真空下での蒸発により発酵から生成物アルコールを取り出す方法
水および生成物アルコールを含みさらに任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物は、蒸気流が発生するように少なくとも部分的に蒸発させられる。蒸気流は、ある量の生成物アルコールが吸収される好適な条件下で吸収液体と接触させる。吸収される蒸気流部分は、水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2のそれぞれをある量含むことができる。吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度は、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高いものでありうる。生成物アルコールは吸収液体から分離でき、それにより吸収液体は再生される。吸収液体はアミンなどの水溶性有機分子を含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年12月29日に出願された米国仮出願第61/427,896号明細書、および2010年2月9日に出願された米国仮出願第61/302,695号明細書の優先権を主張するものであり、それらの開示内容全体をすべて本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、真空蒸発を使用して、ブタノールおよび他のC2〜C8アルコールを発酵ブロスから取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、多くの工業発酵は、化学品用途または燃料用途用のエタノールの製造が関係している。燃料用途の場合、ブタノールはエタノールと比べて有利である。すなわち、ブタノールは蒸気圧が低く、水への溶解度が小さい。
【0004】
有利なブタノール発酵プロセスは、ブタノール耐性のしきい値より上のブタノール濃度(butanol titer)に達することなく(これに達すると、ブタノールの産生速度が望ましくない事前設定速度を下回ることになる)、糖類からブタノールへの完全な変換または実質的に完全な変換を達成するであろう。バッチ発酵において耐性レベルより上のブタノール濃度で操作する必要のないレベルまで、糖の投入量(loadings)を抑えることは可能でありうるが、この取り組み方には不利な点がある。なぜなら、糖の投入量を抑えると、それ自体がプロセスにとって経済的に望ましくない希薄溶液が生じるからである。そのため、発酵においてブタノールのレベルが耐性レベル以下に抑えられると共に、耐性レベルを考慮するゆえに糖の投入量が抑えられるということのないプロセスが必要とされている。
【0005】
ブタノール産生発酵プロセスをいっそう効率的にするであろう1つの手段は、ブタノールが発酵培地(ブロス)から生じているのでブタノールを除去することであろう。その結果、ブタノール産生微生物の耐性レベルに達することがなく、大量の糖を発酵容器に充填することが可能である。そのような「現場での生成物除去(in situ product removal)」または「ISPR」プロセスは、特許文献1に記載されている。
【0006】
発酵生成物のためのISPRプロセスについては、Rofflerの論文(非特許文献1)にも記載されている。Rofflerは、発酵容器からの液体流を、真空に保持されている別個の容器に送るプロセスについて記載している。しかし、Rofflerに記載されている方法は、得られる蒸気流をさらに処理する必要がある。工業発酵は微生物に頼っているため、そのような処理では、微生物に対する温度の制約条件を考慮に入れなければならない。
【0007】
許容できる温度で操作するためには、真空下での冷却または操作の、コストおよび実用性を考慮しなければならない。化学プロセスでの熱の除去に関連したコストは、工場の所在地ならびに一年のどの時期かによって異なりうる。多くの地理的地域では、熱を蒸気流から除去する必要のある温度で、冷却が行えることまたは実際的であることを保証することは不可能である。
【0008】
冷水を熱交換器へ供給しそれによって凝縮を行う場合、冷却剤のコストが著しく増大する。代替方法は、蒸気流を圧縮して高圧力にして冷却水との接触で一年中凝縮が行えるようにすることであろう。しかし、これもかなりのコストを必要とする。なぜなら、機械に送られる初期の蒸気が低密度だからである。エタノールおよび水蒸気を吸収するために臭化リチウムを使用する既述のプロセスは、蒸気流の二酸化炭素または高級アルコールを吸収するのに十分ではないことがある。
【0009】
さらに、どんな方法を使用したとしても、(CO2には発酵ブロスへの溶解性があるため)大気へ排出する前に圧縮しなければならない残留ガス流があるであろう。残留ガス流はCO2を含むであろう。真空フラッシングは、ブタノールを発酵プロセスから除去できる効果的な手段ではあるが、生成物を含んでいる得られた低圧蒸気流を処理する点で進歩する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT国際公開第2009/079362A2号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Roffler,Steve Ronald,”Extractive fermentation − lactic acid and acetone/butanol production,”Department of Chemical Engineering at the University of California at Berkeley,1986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
真空下での蒸発によって発酵から生成物アルコールを取り出す方法が提供される。例えば、実施形態によっては、水および生成物アルコールを含みさらに任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物は、蒸気流が発生するように少なくとも部分的に蒸発させられる。蒸発させた発酵供給物から生成物アルコールを回収する方法も提供される。例えば、実施形態によっては、生成物アルコールを含む蒸気流を好適な条件下で吸収液体と接触させるが、そのときにある量の生成物アルコールが吸収される。吸収液体が再生される、吸収液体からの生成物アルコールの回収方法も提供される。
【0013】
複数の実施形態において、方法は、発酵液体供給物を少なくとも部分的に蒸発させるステップであって、蒸気流が発生し、発酵液体供給物および蒸気流がそれぞれある量の水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を含む、ステップと;蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させるステップであって、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、ステップとを含む。吸収される蒸気流部分は、水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2をそれぞれある量だけ含むことができる。吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度は、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高くなりうる。
【0014】
複数の実施形態において、発酵液体の部分的蒸発は、発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;発酵液体供給物を好適な流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;発酵液体供給物を蒸留して、生成物アルコールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない底部流を発生させるステップであって、約45℃以下の温度で蒸気流が発生できるように大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、ステップと;任意選択的に、底部流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップとを含むことができる。実施形態によっては、底部流の生成物アルコールの濃度は、発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の90%以下である。
【0015】
実施形態によっては、発酵容器内の生成物アルコールの濃度は、本明細書で提供する方法にしたがった事前選択しきい値未満に維持できる。例えば、方法は、生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を発酵容器から取り出すステップと;発酵液体供給物流を一段フラッシュタンク(single stage flash tank)または多段蒸留塔へ供給するステップと;真空条件下で一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔内の発酵液体供給物流を蒸発させて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流と生成物アルコールをほとんど含まない底部流を発生させるステップと;および任意選択的に、底部流の任意の部分を発酵容器に戻すステップとを含むことができる。実施形態によっては、蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させ、そのときに蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収される。
【0016】
本明細書で提供する方法の実施形態によっては、発酵液体供給物はCO2を含む。実施形態によっては、生成物アルコールはブタノールである。実施形態によっては、吸収液体は、生成物アルコールとは異なる水溶性有機分子を含む。実施形態によっては、有機分子は、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ2−メチルプロパノール(AMP)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、またはそれらの混合物などのアミンである。複数の実施形態において、吸収液相は、水の沸点よりも少なくとも30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む。複数の実施形態において、吸収液体は炭酸カリウムおよびエチレングリコールを含む。複数の実施形態において、吸収液体はエチレングリコールを含む。
【0017】
実施形態によっては、CO2のかなりの部分および生成物アルコールまたは水(あるいはその両方)の少なくとも一部が吸収液体に吸収される。
【0018】
生成物アルコールを吸収液相から回収しかつ吸収液相を再生する方法も本明細書で提供される。生成物アルコールの回収は、吸収液体、水、生成物アルコール、および任意選択的にCO2を含む吸収液相を、吸収器からポンプでくみ上げて吸収器内の圧力より高い圧力にするステップと;任意選択的に、吸収液相を加熱するステップと;吸収液相を、回収部および任意選択的に濃縮部を含む多段蒸留塔へ供給するステップと;吸収液体を含む底部生成物、および、水と生成物アルコールと任意選択的にCO2との混合物を含む蒸気相が生じるような条件下で、蒸留塔を操作するステップと;吸収液相を含む底部生成物を蒸留塔から回収するステップ;および水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を蒸気相から回収するステップとを含むことができる。
【0019】
本明細書に組み込まれていて、本明細書の一部をなす添付図面は、本発明を例示しており、この記載と一緒になって本発明の原理を説明し、さらに当業者が本発明を実施する(make and use)ことができるようにするのにさらに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ例示的システムを示す。
【図2】実施例1に記載した静止槽PtX装置の概略図である。
【図3】実施例6に記載したモノエタノールアミン溶液についてのピーク高さ 対 CO2吸収スペクトルのグラフである。
【図4】実施例6に記載したCO2吸収 対 ピーク高さのグラフである。
【図5】実施例6に記載した温度 対 ピーク高さのグラフである。
【図6A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例7で参照されている。
【図6B】表8Aを示し、実施例7のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図6C】表8Bを示し、実施例7のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図7A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例8で参照されている。
【図7B】表10Aを示し、実施例8のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図7C】表10Bを示し、実施例8のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図8A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例9で参照されている。
【図8B】表12Aを示し、実施例9のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図8C】表12Bを示し、実施例9のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図9】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ例示的システムを示す。
【図10A】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【図10B】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【図10C】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で提供するプロセスは、本出願の一部を構成する以下の詳細な説明および添付図からより詳しく理解できる。図への参照は、本明細書に記載のプロセスを理解するのに助けとなるようにするためであり、限定するものと解釈すべきではない。さらに、プロセス条件が図に関連して提案されている場合、それらは一例として提供されているのであり、そうした条件を変えたものも本発明の趣旨の中に含まれる。
【0022】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含んでいる本出願で調整されるであろう。また、文脈で特に求められているのでない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書で挙げる刊行物、特許、および他の文献はすべて、あらゆる目的のためにその全体を援用する。
【0023】
本発明をさらに明確にするために、以下の用語および定義をここで示す。
【0024】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(contains)」または「含んでいる(containing)」あるいはそれらの他の任意の変形は、示されている整数または整数群を含むことを意味するが、他の整数または整数群を除外することを意味しないと理解されるであろう。例えば、列挙された要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそうした要素に限定されるわけではなく、明確に列挙されていない他の要素あるいはそうした組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素も含みうる。さらに、逆のことを特に述べていない限り、「または」は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではない。例えば、AまたはBという条件は、以下のいずれによっても満たされる:Aが正しく(または存在し)かつBが誤りである(または存在しない)、Aが誤りであり(または存在せず)かつBが正しい(または存在する)、さらにAおよびBの両方が正しい(または存在する)。
【0025】
本明細書で使用される「から構成される(consists of)」という用語、または本明細書全体および請求項を通じて使用される「から構成される(consist of)」または「から構成されている(consisting of)」などの変形は、挙げられている任意の整数または整数群を含むことを示すが、さらなる整数または整数群を、明記されている方法、構造、または組成物に加えることができないことを示す。
【0026】
本明細書で使用される「から基本的に構成される(consists essentially of)」という用語、または本明細書全体および請求項を通じて使用される「から基本的に構成される(consist essentially of)」または「から基本的に構成されている(consisting essentially of)」などの変形は、挙げられている任意の整数または整数群を含むこと、ならびに明記されている方法、構造、または組成物の基本的特性または新規の特性を実質的に変えることのない、挙げられている任意の整数または整数群を任意選択的に含むことを示す。
【0027】
また、本発明の要素または成分の前に付いている不定冠詞の「ある(a)」および「ある(an)」は、例の数、すなわち要素または成分の出現に関して非制限的であることを意図している。したがって「ある(a)」または「ある(an)」は、1つまたは少なくとも1つを含むと理解すべきであり、さらに要素または成分の語の単数形も、数が明らかに単数を意味するのでない限り、複数を含む。
【0028】
本明細書で使用される「発明」または「本発明」という用語は、非制限的用語であり、特定の発明のいずれかの1つの実施形態を指すことを意図するものではなく、本出願に記載された可能な実施形態すべてを包含する。
【0029】
使用される本発明の成分または反応物の量を修飾する、本明細書で使用される「約」という用語は、起こりうる数値的量の変動を指し、そうした変動は、例えば、現実の世界で濃縮物または使用溶液を作るために使用する普通の測定手順および液体処理手順によって;そうした手順における不注意による間違いによって;組成物を作るかまたは方法を実施するために用いる成分の製造、供給源、または純度の違いなどによって起こりうる。「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物の種々の平衡状態のせいで違ってくる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわりなく、請求項は量に相当するものを含む。1つの実施形態では、「約」という用語は、報告されている数値の10%以内、あるいは報告されている数値の5%以内を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「バイオマス」は、発酵性糖類(任意の糖類を含む)を生じる加水分解性多糖類を含んでいる天然物、天然資源(トウモロコシ、サトウキビ、小麦、セルロース物質またはリグノセルロース物質など)に由来するデンプン、およびセルロース、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類、二糖類及び/または単糖類を含んでいる物質、ならびにそれらの混合物を指す。バイオマスはまた、タンパク質及び/または脂質などの更なる成分を含んでもよい。バイオマスは単一の源から得ることができるか、またはバイオマスは複数の源から得た混合物を含むことができる。例えば、バイオマスは、トウモロコシの穂軸とトウモロコシのわらの混合物、または草と葉の混合物を含むことができる。バイオマスとしては、バイオエネルギー作物、農業残渣、固形都市廃棄物、固形産業廃棄物、紙製造のスラッジ、庭ゴミ、木屑および林業廃棄物があるが、これらに限定されない。バイオマスの例としては、トウモロコシ殻粒、トウモロコシの穂軸、穀物残渣(トウモロコシの皮など)、トウモロコシのわら、草、小麦、ライ麦、小麦のわら、大麦、大麦のわら、干し草、稲わら、スイッチグラス、紙くず、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、(穀物、木、枝、根、葉、木片、おがくず、低木および灌木の)粉砕によって得られる成分、野菜、果物、花、家畜ふん尿、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。例えば、マッシュまたはジュースまたは糖密または加水分解産物は、発酵の目的でバイオマスを処理するための当該技術分野において知られている任意の加工(粉砕、処理及び/または液化など)によってバイオマスから生じさせることができ、発酵性糖を含み、またある量の水を含むことができる。例えば、セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスは、当業者に知られている任意の方法により加工して、発酵性糖類を含む加水分解産物を得ることができる。特に有用なのは、米国特許出願公開第20070031918A1号明細書(本明細書に援用する)に開示されている低アンモニア前処理である。セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスの、酵素による糖化では、典型的にはセルロースおよびヘミセルロースを分解するための酵素コンソーシアム(enzyme consortium)を利用して、糖類(グルコース、キシロース、およびアラビノースを含む)を含む加水分解物を作り出す。(セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスに適した糖化酵素は、Lynd,L.R.,et al.(Microbiol.Mol.Biol.Rev.,66:506−577,2002に概説されている)。
【0031】
「真空フラッシュ」または「フラッシュ」という用語は、発酵容器からの液体流が、真空に保持されている別個の容器(多段蒸留塔であっても、一段タンクであってもよい)へ送られる工程段階を指す。圧力が低下すると、液体流の一部(典型的には10%以下)がフラッシュされて蒸気相になる。このステップが実施される液体流は、「フラッシュされる」または「部分蒸発させられる」または「蒸発させられる」ということができる。多段蒸留塔で「フラッシュ」が実施される複数の実施形態では、フラッシュは「蒸留」または「フラッシュ蒸留」と呼ぶこともできる。
【0032】
「真空フラッシュ容器」という用語は、発酵容器からの液体流の少なくとも一部がフラッシュされて蒸気相になる物理的場所を指す。
【0033】
本明細書で使用される「吸収液体」という用語は、フラッシュ時に発生する蒸気相のどの部分でも吸収できる、プロセスに送り込まれる液体を指す。
【0034】
本明細書で使用される「発酵」という用語は、炭素物質が微生物の作用によって生成物(生成物アルコールなど)に変換される工程段階を指す。
【0035】
本明細書で使用される「発酵ブロス」または「発酵液体」という用語は、水、糖類、溶解した固体、アルコールを産生する微生物、生成物アルコールおよび発酵容器中に保持されている物質の他のすべての構成成分といったものの混合物を指し、発酵容器中では、存在する微生物によって生成物アルコールが、糖類の反応によりアルコール、水および二酸化炭素(CO2)にされて作られている。時々、本明細書で使用される「発酵培地」および「発酵混合物」という用語は、「発酵ブロス」の同義語として使用できる。
【0036】
本明細書で使用される「発酵性炭素源」は、発酵性アルコールの産生のために、本明細書に開示されている微生物が代謝できる炭素源を意味する。好適な発酵性炭素源としては、単糖類(グルコースまたはフルクトースなど);二糖類(乳糖またはスクロースなど);オリゴ糖類;多糖類(デンプンまたはセルロースなど);炭素物質;およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。時々、本明細書で使用される「発酵性炭素源」という用語は、「炭素物質」または「発酵性炭素物質」の同義語として使用できる。炭素源は、バイオマス由来の炭素を含む。
【0037】
本明細書で使用される「供給原料」は、発酵プロセスにおける供給物を意味し、その供給物は、溶解していない固体の有無に関わりなく発酵性炭素源を含み、また、当てはまる場合には、供給物は、発酵性炭素源が、液化、糖化、または他のプロセスなどのさらなる処理によってデンプンから遊離されるかまたは複雑な糖類の分解から得られる前または後に、発酵性炭素源を含む。供給原料は、バイオマスを含むかまたはバイオマスから得られる。好適な供給原料には、ライ麦、小麦、トウモロコシ、サトウキビおよびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「糖」は、オリゴ糖類、二糖類及び/または単糖類を指す。
【0039】
本明細書で使用される「発酵性糖」は、発酵性アルコールを産生するために、本明細書に開示されている微生物が代謝できる糖を指す。
【0040】
本明細書で使用される「生成物アルコール」という用語は、発酵プロセスにおいて微生物によって一次生成物として産生される低級アルカンアルコール(C2〜C8アルコールなど)を指す。
【0041】
本明細書で使用される「ブタノール」は、ブタノール異性体である1−ブタノール(1−BuOH)、2−ブタノール(2−BuOH)及び/またはイソブタノール(iBuOHまたはi−BuOHまたはI−BUOH)(いずれか、またはそれらの混合物)を指す。
【0042】
本明細書で使用される「組換え微生物」という用語は、分子生物学的手法を用いて操作された微生物を指す。微生物は、任意選択的に代謝経路を発現するように操作することができ、かつ/または微生物は、任意選択的に不要な生成物が低減または除去されるように、及び/または所望の代謝産物の効率が増大するように操作することができる。
【0043】
プロセス流れまたはその成分に関連して本明細書で使用される「かなりの部分」は、示されているプロセス流れまたは示されているその成分の少なくとも約50%を指す。複数の実施形態において、かなりの部分は、およそ少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%または示されているプロセス流れまたは示されているその成分を含みうる。
【0044】
プロセス流れに関連して本明細書で使用される「任意の部分」は、流れの組成を保持する流れの任意の小部分(流れ全体も含む)、ならびに流れの任意の1種または複数種の成分(流れの全成分も含む)を指す。
【0045】
発酵容器を出て行く発酵液体流が真空フラッシュを用いて処理される方法が、本明細書で提供される。真空フラッシュは、一段フラッシュタンクで実施できる。この代わりに、あるいはこれと一緒に、真空フラッシュは、フラッシュされた発酵ブロスが生成物アルコールの濃縮された蒸気流を生じ、かつ実質的に生成物アルコールをほとんど含まない底部流が生み出されるような条件下において、多段蒸留塔で実施できる。本明細書に開示されているように、フラッシュされた発酵ブロスからの蒸気流は、自然に凝縮しうる温度より高い温度で、第2液体流に吸収させることができる。そのようなプロセスは、生成物アルコール、特にブタノールを生み出す発酵に有用である。なぜなら、発酵時にブタノールを除去して生産性及び/または発酵時の微生物の生存率に対する影響を減らすことが望まれているからである。したがって、最適な発酵条件に対する影響を最小限に抑えつつ、発酵の間に効果的な生成物の回収を行えるようにするプロセスが提供される。
【0046】
生成物アルコール発酵時に、生成物アルコールは炭素物質から微生物によって発酵液体内で生み出される。複数の実施形態において、炭素物質は、植物源に由来するマッシュの形で用意される。発酵は、微生物に適していることが当業者に知られている条件下で実施できる。複数の実施形態において、発酵は約25℃〜約40℃の温度で実施する。複数の実施形態において、発酵は約28℃〜約35℃の温度で実施し、複数の実施形態において、約30℃〜約32℃で実施する。発酵液体は、水および生成物アルコールを含み、典型的には、CO2も含む。本明細書で提供する方法を用いて液体から生成物アルコールを回収するためには、発酵液体の少なくとも一部を発酵容器から第2の容器または「蒸発容器」へ取り出し、真空フラッシュで少なくとも部分的に蒸発させる。例えば、そのような実施形態では、蒸発は、真空下で、約25〜約60℃の温度で起こりうる。蒸発は、約0.02〜約0.2バールの圧力で起こりうる。圧力は、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15または0.2バール、あるいは約0.2バール未満であってよいことが理解されるであろう。複数の実施形態において、蒸発は、約0.05〜約0.2バールの圧力で起こりうる。複数の実施形態において、蒸発は、約0.2バール未満、または約0.1バール未満の圧力で起こりうる。あるいはまた、真空フラッシュは、本明細書に記載した条件下で、本明細書の他の箇所に記載した多段蒸留塔中で実施できる。
【0047】
