説明

省燃費運転支援システムおよび方法

【課題】 ユーザにとって実現できる可能性のある省燃費運転のアドバイスを生成し、ユーザの省燃費運転を適切に改善することのできる省燃費運転支援システムを提供する。
【解決手段】 省燃費運転支援システム1は、クライアント装置2とサーバ装置3を備える。クライアント装置2は、ユーザの車両に搭載され、その車両の走行履歴データに基づいて省燃費評価パラメータを算出し、サーバ装置3にアップロードする。サーバ装置3は、複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶部20に記憶しており、あるクライアント装置2からの要求があると、その記憶部20を参照して、他のクライアント装置2のユーザの省燃費評価パラメータとの比較を行い、その要求に対する応答として比較結果を送信する。クライアント装置2では、サーバ装置3からの応答に含まれる比較結果に基づいて、ユーザに対する省燃費運転のアドバイスが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の省燃費運転を支援するシステムに関し、特に、ユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の省燃費運転を支援する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。従来の装置では、運転者ごとに燃費を算出して、燃費の増減に基づいて運転者にアドバイスを報知する。具体的には、運転手ごとに抽出した燃費の悪い運転操作や走行状態について、燃費向上のためのアドバイスを運転者に報知する。このようにして、従来の装置では、運転者に燃費を向上させる操作を把握させ、燃費向上に適した操作を働きかける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、ある運転者に対するアドバイスを生成する際に、燃費の悪い運転操作や走行状態であるか否かについてしか考慮しておらず、そのアドバイスがその運転者にとって実現できるような省燃費運転であるか否かについて、何ら考慮されていない。
【0005】
例えば、同じ道路を走行する他の運転者が誰も実現できていないような省燃費運転は、その運転者にとっても実現できる可能性は低い。したがって、そのような実現の可能性の低い省燃費運転のアドバイスを運転者に報知しても、その運転者の省燃費運転の改善にはつながり難い。にもかかわらず、従来の装置では、燃費の悪い運転操作や走行状態である場合には、そのような実現可能性の低い省燃費運転のアドバイスであっても、その運転者に報知されることになる。
【0006】
逆に、同じ道路を走行する他の運転者が実現できているような省燃費運転であれば、その運転者にとっても実現できる可能性が高い。したがって、そのような実現の可能性の低い省燃費運転のアドバイスを運転者に報知すれば、その運転者の省燃費運転を改善できるはずである。ところが、従来の装置では、燃費がそれほど悪くない運転操作や走行状態である場合には、そのような実現可能性の高い省燃費運転のアドバイスであっても、その運転者に報知されないことになる。
【0007】
このように、従来の装置では、その運転者にとって実現できるようなアドバイスであるか否かについて、まったく考慮されていなかったため、運転者の省燃費運転を適切に改善することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、ユーザにとって実現できる可能性のある省燃費運転のアドバイスを生成することのできる省燃費運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の省燃費運転支援システムは、車両に搭載されるクライアント装置と、前記クライアント装置と通信可能に接続されるサーバ装置とを備えた省燃費運転支援システムであって、前記クライアント装置は、前記車両をユーザが運転したときの走行履歴データに基づいて、前記車両の走行状態ごとの前記ユーザの省燃費運転の実現度合いを評価した省燃費評価パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記ユーザの省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードするアップロード部と、前記ユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成するアドバイス生成部と、を備え、前記サーバ装置は、複数のクライアント装置からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶する記憶部と、一のクライアント装置からの要求に基づいて、前記記憶部を参照して、前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータと他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータとを比較するパラメータ比較部と、前記要求に対する応答として、前記パラメータ比較部での比較結果を前記一のクライアント装置へ送信する応答送信部と、を備え、前記アドバイス生成部は、前記サーバ装置からの前記応答に含まれる前記比較結果に基づいて、前記省燃費運転のアドバイスを生成する。
【0010】
これにより、車両に搭載されるクライアント装置では、ユーザが車両を運転したときの走行履歴データに基づいて、車両の走行状態ごとの省燃費評価パラメータ(そのユーザの省燃費評価パラメータ)が算出され、サーバ装置にアップロードされる。サーバ装置の記憶部には、複数のユーザ(例えば、ユーザA〜Z)の省燃費評価パラメータが記憶され、あるクライアント装置からの要求に基づいて、そのクライアント装置のユーザ(例えば、ユーザA)の省燃費評価パラメータと他のクライアント装置のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費評価パラメータとが比較され、その比較結果が応答としてクライアント装置(要求を送ったクライアント装置)へ送信される。そのクライアント装置では、サーバ装置からの応答に含まれる比較結果に基づいて、省燃費運転のアドバイスが生成される。本発明では、あるユーザ(例えば、ユーザA)に対する省燃費運転のアドバイスを生成する際に、そのユーザの省燃費運転の実現度合いと他のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費運転の実現度合いとの比較結果が考慮される。したがって、ある走行状態(例えば、停車状態、加速状態、減速状態、定速走行状態、ストップアンドゴー走行状態など)について、他のユーザ(例えば、ユーザB)が省燃費運転を実現している(実現度が高い)にもかかわらず、このユーザ(例えば、ユーザA)が省燃費運転を実現できていない(実現度が低い)場合には、その走行状態の省燃費運転についてのアドバイスが生成される。このようにして、そのユーザ(例えば、ユーザA)にとって実現できる可能性(改善できる余地)のある省燃費運転のアドバイスを生成することができる。そのため、ユーザ(例えば、ユーザA)の省燃費運転を適切に改善することができる。
