着座検知装置
【課題】
感圧スイッチの接続特性に対する温度の影響を少なくし、安定した検知精度が得られる着座検知装置を提案する。
【解決手段】
上下一対のフィルムシート21、22の少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、フィルムシート21、22が互いに上下に接触する屈曲部35を設け、屈曲部35は電極51、52を囲むように配置した。
感圧スイッチの接続特性に対する温度の影響を少なくし、安定した検知精度が得られる着座検知装置を提案する。
【解決手段】
上下一対のフィルムシート21、22の少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、フィルムシート21、22が互いに上下に接触する屈曲部35を設け、屈曲部35は電極51、52を囲むように配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートへの乗員の着座を検知する着座検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座検知装置としては、図11に示すように、互いに上下にして配置された、一対のフィルムシート221、222の間に空間231を設け、各フィルムシート221、222の表面に電極251、252を対向するように配置して構成された感圧スイッチ250を備えるものが知られている。このような着座検知装置では、乗員が着座したときの荷重によってフィルムシート221、222が2点鎖線に示される状態に撓み、両電極251、252が互い当接する。そして、電気的な判定装置で感圧スイッチ250が導通状態であることを判定して、着座が検知される。
【0003】
このような感圧スイッチ250の構成では、荷重が作用していないとき、一対のフィルムシート221、222を所定の間隔に確保するため、空間231を水平方向で囲むようにスペーサ225が配置されている。スペーサ225は、粘着部材228によって一対のフィルムシート221、222と接着し固定する。スペーサ225及び粘着部材228によりフィルムシート221、222と接着し固定する固定部を構成する。
【0004】
(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許2909961公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の着座検知装置の感圧スイッチ250の構成では、空間231の周囲となる部分で、フィルムシート221、222は粘着部材228よって固定されている。粘着部材228は、良い接着性を得るように、その物性が設定されているが、フィルムシート221、222に比べて温度変化によって材料硬度が大きく変化する。特に低温で粘着部材228の硬度は大きく増加し、粘着部材228によって周囲が支持されているフィルムシート221、222は、撓み難くなる。逆に高温では撓み易くなりすぎて、僅かの荷重でも感圧スイッチ250が導通状態になってしまい、検知精度が温度によって大きく影響を受けて、検知精度が安定しない問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記従来技術における感圧スイッチの検知精度に対する温度の影響を少なくし、安定した検知精度が得られる着座検知装置を提案することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、乗員が着座するシート内に上下一対になって配置されるフィルムシートと、前記シート上に加わる荷重による前記フィルムシートの変形によって接続するように前記フィルムシートに密着して設けられた電極を備える感圧スイッチと、前記感圧スイッチの接続を検出する判定回路と、を備える着座検知装置において、上下一対の前記フィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、前記フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、前記屈曲部は前記電極を囲むように配置されることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載のように本発明で講じた第2の技術的手段は、前記一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、前記屈曲部は前記固定部と前記電極との間に配置されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載のように本発明で講じた第3の技術的手段は、前記屈曲部に前記電極側と前記屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備えることを特徴としている。
【0010】