生成物アルコールが生成されるのとほぼ同じ速度で生成物アルコールが除去されるように、発酵プロセスの間に蒸発が開始し、行われるのが望ましい。発酵容器内の生成物アルコールが事前選択しきい値未満に維持されるような速度および条件下で蒸発が行われることが、理解されるであろう。事前選択しきい値は、生成物に対する微生物の耐性に応じて異なるであろう。複数の実施形態において、微生物は、バクテリア、藍色細菌、糸状菌、または酵母である。実施形態によっては、バクテリアは、ジモモナス属(Zymomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バシラス属(Bacillus)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ペジオコックス属(Pediococcus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パエニバチルス属(Paenibacillus)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、およびブレビバクテリウム属(Brevibacterium)からなる群から選択される。実施形態によっては、酵母は、ピキア属(Pichia)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、イサタケンキア属(Issatchenkia)、およびサッカロミセス属(Saccharomyces)からなる群から選択される。複数の実施形態において、しきい値は、約20g/L未満である。複数の実施形態において、しきい値は、約8g/L未満、約10g/L未満、約15g/L未満、約25g/L、約30g/L未満、または約40g/L未満である。さらに、生成物アルコールの産生および回収に役立つある特性を有するように修飾された微生物(組換え微生物など)が、本明細書では企図される。例えば、発酵または供給流の高い温度をいっそう耐えうる、それゆえにプロセス全体を効率的にする、ある程度の熱耐性を有する微生物。さらに、発酵性微生物が、ある条件下で特徴的に有利に機能する場合、本明細書に記載のプロセスを利用して、そのような能力を十分に活用できる。例えば、ガスストリッパーを使用して、効果的なエアストリッピングを行えるようにし、また発酵容器中の微好気性(microoaerobic)微生物に酸素を与えることができる。
【0048】
本明細書に記載のプロセスは、多数の生成物アルコールに関連して使用できる。そのようなアルコールとしては、ブタノールなどの低級アルカンアルコールがあるが、それらに限定されない。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、炭素物質をブタノールに変換できる組換え微生物によるブタノールの産生が関係している。炭素物質をブタノールに変換できる微生物は当該技術分野において知られており、それには、米国特許出願公開第2007/0092957号明細書および第2009/0305363号明細書、米国仮出願第61/379,546号明細書、第61/380,563号明細書、および米国非仮出願第12/893,089号明細書に記載されているような組換え微生物があるが、これらに限定されない。
【0049】
ブタノール産生発酵に関連して、発酵容器を出て行く流れの組成物は、典型的には大部分が水であり、生成物のブタノールおよびCO2を含む。本明細書に記載されているある特定のプロセスでは、蒸気流は吸収器内の吸収液体と接触させられる。酸性ガス(CO2およびH2Sなど)を含むガス流を特別設計の吸収媒体に吸収させて処理するために当技術分野で使用されるプロセス(Gas Purification,5th Edition,Arthur Kohl and Richard Neilsen 1997)とは対照的に、本出願人らが発見し本明細書で提供する方法は、吸収媒体によって蒸気流から一部または全部の成分を吸収しようとする。吸収液体は、水が通常は凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収するであろう。さらに、実施形態によっては、生成物アルコールは吸収液体にも可溶である。プロセスの複数の実施形態において、3つの成分(水、ブタノール、およびCO2)がすべて吸収媒体に吸収される一方、蒸気流の任意の部分を吸収して、生成物アルコールを多く含んでいるかまたはCO2を多く含んでいるさらに処理される残留蒸気流を生み出すことを含む実施形態は、真空フラッシュ発酵プロセスにいっそう利点をもたらす。
【0050】
また、当技術分野においてガス流を処理するために使用されるプロセスとは対照的に、吸収液体との接触が、フラッシュ操作の圧力に近い大気圧未満の圧力で行われ、さらに複数の実施形態においては、実質的に蒸気流全体が吸収される。フラッシュおよび吸収の装置は、この二つの操作の間の圧力低下が最小限に抑えられるように組み合わせることができる。
【0051】
生成物アルコールを回収するために、吸収液体から(例えば、冷却器全体に循環させて)吸収熱を除去する。そのような実施形態では、吸収液体のない場合に蒸気流の凝縮に必要であろう冷却剤より安価な冷却剤を用いて循環流体から熱を除去でき、安価な冷却は、典型的には空気冷却器を介するかまたは冷却水回路から操作される熱交換器によるか、あるいは河川水を直接使用して行う。再循環させる必要があるであろう吸収流体の量は、吸収器(吸収塔であってよい)全体で許される温度上昇によって異なる。吸収器の上部温度は、吸収圧における溶液からの蒸気圧によって制限されるが、下部温度は冷たいユーティリティー温度(utility temperature)(通常、冷却水)との接近により制限される。
【0052】
本明細書で提供するプロセスの場合、蒸気流と吸収液体との接触は、真空下で行われ、約0.02〜約0.2バールの圧力で行うことができる。複数の実施形態において、接触は、約0.2バール未満、または約0.1バール未満の圧力で行うことができる。接触は、約25℃〜約60℃の温度で実施できる。複数の実施形態において、蒸発ステップおよび接触ステップは、同じ圧力で行われる。
【0053】
好適な吸収液体としては、水溶性有機分子を含むものがある。複数の実施形態において、水溶性有機分子は、水の沸点よりも少なくとも30℃高い沸点を有する。複数の実施形態において、有機分子はアミンである。複数の実施形態において、アミンは、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ2−メチルプロパノール(AMP)またはメチルジエタノールアミン(MDEA)である。複数の実施形態において、吸収液体アミンとCO2(蒸気流中のもの)とのモル比は少なくとも約1.01〜約1、すなわち、モル比は約1より大きい。複数の実施形態において、吸収液体はMEA、AMP、MDEA、またはそれらの任意の混合物を含む。吸収液体はイオン性溶液を含むことができる。複数の実施形態において、イオン性溶液は炭酸塩を含む。複数の実施形態において、炭酸塩は炭酸カリウムであるが、これは他の一般のアルカリ金属炭酸塩と比べて溶解度が高いためである。複数の実施形態において、イオン性溶液中の炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)の量は、蒸気流からCO2の少なくとも一部(または複数の実施形態において、かなりの部分)を吸収するのに十分な量である。複数の実施形態において、炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)とCO2(蒸気流中のもの)とのモル比は、約1より大きい。
【0054】
複数の実施形態において、吸収液体はイオン性液体である。水およびブタノールの両方を吸収するための好適な吸収液体としては、次の特性を有するものが含まれる。すなわち、1)水およびブタノールと混和できる、2)標準沸点が130℃以上、または150℃以上である、3)沸点での熱安定性、4)5%(重量/重量)未満、または10%(重量/重量)未満の比率で二酸化炭素にさらされたとき沈殿剤がない、および5)腐食性が低い。
【0055】
理論に縛られることは望まないが、少なくとも水が吸収されることになる吸収液体は、吸収の開始温度が、その物質のないときの凝縮の開始温度より高い場合、従来技術に改善をもたらすであろうと考えられる。
【0056】
複数の実施形態において、本明細書で提供する方法は、MEAを吸収液体として使用する。プロセスにおけるMEA溶液は、MEA溶液なしの状態で水が凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収する。さらに、ブタノールはMEA溶液に溶け、MEA溶液はCO2を吸収することもできる。
【0057】
複数の実施形態において、本明細書で提供する方法は、MDEAを吸収液体として使用する。プロセスにおけるMDEA溶液は、MDEA溶液なしの状態で水が凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収する。さらに、ブタノールはMDEA溶液に溶け、MDEA溶液はCO2を吸収することもできる。他のアミンも使用できるが、MDEAには、カルバミドを生じることがなく、それゆえに容易に再生されるという利点もある。
【0058】
好適な吸収液体としては、吸湿性有機液体、高沸点の有機アミン、およびイオン性液体、ならびに生物学的に得られた上記の液体、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
吸湿性有機液体。好適な吸湿性有機液体は、水溶性の成分を含み、水は有機成分に可溶である。こうした液体は、水の凝縮点よりも高い温度での水の吸収が容易になるように、水より高い沸点を有する。典型的にはこうした分子は、グリコールおよび二酸など炭素主鎖に少なくとも2つの官能基を必要とするであろう。吸収液体の例として、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、またはそれらの混合物を挙げることができる。生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール(1,3−pronaediol)も使用することができ、これは総合カーボンフットプリント(overall carbon−footprint)の利点をもたらしうる。例えば、米国特許第7,759,393号明細書を参照されたい。さらに、
【0060】
水は、例えば、エチレングリコールに容易に溶けるので、吸湿性有機液体は蒸気相からの吸収を行う。さらに、こうした液体(特にエチレングリコール)へのブタノールの溶解度は水よりも優れている。幾つかの好ましい実施形態では、吸湿性有機液体はイオン性溶液を生じることもできる。炭酸カリウムのエチレングリコール溶液はその一例である。
【0061】
高沸点の有機アミン。高沸点有機アミン(アルカノールアミンなど)は、本明細書に記載したプロセスでの使用に適している。エチレングリコールと同様、アルカノールアミン(MEAおよびMDEAなど)は水と混和でき、高温での水の吸収を容易にする。それらはまた、ブタノールが水と混和するよりも、いっそうブタノールと混和できる。さらに、それらは熱可逆性反応によってCO2吸収を吸収する。
【0062】
複数の実施形態において、吸収液体はポリエチレンイミンまたは関連した高分子アミノ系(polymeric amino system)を含む。
【0063】
非限定的な例であるが、本明細書に記載のプロセスで使用するための、吸収液体として働くことができるアミンとしては、4〜12個の炭素を有する脂肪族または脂環式のアミン、4〜12個の炭素を有するアルカノールアミン、1または2個の窒素と1または2個のアルカンジイル基が一緒になって5員環、6員環または7員環を形成している環状アミン、上記の溶液の混合物、および上記の混合物および溶液の水溶液を挙げることができる。
【0064】
例えば、吸収液体としては、モノエタノールアミン(MEA)、メチルアミノプロピルアミン(MAPA)、ピペラジン、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、アミノエトキシエタノール(AEE)、ジメチルアミノプロパノール(DIMAP)およびメチルジエタノールアミン(MDEA)、それらの任意の混合物、またはそれらの任意の水溶液を挙げることができる。
【0065】
イオン性液体。イオン性液体は、陽イオン及び/または陰イオン(温度100℃未満の温度で溶液中にある様々な塩など)を含む溶液である。好適なイオン性液体の例としては、米国特許出願公開第2010/0143993号明細書、同第2010/0143994号明細書、および同第2010/0143995号明細書(本明細書に援用する)に記載されているものがある。無機塩が存在すると、希釈および水のイオン化の増大の両方により、溶液中の水の蒸気圧の減少が引き起こされる。水溶性塩はこのプロセスに適している。水が吸収される実施形態に適しているのは、高水溶性の塩(臭化リチウムなど)を含む溶液である。一般に、一価のアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)は、溶解度が高いため、他の金属よりも選ばれるであろう。陰イオンを正しく選択すれば、このプロセスでCO2も回収されるようにすることができる。炭酸イオンを使用すれば、重炭酸イオンの形成によって、CO2を水性相に吸収させることができる。炭酸カリウム溶液を用いるプロセスは一般に、ベンフィールド法と呼ばれ、この方法は、本明細書に開示されるより前には、発酵生成物アルコールの回収に対して温度の利点をもたらすために、アルコール産生に関連して使用されたことはない。複数の実施形態において、混合塩溶液(炭酸カリウムおよびハロゲン化カリウム塩など)を使用できる。理論に縛られることは望まないが、そのような混合塩溶液により、溶液のイオン強度が増大して、塩の沈殿が生じることなく水の捕捉が改善されるであろうと考えられる。イオン性液体は、ブタノールなどの高級アルコール(すなわち、C3以上の生成物アルコール)よりももっと効率的に蒸気相からエタノール水及び/またはCO2を吸収でき、さらにエタノールを吸収できるという点が注目される。
【0066】
吸収液相への蒸気流の吸収の開始温度は、吸収液相の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高い。吸収または凝縮の開始温度は、実験データに基づく標準気液平衡法を用いて計算するか、あるいはプロセスから直接測定するかして推定できる。複数の実施形態において、蒸気流から吸収液相への吸収の開始温度は、吸収液相の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも、少なくとも約2℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約3℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約5℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約約10℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約15℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約20℃高く;さらに複数の実施形態において、少なくとも約30℃高い。本開示があれば、当業者は、本明細書に記載されたプロセスを使用して容易に冷却コストおよび溶媒の再生コストを最小限に抑えることができるであろう。
【0067】
できるだけ多くの蒸気流を吸収液体に吸収させることが有益であることが理解されるであろう。複数の実施形態において、少なくとも約50%の蒸気流が吸収液体に取り込まれる。複数の実施形態において、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約99%の蒸気流が、吸収液体に吸収される。複数の実施形態において、蒸気流は、約50〜65質量%の水、約30〜35質量%のブタノール、および約2〜20質量%のCO2を含む。ブタノールと二酸化炭素との質量比を大きく設定することによって、吸収、凝縮および類似の工程は容易になることが理解されるであろう。この比率は、発酵容器の出口で、1〜2部のブタノール対100部の二酸化炭素の程度である。複数の実施形態において、この比率は、1〜5部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。複数の実施形態において、この比率は、5〜30部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。複数の実施形態において、この比率は、10〜100部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。
【0068】
ブタノールの回収は、0.5psigより高い圧力で、ブタノールと水との比率の高い流れから凝縮によって回収するのが容易になるであろうことが、さらに理解されるであろう。複数の実施形態において、この圧力は1〜30気圧にまで増やす。複数の実施形態において、この圧力は0.9〜1.2気圧にまで増やす。
【0069】
複数の実施形態において、吸収液体は蒸気流からCO2のかなりの部分を吸収する。複数の実施形態において、CO2の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が吸収される。そのような実施形態の場合、吸収液体は炭酸カリウムと混合されたMEA、MDEA、AMPまたはエチレングリコールであってよい。
【0070】
したがって、本明細書では、水および生成物アルコールを含みさらに任意選択的にCO2を含む発酵液体を部分的に蒸発させるステップであって、発酵蒸気流が発生する蒸発ステップと;発酵蒸気流を吸収液相と接触させるステップであって、蒸気流の任意の部分が吸収液相に吸収される接触ステップとを含むプロセスとが提供される。
【0071】
生成物アルコールが吸収液体に吸収される複数の実施形態において、吸収液体が並行して再生および再利用されるように生成物アルコールを吸収液体から回収できる。回収および再生は、ポンプを使用して吸収液体を、蒸発および吸収が行われる場合より高い圧力(大気圧以上の圧力など)にするステップ(これによりプロセスからの残留CO2の排出が可能になるであろう)と;回収部および任意選択的に濃縮部を含む蒸留塔に吸収液体を供給するステップと;下部の液体生成物および上部の蒸気生成物が生み出されるように吸収液体を蒸留するステップと;吸収液相を含む底部生成物を回収蒸留塔から回収するステップとを含むプロセスとを使用して、達成できる。当業者によく知られている手法を用いて回収蒸留塔への供給物を予熱して、回収蒸留塔の基部にとって必要なエネルギー入力を減らすことができる。
【0072】
吸収液相から取り出され、回収蒸留から上部の蒸気生成物の中に回収される成分は、凝縮、蒸留およびデカンテーション、またはそれらの組合せなどの従来の方法を用いてさらに分離できる。発酵蒸気流の組成および用いる吸収液体に応じて、複数の実施形態において、(蒸気流接触の後の)吸収液体は、水と生成物アルコールと任意選択的にCO2を組み合わせたものを含むことになり、ある特定の実施形態では3成分すべてを含むことになる。
【0073】
図1は、本明細書に記載のプロセス100の実施形態についての装置、熱交換器、および生成物の流れの例示的な構成を示す。ブタノール(あるいは、複数の実施形態において、他の1種または複数種の生成物アルコール)を産生する発酵は、発酵容器110内で行われ、発酵容器110中のブタノールの濃度は微生物の許容限界レベル(tolerance level)に近づく。発酵液体は、流れ124によって発酵容器110から真空フラッシュ容器210へパージされて、ブタノールの取り出しが促進される。実施形態によっては、真空フラッシュ容器はフラッシュタンクであり、容器210内の圧力は、流れ216の部分蒸発させられた水の形で供給される熱と組み合わせて、十分なブタノールのパージが蒸気流212で行われるような圧力に維持される。これは、容器110内のブタノールのレベルを事前選択しきい値より下に維持できるようにするためである(真空フラッシュ容器210からの残りの液体が、流れ214を介して発酵容器110へ戻される場合)。
【0074】
容器210内の圧力は、微生物の生産性を維持する上で許容できる温度に、残りの液体流214および容器110を維持するため、必要な冷却を行えるよう十分に低くすることができる。容器210の操作圧力は、0.05から0.2バールの間にすることができる。圧力は、0.05、0.1、0.15または0.2バールあるいは約0.2バール未満であってよいことが理解されるであろう。複数の実施形態において、流れ214のブタノールの濃度と流れ124のブタノールの濃度との比率は、約0.9〜約0.5である。この比率は、約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、または約0.5であってよいことが理解されるであろう。蒸気流212は、水、ブタノールおよびCO2を含む。流れ212は、吸収塔310に入り、そこで吸収液体流320および324と接触する。吸収液体流320および320は吸収液体を含む。
【0075】
非限定例において、吸収液体はMDEAなどのアミンである。非限定例において、吸収流体は、エチレングリコール中に炭酸カリウムが含まれているものである。320および324の温度および吸収剤の濃度は、蒸気流212が実質的に吸収されるようなレベルに維持される。複数の実施形態において、蒸気流212は約36℃を超える温度で実質的に吸収されるが、流れ212の露点は約30℃未満である。残留蒸気は真空システムを介して流れ328によって除去される。そして工場のスクラビングシステムへと出て行くことになる。塔310の下部から抜き取られて冷却器301で冷却される液体再循環流322があり、塔310に循環して戻される流れ324が生み出される。実施形態によっては、流れ322の流量は、流れ324と322との間での温度上昇が約3℃〜約8℃になるように選択されることになる。液体パージが流れ326によって塔310から取り出されるが、その流れは、吸収液体ならびに蒸気流212から吸収されたCO2、ブタノールおよび水を含む。流れ326は、ポンプを使用して(ポンプは示されていない)およそ大気またはそれ以上まで圧力を上昇させ、任意選択的に加熱器311で加熱して流れ330を生じさせる。加熱器311は、以下に説明するように、好都合にも冷却器302と熱統合することができる。
【0076】
流れ330は、当業者に知られている接触装置を使用して、回収部および濃縮部を含むストリップ塔410に入る。回収部において、CO2、ブタノールおよびかなりの割合の水が流れ330の吸収液体からストリッピングされる。複数の実施形態において、ストリップ塔410内の圧力は、およそ大気であり、ストリップ塔410の下部は、実質的にすべてのブタノールがストリッピングされ、かつ液相流れ432(再生された吸収液体を含む)の含水量が経時的に変化しないようにするのに十分な温度まで加熱される。複数の実施形態において、塔410の下部から出て行く液相432の水濃度は、10質量%〜40質量%である。物質は、塔410の下部から流れ434を介して循環される。流れ434は加熱器413へ進み、流れ436を生み出し、それは容器410へ戻される。複数の実施形態において、加熱器413の構成は、当業者によって容易に設計されるケトルまたは熱サイホンであってよい。
【0077】
再生された吸収液体は、ポンプを使用して(ポンプは示されていない)、容器410の下部から流れ432を介して送られ、その流れは任意選択的に、吸収塔310に導き入れる前に冷却される。図1に示すように、複数の実施形態において、再生された吸収液体の流れ432は、冷却器302で冷却されて、流れ333を生み出す。上述のように、冷却器302は、流れ432を冷却するために、都合よく加熱器311と熱統合することができる。次いで蒸気333は、任意選択的に冷却器303によってさらに冷却して、冷たい吸収液体流れ320を生み出すことができる。複数の実施形態において、側流パージは、ストリップ塔410の濃縮部から流れ438によって取り出される。流れ438は、吸収液体およびCO2を実質的に含まないものであってよく、約1〜3%のブタノールを含んでいてよく、残りが水である。流れ330の中に含まれる水は、塔410および後述のデカンター容器510およびブタノール塔610を含むプロセスの下流部分から、流れ438および432を介して実質的に除去される。流れ438の制御は、流れ432の中で所望の水のレベルが実現されるようにする。流れ438は加熱器411へ進むが、部分的に蒸発してフラッシュ容器210へ供給される流れ216を生じることになる。上述したように、流れ216からの熱は、容器210および容器110の間でのバランスが保たれるようにするのに助けとなり得るが、バランスを保つのは、容器110内のブタノールのレベルが事前選択しきい値未満に維持されるように、発酵液体供給物124からの十分なブタノールのパージが蒸気流212によって行われるようにするためである。複数の実施形態において、加熱器411は、冷却器404との熱統合を都合よく行うことができる。
【0078】
蒸気は流れ440を介してストリップ塔410の上部から出て行き、冷却器404兼分離器505に進み、そこで、流れ440が実質的に凝縮され残留蒸気流442から分離されて液体流444を生み出す。流れ440は、ストリップ塔410内の濃縮部の作用ゆえに、実質的に吸収液体を含まないようにすることができる。残留蒸気流442は工場のスクラビングシステム(図示せず)に進む。流れ442は、ストリップ塔410へ供給されるCO2の大部分を含み、その一方、流れ440の水およびブタノールの大部分は凝縮されて流れ444を生じる。冷却器404は、加熱器411および加熱器614と好都合にも熱統合することができる(以下にさらに説明する)。
【0079】
液体流444はデカンター容器510に進み、その容器は、以下に説明するように流れ652も受け入れる。デカンター容器510内の物質は、水性液相546と有機液相548に分けられることになる。複数の実施形態において、水性相またはその一部は、流れ546を介して容器4の濃縮部の上部に戻すことができる。複数の実施形態において、(上述した)流れ546および流れ438の一方または両方の一部を、ビール塔(図示せず)に向けることができる。
【0080】
デカンター容器510の有機相は流れ548を介して出て行き、ブタノール塔610に進むが、この塔は少なくとも回収部を含む。塔610を操作するための熱が、流れ656の再循環ループを介して加熱器614によって供給されて、流れ658が生み出され、その流れは塔610に戻される。複数の実施形態において、加熱器614の構成は、当業者によって容易に設計されるケトルまたは熱サイホンであってよい。塔610の操作圧力が塔410および冷却器404の操作圧力より十分低い場合には、加熱器614は都合よく冷却器404と熱統合することができる。ブタノール生成物が、塔610の下部から流れ654を介して取り出される。塔610からの蒸気オーバーヘッド(vapor overhead)流れ650は冷却器405に進み、凝縮されて流れ652を生み出す。流れ652をポンプでデカンター容器510に送り(ポンプは示されていない)、そこで水性液相と有機液相とに分けることができる。
【0081】
複数の実施形態において、発酵液体流124を蒸発させるための真空フラッシュ容器210は、上述したフラッシュタンク(一段階のみを有する)の代わりに多段蒸留塔210である。そのような実施形態では、生成物アルコールを含む発酵液体供給物124は、ある流量で発酵容器110から多段蒸留塔210へ供給される。次いで発酵液体供給物124は、蒸留塔210内で部分的に蒸発させられて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流212および生成物アルコールをほとんど含まない底部流214を生み出す。上述したフラッシュタンク内で行われる蒸発とは対照的に、多段蒸留塔は、蒸気が複数段にあてられるように操作できる。多段蒸留塔は、2〜8以上の任意の段数を有することができる。複数の実施形態において、蒸留塔は6段塔である。当業者なら分かるように、これにより、底部流214の生成物アルコールの濃度が減少することになる(実施形態によっては、図1に示すように、底部流は発酵容器110に戻される)。蒸発用の蒸留塔210を用いていっそう効率的に発酵容器110から生成物アルコールを取り出すことができるので、蒸留塔への流量を一段真空フラッシュタンクへの流量より少なくすることができ、それでも発酵容器110から生成物アルコールを十分に取り出すことができる。発酵容器110からの流量を少なくすると、発酵容器からのCO2の排出をより多くすることが可能になり、それにより、排出される二酸化炭素の流量が約2〜約5倍以上少なくなり、それゆえにさらなる処理が施される流れの中のCO2を減少させられる。同様に、アルコールをほとんど含まない底部流214またはその一部が発酵容器110に戻される複数の実施形態において、発酵液体供給物流124からの生成物アルコールをより効率的に取り出すと、多段蒸留塔210への流量を少なくすることができ、そのことにより、発酵容器へ戻される底部流214の流量も少なくすることもできる。この構成では、許容できる範囲を超えて発酵の温度を不安定にすることなく、発酵容器内へ高温の底部流を戻すことが可能であり、それゆえに、普通なら従来の一段真空フラッシュタンクで許容できると見なされるであろう温度より高い温度で、多段蒸留塔の操作を行うことができる。
【0082】