【0011】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記クライアント装置は、前記走行履歴データに基づいて前記車両の運転シーンを推定するシーン推定部を、さらに備え、前記アップロード部は、前記車両の運転シーンごとの前記省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードし、前記パラメータ比較部は、前記車両の運転シーンごとに、前記他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値のうちの最高値と前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値との差分値を、前記比較結果として求め、前記アドバイス生成部は、前記車両の運転シーンごとに、前記差分値が最大であった省燃費評価パラメータの前記車両の走行状態について、前記省燃費運転のアドバイスを生成してもよい。
【0012】
これにより、クライアント装置では、走行履歴データに基づいて、車両の運転シーン(例えば、一般道を平均車速20km/時で走行しているシーン、つまり、混雑している一般道を運転しているシーンなど)が推定され、サーバ装置にアップロードされる。サーバ装置では、あるクライアント装置からの要求があったときに、車両の運転シーンごとに、そのクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値(例えば、ユーザAの加速状態の評価値:5、ユーザAの減速状態の評価値:3)と他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値のうちの最高値(例えば、ユーザBの加速状態の評価値:10、ユーザCの減速状態の評価値:4)との差分値(例えば、加速状態の差分値:5=10−5、減速状態の差分値:1=4−3)が求められる。この場合、差分値が大きいということは、そのユーザ(例えば、ユーザA)にとって実現できる可能性(改善できる余地)が大きいことを意味する。そして、クライアント装置では、車両の各運転シーンで差分値が最大であった走行状態(例えば、加速状態)について、省燃費運転のアドバイスが生成される。このようにして、車両の運転シーンごとにユーザにとって実現できる可能性が大きい省燃費運転のアドバイス(例えば、「混雑している一般道では、前の車の動きをよく見て、十分に車間をあけてから、ゆっくりと加速することを心掛けましょう。」など)を生成することができるので、そのユーザの省燃費運転を運転シーンごとに適切に改善することができる。
【0013】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記アドバイス生成部は、前記車両の出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置によって探索された探索経路に含まれる経路部分のうちの少なくとも一つについて、前記省燃費運転のアドバイスを生成してもよい。
【0014】
これにより、ナビゲーション装置によって探索された探索経路(例えば、出発地→道路A→道路B→道路C→目的地)に含まれる経路部分(例えば、道路A)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、ナビゲーション装置によって経路案内されるときに、その経路部分を走行する際に有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0015】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記アドバイス生成部は、前記ユーザによって指定された特定の経路部分について、前記省燃費運転のアドバイスを生成してもよい。
【0016】
これにより、ユーザによって指定された特定の経路部分(例えば、道路D)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、例えば、ユーザが地図上である経路部分(例えば、道路D)を指定すれば、その経路部分を走行する際に有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0017】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記アドバイス生成部は、前記経路部分の長さが所定の基準長さより短いときには、前記省燃費運転のアドバイスを生成しなくてもよい。
【0018】
これにより、その経路部分の長さが短いとき(例えば、道路Aの長さが5mのとき)には、その経路部分における省燃費運転のアドバイスが生成されない。このようにして、省燃費効果が低い場合にはアドバイスの作成が抑制され、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0019】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記アドバイス生成部は、前記ユーザによって指定された特定の前記運転シーンについて、前記省燃費運転のアドバイスを生成してもよい。
【0020】
これにより、ユーザによって指定された特定の運転シーン(例えば、混雑している一般道を運転しているシーンなど)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、例えば、ユーザがある運転シーンを指定すれば、そのような運転シーンのときに有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0021】
また、本発明の省燃費運転支援システムでは、前記サーバ装置は、前記ユーザの第2のクライアント装置からの要求に基づいて、前記パラメータ比較部での前記比較結果に基づいて、前記省燃費運転のアドバイスを生成する第2のアドバイス生成部と、前記第2のアドバイス生成部で生成した前記省燃費運転のアドバイスを、前記第2のクライアント装置へ送信するアドバイス送信部と、を備えてもよい。
【0022】
これにより、サーバ装置では、ユーザの第2のクライアント装置(例えば、パーソナルコンピュータ装置)からの要求に基づいて、そのユーザに対する省燃費運転のアドバイスが生成され、その第2のクライアント装置へ送信される。したがって、ユーザは、車両外(例えば、自宅)からでも第2のクライアント装置を利用して、省燃費運転のアドバイスを得ることができるようになり、ユーザの利便性が向上する。
【0023】
本発明の方法は、車両に搭載されるクライアント装置と、前記クライアント装置と通信可能に接続されるサーバ装置とを備えた省燃費運転支援システムにおいて用いられる方法であって、前記クライアント装置において、前記車両をユーザが運転したときの走行履歴データに基づいて、前記車両の走行状態ごとの前記ユーザの省燃費運転の実現度合いを評価した省燃費評価パラメータを算出することと、前記ユーザの省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードすることと、前記サーバ装置において、複数のクライアント装置からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶部に記憶することと、一のクライアント装置からの要求に基づいて、前記記憶部を参照して、前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータと他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータとを比較することと、前記要求に対する応答として、前記比較結果を前記一のクライアント装置へ送信することと、前記一のクライアント装置において、前記サーバ装置からの前記応答に含まれる前記比較結果に基づいて、前記一のクライアント装置のユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成することと、を含む。
