説明

真空ポンプ

差圧ポンプ型質量分光計システムは、複数の圧力チャンバを有する質量分光計と、質量分光計に取付けられかつ少なくとも3つのポンプ入口を有する真空ポンプと、第一ポンピングセクションと、第一ポンピングセクションから下流側の第二ポンピングセクションと、第二ポンピングセクションから下流側の第三ポンピングセクションとを備え、比較的低圧の第一チャンバからの出口が第一ポンプ入口に連結されており、第一ポンプ入口を通って流体が第一チャンバからポンプに流入しかつ第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションだけを通ってポンプ出口へと流れることができる。分光計の第二中間圧力チャンバが第二ポンプ入口に連結され、第二ポンプ入口を通って流体がポンプに流入できる。分光計の第三の最高圧力チャンバの出口が第三ポンプ入口に連結され、第三ポンプ入口を通って流体がポンプに流入することができ、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションを通過する。第三ポンピングセクションの少なくとも一部だけがポンプ出口に向っている。バッキングポンプは、使用時に、分光計からポンピングされる流体質量の少なくとも99%が、真空ポンプおよびバッキングポンプの両方を通って流れるようにポンプ出口に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空ポンプに関し、より詳しくは、多チャンバの差圧ポンピングに適した多ポートを備えた複合真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
差圧ポンピングされる質量分光システムでは、サンプルおよびキャリヤガスが質量分析器に導入され、分析される。このような一例が図1に示されている。図1に示すように、このようなシステムには高真空チャンバ10が存在し、高真空チャンバ10には、第一減圧排気型インターフェースチャンバ(evacuated interface chambers)11、(システムの形式による)第二減圧排気型インターフェースチャンバ(evacuated interface chambers)12、および、第三の減圧排気型インターフェースチャンバ(evacuated interface chambers)14が直後に続いている。第一インターフェースチャンバ11は減圧排気型分光システムの最高圧力チャンバであり、該チャンバ内にはオリフィスまたは細管が設けられ、該細管を通ってイオンがイオン源から第一インターフェースチャンバ11内に吸引されるように構成されている。任意で設けられ第二インターフェースチャンバ12には、イオンを第一インターフェースチャンバ11から第三インターフェースチャンバ14内に案内するイオン光学素子を設けることができ、第三インターフェースチャンバ14には、イオンを第二インターフェースチャンバから高真空チャンバ10内に案内する付加イオン光学素子を設けることができる。この例では、使用時に、第一インターフェースチャンバは約1ミリバールから10ミリバールの圧力にあり、第二インターフェースチャンバ(該チャンバが使用される場合)は約10-1ミリバールから1ミリバールの圧力にあり、第三インターフェースチャンバは約10-2ミリバールから10-3ミリバールの圧力にあり、かつ高真空チャンバは約10-5ミリバールから10-6ミリバールの圧力にある。
【0003】
高真空チャンバ10、第二インターフェースチャンバ12および第三インターフェースチャンバ14は、複合真空ポンプ16により減圧排気される。この例では、真空ポンプ16は、2組のターボ分子段18、20の形態をなす2つのポンピングセクションと、ホルベック(Holweck)ドラッグ機構22の形態をなす第三ポンピングセクションとを有するが、この代わりに、ジーグバーン(Siegbahn)機構またはガエデ(Gaede)機構等の他の形態のドラッグ機構を使用することもできる。各組のターボ分子段18、20は、既知の傾斜構造をもつ多数の対(図1には3対が示されているが、任意の適当な数の対を設けることができる)のロータブレード19a、21aおよびステータブレード19b、21bを有している。ホルベック(Holweck)機構22は、多数(図1には2つが示されているが、任意の適当な数を設けることができる)の回転シリンダ23aと、これに対応する環状ステータ23bと、これ自体は既知の態様をなす螺旋チャネルとを有している。
【0004】
この例では、第一ポンプ入口24が高真空チャンバ10に連結されており、該入口24を通ってポンピングされた流体は、両組のターボ分子段18、20およびホルベック(Holweck)機構22を連続的に通り、出口30からポンプ16を出る。第二ポンプ入口26が第三インターフェースチャンバ14に連結されており、第二ポンプ入口26を通ってポンピングされた流体はターボ分子段およびホルベック(Holweck)機構22を通り、出口30からポンプ16を出る。この例では、ポンプ16はまた第三入口27を有し、該第三入口27は選択的に開閉され、かつ、例えば流体を任意の第二インターフェースチャンバ12からポンプ16内に案内する内部バッフルを使用している。第三入口27を開くと、該第三入口を通ってポンピングされた流体は、ホルベック(Holweck)機構22のみを通り、出口30からポンプ16を出る。この例では、第一インターフェースチャンバ11はバッキングポンプ32に連結されており、該バッキングポンプ32も、複合真空ポンプ16の出口30から流体をポンピングする。一般に、バッキングポンプ32は、2次真空ポンプの出口30からの質量流量よりも多量の質量流量を第一チャンバ11から直接ポンピングする。各ポンプ入口に流入する流体は、ポンプから出る前にそれぞれの異なる段数を通るので、ポンプ16は、チャンバ10、12、14内に所要真空レベルを発生でき、バッキングポンプ32はチャンバ11内に所要真空レベルを発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッキングポンプ32は、一般に、比較的大型の床置きポンプである。使用されるバッキングポンプの形式により、第一インターフェースチャンバ11がバッキングポンプにより与えられる性能は、作動周波数により大きな影響を受ける。例えば、50Hz電源で運転される直接オンラインバッキングポンプが第一チャンバ11に発生する性能は、60Hzで作動する同じポンプが第一チャンバ11に発生する性能より20%低い。残りのチャンバ10、12、14も全て第一チャンバ11にリンクしているので、第一チャンバ11のあらゆる性能変化は、他のチャンバの性能に大きい影響を与える。
【0006】
少なくとも本発明の好ましい実施形態では、本発明は、上記の問題および他の問題の解決を追求することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の観点では、本発明は差圧ポンプ型真空システムを提供し、該差圧ポンプ型真空システムは、少なくとも第一チャンバおよび第二チャンバを備えた装置、例えば質量分光計と、チャンバからの流体を差圧ポンピングして、第一チャンバ内の0.1ミリバール以上、好ましくは1ミリバール以上の第一圧力および該第一圧力より低い第二チャンバ内の第二圧力を発生させる真空ポンプとを有し、該真空ポンプは、それぞれの圧力チャンバからの流体を受入れる少なくとも第一および第二ポンプ入口と、第一チャンバから受入れた流体が第二チャンバからの流体よりも少ないポンピング段を通るように前記入口に対して配置された複数のポンピング段とを備え、前記入口は、前記装置からポンピングされた流体質量の少なくとも99%がポンプの少なくとも1つのポンピング段を通るように装置に取付けられている。
