセグメントは所定の持続時間を有する。ゼロアップクロスに対応するセグメントは全て加算され、ゼロダウンクロスに対応するセグメントは全て結果として生成される和から減算される。そのようなセグメント合成の表現を調べることにより、特徴の位置が時間遅延のS字形の奇関数で特定される。以下の説明では、このS字形の関数は、クロスレーション(crosslation)関数と呼ばれるであろう。
【0017】
クロスレーション関数の中央におけるゼロクロス表現内の位置は、処理されている2つの信号間の相互遅延の量を表す。図5は、ランダム2値波形及びその時間的に遅延したレプリカを一緒に処理することによって実験的に得られるS字形クロスレーション関数の一例を示す。
【0018】
図6は、信号x(t)とその時間的に遅延したレプリカとの間の遅延を求めることができる1つの実現可能なクロスレーションシステムを示す。信号y(t)は、雑音n(t)と、信号x(t)を係数αで減衰させてΔtだけ遅延させたものとの和である。
【0019】
信号y(t)は、ハードリミッタHYによって、対応する双極性2値波形に変換され、その波形はタップ付き遅延線TDYの入力に加えられる。TDYは、M個の同一の単位遅延セルD1、D2、...、DJ、...、DMのカスケードを含む。各セルは、適当に遅延した出力信号を与え、さらに、インバータIRによって供給されるその極性反転レプリカも与える。
【0020】
タップ付き遅延線TDYのパラレル出力は、スイッチのバンクBSを通じて、M個の平均化又は積分ユニットAVGに接続される。AVGは、タップ付き遅延線TDYによって供給されるデータを累算する。スイッチは、通常は開いており、その共通の制御入力に適当な信号が加えられたときに閉じる。スイッチが閉じている時間は、新たな各増分信号サンプルを、最小限の損失で取得できるようにするほど十分に長くなければならない。
【0021】
スイッチが閉じて、新たなデータが平均化ユニットに供給される時刻は、ゼロクロス検出器ZCDによって決定される。ゼロクロス検出器ZCDは、ハードリミッタHXによって処理される基準信号x(t)から得られる2値波形のゼロレベルのクロスを検出する。結果として生成される2値波形は、その後、定遅延線CDXによって遅延される。CDXによってもたらされる一定の遅延の値は、求められるべき時間遅延の予想される最大値以上である。平均化ユニットは、遅延した基準信号x(t)のゼロクロスと一致する時刻において、タップ付き遅延線TDYからの増分入力値を不均一に受信することに留意されたい。
【0022】
ゼロアップクロスが生じる度に、信号y(t)から得られる2値波形の個々のセグメントのレプリカが、平均化ユニットの入力に過渡的に現れる。同様に、ゼロダウンクロスが生じる度に、信号y(t)から得られる2値波形の個々のセグメントの極性反転レプリカが、平均化ユニットの入力に過渡的に現れる。こうして、平均化ユニットはこれらのセグメントの2つのグループを合成して、図5の表現に類似の合成された波形の表現を生成する。それは、x軸に沿って任意の時間スケールを有し、y軸はハードリミッタHYからの2値波形の振幅に対応する。
【0023】
平均化ユニットAVGの出力において得られる信号は、データプロセッサによって用いられる。データプロセッサによって実行される演算は、結果として生成されるS字形クロスレーション関数によって示される2つの反対の極性の主ピーク間に位置するゼロクロスの位置を特定するように定義され構成される。このゼロクロスの位置は、信号x(t)とy(t)との間の時間遅延に対応する。1組の適当な演算及びそれらの流れは、当業者であれば構成することができる。
【0024】
応用形態によっては、クロスレータシステムの構造を簡単にするために、アップクロス及びダウンクロスの両方を用いるのではなく、広帯域の非決定論的な信号x(t)の基準バージョンを調べて、ゼロアップクロス(又はダウンクロス)のみの時刻を特定することができる。しかしながら、用いられる個々の構成に関係なく、クロスレーションに基づく技法は常に、基準信号が所定の閾値を横切る時刻を確定するステップを含む。それらの具体的な時刻は、「有意事象(significant event)」と呼ばれる。クロスレーションのハードウエアの実施態様では、有意事象は適当なトリガパルスが生成される時刻を定める。
【0025】
時間遅延を求めるための米国特許第6,539,320号のクロスレーション技法は、ロバストであり、ハードウエアにおいて実施するのが比較的容易である。しかしながら、密集している複数の障害物を識別するために、障害物検出システムが高い分解能を与えなければならない応用形態にさらに適しているシステムを提供することが提案されている(本明細書において「第1の先願」と呼ばれる、2005年5月12日に出願の米国特許出願第11/127271号に対応する、2004年5月13日に出願の同時係属の欧州特許出願第04252785.3号を参照されたい)。
【0026】
第1の先願は、1つの方法を開示している。その方法によれば、時間遅延を測定するために、クロスレーション関数が最初に単極のインパルス形の関数に変換される。以下の説明では、この関数は、「微分クロスレーション(differential crosslation)」関数と呼ばれる。
【0027】
微分クロスレーション関数を得るために考案された機構が、図7を参照しながら、さらに詳細に説明される。図7a〜図7cはそれぞれ、x軸が時間に関する任意の単位であり、y軸が振幅単位であるグラフである。
【0028】
理論的なクロスレーション関数の一例が図7aに示される。この特定の形状は、ガウス形状の低域通過周波数スペクトルを有するガウス雑音のゼロクロスから得られた双極性ランダム2値波形を特徴付ける。
【0029】
ランダムな2値波形を特徴付けるクロスレーション関数の特性が、W. J. Szajnowski及びP. A. Ratliff著「Implicit Averaging and Delay Determination of Random Binary Waveforms」(IEEE Signal Processing Letters. 9, 193-195 (2002))にさらに詳細に説明されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0030】
上記の刊行物において示されるように、2つのレベル間の切替時間が0である理想的なランダム2値波形の場合、2値波形の特性に関係なく、クロスレーション関数は常に、遅延時刻において現れる正の「ステップ」を有する。それゆえ、クロスレーション関数の「導関数」は常に、ディラック「デルタ関数」の形をとる支配的な成分を有することになる。実際の実施態様では、好都合なことに、時間導関数の代わりに、クロスレーション関数と、その時間的に適当にシフトしたレプリカとの間の差を用いることができる。
【0031】
図7b及び図7cは、図7aのクロスレーション関数と、時間の単位0.001だけシフトしたレプリカとの間の差である微分クロスレーション関数を(異なる縮尺で)示している。図から明らかなように、微分クロスレーション関数の未知の遅延に対応するピークは2に等しく、オフピークの「負の」サイドローブの大きさ(図7cに詳細に示される)は、0.0032の値を超えない。それゆえ、この場合、ピーク対サイドローブ比は625よりも大きい。この比の値は、微分クロスレーションを求めるために用いられる遅延が0に近づくにつれて、無限に大きくなる傾向がある。
【0032】
従って、最初に、初期のクロスレーション関数に関して、相対的な時間遅延に対して、その関数の導関数を計算することに実質的に等価な演算を実行することによって、より好都合に、且つ正確に未知の時間遅延を求めることができる。
【0033】
図8は、第1の先願において開示される、2つの信号間の遅延を求めることができる微分クロスレータの変形形態のブロック図である。この微分クロスレータは、信号調整ユニットSCUと、クロスレータと、同一の差分回路Rのアレイと、未知の時間遅延の推定値を供給するデータプロセッサDPRとを備える。
【0034】
クロスレータは、M個の単位遅延セルDのカスケードTDYと、スイッチのバンクBSと、(M+1)個の同一の平均化(又は積分)回路AVGと、定遅延CDXと、ゼロクロス検出器ZCDとを備える。インデックスk(ただし、k=1、2、...、M)を有する遅延セルDは、遅延した信号y(t−kD)、及びその極性反転レプリカ−y(t−kD)の両方を供給する。ただし、Dは単位遅延値を表す。
【0035】
図から明らかなように、この構成では、システムはM個の差分回路及びM個の単位遅延セルを用いるが、平均化回路AVGの数は、(M+1)に等しい。各差分回路Rは2つの隣接する平均化回路AVGの出力に関して演算を行うので、差分回路Rのアレイに沿った位置に、未知の遅延に対応するインパルスが現れるであろう。従って、インパルスが生じる位置のインデックスが、未知の時間遅延Δtの値を一意に確定するであろう。
【0036】
雑音及び他の干渉が存在する場合、また物理的な回路内の切替時間が有限であることにも起因して、クロスレーション関数は常に、中央における急峻なステップではなく、0でない遷移領域を示すであろう。従って、結果として生成される微分クロスレーション関数の主ピークは、単一のインパルスとは異なることになり、幾つかの隣接する差分回路の出力にわたって現れることもある。この作用が図9に示されており、図9は、幾つかの選択された実験結果を示す。
【0037】
図9aは、実験的なクロスレーション関数の離散表現の一例である。図9bは、単位ステップ(単一セル)だけシフトした実験的なクロスレーション関数の2つのレプリカ間の差として得られる微分クロスレーション関数を示す。図から明らかなように、1つの支配的なメインピークに加えて、両側に幾つかの正のサイドローブも存在する。しかしながら、差分値に適当な判定閾値を適用することによって、主ピークの位置を常に確定することができる。
【0038】
差分回路Rのアレイによって生成される値は、データプロセッサDPRに供給される。データプロセッサDPRは、対象となる時間遅延の値を計算するために、アレイに沿ったインパルスの位置を確定する。インパルス中心の位置は、ピーク値、「重心」、又はインパルスの中央値から確定することができる。そのようなタスクを実行するために必要とされる演算は、当業者によって実施することができる。
【0039】
第1の先願は、任意の具体的な差分回路を用いることなく、ゼロクロス検出器の後段の補助回路を用いることによって、微分クロスレーション関数を得ることができるシステムも開示している。
【0040】
図10は、信号と、その時間遅延レプリカとの間の遅延を求めることができる、適当に変更された微分クロスレータのブロック図である。この構成では、差分回路はなく、プロセッサは補助遅延ユニットU及びパルス合成器Sを利用する。基準2値波形x(t)において立ち上がりエッジ(ゼロアップクロス)が検出されるとき、ゼロクロス検出器ZCDの出力に正のパルスが生成される。このパルスは補助遅延ユニットUによって遅延され、反転される。そのため、合成器Sは、主たる正のパルスと、その直後に続く負のレプリカとを含むパルスダブレット(doublet)を生成する。同様に、x(t)において立ち下がりエッジ(ゼロダウンクロス)が検出されるとき、ZCDの出力に生成される負のパルスは補助遅延ユニットUによって遅延され、反転される。そのため、合成器Sは、主たる負のパルスと、その直後に続く正のレプリカとを含むパルスダブレットを生成する。
【0041】
従って、1つのゼロアップクロスを検出するのに応答して、スイッチのバンクBSは、サンプリングされた2値波形y(t)の表現と、それに続くそのような表現の遅延して極性反転したレプリカとを平均化回路AVGに転送する。同様に、ゼロダウンクロスが検出されるとき、スイッチのバンクBSは、2値波形y(t)の極性反転したサンプリングされた表現と、それに続くそのような表現の遅延した(そして、極性反転していない)レプリカとを平均化回路AVGに転送する。結果として、平均化回路AVGのアレイは、クロスレーション関数と、その補助遅延ユニットUによってもたらされる量だけ遅延したレプリカとの間の差を直に生成する。
【0042】
変更されたプロセッサによって実行される他の機能及び演算は、図8のプロセッサによって実行される機能及び演算と同じである。
【0043】
図10に示される微分クロスレータは、以下の具体的な利点を提供することができる。
− 差分回路が不要である。
− 補助遅延ユニットUによってもたらされる遅延は、遅延セルDの単位遅延とは異なるようにすることもできる。従って、セルDの遅延未満の補助的な遅延の場合、導関数をさらに良好に近似することができる。