【0024】
この方法によっても、上記のシステムと同様、あるユーザ(例えば、ユーザA)に対する省燃費運転のアドバイスを生成する際に、そのユーザの省燃費運転の実現度合いと他のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費運転の実現度合いとの比較結果が考慮される。したがって、ある走行状態(例えば、停車状態、加速状態、減速状態、定速走行状態、ストップアンドゴー走行状態など)について、他のユーザ(例えば、ユーザB)が省燃費運転を実現している(実現度が高い)にもかかわらず、このユーザ(例えば、ユーザA)が省燃費運転を実現できていない(実現度が低い)場合には、その走行状態の省燃費運転についてのアドバイスが生成される。このようにして、そのユーザ(例えば、ユーザA)にとって実現できる可能性(改善できる余地)のある省燃費運転のアドバイスを生成することができる。そのため、ユーザ(例えば、ユーザA)の省燃費運転を適切に改善することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ユーザにとって実現できる可能性のある省燃費運転のアドバイスを生成し、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態における省燃費運転支援システムの構成の説明図である。
【図2】第1の実施の形態の省燃費運転支援システムを構成するクライアント装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の省燃費運転支援システムを構成するサーバ装置のブロック図である。
【図4】特定のリンク(道路)について、走行履歴データから運転シーンと省燃費評価パラメータを算出する流れを示した図である。
【図5】特定のノード(交差点)について、走行履歴データから運転シーンと省燃費評価パラメータを算出する流れを示した図である。
【図6】運転シーンの例を示す図である。
【図7】省燃費評価パラメータの例を示す図である。
【図8】省燃費評価パラメータの差分値の例を示す図である。
【図9】運転シーンと省燃費評価パラメータの差分値に基づいて、省燃費運転のアドバイスを生成する流れを示した図である。
【図10】第1の実施の形態の省燃費運転支援システムの動作(アドバイス生成)の流れを説明するためのシーケンス図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における省燃費運転支援システムの構成の説明図である。
【図12】第2の実施の形態の省燃費運転支援システムを構成するコンピュータ装置のブロック図である。
【図13】第2の実施の形態の省燃費運転支援システムを構成するサーバ装置のブロック図である。
【図14】第2の実施の形態の省燃費運転支援システムの動作(アドバイス生成)の流れを説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態の省燃費運転支援システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、車両用のナビゲーションシステム等に適用される省燃費運転支援システムの場合を例示する。
【0028】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の省燃費運転支援システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の省燃費運転支援システムの構成を示す説明図である。図1に示すように、省燃費運転支援システム1は、ユーザの車両に搭載されるクライアント装置2と、センターなどの施設に設置されるサーバ装置3とで構成される。サーバ装置3は、ネットワーク4(インターネットなど)を介して、クライアント装置2に通信可能に接続されている。なお、図1では、説明の便宜上、1台の車両と1つのクライアント装置2のみが図示されているが、車両やクライアント装置2の数が2以上でよいことは言うまでもない。
【0029】
図2は、クライアント装置2の構成を説明するためのブロック図である。図2に示すように、クライアント装置2は、車両センサ(図示せず)などから種々の車両情報を取得することができるCAN5(車載ネットワーク)と、車両に搭載されているナビゲーション装置(図示せず)を電気制御するためのナビECU6と、スマートキーシステムなどを利用して車両のドライバ(ユーザ)を特定するユーザ特定部7と、ユーザが入力操作を行うためのタッチパネルやリモコンなどのインターフェース部8(I/F部)を備えている。
【0030】
クライアント装置2は、省燃費運転のアドバイスデータを記憶するアドバイスデータ記憶部9を備えている。このアドバイスデータ記憶部9は、運転シーン(高速道路渋滞シーン、一般道混雑シーンなど)や走行状態(停車状態、加速状態など)に応じた省燃費運転のアドバイスデータを、テーブル形式で記憶している(図9参照)。
【0031】
また、クライアント装置2は、運転シーンの推定に用いられる定量化モデル(シーンモデル)を記憶するシーンモデル記憶部10と、省燃費評価パラメータの算出に用いられる定量化モデル(燃費モデル)を記憶する燃費モデル記憶部11を備えている。
【0032】
シーンモデルは、車両の平均速度や道路種別と運転シーンとの相関関係が記録された正解データを用いて、車両の平均速度や道路種別から運転シーンを推定するための定量化モデルである。また、燃費モデルは、車両の走行履歴データ(車速や加速度など)と省燃費評価パラメータ(車両の走行状態ごとのユーザの省燃費運転の実現度合いを評価したパラメータ)との相関関係が記録された正解データを用いて、車両の走行履歴データから省燃費評価パラメータ(車両の走行状態ごとの評価値)を算出するための定量化モデルである。
【0033】
これらの定量化モデルとしては、定式化モデルを用いることができる。定式化モデルでは、例えば、線形重回帰分析、主成分分析、因子分析などの統計的手法が用いられる。また、定量化モデルとして、確率推論モデルを用いることもできる。確率推論モデルとしては、例えば、ベイジアンネットワークやニューラルネットワーク等が用いられる。ここでは、説明を省略するが、これらの定量化モデルについては、公知の技術を利用することができる。
【0034】
また、クライアント装置2は、車両の走行履歴データを記憶する走行履歴データ記憶部12を備えている。走行履歴データには、時間情報と車両情報と道路情報が含まれる(図4および図5参照)。時間情報は、その車両情報や道路情報を取得した時間(時刻)の情報である。車両情報は、主としてCAN5から取得できる情報であり、例えば、イグニッションオン/オフ、車速、加速度、アクセル開度、ブレーキ信号、加速度センサ信号、エンジン回転数などの情報が含まれる。道路情報は、主としてナビECU6から取得できる情報であり、例えば、道路のリンクID、リンク方向、道路種別などの情報が含まれる。なお、この走行履歴データには、緯度、経度などの情報が含まれていてもよい。
【0035】
