説明

真空下で基板を急速に加熱および冷却して次いで即座に基板をコーティングする方法および装置

本発明は、真空チャンバー内で基板を加熱して、次に即座に基板をコーティングする方法に関し、当該方法は、(1)基板の下面を基板ホルダー上に配置する工程、(2)基板を、基板ホルダーに対して所定距離に亘って持ち上げる工程、(3)加熱装置、例えば、放射熱装置を用いて、その上面によって持ち上げ基板を加熱する工程、(4)例えば、コーティングゾーンの中およびそれを通過して移動することによって加熱基板をコーティングする工程、(5)基板をチャック上まで下ろして、基板を冷却する工程、および(6)必要に応じて、冷却基板を更にコーティングする工程を含む。本発明に係る方法は、実施される方法手順を更に可能にし、様々な規定温度を各々の工程の間に基板上に設定でき、および必要に応じて、その後に即座に1以上のコーティングを前記基板温度で行うことができる。例えば、コーティング(抑えた)した後に即座に所定時間に亘って基板を更に高温で保持できる場合も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバー内で基板を加熱および/または冷却する方法および装置に関する。次いで、加熱基板に、例えば、後に即座に特定のコーティングを付し、および続いてより低い温度まで冷却できる。
【背景技術】
【0002】
真空下でのスパッタリング(PVD)、化学蒸着(CVD)、蒸着および更なる方法を用いて基板を薄層によりコーティングすることは、概して、特定機能の層を製造するために産業上しばしば用いられる方法である。典型的な例は、半導体産業であり、および一方で太陽電池を製造するための太陽光産業でもある。本明細書に示される方法の有用性を制限することを意図せずに、この方法を、特定の磁性多層の製造を基礎として例示的に説明すべきである。
【0003】
真空チャンバー内で基板上に特定の薄層および多層を製造することは、例えば、磁気トンネルコンタクト(magnetic tunnel contact)を実現するのに重要である。このような磁気トンネルコンタクトは、MRAMs(磁気抵抗メモリ)の本質的な要素であるが、それらは、例えば、ハードディスクの薄層ヘッド内に蓄積された情報を読み込むための磁界センサとしても用いられる。本明細書においていわゆるTMR(トンネル磁気抵抗)効果またはいわゆるGMR(巨大磁気抵抗)効果は有効になる。典型的な層パッケージの例を図1に示す。
【0004】
層1、2(特定の磁場配向を有する、「ピン止め層」)および3(「自由層」)は強磁性材料から作られている。図示される矢印は、層平面内にある磁化方向を示す。個々の層の厚さは、1.0nm未満〜数10.0nmまで変わる。
【0005】
最新の開発は、層積層体に存在する少なくともいくらかの強磁性層の磁化方向を層平面に対して垂直に向けることが高密度MRAMsの製造に必要であるということを示す。とりわけ、カソードスパッタリングを用いて高温基板に特定の強磁性合金(例えば、CoPt、FePt、FePd)を適用する場合に、磁化のこのような垂直な配向を達成できる。基板の必要な温度は250℃〜500℃の範囲である。しかしながら、必要な特性を達成するように、従来通り、室温で層積層体の他の層を基板上に堆積する必要がある。
【0006】
磁気ハードディスクのための書込みヘッドおよび読込みヘッドの分野において、高いスピン偏光を有する特定の強磁性材料の使用は、図1に示されるのと同様の様式で構成されている層システムにおいて好都合であり得る。記述した材料は、とりわけ、いわゆるHeusler合金である。この場合に、所望の層特性を達成するために、材料を高温基板に適用することも必要である。しかしながら、ここでも、室温で層積層体の他の層を基板に適用する必要がある。
【0007】
他のコーティングプロセスにおいて(磁気抵抗センサとの関連だけでなく)、他の「冷」プロセス工程に代わって特定の(普通は高温)温度で薄層を基板上に適用することは望ましくあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、通常、真空チャンバー内で行うこの種のコーティングプロセスのために、複数の条件および態様を考慮に入れる必要がある。
(a)概して、上述した薄層システムを、なし得る最短時間で製造すべきである。これに関して、層間の境界の質を劣化しないように、個々の層を堆積する間の時間を非常に短く維持することは、ほとんどの場合に重要である。一方で、長い製造プロセスは低い生産性をもたらす。典型的なコーティング時間は数秒〜数10秒である。個々の堆積の間の切れ間はこの範囲にあるべきである。
(b)真空チャンバー内でコーティングするために、基板を、典型的には基板ホルダーに保持する。例えば、半導体を製造するために用いられるシリコンウエハの場合に、基板ホルダーは、大抵、冷却される保持デバイスである。
