説明

着信処理選択システム、ユーザ端末、交換機、及び、着信処理選択方法

【課題】 ユーザ端末のパケット通信中に当該ユーザ端末に対する他の通信サービスの着信が発生した場合に、ユーザが自らの意思でフレキシブルに何れかの通信サービスを選択することを可能とする着信処理選択システム、ユーザ端末、交換機、及び、着信処理選択方法を提供する。
【解決手段】 ユーザ端末10がパケット通信中にテレビ電話着信が発生した旨の通知をMSC/GMSC20から受けた場合に、選択部11はディスプレイにユーザ選択画面を表示することにより、テレビ電話優先とパケット通信優先との何れか一方をユーザに選択させる。テレビ電話優先が選択された場合には、着信優先部131,231はパケット通信の切断処理を行った後にテレビ電話の着信処理を行う。一方、パケット通信優先が選択された場合には、パケット通信優先部132,232は、テレビ電話着信の切断処理を行うと共にパケット通信を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット通信中に他の通信サービスが着信した場合の接続制御を実施する着信処理選択システム、ユーザ端末、交換機、及び、着信処理選択方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声通話機能に加えて、電子メールやインターネット接続等のパケット通信機能を備えた携帯電話機が普及している。このような複数の通信サービスを利用することが可能な携帯電話機においては、パケット通信中に、音声着信、テレビ電話着信、VoIP(Voice over Internet Protocol)着信等、他の通信サービスの着信が発生する場合がある。その際の従来における接続制御方式として、以下のものが存在する。
(1)現在通信中のパケット通信を優先し、後から発生した他の通信サービスの着信を規制する方式
(2)パケット通信と他の通信サービスとを同時に利用するマルチコールの方式
【0003】
しかし、以上のような方式では、着信を受けたユーザは、パケット通信を優先するか他の通信サービスの着信を優先するかを自らの意志で選択することができない。また、(2)のように、パケット通信と他の通信サービスとを同時に利用する場合には、それぞれの通信サービスについて無線ベアラを確立する必要がある。このため、1ユーザが無線リソースを含むネットワークリソースを多く専有することとなり、ネットワークリソースを有効に活用することができないという問題点がある。
携帯電話機のパケット通信中に音声着信が発生した場合に、音声着信とパケット通信との何れを優先するかを事前にユーザが設定可能とする技術も存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−219471号公報(段落0029〜0033)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合には、事前設定のためのユーザ入力の手間が必要となる。また、事前設定した場合には、ユーザは着信時の状況や発側のユーザが誰であるか等に応じてどちらの通信サービスを優先するかをフレキシブルに選択することができない。さらに、特許文献1では接続制御の仕組みが検討されておらず、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有してしまう可能性がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ユーザ端末のパケット通信中に当該ユーザ端末に対する他の通信サービスの着信が発生した場合に、ユーザが自らの意思でフレキシブルに何れかの通信サービスを選択することを可能とする着信処理選択システム、ユーザ端末、交換機、及び、着信処理選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ユーザ端末のパケット通信中に該ユーザ端末に対する他の通信サービスの着信が発生した場合に、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択手段と、前記選択手段により前記着信の優先が選択された場合には、前記パケット通信の切断処理を実施した後に前記他の通信サービスの着信処理を実施する着信優先手段と、前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合には、前記他の通信サービスの着信の切断処理を実施すると共に前記パケット通信を継続するパケット通信優先手段とを備えることを特徴とする着信処理選択システムを提供する。
【0006】