更に、請求項4に記載のように本発明で講じた第4の技術的手段は、上下一対の前記フィルムシートの一方にのみ前記屈曲部を形成し、前記屈曲部のない他方の前記フィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、前記一方のフィルムシートに前記第1電極と前記第2電極と接触して、前記第1電極と前記第2電極を接続する第3電極を設けて構成した前記感圧スイッチを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上下一対のフィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、屈曲部は電極を囲むように配置されるため、フィルムシートにより成形された屈曲部により温度変化の影響を受けず安定した検知精度を有する着座検知装置が実現できる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、屈曲部は固定部と電極との間に配置されるため、固定部の温度変化の影響を受けずに、フィルムシートの撓み特性を有することができる。これによって、感圧スイッチの検知精度は温度の影響を受け難くなり、安定した検知精度を備える着座検知装置が実現できる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、屈曲部に電極側と屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備えるため、屈曲部が囲み電極が配置される空間内の例えば空気が通気孔によって容易に出入ができるために、空間内の空気圧力の変化が感圧スイッチの検知精度に影響を与えることはなく、更に安定した検出精度を備える着座検知装置が実現できる。
【0014】
更に、請求項4に記載の発明によれば、上下一対のフィルムシートの一方にのみ屈曲部を形成し、屈曲部のない他方のフィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、一方のフィルムシートに第1電極と第2電極と接触して、第1電極と第2電極を接続する第3電極を設けて構成した感圧スイッチを備えるので、電極及び配線をパターン印刷工法などで安価にフィルムシートに設けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施形態を図面を基に説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、本実施形態の着座検知装置2を平面図で示す。着座検知装置2は、感圧部5と、感圧部5からの電気信号に基づき、シート1(図9)への乗員の着座の有無を判定する検出部6から構成される。
【0017】
図9と図10に示されるように、着座検知装置2の感圧部5は、車両用のシート1に乗員が着座したとき、乗員の体重が作用するシートクッション10の中に配置される。図10のシートクッション10の断面図に詳細に示されるように、平面形状を呈する感圧部5は、発泡樹脂などの弾性材料で構成されているシート表皮13とクッションパッド14の間に配置されている。
【0018】
更に、図1に示されるように、着座検知装置2の感圧部5は、連結されて構成された多数の感圧スイッチ50を有する。図6は、着座検知装置2を電気回路図で表したもので、感圧部5内の配線57、58で各感圧スイッチ50は電気的に並列に接続されている。そして、少なくともいずれか1つの感圧スイッチ50が接続されたときに、検出部6へは電源電圧Vccが入力される構成となっている。そして、検出部6によって乗員の着座有りと判定される。
【0019】
図2及び図3に、1つの感圧スイッチ50を拡大して、平面図と中央断面図で示す。感圧スイッチ50は、シートクッション10に乗員が着座していないとき状態で示されている。
【0020】
感圧スイッチ50は、上下一対になって配置される上側フィルムシート21と、下側フィルムシート22を有する。上側フィルムシート21と下側フィルムシート22の間に、所定の厚さを持つスペーサ25が配置される。スペーサ25の上下の両面には粘着部材28が着けられ、上側と下側フィルムシート21、22とスペーサ25を接着し固定している。スペーサ25及び粘着部材28は、上下一対のフィルムシート21、22を固定する固定部を構成する。
【0021】
また、上側と下側フィルムシート21、22の間には、部分的にスペーサ25が配置されていなく、周囲をスペーサ25と粘着部材28で囲まれるように設けられた空間31がある。空間31内に位置して、上側フィルムシート21には上側電極51が、また下側フィルムシート22には下側電極52がパターン印刷等の工法で密着して設けられている。
【0022】
図3に更に示されるように、上側フィルムシート21は、上側フィルムシート21をV字型の溝形状になるように屈曲して成形された屈曲部35を備える。屈曲部35は空間31の周囲を囲むように延びて環状となっている。屈曲部35の下端部35aは、感圧スイッチ50に荷重が作用していない状態で、下側フィルムシート22の上面に当接する形状となっている。屈曲部35が下側フィルムシート22の上面に当接することにより、粘着部材などを介在せず、上側フィルムシート21と下側フィルムシート22との間に所定の間隔を保持できる。
【0023】
図4は、シートクッション10に乗員が着座したときの感圧スイッチ50を示し、図3と同様に感圧スイッチ50の中央部での断面図である。乗員の荷重で、シート表皮13とクッションパッド14が下方向に圧縮されると共に、感圧スイッチ50の上側と下側フィルムシート21、22は、互いに近接する方向に撓む。そして、上側電極51と下側電極52が互いに接触して電気的に接続される状態となる。
【0024】
感圧スイッチ50に荷重が作用したとき、V字型の溝となっている屈曲部35は、下端部35aが下側フィルムシート22と当接しているために、V字型の溝が開くように変形する。そして、環状形状の屈曲部35の内側部分で上側フィルムシート21は、他の部分より下方に撓み易く、感圧スイッチ50の検知精度を向上している。
【0025】
一方、スペーサ25の上下にある粘着部材28は、空間31が変形する際にほとんど圧縮されることはなく、感圧スイッチ50の検知精度には、ほとんど影響を及ぼさない構成となっている。従って、粘着部材28の硬度が温度によって大きく変化しても、感圧スイッチ50の接続特性には影響を及ぼさない構成となっている。