(c)コーティングプロセスの間に、基板は、普通、特定温度(層材料に依存して)を有するべきである。しかしながら、現在、基板を別の温度まで迅速に加熱または冷却しおよび次いで、例えば、即座にそれをコーティングすることは不可能である。例えば、加熱および冷却を保持デバイスによって実現すべき場合に、保持デバイスを、短時間で上述した高温から再び室温まで冷却する必要があり、これは、対流(convection)による冷却が真空では不可能であり、およびこのような保持デバイスが相対的に大きい(また、熱)質量を必然的に有するので、とりわけ困難であると考えられる。
(d)半導体産業において、しばしば、単一層を高温基板上に堆積する。この場合に、技術的解決法は、加熱可能なウエハホルダー(チャック)を有する特定の真空チャンバー内で基板をコーティングすることである。このチャックを高温で一時的に保持し、およびウエハを、コーティングするために高温チャック上に配置する。コーティング後に、例えば、真空ロボットを用いて、更なる(例えば、「冷」)プロセス工程を行うように、必要に応じてウエハを、更なるプロセスチャンバー内に移動する。
しかしながら、高温基板にコーティングを適用するこの方法は、上述した磁性および他の多層のために首尾よく用いることができず、個々の層は、異なる基板温度を必要とする。(a)で示すように、ほとんどの場合に、1つの真空コーティングチャンバーから別のチャンバー内へおよび再び戻って基板を複数回輸送することは、プロセス技術に関してまたは経済的な理由(全体を通して)のために容認できない。
(e)半導体産業において、特定の真空チャンバー内で赤外線ラジエーターを用いて基板を迅速に高温にすること(RTP−急速加熱処理)も一般的な方法である。コーティング工具の位置が放射加熱器に取られるので、この種の真空チャンバー内で基板をコーティングすることは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、たった1つの真空チャンバー内において制御した様式で基板を迅速に加熱および冷却しおよび次に即座にそれをコーティングする方法および装置を提供することは本発明の目的である。本発明によれば、個々のコーティングプロセスのために別個に規定した基板温度を伴って多層を製造できるように、基板(の加熱または冷却)を抑制しおよび次いでそれを複数回逐次的にコーティングするこの方法を行うことは可能である。
【0010】
この目的は、特許請求の範囲の発明の主題により達成される。
【0011】
本発明は、この基板を加熱しおよび必要に応じてコーティングするために(冷却した)基板ホルダーから(高温)基板を持ち上げる基礎的なアイデアから出発する。従って、基板ホルダーをこの冷却状態で維持でき、加熱基板を後に冷却ホルダー上に下ろす場合に、加熱基板を再び冷却する。この方法において、真空チャンバー内で基板の短い加熱および冷却時間を実現しおよびすぐ後にそれをコーティングすることができる。
【0012】
本発明は、真空チャンバー内で基板を加熱/冷却およびコーティングする方法に関し、当該方法は、(1)基板の下面を基板ホルダー上に配置する工程と、(2)基板を、基板ホルダーに対して所定距離に亘って持ち上げる工程と、(3)放射熱デバイスのような加熱デバイスを用いてその上面によって持ち上げ基板を加熱する工程と、(4)例えば、加熱基板をコーティングゾーン中にまたはそれを通過して移動することによって加熱基板をコーティングする工程と、(5)それをチャック上に下ろすことによって基板を冷却する工程と、(6)必要に応じて、更なるコーティングを冷却基板に適用する工程とを含む。
【0013】
本発明に従って、更に、個々の工程において規定した異なる温度を基板に設定しおよび必要に応じて、次いで即座に1以上のコーティングをこの基板温度で適用するプロセス手順を行うことは可能である。これは、コーティング後に相対的に高い温度で所定時間に亘って基板を直接保持できる(焼き戻し)場合も含む。
【0014】
本発明が意味する基板は、例えば、既にコーティングされているまたはコーティングされていないシリコンウエハまたは別のキャリアであり得る。加熱およびコーティングするデバイスを含む真空チャンバーは、全体のシステムの一部であってよく、更なるプロセスチャンバーは、そこに連結されている。本発明に従って、基板を、可能ならば基板ホルダーとともに前後に移動するように、例えば、ロボット(アーム)のような輸送デバイスを真空チャンバー内に設けることができる。例えば、真空ポンプを用いて、真空チャンバー内に存在する気体をチャンバーから除去でき、例えば、10−7mbar未満、とりわけ、10−8mbar未満、好ましくは10−9mbar未満の真空を真空チャンバー内で達成する。
【0015】
基板を基板ホルダー上に配置する場合に、その下面を、基板ホルダーに面して接触させる。加熱後にコーティングする基板の上面は、典型的には、基板ホルダーと接触すべきではない。