クライアント装置2は、走行履歴データに基づいて車両の運転シーンを推定するシーン推定部13と、走行履歴データに基づいて省燃費評価パラメータを算出するパラメータ算出部14を備えている。シーン推定部13は、シーンモデル記憶部10に記憶されているシーンモデルを用いて、車両の平均速度や道路種別の情報(走行履歴データから得られる)から運転シーンを推定する。また、パラメータ算出部14は、燃費モデル記憶部11に記憶されている燃費モデルを用いて、車両の走行履歴データ(車速や加速度など)から省燃費評価パラメータ(車両の走行状態ごとの評価値)を算出する。なお、運転シーンの推定や省燃費評価パラメータの算出については、後で図面を参照しながら詳しく説明する。
【0036】
また、クライアント装置2は、省燃費運転のアドバイスを生成する際にサーバ装置3に対する要求を生成する要求生成部15と、その要求に対する応答をサーバ装置3から取得する差分値取得部16を備えている。このクライアント装置2は、サーバ装置3との間でネットワーク4を介した情報通信を行う通信部17を備えている。要求生成部15で生成された要求は、この通信部17を介してサーバ装置3へ送信される。また、サーバ装置3から返信された応答(要求に対する応答)は、この通信部17を介して受信され、差分値取得部16によって取得される。
【0037】
さらに、この通信部17は、シーン推定部13によって推定された運転シーンごとに、パラメータ算出部14によって算出された省燃費評価パラメータを、サーバ装置3へアップロードする機能を備えている。この省燃費評価パラメータのアップロードは、車両の運転中に行われてもよく、車両が目的地に到着したときに行われてもよく、車両の次回のエンジンスタート(イグニッションオン)のときに行われてもよい。この通信部17は、本発明のアップロード部に相当する。
【0038】
そして、クライアント装置2は、ユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成するアドバイス生成部18を備えている。この場合、省燃費運転のアドバイスの生成は、アドバイスデータ記憶部9に記憶されているアドバイスデータを読み出すことによって行われる。具体的には、サーバ装置3からの応答(要求に対する応答)に含まれる省燃費評価パラメータの比較結果に基づいて、ある運転シーン(例えば、一般道混雑シーンなど)と走行状態(例えば、加速状態など)が指定されると、その運転シーンと走行状態に応じた省燃費運転のアドバイスデータ(例えば、「混雑している一般道では、前の車の動きをよく見て、十分に車間をあけてから、ゆっくりと加速することを心掛けましょう。」など)が読み出される(図9参照)。なお、省燃費運転のアドバイスの生成については、後で図面を参照しながら詳しく説明する。
【0039】
図3は、サーバ装置3の構成を説明するためのブロック図である。図3に示すように、サーバ装置3は、クライアント装置2との間でネットワーク4を介した情報通信を行う通信部19を備えている。この通信部19は、複数のクライアント装置2からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを受信する機能を備えている。また、この通信部19は、クライアント装置2からの要求を受信する機能も備えている。
【0040】
サーバ装置3は、複数のクライアント装置2からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶するパラメータデータ記憶部20と、パラメータデータ記憶部20に記憶されているデータを更新するパラメータ更新部21を備えている。パラメータデータ記憶部20には、各クライアント装置2からアップロードされた省燃費評価パラメータが、ユーザID、走行日時、リンクID、リンク方向、運転シーンと対応づけて、記憶されている。パラメータ更新部21は、クライアント装置2から省燃費評価パラメータのアップロードが行われるごとに、必要に応じて、このパラメータデータ記憶部20に記憶されているデータを更新する。ここでは、パラメータデータ記憶部20が、本発明の記憶部に相当する。
【0041】
また、サーバ装置3は、パラメータデータ記憶部20に記憶されている省燃費評価パラメータの値(車両の走行状態ごとの評価値)のうちの最高値を基準データ(後述する差分値を求める処理のための基準データ)として記憶する基準データ記憶部22と、基準データ記憶部22に記憶されているデータを更新する基準データ更新部23を備えている。基準データ記憶部22には、すべてのユーザの省燃費評価パラメータの値(車両の走行状態ごとの評価値)のうちの最高値(例えば、加速:10、減速:4など)が記憶されている(図8参照)。基準データ更新部23は、クライアント装置2から省燃費評価パラメータのアップロードが行われるごとに、必要に応じて、この基準データ記憶部22に記憶されているデータを更新する。
【0042】
サーバ装置3は、あるクライアント装置2からの要求に基づいて、パラメータデータ記憶部20と基準データ記憶部22を参照して、そのクライアント装置2のユーザ(例えば、ユーザA)と、他のクライアント装置2のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費評価パラメータを比較して、比較結果として差分値を求める差分値算出部24を備えている。差分値算出部24は、車両の運転シーンごとに、他のクライアント装置2のユーザ(ユーザB〜Z)の省燃費評価パラメータの値のうちの最高値と、要求があったクライアント装置2のユーザ(ユーザA)の省燃費評価パラメータの値との差分値(例えば、加速:5=10−5、減速:1=4−3)を求める(図8参照)。この場合、差分値算出部24が、本発明のパラメータ比較部に相当する。
【0043】
なお、ここでは、差分値算出部24が、全ユーザの中での最高値との差分を求める例について説明したが、例えば、全ユーザが運転スキルごとに(例えば、上級者グループ、中級者グループ、初心者グループに)グループ分けされており、そのユーザが属するグループの中での最高値との差分を求めてもよい。この場合、各ユーザの省燃費評価パラメータの平均値が車両の運転シーンごとに算出され、その平均値に応じてグループ分けがなされる。例えば、あるユーザ(ユーザA)の一般道渋滞シーンの省燃費評価パラメータの平均値が「5」の場合、そのユーザは、中級者グループ(平均値:4〜6のグループ)に属することになる。そして、差分値算出部24は、車両の運転シーンごとに、これら中級者グループのクライアント装置2のユーザ(ユーザK〜U)の省燃費評価パラメータの値のうちの最高値と、要求があったクライアント装置2のユーザ(ユーザA)の省燃費評価パラメータの値との差分値(例えば、加速:1=6−5、減速:0=3−3)を求めてもよい。そのユーザ(例えばユーザA)の運転スキルが向上すると、省燃費評価パラメータの平均値が上がり、そのユーザは上級者グループ(平均値:7〜10のグループ)に属するようになる。
【0044】
サーバ装置3は、差分値算出部24で求められた差分値のデータを記憶する差分値データ記憶部25を備えている。差分値データ記憶部25には、すべてのクライアント装置2のユーザの差分値が、車両の運転状態ごとに、ユーザID、走行日時、リンクID、リンク方向、運転シーンと対応づけて、記憶されている。
【0045】
また、サーバ装置3は、クライアント装置2からの要求に対する応答を生成する応答生成部26を備えている。この応答生成部26は、差分値算出部24で求められた差分値のデータを、要求に対する応答に含める。そのため、差分値算出部24で求められた差分値のデータは、サーバ装置3の通信部19を介して、要求に対する応答として、その要求があったクライアント装置2へ送信される。この場合、通信部19は、本発明の応答送信部に相当する。
【0046】