【0008】
差圧ポンプ型真空ポンプには、同じポンピング装置または別のポンピング装置によってポンピングされる上記以外の付加低圧チャンバを設けることができる。しかしながら、いずれの場合にも、これらの付加低圧チャンバを通ってポンピングされる流体質量は、一般に、全システムの質量流量の1%より非常に小さい。
【0009】
各ポンピング段は、ドライポンピング段、すなわち、作動のためのいかなる液体すなわち潤滑剤をも全く必要としないポンピング段で形成するのが好ましい。
【0010】
一実施形態では、前記装置は第三チャンバを備え、前記ポンプは、第三チャンバ内の第二圧力より低い第三圧力を発生させるべく第三チャンバからの流体を受入れる第三入口を備え、前記ポンピング段は、第三チャンバからポンプに流入する流体が、第二チャンバからポンプに流入する流体より多数のポンピング段を通って流れるように配置されている。換言すれば、この実施形態ではポンプは、少なくとも3つのポンプ入口と、第一ポンプ入口に連結された比較的高圧の第一チャンバからの出口と、第二ポンプ入口に連結された第二中間圧力チャンバの出口と、第三ポンプ入口に連結された比較的低圧の第三チャンバとを有している。
【0011】
好ましくは、ポンプは少なくとも3つのポンピングセクションを有し、各ポンピングセクションが、第一チャンバから第三チャンバに差圧ポンピングする少なくとも1つのポンピング段を有している。ポンプは、好ましくは、第一ポンピングセクションと、該第一ポンピングセクションから下流側の第二ポンピングセクションと、該第二ポンピングセクションから下流側の第三ポンピングセクションとを有し、これらのセクションは、第三チャンバからポンプに流入する流体が第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションを通り、第二チャンバからポンプに流入する流体が前記セクションのうちの第二セクションおよび第三セクションのみを通り、第一チャンバからポンプに流入する流体が前記セクションのうちの第三ポンプセクションの少なくとも一部のみを通るように、入口に対して配置されている。
【0012】
好ましくは、第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの少なくとも1つのポンピングセクションは、少なくとも1つのターボ分子段を有している。第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの両ポンピングセクションは、少なくとも1つのターボ分子段を有している。第一ポンピングセクションの段は、第二ポンピングセクションの段とは異なるサイズにすることができる。例えば、第二ポンピングセクションの段は、第一ポンピングセクションの段より大きくして、選択的なポンピング性能が得られるように構成できる。
【0013】
任意であるが、第三ポンピングセクションは、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体が、第一ポンプ入口からこれを通って流れる流体とは異なる経路に従って流れるように配置される。例えば、第三ポンピングセクションは、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口からこれを通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように配置できる。或いは、第三ポンピングセクションは、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口からこれを通って流れる流体の経路とは異なる経路に従って流れるように配置できる。例えば、第三ポンピング段に複数のチャネルを設け、1つ以上のチャネルが第二ポンプ入口に連通し、一方、残りのチャネルが第一ポンプ入口に連通するように構成できる。
【0014】
第三ポンピングセクションは、少なくとも1つの分子ドラッグ段を有することが好ましい。好ましい実施形態では、第三セクションは、複数の螺旋体として配置された複数のチャネルを備えた多段ホルベック(Holweck)機構を有する。ホルベック(Holweck)機構は、第一ポンプ入口からこれを通って流れる流体が、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置できる。
【0015】
一実施形態では、第三ポンピングセクションは、第一チャンバ、第二チャンバおよび第三チャンバの各々からポンプに流入する流体を受入れる少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段、および/または、少なくとも1つの空気力学的ポンピング段を有している。ホルベック(Holweck)機構は、前記少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段、および/または、少なくとも1つの空気力学的ポンピング段から上流側に配置して、第一ポンプ入口からポンプに流入する流体がこれを通らないように構成できる。
【0016】
空気力学的ポンピング段は、再生段として構成できる。他の形式の空気力学的機構として、サイドフロー機構、サイドチャネル機構およびペリフェラルフロー機構がある。ポンプ出口からの排出流体の圧力は、使用時に、10ミリバールに等しいか、或いは、10ミリバールより大きいことが好ましい。
【0017】
装置には、第一チャンバと第二チャンバとの間に配置された第四チャンバを設けることができる。この場合には、真空ポンプは第四チャンバから流体を受入れるための任意の第四入口を設けるのが好ましい。第四入口は、第四チャンバからポンプに流入する流体が、前記セクションのうちの、ポンプ出口に向かう第三ポンピングセクションのみを通って流れるように配置される。第四チャンバからポンプに流入する流体は、第一チャンバからポンプに流入する流体より多くの段数の第三ポンピングセクションを通って流れる。
【0018】
ポンプは、好ましくは、各ポンピング段の少なくとも1つのロータ要素が取付けられた駆動軸を有している。ポンピングセクションの少なくともロータ要素は、駆動軸に取付けられる共通インペラ上に、好ましくは該インペラと一体に配置される。例えば、第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションのロータ要素は、インペラと一体に形成できる。第三ポンピングセクションが分子ドラッグ段を有する場合には、分子ドラッグ段のインペラが、該インペラと一体のロータに配置される。例えば、ロータは、インペラに対して実質的に垂直で、好ましくはインペラと一体のディスクを有するのが好ましい。第三ポンピングセクションが再生ポンピング段を有する場合には、再生ポンピング段のロータ要素は、インペラと一体であるのが好ましい。
【0019】