【0026】
感圧スイッチ50の温度による変化を最小にするためには、上側及び下側フィルムシート21、22の材質を、極力温度による硬度の変化が少ないものを適用することで実現できる。屈曲部35はフィルムシート屈曲させて、フィルムシートと同一部材で成形されるため、電極51が密着されるフィルムシート21の撓み特性に対する温度変化の影響を少なくできる。
【0027】
一方、粘着部材28については、スペーサ25と上側及び下側フィルムシート21、22の最良の接着性を得るように材質を選択できる。
【0028】
尚、図3及び図4に示す実施例では、上側フィルムシート21に屈曲部35を設けているが、上記説明からも明らかなように空間31の周囲の部分で上側及び下側フィルムシート21、22を互いに接触させ、且つ撓みやすく屈曲させた構造であれば良い。従って、上側と下側フィルムシート21、22のいずれか一方または両方に屈曲部35を設ける構造にしても良い。
【0029】
図5は、図2におけるV-V断面を示す。屈曲部35の下端部35aには、下側フィルムシート22の表面と当接する一部分を切欠いて、屈曲部35の電極51側に位置する空間31内の空気が容易に屈曲部35を挟んで電極51の反対側に位置する外部に対して出入できるように通気孔32が形成されている。通気孔32は、感圧スイッチ50が荷重で変形する際、空間31内の空気圧力の変化が及ぼす影響を最小にする。
【0030】
次に、以上のように構成された、着座検知装置2の作動を説明する。シートクッション10上に所定以上の荷重が作用すると、複数の感圧スイッチ50の少なくとも1つが接続されることによって、検出部6には電源電圧Vccが信号として入力される。検出部6内には、電源電圧Vccより低く設定された閾値を有する判定回路61が備えられ、入力信号によってシートクッション10上に乗員が着座したことを判定する。
【0031】
次に、図7、図8に用いて、本発明の第2の実施例の感圧スイッチ150について説明する。
【0032】
感圧スイッチ150の空間31内にあって、屈曲部35を設けていない下側フィルムシート22の表面に、第1電極151と第2電極152を所定の間隔を持って対向するように並べ配置している。また、屈曲部135を備える上側フィルムシート21の表面には第3電極153が設けられている。
【0033】
第1電極151と第2電極152は夫々、他の感圧スイッチ150の第1電極151と第2電極152と配線157、158で連結されている。一方、第3電極153は、配線を有しない。
【0034】
感圧スイッチ150に荷重が加わったとき、第3電極153は第1電極151と第2電極152の両方に接触して、第1電極151と第2電極152が導通する。このように構成された感圧スイッチ150では、屈曲部35の表面に電極のための配線を設ける必要がなく、製造が容易になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る着座検知装置の平面図である。
【図2】実施形態に係る着座検知装置の感圧スイッチの平面図である。
【図3】図3のIII−IIIにおける断面図で、感圧スイッチに荷重が作用していない状態を示す。
【図4】図3のIII−IIIにおける断面図で、感圧スイッチに荷重が作用している状態を示す。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】実施形態に係る着座検知装置の電気回路図である。
【図7】実施形態に係る着座検知装置の感圧スイッチの第2実施例の平面図である。
【図8】図7のVIII−VIIIにおける断面図である。
【図9】実施形態に係る着座検知装置を備えたシートの斜視図である。
【図10】図9のX−Xにおける断面図である。
【図11】従来の着座検知装置の実施形態における、感圧スイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…シート
2…着座検知装置
21…上側フィルムシート(フィルムシート)
22…下側フィルムシート(フィルムシート)
25…スペーサ
28…粘着部材
31…空間
32…通気孔
35…屈曲部
50…感圧スイッチ
51…上側電極(電極)
52…下側電極(電極)
61…判定回路
151…第1電極
152…第2電極
153…第3電極
【技術分野】
【0001】
本発明はシートへの乗員の着座を検知する着座検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座検知装置としては、図11に示すように、互いに上下にして配置された、一対のフィルムシート221、222の間に空間231を設け、各フィルムシート221、222の表面に電極251、252を対向するように配置して構成された感圧スイッチ250を備えるものが知られている。このような着座検知装置では、乗員が着座したときの荷重によってフィルムシート221、222が2点鎖線に示される状態に撓み、両電極251、252が互い当接する。そして、電気的な判定装置で感圧スイッチ250が導通状態であることを判定して、着座が検知される。
【0003】
このような感圧スイッチ250の構成では、荷重が作用していないとき、一対のフィルムシート221、222を所定の間隔に確保するため、空間231を水平方向で囲むようにスペーサ225が配置されている。スペーサ225は、粘着部材228によって一対のフィルムシート221、222と接着し固定する。スペーサ225及び粘着部材228によりフィルムシート221、222と接着し固定する固定部を構成する。
【0004】