この発明によれば、着信処理選択システムは、ユーザ端末のパケット通信中に他の通信サービスの着信が発生した場合に、パケット通信と他の通信サービスとの何れを優先するかをユーザに自らの意思でフレキシブルに選択させることが可能となる。また、何れの通信サービスが選択されたとしても、パケット通信と他の通信サービスとの両方の伝送路を同時に接続しないように接続制御を行うことができるため、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有するのを防ぐことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、自端末のパケット通信中に自端末に対する他の通信サービスの着信が発生した旨の通知を受信した場合に、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択手段と、前記選択手段による選択があるまで、前記他の通信サービスの着信に対する発側への呼出中の通知処理は行いつつ、着信に関わる処理を待ち合わせる待合手段とを備えることを特徴とするユーザ端末を提供する。
【0008】
この発明によれば、ユーザ端末は、自端末のパケット通信中に自端末に対する他の通信サービスの着信が発生した旨の通知を受けた場合に、パケット通信と着信との何れを優先するかをユーザに選択させ、該選択があるまで他の通信サービスの着信に関わる処理を待ち合わせるため、ユーザは、着信が発生した時点で、パケット通信と他の通信サービスとの何れを優先するかを自己の意思でフレキシブルに選択することが可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のユーザ端末において、前記選択手段による選択結果に応じて、前記パケット通信と前記他の通信サービスとの何れか一方の通信を接続するように制御を行う接続制御手段をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、ユーザ端末は、選択手段による選択結果に応じて、パケット通信と他の通信サービスとの何れか一方の通信を接続するように制御を行うため、同時に複数の通信を接続しないように制御することができ、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有するのを防ぐことができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のユーザ端末において、前記接続制御手段は、前記選択手段により前記着信の優先が選択された場合に、前記パケット通信の切断を実施するためのパケット通信切断要求を送信し、前記パケット通信の切断が完了した旨の通知を受信した後に、前記他の通信サービス用の伝送路を接続するための着信接続応答を送信することを特徴とする。
この発明によれば、パケット通信の切断が完了した後に他の通信サービス用の伝送路を接続することができるため、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有するのを防ぐことができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のユーザ端末において、前記接続制御手段は、前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合に、前記他の通信サービスの着信を切断するための着信切断要求を送信すると共に前記パケット通信を継続することを特徴とする。
この発明によれば、ユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有しないように、パケット通信優先時の接続制御を行うことができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のユーザ端末において、前記接続制御手段は、前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合に、前記他の通信サービスの着信の切断理由を発側のユーザ端末に送信することを特徴とする。
この発明によれば、発側のユーザは着信の切断理由を確認することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、ユーザ端末に対してある通信サービスの着信が発生した場合に、前記ユーザ端末の通信状態を確認する通信状態確認手段と、前記通信状態確認手段によって前記ユーザ端末がパケット通信中であることが確認された場合に、前記ある通信サービスを接続するために必要となる伝送路の確立を待ち合わせる待合手段と、パケット通信中に前記ある通信サービスの着信が発生した旨の通知を前記ユーザ端末に送信する通知手段とを備えることを特徴とする交換機を提供する。