多段蒸留塔210は、当業者に知られている従来の真空蒸留塔であってよい。上述の利点を実現するには、多段蒸留塔は、底部流214中の生成物アルコールの濃度の割合が、供給物124の濃度の約90%以下、供給物124の濃度の約50%以下、供給物124の濃度の約10%以下、または、複数の実施形態において、供給物124の濃度の約1%以下となるように操作される。複数の実施形態において、多段蒸留塔210は、約10℃〜約65℃の温度範囲および約0.2psia〜大気圧下の任意の圧力の圧力範囲で操作される。複数の実施形態において、多段蒸留塔210は、約25℃〜約60℃の温度範囲および約0.5〜約3psia(約0.2バール)の圧力範囲で操作される。複数の実施形態において、底部温度は約46℃であり、上部温度は約36℃である。
【0083】
上述の従来の真空フラッシュタンクの場合と同様に、多段蒸留塔への流量およびその操作は、発酵容器110内の生成物アルコールの濃度が、生成物アルコールに対する微生物の耐性を考慮して選択されたあらかじめ定められたしきい値よりも低く維持されるように選択される。したがって、底部流214またはその一部が発酵容器110へ戻される複数の実施形態において、戻りの流れにおける生成物アルコールの濃度を低く維持するのが有利である。複数の実施形態において、底部流214は、約10g/L未満、約7g/L未満、約5g/L未満、約2.5g/L未満または約1g/L未満の生成物アルコールを含む。
【0084】
複数の実施形態において、真空フラッシュ容器210(上述のように、これは真空フラッシュタンクであっても蒸留塔であってもよい)への発酵液体供給物の中に二酸化炭素が存在すると、後で行うアルコールの回収(特に凝縮による回収)が複雑なものとなりうる。容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を減少させるかあるいは実質的になくしてしまうために、本明細書で提供する複数の実施形態において、大気圧から容器210におけるフラッシュの圧力までの間の中間の圧力で発酵液体から二酸化炭素を事前フラッシュすることができる。例えば、本明細書に記載のいずれのプロセスでも、発酵液体は、部分真空に維持されたタンクに供給してよく、その部分真空は、水およびアルコールを沸騰させるには不十分な低圧であるが、供給物からの二酸化炭素の少なくとも一部を、得られる蒸気中に事前フラッシュするには十分な低圧である。例えば、0.2〜0.8気圧で事前フラッシュする場合、得られる蒸気をさらに処理する必要が生じうる。そのような処理としては、圧縮を挙げることができ、実施形態によっては、二酸化炭素(また、関連した水およびアルコールすべても存在)を含む得られた蒸気を、大気に放出する前に冷却することも挙げることができる。他の実施形態では、二酸化炭素は、不凝結ガス(空気または窒素など)と一緒に発酵液体から一部ストリッピングすることができる。例えば、発酵液体は、大気圧付近で操作される多段の蒸気−液体接触器中で不凝結ガスと向流接触させることができる。一例として、三段向流塔を使用でき、これは、空気の質量単位対二酸化炭素(塔の上部に供給される発酵液体中のもの)の質量単位が0.2〜5.0の比率で、下部において滅菌圧縮空気を受け入れる。次いで、空気がストリッピングされた二酸化炭素、およびある量のアルコールおよび水を処理して(例えば、スクラビングして)、このアルコールを取り出してから大気中に排出できる。本明細書に記載した実施形態にしたがってそのようにある量の二酸化炭素を除去すると、真空フラッシュ容器210内に生じるアルコール蒸気の下流回収に対して二酸化炭素がもたらしうる複雑さを低減することができる。
【0085】
図9は、二酸化炭素の少なくとも一部がフラッシュ容器210の上流で発酵供給物からガスストリッピングされる例示的プロセス600を示す。図9を参照すると、マッシュ、酵母および栄養素の流れ125は発酵容器110に送り込まれる。二酸化炭素を含む流れ122は発酵容器110から水スクラバーシステム(図示せず)へ排出される。発酵液体の流れ124は、加熱器111で加熱され、ポンプ(図示せず)で多段向流ガスストリッパー205に送り込まれる。流れ124は、不凝結ガス(好ましくは、不活性ガス)の流れ220と接触させられる。実施形態によっては、ガス流220は空気または窒素である。ストリッパー205内の段数およびストリッピングガス220と発酵液体124との混合比(mass flow ratio)を変えることにより、実施形態によっては、発酵液体中の二酸化炭素の少なくとも約50%を除去できること、他の実施形態では、発酵液体中の二酸化炭素の少なくとも約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%を除去できることは、当業者にとっては明らかなはずである。ストリッピングガス220とストリッピングされた二酸化炭素とを含む流れ222は、ガスストリッパー205から排出される。流れ222は、例えば、流れ22を水スクラバーシステム(図示せず)に送り込むことにより、さらに処理できる。
【0086】
二酸化炭素をほとんど含まない発酵液体の流れ124’を、真空フラッシュ容器210と吸収塔310とを含んでいる多区画容器325へ、弁117を介して送る。図9の実施形態では、フラッシュ容器210は、多区画容器325の1区画である真空フラッシュタンクである。フラッシュタンク内で発生した、生成物アルコールを多く含んだ蒸気は、多区画容器325の第2の区画へ入って、冷たい吸収剤液体流324’にさらされ、それによって蒸気のかなりの吸収が引き起こされる。吸収されなかった残留蒸気および不活性ガスは、多区画容器325から流れ328によって排出され、その後、それは圧縮トレーン(compressor train)(図9に図示せず)を介して運ぶことができる。圧縮トレーンの中では、蒸気流328が中間冷却器を備えた圧縮機によって送られ、水スクラバーシステムによって排出された。例えば、この圧縮トレーンは、図8Aを参照しながら実施例9で以下に示し説明されているものと似たものであってよい。吸収液体の液体再循環流322は多区画容器325から抜き取られ、高速で冷却器301を通って循環させられて吸収熱が除去され、冷たい吸収剤液体流324’の一部として多区画容器325へ戻される。吸収剤の多い流れ323は再循環322の循環ループから抜き取られ、再生プロセスによって再生される。再生された吸収液体は、流れ432を介して循環ループに戻され、冷却器301で冷却され、冷たい吸収剤液体流324’の一部として多区画容器325に戻される。再生プロセス(図9に示されていない)は、図7Aに関連して実施例8で以下に示され説明されているものと似たものであってよい。
【0087】
発酵液体214(部分的にアルコールをほとんど含まない)は、多区画容器325の真空フラッシュタンクからポンプで送り出される。発酵液体214の部分215は、生成物アルコール、水および非発酵性物質(nonfermentables)を回収するために更なる生成物アルコール回収システムへ進めることができ、発酵液体214の残り214’は、発酵容器へ戻してその中の糖類をアルコールの産生のためにさらに発酵させることができる。
【0088】
本発明の範囲から逸脱することなく、図9の実施形態における多区画容器325の真空フラッシュタンクの代わりに真空塔を用いることができることは、当業者にとって明らかなはずである。また、フラッシュ容器210および吸収塔310は、多区画容器325に組み込むのではなく、図1のプロセス100と同様に、管で接続された別個の容器にすることができることも明らかなはずである。同様に、複数の実施形態において、本明細書で提供するプロセスのいずれも(図1のプロセス100を含む)、別の方法として、フラッシュ容器210および吸収塔310が上述の多区画容器325などと同じ容器に組み込まれるように構成することができる。
【0089】
また、本明細書で提供するプロセスはいずれも、PCT国際公開第2010/151832A1号パンフレットに記載されているものなど、他の蒸発プロセスと組み合わせて操作できる。
【0090】
本明細書で提供するプロセスのいずれも、発酵の間のどの時点でも操作および開始でき、ブタノールまたは他の生成物アルコールを発酵から取り出すのに使用できる。一実施形態では、プロセスは発酵の開始と同時に開始される。他の実施形態では、プロセスは、発酵容器内の生成物アルコールの濃度が少なくとも約8g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約25g/L、または少なくとも約30g/Lであるときに開始される。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは発酵の過程全体にわたって繰り返される。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、発酵容器内の生成物アルコールの濃度が事前選択しきい値未満に維持されるように繰り返される。
【実施例】
【0091】
実施例1〜4は、特定の吸収流体が二酸化炭素、イソブタノールおよび水の揮発性を実質的に減少させる力を測定することを目的としている。選択した吸収流体は、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、およびエチレングリコールと炭酸カリウムとを含む混合物であった。これらの実験用の試薬を表1に示す。実施例5は、吸収流体を使用しない比較例である。
【0092】
PTx法として知られる方法を使用した。PTx法の用法については、”Phase Equilibrium in Process Design”(Wiley−Interscience Publisher,1970,written by Harold R.Null,pages 124 through 126)(本明細書に援用する)に記載されている。PTx法では、既知の容積の槽における全絶対圧を、種々の既知の投入組成物について一定温度で測定する。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1〜5の二酸化炭素は、液相中の二酸化炭素が99.99%という仕様のPraxair製品であるCD 4.0 IS−T(GTS/Welco,Allentown,PA)であった。
【0095】
これらの実験に使用する脱イオン水は、備蓄されていたものであった。脱イオン水の伝導率は、実施例と関連しているとは考えられなかった。
【0096】
静止槽であるPTx装置200の概略図を図2に示す。72.73cm3のフランジ付サファイア静止槽700を、RTD 703、電力供給704、加熱器705およびEurotherm 2604 温度調節器706を備えた、撹拌701電熱Syltherm−800(登録商標)恒温槽702(これは温度を±0.01℃に制御した)中に沈めた。静止槽は磁気駆動式ミキサー710を含んでいた。
【0097】
このミキサー710は、Hastelloy Cで構成されたRhustonの6枚羽タービンを備えていた。ガスは、磁石の中央の穴を通って中空炭素ブッシングを経て、中空シャフトへ取り込まれる。液体とガスとの間の平衡到達を促進するため、シャフトを下って2つの直角穴へと、ベーパースペースからタービンへ、ガスが循環されるようにした。
【0098】
この静止槽は漏れを起こさないようになっていた。出入口715は、弁716を介して真空ポンプ717(Gardner Denver Thomas,Inc.,Welch Vacuum Technology,Niles,IL;モデル1376N)に接続されており、出入口725は精密圧力変換器726(Druck モデル ♯ PDCR330;Keller America,Inc.,Newport News,VA)に接続されており、出入口730は、二酸化炭素用の供給ポンプ731に接続されていた。CO2供給ポンプ731(Model 87−6−5;High Pressure Equipment Company,Erie PA)は、指定圧力で±0.001cm3まで分かる量を供給するのに十分正確であった。CO2供給ポンプ731内の圧力は、圧力変換器732(Paro Scientific,Inc.Model 740;Redmond,WA)で測定した。CO2供給ポンプ731も温度の制御された水槽733の中にあり、弁734で静止槽から分離することができた。組成物はすべて特に記載のない限り、全重量に対する成分として示されている。
【0099】
実施例1:吸収液体MEA
既知の温度での圧力と組成の関係は、既述の装置200で以下のように測定した。
【0100】
6.99%のイソブタノール、20.01%の脱イオン水および72.99%のMEAの混合物51.967グラムを、静止槽700に充填し、磁気駆動式ミキサー720を始動した。槽操作温度は44.42℃であり、液体充填量は51.967グラムであった。液体混合物を、槽の圧力がさらに低下しなくなるまで、真空ポンプ717に接続された開口部弁716でゆっくりガス抜きした。その後、弁716を閉じた。ガス抜きの手順は、槽の圧力が時間とともに変化しなくなるまで繰り返し、変化しなくなったら真空ポンプ717への弁716を閉じた。漏れがないことは、少なくとも10分間、静止槽700内において大気圧未満で一定になっていることを観察して確かめた。槽700を浴702と共に目的の温度まで加熱した。
【0101】
既知の圧力および温度で測定された量の二酸化炭素を槽700に送り込み、槽の圧力が一定のままになるまで槽の内容物を撹拌した。この槽の圧力を書き留めた。既知の量の更なる二酸化炭素を加え、槽の一定圧力を再び書き留めた。目的の量の二酸化炭素が加えられるまでこのステップを繰り返した。データ分析の目的で、既知の温度および圧力における二酸化炭素の量を、文献のNIST 14,Thermodynamics and Transport Properties of Fluids,NIST Standard Reference Database 14,Version 4を用いて質量に変換した。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例2:吸収液体MEA
槽操作温度が44.46℃であり、液体組成物が7.24%のイソブタノール、20.57%の水、72.2%のモノエタノールアミンであり、液体充填量が49.925グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
実施例3:吸収液体MDEA
槽操作温度が44.45℃であり、液体組成物が4.99%のイソブタノール、12.01%の水、および83%のメチルジエタノールアミンであり、液体充填量が52.087グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例4:吸収液体としてのエチレングリコールと炭酸カリウムとの混合物
槽操作温度が44.52℃であり、液体組成物が6.86%のイソブタノール、18.1%の水、9.04%の炭酸カリウム、および66.01%のエチレングリコールであり、液体充填量が56.297グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0108】
【表5】
【0109】
比較例5:吸収液体が存在しない場合
同じ槽を使用して、CO2を脱イオン水に加えた対照実験も行った。槽操作温度が49.4℃であり、液体組成物が100%の脱イオン水であり、液体充填量が53.919グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0110】
【表6】
【0111】
実施例1〜4で用いた吸収剤溶液の蒸気圧は、実施例5の水単独の蒸気圧より低かった。吸収液体の非存在下でかなり少量の二酸化炭素を水に加えると(例えば、53.919グラムの水に0.01223グラム)、実施例5から見て分かるように静止槽の圧力がかなり増大した。したがって、45℃付近および2psia未満で操作される、水のみを含む吸収器では、水吸収液体の単位量当たり、少量の二酸化炭素しか凝縮しないであろう。冷却凝縮と圧縮機との組合せによっては、吸収液体として水しか含まない真空フラッシュから二酸化炭素をパージすることが求められるであろう。エチレングリコールおよび炭酸カリウムの吸収液体またはメチルジエタノールアミン吸収液体を70%より上の濃度で含む吸収器では、約45℃および2psiaにおいて、吸収液体の単位量当たり、水よりも多くの二酸化炭素が凝縮されるであろう。モノエタノールアミンを70%〜75%の濃度で含む吸収剤では、45℃付近および2psiaにおいて、スクラビング溶液の単位量当たり、ずっと多くの二酸化炭素が凝縮されるであろうし、また二酸化炭素の単位量当たりの必要な吸収剤は他の実施例より少ないであろう。
【0112】
実施例6:CO2の吸収および放散(desorption):吸収液体MEA
この実施例の目的は、吸収剤溶液の1つであるモノエタノールアミンにおける二酸化炭素の吸収とその後の放散を実証することであった。
【0113】
この実施例は、DiComp,Diamond ATR Probeを用いたMettler−Toledo REACT IR モデル1000 In−Line FTIR(Mettler−Toledo)を装備した、1.8LのHC60 Mettler RC1の撹拌およびジャケット付カロリメーター(Mettler−Toledo Mid Temp,Mettler−Toledo Inc.,Columbus,OH)を使用して、展開した。Diamond ATRプローブをRC1反応器に挿入し、Swagelokフィッティングで密封して気密シール(pressure tight seal)を形成した。
【0114】
カロリメーター内の圧力は、Dynisco圧力変換器およびRCプレスデータ記録計(RC press data recorder)および制御系を統合したものによって測定し、記録した。CO2シリンダーの重量、反応器の内容物の温度、ジャケットの温度および反応器圧力を同様にRC1の構成要素によって測定し、RC1ソフトウェアで記録した。CO2の重量は、2Aシリンダーからのずれにより、+または−0.5グラムまで求めた。
【0115】
以下に記載したキャリブレーションおよび吸収/放散実験で用いた物質は、モノエタノールアミン、CAS 141−43−5(カタログ番号:398136、純度>99%;Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO);2−メチルプロパン−1−オール、CAS番号78−83−1(Sigma−Aldrich カタログ番号53132−1L(純度99.50%);およびCO2(純度99.8%)(Airgas East,Salem,NH;規格CGA G−6.2 Grade H)であった。
【0116】
FTIRのキャリブレーション
547.5gのモノエタノールアミンと52.5gの2−メチルプロパン−1−オールと150.0gの脱イオン水とを含む溶液750.0gを、600rpmで撹拌しながら、RC1カロリメーターに加え、45℃に加熱した。反応溶液を、200sccmの速度で2時間、浸漬管により99.9999%の純粋な窒素ガスのサブサーフェス(subsurface)でパージした。窒素の流れを停止してから、Welchモデル1402真空ポンプ(Gardner Denver Thomas,Inc.,Welch Vacuum Technology,Niles,IL)を用いて、容器を0.05バールの圧力までポンプダウンさせた。次いで、真空密封された反応器中のガス抜き流体を、0.10バールおよび45℃においてCO2にさらした。直径が1/8インチのステンレス鋼の浸漬管を用いて、表面の下の反応器にCO2を送り込んだ。35gのCO2が吸収されるまでCO2を5gの一定分量ずつを加えた。それぞれ5gの増分単位でさらにCO2を加える前に、FTIRスペクトルが描かれるようにした。
【0117】
実験中、2分ごとに中赤外線スペクトルを得た。モノエタノールアミンへのCO2の吸収により、多数のIR吸収のある重炭酸塩錯体が形成される(図3を参照)。1309cm−1付近のバンドを選択して、この実験の過程を追跡した。一変量アプローチ(univariate アプローチ)を使用して、1309cm−1のピークを追跡し、ベースラインは1341cm−1から1264cm−1の間で引かれていた。2点ベースライン
に対する吸収度を使用して、重炭酸塩キャリブレーションプロットと温度依存プロットの両方を作成した。1309cm−1での吸収CO2対ピーク高さを図4に示す。
【0118】
CO2が吸収された溶液を密封容器内で加熱し、ずっとピーク高さを監視した。温度対ピーク高さのキャリブレーションが生成されたので、それを図5に示す。
【0119】
上記のキャリブレーションの後、吸収および放散を実証するための実験を行った。547.5gのモノエタノールアミンと52.5gの2−メチルプロパン−1−オールと150.0gの脱イオン水とを含む溶液750.0gを、800rpmで撹拌しながら、45℃でRC1カロリメーターに加えた。反応溶液を、200sccmの速度で2時間、外径が1/4インチ、IDが0.18の浸漬管により、99.9999%の純粋な窒素ガスのサブサーフェスでパージした。次いで、Welchモデル1402真空ポンプを使用して、容器を0.05バールの圧力までポンプダウンさせた。ガス抜きされた流体を45℃で二酸化炭素にさらした。外径が1/4インチのステンレス鋼の浸漬管を用いて、表面の下の反応器にCO2を送り込んだ。合計でおよそ35gのCO2が反応器に取り込まれるまで、ほぼ6分間、6g/分のほぼ一定速度でCO2を取り込んだ。反応器内のフリーボードは約0.75リットルであると推定されたので、こうした条件下でのベーパースペース内のCO2の量は0.1g以下と計算された。そのため、35gのうちのおよそ34.9gが溶液に吸収されたことになる。反応器の圧力は、CO2が加えられた後70mmHgであった。
【0120】
反応塊を1℃/分で150℃まで加熱した。温度が118℃に達したとき、圧力はおよそ1.1バールであった。ベント管路を開け、反応器から、ブラインで冷却された垂直実装凝縮器(−15℃)へ蒸気を放出した。凝縮器の下部が分液漏斗に接触していて、その分液漏斗の下部出口は、反応器中の溶液の沸点を調整することにより最終的に望ましい反応温度が達成されたなら、一定温度を維持するために容器に戻る方向に開けた。このようにして、モノエタノールアミン溶液から解放されたCO2は、このプロセスから排出されるが、凝縮液体は戻された。垂直に取り付けられた凝縮器の上部からのベント管路は、バブラーに取り付けた。またバブラー内の泡の形成は、CO2が反応器から発生していることを示すものとなった。さらに、インラインFTIRでは、CO2とモノエタノールアミンとの反応による重炭酸塩の化学種または錯体の形成を示す1309cm−1の波数のピークを監視した。FTIRのピークプロファイルは、約2.5時間のうちにモノエタノールアミンピークからCO2が完全に放散し、60%を超える放散CO2が約1/2時間のうちに再生されたことを示した。2.5時間後に、1309cm−1のピークがその元のベースライン値に戻った。これはすべてのCO2がモノエタノールアミン溶液から放散されたことを示す。バブラーも、2.5時間後にはガス発生の証拠を示さなかった。
【0121】
この実施例は、吸収剤溶液を利用すれば、二酸化炭素を吸収し、次いで再生されるようにすることができることを実証している。
【0122】
実施例7:ASPENモデル:エチレングリコールと炭酸カリウムとを含む吸収液体
本明細書に記載のプロセスは、プロセスの計算モデルを用いて実証できる。米国特許第7,666,282号明細書に記載されているように、プロセスモデリングは、複雑な化学過程をシミュレートするために技術者らによって使用される確立された方法論である(これを本明細書に援用する)。市販のモデリングソフトウェアであるAspen Plus.RTM(Aspentech,Burlington,Massachusetts 01803)を、DIPPRなどの物理的性質のデータベース(the American Institute of Chemical Engineers,Inc.( New York,N.Y.)から入手可能)と一緒に使用して、ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセスのASPENモデルを開発した。
【0123】
モデルの入力データを表7に明示してある。本発明を説明するこのモデルのサブセットは、モデルプロセス300の流れ図を示す図6Aを参照することにより、もっともよく理解される。説明されているプロセス300から得られる流れおよび出力データを、図6Bおよび6Cとしてそれぞれ示されている表8Aおよび8Bに示す。バッチ発酵は、平均流量を使用した定常状態連続プロセスとしてモデル化した。
【0124】
図6Aに関して言えば、マッシュ流れ23MASH(123)および生体触媒流れYEAST(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流112VAP(122)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビール流れ114BEER(114)(31.4℃に加熱されている)は、絞り弁117を通して送り、流れ113BEER(124)として真空フラッシュ容器210(この実施例ではフラッシュタンクである)へ入るようにされる。フラッシュタンク210は、0.1バールであり、これによりビールフラッシングの一部が得られ、温度が28℃まで低下する。流れ113BEER(124)の流量および温度は、発酵容器110内のブタノール濃度が0.025重量分率を確実に超えないように選択される。この実施例では、フラッシュされたビール流れ115BEER(214)のブタノールと流れ113ビール(124)のブタノールとの比率は0.85である。
【0125】
フラッシュされたビール流れ115BEER(214)は分けられて、(i)流れ24BEER(119)(ブタノール回収用の更なるブタノール回収システム(図示せず)への、非発酵物質と副産物のパージ流れの平均流量をシミュレートする)、および(ii)発酵容器110へ戻される、酵母および非発酵糖類の再循環流116REC(116)になる。
【0126】
流れ67VENT(212)は、ブタノールが31.8重量パーセントまで増やされたフラッシュタンク210からの蒸気(露点が28℃である)であり、これは、41.2℃の下部温度で操作されている間にほとんどすべての蒸気が吸収される真空吸収塔310へ向けられる。流れVENT(328)は、不凝結物質(noncondensibles)を含み、質量流量がほとんどゼロである(真空装置へ空気の漏れをある程度表す)が、これが圧縮されて水スクラバー(図示せず)を通って大気へ放出される。
【0127】
真空吸収塔310には、吸収剤の2つの流れ、つまり吸収液体流RICH1B(324)とLEAN(320)が供給される。この実施例では、吸収剤は、炭酸カリウムと重炭酸塩とを含むエチレングリコールである。流れRICH1B(324)は、吸収熱のほとんどまたはすべてを除去するために十分冷却された後に吸収塔310の下部から再循環される吸収剤である。流れLEAN(320)は、以下に説明する再生プロセスから戻される吸収剤であり、二酸化炭素、ブタノールおよび水がほぼ完全に吸収されたことを確認するのに十分な量である。一緒にした底部流RICH(322’)は、分けられて、供給流れRICH1B(324)と流れRICH3(323)(加熱され、吸収剤再生塔(ストリップ塔410として働く)に向けられる希釈された吸収剤である)にされる。
【0128】
再生塔410には、基部から熱が供給されるが、その熱の供給は、二酸化炭素およびブタノールのほとんどすべてならびに十分な水を蒸発させるのに十分な量の蒸気との間接的交換により行われて、定常状態組成が維持される。塔の底部流LEAN1(432)は熱統合によって冷却され(一部は流れRICH3(323)の熱遮断による)、流れLEAN(320)として吸収塔310へ戻される。
【0129】
流れVAPOR(440)は、1気圧で再生塔410から出て行き、部分的に凝縮され、(蒸気−液体分離器505で)分離されて流れCOLVENT(442)を生じる。この流れは、水スクラバー(図示せず)を通って放出される二酸化炭素パージである。凝縮液の流れCONDENSE(444)は、ポンプ(ポンプは示されていない)を使用して凝縮液デカンター容器510へ送られ、本明細書では記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカントされる。デカンター510では、上側の有機層BUOH(548)が生じ、これは精製のためにブタノール塔(図示せず)へ送られ、最終的に、市販される。下側の水層AQUEOUS(546)は、還流として再生塔410へ戻される。液相のサイドドロー(side draw)は、還流添加点と供給物添加点の間にある再生塔410から取り出される。このサイドドロー流れWATEROUT(450)は、さらにブタノールを回収するために、ポンプでビール塔(図示せず)へ送られる。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
【表9】
【0133】
この実施例は、吸収温度が蒸気流の露点よりも13℃高いことを示している。流れ67VENT(212)と流れVENT(328)を比較すると、二酸化炭素を含む99%を超える蒸気流が吸収に吸収されることが分かる。さらにこの実施例は、吸収液体は、本明細書に記載のプロセスを用いて再生できることを示している。
【0134】
実施例8:ASPENモデル:多段蒸留塔での蒸発およびエチレングリコールを含む吸収液体
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセスのASPENモデルを開発した。モデルの入力データを表9に示す。このモデルを、モデルプロセス400の流れ図を示す図7Aを参照しながら説明する。説明されているプロセス400から得られる流れおよび出力データを、図7Bおよび7Cとしてそれぞれ示されている表10Aおよび10Bに示す。バッチ発酵は、この実施例では、平均流量を使用した定常状態連続プロセスとしてモデル化した。