【0044】
図8及び図10に示される2つの微分クロスレータのいずれかの適当に変更されたバージョンを、図3の障害物検出システムの相関器CORの代わりに用いることにより、改善された時間遅延(及び距離)測定値を与えることができる。図8及び図10の回路は、信号調整回路SCUからのアナログ信号を用いて動作するようにしてもよいし、又は調整回路SCU内にアナログ/ディジタルコンバータを組み込むとともに、適当なディジタル遅延回路Dを用いることによって、ディジタル信号を用いて動作することができる。
【0045】
2004年5月13日に出願の欧州特許出願第04252786.1号(2005年5月12日に出願の米国特許出願第11/127165号に対応し、本明細書において「第2の先願」とも呼ばれる)は、微分クロスレータ内で実行される全ての機能及び演算が、スイッチ、ゼロクロス検出器、平均化回路、及び差分回路によってディジタル形式で実施される方法を開示する。
【0046】
図11は、第2の先願において開示される、2つの2値双極性波形x(t)とy(t)との間の遅延を求めることができる微分クロスレータのブロック図である。このシステムは、2つのハードリミッタHX及びHYと、データプロセッサDPRと、同一の論理ブロックのアレイ{BY1、BY2、...、BYM}と、定遅延線CDXと、それに続く単一の遅延ユニットUとを備える。各論理ブロックは、遅延ユニットD、それに接続される論理セルLC、及び論性セルによって駆動される可逆(アップ/ダウン)2進カウンタUDCから成る。アレイ内の全ての遅延ユニットは結合して、マルチタップ遅延カスケードを形成する。アレイ内の各論理セルLCは、自身の遅延ユニットDからの2つの信号と、遅延ユニットUからの別の2つの信号X1及びX2とを受信する。
【0047】
図11の微分クロスレータの動作は、以下のように要約することができる。
− 信号x(t)のゼロクロスによって定義される2値波形X(t)が、定遅延線CDXと、それに続く遅延ユニットUとによって適当に遅延される。遅延ユニットUは、2つの互いに遅延した論理信号X1及びX2を生成する。
− 信号y(t)のゼロクロスによって定義される2値波形Y(t)が、遅延カスケードに沿って伝搬する。カスケードの各遅延ユニットDは、それぞれその入力及び出力に現れる2つの互いに遅延した論理信号を供給する。
− 各論理セルLCは、遅延ユニットUの出力X1及びX2から受信される論理情報と、自身の遅延ユニットDの入力及び出力の論理状態とを組み合わせて、以下の判定を行う。
1.自身の遅延ユニットDにおいて生じる状態遷移が、遅延ユニットUにおいて生じる状態遷移と同時に生じているか否か。
2.同時に生じた遷移が、一致している(concordant)か(すなわち両方アップ又は両方ダウンのように同じタイプから成るか)、一致していない(disconcordant)か(すなわち逆のタイプから成るか)。
− 同時に生じた遷移が一致しているものと宣言された場合には、各論理セルLC内の可逆カウンタUDCは「カウントアップ」し、一致していないものと宣言された場合には、UDCは「カウントダウン」する。
− 外部制御ユニット(図示せず)によって開始される測定サイクルの開始時に、全てのカウンタUDCがクリアされ、測定サイクルが終了するときに、カウンタの内容がデータプロセッサDPRに転送される。
− データプロセッサDPRによって実行される機能及び演算は、図8及び図10のシステムによって用いられるデータプロセッサによって実行される機能及び演算と同じである。
【0048】
例示するために、図12は、M個の同一の論理ブロックLCのうちの1つ、この場合には、論理ブロックBY2の取り得る構造の一例を示す。全ての入力変数A、B、X1、及びX2は、論理変数0又は1であり、2値波形の2つのレベルに対応する。入力CKにパルスが現れたときにUD=1の場合には、可逆カウンタUDCはカウントアップし、入力CKにパルスが現れたときにUD=0の場合には、そのカウンタはカウントダウンする。論理ブロックの他の機能的に等価な実施態様は、当業者には明らかであろう。
【0049】
図11に示されるディジタル微分クロスレータを、相関器CORの代わりに図3の障害物検出システムに組み込むことにより、改善された時間遅延(及び距離)測定値を与えることができる。
【0050】
上記の微分クロスレータはパラレル構造を有するが、第2の先願は、論理回路を用いて構成されるシリアル微分クロスレータも開示する。
【0051】
物体検出の目的を果たすためにランダムな2値信号を送信することには既知の利点がある。特に適当に変調された連続波伝送を用いて送信するときに、良好なエネルギー効率を得ることができる。2値信号が急峻な自己相関関数を有するように、擬似ランダム発生器を用いて信号状態を選択することによって、迅速な収束が可能である。
【0052】
同期ランダム2値信号が用いられるとき、クロスレーション関数Cxx(τ)は理想的には図15aに示される形をとる。これは、図7aの関数の形に類似しているが、2値波形のクロック周期毎に離散したレベルを示す(assume)。この関数は、信号X(t)内の遷移(クロックパルスが生成されるときにのみ生じることがある)間の間隔だけ時間差がある波形Y(t)のセグメントの平均レベルに対応する。従って、2つの波形が同時に生じるような遅延値である場合、波形Y(t)における全て正に移行する遷移が整列する。したがって、クロスレーション関数は、負の値と、それに続く等しい正の値とを示す(負に移行する遷移も同時に生じるが、対応するサンプルが減算されるので、これらはクロスレーション関数に対して正に移行する遷移と同じ影響を及ぼす)。相関のない2値状態の場合に、これらの2つのクロック周期に対応する遅延間隔の外側では、クロスレーション関数は平均して0になる。
【0053】
微分クロスレーション関数Dxx(τ)は図15bに示される形を有する。例えば、図11の回路の場合、カウンタUDCが波形Y(t)内の遷移をカウントするので、この関数は直に生成することができる。信号X(t)内の正に移行する遷移によって、信号Y(t)において同時に正に移行する遷移が生じると、カウンタUDCがインクリメントされ、信号Y(t)において同時に負に移行する遷移が生じると、カウンタUDCがデクリメントされる。それゆえ、カウンタは、X(t)信号の正に移行する遷移の時刻において、Y(t)信号の平均時間導関数に対応する値を採用する。X(t)信号の負に移行する遷移は逆の効果を有するので、X(t)信号の負に移行する遷移の時刻におけるY(t)信号の平均時間導関数は、カウント値から減算される。
【0054】
微分クロスレーション関数Dxx(τ)は、それがいかに生成されるかに関係なく、波形X(t)及びY(t)が同時に生じる遅延値において、大きな正の値(これは正に移行する遷移及び負に移行する遷移の両方が同時に一致して生じることに対応する)を有するであろう。この前後には、2値波形の1つのクロック周期に相当する遅延だけ正のピークからそれぞれ分離される負の偏位がある。波形Y(t)の(例えば)正に移行する遷移の前後には、(1クロック周期だけ遅れて)負に移行する遷移だけが存在することができる(又は遷移が存在しない)ので、負の偏位、すなわちサイドローブがそれぞれ生じる。それゆえ、波形間で1クロック周期の遅延がある場合、X(t)波形の正に移行する遷移が、Y(t)波形の負に移行する遷移と同時に生じることになり、その逆も起こる。これらの一致しない遷移によって、図15bの負の偏位が生じる。1クロック周期の遅延がある場合、X(t)波形の遷移と同時にY(t)の一致しない遷移が生じる可能性と、Y(t)波形において遷移が生じない可能性とは概ね等しい(2値状態がランダムに選択されるものと仮定する)。そのため、負の偏位は、中央の正の偏位の高さの約半分だけである。
【0055】
一般的に、相関に基づく信号処理は、2つの障害物間の距離がc(Tc/2)未満である場合には、それらの障害物を区別することができない。ただし、cは光の速さであり、Tcは障害物検出に用いられる2値波形を生成するために用いられるクロック周期である。図13は、2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の相関器の出力信号Rxy(τ)の例を示す。図13cから明らかなように、理想的な(雑音がなく、帯域幅の制限がなく、観測時間が無限である)場合であっても、密集している2つの障害物の場合、2つの識別可能な相関ピークは結合して、ただ1つのピークになる。
【0056】
この理想的な場合に微分クロスレーションが用いられるとき、2つの障害物は、帯域幅が無限であり、且つ雑音がなければ、その距離に関係なく区別することができる。図14は、2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合に、同期2値信号を受信する微分クロスレータの出力信号Dxy(τ)の例を示す。
【0057】
図14から明らかなように、雑音があり、また帯域幅が制限されても、正のピークは明らかに視認することができる。それにも関わらず、歪みに起因して、負のサイドローブが、正のピークを特定するのを妨げることがある。例えば、送信された2値信号が位相変調される場合には、受信機は通常、受信信号の個々の2値状態を明確に認識できるようにするための固定された基準(fixed reference)を持たないであろう。この場合には、各負のサイドローブが、正のピークとして認識されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0058】
従って、例えば、マルチユーザ環境において動作する障害物検出システム又は位置測定システムにおいて適用する場合に、時間遅延及び距離の測定のための改善された高分解能の技法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明の複数の態様が、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0060】
本発明のさらに別の態様によれば、微分クロスレータを用いて、不規則な(例えば、ランダム、ただし、この用語は擬似ランダムも含む)一連の状態を有する2値信号が処理される。微分クロスレータは、信号間に所与の遅延が導入される場合に、それらの信号のうちの一方の状態遷移の時刻において、他方の信号の平均導関数を表す出力(それは、その2値状態に依存するレベルを有する)を生成する。上記の負のサイドローブの影響を緩和するために、微分クロスレータの出力は、2つの信号間の相関を表す値と合成される。相対的な遅延によって微分クロスレーション関数が負のサイドローブを生成するようになるとき、その相関値は低くなる。そのため、2つの信号を合成することによって、負のサイドローブを低減又は除去できるようになるであろう。従って、相関器の出力と微分クロスレータの出力とを合成することによって、高精度遅延測定にさらに適している出力が与えられる。
【0061】
本発明は、時間遅延測定システムに適用することができる。このシステムでは、2つの信号の遷移が実質的に同時に発生するようになる遅延を求めるために、導入される遅延の複数の値に対して、クロスレーション及び相関の合成された出力が求められる。
【0062】
好ましい一実施の形態では、2つの信号間の時間遅延は、(a)微分クロスレーション、(b)前期相関、及び(c)後期相関の結果を合成することによって測定される。それにより、合成されていなければ微分クロスレーションに起因して生じることになった負のサイドローブが、さらに効果的に除去される。
【0063】
本発明は、送信される信号と物体からのその反射との間の遅延を測定することによって、物体検出システムのための時間遅延測定の用途に拡張される。さらには、複数の既知の場所から受信される1つ又は複数の信号対の信号間の相対的な遅延を測定し、それにより、それらの既知の場所の方位を求めることができるようにすることによって位置を測定する位置測定システムのための時間遅延測定の用途に拡張される。しかしながら、例えば、監視システムの場合に、本発明を単純に用いて、或る特定の距離に物体が位置するか否かを判定することもできる。
【0064】
ここで、一例として、本発明を具現する構成が、添付の図面を参照しながら説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
図16は、本発明によるマイクロ波障害物検出システムを示す。このシステムの大部分は図3のシステムと類似しており、類似の参照符号は類似の構成要素を表す。
【0066】