この発明によれば、ユーザ端末は、パケット通信中にある通信サービスの着信が発生した場合にその旨の通知を即座に受けることができ、ユーザ端末を利用するユーザに対して、パケット通信とある通信サービスの着信との何れを優先するかを選択させることができる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の交換機において、前記ユーザ端末を利用するユーザによって前記ある通信サービスの着信を優先する旨の選択がなされた場合に、前記パケット通信の切断処理完了後に前記ある通信サービスの着信を実施するための処理を行う着信優先手段をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、パケット通信の切断処理完了後にある通信サービスの着信を実施するための処理を行うため、多くのネットワークリソースを専有することなく、パケット通信からある通信サービスに切り替えることができる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の交換機において、前記ユーザ端末を利用するユーザによって前記パケット通信を優先する旨の選択がなされた場合に、前記ある通信サービスの着信の切断時に前記ユーザ端末から送信されてきた前記着信の切断理由を発側のユーザ端末に転送する転送手段をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、発側のユーザは、ある通信サービスの着信の切断理由を知ることができるため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0016】
請求項10に記載の発明は、ユーザ端末に対してある通信サービスの着信が発生した場合に、交換機が、前記ユーザ端末の通信状態を確認する通信状態確認ステップと、前記通信状態確認ステップにおいて前記ユーザ端末がパケット通信中であることが確認された場合に、前記交換機が、パケット通信中に前記ある通信サービスの着信が発生した旨の通知を前記ユーザ端末に送信する通知ステップと、前記ユーザ端末が、前記通知ステップにおける通知を契機として、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択ステップと、前記選択ステップにおける選択結果に応じて、前記パケット通信の切断処理を実施した後に前記ある通信サービスの着信処理を実施する着信優先処理と、前記ある通信サービスの着信の切断処理を実施すると共に前記パケット通信を継続するパケット通信優先処理と、の何れか一方を実施する接続制御ステップとを有することを特徴とする着信処理選択方法を提供する。
【0017】
この発明によれば、ユーザは、パケット通信とある通信サービスとの何れを優先するかを自らの意思でフレキシブルに選択することが可能となる。また、どちらの通信サービスが選択されたとしても、パケット通信とある通信サービスとの両方の伝送路を同時に接続することがないように接続制御を行うことができるため、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ユーザ端末のパケット通信中に他の通信サービスの着信が発生した場合に、パケット通信と他の通信サービスとの何れを優先するかをユーザに自らの意思でフレキシブルに選択させることが可能となる。また、何れの通信サービスが選択されたとしても、パケット通信と他の通信サービスとの両方の伝送路を同時に接続しないように接続制御を行うことができるため、1台のユーザ端末が多くのネットワークリソースを専有するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
[1.構成]
図1は、本発明の実施形態に係る着信処理選択システムの全体構成を示す図である。同図に示すように、着信処理選択システムは、ユーザが利用する携帯電話機であるユーザ端末10と、回線交換を制御するMSC/GMSC(Mobile Switching Center/Gateway MSC;回線交換ノード)20と、パケット交換を制御するSGSN/GGSN(Serving GPRS Support Node/Gateway GPRS Support Node;パケット交換ノード)30と、無線通信を制御するUTRAN(UMTS Terrestrial Radio Access Network;無線アクセスネットワーク)40とを含んで構成される。
【0020】
[1.1.ユーザ端末の構成]
次に、ユーザ端末10の構成について説明する。ユーザ端末10は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、メモリ、通信インターフェース、操作キー、ディスプレイ、スピーカ等のハードウェア、及び、メモリに記憶されるプログラム、データ等のソフトウェアを備えている。メモリに記憶されるソフトウェアには、パケット通信及びテレビ電話通信を行うためのソフトウェアと、パケット通信中にテレビ電話の着信が発生した場合にユーザの選択に応じて接続制御を行うためのプログラムとが含まれている。
【0021】
ユーザ端末10が備えるこれらのハードウェア及びソフトウェアによって、図2に示すユーザ端末10の機能構成が実現される。以下、各機能について説明する。