好ましくは、システムはバッキングポンプを有し、該バッキングポンプは、使用時に、装置からポンピングされる流体質量の少なくとも99%が、真空ポンプおよびバッキングポンプの両方を通って流れるようにポンプ出口に連結される。
【0020】
第二の観点では、本発明は、装置の複数のチャンバの減圧排気を行う方法であって、真空ポンプを設ける段階を有し、真空ポンプが、それぞれのチャンバから流体を受入れる少なくとも第一ポンプ入口および第二ポンプ入口と、第一入口からポンプに流入する流体が第二入口からポンプに流入する流体よりも少数のポンピング段を通って流れるように入口に対して配置された複数のポンピング段とを備え、使用時に、装置からポンピングされた流体質量の少なくとも99%がポンプのポンピング段の少なくとも1つのを通って流れるようにポンプの入口をチャンバに取付ける段階と、第一チャンバ内に0.1ミリバール以上の第一圧力を発生させ、かつ第二チャンバ内に第一圧力より低い第二圧力を発生させるようにポンプを作動する段階とを更に有する方法を提供する。
【0021】
第三の観点では、本発明は、複数の圧力チャンバと、該圧力チャンバに取付けられた真空ポンプとを有し、該真空ポンプが、それぞれの圧力チャンバから流体を受入れる複数のポンプ入口と、チャンバを差圧ポンピングする複数のポンピング段とを備え、該ポンピング段は、最高圧力が発生される圧力チャンバから流体をポンピングすべく配置されたポンピング段が、ガエデ(Gaede)ポンピング段または空気力学的ポンピング段を有している差圧ポンプ型真空システムを提供する。このシステムは、質量分光システム、コーティングシステムまたは複数の差圧ポンプ型チャンバを備えた他の形式のシステムで構成できる。本発明の第一の観点に関連して前述した特徴は、本発明のこの第三の観点に等しく適用できる。
【0022】
第四の観点では、本発明は、複数のチャンバの減圧排気を行う方法であって、真空ポンプを設ける段階を有し、真空ポンプが、それぞれの圧力チャンバから流体を受入れる複数のポンプ入口と、チャンバを差圧ポンピングする複数のポンピング段とを備え、最高圧力を発生させるべき圧力チャンバから流体をポンピングするポンピング段がガエデ(Gaede)ポンピング段または空気力学的ポンピング段で構成されるようにポンプをチャンバに取付ける段階を更に有する方法を提供する。
【0023】
第五の観点では、本発明は、第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションと、第一ポンプ入口とを有し、流体は第一ポンプ入口を通ってポンプに流入できかつポンプ出口に向かう各ポンピングセクションを通って流れ、第二ポンプ入口を有し、流体は第二ポンプ入口を通ってポンプに流入できかつ出口に向かう第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションのみを通って流れ、任意としての第三ポンプ入口を有し、流体は第三ポンプ入口を通ってポンプに流入できかつ出口に向かう第三ポンピングセクションのみを通って流れ、第四入口を更に有し、流体は第四入口を通ってポンプに流入できかつ出口に向かう第三ポンピングセクションの一部のみを通って流れる構成の複合多ポート真空ポンプを提供する。
【0024】
本発明はまた、各チャンバを減圧排気するための、上記複数のチャンバおよびポンプを備えた差圧ポンプ型真空システムを提供する。このシステムは、ポンプからの排出流体を受入れるポンプ出口に連結された入口を備えたバッキングポンプを有することが好ましい。
【0025】
本発明のシステムまたはポンプの態様に関して上述した特徴は、本発明の方法の態様にも等しく適用でき、またこの逆もいえることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい特徴について、例示のみを目的として示す添付図面を参照して説明する。
【0027】
図2は、図1に関連して上述した差圧ポンプ型質量分光システムの全質量流量の99%以上を減圧排気するのに適した複合多ポート真空ポンプ100の第一実施形態を示すものである。これは、通常の第二最高圧力チャンバおよび第三最高圧力チャンバ以外に、最高圧力チャンバを直接ポンピングできるように配置された真空ポンプ100により達成される。複合多ポート真空ポンプ100は多コンポーネントボディ102を有し、該ボディ102内には駆動軸104取付けられている。駆動軸104は、例えば駆動軸104の回りに配置されるブラシレス直流モータのようなモータ(図示せず)により回転される。駆動軸104は、両端がベアリング(図示せず)により支持されている。例えば、駆動軸104は、永久磁石ベアリング/オイル潤滑型ベアリングハイブリッドシステムにより支持することができる。
【0028】
ポンプ100は少なくとも3つのポンピングセクション106、108、112を有している。図2に示す実施形態では、1組のターボ分子段106は、既知の傾斜構造をもつ4つのロータブレードおよび3つのステータブレードを有している。ロータブレードは参照番号107aで示され、ステータブレードは参照番号107bで示されている。この例では、ロータブレード107aは駆動軸104に取付けられている。
【0029】
第二ポンピングセクション108は第一ポンピングセクション106と同様であり、これも1組のターボ分子段を有している。図2に示す実施形態では、ターボ分子段108の組も、既知の傾斜構造をもつ4つのロータブレードおよび3つのステータブレードを有している。ロータブレードは参照番号109aで示され、ステータブレードは参照番号109bで示されている。この例では、ロータブレード109aも駆動軸104に取付けられている。
【0030】
第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの下流側には、例えばホルベック(Holweck)ドラッグ機構のような分子ドラッグ機構の形態をなす第三ポンピングセクション112が設けられている。この実施形態では、ホルベック(Holweck)機構は、2つの回転シリンダ113a、113b、および、それらに対応する環状ステータ114a、114bを有し、これらの間には、これ自体は既知の態様で螺旋チャネルが形成されている。回転シリンダ113a、113bは、好ましくはカーボン繊維材料で形成され、かつ駆動軸104上に配置されたディスク115上に取付けられている。この例では、ディスク115はまた、駆動軸104に取付けられている。
ホルベック(Holweck)機構112の下流側にはポンプ出口116が設けられている。出口116を介して、バッキングポンプ150がポンプ100を支援している。
【0031】
図2に示すように、ポンプ100は3つの入口120、122、124を有している。この実施形態では3つの入口のみが使用されているが、ポンプには、参照番号126で示す任意の付加入口を設けることができる。この付加入口126は選択的に開閉され、かつ例えば、異なる流れを機構の特定部分に案内する内部バッフルを使用できる。全てのポンピングセクションの上流側には、低圧流体入口120が配置されている。第一ポンピングセクション106と第二ポンピングセクション108との中間には、中間圧力流体入口122が配置されている。ホルベック(Holweck)機構112の全ての段が他の入口120、122と流体連通するように、ホルベック(Holweck)機構112の上流側すなわち図2に示すようにホルベック(Holweck)機構112との間には、高圧流体入口124を配置できる。一方、図2に示す構成では、一部の段(1つ以上の段)が第三入口124に流体連通している。第二ポンピングセクション108とホルベック(Holweck)機構112との間には、任意の入口126が配置されており、これにより、ホルベック(Holweck)機構112の全ての段が任意の入口126に流体連通する。