【0016】
基板の下面を基板ホルダー上に配置することによって、基板を、その上面の更なる処理に利用する。基板ホルダーは、例えば、静電気力(静電チャック、ESC)を用いて基板を固定できる。基板の寸法に依存して、この種の基板またはウエハホルダーは、例えば、数キログラムのような相当量を有することができる。
【0017】
この種の基板ホルダーは、異なる様式で実現できる。平面を設けることは本質的である。例えば、基板ホルダーは、基板を配置できる凹部を有することができ、または基板ホルダーは平面であってよく、基板の下面をホルダーのこの平坦な面/表面に対してまたはその上に配置できる。両方の場合に、ホルダーにフィンガーまたはグリッパーを配置でき、フィンガーまたはグリッパーを、ホルダー内に下ろしてそれから離れるように回転でき、および/またはホルダーから外れるように移動または回転でき、それらを用いることによって基板をホルダーの残りに対して持ち上げることができる。好ましくは、フィンガーまたはグリッパーと基板との間の接触表面の寸法は可能な限り小さく、例えば、基板の下面の表面の10%未満、とりわけ5%未満、典型的には1%未満(基板の上面および下面は、全ての実施する場合に同じ寸法を有する)である。代替的にまたは追加的にも、フィンガーまたはグリッパーが基板を保持すると同時にホルダーの残りが下方に移動するように、基板ホルダーは構成できる。
【0018】
実施形態に従って、基板ホルダーは、少なくとも2つ、とりわけ3つまたは4つのフィンガーおよび/または少なくとも1つのグリッパーを含む。実施形態において、フィンガーは、例えば、細いシャンク(例えば、2mm未満の直径を有する)であり得る。グリッパーは、例えば、グリッパーがその下面および1つの面で基板を保持するように構成でき、基板との接触表面は、上述した範囲を越えない。グリッパーは、(写真の)フレーム形状のデバイスまたはフレームの一部(例えば、フレームの角からのみ成る)であってよく、基板は、その上/中に配置され、および従って上述したように基板ホルダーとの非常に小さな接触表面を有する。
【0019】
1つの実施形態によれば、フィンガーまたはグリッパーは、わずかにまたは実質的に熱伝導しない材料(例えば、セラミックス)から作られ得る。従って、可能な限りわずかな熱エネルギーは、ちょうど加熱された基板または既に加熱されている基板から(可能な限り更に冷却された)基板ホルダーに移される。
【0020】
1つの実施形態によれば、基板ホルダーを冷却する。
【0021】
例えば、水を用いて、基板ホルダーを冷却でき、およびこのために、対応する冷却流路を含む。基板ホルダー上に配置されている基板から基板ホルダーへの熱エネルギーの改善された伝導のために、例えば、(基板と基板ホルダーとの間の接触剤としてヘリウムまたはアルゴンを搬送するために)溝の形態をした接触気体流路を、基板と接触するその他の平面に設けることができる。
【0022】
従って、例えば、加熱基板を、コーティング後および/またはコーティング前に(再び)冷却できまたは、他のプロセスのパラメータの場合に迅速および効率的に所望温度にできる。
【0023】
1つの実施形態によれば、基板を、0.1mm〜20mm、とりわけ、1mm〜10mm、好ましくは、2mm〜5mmに亘って持ち上げる。
【0024】
従って、より冷却された基板ホルダーに対する熱伝導を実質的に完全に防ぎ、基板を効率的および迅速に加熱できる。
【0025】
基板を、加熱デバイス、とりわけ、放射熱デバイスを用いて加熱し、該デバイスを、真空チャンバー内に配置して基板を特定の温度まで加熱するのに用いる。この温度を、例えば、加熱プロセス前に外側から設定できる。
【0026】
典型的には、所望温度までもたらされた基板を持ち上げ位置でコーティングする。それとは対照的に、冷却基板を、典型的には下ろした状態でコーティングでき、および基板ホルダーの冷却された平面と緊密に接触できる。
【0027】
例えば、加熱基板を、数秒間、とりわけ、2秒未満持ち上げた状態で真空チャンバー内のコーティング位置に運び、それをコーティングできる。このために、コーティングデバイスを、例えば、真空チャンバー内で一体化して、持ち上げ基板および加熱基板を有する基板ホルダーを容易かつ迅速にこのコーティングデバイスの方向に運ぶことができる。下ろした状態で冷却基板と接続する方法は同じである。コーティングデバイスを、また、隣接したチャンバー内に設けることができ、ロボット(アーム)を用いて、基板を有する基板ホルダーをこの隣接したチャンバー内に移動できる。
【0028】
1つの実施形態によれば、基板を基板の下面に平行な方向に移動する。
【0029】
例えば、コーティングデバイスが、基板ホルダーを有する基板を基板表面に平行に横方向に移動することによって到達できるように、コーティングデバイスを加熱位置に隣接して真空チャンバー内に配置できる。