このシステムは、図3の相関器CORに加えて、微分クロスレータCRX(図8、図10、及び図11に示される構成のうちの1つを用いることができる)を含む信号処理回路を用いる点が異なる。相関器及び微分クロスレータはいずれも、基準信号x(t)と、基準入力信号x(t)の遅延した(反射した)バージョンである信号y(t)とを受信する。
【0067】
相関器及び微分クロスレータの出力は合成器CRに供給される。例えば、合成器として、乗算器を用いることができる。そのような場合には、合成された出力は、2つの関数、すなわち図1b及び図15cに示される形状を有する相関関数Rxx(τ)と、図15bに示される形状を有する微分クロスレーション関数Dxx(τ)との積になるであろう。それゆえ、図15dに示され、合成された出力において結果として得られる関数[Rxx(τ)Dxx(τ)]は、高精度遅延測定のために要求される理想的な形状を示すであろう。詳細には、その出力は(理想的な状況では)、負のサイドローブを生じることなく、検出された物体毎に、単一で、急峻で、高レベルの正の振幅ピークを含むであろう。従って、雑音がある場合でも、さらには帯域幅が制限される場合であっても、従来技術のシステムよりも容易に物体を検出することができる。
【0068】
図15から明らかなように、理想的な状況では、負のサイドローブの位置は、相関関数が0まで減少する点と一致するであろう。しかしながら、実際の構成では、帯域幅が限られており、負のサイドローブは完全には減衰しない可能性がある。以下に説明される変更された構成は、この問題を緩和することを意図している。
【0069】
図17の実施形態は、図16の実施形態と類似しており、以下に説明される場合を除いて、類似の構成要素は類似の参照符号で特定される。
【0070】
図17では、相関器CORの出力は、コンパレータCMPの一方の入力に供給される。コンパレータの別の入力は、所定の閾値レベルTHを受信するように構成される。コンパレータCMPは、相関器出力が閾値THよりも大きくなる時にだけ、出力信号を生成する。この出力は、スイッチ形の合成器CRを閉じる。それにより、クロスレータCRXの出力を、検出信号DECとして用いることができるようにする。図18に示されるように、適当に選択された閾値THを用いることによって、クロスレータCRXからの負のサイドローブが確実に除去される。
【0071】
図17は、スイッチが、これらの出力を合成するために用いるのに適した構成要素の別の例であることを示している。このスイッチを用いることにより、相関器CORの出力が、クロスレータCRXの出力を開閉する。一般的に、これらの出力から同時発生する(すなわち、信号x(t)とy(t)との間の同じ相対的な遅延の場合に生じる)高いレベルに応答する任意の構成要素を用いることができる。
【0072】
図19の実施形態は、図16の実施形態と類似しており、以下に説明される場合を除いて、類似の構成要素は類似の参照番号で特定される。
【0073】
図19では、図16の相関器CORの代わりに、2つの相関器COR1及びCOR2が用いられる。さらに、基準信号x(t)は、相関器COR1、クロスレータCRX、及び相関器COR2に提供される前に、遅延回路D1、D2、及びD3によって課せられる遅延を受ける。遅延回路D2によって課せられる遅延は、遅延回路D1によって課せられる遅延とD3によって課せられる遅延との中間である。従って、相関器COR1及びCOR2は、クロスレータCRXの演算に対して、「前期」及び「後期」の相関を実行する。
【0074】
この演算の効果は、図20と図15とを比較することによって明らかになる。図20aは、クロスレータCRXの出力を示しており、図15bに示される出力と同じである。図20bは、「前期」及び「後期」の相関器COR1及びCOR2の出力を示す。これらの合成された出力は、図20bにおいて暗く示されており、2Tcに僅かに満たない遅延周期に及ぶ。従って、これらの出力をクロスレータCRXの出力と合成して図20cに示される結果を得る。クロスレータからの負のサイドローブは、より確かに除去されているが、中央の正のピークは僅かにしか減衰していない。
【0075】
クロスレータCRXが、両者間にΔTの遅延を有する信号x(t)及びy(t)を処理することによって導出される出力を与えているものと仮定する。クロスレータ出力が、両者間にΔT−ETの遅延を有する信号x(t)及びy(t)に基づく「前期」クロスレータCOR1から導出される相関値、及び両者間にΔT+LTの遅延を有する信号x(t)及びy(t)に基づく「後期」クロスレータCOR2から導出される相関値と合成されるように、回路D1、D2、及びD3によって引き起こされる遅延が設定されることが好ましい。ただし、ET及びLTは概ね等しいことが好ましい。また、ET、LT<Tc/2であることが好ましい。さらに、ET、LT<Tc/4であることがさらに好ましい。
【0076】
別法では、回路D1、D2、及びD3を用いて達成される相対的な遅延は、信号y(t)を遅延させることによって得ることもできる。実際には、おそらく別個の外部遅延回路が用いられる必要はなく、クロスレータCRX並びに相関器COR1及びCOR2の内部遅延回路を用いて、それら内部遅延回路における合成器CRにおいて合成されるための出力の適当な部分を選択することによって、相対的な遅延が達成される。
【0077】
所望により、図17の実施形態と同じように、相関器COR1及びCOR2の出力を閾値比較にかけることもできる。
【0078】
本発明による構成を用いることは、種々の信号処理タスクのために既に相関器を利用しているシステムにおいて特に好都合であろう。
【0079】
2つの別個の相関器COR1及びCOR2を用いる必要はなく、それらの機能は、ただ1つの相関器を2つの別個のモードにおいて連続して用いることによって、例えば、信号x(t)及びy(t)のうちの一方に適用される遅延を変更することによって与えることもできる。
【0080】
相関演算は、それ自体が当該技術分野において知られている数多くの方法のいずれかにおいて、たとえば、信号の積を積分することによって、又はフーリエ変換を用いることによって実行することができる。
【0081】
例示される実施形態の合成器は、出力を生成するために乗算を用いているが、ゲーティング回路を使用することなどの他の構成も可能である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態のこれまでの説明は、例示及び説明のために提示されてきた。これは、本発明を包括的に述べることや、本発明を開示されたのと全く同じ形態に限定することは意図していない。これまでの説明を鑑みて、数多くの改変、変更、及び変形によって、当業者が、本発明を、検討される具体的な用途に合わせて種々の実施形態において利用できるようになることは明らかである。
【0083】
所望により、このシステムは、信号x(t)及びy(t)のうちの一方に適用される特定の遅延に対応する特定の距離において、物体が存在するか否かだけを判定するように構成することもできる。他の距離に対しても装置を使用できるようにするために、この遅延を変更するための手段を設けることもできる。
【0084】
微分クロスレータは、図8、図10、及び図11の構成と同じように、サンプリングするために2値信号の正に移行する遷移及び負に移行する遷移の両方に対応する事象を使用することが好ましいが、これは不可欠ではない。
【0085】
上記の構成では、信号間の遅延を測定するために、反射した信号y(t)が基準信号x(t)を用いてサンプリングされる。代わりに、基準信号x(t)をサンプリングするために、反射した信号y(t)を用いることもできる。しかしながら、これは、受信された信号内に大きな雑音がある場合、及び/又は装置の距離内に複数の物体が存在する場合には特に、都合が良いとは思われない。
【0086】
図11に示されるような論理回路に基づく微分クロスレータの構成は変更することができる。例示される構成では、各論理セルLCにおいて、(遅延ユニットDによって引き起こされる遅延だけ分離される)2つの連続した点において信号y(t)をサンプリングするために基準信号x(t)の各遷移を用いる。サンプル間の差に依存する値が、カウンタUDCに供給される。こうして、カウンタUDCは、信号y(t)の時間導関数に依存する値を累積する。その動作は、図10の微分クロスレータの動作と類似している(所望により、時間導関数のさらに正確な表現を得るために信号y(t)の3つ以上のサンプルを取ることもできるが、これは現時点では不要であると考えられる)。
【0087】
別の実施形態では、信号x(t)の各遷移によって信号y(t)の現在の値が平均化手段に供給される論理セルを有することもできる。その際、それらの平均化手段は、図15aのクロスレーション関数Cxx(τ)に対応する表現を全体として生成する。その際、この表現を遅延値で微分して(例えば、図8の構成と同じように、連続した平均化手段間の差を抽出することによる)、微分クロスレーション関数を求めることができる。このため、サンプル値を平均して遅延値で微分することにより、サンプル化された時間導関数を平均する図11に例示される構成によって得られるのと同様の結果を得ることができる。
【0088】
説明された構成では、送信される2値信号は、ランダムな状態の系列を有する。代わりに、状態の系列を非ランダムに選択することもできるが、その系列は少なくとも対象となる周期にわたって不規則なパターンを形成するべきである。
【0089】
本明細書において、用語「ランダム」は、文脈が許す限り、且つ限定することなく、純粋にランダムに、非決定論的に生成される信号だけでなく、擬似ランダム2値信号及び無秩序な信号を生成するために従来技術において用いられるような、フィードバック回路を設けられたシフトレジスタ構成の出力等の、擬似ランダム、且つ/又は決定論的な信号も含むことを意図している。
【0090】
本発明は、送信される2値信号が連続波信号であるシステムに適用されるときに、また、信号が概ね一定の包絡線を有するように(例えば、位相変調によって)変調されるシステムに適用されるときに特に有用である。これらの特性によって、効率的且つ効果的なシステムを構成できるようになる。
【0091】
先に示唆されたように、本発明は、観測者に対して未知の位置及び/又は距離にある障害物のような物体の存在を検出するためのシステムに適用することができる。また、本発明は、既知の位置から複数(好ましくは、少なくとも3つ)の信号を受信し、その個々の信号対間の遅延を測定することによって、既知の位置に対する相対的な場所及び/又は方位を検出する位置測定システムにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】a)は、同期ランダム2値波形の概略図であり、b)は、測距に適用するのに最適である自己相関関数の形状を示す図であり、c)は、双極性同期ランダム2値波形を生成するために用いられる従来の回路のブロック図である。
【図2】周期性擬似ランダム2値波形の自己相関関数の一例を示す図である。
【図3】従来のマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図4】従来の相互相関器システムのブロック図である。
【図5】実験的に得られたクロスレーション関数の一例を示す図である。
【図6】時間遅延を求めるためにクロスレーションを利用するシステムのブロック図である。
【図7】a)は、ランダム2値信号の理論的なクロスレーション関数を示す図であり、b)は、図7aのクロスレーション関数と、時間単位の0.001だけシフトしたレプリカとの間の差を示す図であり、c)は、図7bと異なる縮尺において、図7aのクロスレーション関数と、時間単位の0.001だけシフトしたレプリカとの間の差を示す図である。
【図8】微分クロスレータのブロック図である。
【図9】a)は、実験的なクロスレーション関数の離散表現の一例を示す図であり、b)は、実験的な微分クロスレーション関数を示す図である。
【図10】変更された微分クロスレータのブロック図である。
【図11】ディジタル微分クロスレータのブロック図である。
【図12】ディジタル微分クロスレータによって用いられる論理ブロックの取り得る構造の一例を示す図である。
【図13】密集している2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の相関器の出力信号の例を示す図である。
【図14】密集している2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の微分クロスレータの出力信号の例を示す図である。
【図15】a)は、同期ランダム2値波形のクロスレーション関数を概略的に示す図であり、b)は、対応する微分クロスレーション関数を示す図であり、c)は、相関関数の形状を示す図であり、d)は、微分クロスレーション関数と相関関数とを合成した結果を示す図である。