以上のように構成された省燃費運転支援システム1について、図面を参照してその動作を説明する。
【0047】
ここでは、まず、走行履歴データから運転シーンと省燃費評価パラメータを算出する処理について、図面を参照しながら説明する。この処理は、クライアント装置2のシーン推定部13とパラメータ算出部14で行われる。
【0048】
図4は、特定のリンク(道路)について、走行履歴データから運転シーンと省燃費評価パラメータを算出する流れを示した図である。図4に示すように、まず、走行履歴データ記憶部12に記憶されている走行履歴データの中から、同じ道路情報(同じリンクID、同じリンク方向)をもつデータが抽出される。このようにして抽出されたデータ(同一リンクデータ)には、道路を走行している状況を想定できるデータと、交差点の近くを走行している状況を想定できるデータとが含まれる。例えば、同一リンクデータを時系列で並べたときに、最後の数個のデータや最後の数パーセント(全体に対する割合)のデータは、次の交差点の近くを走行している状況を想定できる。そこで、同一リンクデータの中から、道路を走行している状況を想定できるデータが抽出される。
【0049】
シーン推定部13は、このようにして抽出したデータ(走行履歴データ)から、その道路を走行しているときの車両の平均速度やその道路の道路種別の情報を求め、シーンモデル記憶部10に記憶されているリンク用のシーンモデルを用いて、その道路を走行しているときの車両の運転シーンを推定する。例えば、車両の平均速度が10−15km/h(時速10km以上、時速15km未満)であり道路種別が一般道である場合には、「一般道混雑シーン」と推定される(図6参照)。
【0050】
なお、図6は、運転シーンの例を示す図であるが、「一般道混雑シーン」を簡易な運転シーンと呼び、「平均速度が10−15km/h、道路種別が一般道」を詳細な運転シーンと呼ぶこともできる。簡易な運転シーンは、ユーザに運転シーンを理解させる(イメージさせる)のに適しており、詳細な運転シーンは、クライアント装置2やサーバ装置3での処理に用いるのに適している。
【0051】
パラメータ算出部14は、燃費モデル記憶部11に記憶されている燃費モデルを用いて、このようにして抽出したデータ(走行履歴データ)から、省燃費評価パラメータ(車両の走行状態ごとの評価値)を算出する。パラメータ算出部14は、まず、走行履歴データ(加速度や車速など)から車両の走行状態を決定する。車両が道路を走行している場合、例えば、車速が閾値x以下である場合には「停止状態」であり、一定時間のあいだ加速度が閾値y以上である場合には「加速状態」であり、車速が閾値z以上でありかつ加減速度が閾値j以下である場合には「定速走行状態」であり、一定時間のあいだ減速度が閾値k以下である場合には「減速状態」であり、車速が閾値l以下でありかつ停止状態でない場合には「ストップアンドゴー状態」であると決定する。
【0052】
つぎに、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「ユーザの燃費」を求める。例えば、加速状態の区間の走行履歴データに含まれる車速、加速度、エンジン回転数、アクセル開度、走行距離などのデータから、ユーザ燃費モデルを用いて「加速状態のユーザの燃費:yy(ml/km)」を求める。また、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「理想的な燃費」を求める。例えば、加速状態の区間の初期車速、走行距離などから、理想燃費モデルを用いて「加速状態の理想的な燃費:YY(ml/km)」を求める。そして、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「ユーザの燃費」と「理想的な燃費」から「省燃費評価パラメータの値(評価値)」を求める(図7参照)。例えば、「加速状態のユーザの燃費:yy(ml/km)」と「加速状態の理想的な燃費:YY(ml/km)」から、「加速状態の評価値:Ey=(YY−yy)/YY」を求める。
【0053】
なお、図7は、省燃費評価パラメータの例を示す図であるが、図7に示すように、省燃費評価パラメータは、大項目(例えば、アイドリングや空ぶかし)を用いて、走行状態(例えば、停車状態)よりも細かく分類されてよい。さらに、小項目(例えば、速/遅)を用いて、大項目(例えば、車速)よりも細かく分類されてもよい。
【0054】
図5は、特定のノード(交差点)について、走行履歴データから運転シーンと省燃費評価パラメータを算出する流れを示した図である。この場合も、まず、走行履歴データ記憶部12に記憶されている走行履歴データの中から、同じ道路情報(同じリンクID、同じリンク方向)をもつデータが抽出される。そして、同一リンクデータの中から、交差点を走行している状況を想定できるデータが抽出される。なお、同一リンクデータを時系列で並べたときに、最初の数個のデータや最初の数パーセント(全体に対する割合)のデータは、前の交差点の近くを走行している状況を想定できる。そこで、ノード(交差点)の運転シーンを推定する場合には、次のリンクの同一リンクデータの中から、前の交差点を走行している状況を想定できるデータを抽出してもよい。
【0055】
シーン推定部13は、このようにして抽出したデータ(走行履歴データ)から、その交差点を走行しているときに車両が停車・通行していたや、その交差点を車両が右折・左折・直進したかの情報を求め、シーンモデル記憶部10に記憶されているノード用のシーンモデルを用いて、その交差点を走行しているときの車両の運転シーンを推定する。例えば、車両の平均速度が0−5km/h(時速0km以上、時速5km未満)でありかつその交差点を直進した場合には、「交差点停止シーン」と推定される(図6参照)。
【0056】
パラメータ算出部14は、リンク(道路)の場合と同様に、燃費モデル記憶部11に記憶されている燃費モデルを用いて、このようにして抽出したデータ(走行履歴データ)から、省燃費評価パラメータ(車両の走行状態ごとの評価値)を算出する。パラメータ算出部14は、まず、走行履歴データ(加速度や車速など)から車両の走行状態を決定する。車両が交差点を走行している場合、例えば、車速が閾値x以下である場合には「停止状態」であり、一定時間のあいだ減速度が閾値k以下である場合には「減速状態」であると決定する。なお、図5の例では、車両の走行状態として「停止状態」と「減速状態」のみが示されているが、ノード(交差点)の場合でもリンク(道路)の場合と同様に(図4のように)、「加速状態」「定速走行状態」「ストップアンドゴー状態」などが車両の走行状態に含まれてよいことは言うまでもない。
【0057】
つぎに、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「ユーザの燃費」を求める。例えば、減速状態の区間の走行履歴データに含まれる車速、加速度、エンジン回転数、アクセル開度、走行距離などのデータから、ユーザ燃費モデルを用いて「減速状態のユーザの燃費:kk(ml/km)」を求める。また、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「理想的な燃費」を求める。例えば、減速状態の区間の初期車速、走行距離などから、理想燃費モデルを用いて「減速状態の理想的な燃費:KK(ml/km)」を求める。そして、パラメータ算出部14は、走行状態ごとに「ユーザの燃費」と「理想的な燃費」から「省燃費評価パラメータの値(評価値)」を求める(図7参照)。例えば、「減速状態のユーザの燃費:kk(ml/km)」と「減速状態の理想的な燃費:KK(ml/km)」から、「減速状態の評価値:Ek=(KK−kk)/KK」を求める。