(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許2909961公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の着座検知装置の感圧スイッチ250の構成では、空間231の周囲となる部分で、フィルムシート221、222は粘着部材228よって固定されている。粘着部材228は、良い接着性を得るように、その物性が設定されているが、フィルムシート221、222に比べて温度変化によって材料硬度が大きく変化する。特に低温で粘着部材228の硬度は大きく増加し、粘着部材228によって周囲が支持されているフィルムシート221、222は、撓み難くなる。逆に高温では撓み易くなりすぎて、僅かの荷重でも感圧スイッチ250が導通状態になってしまい、検知精度が温度によって大きく影響を受けて、検知精度が安定しない問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記従来技術における感圧スイッチの検知精度に対する温度の影響を少なくし、安定した検知精度が得られる着座検知装置を提案することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、乗員が着座するシート内に上下一対になって配置されるフィルムシートと、前記シート上に加わる荷重による前記フィルムシートの変形によって接続するように前記フィルムシートに密着して設けられた電極を備える感圧スイッチと、前記感圧スイッチの接続を検出する判定回路と、を備える着座検知装置において、上下一対の前記フィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、前記フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、前記屈曲部は前記電極を囲むように配置されることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載のように本発明で講じた第2の技術的手段は、前記一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、前記屈曲部は前記固定部と前記電極との間に配置されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載のように本発明で講じた第3の技術的手段は、前記屈曲部に前記電極側と前記屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備えることを特徴としている。
【0010】
更に、請求項4に記載のように本発明で講じた第4の技術的手段は、上下一対の前記フィルムシートの一方にのみ前記屈曲部を形成し、前記屈曲部のない他方の前記フィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、前記一方のフィルムシートに前記第1電極と前記第2電極と接触して、前記第1電極と前記第2電極を接続する第3電極を設けて構成した前記感圧スイッチを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上下一対のフィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、屈曲部は電極を囲むように配置されるため、フィルムシートにより成形された屈曲部により温度変化の影響を受けず安定した検知精度を有する着座検知装置が実現できる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、屈曲部は固定部と電極との間に配置されるため、固定部の温度変化の影響を受けずに、フィルムシートの撓み特性を有することができる。これによって、感圧スイッチの検知精度は温度の影響を受け難くなり、安定した検知精度を備える着座検知装置が実現できる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、屈曲部に電極側と屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備えるため、屈曲部が囲み電極が配置される空間内の例えば空気が通気孔によって容易に出入ができるために、空間内の空気圧力の変化が感圧スイッチの検知精度に影響を与えることはなく、更に安定した検出精度を備える着座検知装置が実現できる。
【0014】
更に、請求項4に記載の発明によれば、上下一対のフィルムシートの一方にのみ屈曲部を形成し、屈曲部のない他方のフィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、一方のフィルムシートに第1電極と第2電極と接触して、第1電極と第2電極を接続する第3電極を設けて構成した感圧スイッチを備えるので、電極及び配線をパターン印刷工法などで安価にフィルムシートに設けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施形態を図面を基に説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、本実施形態の着座検知装置2を平面図で示す。着座検知装置2は、感圧部5と、感圧部5からの電気信号に基づき、シート1(図9)への乗員の着座の有無を判定する検出部6から構成される。
【0017】