【図16】本発明によるマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図17】図16のマイクロ波障害物検出システムの変更したバージョンのブロック図である。
【図18】図17の実施形態における変更の効果を示すための図である。
【図19】本発明による別のマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図20】a)は、図19の実施形態の微分クロスレータの出力を示す図であり、b)は、図19の相関器の合成された出力を表す図であり、c)は、微分クロスレータの出力と相関器の出力とを合成した結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理のための方法及び装置、例えば2つの信号間の時間遅延を測定する方法及び装置に関する。本発明は、限定はしないが、特に、2値信号の2つのバージョン間の遅延を測定することに適用することができる。例えば、信号を送信し、その反射を受信し、反射と基準信号との間の遅延を測定するシステムでは、遅延により検出された物体の距離を表すことができる。そのような構成は、測距に適用する際に有用であり、例えば、ランダム2値波形又は擬似ランダム2値波形を利用する自動車用スペクトル拡散システムにおいて、障害物までの距離を推定するのに有用である。他の用途では、既知の場所にある信号源から信号を受信して、受信者の位置を特定することができる。
【背景技術】
【0002】
[従来技術の説明]
1つの重要なタイプの自動車障害物検出システムは、同期2値(ランダム又は擬似ランダム)波形によって適当に変調された連続なマイクロ波搬送波を利用する。その拡散を含む、結果として送信される信号のスペクトルの形状は、変調する2値波形の特性に依存する。所定の距離における障害物の存否に関する判定は、送信信号と、システムの視野内に存在する種々の物体によって後方に反射される信号とを一緒に処理した結果に基づく。
【0003】
測距のために、連続な同期2値波形が用いられるとき、その自己相関関数の最適な形状は三角形を有し、その「半高(half-height)」持続時間が、波形を生成する回路によって用いられるクロックの周期Tcに等しい。図1aは、同期ランダム2値波形x(t)を概略的に示す。図1bは、測距に適用するのに最適である自己相関関数Rxx(τ)の形状を示す。(理論的な)自己相関関数のそのような形状は、純粋にランダムな同期2値波形を特徴付ける。
【0004】
図1cは、双極性(bipolor)同期ランダム2値波形を生成するために用いられる従来の回路のブロック図である。この回路は、広帯域の物理的な雑音源と、その雑音源によって駆動されるゼロクロス検出器と、Dタイプフリップフロップと、それに続く電圧レベル変換器と、クロック発生器とを含む。雑音源の特性は、クロック発生器によって決定される任意の時刻において、統計的に独立な(又は、少なくとも概ね相関のない)ランダムな雑音サンプルが得られるように選択される。
【0005】
擬似ランダム2値系列から、広範な種類の有用な同期2値波形が得られることが当業者によく知られている。図2は、周期的な双極性擬似ランダム2値波形x(t)の自己相関関数Rxx(τ)の一例を示す。図から明らかなように、その自己相関関数も周期的であり、周期的な三角ピークの外側において、0ではなく負の値を有する。従来技術から、この残留する負の値は、「長い」擬似ランダム2値系列を用いることによって、無視できるレベルまで低減できることも知られている。従って、適当に選択された擬似ランダム2値波形の自己相関関数は、1周期にわたって観測すると、純粋にランダムな同期2値波形を特徴付ける自己相関関数の形を十分に近似することができる。
【0006】
マルチユーザ環境では、数多くの類似の障害物検出システムが、同じ周波数帯を共有して、同じ領域内で動作するであろう。結果として、相互の干渉を回避するために、各システムは、好ましくは、他の全てのシステムによって用いられる信号に対して直交する識別可能な(distinct)信号を使用しなければならない。同じ周波数を共有するシステムの数及びタイプはわからないので、各システムに識別可能な擬似ランダム2値系列を割り当てることは、極めて難しい(又は、できるにしても不都合である)。それゆえ、マルチユーザ環境では、純粋にランダムな、又は非周期性の無秩序(chaotic)な2値波形を用いることが好ましいことがある。さらに、純粋にランダムな2値波形は、最大限の予測不可能性を示すので、傍受及び巧妙なジャミングも受けにくい。
【0007】
図3は、同期2値波形によって位相変調される連続なマイクロ波搬送波を利用する、従来の障害物検出システムのブロック図である。このシステムは、各時刻において2つの値、+1又は−1のうちの一方だけを有することができる同期2値波形を生成する発生器BWGを備える。その波形は、周期Tcのクロックパルスを生成するクロック発生器CKGによって決定される時刻において、別の状態に切り替わることができる。このシステムはさらに、必要とされる搬送波周波数の正弦波を生成する発振器OSCと、搬送波信号の位相を0/πの2相で変調する位相変調器PMDと、位相変調された搬送波周波数を要求されるレベルまで増幅する電力増幅器PAMと、変調された搬送波信号を表す電磁波を障害物OBSに向かって放射する送信素子TELと、障害物OBSによって後方に反射される電磁波を受信する適当な受信センサRELと、受信センサRELによって与えられる信号を増幅し、予備処理する信号調整ユニットSCUと、発生器BWGによって生成される送信(基準)2値波形x(t)と、信号調整ユニットSCUによって供給される受信波形y(t)とを一緒に処理して、所定の距離における障害物の存否に関する判定DECを与える相関器CORとを備える。
【0008】
距離を求めるために、基準波形x(t)及び以下の形の受信信号y(t)から、時間遅延推定値が得られる。
y(t)=αx(t−Δt)+n(t)
ただし、x(t)は送信波形であり、αは減衰を表し、Δtは時間遅延であり、n(t)は、背景雑音及び他の干渉を表す。その後、L=c(Δt/2)から、障害物までの距離Lが求められる。ただし、cは光の速さである。
時間遅延Δtの値は通常、2つの信号x(t)及びy(t)の相互相関をとることによって、すなわち、以下の演算を実行することによって求められる。
【0009】
【数1】
【0010】
ただし、その積分は、持続時間Tの観測区間にわたって、且つ仮定された時間遅延τの範囲τmin<τ<τmaxにわたって計算される。相互相関関数Rxy(τ)を最大にする変数τの値、たとえばτ0は、未知の時間遅延Δtの推定値を与える。
一般的に、相互相関の演算は以下のステップを含む。
1.対象となる遅延の範囲τmin<τ<τmaxから1つの値τを選択する。
2.基準信号x(t)をこの値だけ遅延させる。
3.受信信号y(t)の値と、遅延した基準x(t−τ)の値とを乗算する。
4.ステップ3において得られた積値を所定の観測時間間隔Tにわたって積分する。
上記の手順は、範囲τmin<τ<τmaxからの対象となる全ての遅延値τに対して繰り返される。
【0011】
実際には、相互相関の前に、受信信号y(t)を適当に予めフィルタリングして、信号対雑音比(SNR)が最も高い周波数を強調して背景雑音を減衰させることができ、それにより、結果として生じる全SNRを高めることができる。信号プレフィルタリングを利用する相互相関器が、汎用の相互相関器として従来技術において知られている。
【0012】
従来の相互相関器システムのブロック図が図4に示される。このシステムは、プレフィルタPFと、乗算器MXYと、可変遅延線と、有限時間積分器と、ピーク検出器とを備える。このシステムは、選択された遅延時間τ毎に相互相関の値を求めるために必要とされる演算を実行する。
【0013】
プレフィルタリングを含む相互相関過程は、信号の十分なサンプリング及び量子化が用いられる場合には、ディジタル形式で実施することもできる。
【0014】
従来技術では、図4に示される相関器システムはシリアル相関器と呼ばれ、種々の遅延値τの場合の相関値が同時に求められるパラレル(又はマルチチャネル)構成とは対照的である。
【0015】
米国特許第6,539,320号は、主基準信号と、その時間的に遅延したレプリカとの間の遅延を求める代替の方法を開示する。以下の説明において、開示される方法は、クロスレーションと呼ばれ、その方法を実施するシステムは、クロスレータと呼ばれる。米国特許第6,539,320号の内容は参照により本明細書に援用される。クロスレーション技法は、一方の信号からの事象(ゼロクロス等)を用いて、他方の信号をサンプリングすることを含む。それらの事象は不規則な間隔で生じ、少なくとも概ね非周期的であることが好ましい。それらのサンプルを合成して、そのサンプリングが、その事象に対応する第2の信号の特徴と一致する程度を表す値が導出される。この過程を第1の信号と第2の信号との間の種々の異なる遅延の場合に繰り返すことによって、事象の最も大きな一致度を表す値を生じる遅延、すなわち2つの信号間の遅延を見つけることができる。
【0016】
上記の開示によれば、2値双極性信号x(t)が未知の遅延を受けて信号y(t)が生成される。そして、信号のx(t)の基準バージョンを調べることにより、そのレベルが、正の傾き(アップクロス)又は負の傾き(ダウンクロス)のいずれかで0をクロスする時刻が求められる。これらのクロス事象の時刻を用いて、信号y(t)の個々のセグメントが得られ、それらのセグメントは所定の持続時間を有する。ゼロアップクロスに対応するセグメントは全て加算され、ゼロダウンクロスに対応するセグメントは全て結果として生成される和から減算される。そのようなセグメント合成の表現を調べることにより、特徴の位置が時間遅延のS字形の奇関数で特定される。以下の説明では、このS字形の関数は、クロスレーション(crosslation)関数と呼ばれるであろう。
【0017】
クロスレーション関数の中央におけるゼロクロス表現内の位置は、処理されている2つの信号間の相互遅延の量を表す。図5は、ランダム2値波形及びその時間的に遅延したレプリカを一緒に処理することによって実験的に得られるS字形クロスレーション関数の一例を示す。
【0018】
図6は、信号x(t)とその時間的に遅延したレプリカとの間の遅延を求めることができる1つの実現可能なクロスレーションシステムを示す。信号y(t)は、雑音n(t)と、信号x(t)を係数αで減衰させてΔtだけ遅延させたものとの和である。
【0019】
信号y(t)は、ハードリミッタHYによって、対応する双極性2値波形に変換され、その波形はタップ付き遅延線TDYの入力に加えられる。TDYは、M個の同一の単位遅延セルD1、D2、...、DJ、...、DMのカスケードを含む。各セルは、適当に遅延した出力信号を与え、さらに、インバータIRによって供給されるその極性反転レプリカも与える。
【0020】
タップ付き遅延線TDYのパラレル出力は、スイッチのバンクBSを通じて、M個の平均化又は積分ユニットAVGに接続される。AVGは、タップ付き遅延線TDYによって供給されるデータを累算する。スイッチは、通常は開いており、その共通の制御入力に適当な信号が加えられたときに閉じる。スイッチが閉じている時間は、新たな各増分信号サンプルを、最小限の損失で取得できるようにするほど十分に長くなければならない。
【0021】
スイッチが閉じて、新たなデータが平均化ユニットに供給される時刻は、ゼロクロス検出器ZCDによって決定される。ゼロクロス検出器ZCDは、ハードリミッタHXによって処理される基準信号x(t)から得られる2値波形のゼロレベルのクロスを検出する。結果として生成される2値波形は、その後、定遅延線CDXによって遅延される。CDXによってもたらされる一定の遅延の値は、求められるべき時間遅延の予想される最大値以上である。平均化ユニットは、遅延した基準信号x(t)のゼロクロスと一致する時刻において、タップ付き遅延線TDYからの増分入力値を不均一に受信することに留意されたい。
【0022】
ゼロアップクロスが生じる度に、信号y(t)から得られる2値波形の個々のセグメントのレプリカが、平均化ユニットの入力に過渡的に現れる。同様に、ゼロダウンクロスが生じる度に、信号y(t)から得られる2値波形の個々のセグメントの極性反転レプリカが、平均化ユニットの入力に過渡的に現れる。こうして、平均化ユニットはこれらのセグメントの2つのグループを合成して、図5の表現に類似の合成された波形の表現を生成する。それは、x軸に沿って任意の時間スケールを有し、y軸はハードリミッタHYからの2値波形の振幅に対応する。
【0023】