【0058】
つづいて、省燃費運転のアドバイスを生成する処理について、図面を参照しながら説明する。この処理は、クライアント装置2のアドバイス生成部18で行われる。
【0059】
図9は、運転シーンと省燃費評価パラメータの差分値に基づいて、省燃費運転のアドバイスを生成する流れを示した図である。上述のように、サーバ装置3からの応答(要求に対する応答)に含まれる省燃費評価パラメータの比較結果には、運転シーンごとの差分値が含まれている。例えば、図9に示すように、その運転シーンが「一般道混雑シーン」であり、差分値が最大である走行状態が「加速」であったとする。その場合には、アドバイスデータ記憶部9にテーブル形式で記憶されているアドバイスデータのうち、その運転シーン「一般道混雑シーン」と走行状態「加速」に応じた省燃費運転のアドバイスデータ(例えば、「混雑している一般道では、前の車の動きをよく見て、十分に車間をあけてから、ゆっくりと加速することを心掛けましょう。」など)が読み出される。このようにして、アドバイス生成部18は、車両の運転シーン(例えば、一般道混雑シーンなど)ごとに、差分値が最大であった省燃費評価パラメータの走行状態(例えば、加速状態など)について、省燃費運転のアドバイスを生成する。
【0060】
また、アドバイス生成部は、あるユーザの省燃費評価パラメータの値が、他のユーザの省燃費評価パラメータの平均値より大きいときに、そのユーザの省燃費運転を褒めるアドバイスを生成してもよい。この場合、例えば、あるユーザの省燃費評価パラメータの値と他のユーザの省燃費評価パラメータの平均値との差分値が最大であった走行状態について、省燃費運転を褒めるアドバイスを生成してもよい。この場合も、全ユーザの中での平均値との差分値を求めてもよく、ユーザが属するグループ(例えば、中級者グループ)の中での平均値との差分値を求めてもよい。
【0061】
なお、アドバイス生成部18は、車両の出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置によって探索された探索経路(例えば、出発地→道路A→道路B→道路C→目的地)に含まれる経路部分のうちの少なくとも一つ(例えば、道路A)について、省燃費運転のアドバイスを生成する機能を備えていてもよい。また、アドバイス生成部18は、ユーザによって指定された特定の経路部分(例えば、道路D)について、省燃費運転のアドバイスを生成する機能を備えていてもよい。さらに、アドバイス生成部18は、経路部分の長さが所定の基準長さより短いとき(例えば、道路Aの長さが5mのとき)には、省燃費運転のアドバイスを生成しない機能を備えていてもよい。なお、このアドバイス生成部18は、経路部分の全体の長さではなく、その経路部分において所定の走行状態をとった距離が所定の基準距離より短いとき(例えば、道路Aで加速状態をとった距離が5mのとき)には、省燃費運転のアドバイスを生成しない機能を備えていてもよい。また、アドバイス生成部18は、ユーザによって指定された特定の運転シーン(例えば、混雑している一般道を運転しているシーンなど)について、省燃費運転のアドバイスを生成する機能を備えていてもよい。
【0062】
つぎに、本実施の形態の省燃費運転支援システム1の動作(アドバイス生成)の流れを、図面を用いて説明する。
【0063】
図10は、燃費運転支援システムにおけるアドバイス生成の流れを説明するためのシーケンス図である。図10に示すように、アドバイス生成を実行するときには、まず、クライアント装置2のインターフェース部8(タッチパネルやリモコンなど)を用いてユーザが要求の入力を行なうと(S1)、クライアント装置2の要求生成部15で要求の生成が行われ(S2)、その要求がサーバ装置3へ送信される(S3)。
【0064】
サーバ装置3では、このクライアント装置2からの要求に基づいて、パラメータデータ記憶部20と基準データ記憶部22を参照して、他のクライアント装置2のユーザの省燃費評価パラメータとの比較を行い、比較結果として差分値を求める(S4)。サーバ装置3の応答生成部26では、この比較結果(差分値)を含むような応答の生成が行われ(S5)、その応答がクライアント装置2へ送信される(S6)。
【0065】
クライアント装置2では、サーバ装置3から受信した応答に含まれる比較結果(差分値)に基づいて、車両の運転シーンごとに、差分値が最大であった車両の走行状態について、省燃費運転のアドバイスが生成される(S7)。このようにして生成されたアドバイスは、モニタなどの表示部(図示せず)に表示されて、ユーザに報知される(S8)。なお、ここでは、アドバイスをモニタなどに表示することによってユーザに報知する場合を例示したが、音声などでユーザに報知してよいことは言うまでもない。
【0066】
このような本発明の第1の実施の形態の省燃費運転支援システム1によれば、ユーザにとって実現できる可能性のある省燃費運転のアドバイスを生成し、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0067】
すなわち、本実施の形態では、車両に搭載されるクライアント装置2では、ユーザが車両を運転したときの走行履歴データに基づいて、車両の走行状態ごとの省燃費評価パラメータ(そのユーザの省燃費評価パラメータ)が算出され、サーバ装置3にアップロードされる。サーバ装置3のパラメータデータ記憶部20には、複数のユーザ(例えば、ユーザA〜Z)の省燃費評価パラメータが記憶され、あるクライアント装置2からの要求に基づいて、そのクライアント装置2のユーザ(例えば、ユーザA)の省燃費評価パラメータと他のクライアント装置2のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費評価パラメータとが比較され、その比較結果が応答としてクライアント装置2(要求を送ったクライアント装置2)へ送信される。そのクライアント装置2では、サーバ装置3からの応答に含まれる比較結果に基づいて、省燃費運転のアドバイスが生成される。
【0068】
本実施の形態では、あるユーザ(例えば、ユーザA)に対する省燃費運転のアドバイスを生成する際に、そのユーザの省燃費運転の実現度合いと他のユーザ(例えば、ユーザB〜Z)の省燃費運転の実現度合いとの比較結果が考慮される。したがって、ある走行状態(例えば、停車状態、加速状態、減速状態、定速走行状態、ストップアンドゴー走行状態など)について、他のユーザ(例えば、ユーザB)が省燃費運転を実現している(実現度が高い)にもかかわらず、このユーザ(例えば、ユーザA)が省燃費運転を実現できていない(実現度が低い)場合には、その走行状態の省燃費運転についてのアドバイスが生成される。このようにして、そのユーザ(例えば、ユーザA)にとって実現できる可能性(改善できる余地)のある省燃費運転のアドバイスを生成することができる。そのため、ユーザ(例えば、ユーザA)の省燃費運転を適切に改善することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、クライアント装置2では、走行履歴データに基づいて、車両の運転シーン(例えば、一般道を平均車速20km/時で走行しているシーン、つまり、混雑している一般道を運転しているシーンなど)が推定され、サーバ装置3にアップロードされる。サーバ装置3では、あるクライアント装置2からの要求があったときに、車両の運転シーンごとに、そのクライアント装置2のユーザの省燃費評価パラメータの値(例えば、ユーザAの加速状態の評価値:5、ユーザAの減速状態の評価値:3)と他のクライアント装置2のユーザの省燃費評価パラメータの値のうちの最高値(例えば、ユーザBの加速状態の評価値:10、ユーザCの減速状態の評価値:4)との差分値(例えば、加速状態の差分値:5=10−5、減速状態の差分値:1=4−3)が求められる。