図9と図10に示されるように、着座検知装置2の感圧部5は、車両用のシート1に乗員が着座したとき、乗員の体重が作用するシートクッション10の中に配置される。図10のシートクッション10の断面図に詳細に示されるように、平面形状を呈する感圧部5は、発泡樹脂などの弾性材料で構成されているシート表皮13とクッションパッド14の間に配置されている。
【0018】
更に、図1に示されるように、着座検知装置2の感圧部5は、連結されて構成された多数の感圧スイッチ50を有する。図6は、着座検知装置2を電気回路図で表したもので、感圧部5内の配線57、58で各感圧スイッチ50は電気的に並列に接続されている。そして、少なくともいずれか1つの感圧スイッチ50が接続されたときに、検出部6へは電源電圧Vccが入力される構成となっている。そして、検出部6によって乗員の着座有りと判定される。
【0019】
図2及び図3に、1つの感圧スイッチ50を拡大して、平面図と中央断面図で示す。感圧スイッチ50は、シートクッション10に乗員が着座していないとき状態で示されている。
【0020】
感圧スイッチ50は、上下一対になって配置される上側フィルムシート21と、下側フィルムシート22を有する。上側フィルムシート21と下側フィルムシート22の間に、所定の厚さを持つスペーサ25が配置される。スペーサ25の上下の両面には粘着部材28が着けられ、上側と下側フィルムシート21、22とスペーサ25を接着し固定している。スペーサ25及び粘着部材28は、上下一対のフィルムシート21、22を固定する固定部を構成する。
【0021】
また、上側と下側フィルムシート21、22の間には、部分的にスペーサ25が配置されていなく、周囲をスペーサ25と粘着部材28で囲まれるように設けられた空間31がある。空間31内に位置して、上側フィルムシート21には上側電極51が、また下側フィルムシート22には下側電極52がパターン印刷等の工法で密着して設けられている。
【0022】
図3に更に示されるように、上側フィルムシート21は、上側フィルムシート21をV字型の溝形状になるように屈曲して成形された屈曲部35を備える。屈曲部35は空間31の周囲を囲むように延びて環状となっている。屈曲部35の下端部35aは、感圧スイッチ50に荷重が作用していない状態で、下側フィルムシート22の上面に当接する形状となっている。屈曲部35が下側フィルムシート22の上面に当接することにより、粘着部材などを介在せず、上側フィルムシート21と下側フィルムシート22との間に所定の間隔を保持できる。
【0023】
図4は、シートクッション10に乗員が着座したときの感圧スイッチ50を示し、図3と同様に感圧スイッチ50の中央部での断面図である。乗員の荷重で、シート表皮13とクッションパッド14が下方向に圧縮されると共に、感圧スイッチ50の上側と下側フィルムシート21、22は、互いに近接する方向に撓む。そして、上側電極51と下側電極52が互いに接触して電気的に接続される状態となる。
【0024】
感圧スイッチ50に荷重が作用したとき、V字型の溝となっている屈曲部35は、下端部35aが下側フィルムシート22と当接しているために、V字型の溝が開くように変形する。そして、環状形状の屈曲部35の内側部分で上側フィルムシート21は、他の部分より下方に撓み易く、感圧スイッチ50の検知精度を向上している。
【0025】
一方、スペーサ25の上下にある粘着部材28は、空間31が変形する際にほとんど圧縮されることはなく、感圧スイッチ50の検知精度には、ほとんど影響を及ぼさない構成となっている。従って、粘着部材28の硬度が温度によって大きく変化しても、感圧スイッチ50の接続特性には影響を及ぼさない構成となっている。
【0026】
感圧スイッチ50の温度による変化を最小にするためには、上側及び下側フィルムシート21、22の材質を、極力温度による硬度の変化が少ないものを適用することで実現できる。屈曲部35はフィルムシート屈曲させて、フィルムシートと同一部材で成形されるため、電極51が密着されるフィルムシート21の撓み特性に対する温度変化の影響を少なくできる。
【0027】
一方、粘着部材28については、スペーサ25と上側及び下側フィルムシート21、22の最良の接着性を得るように材質を選択できる。
【0028】
尚、図3及び図4に示す実施例では、上側フィルムシート21に屈曲部35を設けているが、上記説明からも明らかなように空間31の周囲の部分で上側及び下側フィルムシート21、22を互いに接触させ、且つ撓みやすく屈曲させた構造であれば良い。従って、上側と下側フィルムシート21、22のいずれか一方または両方に屈曲部35を設ける構造にしても良い。
【0029】
図5は、図2におけるV-V断面を示す。屈曲部35の下端部35aには、下側フィルムシート22の表面と当接する一部分を切欠いて、屈曲部35の電極51側に位置する空間31内の空気が容易に屈曲部35を挟んで電極51の反対側に位置する外部に対して出入できるように通気孔32が形成されている。通気孔32は、感圧スイッチ50が荷重で変形する際、空間31内の空気圧力の変化が及ぼす影響を最小にする。
【0030】
次に、以上のように構成された、着座検知装置2の作動を説明する。シートクッション10上に所定以上の荷重が作用すると、複数の感圧スイッチ50の少なくとも1つが接続されることによって、検出部6には電源電圧Vccが信号として入力される。検出部6内には、電源電圧Vccより低く設定された閾値を有する判定回路61が備えられ、入力信号によってシートクッション10上に乗員が着座したことを判定する。
【0031】
次に、図7、図8に用いて、本発明の第2の実施例の感圧スイッチ150について説明する。
【0032】