平均化ユニットAVGの出力において得られる信号は、データプロセッサによって用いられる。データプロセッサによって実行される演算は、結果として生成されるS字形クロスレーション関数によって示される2つの反対の極性の主ピーク間に位置するゼロクロスの位置を特定するように定義され構成される。このゼロクロスの位置は、信号x(t)とy(t)との間の時間遅延に対応する。1組の適当な演算及びそれらの流れは、当業者であれば構成することができる。
【0024】
応用形態によっては、クロスレータシステムの構造を簡単にするために、アップクロス及びダウンクロスの両方を用いるのではなく、広帯域の非決定論的な信号x(t)の基準バージョンを調べて、ゼロアップクロス(又はダウンクロス)のみの時刻を特定することができる。しかしながら、用いられる個々の構成に関係なく、クロスレーションに基づく技法は常に、基準信号が所定の閾値を横切る時刻を確定するステップを含む。それらの具体的な時刻は、「有意事象(significant event)」と呼ばれる。クロスレーションのハードウエアの実施態様では、有意事象は適当なトリガパルスが生成される時刻を定める。
【0025】
時間遅延を求めるための米国特許第6,539,320号のクロスレーション技法は、ロバストであり、ハードウエアにおいて実施するのが比較的容易である。しかしながら、密集している複数の障害物を識別するために、障害物検出システムが高い分解能を与えなければならない応用形態にさらに適しているシステムを提供することが提案されている(本明細書において「第1の先願」と呼ばれる、2005年5月12日に出願の米国特許出願第11/127271号に対応する、2004年5月13日に出願の同時係属の欧州特許出願第04252785.3号を参照されたい)。
【0026】
第1の先願は、1つの方法を開示している。その方法によれば、時間遅延を測定するために、クロスレーション関数が最初に単極のインパルス形の関数に変換される。以下の説明では、この関数は、「微分クロスレーション(differential crosslation)」関数と呼ばれる。
【0027】
微分クロスレーション関数を得るために考案された機構が、図7を参照しながら、さらに詳細に説明される。図7a〜図7cはそれぞれ、x軸が時間に関する任意の単位であり、y軸が振幅単位であるグラフである。
【0028】
理論的なクロスレーション関数の一例が図7aに示される。この特定の形状は、ガウス形状の低域通過周波数スペクトルを有するガウス雑音のゼロクロスから得られた双極性ランダム2値波形を特徴付ける。
【0029】
ランダムな2値波形を特徴付けるクロスレーション関数の特性が、W. J. Szajnowski及びP. A. Ratliff著「Implicit Averaging and Delay Determination of Random Binary Waveforms」(IEEE Signal Processing Letters. 9, 193-195 (2002))にさらに詳細に説明されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0030】
上記の刊行物において示されるように、2つのレベル間の切替時間が0である理想的なランダム2値波形の場合、2値波形の特性に関係なく、クロスレーション関数は常に、遅延時刻において現れる正の「ステップ」を有する。それゆえ、クロスレーション関数の「導関数」は常に、ディラック「デルタ関数」の形をとる支配的な成分を有することになる。実際の実施態様では、好都合なことに、時間導関数の代わりに、クロスレーション関数と、その時間的に適当にシフトしたレプリカとの間の差を用いることができる。
【0031】
図7b及び図7cは、図7aのクロスレーション関数と、時間の単位0.001だけシフトしたレプリカとの間の差である微分クロスレーション関数を(異なる縮尺で)示している。図から明らかなように、微分クロスレーション関数の未知の遅延に対応するピークは2に等しく、オフピークの「負の」サイドローブの大きさ(図7cに詳細に示される)は、0.0032の値を超えない。それゆえ、この場合、ピーク対サイドローブ比は625よりも大きい。この比の値は、微分クロスレーションを求めるために用いられる遅延が0に近づくにつれて、無限に大きくなる傾向がある。
【0032】
従って、最初に、初期のクロスレーション関数に関して、相対的な時間遅延に対して、その関数の導関数を計算することに実質的に等価な演算を実行することによって、より好都合に、且つ正確に未知の時間遅延を求めることができる。
【0033】
図8は、第1の先願において開示される、2つの信号間の遅延を求めることができる微分クロスレータの変形形態のブロック図である。この微分クロスレータは、信号調整ユニットSCUと、クロスレータと、同一の差分回路Rのアレイと、未知の時間遅延の推定値を供給するデータプロセッサDPRとを備える。
【0034】
クロスレータは、M個の単位遅延セルDのカスケードTDYと、スイッチのバンクBSと、(M+1)個の同一の平均化(又は積分)回路AVGと、定遅延CDXと、ゼロクロス検出器ZCDとを備える。インデックスk(ただし、k=1、2、...、M)を有する遅延セルDは、遅延した信号y(t−kD)、及びその極性反転レプリカ−y(t−kD)の両方を供給する。ただし、Dは単位遅延値を表す。
【0035】
図から明らかなように、この構成では、システムはM個の差分回路及びM個の単位遅延セルを用いるが、平均化回路AVGの数は、(M+1)に等しい。各差分回路Rは2つの隣接する平均化回路AVGの出力に関して演算を行うので、差分回路Rのアレイに沿った位置に、未知の遅延に対応するインパルスが現れるであろう。従って、インパルスが生じる位置のインデックスが、未知の時間遅延Δtの値を一意に確定するであろう。
【0036】
雑音及び他の干渉が存在する場合、また物理的な回路内の切替時間が有限であることにも起因して、クロスレーション関数は常に、中央における急峻なステップではなく、0でない遷移領域を示すであろう。従って、結果として生成される微分クロスレーション関数の主ピークは、単一のインパルスとは異なることになり、幾つかの隣接する差分回路の出力にわたって現れることもある。この作用が図9に示されており、図9は、幾つかの選択された実験結果を示す。
【0037】
図9aは、実験的なクロスレーション関数の離散表現の一例である。図9bは、単位ステップ(単一セル)だけシフトした実験的なクロスレーション関数の2つのレプリカ間の差として得られる微分クロスレーション関数を示す。図から明らかなように、1つの支配的なメインピークに加えて、両側に幾つかの正のサイドローブも存在する。しかしながら、差分値に適当な判定閾値を適用することによって、主ピークの位置を常に確定することができる。
【0038】
差分回路Rのアレイによって生成される値は、データプロセッサDPRに供給される。データプロセッサDPRは、対象となる時間遅延の値を計算するために、アレイに沿ったインパルスの位置を確定する。インパルス中心の位置は、ピーク値、「重心」、又はインパルスの中央値から確定することができる。そのようなタスクを実行するために必要とされる演算は、当業者によって実施することができる。
【0039】
第1の先願は、任意の具体的な差分回路を用いることなく、ゼロクロス検出器の後段の補助回路を用いることによって、微分クロスレーション関数を得ることができるシステムも開示している。
【0040】
図10は、信号と、その時間遅延レプリカとの間の遅延を求めることができる、適当に変更された微分クロスレータのブロック図である。この構成では、差分回路はなく、プロセッサは補助遅延ユニットU及びパルス合成器Sを利用する。基準2値波形x(t)において立ち上がりエッジ(ゼロアップクロス)が検出されるとき、ゼロクロス検出器ZCDの出力に正のパルスが生成される。このパルスは補助遅延ユニットUによって遅延され、反転される。そのため、合成器Sは、主たる正のパルスと、その直後に続く負のレプリカとを含むパルスダブレット(doublet)を生成する。同様に、x(t)において立ち下がりエッジ(ゼロダウンクロス)が検出されるとき、ZCDの出力に生成される負のパルスは補助遅延ユニットUによって遅延され、反転される。そのため、合成器Sは、主たる負のパルスと、その直後に続く正のレプリカとを含むパルスダブレットを生成する。
【0041】
従って、1つのゼロアップクロスを検出するのに応答して、スイッチのバンクBSは、サンプリングされた2値波形y(t)の表現と、それに続くそのような表現の遅延して極性反転したレプリカとを平均化回路AVGに転送する。同様に、ゼロダウンクロスが検出されるとき、スイッチのバンクBSは、2値波形y(t)の極性反転したサンプリングされた表現と、それに続くそのような表現の遅延した(そして、極性反転していない)レプリカとを平均化回路AVGに転送する。結果として、平均化回路AVGのアレイは、クロスレーション関数と、その補助遅延ユニットUによってもたらされる量だけ遅延したレプリカとの間の差を直に生成する。
【0042】
変更されたプロセッサによって実行される他の機能及び演算は、図8のプロセッサによって実行される機能及び演算と同じである。
【0043】
図10に示される微分クロスレータは、以下の具体的な利点を提供することができる。
− 差分回路が不要である。
− 補助遅延ユニットUによってもたらされる遅延は、遅延セルDの単位遅延とは異なるようにすることもできる。従って、セルDの遅延未満の補助的な遅延の場合、導関数をさらに良好に近似することができる。
【0044】
図8及び図10に示される2つの微分クロスレータのいずれかの適当に変更されたバージョンを、図3の障害物検出システムの相関器CORの代わりに用いることにより、改善された時間遅延(及び距離)測定値を与えることができる。図8及び図10の回路は、信号調整回路SCUからのアナログ信号を用いて動作するようにしてもよいし、又は調整回路SCU内にアナログ/ディジタルコンバータを組み込むとともに、適当なディジタル遅延回路Dを用いることによって、ディジタル信号を用いて動作することができる。
【0045】
2004年5月13日に出願の欧州特許出願第04252786.1号(2005年5月12日に出願の米国特許出願第11/127165号に対応し、本明細書において「第2の先願」とも呼ばれる)は、微分クロスレータ内で実行される全ての機能及び演算が、スイッチ、ゼロクロス検出器、平均化回路、及び差分回路によってディジタル形式で実施される方法を開示する。
【0046】
図11は、第2の先願において開示される、2つの2値双極性波形x(t)とy(t)との間の遅延を求めることができる微分クロスレータのブロック図である。このシステムは、2つのハードリミッタHX及びHYと、データプロセッサDPRと、同一の論理ブロックのアレイ{BY1、BY2、...、BYM}と、定遅延線CDXと、それに続く単一の遅延ユニットUとを備える。各論理ブロックは、遅延ユニットD、それに接続される論理セルLC、及び論性セルによって駆動される可逆(アップ/ダウン)2進カウンタUDCから成る。アレイ内の全ての遅延ユニットは結合して、マルチタップ遅延カスケードを形成する。アレイ内の各論理セルLCは、自身の遅延ユニットDからの2つの信号と、遅延ユニットUからの別の2つの信号X1及びX2とを受信する。
【0047】
図11の微分クロスレータの動作は、以下のように要約することができる。
− 信号x(t)のゼロクロスによって定義される2値波形X(t)が、定遅延線CDXと、それに続く遅延ユニットUとによって適当に遅延される。遅延ユニットUは、2つの互いに遅延した論理信号X1及びX2を生成する。
− 信号y(t)のゼロクロスによって定義される2値波形Y(t)が、遅延カスケードに沿って伝搬する。カスケードの各遅延ユニットDは、それぞれその入力及び出力に現れる2つの互いに遅延した論理信号を供給する。
− 各論理セルLCは、遅延ユニットUの出力X1及びX2から受信される論理情報と、自身の遅延ユニットDの入力及び出力の論理状態とを組み合わせて、以下の判定を行う。
1.自身の遅延ユニットDにおいて生じる状態遷移が、遅延ユニットUにおいて生じる状態遷移と同時に生じているか否か。
2.同時に生じた遷移が、一致している(concordant)か(すなわち両方アップ又は両方ダウンのように同じタイプから成るか)、一致していない(disconcordant)か(すなわち逆のタイプから成るか)。
− 同時に生じた遷移が一致しているものと宣言された場合には、各論理セルLC内の可逆カウンタUDCは「カウントアップ」し、一致していないものと宣言された場合には、UDCは「カウントダウン」する。