【0070】
この場合、差分値が大きいということは、そのユーザ(例えば、ユーザA)にとって実現できる可能性(改善できる余地)が大きいことを意味する。そして、クライアント装置2では、車両の各運転シーンで差分値が最大であった走行状態(例えば、加速状態)について、省燃費運転のアドバイスが生成される。このようにして、車両の運転シーンごとにユーザにとって実現できる可能性が大きい省燃費運転のアドバイス(例えば、「混雑している一般道では、前の車の動きをよく見て、十分に車間をあけてから、ゆっくりと加速することを心掛けましょう。」など)を生成することができるので、そのユーザの省燃費運転を運転シーンごとに適切に改善することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、ナビゲーション装置によって探索された探索経路(例えば、出発地→道路A→道路B→道路C→目的地)に含まれる経路部分(例えば、道路A)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、ナビゲーション装置によって経路案内されるときに、その経路部分を走行する際に有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、ユーザによって指定された特定の経路部分(例えば、道路D)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、例えば、ユーザが地図上である経路部分(例えば、道路D)を指定すれば、その経路部分を走行する際に有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、その経路部分の長さが短いとき(例えば、道路Aの長さが5mのとき)には、その経路部分における省燃費運転のアドバイスが生成されない。このようにして、省燃費効果が低い場合にはアドバイスの作成が抑制され、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、ユーザによって指定された特定の運転シーン(例えば、混雑している一般道を運転しているシーンなど)における省燃費運転のアドバイスが生成される。したがって、例えば、ユーザがある運転シーンを指定すれば、そのような運転シーンのときに有用な省燃費運転のアドバイスが得られ、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができる。
【0075】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の省燃費運転支援システム1について説明する。ここでは、第2の実施の形態の省燃費運転支援システム1が、第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0076】
図11は、本実施の形態の省燃費運転支援システム1の構成を示す説明図である。図11に示すように、省燃費運転支援システム1は、ユーザの車両に搭載されるクライアント装置2と、センターなどの施設に設置されるサーバ装置3のほかに、ユーザが自宅などで使用するコンピュータ装置27を備えている。このコンピュータ装置27は、例えば、パーソナルコンピュータや携帯端末などである。ここでは、コンピュータ装置27が、本発明の第2のクライアント装置に相当する。
【0077】
図12は、コンピュータ装置27の構成を説明するためのブロック図である。図12に示すように、コンピュータ装置27は、ユーザが入力操作を行うためのキーボードやマウス、タッチパネルなどのインターフェース部28(I/F部)を備えている。
【0078】
また、コンピュータ装置27は、省燃費運転のアドバイスを取得する際にサーバ装置3に対する要求を生成する要求生成部29と、その要求に対する応答としてアドバイスをサーバ装置3から取得するアドバイス取得部30を備えている。さらに、このコンピュータ装置27は、サーバ装置3との間でネットワーク4を介した情報通信を行う通信部31を備えている。要求生成部29で生成された要求は、この通信部31を介してサーバ装置3へ送信される。また、サーバ装置3から返信された応答(アドバイスや差分値)は、この通信部31を介して受信され、アドバイス取得部30によって取得される。
【0079】
図13は、サーバ装置3の構成を説明するためのブロック図である。図13に示すように、このサーバ装置3は、第1の実施の形態と同様の構成のほかに、省燃費運転のアドバイスデータを記憶するアドバイスデータ記憶部32と、運転シーンの推定に用いられる定量化モデル(シーンモデル)を記憶するシーンモデル記憶部33と、ユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成するアドバイス生成部34を備えている。
【0080】
以上のように構成された第2の実施の形態の省燃費運転支援システム1について、図面を用いてその動作を説明する。
【0081】
図14は、本実施の形態の燃費運転支援システムにおけるアドバイス生成の流れを説明するためのシーケンス図である。図14に示すように、アドバイス生成を実行するときには、まず、コンピュータ装置27のインターフェース部28(キーボードやマウスなど)を用いてユーザが要求の入力を行なうと(S10)、コンピュータ装置27の要求生成部29で要求の生成が行われ(S11)、その要求がサーバ装置3へ送信される(S12)。
【0082】
サーバ装置3では、このコンピュータ装置27からの要求に基づいて、パラメータデータ記憶部20と基準データ記憶部22を参照して、他のクライアント装置2のユーザの省燃費評価パラメータとの比較を行い、比較結果として差分値を求める(S13)。そして、本実施の形態では、サーバ装置3において、この比較結果(差分値)に基づいて、車両の運転シーンごとに、差分値が最大であった車両の走行状態について、省燃費運転のアドバイスが生成される(S14)。サーバ装置3の応答生成部26では、比較結果(差分値)とアドバイスを含むような応答の生成が行われ(S15)、その応答がコンピュータ装置27へ送信される(S16)。
【0083】
コンピュータ装置27では、サーバ装置3から受信した応答に含まれるアドバイスを取得すると、取得したアドバイスを、モニタなどの表示部(図示せず)に表示して、ユーザに報知する(S17)。
【0084】
なお、上記の説明では、モニタなどの表示部(図示せず)にアドバイスを表示する例について説明したが、アドバイスの代わりに差分値を表示してもよい。差分値の表示の仕方は、差分値の数字をそのまま表示してもよく、表示用マークなどを用いて表示してもよい。また、差分値をランキング付けして、ランキング上位の数個または全部を表示してもよい。
【0085】
このような本発明の第2の実施の形態の省燃費運転支援システム1によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0086】