感圧スイッチ150の空間31内にあって、屈曲部35を設けていない下側フィルムシート22の表面に、第1電極151と第2電極152を所定の間隔を持って対向するように並べ配置している。また、屈曲部135を備える上側フィルムシート21の表面には第3電極153が設けられている。
【0033】
第1電極151と第2電極152は夫々、他の感圧スイッチ150の第1電極151と第2電極152と配線157、158で連結されている。一方、第3電極153は、配線を有しない。
【0034】
感圧スイッチ150に荷重が加わったとき、第3電極153は第1電極151と第2電極152の両方に接触して、第1電極151と第2電極152が導通する。このように構成された感圧スイッチ150では、屈曲部35の表面に電極のための配線を設ける必要がなく、製造が容易になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る着座検知装置の平面図である。
【図2】実施形態に係る着座検知装置の感圧スイッチの平面図である。
【図3】図3のIII−IIIにおける断面図で、感圧スイッチに荷重が作用していない状態を示す。
【図4】図3のIII−IIIにおける断面図で、感圧スイッチに荷重が作用している状態を示す。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】実施形態に係る着座検知装置の電気回路図である。
【図7】実施形態に係る着座検知装置の感圧スイッチの第2実施例の平面図である。
【図8】図7のVIII−VIIIにおける断面図である。
【図9】実施形態に係る着座検知装置を備えたシートの斜視図である。
【図10】図9のX−Xにおける断面図である。
【図11】従来の着座検知装置の実施形態における、感圧スイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…シート
2…着座検知装置
21…上側フィルムシート(フィルムシート)
22…下側フィルムシート(フィルムシート)
25…スペーサ
28…粘着部材
31…空間
32…通気孔
35…屈曲部
50…感圧スイッチ
51…上側電極(電極)
52…下側電極(電極)
61…判定回路
151…第1電極
152…第2電極
153…第3電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート内に上下一対になって配置されるフィルムシートと、
前記シート上に加わる荷重による前記フィルムシートの変形によって接続するように前記フィルムシートに密着して設けられた電極を備える感圧スイッチと、
前記感圧スイッチの接続を検出する判定回路と、を備える着座検知装置において、
上下一対の前記フィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、前記フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、前記屈曲部は前記電極を囲むように配置される着座検知装置。
【請求項2】
前記一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、前記屈曲部は前記固定部と前記電極との間に配置される請求項1に記載の着座検知装置。
【請求項3】
前記屈曲部に前記電極側と前記屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備える請求項1又は2に記載の着座検知装置。
【請求項4】
上下一対の前記フィルムシートの一方にのみ前記屈曲部を形成し、前記屈曲部のない他方の前記フィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、前記一方のフィルムシートに前記第1電極と前記第2電極と接触して、前記第1電極と前記第2電極を接続する第3電極を設けて構成した前記感圧スイッチを備える請求項1乃至3に記載の着座検知装置。
【請求項1】
乗員が着座するシート内に上下一対になって配置されるフィルムシートと、
前記シート上に加わる荷重による前記フィルムシートの変形によって接続するように前記フィルムシートに密着して設けられた電極を備える感圧スイッチと、
前記感圧スイッチの接続を検出する判定回路と、を備える着座検知装置において、
上下一対の前記フィルムシートの少なくともいずれか一方を屈曲させて成形し、前記フィルムシートが互いに上下に接触する屈曲部を設け、前記屈曲部は前記電極を囲むように配置される着座検知装置。
【請求項2】
前記一対のフィルムシートを固定する固定部が設けられ、前記屈曲部は前記固定部と前記電極との間に配置される請求項1に記載の着座検知装置。
【請求項3】
前記屈曲部に前記電極側と前記屈曲部を挟んで反対側を連通する通気孔を備える請求項1又は2に記載の着座検知装置。
【請求項4】
上下一対の前記フィルムシートの一方にのみ前記屈曲部を形成し、前記屈曲部のない他方の前記フィルムシートに第1電極と第2電極を設けて、前記一方のフィルムシートに前記第1電極と前記第2電極と接触して、前記第1電極と前記第2電極を接続する第3電極を設けて構成した前記感圧スイッチを備える請求項1乃至3に記載の着座検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−80998(P2008−80998A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264643(P2006−264643)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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