【0135】
図7Aに関して言えば、マッシュ流れ23MASH(123)、および生体触媒流れYEAST(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流68CO2(122’)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。1リットル当たり25グラムのブタノールを含むビールが、大気解放タンク(atmospheric disengagement tank)112を介して送られる。このタンクではビールからの蒸気が流れ68CO2(122’)によって排出されるが、その流れは、発酵容器110および解放タンク112から排出された蒸気を一緒にした流れである。次いで、循環されるビールは加熱されて流れ26BEER(124)を生じ、それは真空フラッシュ多段蒸留塔215(図1のプロセスの真空フラッシュ容器210に対応する)に送り込まれる。塔215の上部の圧力は0.07気圧であり、ガス流のブタノール濃度は34.5質量%である。塔215は間接的に加熱される。塔215の段数、塔215への入熱および流れ26BEER(124)の流量は、発酵容器110中のブタノールの濃度が事前選択しきい値である0.025重量分率を確実に超えないように選択される。1リットル当たり0.3グラムのブタノールを含む真空フラッシュ塔215の下部物質(bottoms)は、分けられて、(i)更なる糖を発酵させてブタノールにするために発酵容器110に戻される流れ28RCY(128)と、(ii)水再生およびトウモロコシ蒸留粕(Distiller’s Dried Grains with Solubles)(DDGS)製造プロセス(図示せず)へ向けられる流れ29BEER(129)とになる。本明細書に記載の方法では、DDGSを汚染しうる化合物は、他の生成物除去プロセスとは対照的にそのような副生成物の流れから分離される。それゆえに、本明細書に記載した生成物回収方法を含む発酵に更なる利点がもたらされうる。
【0136】
ブタノールが34.5重量パーセントまで増やされた蒸気流30BOV(212)が、フラッシュ塔215から真空吸収塔310へ向けられる。吸収塔310では、およそ67%の水とブタノールが蒸気流30BOV(212)から吸収されるが、二酸化炭素はほとんど吸収されない。吸収塔310からの蒸気流328が冷却され、凝縮液流れ32COND(844a)が(蒸気−液体分離器805で)残留蒸気から分離される。分離器805の後で、残留蒸気流34VAP(342)が圧縮され、再び冷却され、凝縮液流れ38COND(844b)が(蒸気−液体分離器806で)残留蒸気から分離され、残留蒸気流は水スクラバー(図示せず)に向けられる流れ40VAP(344)を生じる。
【0137】
真空吸収塔310には、吸収剤の2つの流れである吸収液体流324および320が供給される。この実施例では、吸収剤は、炭酸カリウムも他の塩基も含まないエチレングリコール(グリコール)である。流れ324は、吸収熱のほとんどまたはすべてを除去するために十分冷却された後に吸収塔310の下部から再循環された吸収液体である。流れ320は、以下に説明する再生プロセスから戻される吸収液体である。一緒にされた底部流322’は流れ324および流れ323を供給するために分けられる。流れ323は、加熱されて吸収再生塔410に向けられる、希釈吸収液体(または溶質を多く含んだ溶液)である。
【0138】
吸収再生塔410には、基部において、ブタノールおよび水を蒸発させるのに十分な量の蒸気と間接熱交換することにより熱が供給され、定常状態の組成が維持される。塔の底部流432を熱統合によって冷却し(流れ323の熱遮断を一部含む)、流れ320として吸収塔310へ戻される。
【0139】
蒸気流440は、1気圧で再生塔410から出て行き、他の蒸気と一緒にされ、部分的に凝縮され分離されて(蒸気−液体分離器505で)、流れCOLVENT(442)を生じる。この流れは、水スクラバー(図示せず)を介して放出される二酸化炭素パージである。凝縮液流れCONDENSE(444)は、ポンプ(ポンプは示されていない)を使用して凝縮液デカンター容器510へ送られ、本明細書では記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカントされる。デカンター510では、上側の有機層47ORG(548)が生じ、これは精製のためにブタノール塔(図示せず)へ送られ、最終的に、市販される。下側の水層48AQ(546)は一部が還流として(図示せず)フラッシュ塔215へ戻され、一部が再生塔410用の還流(図示せず)として使用される。
【0140】
【表10】
【0141】
【表11】
【0142】
【表12】
【0143】
この実施例は、多段蒸留塔を使用すると、発酵タンク中のブタノール濃度を事前選択しきい値である2.5質量パーセント以下に維持したまま、ブタノールと一緒に取り出される二酸化炭素の量を減らすことができることを示している。また、多段蒸留塔は、塔の供給物中のブタノール濃度が、発酵容器へ戻される底部流のブタノール濃度よりも80倍より大きくなるように操作される。さらに、吸収液体の使用(ここでは、エチレングリコールを塩基なしで使用)により、40.9℃の初期凝縮温度での大気圧未満の(sub−atmospheric)蒸気のおよそ65質量%の吸収が可能になり、これは吸収液体の非存在下での大気圧未満の蒸気流の初期凝縮温度(すなわち、37.7℃)より高い。
【0144】
実施例9:多段蒸留塔の実施例(吸収ステップなし)
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセス500のASPENモデルを開発したので、それを、図8Aを参照しながら説明する。流量はすべて、たとえ非連続であってよい場合でも、時間平均としてモデル化した。モデルの入力データを表11に示し、結果を図8Bおよび8Cでそれぞれ示されている表12Aおよび12Bに示す。
【0145】
図8Aに関して言えば、マッシュと栄養素の流れ23MASH(123)、および生体触媒のYEAST流れ(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流68CO2(122’)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビールは、110の発酵容器から真空ビール塔120へ(大気解放タンク112を介して)十分な速度で循環させて、ビール中のブタノール濃度が事前選択しきい値の目標値(この場合は2.5重量%)を確実に超えないようにする。大気解放タンク112)では、ビールからの蒸気が排出され、蒸気流68CO2(122’)と一緒にされる。次いで循環されるビールは加熱されて流れ26BEER(124)を生じ、これは大気圧未満の多段ビール塔120に送り込まれる。供給点および段数は、ビール塔設計の当業者が最適化できる。このモデルでは、ビール塔120の理論段数は6であり、供給は段♯1に対応する。十分な熱が低圧蒸気の形でビール塔120の底部から加えられて、ビールのブタノール含有量が98%を超えて低減される。この例では、塔120の上部の圧力は1psiaである。
【0146】
ビール塔の底部流27BOT(127)は、ビール塔120においてブタノールがかなりストリッピングされ、流れ27BOT(127)の一部(約70%)が、炭水化物をブタノールへさらに変換するために再循環流28RCY(128)として発酵容器110へ戻される。ストリッピングされたビールの残り(流れ29BEER(129))は、当該技術分野において知られているタイプのDDGSシステム(図示せず)へ送られるが、これは懸濁させられた固体および他の不純物の集積を制御するのに必要でありうる。
【0147】
ビール塔120からの蒸気流30BOV(130)(ブタノールが濃縮されている)は冷却され、液体凝縮液流れ32COND(132)および蒸気流34VAP(134)は真空蒸気−液体分離器905で分離される。残りの蒸気は圧縮トレーンを介して運ばれるが、そのトレーンの中で蒸気は圧縮、冷却、分離が(それぞれの圧縮機906、蒸気−液体分離器915、圧縮機907、および蒸気−液体分離器925で)2回行われ、分離器915および925から更なる凝縮液流れ37COND(137)および43COND(143)が生じる。この圧縮トレーンからの残留蒸気流40VAP(140)は大気圧より高く、水スクラバー(図示せず)に送られてから大気へ排出される。凝縮液流れ32COND(132)、37COND(137)および43COND(143)は、本明細書には記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカンター515中においてデカントされる。デカンター515からの水を多く含む下相508はビール塔120へ戻される。デカンター515からの有機物を多く含む上相506は、精製のためにブタノール回収塔(図示せず)へ送られ、最終的に市販される。
【0148】
【表13】
【0149】
【表14】
【0150】
この実施例は、大気圧未満のビール塔120および圧縮トレーンを介した場合のほんの961kg/hと比べて、ビール塔中での効率的なブタノールのストリッピングにより、CO2が20002kg/hで発酵容器110および任意選択の大気フラッシュタンク(すなわち、大気解放タンク112)から排出できるような流量が可能になることを示している。それゆえに、圧縮機は小さくなり、もっと多くの割合のCO2が大気圧未満のビール塔120から排出される場合よりも必要エネルギーが少なくなるであろう。また、多段蒸留ビール塔120は、底部流127中のブタノール全体が、供給流124中のブタノール全体の約1%となるように操作される。
【0151】
実施例10:真空フラッシュ前のエアストリッピング
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセス700のASPENモデルを開発したので、それを、図10Aを参照しながら説明する。流量はすべて、たとえ非連続であってよい場合でも、時間平均としてモデル化した。モデルの入力データを表13に示し、結果を図10Bおよび10Cでそれぞれ示されている表13Aおよび13Bに示す。
【0152】
図10Aに関して言えば、マッシュと栄養素の流れ125、および生体触媒(図示せず)が発酵容器110に送り込まれる。二酸化炭素、水およびブタノールを含む蒸気流122”は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビールは110の発酵容器から循環される。部分415は、非発酵性物質をパージするためにビール塔(図示せず)に向けられる。部分124は、ビール中のブタノール濃度が事前選択しきい値の目標値(この場合は、2.5重量%)を確実に超えないように、十分な速度でエアストリッパー210へ向けられる。二酸化炭素は、2308kg/hの空気が送られる三段塔でビールからストリッピングされる。ストリッピングガスの流速および段数は、ストリップ塔設計の当業者が最適化できる。十分な熱を加熱器360で加えて、フラッシュタンク325(以下に記載)の温度を32Cに維持する。ビールは、絞り弁117を介して容器325の下側区画へ送られ、そこで、0.05atmの圧力でフラッシュされ、ブタノール、二酸化炭素および水の蒸発が引き起こされる。ブタノールが濃縮されたこれらの蒸気は、容器325の区画310’へ移り、そこで20Cで一部凝縮される。凝縮液が310’から取り出され、冷却器401を介してポンプで送られ、流れ424’によって戻されて凝縮温度が維持される。凝縮液の一部(323’)が、循環ループから取り出され、さらに処理されて、示されていない設備で再利用に適した生成物ブタノールおよび水が生み出される。残りの蒸気である流れ428が圧縮トレーンを介して運ばれ、そのトレーンにおいて、実施例8に記載されているように圧縮、冷却、分離が2回行われる。
【0153】
フラッシュタンクでフラッシュされなかったビールは、ポンプ(図示せず)を使用して流れ414によって栄養素が更なる発酵のために発酵容器に戻される。
【0154】
【表15】
【0155】
この実施例は、発酵容器の後かつフラッシュより前のビールのエアストリッピングにより、フラッシュからの蒸気中のCO2含有量が減少することになることを示している。その結果として、フラッシュからの蒸気が、20C程度の温度でより完全に凝縮されうる。
【0156】
本発明の様々な実施形態を上述したが、それらは単なる例として示したものであり、限定するものではなことを理解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく、それらに対して形態および詳細に関する様々な変更を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明の幅広さと範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、以下の請求項およびそれらに相当するものにしたがってのみ定義されるべきである。
【0157】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、本発明が関係する当業者の技術レベルを示しており、またそれらを本明細書に援用するが、それは、それぞれの個別の刊行物、特許または特許出願を本明細書に具体的かつ個別に示して援用することに相当するものである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年12月29日に出願された米国仮出願第61/427,896号明細書、および2010年2月9日に出願された米国仮出願第61/302,695号明細書の優先権を主張するものであり、それらの開示内容全体をすべて本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、真空蒸発を使用して、ブタノールおよび他のC2〜C8アルコールを発酵ブロスから取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、多くの工業発酵は、化学品用途または燃料用途用のエタノールの製造が関係している。燃料用途の場合、ブタノールはエタノールと比べて有利である。すなわち、ブタノールは蒸気圧が低く、水への溶解度が小さい。
【0004】
有利なブタノール発酵プロセスは、ブタノール耐性のしきい値より上のブタノール濃度(butanol titer)に達することなく(これに達すると、ブタノールの産生速度が望ましくない事前設定速度を下回ることになる)、糖類からブタノールへの完全な変換または実質的に完全な変換を達成するであろう。バッチ発酵において耐性レベルより上のブタノール濃度で操作する必要のないレベルまで、糖の投入量(loadings)を抑えることは可能でありうるが、この取り組み方には不利な点がある。なぜなら、糖の投入量を抑えると、それ自体がプロセスにとって経済的に望ましくない希薄溶液が生じるからである。そのため、発酵においてブタノールのレベルが耐性レベル以下に抑えられると共に、耐性レベルを考慮するゆえに糖の投入量が抑えられるということのないプロセスが必要とされている。
【0005】
ブタノール産生発酵プロセスをいっそう効率的にするであろう1つの手段は、ブタノールが発酵培地(ブロス)から生じているのでブタノールを除去することであろう。その結果、ブタノール産生微生物の耐性レベルに達することがなく、大量の糖を発酵容器に充填することが可能である。そのような「現場での生成物除去(in situ product removal)」または「ISPR」プロセスは、特許文献1に記載されている。
【0006】
発酵生成物のためのISPRプロセスについては、Rofflerの論文(非特許文献1)にも記載されている。Rofflerは、発酵容器からの液体流を、真空に保持されている別個の容器に送るプロセスについて記載している。しかし、Rofflerに記載されている方法は、得られる蒸気流をさらに処理する必要がある。工業発酵は微生物に頼っているため、そのような処理では、微生物に対する温度の制約条件を考慮に入れなければならない。
【0007】
許容できる温度で操作するためには、真空下での冷却または操作の、コストおよび実用性を考慮しなければならない。化学プロセスでの熱の除去に関連したコストは、工場の所在地ならびに一年のどの時期かによって異なりうる。多くの地理的地域では、熱を蒸気流から除去する必要のある温度で、冷却が行えることまたは実際的であることを保証することは不可能である。
【0008】
冷水を熱交換器へ供給しそれによって凝縮を行う場合、冷却剤のコストが著しく増大する。代替方法は、蒸気流を圧縮して高圧力にして冷却水との接触で一年中凝縮が行えるようにすることであろう。しかし、これもかなりのコストを必要とする。なぜなら、機械に送られる初期の蒸気が低密度だからである。エタノールおよび水蒸気を吸収するために臭化リチウムを使用する既述のプロセスは、蒸気流の二酸化炭素または高級アルコールを吸収するのに十分ではないことがある。
【0009】
さらに、どんな方法を使用したとしても、(CO2には発酵ブロスへの溶解性があるため)大気へ排出する前に圧縮しなければならない残留ガス流があるであろう。残留ガス流はCO2を含むであろう。真空フラッシングは、ブタノールを発酵プロセスから除去できる効果的な手段ではあるが、生成物を含んでいる得られた低圧蒸気流を処理する点で進歩する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT国際公開第2009/079362A2号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Roffler,Steve Ronald,”Extractive fermentation − lactic acid and acetone/butanol production,”Department of Chemical Engineering at the University of California at Berkeley,1986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
真空下での蒸発によって発酵から生成物アルコールを取り出す方法が提供される。例えば、実施形態によっては、水および生成物アルコールを含みさらに任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物は、蒸気流が発生するように少なくとも部分的に蒸発させられる。蒸発させた発酵供給物から生成物アルコールを回収する方法も提供される。例えば、実施形態によっては、生成物アルコールを含む蒸気流を好適な条件下で吸収液体と接触させるが、そのときにある量の生成物アルコールが吸収される。吸収液体が再生される、吸収液体からの生成物アルコールの回収方法も提供される。
【0013】
複数の実施形態において、方法は、発酵液体供給物を少なくとも部分的に蒸発させるステップであって、蒸気流が発生し、発酵液体供給物および蒸気流がそれぞれある量の水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を含む、ステップと;蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させるステップであって、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、ステップとを含む。吸収される蒸気流部分は、水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2をそれぞれある量だけ含むことができる。吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度は、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高くなりうる。
【0014】
複数の実施形態において、発酵液体の部分的蒸発は、発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;発酵液体供給物を好適な流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;発酵液体供給物を蒸留して、生成物アルコールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない底部流を発生させるステップであって、約45℃以下の温度で蒸気流が発生できるように大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、ステップと;任意選択的に、底部流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップとを含むことができる。実施形態によっては、底部流の生成物アルコールの濃度は、発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の90%以下である。
【0015】
実施形態によっては、発酵容器内の生成物アルコールの濃度は、本明細書で提供する方法にしたがった事前選択しきい値未満に維持できる。例えば、方法は、生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を発酵容器から取り出すステップと;発酵液体供給物流を一段フラッシュタンク(single stage flash tank)または多段蒸留塔へ供給するステップと;真空条件下で一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔内の発酵液体供給物流を蒸発させて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流と生成物アルコールをほとんど含まない底部流を発生させるステップと;および任意選択的に、底部流の任意の部分を発酵容器に戻すステップとを含むことができる。実施形態によっては、蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させ、そのときに蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収される。
【0016】
本明細書で提供する方法の実施形態によっては、発酵液体供給物はCO2を含む。実施形態によっては、生成物アルコールはブタノールである。実施形態によっては、吸収液体は、生成物アルコールとは異なる水溶性有機分子を含む。実施形態によっては、有機分子は、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ2−メチルプロパノール(AMP)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、またはそれらの混合物などのアミンである。複数の実施形態において、吸収液相は、水の沸点よりも少なくとも30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む。複数の実施形態において、吸収液体は炭酸カリウムおよびエチレングリコールを含む。複数の実施形態において、吸収液体はエチレングリコールを含む。
【0017】
実施形態によっては、CO2のかなりの部分および生成物アルコールまたは水(あるいはその両方)の少なくとも一部が吸収液体に吸収される。
【0018】
生成物アルコールを吸収液相から回収しかつ吸収液相を再生する方法も本明細書で提供される。生成物アルコールの回収は、吸収液体、水、生成物アルコール、および任意選択的にCO2を含む吸収液相を、吸収器からポンプでくみ上げて吸収器内の圧力より高い圧力にするステップと;任意選択的に、吸収液相を加熱するステップと;吸収液相を、回収部および任意選択的に濃縮部を含む多段蒸留塔へ供給するステップと;吸収液体を含む底部生成物、および、水と生成物アルコールと任意選択的にCO2との混合物を含む蒸気相が生じるような条件下で、蒸留塔を操作するステップと;吸収液相を含む底部生成物を蒸留塔から回収するステップ;および水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を蒸気相から回収するステップとを含むことができる。
【0019】
本明細書に組み込まれていて、本明細書の一部をなす添付図面は、本発明を例示しており、この記載と一緒になって本発明の原理を説明し、さらに当業者が本発明を実施する(make and use)ことができるようにするのにさらに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ例示的システムを示す。
【図2】実施例1に記載した静止槽PtX装置の概略図である。
【図3】実施例6に記載したモノエタノールアミン溶液についてのピーク高さ 対 CO2吸収スペクトルのグラフである。
【図4】実施例6に記載したCO2吸収 対 ピーク高さのグラフである。
【図5】実施例6に記載した温度 対 ピーク高さのグラフである。
【図6A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例7で参照されている。
【図6B】表8Aを示し、実施例7のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図6C】表8Bを示し、実施例7のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図7A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例8で参照されている。
【図7B】表10Aを示し、実施例8のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図7C】表10Bを示し、実施例8のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図8A】提供されるプロセスの実施形態についての例示的な流れ図であり、実施例9で参照されている。
【図8B】表12Aを示し、実施例9のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図8C】表12Bを示し、実施例9のシミュレーションモデルの結果を要約している。
【図9】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ例示的システムを示す。
【図10A】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【図10B】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【図10C】本明細書に記載した実施形態にしたがってプロセスを実行するのに役立つ(特に、真空フラッシュの前のエアストリッピングを示すのに特に役立つ)例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で提供するプロセスは、本出願の一部を構成する以下の詳細な説明および添付図からより詳しく理解できる。図への参照は、本明細書に記載のプロセスを理解するのに助けとなるようにするためであり、限定するものと解釈すべきではない。さらに、プロセス条件が図に関連して提案されている場合、それらは一例として提供されているのであり、そうした条件を変えたものも本発明の趣旨の中に含まれる。
【0022】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含んでいる本出願で調整されるであろう。また、文脈で特に求められているのでない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書で挙げる刊行物、特許、および他の文献はすべて、あらゆる目的のためにその全体を援用する。
【0023】
本発明をさらに明確にするために、以下の用語および定義をここで示す。
【0024】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(contains)」または「含んでいる(containing)」あるいはそれらの他の任意の変形は、示されている整数または整数群を含むことを意味するが、他の整数または整数群を除外することを意味しないと理解されるであろう。例えば、列挙された要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそうした要素に限定されるわけではなく、明確に列挙されていない他の要素あるいはそうした組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素も含みうる。さらに、逆のことを特に述べていない限り、「または」は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではない。例えば、AまたはBという条件は、以下のいずれによっても満たされる:Aが正しく(または存在し)かつBが誤りである(または存在しない)、Aが誤りであり(または存在せず)かつBが正しい(または存在する)、さらにAおよびBの両方が正しい(または存在する)。
【0025】
本明細書で使用される「から構成される(consists of)」という用語、または本明細書全体および請求項を通じて使用される「から構成される(consist of)」または「から構成されている(consisting of)」などの変形は、挙げられている任意の整数または整数群を含むことを示すが、さらなる整数または整数群を、明記されている方法、構造、または組成物に加えることができないことを示す。
【0026】