【0032】
使用時に、各入口は、差圧ポンプ型質量分光システムのそれぞれのチャンバに連結される。かくして、入口120は低圧チャンバ10に連結され、入口122は中間圧力チャンバ14に連結され、かつ入口124は最高圧力チャンバ11に連結されている。破線140により示されているように、高圧チャンバ11と中間圧力チャンバ14との間に他のチャンバ12が存在する場合には、任意の入口126が開かれて、このチャンバ12に連結される。このシステムには付加低圧チャンバを付加できる。これらの付加低圧チャンバは別の手段によりポンピングされるが、付加低圧チャンバの質量流量は、一般に、質量分光システムの全質量流量の1%以下である。
【0033】
低圧チャンバ10から入口120を通って流入する流体は、第一ポンピングセクション106、第二ポンピングセクション108およびホルベック(Holweck)機構112の全てのチャネルを通って流れ、ポンプ出口116を通ってポンプ100から出る。中間圧力チャンバ14から入口122を通って流入する流体は、第二ポンピングセクション108およびホルベック(Holweck)機構112の全てのチャネルを通って流れ、ポンプ出口116を通ってポンプ100から出る。高圧チャンバ11から入口124を通って流入する流体は、ポンプ100に流入し、ホルベック(Holweck)機構のチャネルの少なくとも一部を通り、ポンプ出口116を通ってポンプを出る。入口126を開くと、チャンバ12から入口126を通って流入する流体は、ポンプ100に流入し、ホルベック(Holweck)機構112の全てのチャネルを通り、ポンプ出口116を等ってポンプ100から出る。
【0034】
この例では、使用に際し、図1に関連して説明したシステムと同様に、第一インターフェースチャンバ11は1ミリバール以上の圧力(好ましくは約1〜10ミリバールの圧力)にあり、第二インターフェースチャンバ12(該チャンバ12が使用される場合)は約10-1ミリバールから1ミリバールの圧力にあり、第三インターフェースチャンバ14は約10-2ミリバールから10-3ミリバールの圧力にあり、かつ高真空チャンバ10は約10-5ミリバールから10-6ミリバールの圧力にある。
【0035】
上記実施形態の特別な長所は、差圧ポンプ型質量分光システムの高圧チャンバが、バッキングポンプ150によってではなく、第二最高圧力チャンバおよび第三最高圧力チャンバにポンピングする同じ複合多ポート真空ポンプ100によって直接ポンピングされることができるため、複合多ポート真空ポンプ100が、質量分光システムの全流体質量流量の99%以上を管理できることである。かくして、第一チャンバおよび内的にリンクされた分光システムの残部の性能は、バッキングポンプのサイズを増大させることなく増大できる。
【0036】
図3は、差圧ポンプ型質量分光システムからの全質量流量の99%以上を減圧排気させるのに適した、第一実施形態と同様な真空ポンプ200の第二実施形態を示す。この第二実施形態は、第三ポンピングセクションがまた、少なくとも1つの空気力学的ポンピング段210(この例では、ホルベック(Holweck)機構212の下流側に配置された少なくとも1つの空気力学的再生段の形態をなしている)を有している。
【0037】
再生段210は、ホルベック(Holweck)機構212のディスク215に取付けられるか、該ディスク215と一体に形成された突出リング211aの環状配列の形態をなす複数のロータを有している。図4に示すように、この実施形態では、ターボ分子セクション106、108のそれぞれのロータ107、109、ホルベック(Holweck)機構212の回転ディスク215、および、再生段210のロータ211aは、駆動軸204に取付けられた共通インペラ245上に配置されており、ホルベック(Holweck)機構212のカーボン繊維からなる回転シリンダ213aは、これらの一体回転要素の機械加工後に回転ディスク215に取付けられる。しかしながら、1つ以上のこれらの回転要素のみをインペラ245と一体に形成し、残りの要素は、第一実施形態におけるように駆動軸204に取付けるか、必要に応じて他のインペラに配置することもできる。インペラ245の図面で見て右端は磁気ベアリング(このベアリングの永久磁石はインペラ上に配置される)により支持でき、駆動軸204の図面で見て左端は潤滑型ベアリングにより支持できる。
【0038】
ホルベック(Holweck)機構212のステータ214bはまた、再生段210のステータを形成し、かつステータ214bには環状チャネル211bが形成され、該環状チャネル211b内でロータ211aが回転する。既知のように、チャネル211bの断面積は、ロータに対する近接間隙を形成する小断面部分を有する「ストリッパ」として知られたチャネルの小部分を除き、個々のロータ211aの断面積より大きい。ポンプ200の使用に際し、差圧ポンプ型質量分光システムの各チャンバからポンピングされた流体は、ストリッパの一端に隣接して配置された入口から環状チャネル211b内に流入し、この流体は、該流体がストリッパの他端に衝突するまでチャネル211bに沿って回転ディスク215上のロータ211aにより押圧される。
【0039】
使用に際し、真空ポンプ200は、差圧ポンプ型質量分光システムのチャンバ内で、第一実施形態の真空ポンプ100と同様の性能的長所を発揮する。第一実施形態により得られる可能性ある性能的長所に加え、この第二実施形態は更に2つの長所が得られる。これらの長所のうちの第一の長所は、異なる性能レベルをもつポンプ、例えば50Hzまたは60Hzのオンラインで直接作動するバッキングポンプでバッキングされるときでも、システム性能が終始一定していることである。この第二実施形態の場合には、図3に関連して説明したシステムにおけるシステム性能の変動は、バッキングポンプ250の作動周波数が50Hzと60Hzとの間で変化する場合でも1%程度の低さであり、従って、使用者に安定したシステム性能をもつポンピング装置を提供できることが考えられる。
【0040】
第二実施形態の第二の付加的長所は、ホルベック(Holweck)セクションの下流側に付加ポンピング段を設けることにより、真空ポンプのこの構成が、バッキングポンプ250のキャパシティ従ってサイズを、第一実施形態に比べてかなり小さくできることである。これは、付加ポンピングセクション210により、真空ポンプ200が10ミリバールを超える圧力で流体を排出できることによる。これに対し、第一実施形態の真空ポンプ100は、一般に、約1ミリバールから10ミリバールの圧力で流体を排出するに過ぎない。このため、バッキングポンプ250のサイズを、第一実施形態のバッキングポンプ150に比べて大幅に小さくできる。このサイズ縮小は、システム性能に悪影響を与えることなく、或る質量分光システムにおいて10分の1程度にすることが考えられる。図3および図4に示すように、再生段210のロータ211aは、ホルベック(Holweck)セクション212の回転シリンダ213aにより包囲されている。かくして、再生セクション210は、真空ポンプの全長を殆ど増大させることなく、または、全く増大させることなく、第一実施形態の真空ポンプ100に便利に組込むことができる。かくして、真空ポンプ200およびバッキングポンプ250の両方を備えた第二実施形態の全真空ポンプシステムは、サイズを縮小でき、従って卓上型ハウジング内に便利に収容できる。