− 外部制御ユニット(図示せず)によって開始される測定サイクルの開始時に、全てのカウンタUDCがクリアされ、測定サイクルが終了するときに、カウンタの内容がデータプロセッサDPRに転送される。
− データプロセッサDPRによって実行される機能及び演算は、図8及び図10のシステムによって用いられるデータプロセッサによって実行される機能及び演算と同じである。
【0048】
例示するために、図12は、M個の同一の論理ブロックLCのうちの1つ、この場合には、論理ブロックBY2の取り得る構造の一例を示す。全ての入力変数A、B、X1、及びX2は、論理変数0又は1であり、2値波形の2つのレベルに対応する。入力CKにパルスが現れたときにUD=1の場合には、可逆カウンタUDCはカウントアップし、入力CKにパルスが現れたときにUD=0の場合には、そのカウンタはカウントダウンする。論理ブロックの他の機能的に等価な実施態様は、当業者には明らかであろう。
【0049】
図11に示されるディジタル微分クロスレータを、相関器CORの代わりに図3の障害物検出システムに組み込むことにより、改善された時間遅延(及び距離)測定値を与えることができる。
【0050】
上記の微分クロスレータはパラレル構造を有するが、第2の先願は、論理回路を用いて構成されるシリアル微分クロスレータも開示する。
【0051】
物体検出の目的を果たすためにランダムな2値信号を送信することには既知の利点がある。特に適当に変調された連続波伝送を用いて送信するときに、良好なエネルギー効率を得ることができる。2値信号が急峻な自己相関関数を有するように、擬似ランダム発生器を用いて信号状態を選択することによって、迅速な収束が可能である。
【0052】
同期ランダム2値信号が用いられるとき、クロスレーション関数Cxx(τ)は理想的には図15aに示される形をとる。これは、図7aの関数の形に類似しているが、2値波形のクロック周期毎に離散したレベルを示す(assume)。この関数は、信号X(t)内の遷移(クロックパルスが生成されるときにのみ生じることがある)間の間隔だけ時間差がある波形Y(t)のセグメントの平均レベルに対応する。従って、2つの波形が同時に生じるような遅延値である場合、波形Y(t)における全て正に移行する遷移が整列する。したがって、クロスレーション関数は、負の値と、それに続く等しい正の値とを示す(負に移行する遷移も同時に生じるが、対応するサンプルが減算されるので、これらはクロスレーション関数に対して正に移行する遷移と同じ影響を及ぼす)。相関のない2値状態の場合に、これらの2つのクロック周期に対応する遅延間隔の外側では、クロスレーション関数は平均して0になる。
【0053】
微分クロスレーション関数Dxx(τ)は図15bに示される形を有する。例えば、図11の回路の場合、カウンタUDCが波形Y(t)内の遷移をカウントするので、この関数は直に生成することができる。信号X(t)内の正に移行する遷移によって、信号Y(t)において同時に正に移行する遷移が生じると、カウンタUDCがインクリメントされ、信号Y(t)において同時に負に移行する遷移が生じると、カウンタUDCがデクリメントされる。それゆえ、カウンタは、X(t)信号の正に移行する遷移の時刻において、Y(t)信号の平均時間導関数に対応する値を採用する。X(t)信号の負に移行する遷移は逆の効果を有するので、X(t)信号の負に移行する遷移の時刻におけるY(t)信号の平均時間導関数は、カウント値から減算される。
【0054】
微分クロスレーション関数Dxx(τ)は、それがいかに生成されるかに関係なく、波形X(t)及びY(t)が同時に生じる遅延値において、大きな正の値(これは正に移行する遷移及び負に移行する遷移の両方が同時に一致して生じることに対応する)を有するであろう。この前後には、2値波形の1つのクロック周期に相当する遅延だけ正のピークからそれぞれ分離される負の偏位がある。波形Y(t)の(例えば)正に移行する遷移の前後には、(1クロック周期だけ遅れて)負に移行する遷移だけが存在することができる(又は遷移が存在しない)ので、負の偏位、すなわちサイドローブがそれぞれ生じる。それゆえ、波形間で1クロック周期の遅延がある場合、X(t)波形の正に移行する遷移が、Y(t)波形の負に移行する遷移と同時に生じることになり、その逆も起こる。これらの一致しない遷移によって、図15bの負の偏位が生じる。1クロック周期の遅延がある場合、X(t)波形の遷移と同時にY(t)の一致しない遷移が生じる可能性と、Y(t)波形において遷移が生じない可能性とは概ね等しい(2値状態がランダムに選択されるものと仮定する)。そのため、負の偏位は、中央の正の偏位の高さの約半分だけである。
【0055】
一般的に、相関に基づく信号処理は、2つの障害物間の距離がc(Tc/2)未満である場合には、それらの障害物を区別することができない。ただし、cは光の速さであり、Tcは障害物検出に用いられる2値波形を生成するために用いられるクロック周期である。図13は、2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の相関器の出力信号Rxy(τ)の例を示す。図13cから明らかなように、理想的な(雑音がなく、帯域幅の制限がなく、観測時間が無限である)場合であっても、密集している2つの障害物の場合、2つの識別可能な相関ピークは結合して、ただ1つのピークになる。
【0056】
この理想的な場合に微分クロスレーションが用いられるとき、2つの障害物は、帯域幅が無限であり、且つ雑音がなければ、その距離に関係なく区別することができる。図14は、2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合に、同期2値信号を受信する微分クロスレータの出力信号Dxy(τ)の例を示す。
【0057】
図14から明らかなように、雑音があり、また帯域幅が制限されても、正のピークは明らかに視認することができる。それにも関わらず、歪みに起因して、負のサイドローブが、正のピークを特定するのを妨げることがある。例えば、送信された2値信号が位相変調される場合には、受信機は通常、受信信号の個々の2値状態を明確に認識できるようにするための固定された基準(fixed reference)を持たないであろう。この場合には、各負のサイドローブが、正のピークとして認識されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0058】
従って、例えば、マルチユーザ環境において動作する障害物検出システム又は位置測定システムにおいて適用する場合に、時間遅延及び距離の測定のための改善された高分解能の技法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明の複数の態様が、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0060】
本発明のさらに別の態様によれば、微分クロスレータを用いて、不規則な(例えば、ランダム、ただし、この用語は擬似ランダムも含む)一連の状態を有する2値信号が処理される。微分クロスレータは、信号間に所与の遅延が導入される場合に、それらの信号のうちの一方の状態遷移の時刻において、他方の信号の平均導関数を表す出力(それは、その2値状態に依存するレベルを有する)を生成する。上記の負のサイドローブの影響を緩和するために、微分クロスレータの出力は、2つの信号間の相関を表す値と合成される。相対的な遅延によって微分クロスレーション関数が負のサイドローブを生成するようになるとき、その相関値は低くなる。そのため、2つの信号を合成することによって、負のサイドローブを低減又は除去できるようになるであろう。従って、相関器の出力と微分クロスレータの出力とを合成することによって、高精度遅延測定にさらに適している出力が与えられる。
【0061】
本発明は、時間遅延測定システムに適用することができる。このシステムでは、2つの信号の遷移が実質的に同時に発生するようになる遅延を求めるために、導入される遅延の複数の値に対して、クロスレーション及び相関の合成された出力が求められる。
【0062】
好ましい一実施の形態では、2つの信号間の時間遅延は、(a)微分クロスレーション、(b)前期相関、及び(c)後期相関の結果を合成することによって測定される。それにより、合成されていなければ微分クロスレーションに起因して生じることになった負のサイドローブが、さらに効果的に除去される。
【0063】
本発明は、送信される信号と物体からのその反射との間の遅延を測定することによって、物体検出システムのための時間遅延測定の用途に拡張される。さらには、複数の既知の場所から受信される1つ又は複数の信号対の信号間の相対的な遅延を測定し、それにより、それらの既知の場所の方位を求めることができるようにすることによって位置を測定する位置測定システムのための時間遅延測定の用途に拡張される。しかしながら、例えば、監視システムの場合に、本発明を単純に用いて、或る特定の距離に物体が位置するか否かを判定することもできる。
【0064】
ここで、一例として、本発明を具現する構成が、添付の図面を参照しながら説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
図16は、本発明によるマイクロ波障害物検出システムを示す。このシステムの大部分は図3のシステムと類似しており、類似の参照符号は類似の構成要素を表す。
【0066】
このシステムは、図3の相関器CORに加えて、微分クロスレータCRX(図8、図10、及び図11に示される構成のうちの1つを用いることができる)を含む信号処理回路を用いる点が異なる。相関器及び微分クロスレータはいずれも、基準信号x(t)と、基準入力信号x(t)の遅延した(反射した)バージョンである信号y(t)とを受信する。
【0067】
相関器及び微分クロスレータの出力は合成器CRに供給される。例えば、合成器として、乗算器を用いることができる。そのような場合には、合成された出力は、2つの関数、すなわち図1b及び図15cに示される形状を有する相関関数Rxx(τ)と、図15bに示される形状を有する微分クロスレーション関数Dxx(τ)との積になるであろう。それゆえ、図15dに示され、合成された出力において結果として得られる関数[Rxx(τ)Dxx(τ)]は、高精度遅延測定のために要求される理想的な形状を示すであろう。詳細には、その出力は(理想的な状況では)、負のサイドローブを生じることなく、検出された物体毎に、単一で、急峻で、高レベルの正の振幅ピークを含むであろう。従って、雑音がある場合でも、さらには帯域幅が制限される場合であっても、従来技術のシステムよりも容易に物体を検出することができる。
【0068】
図15から明らかなように、理想的な状況では、負のサイドローブの位置は、相関関数が0まで減少する点と一致するであろう。しかしながら、実際の構成では、帯域幅が限られており、負のサイドローブは完全には減衰しない可能性がある。以下に説明される変更された構成は、この問題を緩和することを意図している。
【0069】
図17の実施形態は、図16の実施形態と類似しており、以下に説明される場合を除いて、類似の構成要素は類似の参照符号で特定される。
【0070】
図17では、相関器CORの出力は、コンパレータCMPの一方の入力に供給される。コンパレータの別の入力は、所定の閾値レベルTHを受信するように構成される。コンパレータCMPは、相関器出力が閾値THよりも大きくなる時にだけ、出力信号を生成する。この出力は、スイッチ形の合成器CRを閉じる。それにより、クロスレータCRXの出力を、検出信号DECとして用いることができるようにする。図18に示されるように、適当に選択された閾値THを用いることによって、クロスレータCRXからの負のサイドローブが確実に除去される。
【0071】
図17は、スイッチが、これらの出力を合成するために用いるのに適した構成要素の別の例であることを示している。このスイッチを用いることにより、相関器CORの出力が、クロスレータCRXの出力を開閉する。一般的に、これらの出力から同時発生する(すなわち、信号x(t)とy(t)との間の同じ相対的な遅延の場合に生じる)高いレベルに応答する任意の構成要素を用いることができる。
【0072】
図19の実施形態は、図16の実施形態と類似しており、以下に説明される場合を除いて、類似の構成要素は類似の参照番号で特定される。
【0073】
図19では、図16の相関器CORの代わりに、2つの相関器COR1及びCOR2が用いられる。さらに、基準信号x(t)は、相関器COR1、クロスレータCRX、及び相関器COR2に提供される前に、遅延回路D1、D2、及びD3によって課せられる遅延を受ける。遅延回路D2によって課せられる遅延は、遅延回路D1によって課せられる遅延とD3によって課せられる遅延との中間である。従って、相関器COR1及びCOR2は、クロスレータCRXの演算に対して、「前期」及び「後期」の相関を実行する。