本明細書で使用される「から基本的に構成される(consists essentially of)」という用語、または本明細書全体および請求項を通じて使用される「から基本的に構成される(consist essentially of)」または「から基本的に構成されている(consisting essentially of)」などの変形は、挙げられている任意の整数または整数群を含むこと、ならびに明記されている方法、構造、または組成物の基本的特性または新規の特性を実質的に変えることのない、挙げられている任意の整数または整数群を任意選択的に含むことを示す。
【0027】
また、本発明の要素または成分の前に付いている不定冠詞の「ある(a)」および「ある(an)」は、例の数、すなわち要素または成分の出現に関して非制限的であることを意図している。したがって「ある(a)」または「ある(an)」は、1つまたは少なくとも1つを含むと理解すべきであり、さらに要素または成分の語の単数形も、数が明らかに単数を意味するのでない限り、複数を含む。
【0028】
本明細書で使用される「発明」または「本発明」という用語は、非制限的用語であり、特定の発明のいずれかの1つの実施形態を指すことを意図するものではなく、本出願に記載された可能な実施形態すべてを包含する。
【0029】
使用される本発明の成分または反応物の量を修飾する、本明細書で使用される「約」という用語は、起こりうる数値的量の変動を指し、そうした変動は、例えば、現実の世界で濃縮物または使用溶液を作るために使用する普通の測定手順および液体処理手順によって;そうした手順における不注意による間違いによって;組成物を作るかまたは方法を実施するために用いる成分の製造、供給源、または純度の違いなどによって起こりうる。「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物の種々の平衡状態のせいで違ってくる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわりなく、請求項は量に相当するものを含む。1つの実施形態では、「約」という用語は、報告されている数値の10%以内、あるいは報告されている数値の5%以内を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「バイオマス」は、発酵性糖類(任意の糖類を含む)を生じる加水分解性多糖類を含んでいる天然物、天然資源(トウモロコシ、サトウキビ、小麦、セルロース物質またはリグノセルロース物質など)に由来するデンプン、およびセルロース、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類、二糖類及び/または単糖類を含んでいる物質、ならびにそれらの混合物を指す。バイオマスはまた、タンパク質及び/または脂質などの更なる成分を含んでもよい。バイオマスは単一の源から得ることができるか、またはバイオマスは複数の源から得た混合物を含むことができる。例えば、バイオマスは、トウモロコシの穂軸とトウモロコシのわらの混合物、または草と葉の混合物を含むことができる。バイオマスとしては、バイオエネルギー作物、農業残渣、固形都市廃棄物、固形産業廃棄物、紙製造のスラッジ、庭ゴミ、木屑および林業廃棄物があるが、これらに限定されない。バイオマスの例としては、トウモロコシ殻粒、トウモロコシの穂軸、穀物残渣(トウモロコシの皮など)、トウモロコシのわら、草、小麦、ライ麦、小麦のわら、大麦、大麦のわら、干し草、稲わら、スイッチグラス、紙くず、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、(穀物、木、枝、根、葉、木片、おがくず、低木および灌木の)粉砕によって得られる成分、野菜、果物、花、家畜ふん尿、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。例えば、マッシュまたはジュースまたは糖密または加水分解産物は、発酵の目的でバイオマスを処理するための当該技術分野において知られている任意の加工(粉砕、処理及び/または液化など)によってバイオマスから生じさせることができ、発酵性糖を含み、またある量の水を含むことができる。例えば、セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスは、当業者に知られている任意の方法により加工して、発酵性糖類を含む加水分解産物を得ることができる。特に有用なのは、米国特許出願公開第20070031918A1号明細書(本明細書に援用する)に開示されている低アンモニア前処理である。セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスの、酵素による糖化では、典型的にはセルロースおよびヘミセルロースを分解するための酵素コンソーシアム(enzyme consortium)を利用して、糖類(グルコース、キシロース、およびアラビノースを含む)を含む加水分解物を作り出す。(セルロース及び/またはリグノセルロースのバイオマスに適した糖化酵素は、Lynd,L.R.,et al.(Microbiol.Mol.Biol.Rev.,66:506−577,2002に概説されている)。
【0031】
「真空フラッシュ」または「フラッシュ」という用語は、発酵容器からの液体流が、真空に保持されている別個の容器(多段蒸留塔であっても、一段タンクであってもよい)へ送られる工程段階を指す。圧力が低下すると、液体流の一部(典型的には10%以下)がフラッシュされて蒸気相になる。このステップが実施される液体流は、「フラッシュされる」または「部分蒸発させられる」または「蒸発させられる」ということができる。多段蒸留塔で「フラッシュ」が実施される複数の実施形態では、フラッシュは「蒸留」または「フラッシュ蒸留」と呼ぶこともできる。
【0032】
「真空フラッシュ容器」という用語は、発酵容器からの液体流の少なくとも一部がフラッシュされて蒸気相になる物理的場所を指す。
【0033】
本明細書で使用される「吸収液体」という用語は、フラッシュ時に発生する蒸気相のどの部分でも吸収できる、プロセスに送り込まれる液体を指す。
【0034】
本明細書で使用される「発酵」という用語は、炭素物質が微生物の作用によって生成物(生成物アルコールなど)に変換される工程段階を指す。
【0035】
本明細書で使用される「発酵ブロス」または「発酵液体」という用語は、水、糖類、溶解した固体、アルコールを産生する微生物、生成物アルコールおよび発酵容器中に保持されている物質の他のすべての構成成分といったものの混合物を指し、発酵容器中では、存在する微生物によって生成物アルコールが、糖類の反応によりアルコール、水および二酸化炭素(CO2)にされて作られている。時々、本明細書で使用される「発酵培地」および「発酵混合物」という用語は、「発酵ブロス」の同義語として使用できる。
【0036】
本明細書で使用される「発酵性炭素源」は、発酵性アルコールの産生のために、本明細書に開示されている微生物が代謝できる炭素源を意味する。好適な発酵性炭素源としては、単糖類(グルコースまたはフルクトースなど);二糖類(乳糖またはスクロースなど);オリゴ糖類;多糖類(デンプンまたはセルロースなど);炭素物質;およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。時々、本明細書で使用される「発酵性炭素源」という用語は、「炭素物質」または「発酵性炭素物質」の同義語として使用できる。炭素源は、バイオマス由来の炭素を含む。
【0037】
本明細書で使用される「供給原料」は、発酵プロセスにおける供給物を意味し、その供給物は、溶解していない固体の有無に関わりなく発酵性炭素源を含み、また、当てはまる場合には、供給物は、発酵性炭素源が、液化、糖化、または他のプロセスなどのさらなる処理によってデンプンから遊離されるかまたは複雑な糖類の分解から得られる前または後に、発酵性炭素源を含む。供給原料は、バイオマスを含むかまたはバイオマスから得られる。好適な供給原料には、ライ麦、小麦、トウモロコシ、サトウキビおよびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「糖」は、オリゴ糖類、二糖類及び/または単糖類を指す。
【0039】
本明細書で使用される「発酵性糖」は、発酵性アルコールを産生するために、本明細書に開示されている微生物が代謝できる糖を指す。
【0040】
本明細書で使用される「生成物アルコール」という用語は、発酵プロセスにおいて微生物によって一次生成物として産生される低級アルカンアルコール(C2〜C8アルコールなど)を指す。
【0041】
本明細書で使用される「ブタノール」は、ブタノール異性体である1−ブタノール(1−BuOH)、2−ブタノール(2−BuOH)及び/またはイソブタノール(iBuOHまたはi−BuOHまたはI−BUOH)(いずれか、またはそれらの混合物)を指す。
【0042】
本明細書で使用される「組換え微生物」という用語は、分子生物学的手法を用いて操作された微生物を指す。微生物は、任意選択的に代謝経路を発現するように操作することができ、かつ/または微生物は、任意選択的に不要な生成物が低減または除去されるように、及び/または所望の代謝産物の効率が増大するように操作することができる。
【0043】
プロセス流れまたはその成分に関連して本明細書で使用される「かなりの部分」は、示されているプロセス流れまたは示されているその成分の少なくとも約50%を指す。複数の実施形態において、かなりの部分は、およそ少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%または示されているプロセス流れまたは示されているその成分を含みうる。
【0044】
プロセス流れに関連して本明細書で使用される「任意の部分」は、流れの組成を保持する流れの任意の小部分(流れ全体も含む)、ならびに流れの任意の1種または複数種の成分(流れの全成分も含む)を指す。
【0045】
発酵容器を出て行く発酵液体流が真空フラッシュを用いて処理される方法が、本明細書で提供される。真空フラッシュは、一段フラッシュタンクで実施できる。この代わりに、あるいはこれと一緒に、真空フラッシュは、フラッシュされた発酵ブロスが生成物アルコールの濃縮された蒸気流を生じ、かつ実質的に生成物アルコールをほとんど含まない底部流が生み出されるような条件下において、多段蒸留塔で実施できる。本明細書に開示されているように、フラッシュされた発酵ブロスからの蒸気流は、自然に凝縮しうる温度より高い温度で、第2液体流に吸収させることができる。そのようなプロセスは、生成物アルコール、特にブタノールを生み出す発酵に有用である。なぜなら、発酵時にブタノールを除去して生産性及び/または発酵時の微生物の生存率に対する影響を減らすことが望まれているからである。したがって、最適な発酵条件に対する影響を最小限に抑えつつ、発酵の間に効果的な生成物の回収を行えるようにするプロセスが提供される。
【0046】
生成物アルコール発酵時に、生成物アルコールは炭素物質から微生物によって発酵液体内で生み出される。複数の実施形態において、炭素物質は、植物源に由来するマッシュの形で用意される。発酵は、微生物に適していることが当業者に知られている条件下で実施できる。複数の実施形態において、発酵は約25℃〜約40℃の温度で実施する。複数の実施形態において、発酵は約28℃〜約35℃の温度で実施し、複数の実施形態において、約30℃〜約32℃で実施する。発酵液体は、水および生成物アルコールを含み、典型的には、CO2も含む。本明細書で提供する方法を用いて液体から生成物アルコールを回収するためには、発酵液体の少なくとも一部を発酵容器から第2の容器または「蒸発容器」へ取り出し、真空フラッシュで少なくとも部分的に蒸発させる。例えば、そのような実施形態では、蒸発は、真空下で、約25〜約60℃の温度で起こりうる。蒸発は、約0.02〜約0.2バールの圧力で起こりうる。圧力は、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15または0.2バール、あるいは約0.2バール未満であってよいことが理解されるであろう。複数の実施形態において、蒸発は、約0.05〜約0.2バールの圧力で起こりうる。複数の実施形態において、蒸発は、約0.2バール未満、または約0.1バール未満の圧力で起こりうる。あるいはまた、真空フラッシュは、本明細書に記載した条件下で、本明細書の他の箇所に記載した多段蒸留塔中で実施できる。
【0047】
生成物アルコールが生成されるのとほぼ同じ速度で生成物アルコールが除去されるように、発酵プロセスの間に蒸発が開始し、行われるのが望ましい。発酵容器内の生成物アルコールが事前選択しきい値未満に維持されるような速度および条件下で蒸発が行われることが、理解されるであろう。事前選択しきい値は、生成物に対する微生物の耐性に応じて異なるであろう。複数の実施形態において、微生物は、バクテリア、藍色細菌、糸状菌、または酵母である。実施形態によっては、バクテリアは、ジモモナス属(Zymomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バシラス属(Bacillus)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ペジオコックス属(Pediococcus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パエニバチルス属(Paenibacillus)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、およびブレビバクテリウム属(Brevibacterium)からなる群から選択される。実施形態によっては、酵母は、ピキア属(Pichia)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、イサタケンキア属(Issatchenkia)、およびサッカロミセス属(Saccharomyces)からなる群から選択される。複数の実施形態において、しきい値は、約20g/L未満である。複数の実施形態において、しきい値は、約8g/L未満、約10g/L未満、約15g/L未満、約25g/L、約30g/L未満、または約40g/L未満である。さらに、生成物アルコールの産生および回収に役立つある特性を有するように修飾された微生物(組換え微生物など)が、本明細書では企図される。例えば、発酵または供給流の高い温度をいっそう耐えうる、それゆえにプロセス全体を効率的にする、ある程度の熱耐性を有する微生物。さらに、発酵性微生物が、ある条件下で特徴的に有利に機能する場合、本明細書に記載のプロセスを利用して、そのような能力を十分に活用できる。例えば、ガスストリッパーを使用して、効果的なエアストリッピングを行えるようにし、また発酵容器中の微好気性(microoaerobic)微生物に酸素を与えることができる。
【0048】
本明細書に記載のプロセスは、多数の生成物アルコールに関連して使用できる。そのようなアルコールとしては、ブタノールなどの低級アルカンアルコールがあるが、それらに限定されない。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、炭素物質をブタノールに変換できる組換え微生物によるブタノールの産生が関係している。炭素物質をブタノールに変換できる微生物は当該技術分野において知られており、それには、米国特許出願公開第2007/0092957号明細書および第2009/0305363号明細書、米国仮出願第61/379,546号明細書、第61/380,563号明細書、および米国非仮出願第12/893,089号明細書に記載されているような組換え微生物があるが、これらに限定されない。
【0049】
ブタノール産生発酵に関連して、発酵容器を出て行く流れの組成物は、典型的には大部分が水であり、生成物のブタノールおよびCO2を含む。本明細書に記載されているある特定のプロセスでは、蒸気流は吸収器内の吸収液体と接触させられる。酸性ガス(CO2およびH2Sなど)を含むガス流を特別設計の吸収媒体に吸収させて処理するために当技術分野で使用されるプロセス(Gas Purification,5th Edition,Arthur Kohl and Richard Neilsen 1997)とは対照的に、本出願人らが発見し本明細書で提供する方法は、吸収媒体によって蒸気流から一部または全部の成分を吸収しようとする。吸収液体は、水が通常は凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収するであろう。さらに、実施形態によっては、生成物アルコールは吸収液体にも可溶である。プロセスの複数の実施形態において、3つの成分(水、ブタノール、およびCO2)がすべて吸収媒体に吸収される一方、蒸気流の任意の部分を吸収して、生成物アルコールを多く含んでいるかまたはCO2を多く含んでいるさらに処理される残留蒸気流を生み出すことを含む実施形態は、真空フラッシュ発酵プロセスにいっそう利点をもたらす。
【0050】
また、当技術分野においてガス流を処理するために使用されるプロセスとは対照的に、吸収液体との接触が、フラッシュ操作の圧力に近い大気圧未満の圧力で行われ、さらに複数の実施形態においては、実質的に蒸気流全体が吸収される。フラッシュおよび吸収の装置は、この二つの操作の間の圧力低下が最小限に抑えられるように組み合わせることができる。
【0051】
生成物アルコールを回収するために、吸収液体から(例えば、冷却器全体に循環させて)吸収熱を除去する。そのような実施形態では、吸収液体のない場合に蒸気流の凝縮に必要であろう冷却剤より安価な冷却剤を用いて循環流体から熱を除去でき、安価な冷却は、典型的には空気冷却器を介するかまたは冷却水回路から操作される熱交換器によるか、あるいは河川水を直接使用して行う。再循環させる必要があるであろう吸収流体の量は、吸収器(吸収塔であってよい)全体で許される温度上昇によって異なる。吸収器の上部温度は、吸収圧における溶液からの蒸気圧によって制限されるが、下部温度は冷たいユーティリティー温度(utility temperature)(通常、冷却水)との接近により制限される。
【0052】
本明細書で提供するプロセスの場合、蒸気流と吸収液体との接触は、真空下で行われ、約0.02〜約0.2バールの圧力で行うことができる。複数の実施形態において、接触は、約0.2バール未満、または約0.1バール未満の圧力で行うことができる。接触は、約25℃〜約60℃の温度で実施できる。複数の実施形態において、蒸発ステップおよび接触ステップは、同じ圧力で行われる。
【0053】
好適な吸収液体としては、水溶性有機分子を含むものがある。複数の実施形態において、水溶性有機分子は、水の沸点よりも少なくとも30℃高い沸点を有する。複数の実施形態において、有機分子はアミンである。複数の実施形態において、アミンは、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ2−メチルプロパノール(AMP)またはメチルジエタノールアミン(MDEA)である。複数の実施形態において、吸収液体アミンとCO2(蒸気流中のもの)とのモル比は少なくとも約1.01〜約1、すなわち、モル比は約1より大きい。複数の実施形態において、吸収液体はMEA、AMP、MDEA、またはそれらの任意の混合物を含む。吸収液体はイオン性溶液を含むことができる。複数の実施形態において、イオン性溶液は炭酸塩を含む。複数の実施形態において、炭酸塩は炭酸カリウムであるが、これは他の一般のアルカリ金属炭酸塩と比べて溶解度が高いためである。複数の実施形態において、イオン性溶液中の炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)の量は、蒸気流からCO2の少なくとも一部(または複数の実施形態において、かなりの部分)を吸収するのに十分な量である。複数の実施形態において、炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)とCO2(蒸気流中のもの)とのモル比は、約1より大きい。
【0054】
複数の実施形態において、吸収液体はイオン性液体である。水およびブタノールの両方を吸収するための好適な吸収液体としては、次の特性を有するものが含まれる。すなわち、1)水およびブタノールと混和できる、2)標準沸点が130℃以上、または150℃以上である、3)沸点での熱安定性、4)5%(重量/重量)未満、または10%(重量/重量)未満の比率で二酸化炭素にさらされたとき沈殿剤がない、および5)腐食性が低い。
【0055】
理論に縛られることは望まないが、少なくとも水が吸収されることになる吸収液体は、吸収の開始温度が、その物質のないときの凝縮の開始温度より高い場合、従来技術に改善をもたらすであろうと考えられる。
【0056】
複数の実施形態において、本明細書で提供する方法は、MEAを吸収液体として使用する。プロセスにおけるMEA溶液は、MEA溶液なしの状態で水が凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収する。さらに、ブタノールはMEA溶液に溶け、MEA溶液はCO2を吸収することもできる。
【0057】
複数の実施形態において、本明細書で提供する方法は、MDEAを吸収液体として使用する。プロセスにおけるMDEA溶液は、MDEA溶液なしの状態で水が凝縮するであろう温度より高い温度で水を吸収する。さらに、ブタノールはMDEA溶液に溶け、MDEA溶液はCO2を吸収することもできる。他のアミンも使用できるが、MDEAには、カルバミドを生じることがなく、それゆえに容易に再生されるという利点もある。
【0058】
好適な吸収液体としては、吸湿性有機液体、高沸点の有機アミン、およびイオン性液体、ならびに生物学的に得られた上記の液体、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
吸湿性有機液体。好適な吸湿性有機液体は、水溶性の成分を含み、水は有機成分に可溶である。こうした液体は、水の凝縮点よりも高い温度での水の吸収が容易になるように、水より高い沸点を有する。典型的にはこうした分子は、グリコールおよび二酸など炭素主鎖に少なくとも2つの官能基を必要とするであろう。吸収液体の例として、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、またはそれらの混合物を挙げることができる。生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール(1,3−pronaediol)も使用することができ、これは総合カーボンフットプリント(overall carbon−footprint)の利点をもたらしうる。例えば、米国特許第7,759,393号明細書を参照されたい。さらに、
【0060】
水は、例えば、エチレングリコールに容易に溶けるので、吸湿性有機液体は蒸気相からの吸収を行う。さらに、こうした液体(特にエチレングリコール)へのブタノールの溶解度は水よりも優れている。幾つかの好ましい実施形態では、吸湿性有機液体はイオン性溶液を生じることもできる。炭酸カリウムのエチレングリコール溶液はその一例である。
【0061】
高沸点の有機アミン。高沸点有機アミン(アルカノールアミンなど)は、本明細書に記載したプロセスでの使用に適している。エチレングリコールと同様、アルカノールアミン(MEAおよびMDEAなど)は水と混和でき、高温での水の吸収を容易にする。それらはまた、ブタノールが水と混和するよりも、いっそうブタノールと混和できる。さらに、それらは熱可逆性反応によってCO2吸収を吸収する。
【0062】
複数の実施形態において、吸収液体はポリエチレンイミンまたは関連した高分子アミノ系(polymeric amino system)を含む。
【0063】
非限定的な例であるが、本明細書に記載のプロセスで使用するための、吸収液体として働くことができるアミンとしては、4〜12個の炭素を有する脂肪族または脂環式のアミン、4〜12個の炭素を有するアルカノールアミン、1または2個の窒素と1または2個のアルカンジイル基が一緒になって5員環、6員環または7員環を形成している環状アミン、上記の溶液の混合物、および上記の混合物および溶液の水溶液を挙げることができる。
【0064】
例えば、吸収液体としては、モノエタノールアミン(MEA)、メチルアミノプロピルアミン(MAPA)、ピペラジン、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、アミノエトキシエタノール(AEE)、ジメチルアミノプロパノール(DIMAP)およびメチルジエタノールアミン(MDEA)、それらの任意の混合物、またはそれらの任意の水溶液を挙げることができる。
【0065】
イオン性液体。イオン性液体は、陽イオン及び/または陰イオン(温度100℃未満の温度で溶液中にある様々な塩など)を含む溶液である。好適なイオン性液体の例としては、米国特許出願公開第2010/0143993号明細書、同第2010/0143994号明細書、および同第2010/0143995号明細書(本明細書に援用する)に記載されているものがある。無機塩が存在すると、希釈および水のイオン化の増大の両方により、溶液中の水の蒸気圧の減少が引き起こされる。水溶性塩はこのプロセスに適している。水が吸収される実施形態に適しているのは、高水溶性の塩(臭化リチウムなど)を含む溶液である。一般に、一価のアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)は、溶解度が高いため、他の金属よりも選ばれるであろう。陰イオンを正しく選択すれば、このプロセスでCO2も回収されるようにすることができる。炭酸イオンを使用すれば、重炭酸イオンの形成によって、CO2を水性相に吸収させることができる。炭酸カリウム溶液を用いるプロセスは一般に、ベンフィールド法と呼ばれ、この方法は、本明細書に開示されるより前には、発酵生成物アルコールの回収に対して温度の利点をもたらすために、アルコール産生に関連して使用されたことはない。複数の実施形態において、混合塩溶液(炭酸カリウムおよびハロゲン化カリウム塩など)を使用できる。理論に縛られることは望まないが、そのような混合塩溶液により、溶液のイオン強度が増大して、塩の沈殿が生じることなく水の捕捉が改善されるであろうと考えられる。イオン性液体は、ブタノールなどの高級アルコール(すなわち、C3以上の生成物アルコール)よりももっと効率的に蒸気相からエタノール水及び/またはCO2を吸収でき、さらにエタノールを吸収できるという点が注目される。
【0066】
吸収液相への蒸気流の吸収の開始温度は、吸収液相の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高い。吸収または凝縮の開始温度は、実験データに基づく標準気液平衡法を用いて計算するか、あるいはプロセスから直接測定するかして推定できる。複数の実施形態において、蒸気流から吸収液相への吸収の開始温度は、吸収液相の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも、少なくとも約2℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約3℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約5℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約約10℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約15℃高く;複数の実施形態において、少なくとも約20℃高く;さらに複数の実施形態において、少なくとも約30℃高い。本開示があれば、当業者は、本明細書に記載されたプロセスを使用して容易に冷却コストおよび溶媒の再生コストを最小限に抑えることができるであろう。
【0067】
できるだけ多くの蒸気流を吸収液体に吸収させることが有益であることが理解されるであろう。複数の実施形態において、少なくとも約50%の蒸気流が吸収液体に取り込まれる。複数の実施形態において、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約99%の蒸気流が、吸収液体に吸収される。複数の実施形態において、蒸気流は、約50〜65質量%の水、約30〜35質量%のブタノール、および約2〜20質量%のCO2を含む。ブタノールと二酸化炭素との質量比を大きく設定することによって、吸収、凝縮および類似の工程は容易になることが理解されるであろう。この比率は、発酵容器の出口で、1〜2部のブタノール対100部の二酸化炭素の程度である。複数の実施形態において、この比率は、1〜5部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。複数の実施形態において、この比率は、5〜30部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。複数の実施形態において、この比率は、10〜100部のブタノール対1部の二酸化炭素にまで増やす。
【0068】
ブタノールの回収は、0.5psigより高い圧力で、ブタノールと水との比率の高い流れから凝縮によって回収するのが容易になるであろうことが、さらに理解されるであろう。複数の実施形態において、この圧力は1〜30気圧にまで増やす。複数の実施形態において、この圧力は0.9〜1.2気圧にまで増やす。
【0069】
複数の実施形態において、吸収液体は蒸気流からCO2のかなりの部分を吸収する。複数の実施形態において、CO2の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が吸収される。そのような実施形態の場合、吸収液体は炭酸カリウムと混合されたMEA、MDEA、AMPまたはエチレングリコールであってよい。
【0070】