その上、本実施の形態では、サーバ装置3で、ユーザのコンピュータ装置27(例えば、パーソナルコンピュータ装置)からの要求に基づいて、そのユーザに対する省燃費運転のアドバイスが生成され、そのコンピュータ装置27へ送信される。したがって、ユーザは、車両外(例えば、自宅)からでもコンピュータ装置27を利用して、省燃費運転のアドバイスを得ることができるようになり、ユーザの利便性が向上する。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明にかかる省燃費運転支援システムは、ユーザにとって実現できる可能性のある省燃費運転のアドバイスを生成し、ユーザの省燃費運転を適切に改善することができるという効果を有し、車両用のナビゲーションシステムなどに適用でき、有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 省燃費運転支援システム
2 クライアント装置
3 サーバ装置
4 ネットワーク
5 CAN
6 ナビECU
7 ユーザ特定部
8 インターフェース部
9 アドバイスデータ記憶部
10 シーンモデル記憶部
11 燃費モデル記憶部
12 走行履歴データ記憶部
13 シーン推定部
14 パラメータ算出部
15 要求生成部
16 差分値取得部
17 通信部
18 アドバイス生成部
19 通信部
20 パラメータデータ記憶部
21 パラメータ更新部
22 基準データ記憶部
23 基準データ更新部
24 差分値算出部
25 差分値データ記憶部
26 応答生成部
27 コンピュータ装置
28 インターフェース部
29 要求生成部
30 アドバイス取得部
31 通信部
32 アドバイスデータ記憶部
33 シーンモデル記憶部
34 アドバイス生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるクライアント装置と、前記クライアント装置と通信可能に接続されるサーバ装置とを備えた省燃費運転支援システムにおいて、
前記クライアント装置は、
前記車両をユーザが運転したときの走行履歴データに基づいて、前記車両の走行状態ごとの前記ユーザの省燃費運転の実現度合いを評価した省燃費評価パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記ユーザの省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードするアップロード部と、
前記ユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成するアドバイス生成部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
複数のクライアント装置からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶する記憶部と、
一のクライアント装置からの要求に基づいて、前記記憶部を参照して、前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータと他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータとを比較するパラメータ比較部と、
前記要求に対する応答として、前記パラメータ比較部での比較結果を前記一のクライアント装置へ送信する応答送信部と、
を備え、
前記アドバイス生成部は、前記サーバ装置からの前記応答に含まれる前記比較結果に基づいて、前記省燃費運転のアドバイスを生成することを特徴とする省燃費運転支援システム。
【請求項2】
前記クライアント装置は、前記走行履歴データに基づいて前記車両の運転シーンを推定するシーン推定部を、さらに備え、
前記アップロード部は、前記車両の運転シーンごとの前記省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードし、
前記パラメータ比較部は、前記車両の運転シーンごとに、前記他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値のうちの最高値と前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータの値との差分値を、前記比較結果として求め、
前記アドバイス生成部は、前記車両の運転シーンごとに、前記差分値が最大であった省燃費評価パラメータの前記車両の走行状態について、前記省燃費運転のアドバイスを生成する、請求項1に記載の省燃費運転支援システム。
【請求項3】
前記アドバイス生成部は、前記車両の出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置によって探索された探索経路に含まれる経路部分のうちの少なくとも一つについて、前記省燃費運転のアドバイスを生成する、請求項2に記載の省燃費運転支援システム。
【請求項4】
前記アドバイス生成部は、前記ユーザによって指定された特定の経路部分について、前記省燃費運転のアドバイスを生成する、請求項2または請求項3に記載の省燃費運転支援システム。
【請求項5】
前記アドバイス生成部は、前記経路部分の長さが所定の基準長さより短いときには、前記省燃費運転のアドバイスを生成しない、請求項3または請求項4に記載の省燃費運転支援システム。
【請求項6】
前記アドバイス生成部は、前記ユーザによって指定された特定の前記運転シーンについて、前記省燃費運転のアドバイスを生成する、請求項2〜請求項5のいずれかに記載の省燃費運転支援システム。
【請求項7】
前記サーバ装置は、
前記ユーザの第2のクライアント装置からの要求に基づいて、前記パラメータ比較部での前記比較結果に基づいて、前記省燃費運転のアドバイスを生成する第2のアドバイス生成部と、
前記第2のアドバイス生成部で生成した前記省燃費運転のアドバイスを、前記第2のクライアント装置へ送信するアドバイス送信部と、
を備える、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の省燃費運転支援システム。
【請求項8】
車両に搭載されるクライアント装置と、前記クライアント装置と通信可能に接続されるサーバ装置とを備えた省燃費運転支援システムにおいて用いられる方法であって、
前記クライアント装置において、
前記車両をユーザが運転したときの走行履歴データに基づいて、前記車両の走行状態ごとの前記ユーザの省燃費運転の実現度合いを評価した省燃費評価パラメータを算出することと、
前記ユーザの省燃費評価パラメータを、前記サーバ装置にアップロードすることと、
前記サーバ装置において、
複数のクライアント装置からアップロードされた複数のユーザの省燃費評価パラメータを記憶部に記憶することと、
一のクライアント装置からの要求に基づいて、前記記憶部を参照して、前記一のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータと他のクライアント装置のユーザの省燃費評価パラメータとを比較することと、
前記要求に対する応答として、前記比較結果を前記一のクライアント装置へ送信することと、
前記一のクライアント装置において、
前記サーバ装置からの前記応答に含まれる前記比較結果に基づいて、前記一のクライアント装置のユーザに対する省燃費運転のアドバイスを生成することと、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−253239(P2011−253239A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124973(P2010−124973)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】