【0041】
図5は、差圧ポンプ型質量分光システムからの全質量流量の99%以上を減圧排気させるのに適した、第二実施形態と同様な真空ポンプ260の第三実施形態を示す。この第二実施形態では、高圧チャンバ11から入口124を通って流入する流体は、ホルベック(Holweck)機構212を通ることなく、空気力学的ポンピング段210を通ってポンプ250に流入し、ポンプ出口216を通ってポンプから出る。また、図5に示すように、空気力学的ポンピング段210の少なくとも一部は、ガエデ(Gaede)型機構または他の分子ドラッグ機構300で置換できる。空気力学的ポンピング段210をガエデ(Gaede)型機構300で置換できる度合いは、真空ポンプ260の所要ポンピング性能に基いて定まる。例えば、再生段210は、全体をガエデ(Gaede)型機構で置換するか、図示のように、一部のみをガエデ(Gaede)型機構で置換することもできる。
【0042】
要約すれば、差圧ポンプ型質量分光システムは、複数の圧力チャンバを備えた質量分光計と、該質量分光計に取付けられかつそれぞれの圧力チャンバから流体を受入れるための複数のポンプ入口および前記チャンバからの流体を差圧ポンピングする複数のポンピング段を備えた真空ポンプとを有し、使用に際し、分光計からポンピングされた少なくとも99%の流体質量が、真空ポンプの1つ以上のポンピング段を通って流れる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】差圧ポンプ型質量分光システムの減圧排気を行なうのに適した既知の多ポート真空ポンプの簡単化した断面図である。
【図2】図1の差圧ポンプ型質量分光システムの減圧排気を行なうのに適した多ポート真空ポンプの第一実施形態の簡単化した断面図である。
【図3】図1の差圧ポンプ型質量分光システムの減圧排気を行なうのに適した多ポート真空ポンプの第二実施形態の簡単化した断面図である。
【図4】図3に示したポンプに使用するのに適したインペラの簡単化した断面図である。
【図5】図1の差圧ポンプ型質量分光システムの減圧排気を行なうのに適した多ポート真空ポンプの第三実施形態の簡単化した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
100、200、260 複合多ポート真空ポンプ
106 ターボ分子段(ターボポンピングセクション)
108 第二ポンピングセクション(ターボポンピングセクション)
112、212 ホルベック(Holweck)機構
150、250 バッキングポンプ
210 空気力学的ポンピング段(再生段、付加ポンピングセクション)
211a 突出リング(ロータ)
213a 回転シリンダ
215 回転ディスク
245 共通インペラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一チャンバおよび第二チャンバを備えた装置と、チャンバからの流体を差圧ポンピングして、第一チャンバ内の0.1ミリバール以上の第一圧力および該第一圧力より低い第二チャンバ内の第二圧力を発生させる真空ポンプとを有し、該真空ポンプは、それぞれの圧力チャンバからの流体を受入れる少なくとも第一ポンプ入口および第二ポンプ入口と、第一チャンバから受入れた流体が第二チャンバからの流体よりも少ないポンピング段を通るように前記入口に対して配置された複数のポンピング段とを備え、前記入口は、前記装置からポンピングされた流体質量の少なくとも99%がポンプの少なくとも1つのポンピング段を通るように装置に取付けられることを特徴とする差圧ポンプ型真空システム。
【請求項2】
前記第一圧力は1ミリバール以上であることを特徴とする請求項1記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項3】
前記各ポンピング段はドライポンピング段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項4】
前記装置は第三チャンバを備え、前記ポンプは、第三チャンバ内の第二圧力より低い第三圧力を発生させるべく第三チャンバからの流体を受入れる第三入口を備え、前記ポンピング段は、第三チャンバからポンプに流入する流体が、第二チャンバからポンプに流入する流体より多数のポンピング段を通って流れるように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項5】
前記ポンプは少なくとも3つのポンピングセクションを有し、各ポンピングセクションが、第一チャンバから第三チャンバに差圧ポンピングする少なくとも1つのポンピング段を有していることを特徴とする請求項4記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項6】
前記ポンプは、第一ポンピングセクションと、該第一ポンピングセクションから下流側の第二ポンピングセクションと、該第二ポンピングセクションから下流側の第三ポンピングセクションとを有し、これらのセクションは、第三チャンバからポンプに流入する流体が第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションを通り、第二チャンバからポンプに流入する流体が前記セクションのうちの第二セクションおよび第三セクションのみを通り、第一チャンバからポンプに流入する流体が前記セクションのうちの第三ポンプセクションの少なくとも一部のみを通るように、入口に対して配置されることを特徴とする請求項5記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項7】
第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの少なくとも1つのポンピングセクションが、少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項6記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項8】
第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの両ポンピングセクションが、少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項6または7記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項9】