したがって、本明細書では、水および生成物アルコールを含みさらに任意選択的にCO2を含む発酵液体を部分的に蒸発させるステップであって、発酵蒸気流が発生する蒸発ステップと;発酵蒸気流を吸収液相と接触させるステップであって、蒸気流の任意の部分が吸収液相に吸収される接触ステップとを含むプロセスとが提供される。
【0071】
生成物アルコールが吸収液体に吸収される複数の実施形態において、吸収液体が並行して再生および再利用されるように生成物アルコールを吸収液体から回収できる。回収および再生は、ポンプを使用して吸収液体を、蒸発および吸収が行われる場合より高い圧力(大気圧以上の圧力など)にするステップ(これによりプロセスからの残留CO2の排出が可能になるであろう)と;回収部および任意選択的に濃縮部を含む蒸留塔に吸収液体を供給するステップと;下部の液体生成物および上部の蒸気生成物が生み出されるように吸収液体を蒸留するステップと;吸収液相を含む底部生成物を回収蒸留塔から回収するステップとを含むプロセスとを使用して、達成できる。当業者によく知られている手法を用いて回収蒸留塔への供給物を予熱して、回収蒸留塔の基部にとって必要なエネルギー入力を減らすことができる。
【0072】
吸収液相から取り出され、回収蒸留から上部の蒸気生成物の中に回収される成分は、凝縮、蒸留およびデカンテーション、またはそれらの組合せなどの従来の方法を用いてさらに分離できる。発酵蒸気流の組成および用いる吸収液体に応じて、複数の実施形態において、(蒸気流接触の後の)吸収液体は、水と生成物アルコールと任意選択的にCO2を組み合わせたものを含むことになり、ある特定の実施形態では3成分すべてを含むことになる。
【0073】
図1は、本明細書に記載のプロセス100の実施形態についての装置、熱交換器、および生成物の流れの例示的な構成を示す。ブタノール(あるいは、複数の実施形態において、他の1種または複数種の生成物アルコール)を産生する発酵は、発酵容器110内で行われ、発酵容器110中のブタノールの濃度は微生物の許容限界レベル(tolerance level)に近づく。発酵液体は、流れ124によって発酵容器110から真空フラッシュ容器210へパージされて、ブタノールの取り出しが促進される。実施形態によっては、真空フラッシュ容器はフラッシュタンクであり、容器210内の圧力は、流れ216の部分蒸発させられた水の形で供給される熱と組み合わせて、十分なブタノールのパージが蒸気流212で行われるような圧力に維持される。これは、容器110内のブタノールのレベルを事前選択しきい値より下に維持できるようにするためである(真空フラッシュ容器210からの残りの液体が、流れ214を介して発酵容器110へ戻される場合)。
【0074】
容器210内の圧力は、微生物の生産性を維持する上で許容できる温度に、残りの液体流214および容器110を維持するため、必要な冷却を行えるよう十分に低くすることができる。容器210の操作圧力は、0.05から0.2バールの間にすることができる。圧力は、0.05、0.1、0.15または0.2バールあるいは約0.2バール未満であってよいことが理解されるであろう。複数の実施形態において、流れ214のブタノールの濃度と流れ124のブタノールの濃度との比率は、約0.9〜約0.5である。この比率は、約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、または約0.5であってよいことが理解されるであろう。蒸気流212は、水、ブタノールおよびCO2を含む。流れ212は、吸収塔310に入り、そこで吸収液体流320および324と接触する。吸収液体流320および320は吸収液体を含む。
【0075】
非限定例において、吸収液体はMDEAなどのアミンである。非限定例において、吸収流体は、エチレングリコール中に炭酸カリウムが含まれているものである。320および324の温度および吸収剤の濃度は、蒸気流212が実質的に吸収されるようなレベルに維持される。複数の実施形態において、蒸気流212は約36℃を超える温度で実質的に吸収されるが、流れ212の露点は約30℃未満である。残留蒸気は真空システムを介して流れ328によって除去される。そして工場のスクラビングシステムへと出て行くことになる。塔310の下部から抜き取られて冷却器301で冷却される液体再循環流322があり、塔310に循環して戻される流れ324が生み出される。実施形態によっては、流れ322の流量は、流れ324と322との間での温度上昇が約3℃〜約8℃になるように選択されることになる。液体パージが流れ326によって塔310から取り出されるが、その流れは、吸収液体ならびに蒸気流212から吸収されたCO2、ブタノールおよび水を含む。流れ326は、ポンプを使用して(ポンプは示されていない)およそ大気またはそれ以上まで圧力を上昇させ、任意選択的に加熱器311で加熱して流れ330を生じさせる。加熱器311は、以下に説明するように、好都合にも冷却器302と熱統合することができる。
【0076】
流れ330は、当業者に知られている接触装置を使用して、回収部および濃縮部を含むストリップ塔410に入る。回収部において、CO2、ブタノールおよびかなりの割合の水が流れ330の吸収液体からストリッピングされる。複数の実施形態において、ストリップ塔410内の圧力は、およそ大気であり、ストリップ塔410の下部は、実質的にすべてのブタノールがストリッピングされ、かつ液相流れ432(再生された吸収液体を含む)の含水量が経時的に変化しないようにするのに十分な温度まで加熱される。複数の実施形態において、塔410の下部から出て行く液相432の水濃度は、10質量%〜40質量%である。物質は、塔410の下部から流れ434を介して循環される。流れ434は加熱器413へ進み、流れ436を生み出し、それは容器410へ戻される。複数の実施形態において、加熱器413の構成は、当業者によって容易に設計されるケトルまたは熱サイホンであってよい。
【0077】
再生された吸収液体は、ポンプを使用して(ポンプは示されていない)、容器410の下部から流れ432を介して送られ、その流れは任意選択的に、吸収塔310に導き入れる前に冷却される。図1に示すように、複数の実施形態において、再生された吸収液体の流れ432は、冷却器302で冷却されて、流れ333を生み出す。上述のように、冷却器302は、流れ432を冷却するために、都合よく加熱器311と熱統合することができる。次いで蒸気333は、任意選択的に冷却器303によってさらに冷却して、冷たい吸収液体流れ320を生み出すことができる。複数の実施形態において、側流パージは、ストリップ塔410の濃縮部から流れ438によって取り出される。流れ438は、吸収液体およびCO2を実質的に含まないものであってよく、約1〜3%のブタノールを含んでいてよく、残りが水である。流れ330の中に含まれる水は、塔410および後述のデカンター容器510およびブタノール塔610を含むプロセスの下流部分から、流れ438および432を介して実質的に除去される。流れ438の制御は、流れ432の中で所望の水のレベルが実現されるようにする。流れ438は加熱器411へ進むが、部分的に蒸発してフラッシュ容器210へ供給される流れ216を生じることになる。上述したように、流れ216からの熱は、容器210および容器110の間でのバランスが保たれるようにするのに助けとなり得るが、バランスを保つのは、容器110内のブタノールのレベルが事前選択しきい値未満に維持されるように、発酵液体供給物124からの十分なブタノールのパージが蒸気流212によって行われるようにするためである。複数の実施形態において、加熱器411は、冷却器404との熱統合を都合よく行うことができる。
【0078】
蒸気は流れ440を介してストリップ塔410の上部から出て行き、冷却器404兼分離器505に進み、そこで、流れ440が実質的に凝縮され残留蒸気流442から分離されて液体流444を生み出す。流れ440は、ストリップ塔410内の濃縮部の作用ゆえに、実質的に吸収液体を含まないようにすることができる。残留蒸気流442は工場のスクラビングシステム(図示せず)に進む。流れ442は、ストリップ塔410へ供給されるCO2の大部分を含み、その一方、流れ440の水およびブタノールの大部分は凝縮されて流れ444を生じる。冷却器404は、加熱器411および加熱器614と好都合にも熱統合することができる(以下にさらに説明する)。
【0079】
液体流444はデカンター容器510に進み、その容器は、以下に説明するように流れ652も受け入れる。デカンター容器510内の物質は、水性液相546と有機液相548に分けられることになる。複数の実施形態において、水性相またはその一部は、流れ546を介して容器4の濃縮部の上部に戻すことができる。複数の実施形態において、(上述した)流れ546および流れ438の一方または両方の一部を、ビール塔(図示せず)に向けることができる。
【0080】
デカンター容器510の有機相は流れ548を介して出て行き、ブタノール塔610に進むが、この塔は少なくとも回収部を含む。塔610を操作するための熱が、流れ656の再循環ループを介して加熱器614によって供給されて、流れ658が生み出され、その流れは塔610に戻される。複数の実施形態において、加熱器614の構成は、当業者によって容易に設計されるケトルまたは熱サイホンであってよい。塔610の操作圧力が塔410および冷却器404の操作圧力より十分低い場合には、加熱器614は都合よく冷却器404と熱統合することができる。ブタノール生成物が、塔610の下部から流れ654を介して取り出される。塔610からの蒸気オーバーヘッド(vapor overhead)流れ650は冷却器405に進み、凝縮されて流れ652を生み出す。流れ652をポンプでデカンター容器510に送り(ポンプは示されていない)、そこで水性液相と有機液相とに分けることができる。
【0081】
複数の実施形態において、発酵液体流124を蒸発させるための真空フラッシュ容器210は、上述したフラッシュタンク(一段階のみを有する)の代わりに多段蒸留塔210である。そのような実施形態では、生成物アルコールを含む発酵液体供給物124は、ある流量で発酵容器110から多段蒸留塔210へ供給される。次いで発酵液体供給物124は、蒸留塔210内で部分的に蒸発させられて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流212および生成物アルコールをほとんど含まない底部流214を生み出す。上述したフラッシュタンク内で行われる蒸発とは対照的に、多段蒸留塔は、蒸気が複数段にあてられるように操作できる。多段蒸留塔は、2〜8以上の任意の段数を有することができる。複数の実施形態において、蒸留塔は6段塔である。当業者なら分かるように、これにより、底部流214の生成物アルコールの濃度が減少することになる(実施形態によっては、図1に示すように、底部流は発酵容器110に戻される)。蒸発用の蒸留塔210を用いていっそう効率的に発酵容器110から生成物アルコールを取り出すことができるので、蒸留塔への流量を一段真空フラッシュタンクへの流量より少なくすることができ、それでも発酵容器110から生成物アルコールを十分に取り出すことができる。発酵容器110からの流量を少なくすると、発酵容器からのCO2の排出をより多くすることが可能になり、それにより、排出される二酸化炭素の流量が約2〜約5倍以上少なくなり、それゆえにさらなる処理が施される流れの中のCO2を減少させられる。同様に、アルコールをほとんど含まない底部流214またはその一部が発酵容器110に戻される複数の実施形態において、発酵液体供給物流124からの生成物アルコールをより効率的に取り出すと、多段蒸留塔210への流量を少なくすることができ、そのことにより、発酵容器へ戻される底部流214の流量も少なくすることもできる。この構成では、許容できる範囲を超えて発酵の温度を不安定にすることなく、発酵容器内へ高温の底部流を戻すことが可能であり、それゆえに、普通なら従来の一段真空フラッシュタンクで許容できると見なされるであろう温度より高い温度で、多段蒸留塔の操作を行うことができる。
【0082】
多段蒸留塔210は、当業者に知られている従来の真空蒸留塔であってよい。上述の利点を実現するには、多段蒸留塔は、底部流214中の生成物アルコールの濃度の割合が、供給物124の濃度の約90%以下、供給物124の濃度の約50%以下、供給物124の濃度の約10%以下、または、複数の実施形態において、供給物124の濃度の約1%以下となるように操作される。複数の実施形態において、多段蒸留塔210は、約10℃〜約65℃の温度範囲および約0.2psia〜大気圧下の任意の圧力の圧力範囲で操作される。複数の実施形態において、多段蒸留塔210は、約25℃〜約60℃の温度範囲および約0.5〜約3psia(約0.2バール)の圧力範囲で操作される。複数の実施形態において、底部温度は約46℃であり、上部温度は約36℃である。
【0083】
上述の従来の真空フラッシュタンクの場合と同様に、多段蒸留塔への流量およびその操作は、発酵容器110内の生成物アルコールの濃度が、生成物アルコールに対する微生物の耐性を考慮して選択されたあらかじめ定められたしきい値よりも低く維持されるように選択される。したがって、底部流214またはその一部が発酵容器110へ戻される複数の実施形態において、戻りの流れにおける生成物アルコールの濃度を低く維持するのが有利である。複数の実施形態において、底部流214は、約10g/L未満、約7g/L未満、約5g/L未満、約2.5g/L未満または約1g/L未満の生成物アルコールを含む。
【0084】
複数の実施形態において、真空フラッシュ容器210(上述のように、これは真空フラッシュタンクであっても蒸留塔であってもよい)への発酵液体供給物の中に二酸化炭素が存在すると、後で行うアルコールの回収(特に凝縮による回収)が複雑なものとなりうる。容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を減少させるかあるいは実質的になくしてしまうために、本明細書で提供する複数の実施形態において、大気圧から容器210におけるフラッシュの圧力までの間の中間の圧力で発酵液体から二酸化炭素を事前フラッシュすることができる。例えば、本明細書に記載のいずれのプロセスでも、発酵液体は、部分真空に維持されたタンクに供給してよく、その部分真空は、水およびアルコールを沸騰させるには不十分な低圧であるが、供給物からの二酸化炭素の少なくとも一部を、得られる蒸気中に事前フラッシュするには十分な低圧である。例えば、0.2〜0.8気圧で事前フラッシュする場合、得られる蒸気をさらに処理する必要が生じうる。そのような処理としては、圧縮を挙げることができ、実施形態によっては、二酸化炭素(また、関連した水およびアルコールすべても存在)を含む得られた蒸気を、大気に放出する前に冷却することも挙げることができる。他の実施形態では、二酸化炭素は、不凝結ガス(空気または窒素など)と一緒に発酵液体から一部ストリッピングすることができる。例えば、発酵液体は、大気圧付近で操作される多段の蒸気−液体接触器中で不凝結ガスと向流接触させることができる。一例として、三段向流塔を使用でき、これは、空気の質量単位対二酸化炭素(塔の上部に供給される発酵液体中のもの)の質量単位が0.2〜5.0の比率で、下部において滅菌圧縮空気を受け入れる。次いで、空気がストリッピングされた二酸化炭素、およびある量のアルコールおよび水を処理して(例えば、スクラビングして)、このアルコールを取り出してから大気中に排出できる。本明細書に記載した実施形態にしたがってそのようにある量の二酸化炭素を除去すると、真空フラッシュ容器210内に生じるアルコール蒸気の下流回収に対して二酸化炭素がもたらしうる複雑さを低減することができる。
【0085】
図9は、二酸化炭素の少なくとも一部がフラッシュ容器210の上流で発酵供給物からガスストリッピングされる例示的プロセス600を示す。図9を参照すると、マッシュ、酵母および栄養素の流れ125は発酵容器110に送り込まれる。二酸化炭素を含む流れ122は発酵容器110から水スクラバーシステム(図示せず)へ排出される。発酵液体の流れ124は、加熱器111で加熱され、ポンプ(図示せず)で多段向流ガスストリッパー205に送り込まれる。流れ124は、不凝結ガス(好ましくは、不活性ガス)の流れ220と接触させられる。実施形態によっては、ガス流220は空気または窒素である。ストリッパー205内の段数およびストリッピングガス220と発酵液体124との混合比(mass flow ratio)を変えることにより、実施形態によっては、発酵液体中の二酸化炭素の少なくとも約50%を除去できること、他の実施形態では、発酵液体中の二酸化炭素の少なくとも約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%を除去できることは、当業者にとっては明らかなはずである。ストリッピングガス220とストリッピングされた二酸化炭素とを含む流れ222は、ガスストリッパー205から排出される。流れ222は、例えば、流れ22を水スクラバーシステム(図示せず)に送り込むことにより、さらに処理できる。
【0086】
二酸化炭素をほとんど含まない発酵液体の流れ124’を、真空フラッシュ容器210と吸収塔310とを含んでいる多区画容器325へ、弁117を介して送る。図9の実施形態では、フラッシュ容器210は、多区画容器325の1区画である真空フラッシュタンクである。フラッシュタンク内で発生した、生成物アルコールを多く含んだ蒸気は、多区画容器325の第2の区画へ入って、冷たい吸収剤液体流324’にさらされ、それによって蒸気のかなりの吸収が引き起こされる。吸収されなかった残留蒸気および不活性ガスは、多区画容器325から流れ328によって排出され、その後、それは圧縮トレーン(compressor train)(図9に図示せず)を介して運ぶことができる。圧縮トレーンの中では、蒸気流328が中間冷却器を備えた圧縮機によって送られ、水スクラバーシステムによって排出された。例えば、この圧縮トレーンは、図8Aを参照しながら実施例9で以下に示し説明されているものと似たものであってよい。吸収液体の液体再循環流322は多区画容器325から抜き取られ、高速で冷却器301を通って循環させられて吸収熱が除去され、冷たい吸収剤液体流324’の一部として多区画容器325へ戻される。吸収剤の多い流れ323は再循環322の循環ループから抜き取られ、再生プロセスによって再生される。再生された吸収液体は、流れ432を介して循環ループに戻され、冷却器301で冷却され、冷たい吸収剤液体流324’の一部として多区画容器325に戻される。再生プロセス(図9に示されていない)は、図7Aに関連して実施例8で以下に示され説明されているものと似たものであってよい。
【0087】
発酵液体214(部分的にアルコールをほとんど含まない)は、多区画容器325の真空フラッシュタンクからポンプで送り出される。発酵液体214の部分215は、生成物アルコール、水および非発酵性物質(nonfermentables)を回収するために更なる生成物アルコール回収システムへ進めることができ、発酵液体214の残り214’は、発酵容器へ戻してその中の糖類をアルコールの産生のためにさらに発酵させることができる。
【0088】
本発明の範囲から逸脱することなく、図9の実施形態における多区画容器325の真空フラッシュタンクの代わりに真空塔を用いることができることは、当業者にとって明らかなはずである。また、フラッシュ容器210および吸収塔310は、多区画容器325に組み込むのではなく、図1のプロセス100と同様に、管で接続された別個の容器にすることができることも明らかなはずである。同様に、複数の実施形態において、本明細書で提供するプロセスのいずれも(図1のプロセス100を含む)、別の方法として、フラッシュ容器210および吸収塔310が上述の多区画容器325などと同じ容器に組み込まれるように構成することができる。
【0089】
また、本明細書で提供するプロセスはいずれも、PCT国際公開第2010/151832A1号パンフレットに記載されているものなど、他の蒸発プロセスと組み合わせて操作できる。
【0090】
本明細書で提供するプロセスのいずれも、発酵の間のどの時点でも操作および開始でき、ブタノールまたは他の生成物アルコールを発酵から取り出すのに使用できる。一実施形態では、プロセスは発酵の開始と同時に開始される。他の実施形態では、プロセスは、発酵容器内の生成物アルコールの濃度が少なくとも約8g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約25g/L、または少なくとも約30g/Lであるときに開始される。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは発酵の過程全体にわたって繰り返される。複数の実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、発酵容器内の生成物アルコールの濃度が事前選択しきい値未満に維持されるように繰り返される。
【実施例】
【0091】
実施例1〜4は、特定の吸収流体が二酸化炭素、イソブタノールおよび水の揮発性を実質的に減少させる力を測定することを目的としている。選択した吸収流体は、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、およびエチレングリコールと炭酸カリウムとを含む混合物であった。これらの実験用の試薬を表1に示す。実施例5は、吸収流体を使用しない比較例である。
【0092】
PTx法として知られる方法を使用した。PTx法の用法については、”Phase Equilibrium in Process Design”(Wiley−Interscience Publisher,1970,written by Harold R.Null,pages 124 through 126)(本明細書に援用する)に記載されている。PTx法では、既知の容積の槽における全絶対圧を、種々の既知の投入組成物について一定温度で測定する。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1〜5の二酸化炭素は、液相中の二酸化炭素が99.99%という仕様のPraxair製品であるCD 4.0 IS−T(GTS/Welco,Allentown,PA)であった。
【0095】
これらの実験に使用する脱イオン水は、備蓄されていたものであった。脱イオン水の伝導率は、実施例と関連しているとは考えられなかった。
【0096】
静止槽であるPTx装置200の概略図を図2に示す。72.73cm3のフランジ付サファイア静止槽700を、RTD 703、電力供給704、加熱器705およびEurotherm 2604 温度調節器706を備えた、撹拌701電熱Syltherm−800(登録商標)恒温槽702(これは温度を±0.01℃に制御した)中に沈めた。静止槽は磁気駆動式ミキサー710を含んでいた。
【0097】
このミキサー710は、Hastelloy Cで構成されたRhustonの6枚羽タービンを備えていた。ガスは、磁石の中央の穴を通って中空炭素ブッシングを経て、中空シャフトへ取り込まれる。液体とガスとの間の平衡到達を促進するため、シャフトを下って2つの直角穴へと、ベーパースペースからタービンへ、ガスが循環されるようにした。
【0098】
この静止槽は漏れを起こさないようになっていた。出入口715は、弁716を介して真空ポンプ717(Gardner Denver Thomas,Inc.,Welch Vacuum Technology,Niles,IL;モデル1376N)に接続されており、出入口725は精密圧力変換器726(Druck モデル ♯ PDCR330;Keller America,Inc.,Newport News,VA)に接続されており、出入口730は、二酸化炭素用の供給ポンプ731に接続されていた。CO2供給ポンプ731(Model 87−6−5;High Pressure Equipment Company,Erie PA)は、指定圧力で±0.001cm3まで分かる量を供給するのに十分正確であった。CO2供給ポンプ731内の圧力は、圧力変換器732(Paro Scientific,Inc.Model 740;Redmond,WA)で測定した。CO2供給ポンプ731も温度の制御された水槽733の中にあり、弁734で静止槽から分離することができた。組成物はすべて特に記載のない限り、全重量に対する成分として示されている。
【0099】
実施例1:吸収液体MEA
既知の温度での圧力と組成の関係は、既述の装置200で以下のように測定した。
【0100】
6.99%のイソブタノール、20.01%の脱イオン水および72.99%のMEAの混合物51.967グラムを、静止槽700に充填し、磁気駆動式ミキサー720を始動した。槽操作温度は44.42℃であり、液体充填量は51.967グラムであった。液体混合物を、槽の圧力がさらに低下しなくなるまで、真空ポンプ717に接続された開口部弁716でゆっくりガス抜きした。その後、弁716を閉じた。ガス抜きの手順は、槽の圧力が時間とともに変化しなくなるまで繰り返し、変化しなくなったら真空ポンプ717への弁716を閉じた。漏れがないことは、少なくとも10分間、静止槽700内において大気圧未満で一定になっていることを観察して確かめた。槽700を浴702と共に目的の温度まで加熱した。
【0101】
既知の圧力および温度で測定された量の二酸化炭素を槽700に送り込み、槽の圧力が一定のままになるまで槽の内容物を撹拌した。この槽の圧力を書き留めた。既知の量の更なる二酸化炭素を加え、槽の一定圧力を再び書き留めた。目的の量の二酸化炭素が加えられるまでこのステップを繰り返した。データ分析の目的で、既知の温度および圧力における二酸化炭素の量を、文献のNIST 14,Thermodynamics and Transport Properties of Fluids,NIST Standard Reference Database 14,Version 4を用いて質量に変換した。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例2:吸収液体MEA
槽操作温度が44.46℃であり、液体組成物が7.24%のイソブタノール、20.57%の水、72.2%のモノエタノールアミンであり、液体充填量が49.925グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
実施例3:吸収液体MDEA
槽操作温度が44.45℃であり、液体組成物が4.99%のイソブタノール、12.01%の水、および83%のメチルジエタノールアミンであり、液体充填量が52.087グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例4:吸収液体としてのエチレングリコールと炭酸カリウムとの混合物
槽操作温度が44.52℃であり、液体組成物が6.86%のイソブタノール、18.1%の水、9.04%の炭酸カリウム、および66.01%のエチレングリコールであり、液体充填量が56.297グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0108】
【表5】
【0109】
比較例5:吸収液体が存在しない場合
同じ槽を使用して、CO2を脱イオン水に加えた対照実験も行った。槽操作温度が49.4℃であり、液体組成物が100%の脱イオン水であり、液体充填量が53.919グラムであった以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0110】
【表6】
【0111】
実施例1〜4で用いた吸収剤溶液の蒸気圧は、実施例5の水単独の蒸気圧より低かった。吸収液体の非存在下でかなり少量の二酸化炭素を水に加えると(例えば、53.919グラムの水に0.01223グラム)、実施例5から見て分かるように静止槽の圧力がかなり増大した。したがって、45℃付近および2psia未満で操作される、水のみを含む吸収器では、水吸収液体の単位量当たり、少量の二酸化炭素しか凝縮しないであろう。冷却凝縮と圧縮機との組合せによっては、吸収液体として水しか含まない真空フラッシュから二酸化炭素をパージすることが求められるであろう。エチレングリコールおよび炭酸カリウムの吸収液体またはメチルジエタノールアミン吸収液体を70%より上の濃度で含む吸収器では、約45℃および2psiaにおいて、吸収液体の単位量当たり、水よりも多くの二酸化炭素が凝縮されるであろう。モノエタノールアミンを70%〜75%の濃度で含む吸収剤では、45℃付近および2psiaにおいて、スクラビング溶液の単位量当たり、ずっと多くの二酸化炭素が凝縮されるであろうし、また二酸化炭素の単位量当たりの必要な吸収剤は他の実施例より少ないであろう。
【0112】
実施例6:CO2の吸収および放散(desorption):吸収液体MEA
この実施例の目的は、吸収剤溶液の1つであるモノエタノールアミンにおける二酸化炭素の吸収とその後の放散を実証することであった。
【0113】
この実施例は、DiComp,Diamond ATR Probeを用いたMettler−Toledo REACT IR モデル1000 In−Line FTIR(Mettler−Toledo)を装備した、1.8LのHC60 Mettler RC1の撹拌およびジャケット付カロリメーター(Mettler−Toledo Mid Temp,Mettler−Toledo Inc.,Columbus,OH)を使用して、展開した。Diamond ATRプローブをRC1反応器に挿入し、Swagelokフィッティングで密封して気密シール(pressure tight seal)を形成した。
【0114】
カロリメーター内の圧力は、Dynisco圧力変換器およびRCプレスデータ記録計(RC press data recorder)および制御系を統合したものによって測定し、記録した。CO2シリンダーの重量、反応器の内容物の温度、ジャケットの温度および反応器圧力を同様にRC1の構成要素によって測定し、RC1ソフトウェアで記録した。CO2の重量は、2Aシリンダーからのずれにより、+または−0.5グラムまで求めた。