【0030】
従って、基板を迅速および容易に輸送でき、および特定の温度をもたらす基板のコーティングは、いかなる更なる遅延無しに開始できる。
【0031】
1つの実施形態によれば、持ち上げ基板の加熱をセンサによって制御する。
【0032】
このセンサは、例えば、真空チャンバー内に配置される高温計であってよく、および基板の実際の温度を測定できる。センサまたは高温計は、代替的に、真空チャンバーの外側であってよく、および例えば、チャンバーの窓を介して基板温度を決定できる。典型的な高温計は、高温計と基板との間の40センチの距離において約1mmの非常に小さな測定領域をもたらす。チャンバー内の熱要素を用いて温度測定を比較すると、チャンバー内の窓を介する高温計測定は好都合である。なぜなら、高温計センサは、基板と接触する必要がなく、および適用可能である場合に、プロセスチャンバーの反応ガスにより攻撃されないからである。特定の実施形態によれば、高温計をコントローラーと接続でき、従って、高温計の結果を分析できるように、該コントローラーをPCによってプログラミングでき、基板の正確な温度を設定しおよび必要に応じてそれを一定に維持するように加熱器を作動またはそれに応じて再調整できる。
【0033】
このようにして、更に相対的に煩雑な基板の温度手順を、とりわけ、次のコーティングの場合に正確かつ容易に制御できる。
【0034】
コーティング後に、基板を下限温度まで冷却しおよびとりわけ、次いでそれを再びコーティングすることは好都合である。これは、例えば、基板を(より冷却した)基板ホルダー上に下ろすことによって行うことができる。
【0035】
1つの実施形態によれば、制御した様式で基板を冷却する。
【0036】
基板の制御した冷却は、例えば、制御した様式で基板ホルダーを冷却することで実現できる。例えば、基板ホルダーの冷却器のためのコントローラーにセンサまたは高温計を連結することは可能であってよく、基板ホルダーまで下ろした基板を特定温度まで冷却できる。
【0037】
更なる実施形態によれば、とりわけ、事前に所望の温度がもたらされた蓄熱器は、基板の可能な温度低下を補償するように、持ち上げた基板と基板ホルダーとの間に導入できる。蓄熱器は、例えば、大きい熱量を有することができ、および、好ましくは、基板に面しているその面が黒色であり得るが、全ての他の表面上または少なくとも基板ホルダーに面している表面上に製造でき、チャンバー内においてまたは基板ホルダーの方向への熱放射を最小限にする。コーティングのためにコーティングプロセスの間の基板のかなりの冷却を回避するように、この蓄熱器を、例えば、基板および基板ホルダーとともに一体に前後にも移動できる。
【0038】
1つの実施形態によれば、次のコーティングの前に、基板を、相対的に長い時間、とりわけ、数分、好ましくは、少なくとも10分に亘って特定温度で維持する。
【0039】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、とりわけ次のコーティングと関連して様々な特定の温度まで基板を順番に加熱および/または冷却する。このため、例えば、基板を複数回コーティングする場合に複数の個々の工程において一連の方法工程を制御するためのコントローラーを設けることができる。
【0040】
本発明は、真空チャンバー内の基板を加熱するためのシステムにも関する。システムは、基板ホルダーと、基板を持ち上げるための持ち上げデバイスであって、基板ホルダー上にその下面を置いて配置する、持ち上げデバイスと、その上面によって持ち上げ基板を加熱するための加熱手段とを含む。
【0041】
本発明の方法と関連して記載される特徴は、本発明のシステムの特徴と同じように好都合であり得る(逆の場合も同じ)。当該方法の記載された特徴の説明は、同様に、本発明のシステムの特徴に適用可能であるべきである。
【0042】
1つの実施形態によれば、持ち上げデバイスを基板ホルダーに配置する。すなわち、持ち上げデバイスは、例えば、基板ホルダーと一体化できる。例えば、持ち上げデバイスは、上述したようにフィンガーおよび/またはグリッパーを含むことができる。
【0043】
1つの実施形態によれば、持ち上げデバイスは、持ち上げ状態で基板ホルダーと基板との間の顕著な熱流量を防ぐように構成されている。
【0044】
1つの実施形態によれば、基板に面している基板ホルダーの表面は、基板と基板ホルダーとの間の熱伝導を増加するように、接触ガスを搬送するための少なくとも1つの接触気体流路を含む。
【0045】
1つの実施形態によれば、システムは、制御した様式で基板ホルダーを冷却するためのコントローラーを含む。
【0046】
1つの実施形態によれば、システムは、制御した様式で基板を加熱するための温度センサを含む。
【0047】
1つの実施形態によれば、基板ホルダーを基板の下面に平行な方向に移動できる。