第三ポンピングセクションは、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体が、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体とは異なる経路に従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項10】
前記第三ポンピングセクションは、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項9記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項11】
前記第三ポンピングセクションは少なくとも1つの分子ドラッグ段を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項12】
前記第三ポンピングセクションは、複数の螺旋体として配置された複数のチャネルを備えた多段ホルベック(Holweck)機構を有することを特徴とする請求項11記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項13】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口からこれを通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項12記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項14】
前記第三ポンピングセクションは、第一チャンバ、第二チャンバおよび第三チャンバの各々からポンプに流入する流体を受入れる少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段、および/または、少なくとも1つの空気力学的ポンピング段を有していることを特徴とする請求項6〜13のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項15】
前記ホルベック(Holweck)機構は、前記少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段および/または少なくとも1つの空気力学的ポンピング段から上流側に配置されることを特徴とする請求項14記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項16】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第一ポンプ入口からポンプに流入する流体が第一ポンプ入口を通らないように、第一入口および第二入口に対して配置されることを特徴とする請求項15記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの空気力学的ポンピング段は、少なくとも1つの再生段を有していることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項18】
前記第三ポンピングセクションは少なくとも1つの空気力学的ポンピング段を有し、使用時に、ポンプ出口からの排出流体の圧力は10ミリバールに等しいか、10ミリバールより大きいことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項19】
前記装置は第一チャンバと第二チャンバとの間に配置された第四チャンバを有し、前記真空ポンプは第四チャンバから流体を受け入れるための第四入口を有していることを特徴とする請求項4〜18のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項20】
前記第四入口は、第四チャンバからポンプに流入する流体が、前記セクションのうちの、ポンプ出口に向かう第三ポンピングセクションのみを通って流れるように配置されていることを特徴とする請求項19記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項21】
前記第四チャンバからポンプに流入する流体は、第一チャンバからポンプに流入する流体より多くの段数の第三ポンピングセクションを通って流れることを特徴とする請求項20記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項22】
前記ポンプは、各ポンピング段の少なくとも1つのロータ要素が取付けられた駆動軸を有していることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項23】
バッキングポンプを有し、該バッキングポンプは、使用時に、装置からポンピングされる流体質量の少なくとも99%が、真空ポンプおよびバッキングポンプの両方を通って流れるようにポンプ出口に連結されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項24】
前記装置は質量分光計を有していることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項25】
装置の複数のチャンバの減圧排気を行う方法において、真空ポンプを設ける段階を有し、真空ポンプが、それぞれのチャンバから流体を受入れる少なくとも第一ポンプ入口および第二ポンプ入口と、第一入口からポンプに流入する流体が第二入口からポンプに流入する流体よりも少数のポンピング段を通って流れるように入口に対して配置された複数のポンピング段とを備え、使用時に、装置からポンピングされた流体質量の少なくとも99%がポンプのポンピング段の少なくとも1つのを通って流れるようにポンプの入口をチャンバに取付ける段階と、第一チャンバ内に0.1ミリバール以上の第一圧力を発生させかつ第二チャンバ内に第一圧力より低い第二圧力を発生させるようにポンプを作動する段階とを更に有することを特徴とする方法。
【請求項26】
複数の圧力チャンバと、該圧力チャンバに取付けられた真空ポンプとを有し、該真空ポンプが、それぞれの圧力チャンバから流体を受入れる複数のポンプ入口と、チャンバを差圧ポンピングする複数のポンピング段とを備え、該ポンピング段は、最高圧力が発生される圧力チャンバから流体をポンピングすべく配置されたポンピング段が、ガエデ(Gaede)ポンピング段または空気力学的ポンピング段を有していることを特徴とする差圧ポンプ型真空システム。
【請求項27】
前記ポンピング段は再生段を有していることを特徴とする請求項26記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項28】
前記ポンピング段は空気力学的ポンピング段を有し、使用時に、ポンプ出口からの排出流体の圧力は10ミリバールに等しいか、或いは、10ミリバールより大きいことを特徴とする請求項26または27記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項29】
前記複数の圧力チャンバは、最高圧力が発生される第一チャンバと、第一チャンバより低い圧力が発生される第二チャンバとを有し、前記複数の入口は、第一チャンバから流体を受入れる第一入口と、第二チャンバから流体を受入れる第二入口とを有し、複数のポンピング段は、第一チャンバから受入れた流体が第二チャンバからの流体より少数のポンピング段を通って流れるように、入口に対して配置されることを特徴とする請求項26〜28のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項30】