【0115】
以下に記載したキャリブレーションおよび吸収/放散実験で用いた物質は、モノエタノールアミン、CAS 141−43−5(カタログ番号:398136、純度>99%;Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO);2−メチルプロパン−1−オール、CAS番号78−83−1(Sigma−Aldrich カタログ番号53132−1L(純度99.50%);およびCO2(純度99.8%)(Airgas East,Salem,NH;規格CGA G−6.2 Grade H)であった。
【0116】
FTIRのキャリブレーション
547.5gのモノエタノールアミンと52.5gの2−メチルプロパン−1−オールと150.0gの脱イオン水とを含む溶液750.0gを、600rpmで撹拌しながら、RC1カロリメーターに加え、45℃に加熱した。反応溶液を、200sccmの速度で2時間、浸漬管により99.9999%の純粋な窒素ガスのサブサーフェス(subsurface)でパージした。窒素の流れを停止してから、Welchモデル1402真空ポンプ(Gardner Denver Thomas,Inc.,Welch Vacuum Technology,Niles,IL)を用いて、容器を0.05バールの圧力までポンプダウンさせた。次いで、真空密封された反応器中のガス抜き流体を、0.10バールおよび45℃においてCO2にさらした。直径が1/8インチのステンレス鋼の浸漬管を用いて、表面の下の反応器にCO2を送り込んだ。35gのCO2が吸収されるまでCO2を5gの一定分量ずつを加えた。それぞれ5gの増分単位でさらにCO2を加える前に、FTIRスペクトルが描かれるようにした。
【0117】
実験中、2分ごとに中赤外線スペクトルを得た。モノエタノールアミンへのCO2の吸収により、多数のIR吸収のある重炭酸塩錯体が形成される(図3を参照)。1309cm−1付近のバンドを選択して、この実験の過程を追跡した。一変量アプローチ(univariate アプローチ)を使用して、1309cm−1のピークを追跡し、ベースラインは1341cm−1から1264cm−1の間で引かれていた。2点ベースライン
に対する吸収度を使用して、重炭酸塩キャリブレーションプロットと温度依存プロットの両方を作成した。1309cm−1での吸収CO2対ピーク高さを図4に示す。
【0118】
CO2が吸収された溶液を密封容器内で加熱し、ずっとピーク高さを監視した。温度対ピーク高さのキャリブレーションが生成されたので、それを図5に示す。
【0119】
上記のキャリブレーションの後、吸収および放散を実証するための実験を行った。547.5gのモノエタノールアミンと52.5gの2−メチルプロパン−1−オールと150.0gの脱イオン水とを含む溶液750.0gを、800rpmで撹拌しながら、45℃でRC1カロリメーターに加えた。反応溶液を、200sccmの速度で2時間、外径が1/4インチ、IDが0.18の浸漬管により、99.9999%の純粋な窒素ガスのサブサーフェスでパージした。次いで、Welchモデル1402真空ポンプを使用して、容器を0.05バールの圧力までポンプダウンさせた。ガス抜きされた流体を45℃で二酸化炭素にさらした。外径が1/4インチのステンレス鋼の浸漬管を用いて、表面の下の反応器にCO2を送り込んだ。合計でおよそ35gのCO2が反応器に取り込まれるまで、ほぼ6分間、6g/分のほぼ一定速度でCO2を取り込んだ。反応器内のフリーボードは約0.75リットルであると推定されたので、こうした条件下でのベーパースペース内のCO2の量は0.1g以下と計算された。そのため、35gのうちのおよそ34.9gが溶液に吸収されたことになる。反応器の圧力は、CO2が加えられた後70mmHgであった。
【0120】
反応塊を1℃/分で150℃まで加熱した。温度が118℃に達したとき、圧力はおよそ1.1バールであった。ベント管路を開け、反応器から、ブラインで冷却された垂直実装凝縮器(−15℃)へ蒸気を放出した。凝縮器の下部が分液漏斗に接触していて、その分液漏斗の下部出口は、反応器中の溶液の沸点を調整することにより最終的に望ましい反応温度が達成されたなら、一定温度を維持するために容器に戻る方向に開けた。このようにして、モノエタノールアミン溶液から解放されたCO2は、このプロセスから排出されるが、凝縮液体は戻された。垂直に取り付けられた凝縮器の上部からのベント管路は、バブラーに取り付けた。またバブラー内の泡の形成は、CO2が反応器から発生していることを示すものとなった。さらに、インラインFTIRでは、CO2とモノエタノールアミンとの反応による重炭酸塩の化学種または錯体の形成を示す1309cm−1の波数のピークを監視した。FTIRのピークプロファイルは、約2.5時間のうちにモノエタノールアミンピークからCO2が完全に放散し、60%を超える放散CO2が約1/2時間のうちに再生されたことを示した。2.5時間後に、1309cm−1のピークがその元のベースライン値に戻った。これはすべてのCO2がモノエタノールアミン溶液から放散されたことを示す。バブラーも、2.5時間後にはガス発生の証拠を示さなかった。
【0121】
この実施例は、吸収剤溶液を利用すれば、二酸化炭素を吸収し、次いで再生されるようにすることができることを実証している。
【0122】
実施例7:ASPENモデル:エチレングリコールと炭酸カリウムとを含む吸収液体
本明細書に記載のプロセスは、プロセスの計算モデルを用いて実証できる。米国特許第7,666,282号明細書に記載されているように、プロセスモデリングは、複雑な化学過程をシミュレートするために技術者らによって使用される確立された方法論である(これを本明細書に援用する)。市販のモデリングソフトウェアであるAspen Plus.RTM(Aspentech,Burlington,Massachusetts 01803)を、DIPPRなどの物理的性質のデータベース(the American Institute of Chemical Engineers,Inc.( New York,N.Y.)から入手可能)と一緒に使用して、ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセスのASPENモデルを開発した。
【0123】
モデルの入力データを表7に明示してある。本発明を説明するこのモデルのサブセットは、モデルプロセス300の流れ図を示す図6Aを参照することにより、もっともよく理解される。説明されているプロセス300から得られる流れおよび出力データを、図6Bおよび6Cとしてそれぞれ示されている表8Aおよび8Bに示す。バッチ発酵は、平均流量を使用した定常状態連続プロセスとしてモデル化した。
【0124】
図6Aに関して言えば、マッシュ流れ23MASH(123)および生体触媒流れYEAST(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流112VAP(122)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビール流れ114BEER(114)(31.4℃に加熱されている)は、絞り弁117を通して送り、流れ113BEER(124)として真空フラッシュ容器210(この実施例ではフラッシュタンクである)へ入るようにされる。フラッシュタンク210は、0.1バールであり、これによりビールフラッシングの一部が得られ、温度が28℃まで低下する。流れ113BEER(124)の流量および温度は、発酵容器110内のブタノール濃度が0.025重量分率を確実に超えないように選択される。この実施例では、フラッシュされたビール流れ115BEER(214)のブタノールと流れ113ビール(124)のブタノールとの比率は0.85である。
【0125】
フラッシュされたビール流れ115BEER(214)は分けられて、(i)流れ24BEER(119)(ブタノール回収用の更なるブタノール回収システム(図示せず)への、非発酵物質と副産物のパージ流れの平均流量をシミュレートする)、および(ii)発酵容器110へ戻される、酵母および非発酵糖類の再循環流116REC(116)になる。
【0126】
流れ67VENT(212)は、ブタノールが31.8重量パーセントまで増やされたフラッシュタンク210からの蒸気(露点が28℃である)であり、これは、41.2℃の下部温度で操作されている間にほとんどすべての蒸気が吸収される真空吸収塔310へ向けられる。流れVENT(328)は、不凝結物質(noncondensibles)を含み、質量流量がほとんどゼロである(真空装置へ空気の漏れをある程度表す)が、これが圧縮されて水スクラバー(図示せず)を通って大気へ放出される。
【0127】
真空吸収塔310には、吸収剤の2つの流れ、つまり吸収液体流RICH1B(324)とLEAN(320)が供給される。この実施例では、吸収剤は、炭酸カリウムと重炭酸塩とを含むエチレングリコールである。流れRICH1B(324)は、吸収熱のほとんどまたはすべてを除去するために十分冷却された後に吸収塔310の下部から再循環される吸収剤である。流れLEAN(320)は、以下に説明する再生プロセスから戻される吸収剤であり、二酸化炭素、ブタノールおよび水がほぼ完全に吸収されたことを確認するのに十分な量である。一緒にした底部流RICH(322’)は、分けられて、供給流れRICH1B(324)と流れRICH3(323)(加熱され、吸収剤再生塔(ストリップ塔410として働く)に向けられる希釈された吸収剤である)にされる。
【0128】
再生塔410には、基部から熱が供給されるが、その熱の供給は、二酸化炭素およびブタノールのほとんどすべてならびに十分な水を蒸発させるのに十分な量の蒸気との間接的交換により行われて、定常状態組成が維持される。塔の底部流LEAN1(432)は熱統合によって冷却され(一部は流れRICH3(323)の熱遮断による)、流れLEAN(320)として吸収塔310へ戻される。
【0129】
流れVAPOR(440)は、1気圧で再生塔410から出て行き、部分的に凝縮され、(蒸気−液体分離器505で)分離されて流れCOLVENT(442)を生じる。この流れは、水スクラバー(図示せず)を通って放出される二酸化炭素パージである。凝縮液の流れCONDENSE(444)は、ポンプ(ポンプは示されていない)を使用して凝縮液デカンター容器510へ送られ、本明細書では記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカントされる。デカンター510では、上側の有機層BUOH(548)が生じ、これは精製のためにブタノール塔(図示せず)へ送られ、最終的に、市販される。下側の水層AQUEOUS(546)は、還流として再生塔410へ戻される。液相のサイドドロー(side draw)は、還流添加点と供給物添加点の間にある再生塔410から取り出される。このサイドドロー流れWATEROUT(450)は、さらにブタノールを回収するために、ポンプでビール塔(図示せず)へ送られる。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
【表9】
【0133】
この実施例は、吸収温度が蒸気流の露点よりも13℃高いことを示している。流れ67VENT(212)と流れVENT(328)を比較すると、二酸化炭素を含む99%を超える蒸気流が吸収に吸収されることが分かる。さらにこの実施例は、吸収液体は、本明細書に記載のプロセスを用いて再生できることを示している。
【0134】
実施例8:ASPENモデル:多段蒸留塔での蒸発およびエチレングリコールを含む吸収液体
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセスのASPENモデルを開発した。モデルの入力データを表9に示す。このモデルを、モデルプロセス400の流れ図を示す図7Aを参照しながら説明する。説明されているプロセス400から得られる流れおよび出力データを、図7Bおよび7Cとしてそれぞれ示されている表10Aおよび10Bに示す。バッチ発酵は、この実施例では、平均流量を使用した定常状態連続プロセスとしてモデル化した。
【0135】
図7Aに関して言えば、マッシュ流れ23MASH(123)、および生体触媒流れYEAST(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流68CO2(122’)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。1リットル当たり25グラムのブタノールを含むビールが、大気解放タンク(atmospheric disengagement tank)112を介して送られる。このタンクではビールからの蒸気が流れ68CO2(122’)によって排出されるが、その流れは、発酵容器110および解放タンク112から排出された蒸気を一緒にした流れである。次いで、循環されるビールは加熱されて流れ26BEER(124)を生じ、それは真空フラッシュ多段蒸留塔215(図1のプロセスの真空フラッシュ容器210に対応する)に送り込まれる。塔215の上部の圧力は0.07気圧であり、ガス流のブタノール濃度は34.5質量%である。塔215は間接的に加熱される。塔215の段数、塔215への入熱および流れ26BEER(124)の流量は、発酵容器110中のブタノールの濃度が事前選択しきい値である0.025重量分率を確実に超えないように選択される。1リットル当たり0.3グラムのブタノールを含む真空フラッシュ塔215の下部物質(bottoms)は、分けられて、(i)更なる糖を発酵させてブタノールにするために発酵容器110に戻される流れ28RCY(128)と、(ii)水再生およびトウモロコシ蒸留粕(Distiller’s Dried Grains with Solubles)(DDGS)製造プロセス(図示せず)へ向けられる流れ29BEER(129)とになる。本明細書に記載の方法では、DDGSを汚染しうる化合物は、他の生成物除去プロセスとは対照的にそのような副生成物の流れから分離される。それゆえに、本明細書に記載した生成物回収方法を含む発酵に更なる利点がもたらされうる。
【0136】
ブタノールが34.5重量パーセントまで増やされた蒸気流30BOV(212)が、フラッシュ塔215から真空吸収塔310へ向けられる。吸収塔310では、およそ67%の水とブタノールが蒸気流30BOV(212)から吸収されるが、二酸化炭素はほとんど吸収されない。吸収塔310からの蒸気流328が冷却され、凝縮液流れ32COND(844a)が(蒸気−液体分離器805で)残留蒸気から分離される。分離器805の後で、残留蒸気流34VAP(342)が圧縮され、再び冷却され、凝縮液流れ38COND(844b)が(蒸気−液体分離器806で)残留蒸気から分離され、残留蒸気流は水スクラバー(図示せず)に向けられる流れ40VAP(344)を生じる。
【0137】
真空吸収塔310には、吸収剤の2つの流れである吸収液体流324および320が供給される。この実施例では、吸収剤は、炭酸カリウムも他の塩基も含まないエチレングリコール(グリコール)である。流れ324は、吸収熱のほとんどまたはすべてを除去するために十分冷却された後に吸収塔310の下部から再循環された吸収液体である。流れ320は、以下に説明する再生プロセスから戻される吸収液体である。一緒にされた底部流322’は流れ324および流れ323を供給するために分けられる。流れ323は、加熱されて吸収再生塔410に向けられる、希釈吸収液体(または溶質を多く含んだ溶液)である。
【0138】
吸収再生塔410には、基部において、ブタノールおよび水を蒸発させるのに十分な量の蒸気と間接熱交換することにより熱が供給され、定常状態の組成が維持される。塔の底部流432を熱統合によって冷却し(流れ323の熱遮断を一部含む)、流れ320として吸収塔310へ戻される。
【0139】
蒸気流440は、1気圧で再生塔410から出て行き、他の蒸気と一緒にされ、部分的に凝縮され分離されて(蒸気−液体分離器505で)、流れCOLVENT(442)を生じる。この流れは、水スクラバー(図示せず)を介して放出される二酸化炭素パージである。凝縮液流れCONDENSE(444)は、ポンプ(ポンプは示されていない)を使用して凝縮液デカンター容器510へ送られ、本明細書では記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカントされる。デカンター510では、上側の有機層47ORG(548)が生じ、これは精製のためにブタノール塔(図示せず)へ送られ、最終的に、市販される。下側の水層48AQ(546)は一部が還流として(図示せず)フラッシュ塔215へ戻され、一部が再生塔410用の還流(図示せず)として使用される。
【0140】
【表10】
【0141】
【表11】
【0142】
【表12】
【0143】
この実施例は、多段蒸留塔を使用すると、発酵タンク中のブタノール濃度を事前選択しきい値である2.5質量パーセント以下に維持したまま、ブタノールと一緒に取り出される二酸化炭素の量を減らすことができることを示している。また、多段蒸留塔は、塔の供給物中のブタノール濃度が、発酵容器へ戻される底部流のブタノール濃度よりも80倍より大きくなるように操作される。さらに、吸収液体の使用(ここでは、エチレングリコールを塩基なしで使用)により、40.9℃の初期凝縮温度での大気圧未満の(sub−atmospheric)蒸気のおよそ65質量%の吸収が可能になり、これは吸収液体の非存在下での大気圧未満の蒸気流の初期凝縮温度(すなわち、37.7℃)より高い。
【0144】
実施例9:多段蒸留塔の実施例(吸収ステップなし)
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセス500のASPENモデルを開発したので、それを、図8Aを参照しながら説明する。流量はすべて、たとえ非連続であってよい場合でも、時間平均としてモデル化した。モデルの入力データを表11に示し、結果を図8Bおよび8Cでそれぞれ示されている表12Aおよび12Bに示す。
【0145】
図8Aに関して言えば、マッシュと栄養素の流れ23MASH(123)、および生体触媒のYEAST流れ(121)が発酵容器110に送り込まれる。蒸気流68CO2(122’)(二酸化炭素、水およびブタノールを含む)は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビールは、110の発酵容器から真空ビール塔120へ(大気解放タンク112を介して)十分な速度で循環させて、ビール中のブタノール濃度が事前選択しきい値の目標値(この場合は2.5重量%)を確実に超えないようにする。大気解放タンク112)では、ビールからの蒸気が排出され、蒸気流68CO2(122’)と一緒にされる。次いで循環されるビールは加熱されて流れ26BEER(124)を生じ、これは大気圧未満の多段ビール塔120に送り込まれる。供給点および段数は、ビール塔設計の当業者が最適化できる。このモデルでは、ビール塔120の理論段数は6であり、供給は段♯1に対応する。十分な熱が低圧蒸気の形でビール塔120の底部から加えられて、ビールのブタノール含有量が98%を超えて低減される。この例では、塔120の上部の圧力は1psiaである。
【0146】
ビール塔の底部流27BOT(127)は、ビール塔120においてブタノールがかなりストリッピングされ、流れ27BOT(127)の一部(約70%)が、炭水化物をブタノールへさらに変換するために再循環流28RCY(128)として発酵容器110へ戻される。ストリッピングされたビールの残り(流れ29BEER(129))は、当該技術分野において知られているタイプのDDGSシステム(図示せず)へ送られるが、これは懸濁させられた固体および他の不純物の集積を制御するのに必要でありうる。
【0147】
ビール塔120からの蒸気流30BOV(130)(ブタノールが濃縮されている)は冷却され、液体凝縮液流れ32COND(132)および蒸気流34VAP(134)は真空蒸気−液体分離器905で分離される。残りの蒸気は圧縮トレーンを介して運ばれるが、そのトレーンの中で蒸気は圧縮、冷却、分離が(それぞれの圧縮機906、蒸気−液体分離器915、圧縮機907、および蒸気−液体分離器925で)2回行われ、分離器915および925から更なる凝縮液流れ37COND(137)および43COND(143)が生じる。この圧縮トレーンからの残留蒸気流40VAP(140)は大気圧より高く、水スクラバー(図示せず)に送られてから大気へ排出される。凝縮液流れ32COND(132)、37COND(137)および43COND(143)は、本明細書には記載されていない更なる流れと一緒にされ、デカンター515中においてデカントされる。デカンター515からの水を多く含む下相508はビール塔120へ戻される。デカンター515からの有機物を多く含む上相506は、精製のためにブタノール回収塔(図示せず)へ送られ、最終的に市販される。
【0148】
【表13】
【0149】
【表14】
【0150】
この実施例は、大気圧未満のビール塔120および圧縮トレーンを介した場合のほんの961kg/hと比べて、ビール塔中での効率的なブタノールのストリッピングにより、CO2が20002kg/hで発酵容器110および任意選択の大気フラッシュタンク(すなわち、大気解放タンク112)から排出できるような流量が可能になることを示している。それゆえに、圧縮機は小さくなり、もっと多くの割合のCO2が大気圧未満のビール塔120から排出される場合よりも必要エネルギーが少なくなるであろう。また、多段蒸留ビール塔120は、底部流127中のブタノール全体が、供給流124中のブタノール全体の約1%となるように操作される。
【0151】
実施例10:真空フラッシュ前のエアストリッピング
ブタノールの発酵、精製および水の統合管理プロセス700のASPENモデルを開発したので、それを、図10Aを参照しながら説明する。流量はすべて、たとえ非連続であってよい場合でも、時間平均としてモデル化した。モデルの入力データを表13に示し、結果を図10Bおよび10Cでそれぞれ示されている表13Aおよび13Bに示す。
【0152】
図10Aに関して言えば、マッシュと栄養素の流れ125、および生体触媒(図示せず)が発酵容器110に送り込まれる。二酸化炭素、水およびブタノールを含む蒸気流122”は、発酵容器110から排出され、ブタノール回収スクラバー(図示せず)に向けられる。ビールは110の発酵容器から循環される。部分415は、非発酵性物質をパージするためにビール塔(図示せず)に向けられる。部分124は、ビール中のブタノール濃度が事前選択しきい値の目標値(この場合は、2.5重量%)を確実に超えないように、十分な速度でエアストリッパー210へ向けられる。二酸化炭素は、2308kg/hの空気が送られる三段塔でビールからストリッピングされる。ストリッピングガスの流速および段数は、ストリップ塔設計の当業者が最適化できる。十分な熱を加熱器360で加えて、フラッシュタンク325(以下に記載)の温度を32Cに維持する。ビールは、絞り弁117を介して容器325の下側区画へ送られ、そこで、0.05atmの圧力でフラッシュされ、ブタノール、二酸化炭素および水の蒸発が引き起こされる。ブタノールが濃縮されたこれらの蒸気は、容器325の区画310’へ移り、そこで20Cで一部凝縮される。凝縮液が310’から取り出され、冷却器401を介してポンプで送られ、流れ424’によって戻されて凝縮温度が維持される。凝縮液の一部(323’)が、循環ループから取り出され、さらに処理されて、示されていない設備で再利用に適した生成物ブタノールおよび水が生み出される。残りの蒸気である流れ428が圧縮トレーンを介して運ばれ、そのトレーンにおいて、実施例8に記載されているように圧縮、冷却、分離が2回行われる。
【0153】
フラッシュタンクでフラッシュされなかったビールは、ポンプ(図示せず)を使用して流れ414によって栄養素が更なる発酵のために発酵容器に戻される。
【0154】
【表15】
【0155】
この実施例は、発酵容器の後かつフラッシュより前のビールのエアストリッピングにより、フラッシュからの蒸気中のCO2含有量が減少することになることを示している。その結果として、フラッシュからの蒸気が、20C程度の温度でより完全に凝縮されうる。
【0156】
本発明の様々な実施形態を上述したが、それらは単なる例として示したものであり、限定するものではなことを理解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく、それらに対して形態および詳細に関する様々な変更を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明の幅広さと範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、以下の請求項およびそれらに相当するものにしたがってのみ定義されるべきである。
【0157】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、本発明が関係する当業者の技術レベルを示しており、またそれらを本明細書に援用するが、それは、それぞれの個別の刊行物、特許または特許出願を本明細書に具体的かつ個別に示して援用することに相当するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵液体から生成物アルコールを取り出すための方法であって、
(a)発酵液体供給物を少なくとも部分的に蒸発させるステップが、蒸気流を生成させ、発酵液体供給物および蒸気流がそれぞれある量の水、生成物アルコールおよびCO2を含む、該ステップと;
(b)真空条件下で蒸気流を吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、該ステップと;を含み、
吸収された蒸気流の一部が、それぞれの水、生成物アルコールおよびCO2のある量を含み、
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度より高い、上記方法。
【請求項2】
(a)の蒸発ステップが、
(i)発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;
(ii)発酵液体供給物をある流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;
(iii)発酵液体供給物を蒸留して、生成物アルコールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップが、約45℃以下の温度で蒸気流の生成を可能にするのに大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、該ステップと;
(iv)任意選択的に、塔底流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップが、塔底流中の生成物アルコールの濃度が発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の約90%以下である、該ステップと;
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)の蒸発ステップおよび(b)の接触ステップを約0.2バール未満の圧力で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)の蒸発ステップおよび(b)の接触ステップを約0.1バール未満の圧力で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸気流の少なくとも約90%が吸収液相に吸収される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも少なくとも約10℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
吸収液相への蒸気流の吸収の開始温度が少なくとも約30℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生成物アルコールがブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生成物アルコールがイソブタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
吸収液体が、大気圧で水の沸点より少なくとも約30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
吸収液体が炭酸カリウムとエチレングリコールとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
吸収液体がグリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
グリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはそれらの混合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
吸収液体がエチレングリコールを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機分子がアミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
アミンが、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
吸収液体が、MEA、AMP、MDEA、またはそれらの任意の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