【0048】
特定の実施形態によれば、上述したシステムを用いて、上述した方法を行う。
【0049】
以下のように、本発明は、実施例(磁性多層)を用いて、図面を参照して、更に詳細に示される。更に、規定した温度まで上げた基板をコーティングするための他の方法が可能であり、および本発明に従って意図される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、例えば、MRAMおよびTFHのためのTMR層システムによって用いられるような上方および下方の電極を有する典型的な層構造を概略的に示す。
【図2】図2は、対応する磁石アレイを有するターゲットおよびコーティングゾーン内にいく途中の基板を用いてカソードスパッタリングする例を概略的に示す。
【図3a】図3aは、基板を加熱するための方法の過程を概略的に示す。
【図3b】図3bは、基板を加熱するための方法の過程を概略的に示す。
【図3c】図3cは、基板を加熱するための方法の過程を概略的に示す。
【図4】図4は、基板の温度プロファイルを概略的に示す。
【図5】図5は、基板ホルダーを有する図2の原理を概略的に示す。
【図6】図6は、蓄熱体の基板ホルダー上への配置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、典型的なTMR層パッケージを例示的に示す。層1、2(特定の磁化配向を有する。”ピン止め参照層”)および層2(”自由層”)は、強磁性材料から作られており、および酸化マグネシウム層0によって互いに分離されている。示される矢印は、層平面上にある磁化の方向を示す。個々の層の厚さは、1.0nm未満〜数10.0nmまで変わる。層4(「カッピング層」)とともに層3(「自由層」)は、上方電極8を形成する。下方電極9は、層5(「種層no.1」)と、層6(「種層no.2」)と、層7(例えば、PtMn、IrMnのような反強磁性材料から作られている「ピン止め層」)と、層1(「ピン止め層」)と層10(「連結層」)と層2(「参照層(または基準層、reference layer)」とのパケットと、から成る。
【0052】
実施例を用いて、カソードスパッタリングによって多層を製造する特定の方法を、図2を基礎として以下に説明し、基板を、上述したように規定された−必要に応じて高い−温度で個々の材料によりコーティングする。カソードのスパッタリングは、ターゲット14の表面に近接したプラズマのイオン化の主因となる電子を集束するように、磁石アレイ16を含む。この「線形動的」堆積(LDD)の間に、基板10、例えば、(シリコン)ウエハは、(例えば、長方形の)スパッタリングカソード14、16の下を直線で通過し(矢印12の方向を参照されたい)、コーティングを経路間で(動的に)行う。
【0053】
この方法は、例えば、半導体産業に一般的な方法と対照的であり、ウエハを、コーティングプロセス中にコーティングするカソードの下に相対的な動作無しに、すなわち静的に置く。
【0054】
LDD法は、複数のコーティングカソードを含むデバイスと組み合わすことができ、様々な層を、時間損失無しに代替的に基板に適用できる。従って、例えば、相対的に長い輸送時間無しに、異なる材料から所望の多層を製造することは可能である。コーティング工程のために基板10を移動するように、基板を基板ホルダー上に保持する。後者は、例えば、(水)冷却されたESCであってよく、その表面は、熱エネルギーの改善された放散のために一体化した流路を含んでおり、ヘリウムまたはアルゴンを基板10とESCとの間の接触剤として用いることができる。
【0055】
LDDを用いて多層を製造する場合に、例えば、ロボットを用いて、まず、基板10を真空輸送チャンバーからコーティングチャンバー内に輸送して、チャック(基板ホルダー)上に配置する。次いで、固定バルブを用いて、輸送チャンバーおよびコーティングチャンバーを互いに分離できる。電圧を適用すると、静電気的な力を用いて、基板10をチャック上に固定できる。更に、ガスのクッションは、良好な冷却を達成するために基板10の下に生じ得る。封止によって、残りの真空チャンバーから「冷却ガス」を離しておくことができる。
【0056】
選択したスパッタリングカソード14、16を着火(ignite)し、および所望の層厚さを達成するまで基板10を、コーティング領域を通して1回以上移動する。続いて、次のカソードを選択および着火でき、および従って積層体の次の層を適用できる等。
【0057】
図3a〜3cを基礎として、本発明の原理を更に詳細に説明する。例えば、真空チャンバー内において、その上に基板20を有する基板ホルダー24をコーティング前に加熱場内に移動し、加熱場内の加熱デバイス22、例えば、1つの放射加熱器またはたくさんの放射加熱器を、基板20(ウエハ)または基板20の上面21bと向かい合うチャック24の上に配置する場合に、基板20を迅速に加熱できる。図3aに示すように、加熱工程前に、まず、基板20の下面21aをチャック24上に置く。基板20のこの状態では、既に1以上の層を室温または他の温度で基板に適用できており、または基板は、まだいかなるコーティングも有していない。