選択部11は、ユーザ端末10のパケット通信中にユーザ端末10に対するテレビ電話の着信が発生した旨の通知をMSC/GMSC20から受けた場合に、パケット通信とテレビ電話着信との何れを優先するかをユーザに選択させる。具体的には、選択部11は、ユーザ選択画面をディスプレイに表示して、ユーザに選択入力を促す。このユーザ選択画面には、例えば、“パケット通信優先”と“テレビ電話優先”との文字を示すアイコンが表示されており、ユーザは操作キーを操作することによって何れか一方を選択する。なお、ユーザに何れを優先するかを選択させる他の方法としては、例えば、スピーカから音声ガイダンスを出力することにより、音声ガイダンスに従ってユーザに操作キーを操作させる方法が考えられる。
【0022】
待合部12は、選択部11による選択があるまで、テレビ電話着信に対する発側への呼出中の通知処理は行いつつ、着信に関わる処理を待ち合わせる。なお、従来においては、テレビ電話着信に関わる処理として、テレビ電話着信通知の受信を契機にテレビ電話着信を実施するための回線交換接続処理が行われていた。本実施形態においては、テレビ電話着信に関わる処理として、選択部11による選択を契機に、選択結果に応じて後述するパケット通信優先処理とテレビ電話の着信優先処理との何れか一方が実施される。
【0023】
接続制御部13は、選択部11による選択結果に応じて、パケット通信とテレビ電話との何れか一方の通信を接続するように制御を行う。接続制御部13の機能をさらに詳細に説明すると、接続制御部13は着信優先部131とパケット通信優先部132とを備えている。
着信優先部131は、選択部11においてユーザがテレビ電話着信を優先する旨の選択を行った場合に、着信優先処理を行う。
【0024】
ここで、着信優先部131が行う着信優先処理を以下具体的に説明する。まず、着信優先部131は、パケット通信の切断処理を実施するためのパケット通信切断要求をSGSN/GGSN30に送信する。その後、SGSN/GGSN30からパケット通信の切断処理の完了を通知するパケット通信切断応答を受信した場合に、着信優先部131は、テレビ電話着信を実施するための回線交換接続制御処理を行う。ここで、着信優先部131が行う回線交換接続制御処理とは、ユーザ端末10からMSC/GMSC20に対してテレビ電話着信接続応答を送信することによってテレビ電話通信用の伝送路(無線ベアラ)を接続する処理をいう。以上が、着信優先部131が行う着信優先処理である。
【0025】
パケット通信優先部132は、選択部11においてユーザがパケット通信を優先する旨の選択を行った場合に、パケット通信優先処理を行う。ここで、パケット通信優先部132が行うパケット通信優先処理とは、テレビ電話着信の切断を実施するためのテレビ電話着信切断要求をユーザ端末10からMSC/GMSC20に対して送信すると共に、現在行われているパケット通信をそのまま継続する処理である。
【0026】
また、パケット通信優先部132は、発側ユーザ通知機能133を備えている。発側ユーザ通知機能133は、テレビ電話着信の切断理由を図示せぬ発側のユーザ端末に通知する。切断理由のメッセージ内容としては、“パケット通信中のためテレビ電話の着信を行うことができませんでした”、“パケット通信優先が選択されたためテレビ電話の着信を切断しました”、“パケット通信優先”等が考えられる。本実施形態においては、発側ユーザ通知機能133は、この切断理由をテレビ電話着信切断要求に含めてMSC/GMSC20に送信し、MSC/GMSC20を介して切断理由を発側のユーザ端末に通知する。
【0027】
[1.2.MSC/GMSCの構成]
次に、MSC/GMSC20の構成について説明する。MSC/GMSC20は、テレビ電話の回線交換を行う機能を有する交換機である。MSC/GMSC20は、CPU、記憶装置、通信インターフェース等のハードウェアと、記憶装置に記憶されるソフトウェアとを備えており、一般的なコンピュータと同様の構成を有している。記憶装置に記憶されるソフトウェアには、ユーザ端末10へのテレビ電話着信時にユーザ端末10のパケット通信状態を確認するためのプログラム、パケット通信中にテレビ電話着信があったことをユーザ端末10に通知するためのプログラム、接続制御を行うためのプログラム等が含まれている。
【0028】
MSC/GMSC20が備えるこれらのハードウェア及びソフトウェアにより、図3に示す機能構成がMSC/GMSC20に実現される。以下、各機能について説明する。
パケット状態確認部21は、図示せぬ発側のユーザ端末から図示せぬ発側の交換機を介して、ユーザ端末10に対するテレビ電話着信を受信した場合に(ユーザ端末10に対する着信が発生した場合に)、SGSN/GGSN30に問い合わせを行うことによってユーザ端末10のパケット通信状態を確認する。
【0029】
待合部24は、パケット状態確認部21によりユーザ端末10がパケット通信中であることが確認された場合に、テレビ電話を接続するために必要となる無線ベアラの確立を待ち合わせる。
通知部22は、パケット状態確認部21によりユーザ端末10がパケット通信中であることが確認された場合には、パケット通信中にテレビ電話着信が発生した旨の通知をユーザ端末10に送信する。本実施形態においては、通知部22は、ユーザ端末10のパケット通信状態がパケット通信中である旨を示す情報を、テレビ電話着信通知に含めてユーザ端末10に送信する。