【0074】
この演算の効果は、図20と図15とを比較することによって明らかになる。図20aは、クロスレータCRXの出力を示しており、図15bに示される出力と同じである。図20bは、「前期」及び「後期」の相関器COR1及びCOR2の出力を示す。これらの合成された出力は、図20bにおいて暗く示されており、2Tcに僅かに満たない遅延周期に及ぶ。従って、これらの出力をクロスレータCRXの出力と合成して図20cに示される結果を得る。クロスレータからの負のサイドローブは、より確かに除去されているが、中央の正のピークは僅かにしか減衰していない。
【0075】
クロスレータCRXが、両者間にΔTの遅延を有する信号x(t)及びy(t)を処理することによって導出される出力を与えているものと仮定する。クロスレータ出力が、両者間にΔT−ETの遅延を有する信号x(t)及びy(t)に基づく「前期」クロスレータCOR1から導出される相関値、及び両者間にΔT+LTの遅延を有する信号x(t)及びy(t)に基づく「後期」クロスレータCOR2から導出される相関値と合成されるように、回路D1、D2、及びD3によって引き起こされる遅延が設定されることが好ましい。ただし、ET及びLTは概ね等しいことが好ましい。また、ET、LT<Tc/2であることが好ましい。さらに、ET、LT<Tc/4であることがさらに好ましい。
【0076】
別法では、回路D1、D2、及びD3を用いて達成される相対的な遅延は、信号y(t)を遅延させることによって得ることもできる。実際には、おそらく別個の外部遅延回路が用いられる必要はなく、クロスレータCRX並びに相関器COR1及びCOR2の内部遅延回路を用いて、それら内部遅延回路における合成器CRにおいて合成されるための出力の適当な部分を選択することによって、相対的な遅延が達成される。
【0077】
所望により、図17の実施形態と同じように、相関器COR1及びCOR2の出力を閾値比較にかけることもできる。
【0078】
本発明による構成を用いることは、種々の信号処理タスクのために既に相関器を利用しているシステムにおいて特に好都合であろう。
【0079】
2つの別個の相関器COR1及びCOR2を用いる必要はなく、それらの機能は、ただ1つの相関器を2つの別個のモードにおいて連続して用いることによって、例えば、信号x(t)及びy(t)のうちの一方に適用される遅延を変更することによって与えることもできる。
【0080】
相関演算は、それ自体が当該技術分野において知られている数多くの方法のいずれかにおいて、たとえば、信号の積を積分することによって、又はフーリエ変換を用いることによって実行することができる。
【0081】
例示される実施形態の合成器は、出力を生成するために乗算を用いているが、ゲーティング回路を使用することなどの他の構成も可能である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態のこれまでの説明は、例示及び説明のために提示されてきた。これは、本発明を包括的に述べることや、本発明を開示されたのと全く同じ形態に限定することは意図していない。これまでの説明を鑑みて、数多くの改変、変更、及び変形によって、当業者が、本発明を、検討される具体的な用途に合わせて種々の実施形態において利用できるようになることは明らかである。
【0083】
所望により、このシステムは、信号x(t)及びy(t)のうちの一方に適用される特定の遅延に対応する特定の距離において、物体が存在するか否かだけを判定するように構成することもできる。他の距離に対しても装置を使用できるようにするために、この遅延を変更するための手段を設けることもできる。
【0084】
微分クロスレータは、図8、図10、及び図11の構成と同じように、サンプリングするために2値信号の正に移行する遷移及び負に移行する遷移の両方に対応する事象を使用することが好ましいが、これは不可欠ではない。
【0085】
上記の構成では、信号間の遅延を測定するために、反射した信号y(t)が基準信号x(t)を用いてサンプリングされる。代わりに、基準信号x(t)をサンプリングするために、反射した信号y(t)を用いることもできる。しかしながら、これは、受信された信号内に大きな雑音がある場合、及び/又は装置の距離内に複数の物体が存在する場合には特に、都合が良いとは思われない。
【0086】
図11に示されるような論理回路に基づく微分クロスレータの構成は変更することができる。例示される構成では、各論理セルLCにおいて、(遅延ユニットDによって引き起こされる遅延だけ分離される)2つの連続した点において信号y(t)をサンプリングするために基準信号x(t)の各遷移を用いる。サンプル間の差に依存する値が、カウンタUDCに供給される。こうして、カウンタUDCは、信号y(t)の時間導関数に依存する値を累積する。その動作は、図10の微分クロスレータの動作と類似している(所望により、時間導関数のさらに正確な表現を得るために信号y(t)の3つ以上のサンプルを取ることもできるが、これは現時点では不要であると考えられる)。
【0087】
別の実施形態では、信号x(t)の各遷移によって信号y(t)の現在の値が平均化手段に供給される論理セルを有することもできる。その際、それらの平均化手段は、図15aのクロスレーション関数Cxx(τ)に対応する表現を全体として生成する。その際、この表現を遅延値で微分して(例えば、図8の構成と同じように、連続した平均化手段間の差を抽出することによる)、微分クロスレーション関数を求めることができる。このため、サンプル値を平均して遅延値で微分することにより、サンプル化された時間導関数を平均する図11に例示される構成によって得られるのと同様の結果を得ることができる。
【0088】
説明された構成では、送信される2値信号は、ランダムな状態の系列を有する。代わりに、状態の系列を非ランダムに選択することもできるが、その系列は少なくとも対象となる周期にわたって不規則なパターンを形成するべきである。
【0089】
本明細書において、用語「ランダム」は、文脈が許す限り、且つ限定することなく、純粋にランダムに、非決定論的に生成される信号だけでなく、擬似ランダム2値信号及び無秩序な信号を生成するために従来技術において用いられるような、フィードバック回路を設けられたシフトレジスタ構成の出力等の、擬似ランダム、且つ/又は決定論的な信号も含むことを意図している。
【0090】
本発明は、送信される2値信号が連続波信号であるシステムに適用されるときに、また、信号が概ね一定の包絡線を有するように(例えば、位相変調によって)変調されるシステムに適用されるときに特に有用である。これらの特性によって、効率的且つ効果的なシステムを構成できるようになる。
【0091】
先に示唆されたように、本発明は、観測者に対して未知の位置及び/又は距離にある障害物のような物体の存在を検出するためのシステムに適用することができる。また、本発明は、既知の位置から複数(好ましくは、少なくとも3つ)の信号を受信し、その個々の信号対間の遅延を測定することによって、既知の位置に対する相対的な場所及び/又は方位を検出する位置測定システムにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】a)は、同期ランダム2値波形の概略図であり、b)は、測距に適用するのに最適である自己相関関数の形状を示す図であり、c)は、双極性同期ランダム2値波形を生成するために用いられる従来の回路のブロック図である。
【図2】周期性擬似ランダム2値波形の自己相関関数の一例を示す図である。
【図3】従来のマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図4】従来の相互相関器システムのブロック図である。
【図5】実験的に得られたクロスレーション関数の一例を示す図である。
【図6】時間遅延を求めるためにクロスレーションを利用するシステムのブロック図である。
【図7】a)は、ランダム2値信号の理論的なクロスレーション関数を示す図であり、b)は、図7aのクロスレーション関数と、時間単位の0.001だけシフトしたレプリカとの間の差を示す図であり、c)は、図7bと異なる縮尺において、図7aのクロスレーション関数と、時間単位の0.001だけシフトしたレプリカとの間の差を示す図である。
【図8】微分クロスレータのブロック図である。
【図9】a)は、実験的なクロスレーション関数の離散表現の一例を示す図であり、b)は、実験的な微分クロスレーション関数を示す図である。
【図10】変更された微分クロスレータのブロック図である。
【図11】ディジタル微分クロスレータのブロック図である。
【図12】ディジタル微分クロスレータによって用いられる論理ブロックの取り得る構造の一例を示す図である。
【図13】密集している2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の相関器の出力信号の例を示す図である。
【図14】密集している2つの同一の障害物間の3つの異なる距離の場合の微分クロスレータの出力信号の例を示す図である。
【図15】a)は、同期ランダム2値波形のクロスレーション関数を概略的に示す図であり、b)は、対応する微分クロスレーション関数を示す図であり、c)は、相関関数の形状を示す図であり、d)は、微分クロスレーション関数と相関関数とを合成した結果を示す図である。
【図16】本発明によるマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図17】図16のマイクロ波障害物検出システムの変更したバージョンのブロック図である。
【図18】図17の実施形態における変更の効果を示すための図である。
【図19】本発明による別のマイクロ波障害物検出システムのブロック図である。
【図20】a)は、図19の実施形態の微分クロスレータの出力を示す図であり、b)は、図19の相関器の合成された出力を表す図であり、c)は、微分クロスレータの出力と相関器の出力とを合成した結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号及び第2の2値信号を処理する方法であって、
(a)前記第1の信号と前記第2の信号との間に遅延を導入すること、
(b)前記第2の信号をサンプリングするために前記第1の信号の前記遷移を用い、前記第1の信号の前記遷移の時刻における前記第2の信号の平均時間導関数を表す第1の値を導出するために前記サンプルを合成すること、
(c)前記第1の信号及び前記第2の信号の相関値を導出すること、
(d)合成された値を得るために、前記第1の値及び前記相関値を合成すること、及び
(e)前記合成された値から、前記導入された遅延によって前記第1の信号の前記遷移が前記第2の信号の前記遷移と実質的に同時に発生するか否かを判定すること、
を含む、信号を処理する方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、
前記第1の信号の遷移毎に前記第2の信号の複数のサンプルが得られ、個々の前記遷移の時刻において、前記第2の信号の前記時間導関数を表す結果が導出され、
前記第1の値は前記遷移毎の前記結果を合成することによって得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)において、
前記第1の信号の各遷移の時刻において前記第2の信号がサンプリングされ、
前記第1の信号の遷移毎の前記サンプルを合成して結果が得られ、
異なる遅延値毎に得られる結果を前記遅延値で微分して、前記第2の信号の前記平均時間導関数を表す第1の値が得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遅延値毎の前記結果が、異なる遅延値における前記結果から減算されて、前記第2の信号の前記平均時間導関数を表す前記第1の値が得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記相関値が所定の閾値を超えない限り、前記合成された値が前記第1の信号及び前記第2の信号の前記遷移が実質的に同時に発生したことを示さないように、前記第1の値及び前記相関値が合成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)は、前記第1の信号と前記第2の信号との間に第1の遅延を伴って実行され、
前記ステップ(c)では、両者間に第2の遅延を伴う前記第1の信号と前記第2の信号との間の相関を示す第1の相関値が導出され、両者間に第3の遅延を伴う前記第1の信号と前記第2の信号との間の相関を示す第2の相関値が導出され、前記第2の遅延は前記第1の遅延よりも小さく、前記第3の遅延は前記第1の遅延よりも大きく、