前記第一チャンバ内の圧力が0.1ミリバール以上であり、好ましくは1ミリバール以上であることを特徴とする請求項29記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項31】
前記ポンプは少なくとも2つのポンピングセクションを有し、各ポンピングセクションは、第一チャンバおよび第二チャンバを差圧ポンピングする少なくとも1つのポンピング段を備えていることを特徴とする請求項29または30記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項32】
前記ポンプは、第一ポンピングセクションと、該第一ポンピングセクションから下流側の第二ポンピングセクションと、前記ポンピング段とを有し、前記セクションは、第二チャンバからポンプに流入する流体が第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションを通って流れるように、入口に対して配置されており、第一チャンバからポンプに流入する流体が、第二セクションの少なくとも前記ポンピング段を通って流れることを特徴とする請求項31記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項33】
前記第一ポンピングセクションは少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項32記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項34】
前記第二ポンピングセクションは、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体が、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体とは異なる経路に従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項32または33記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項35】
前記第二ポンピングセクションは、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口から、第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項34記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項36】
前記第二ポンピングセクションは更に、前記ポンピング段から上流側に配置された少なくとも1つの分子ドラッグ段を有していることを特徴とする請求項32〜35のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項37】
前記第三ポンピングセクションが、前記ポンピング段から上流側に、複数の螺旋体として配置された複数のチャネルを備えた多段ホルベック(Holweck)機構を有していることを特徴とする請求項36記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項38】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第一ポンプ入口から第一ポンプ入口を通って流れる流体が、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように、第一ポンプ入口および第二ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項37記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項39】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第一ポンプ入口からポンプに流入する流体が第一ポンプ入口を通って流れないように第一入口および第二入口に対して配置されることを特徴とする請求項37記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項40】
第三圧力チャンバを有し、前記ポンプは、第三チャンバ内に第二圧力より低い第三圧力を発生させるべく、第三チャンバから流体を受入れるための第三入口を有し、前記ポンピング段は、第三チャンバからポンプに流入する流体が第二チャンバからポンプに流入する流体より多数のポンピング段を通って流れるように配置されていることを特徴とする請求項32〜39のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項41】
前記ポンプは第二ポンピングセクションから上流側の第三ポンピングセクションを有し、第三セクションは、第三チャンバからポンプに流入する流体が第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションを通って流れるように配置されることを特徴とする請求項40記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項42】
前記第三セクションは少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項41記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項43】
第一チャンバと第二チャンバとの間に配置された第四チャンバを有し、前記真空ポンプが第四チャンバから流体を受入れる第四入口を有していることを特徴とする請求項40〜42のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項44】
前記第四チャンバからポンプに流入する流体が、前記セクションのうち、ポンプ出口に向かう第一ポンピングセクションのみを通って流れるように配置されていることを特徴とする請求項43記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項45】
前記第四チャンバからポンプに流入する流体が、第一チャンバからポンプに流入する流体より多数の第一ポンピングセクションの段を通って流れることを特徴とする請求項44記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項46】
前記ポンプは、各ポンピング段の少なくとも1つのロータ要素が取付けられた駆動軸を有していることを特徴とする請求項26〜45のいずれか1項記載の差圧ポンプ型真空システム。
【請求項47】
複数のチャンバの減圧排気を行う方法において、真空ポンプを設ける段階を有し、真空ポンプが、それぞれの圧力チャンバから流体を受入れる複数のポンプ入口と、チャンバを差圧ポンピングする複数のポンピング段とを備え、最高圧力を発生させるべき圧力チャンバから流体をポンピングするポンピング段がガエデ(Gaede)ポンピング段または空気力学的ポンピング段で構成されるようにポンプをチャンバに取付ける段階を更に有することを特徴とする方法。