【0058】
加熱のために基板20をチャック24から持ち上げ、例えば、基板20は、基板20の下面21aによってもはや後者と接触しない。図3bに示されるように、例えば、基板20が、チャック24(例えば、3つまたは4つの”フィンガー”23によって)と連結して維持されており、該チャックが、縁において基板20を保持しならびにわずかなおよび/または無視できる熱伝導率を有するように構成されているが、数(例えば、2〜3)ミリメートルの距離dが維持されていることを、特定の固定は前提とし得る。
【0059】
次に、加熱デバイス22にスイッチを入れ、および基板20を所望温度まで上げる。例えば、高温計26を用いて、温度を測定できる。温度増加の速度および/または最終温度は、図3cに示されるように、制御回路26、28により設定できる。基板20自体は、例えば、小さな熱量のみを有するので、速い温度増加が達成できる。基板ホルダー24の全体構造と、適切に冷却される遮蔽体の取り付けは、基板ホルダー24の他の部分の温度を可能な限り少なく上昇すると同時に、可能な限り基板20を加熱することを更に保証し得る。
【0060】
基板20は、加熱デバイス22の放熱に対して(少なくとも部分的に)基板ホルダーを遮断し、基板ホルダー24の温度は、非常に小さく変化し、および好ましくは、一定に維持される。
【0061】
基板の典型的な温度プロファイルは図4に示される。
【0062】
図5は、加熱デバイスによって既に加熱されており所望温度まで上げられた基板20の場合に、図2の原理に従ってどのようにして基板をコーティングできるのか示す。所望温度に達するとすぐに、持ち上げられた高温基板を有するチャック24は、図5に示すように(次の)コーティングを適用できるように、自動的に制御される様式で移動され得るまたは移動し得る(矢印25の方向を参照されたい)。基板20の加熱とコーティングとの間の時間が非常に短い(例えば、たった数秒)ので、コーティングプロセスが開始するまで、基板は冷却されないまたはわずかに冷却されるのみである。
【0063】
基板が過度に冷える場合に、主に複数のコーティングの経過中に、コーティングプロセスの間の更なる加熱工程を設けてよく、およびこのために基板ホルダー24を用いて基板20を、カソードスパッタリング場29から外に移動でき、加熱デバイスの下に輸送でき、および最終的にコーティング場に戻すことができる。
【0064】
高温でのコーティング後に、基板20とチャック24を、例えば、再び、加熱器の下の位置に運ぶことができ、および基板20は、チャック24上に配置でき、必要に応じて、静電気的にチャック24を押し付け得る。冷却したチャック24を用いて、および接触ガスを用いて、基板20を急速に冷却できる。例えば、接触ガスの圧力を調節することによって、冷却速度を調整できる。
【0065】
次に、例えば、別のコーティング場において、層システムの更なる層を、例えば、室温または任意の他の温度で、冷却した/冷たい基板に適用できる。
【0066】
本発明に従って、起こり得る温度低下を補償するように、予め所望温度まで上げた蓄熱体30を、持ち上げ基板20とチャック24との間に更に導入できる。蓄熱体30は、例えば、大きな熱量を有し、および好ましくは、基板20と面している面が黒であり得るが、全ての他の表面上または少なくともチャックに面している表面上に製造でき、熱放射は最小である。例えば、コーティングのためにコーティング中に基板の冷却を最小限にするように、この蓄熱体30は、基板および基板ホルダーとともに前後に移動できる。
【0067】
実施形態によれば、放射加熱器のランプは、フィルター層によりコーティングでき、放射される赤外光は、主に基板(典型的にはシリコン)によってまたは代替的には主に既に堆積されている層システムによって吸収される波長のみを含む。
【0068】
従って、本発明によれば、コーティングされる基板は、必要に応じて即座に次のコーティングを伴って、規定した温度まで迅速に加熱および冷却でき、複数の層を、なし得る最短時間において異なる温度で非常に効果的に基板上に堆積できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内で基板(20)を加熱して、次に即座に基板をコーティングする方法であって、
(a)基板の下面(21a)が基板ホルダーと面した状態で接触するように、基板(20)を基板ホルダー(24)上に配置する工程、
(b)基板(20)を、基板ホルダーに対して距離dに亘って持ち上げる工程、
(c)その上面(21b)によって持ち上げ基板を、加熱デバイス(22)を用いて加熱する工程、