【0030】
接続制御部23は、パケット通信及びテレビ電話の通信の接続制御を行う。接続制御部23の機能を詳細に説明すると、接続制御部23は着信優先部231とパケット通信優先部232とを備えている。
着信優先部231は、ユーザ端末10を利用するユーザによってテレビ電話を優先する旨の選択がなされた場合に着信優先処理を行う。
【0031】
ここで、着信優先部231が行う着信優先処理を以下具体的に説明する。まず、着信優先部231は、パケット通信の切断処理が完了した後に、テレビ電話着信を実施するための回線交換接続制御処理を行う。ここで、着信優先部231が行う回線交換接続制御処理とは、伝送路の確立指示を行うことにより、テレビ電話通信用の伝送路を接続する処理をいう。また、パケット通信の切断処理が完了したことは、ユーザ端末10からテレビ電話着信接続応答を受信することによって認識することができる。
【0032】
回線接続制御処理の完了後、着信優先部231は、テレビ電話着信接続応答を発側の交換機に返信することにより、発側のユーザ端末と着側のユーザ端末10との間のテレビ電話通信を開始させる。以上が、着信優先部231が行う着信優先処理である。
パケット通信優先部232は、ユーザ端末10を利用するユーザによってパケット通信を優先する旨の選択がなされた場合に、パケット優先処理を行う。具体的には、パケット通信優先部232は、ユーザ端末10から受信したテレビ電話着信切断要求に基づいてテレビ電話着信を切断した後、テレビ電話着信切断通知を発側の交換機に送信する。
また、パケット通信優先部232は、転送機能233を備えている。転送機能233は、ユーザ端末10から送信されてきたテレビ電話着信の切断理由を発側のユーザ端末に転送する。
【0033】
[2.動作]
次に、上記構成における着信処理選択システムの動作例について説明する。
[2.1.着信時処理]
まず、図4を参照して、ユーザ端末10に対するテレビ電話の着信時処理について説明する。
まず、ユーザ端末10は、SGSN/GGSN30を介してパケット通信を行っている最中である(ステップS1)。この時に、MSC/GMSC20が、図示せぬ発側のユーザ端末から発信されたユーザ端末10に対するテレビ電話着信を受信した場合(ステップS2)、MSC/GMSC20のパケット状態確認部21は、SGSN/GGSN30に対して該当ユーザ端末10のパケット通信状態を問い合わせる。SGSN/GGSN30は、MSC/GMSC20から問い合せを受けたユーザ端末10のパケット通信状態の確認を行い、MSC/GMSC20に対して確認結果を応答する(ステップS3)。
【0034】
その応答を受けたMSC/GMSC20のパケット状態確認部21は、ユーザ端末10がパケット通信中であるか否かを確認する。その結果、ユーザ端末10がパケット通信中であることが確認された場合には、待合部24はテレビ電話を接続するために必要となる無線ベアラの確立を待ち合わせると共に、通知部22はユーザ端末10のパケット通信状態がパケット通信中である旨を示す情報を含むテレビ電話着信通知を、ユーザ端末10へ送信する(ステップS4)。
【0035】
ユーザ端末10はMSC/GMSC20からの通知によって、自端末10のパケット通信中に自端末10に対するテレビ電話着信が発生したことを認識する。選択部11は、“パケット通信優先”と“テレビ電話優先”とが表示されたユーザ選択画面をユーザ端末10のディスプレイ上に表示する(ステップS5)。待合部12は、ユーザがユーザ選択画面上の“パケット通信優先”と“テレビ電話優先”との何れかの選択を実施するまで、発側への呼出中の通知処理は行いつつ、テレビ電話着信に関わる処理を待ち合わせる。
【0036】
[2.2.テレビ電話優先処理]
次に、図5を参照して、着信処理選択システムが行うテレビ電話優先処理について説明する。
上述したステップS5で、ユーザがユーザ選択画面上の“テレビ電話優先”を選択した場合に(ステップS11)、着信処理選択システムは着信優先処理を実行する。
具体的には、まず、ユーザ端末10の着信優先部131は、SGSN/GGSN30へパケット通信切断要求を送出する(ステップS12)。SGSN/GGSN30は、ユーザ端末10からのパケット通信切断要求を受けて、パケット通信を切断する処理を行う。SGSN/GGSN30は、パケット通信の切断が完了したことをユーザ端末10へ通知するために、ユーザ端末10にパケット通信切断応答を送信する(ステップS13)。
【0037】
ユーザ端末10の着信優先部131は、SGSN/GGSN30からパケット通信切断応答を受信すると、回線交換接続制御処理を開始する。具体的には、着信優先部131は、上述したステップS4において自端末10に送信されたテレビ電話着信通知に応答するためのテレビ電話着信接続応答をMSC/GMSC20へ返送する(ステップS14)。