【請求項48】
第一ポンピングセクション、第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションと、第一ポンプ入口とを有し、流体は第一ポンプ入口を通ってポンプに流入できかつポンプ出口に向かう各ポンピングセクションを通って流れ、第二ポンプ入口を有し、流体は第二ポンプ入口を通ってポンプに流入でき、かつ出口に向かう第二ポンピングセクションおよび第三ポンピングセクションのみを通って流れ、任意としての第三ポンプ入口を有し、流体は第三ポンプ入口を通ってポンプに流入でき、かつ出口に向かう第三ポンピングセクションのみを通って流れ、第四入口を更に有し、流体は第四入口を通ってポンプに流入できかつ出口に向かう第三ポンピングセクションの一部のみを通って流れることを特徴とする複合多ポート真空ポンプ。
【請求項49】
前記第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの少なくとも1つが少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項48記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項50】
前記第一ポンピングセクションおよび第二ポンピングセクションの両方が少なくとも1つのターボ分子段を有していることを特徴とする請求項48または49記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項51】
前記第三ポンピングセクションは、第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体が第四ポンプ入口から第四ポンプ入口を通って流れる流体とは異なる経路に従って流れるように第二ポンプ入口および第四ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項48〜50のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項52】
前記第三ポンピングセクションは、第四ポンプ入口から第四ポンプ入口を通って流れる流体が第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように第二ポンプ入口および第四ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項51記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項53】
前記第三ポンピングセクションは少なくとも1つの分子ドラッグ段を有していることを特徴とする請求項48〜52のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項54】
前記第三ポンピングセクションは、複数の螺旋体として配置された複数のチャネルを備えたホルベック(Holweck)機構を有していることを特徴とする請求項53記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項55】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第四ポンプ入口から第四ポンプ入口を通って流れる流体が第二ポンプ入口から第二ポンプ入口を通って流れる流体の経路の一部のみに従って流れるように第二ポンプ入口および第四ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項54記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項56】
前記第三ポンピングセクションは、少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段および/または少なくとも1つの空気力学的ポンピング段を有していることを特徴とする請求項48〜55のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項57】
前記ホルベック(Holweck)機構は、少なくとも1つのガエデ(Gaede)ポンピング段、および/または、少なくとも1つの空気力学的ポンピング段から上流側に配置されることを特徴とする請求項54に従属している場合の請求項56記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項58】
前記ホルベック(Holweck)機構は、第四ポンプ入口からポンプに流入する流体がこれを通らないように、第二ポンプ入口および第四ポンプ入口に対して配置されることを特徴とする請求項57記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項59】
前記少なくとも1つの空気力学的ポンピング段は少なくとも1つの再生段を有していることを特徴とする請求項56〜58のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項60】
前記第三ポンピングセクションは少なくとも1つの空気力学的ポンピング段を有し、使用時に、前記ポンプ出口からの排出流体の圧力が10ミリバールに等しいか、或いは、10ミリバールより大きいことを特徴とする請求項57〜59のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項61】
前記第三入口は、これを通ってポンプに流入する流体が、前記セクションのうちのポンプ出口に向かう第三ポンピングセクションのみを通って流れるように配置されることを特徴とする請求項60記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項62】
前記第三入口を通ってポンプに流入する流体は、第四入口を通ってポンプに流入する流体より多数の第三ポンピングセクションの段を通って流れることを特徴とする請求項61記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項63】
前記各ポンピングセクションの少なくとも1つのロータ要素が取付けられた駆動軸を有していることを特徴とする請求項48〜62のいずれか1項記載の複合多ポート真空ポンプ。
【請求項64】
各チャンバを減圧排気するための、請求項48〜63のいずれか1項記載の複数のチャンバおよびポンプを有することを特徴とする差圧ポンプ型真空システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−507656(P2007−507656A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530555(P2006−530555)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004046
【国際公開番号】WO2005/040615
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】