(d)次に即座に加熱基板をコーティングする工程および
(e)基板を基板ホルダー(24)まで下げて、基板を冷却する工程
を含む、真空チャンバー内で基板(20)を加熱して、次に即座に基板をコーティングする方法。
【請求項2】
冷却基板をコーティングする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板温度を求めるための温度センサ(26、28)によっておよび所定温度を設定するための温度制御デバイスによって、加熱デバイス(22)を制御する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)が、即座に、加熱基板を基板ホルダー(24)とともにコーティング位置に移動して基板をコーティングすることを含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
方法工程(d)において、基板(20)を、基板ホルダー(24)に対して0.1mm〜20mm、とりわけ1mm〜10mmに亘って持ち上げる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
照射する赤外光が、基板によってまたは既に堆積した層システムによって吸収される波長のみを含むように、加熱デバイスが、フィルター層を用いる赤外線ラジエーターから成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基板ホルダー(24)と持ち上げ基板(20)との間に蓄熱体(30)を配置する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基板ホルダー(24)を冷却する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
冷却後即座に、冷却基板を、基板ホルダー(24)とともにコーティング位置まで移動して、そこでコーティングする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
基板を、次のコーティングに伴う様々な温度に調節することを、複数の個別の工程で逐次的に行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
真空チャンバー内で基板(20)を加熱するシステムであって、
・基板ホルダー(24)、
・基板(20)を持ち上げるための持ち上げデバイス(23)であって、基板の下面(21a)が、基板ホルダー(24)の上に配置されている、持ち上げデバイス(23)および
・その上面によって持ち上げ基板(20)を加熱するための加熱デバイス(22)
を含む、真空チャンバー内で基板(20)を加熱するシステム。
【請求項12】
持ち上げデバイス(23)が、基板ホルダー(24)と基板(20)との間の相当の熱流を防ぐように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
基板ホルダー(24)が、接触ガスのための少なくとも1つの流路を含み、およびシステムが、とりわけ、制御される様式で基板ホルダー(24)を冷却するためのコントローラーを含む、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
制御される様式で基板(20)を加熱するための温度センサ(26、28)を含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
持ち上げデバイスを基板ホルダー(24)に配置する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
基板ホルダー(24)を、とりわけ基板(20)とともに基板の下面(21)に平行な方向(25)に移動できる、請求項11〜15のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520569(P2013−520569A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554321(P2012−554321)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052600
【国際公開番号】WO2011/104232
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(399123085)ジングルス・テヒノロギース・アクチェンゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】SINGULUS TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】