吸収液体がMEAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
吸収液体がAMPを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
吸収液体がMDEAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
吸収液体が、MEA、AMP、およびMDEAのうちの少なくとも2種類の混合物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
蒸気流中のCO2に対する吸収液体のモル比が約1より大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
水、生成物アルコール、およびCO2のかなりの部分を吸収液体から取り出すのに十分な条件下で、吸収された蒸気流を含む吸収液相を蒸留するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
CO2のかなりの部分ならびに生成物アルコールおよび水の少なくとも一方またはその両方の少なくとも一部が吸収液体に吸収される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
それぞれのCO2、生成物アルコールおよび水のかなりの部分が吸収液体に吸収される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)の蒸発ステップに先だって、(i)発酵液体供給物からのCO2の一部のガスストリッピングおよび(ii)発酵液体供給物からのCO2の一部の蒸発の、一方または両方を行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
(a)の蒸発ステップに先だって、発酵液体供給物からのCO2の一部が発酵液体供給物からガスストリッピングされ、CO2の一部が、発酵液体供給物と非凝縮ガスとの向流接触によってガスストリッピングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
発酵液体から生成物アルコールを取り出すための方法であって、
(a)発酵液体を少なくとも部分的に蒸発させるステップが、蒸気流を生成させ、発酵液体および蒸気流がそれぞれある量の水、ブタノールおよび任意選択的にCO2を含む、該蒸発ステップと;
(b)真空条件下で蒸気流を吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、該ステップと;
を含み、
吸収された蒸気流の一部が、それぞれの水、ブタノールおよび任意選択的にCO2のある量を含み、
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度より高い、上記方法。
【請求項29】
吸収液体が、大気圧での水の沸点より少なくとも約30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
有機分子が、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)からなる群から選択されるアミンである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
吸収液体がエチレングリコールを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
(a)の蒸発ステップが、
(i)発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;
(ii)発酵液体供給物をある流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;
(iii)発酵液体供給物を蒸留して、ブタノールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップが、約45℃以下の温度で蒸気流の生成を可能にするのに大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、該ステップと;
(iv)任意選択的に、塔底流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップが、塔底流中の生成物アルコールの濃度が発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の約90%以下である、該ステップと;
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
発酵液体がCO2を含み、(a)の蒸発ステップが、(ii)の供給ステップより、発酵液体供給物からのCO2の一部のガスのガスストリッピングおよび発酵液体供給物からのCO2の一部の蒸発の一方を行うステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CO2の一部を、(i)の取り出しステップの後にガスストリッピングするかまたは蒸発させる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
発酵容器内の生成物アルコールの力価を事前選択しきい値未満に維持するための方法であって、
(a)発酵容器から、発酵容器内の発酵によって生じた生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を取り出すステップと;
(b)発酵液体供給物流を一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔へ供給するステップと;
(c)真空条件下、一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔内で発酵液体供給物流を少なくとも部分的に蒸発させて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流と生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップと;
(d)任意選択的に、塔底流の任意の部分を発酵容器に戻すステップと;
(e)蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収される、該ステップと;
を含み、
吸収液体が、生成物アルコールとは異なる水溶性有機分子を含む、上記方法。
【請求項36】
吸収液体への前記蒸気流の吸収の開始温度が、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高い、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
塔底流の生成物アルコールの濃度が、発酵液体供給物流中の生成物アルコールの濃度の約90%より低い、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
塔底流の生成物アルコールの濃度が、発酵液体供給物流中の生成物アルコールの濃度の約10%より低い、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
有機分子がアミンである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
有機分子がエチレングリコールである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
塔底流の生成物アルコールの濃度が約2.5g/L未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
発酵液体供給物流がCO2を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
請求項35に記載の方法であって、発酵容器中の生成物アルコールが約10g/Lに達したときに該方法を開始する、方法。
【請求項44】
請求項35に記載の方法であって、発酵液体供給物流を生成する発酵の開始と同時に該方法を開始する、方法。
【請求項45】
発酵容器内での発酵中、発酵容器内の生成物アルコールが約40g/L未満に維持されるように、ステップ(a)〜(d)を繰り返すことをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
生成物アルコールを吸収液相から回収し、吸収液相を再生する方法であって、
(a)吸収液体、水、生成物アルコール、および任意選択的にCO2を含む吸収液相を、吸収塔からポンプで送って吸収塔内の圧力より高い圧力にするステップと;
(b)任意選択的に、吸収液相を加熱するステップと;
(c)吸収液相を、ストリッピングセクションおよび任意選択的に精留セクションを含む多段蒸留塔へ送るステップと;
(d)吸収液体を含む塔底生成物、および水と生成物アルコールと任意選択的にCO2との混合物を含む蒸気相が生成するような条件下で、蒸留塔を操作するステップと;
(e)吸収液相を含む塔底生成物を蒸留塔から回収するステップと;
(f)水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を蒸気相から回収するステップと
を含む、上記方法。
【請求項47】
(g)凝縮、蒸留、デカンテーション、またはそれらの組合せによって、蒸気相の構成成分を(f)から分離させるステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(g)ステップ(d)で生じた蒸気相を少なくとも部分的に凝縮させて二液相混合物を形成するステップと;
(h)液相混合物が水相と有機相とに分離されるデカンターへ液相混合物を移送するステップと;
(i)水相の少なくとも一部をステップ(c)の蒸留塔の精留セクションへ移送するステップと;
(j)液体側流を蒸留塔の精留セクションから取り出し、生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を受け入れるよう構成された真空フラッシュ容器へそれを戻すステップと;
(k)ストリッピングセクションを含む第2の蒸留塔へ有機相の少なくとも一部を移送するステップと;
(l)第2の蒸留塔の塔底から生成物アルコールを抜き取るステップと;
(m)第2の蒸留塔の塔頂から蒸気を抜き取るステップと;
(n)蒸気が部分的に凝縮して2つの液相を生じるように(m)の蒸気を冷却させるステップと;
(o)デカンターへ(n)の液相を移送するステップと;
をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
大気圧と容器210でのフラッシュ圧力との間の中間の圧力で発酵液体からプレフラッシュすることにより、容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を実質的に減らすことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
フラッシュ容器210に先立って非凝縮ガスのストリッピングにより、容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を実質的に減らすことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
生成物アルコールがブタノールであり、ビールストリッピングに先立ってCO2、ブタノールおよび水の一部が揮発し、該部分揮発が改善されたプロセス効率を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
部分蒸発する蒸気流および吸収液体に吸収される蒸気流が、1〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記蒸気流が、10〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
蒸気相の圧力が1〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素を含み、圧力が1〜30psigである、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記圧力が0.9〜1.2気圧である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項52に記載の蒸気流。
【請求項57】
請求項9に記載の方法によって製造されるイソブタノール。
【請求項1】
発酵液体から生成物アルコールを取り出すための方法であって、
(a)発酵液体供給物を少なくとも部分的に蒸発させるステップが、蒸気流を生成させ、発酵液体供給物および蒸気流がそれぞれある量の水、生成物アルコールおよびCO2を含む、該ステップと;
(b)真空条件下で蒸気流を吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、該ステップと;を含み、
吸収された蒸気流の一部が、それぞれの水、生成物アルコールおよびCO2のある量を含み、
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度より高い、上記方法。
【請求項2】
(a)の蒸発ステップが、
(i)発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;
(ii)発酵液体供給物をある流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;
(iii)発酵液体供給物を蒸留して、生成物アルコールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップが、約45℃以下の温度で蒸気流の生成を可能にするのに大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、該ステップと;
(iv)任意選択的に、塔底流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップが、塔底流中の生成物アルコールの濃度が発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の約90%以下である、該ステップと;
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)の蒸発ステップおよび(b)の接触ステップを約0.2バール未満の圧力で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)の蒸発ステップおよび(b)の接触ステップを約0.1バール未満の圧力で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸気流の少なくとも約90%が吸収液相に吸収される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも少なくとも約10℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
吸収液相への蒸気流の吸収の開始温度が少なくとも約30℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生成物アルコールがブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生成物アルコールがイソブタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
吸収液体が、大気圧で水の沸点より少なくとも約30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
吸収液体が炭酸カリウムとエチレングリコールとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
吸収液体がグリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
グリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはそれらの混合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
吸収液体がエチレングリコールを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機分子がアミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
アミンが、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
吸収液体が、MEA、AMP、MDEA、またはそれらの任意の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
吸収液体がMEAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
吸収液体がAMPを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
吸収液体がMDEAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
吸収液体が、MEA、AMP、およびMDEAのうちの少なくとも2種類の混合物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
蒸気流中のCO2に対する吸収液体のモル比が約1より大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
水、生成物アルコール、およびCO2のかなりの部分を吸収液体から取り出すのに十分な条件下で、吸収された蒸気流を含む吸収液相を蒸留するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
CO2のかなりの部分ならびに生成物アルコールおよび水の少なくとも一方またはその両方の少なくとも一部が吸収液体に吸収される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
それぞれのCO2、生成物アルコールおよび水のかなりの部分が吸収液体に吸収される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)の蒸発ステップに先だって、(i)発酵液体供給物からのCO2の一部のガスストリッピングおよび(ii)発酵液体供給物からのCO2の一部の蒸発の、一方または両方を行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
(a)の蒸発ステップに先だって、発酵液体供給物からのCO2の一部が発酵液体供給物からガスストリッピングされ、CO2の一部が、発酵液体供給物と非凝縮ガスとの向流接触によってガスストリッピングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
発酵液体から生成物アルコールを取り出すための方法であって、
(a)発酵液体を少なくとも部分的に蒸発させるステップが、蒸気流を生成させ、発酵液体および蒸気流がそれぞれある量の水、ブタノールおよび任意選択的にCO2を含む、該蒸発ステップと;
(b)真空条件下で蒸気流を吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収されて吸収液相を形成する、該ステップと;
を含み、
吸収された蒸気流の一部が、それぞれの水、ブタノールおよび任意選択的にCO2のある量を含み、
吸収液体への蒸気流の吸収の開始温度が吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度より高い、上記方法。
【請求項29】
吸収液体が、大気圧での水の沸点より少なくとも約30℃高い沸点を有する水溶性有機分子を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
有機分子が、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、およびメチルジエタノールアミン(MDEA)からなる群から選択されるアミンである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
吸収液体がエチレングリコールを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
(a)の蒸発ステップが、
(i)発酵液体供給物を発酵容器から取り出すステップと;
(ii)発酵液体供給物をある流量で多段蒸留塔へ供給するステップと;
(iii)発酵液体供給物を蒸留して、ブタノールが濃縮された蒸気流および生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップが、約45℃以下の温度で蒸気流の生成を可能にするのに大気より十分低い圧力で蒸留が行われる、該ステップと;
(iv)任意選択的に、塔底流の任意の一部を発酵容器へ戻すステップが、塔底流中の生成物アルコールの濃度が発酵液体供給物中の生成物アルコールの濃度の約90%以下である、該ステップと;
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
発酵液体がCO2を含み、(a)の蒸発ステップが、(ii)の供給ステップより、発酵液体供給物からのCO2の一部のガスのガスストリッピングおよび発酵液体供給物からのCO2の一部の蒸発の一方を行うステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CO2の一部を、(i)の取り出しステップの後にガスストリッピングするかまたは蒸発させる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
発酵容器内の生成物アルコールの力価を事前選択しきい値未満に維持するための方法であって、
(a)発酵容器から、発酵容器内の発酵によって生じた生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を取り出すステップと;
(b)発酵液体供給物流を一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔へ供給するステップと;
(c)真空条件下、一段フラッシュタンクまたは多段蒸留塔内で発酵液体供給物流を少なくとも部分的に蒸発させて、生成物アルコールが濃縮された蒸気流と生成物アルコールをほとんど含まない塔底流を生成させるステップと;
(d)任意選択的に、塔底流の任意の部分を発酵容器に戻すステップと;
(e)蒸気流を真空条件下で吸収液体と接触させるステップが、蒸気流の少なくとも一部が吸収液体に吸収される、該ステップと;
を含み、
吸収液体が、生成物アルコールとは異なる水溶性有機分子を含む、上記方法。
【請求項36】
吸収液体への前記蒸気流の吸収の開始温度が、吸収液体の非存在下での蒸気流の凝縮の開始温度よりも高い、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
塔底流の生成物アルコールの濃度が、発酵液体供給物流中の生成物アルコールの濃度の約90%より低い、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
塔底流の生成物アルコールの濃度が、発酵液体供給物流中の生成物アルコールの濃度の約10%より低い、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
有機分子がアミンである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
有機分子がエチレングリコールである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
塔底流の生成物アルコールの濃度が約2.5g/L未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
発酵液体供給物流がCO2を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
請求項35に記載の方法であって、発酵容器中の生成物アルコールが約10g/Lに達したときに該方法を開始する、方法。
【請求項44】
請求項35に記載の方法であって、発酵液体供給物流を生成する発酵の開始と同時に該方法を開始する、方法。
【請求項45】
発酵容器内での発酵中、発酵容器内の生成物アルコールが約40g/L未満に維持されるように、ステップ(a)〜(d)を繰り返すことをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
生成物アルコールを吸収液相から回収し、吸収液相を再生する方法であって、
(a)吸収液体、水、生成物アルコール、および任意選択的にCO2を含む吸収液相を、吸収塔からポンプで送って吸収塔内の圧力より高い圧力にするステップと;
(b)任意選択的に、吸収液相を加熱するステップと;
(c)吸収液相を、ストリッピングセクションおよび任意選択的に精留セクションを含む多段蒸留塔へ送るステップと;
(d)吸収液体を含む塔底生成物、および水と生成物アルコールと任意選択的にCO2との混合物を含む蒸気相が生成するような条件下で、蒸留塔を操作するステップと;
(e)吸収液相を含む塔底生成物を蒸留塔から回収するステップと;
(f)水、生成物アルコールおよび任意選択的にCO2を蒸気相から回収するステップと
を含む、上記方法。
【請求項47】
(g)凝縮、蒸留、デカンテーション、またはそれらの組合せによって、蒸気相の構成成分を(f)から分離させるステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(g)ステップ(d)で生じた蒸気相を少なくとも部分的に凝縮させて二液相混合物を形成するステップと;
(h)液相混合物が水相と有機相とに分離されるデカンターへ液相混合物を移送するステップと;
(i)水相の少なくとも一部をステップ(c)の蒸留塔の精留セクションへ移送するステップと;
(j)液体側流を蒸留塔の精留セクションから取り出し、生成物アルコール、水、および任意選択的にCO2を含む発酵液体供給物流を受け入れるよう構成された真空フラッシュ容器へそれを戻すステップと;
(k)ストリッピングセクションを含む第2の蒸留塔へ有機相の少なくとも一部を移送するステップと;
(l)第2の蒸留塔の塔底から生成物アルコールを抜き取るステップと;
(m)第2の蒸留塔の塔頂から蒸気を抜き取るステップと;
(n)蒸気が部分的に凝縮して2つの液相を生じるように(m)の蒸気を冷却させるステップと;
(o)デカンターへ(n)の液相を移送するステップと;
をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
大気圧と容器210でのフラッシュ圧力との間の中間の圧力で発酵液体からプレフラッシュすることにより、容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を実質的に減らすことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
フラッシュ容器210に先立って非凝縮ガスのストリッピングにより、容器210への発酵液体供給物中に存在する二酸化炭素の量を実質的に減らすことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
生成物アルコールがブタノールであり、ビールストリッピングに先立ってCO2、ブタノールおよび水の一部が揮発し、該部分揮発が改善されたプロセス効率を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
部分蒸発する蒸気流および吸収液体に吸収される蒸気流が、1〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記蒸気流が、10〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
蒸気相の圧力が1〜100質量部のブタノール対1質量部の二酸化炭素を含み、圧力が1〜30psigである、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記圧力が0.9〜1.2気圧である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項52に記載の蒸気流。
【請求項57】
請求項9に記載の方法によって製造されるイソブタノール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【公表番号】特表2013−518720(P2013−518720A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552941(P2012−552941)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024159
【国際公開番号】WO2011/100299
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024159
【国際公開番号】WO2011/100299
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]