【0038】
テレビ電話着信接続応答を受信したMSC/GMSC20は、回線交換の無線ベアラの確立指示を行うことにより、UTRAN40とユーザ端末10との間で無線ベアラの確立処理を実施し(ステップS15)、テレビ電話着信を実施するための伝送路を接続する。以上により回線接続制御処理が完了する。
MSC/GMSC20の着信優先部231は、回線接続制御処理の完了後、発側のユーザ端末に対してテレビ電話着信接続応答を送信する(ステップS16)。これにより、発側のユーザ端末と着側のユーザ端末10とのテレビ電話通信が開始される。
【0039】
[2.3.パケット通信優先処理]
次に、図6を参照して、着信処理選択システムが行うパケット通信優先処理について説明する。
上述したステップS5で、ユーザがユーザ選択画面上の“パケット通信優先”を選択した場合に(ステップS21)、ユーザ端末10のパケット通信優先部132は、テレビ電話着信の切断理由を含むテレビ電話着信切断要求をMSC/GMSC20へ送出する(ステップS22)。
【0040】
MSC/GMSC20のパケット通信優先部232は、ユーザ端末10から受信したテレビ電話着信の切断理由を含むテレビ電話着信切断通知を発側のユーザ端末まで送信する(ステップS23)。発側のユーザ端末は、受信した切断理由を例えばディスプレイ上に表示する。これにより、発側のユーザは切断理由を認識することができる。
ユーザ端末10のパケット通信優先部132は、パケット通信を継続する(ステップS24)。
【0041】
以上説明したように、ユーザが何れの通信サービスを優先するかを事前設定しておかなくても、ユーザ端末10のパケット通信中にテレビ電話着信が発生した時点で、ユーザは自らの意思に応じてフレキシブルに何れかの通信サービスを選択することが可能となり、利便性が向上する。また、マルチコールを利用しないため、1台のユーザ端末10が無線リソース等のネットワークリソースを多く専有することを防ぐことができ、ネットワークリソースを有効に利用することが可能となる。また、発側のユーザに切断理由の通知を行うため、利便性を向上させることができる。
【0042】
[3.変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で様々な変形が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(1)上述した実施形態においては、ユーザ端末10のパケット通信中にユーザ端末10に対してテレビ電話が着信する場合について説明したが、着信する通信サービスの種類はテレビ電話に限定されることはない。例えば、音声着信、VoIP着信等の、リアルタイムにユーザが応答する必要のある通信サービスを始めとして、様々な種類の通信サービスの着信が考えられる。テレビ電話の着信を他の通信サービスの着信に置き換える場合には、上述した実施形態におけるMSC/GMSC20を他の通信サービスの接続制御を行う機能を備えた交換機に置き換えることで、他の通信サービス着信に対応した着信処理選択システムを実現することが可能である。
【0043】
(2)上述した実施形態においては、ユーザ端末10は携帯電話機であるとして説明したが、パケット通信と、パケット通信中に着信する他の通信サービスとの両方の通信サービスを受けることが可能な端末であればよく、例えば、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistance)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
テレビ電話やパケット通信等、複数の通信サービスの提供を受けることが可能なユーザ端末に利用することが可能であり、パケット通信中に他の通信サービスが着信した時に、ネットワークリソースを専有せずに、ユーザの選択に応じた適切な通信サービスを提供する通信サービス産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る着信処理選択システムの全体構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係るユーザ端末の機能構成を示す図である。
【図3】同実施形態に係るMSC/GMSCの機能構成を示す図である。
【図4】同実施形態に係る着信時処理の手順を示す図である。
【図5】同実施形態に係るテレビ電話優先処理の手順を示す図である。
【図6】同実施形態に係るパケット通信優先処理の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 ユーザ端末
11 選択部
12 待合部
13 接続制御部
131 着信優先部
132 パケット通信優先部
133 発側ユーザ通知機能
20 MSC/GMSC
21 パケット状態確認部
22 通知部
23 接続制御部
24 待合部
231 着信優先部
232 パケット通信優先部
233 転送機能