前記ステップ(d)では、前記合成された値が、前記第1の値と前記第1の相関値及び前記第2の相関値とを合成することによって得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の信号の前記遷移は、正に移行する状態遷移及び負に移行する状態遷移を含み、
前記ステップ(b)は、前記第1の値が、実質的に、前記正に移行する状態遷移の時刻における、前記第2の信号の前記平均時間導関数と、実質的に、前記負に移行する状態遷移の時刻における、前記第2の信号の前記平均時間導関数との間の差を表すように、前記サンプルを合成することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
物体を検出する方法であって、
状態遷移の不規則な系列を含む2値信号から第1の信号及び第2の信号を導出するステップであって、前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの一方は基準信号を含み、他方は、前記2値信号の送信されたバージョンの反射によって形成される受信信号を含む、第1の信号及び第2の信号を導出するステップと、
前記第1の信号及び前記第2の信号を処理するステップであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記導入された遅延に対応する距離に物体が存在するか否かを判定する、前記第1の信号及び前記第2の信号を処理するステップと、
を含む、物体を検出する方法。
【請求項9】
状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号と第2の2値信号との間の遅延を求める方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記信号を処理すること、
前記導入された遅延の種々の値毎にステップ(b)〜(d)を繰り返すこと、及び
前記導入された種々の遅延毎に得られる合成された値から、前記第1の信号の前記遷移が前記第2の信号の前記遷移と実質的に同時に発生する遅延値を求めること、
を含む、状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号と第2の2値信号との間の遅延を求める方法。
【請求項10】
物体を検出する方法であって、
状態遷移の不規則な系列を含む2値信号から第1の信号及び第2の信号を導出するステップであって、前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの一方は基準信号を含み、他方は、前記2値信号の送信されたバージョンの反射によって形成される受信信号を含む、第1の信号及び第2の信号を導出するステップと、
前記受信信号が反射された物体からの距離を求めるために、請求項9に記載の方法を用いて、前記第1の信号と前記第2の信号との間の遅延を求めるステップと、
を含む、物体を検出する方法。
【請求項11】
前記2値信号を連続波信号として送信するステップを含む、請求項8又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記送信される2値信号は概ね一定の包絡線を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記送信される2値信号は位相変調される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の信号は前記基準信号であり、前記第2の信号は前記受信信号である、請求項8、10、11、12、及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号及び前記第2の信号が導出されるランダム2値系列を生成するステップを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
位置を求める方法であって、
前記位置において、状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む複数の2値信号を受信すること、
請求項9に記載の方法を用いて、前記受信された信号毎に、その信号と前記受信された信号のうちの別の信号との間の遅延を求めること、及び
前記求められた遅延から前記位置を計算すること、
を含む、位置を求める方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される装置。
【請求項1】
状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号及び第2の2値信号を処理する方法であって、
(a)前記第1の信号と前記第2の信号との間に遅延を導入すること、
(b)前記第2の信号をサンプリングするために前記第1の信号の前記遷移を用い、前記第1の信号の前記遷移の時刻における前記第2の信号の平均時間導関数を表す第1の値を導出するために前記サンプルを合成すること、
(c)前記第1の信号及び前記第2の信号の相関値を導出すること、
(d)合成された値を得るために、前記第1の値及び前記相関値を合成すること、及び
(e)前記合成された値から、前記導入された遅延によって前記第1の信号の前記遷移が前記第2の信号の前記遷移と実質的に同時に発生するか否かを判定すること、
を含む、信号を処理する方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、
前記第1の信号の遷移毎に前記第2の信号の複数のサンプルが得られ、個々の前記遷移の時刻において、前記第2の信号の前記時間導関数を表す結果が導出され、
前記第1の値は前記遷移毎の前記結果を合成することによって得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)において、
前記第1の信号の各遷移の時刻において前記第2の信号がサンプリングされ、
前記第1の信号の遷移毎の前記サンプルを合成して結果が得られ、
異なる遅延値毎に得られる結果を前記遅延値で微分して、前記第2の信号の前記平均時間導関数を表す第1の値が得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遅延値毎の前記結果が、異なる遅延値における前記結果から減算されて、前記第2の信号の前記平均時間導関数を表す前記第1の値が得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記相関値が所定の閾値を超えない限り、前記合成された値が前記第1の信号及び前記第2の信号の前記遷移が実質的に同時に発生したことを示さないように、前記第1の値及び前記相関値が合成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)は、前記第1の信号と前記第2の信号との間に第1の遅延を伴って実行され、
前記ステップ(c)では、両者間に第2の遅延を伴う前記第1の信号と前記第2の信号との間の相関を示す第1の相関値が導出され、両者間に第3の遅延を伴う前記第1の信号と前記第2の信号との間の相関を示す第2の相関値が導出され、前記第2の遅延は前記第1の遅延よりも小さく、前記第3の遅延は前記第1の遅延よりも大きく、
前記ステップ(d)では、前記合成された値が、前記第1の値と前記第1の相関値及び前記第2の相関値とを合成することによって得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の信号の前記遷移は、正に移行する状態遷移及び負に移行する状態遷移を含み、
前記ステップ(b)は、前記第1の値が、実質的に、前記正に移行する状態遷移の時刻における、前記第2の信号の前記平均時間導関数と、実質的に、前記負に移行する状態遷移の時刻における、前記第2の信号の前記平均時間導関数との間の差を表すように、前記サンプルを合成することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
物体を検出する方法であって、
状態遷移の不規則な系列を含む2値信号から第1の信号及び第2の信号を導出するステップであって、前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの一方は基準信号を含み、他方は、前記2値信号の送信されたバージョンの反射によって形成される受信信号を含む、第1の信号及び第2の信号を導出するステップと、
前記第1の信号及び前記第2の信号を処理するステップであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記導入された遅延に対応する距離に物体が存在するか否かを判定する、前記第1の信号及び前記第2の信号を処理するステップと、
を含む、物体を検出する方法。
【請求項9】
状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号と第2の2値信号との間の遅延を求める方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記信号を処理すること、
前記導入された遅延の種々の値毎にステップ(b)〜(d)を繰り返すこと、及び
前記導入された種々の遅延毎に得られる合成された値から、前記第1の信号の前記遷移が前記第2の信号の前記遷移と実質的に同時に発生する遅延値を求めること、
を含む、状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む第1の2値信号と第2の2値信号との間の遅延を求める方法。
【請求項10】
物体を検出する方法であって、
状態遷移の不規則な系列を含む2値信号から第1の信号及び第2の信号を導出するステップであって、前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの一方は基準信号を含み、他方は、前記2値信号の送信されたバージョンの反射によって形成される受信信号を含む、第1の信号及び第2の信号を導出するステップと、
前記受信信号が反射された物体からの距離を求めるために、請求項9に記載の方法を用いて、前記第1の信号と前記第2の信号との間の遅延を求めるステップと、
を含む、物体を検出する方法。
【請求項11】
前記2値信号を連続波信号として送信するステップを含む、請求項8又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記送信される2値信号は概ね一定の包絡線を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記送信される2値信号は位相変調される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の信号は前記基準信号であり、前記第2の信号は前記受信信号である、請求項8、10、11、12、及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号及び前記第2の信号が導出されるランダム2値系列を生成するステップを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
位置を求める方法であって、
前記位置において、状態遷移の不規則な系列をそれぞれ含む複数の2値信号を受信すること、
請求項9に記載の方法を用いて、前記受信された信号毎に、その信号と前記受信された信号のうちの別の信号との間の遅延を求めること、及び
前記求められた遅延から前記位置を計算すること、
を含む、位置を求める方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−512869(P2009−512869A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537183(P2008−537183)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003944
【国際公開番号】WO2007/049023
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003944
【国際公開番号】WO2007/049023
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
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