30 SGSN/GGSN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末のパケット通信中に該ユーザ端末に対する他の通信サービスの着信が発生した場合に、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択手段と、
前記選択手段により前記着信の優先が選択された場合には、前記パケット通信の切断処理を実施した後に前記他の通信サービスの着信処理を実施する着信優先手段と、
前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合には、前記他の通信サービスの着信の切断処理を実施すると共に前記パケット通信を継続するパケット通信優先手段と
を備えることを特徴とする着信処理選択システム。
【請求項2】
自端末のパケット通信中に自端末に対する他の通信サービスの着信が発生した旨の通知を受信した場合に、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択手段と、
前記選択手段による選択があるまで、前記他の通信サービスの着信に対する発側への呼出中の通知処理は行いつつ、着信に関わる処理を待ち合わせる待合手段と
を備えることを特徴とするユーザ端末。
【請求項3】
前記選択手段による選択結果に応じて、前記パケット通信と前記他の通信サービスとの何れか一方の通信を接続するように制御を行う接続制御手段をさらに備えることを特徴とする
請求項2に記載のユーザ端末。
【請求項4】
前記接続制御手段は、
前記選択手段により前記着信の優先が選択された場合に、
前記パケット通信の切断を実施するためのパケット通信切断要求を送信し、
前記パケット通信の切断が完了した旨の通知を受信した後に、前記他の通信サービス用の伝送路を接続するための着信接続応答を送信することを特徴とする
請求項3に記載のユーザ端末。
【請求項5】
前記接続制御手段は、
前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合に、
前記他の通信サービスの着信を切断するための着信切断要求を送信すると共に前記パケット通信を継続することを特徴とする
請求項3又は4に記載のユーザ端末。
【請求項6】
前記接続制御手段は、
前記選択手段により前記パケット通信の優先が選択された場合に、
前記他の通信サービスの着信の切断理由を発側のユーザ端末に送信することを特徴とする
請求項5に記載のユーザ端末。
【請求項7】
ユーザ端末に対してある通信サービスの着信が発生した場合に、前記ユーザ端末の通信状態を確認する通信状態確認手段と、
前記通信状態確認手段によって前記ユーザ端末がパケット通信中であることが確認された場合に、前記ある通信サービスを接続するために必要となる伝送路の確立を待ち合わせる待合手段と、
パケット通信中に前記ある通信サービスの着信が発生した旨の通知を前記ユーザ端末に送信する通知手段と
を備えることを特徴とする交換機。
【請求項8】
前記ユーザ端末を利用するユーザによって前記ある通信サービスの着信を優先する旨の選択がなされた場合に、前記パケット通信の切断処理完了後に前記ある通信サービスの着信を実施するための処理を行う着信優先手段をさらに備えることを特徴とする
請求項7に記載の交換機。
【請求項9】
前記ユーザ端末を利用するユーザによって前記パケット通信を優先する旨の選択がなされた場合に、前記ある通信サービスの着信の切断時に前記ユーザ端末から送信されてきた前記着信の切断理由を発側のユーザ端末に転送する転送手段をさらに備えることを特徴とする
請求項7又は8に記載の交換機。
【請求項10】
ユーザ端末に対してある通信サービスの着信が発生した場合に、交換機が、前記ユーザ端末の通信状態を確認する通信状態確認ステップと、
前記通信状態確認ステップにおいて前記ユーザ端末がパケット通信中であることが確認された場合に、前記交換機が、パケット通信中に前記ある通信サービスの着信が発生した旨の通知を前記ユーザ端末に送信する通知ステップと、
前記ユーザ端末が、前記通知ステップにおける通知を契機として、前記パケット通信と前記着信との何れを優先するかをユーザに選択させる選択ステップと、
前記選択ステップにおける選択結果に応じて、前記パケット通信の切断処理を実施した後に前記ある通信サービスの着信処理を実施する着信優先処理と、前記ある通信サービスの着信の切断処理を実施すると共に前記パケット通信を継続するパケット通信優先処理と、の何れか一方を実施する接続制御ステップと
を有することを特徴とする着信処理選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−19999(P2007−19999A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200752(P2005−200752)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】