説明

着色プライマー組成物及び方法

実質的に透明な基材を、構造の開口部内に接合する方法であって、実質的に透明な基材、例えばガラスを、着色剤を含むプライマー組成物に適用するステップと、接着剤を、開口部を画定する構造に適用するステップと、実質的に透明な基材を開口部内に取り付けるステップとを含み、結果として取り付けられた基材がいかなるセラミックエナメルも実質的に含まない方法。着色剤を含み、いかなるセラミックエナメルも実質的に含まないプライマー組成物を含む組立体も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国仮出願第60/949,369号(2007年7月12日出願)の出願日の利益を主張し、この内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、実質的に透明な基材の接合に関し、特に自動車両用途のガラス接合に関する。
【0003】
発明の背景
多数の自動車両の窓組立体において、暗色又は不透明の周辺バンドを含み、特にその縁端部の1つ又はそれ以上に沿って無機フリットを含む透明基材が使用されている。このバンドは、典型的には、セラミックエナメルをガラス基材に適用し、次にコーティングされたガラスを焼成してセラミックエナメルとガラスとの間に強い接合を実現することによって形成される。このようなセラミックエナメルの焼成が必要であるため、使用されるガラスが焼成条件に耐えることが実質的に要求される。残念ながら、焼成後、結果として生じる欠陥のために、コーティングされたガラス基材が廃棄される傾向にある。
【0004】
適切に製造された場合、プライマー1つ又はそれ以上の層をガラス基材の焼成されたセラミックエナメルの層の上に適用し、プライマーと車両構造との間に接着剤を適用し、ガラス基材を開口部内に配置することによって、ガラス基材が自動車両構造の開口部内に取り付けられる。
【0005】
窓の組立の簡略化された方法の1つが、Baikerikarらによる2006年6月20日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/472,119号(2005年6月20日に出願された米国特許出願第60/692,318号に優先する)(参照により組み込まれる)において提案されており、国際公開第2007/002328号としても公開されている。これらに開示されている技術の利益にもかかわらず、将来の用途では、さらなる魅力的な接合系が正当化され続けるであろうと考えられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、実質的に透明な基材を構造の開口部内に接合する独自の方法であって、実質的に透明な基材に、着色剤を含むプライマー組成物を適用するステップと、接着剤を、開口部を画定する構造に適用するステップと、実質的に透明な基材を開口部内に取り付けるステップとを含み、結果として取り付けられた基材が、いかなるセラミックエナメルも実質的に有さない、方法に関する。本発明は、本発明の方法を実施した結果得られた組立体、又はセラミックエナメルの層が存在しない基材に接合するための着色プライマーを含むその他の組立体も意図している。
【0007】
詳細な説明
一般に、本発明は、少なくとも1つの着色剤を含み、少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応から誘導される少なくとも1つのプレポリマー、特にイソシアネートを含有しないプレポリマーを含むベースプライマーの使用に基づく。より詳細な一態様では、プライマーは、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導されるイソシアネート官能性プレポリマーを含む。特定の一実施形態においては、プライマーは、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導されるイソシアネート官能性プレポリマーを含み、このプライマーは、シラン、特にアミノシラン(例えば、第2級アミノシラン)のアミノ基と少なくとも部分的に反応しており、このアミノシランは、1つ又はそれ以上のケイ素原子に結合した複数のアルコキシ基(例えば、ケイ素に結合した2又は3個のメトキシ基、ケイ素に結合した2又は3個のエトキシ基、それらの組み合わせなど)を含む。本明細書の教示により使用することができる市販のベースプライマーの例としては、The Dow Chemical Companyより市販されるBetaprime(商標)5500又はBetaprime(商標)5404が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0008】
本明細書で使用される着色剤は、周囲環境の色と実質的に一致させるため、所定の色彩設計を提供するために、又はその両方のために選択することができる。例えば、着色剤は、一般に、本明細書の組成物が接合される自動車両の塗装色に近づくように選択することができる。使用できる着色剤の例としては、1つ又はそれ以上の酸化物(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム)、カーボンブラック、それらのいずれかの組み合わせなどが挙げられる。着色剤は、1つ又はそれ以上の他の材料(例えば、1つ又はそれ以上の有機材料)から選択することもできる。着色剤は、顔料、染料、又はそれらの組み合わせとして提供され得る。着色剤は、天然着色剤、合成的に誘導された着色剤、又はそれらの組み合わせであってもよい。着色剤は、金属感、虹色感、蛍光感、光沢感、艶消し感、半光沢感、又はそれらのいずれかの組み合わせが得られるように選択することができる。
【0009】
有機顔料の例としては、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、カルバゾール類、モノアゾ−及びジスアゾベンズイミダゾロン類、イソインドリノン類、モノアゾナフトール類、ジアリーリドピラゾロン(diarylidepyrazolone)類、ローダミン類、インジゴイド類、キナクリドン類、ジアゾピラントロン類、ジニトラニリン(dinitraniline)類、ピラゾロン類、ジアニシジン類、ピラントロン類、テトラクロロイソインドリノン類、ジオキサジン類、モノアゾアクリリド(monoazoacrylides)類、アントラピリミジン類、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。米国特許出願第2002/0086914号に記載の着色剤も参照され、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
着色剤は典型的には、全プライマー組成物の最大約15重量パーセント(例えば、全プライマー組成物の約0.1〜約15重量パーセント、例えば全プライマー組成物の約1、2、3、5、8、12、又はさらには15重量パーセント)の量で使用される。
【0011】
従って、本明細書の組成物は、イソシアネートとイソシアネート反応性化合物との反応生成物を含むことが意図されている。特定の一態様では、本発明は、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導され、有機官能性シランの活性水素と少なくとも部分的に反応しているプレポリマーを含む組成物の使用を意図している。プレポリマーは、ベースプライマー組成物の一部であってもよい。
【0012】
例として、本明細書で有用なイソシアネートは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択することができる。好適なイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、複素環式、芳香族のイソシアネート、又はそれらのいずれかの組み合わせを挙げることができる。特定の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジフェニル4,4’−ジイソシアネート(MDI)、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択されるイソシアネートを挙げることができ、特に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジフェニル4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択されるイソシアネートを挙げることができる。前述したように、本明細書におけるいずれかのイソシアネートのポリマー誘導体も考慮される。
【0013】
イソシアネートは典型的には、全プライマー組成物の最大約25%、特に最大約15%、特に最大約10重量%の%NCO量を有することができる。例えば、%NCOは、約1〜約10%、特に約3〜約8%の範囲とすることができる。好ましくは使用されるポリイソシアネートは、平均イソシアネート官能価が少なくとも約2.0であり、当量が少なくとも約80である。好ましくは、ポリイソシアネートのイソシアネート官能価は、少なくとも約2.0、より好ましくは少なくとも約2.2であり、最も好ましくは少なくとも約2.4であり、好ましくは約4.0以下、より好ましくは約3.5以下であり、最も好ましくは約3.0以下である。より高い官能価を使用することもできる。好ましくは、ポリイソシアネートの当量は少なくとも約100、より好ましくは少なくとも約110であり、最も好ましくは少なくとも約120であり、好ましくは約300以下、より好ましくは約250以下であり、最も好ましくは約200以下である。
【0014】
例示的なイソシアネート反応性化合物は、少なくとも2つのイソシアネート反応性部分を有する有機化合物、例えば活性水素部分を有する化合物又はイミノ官能性化合物であってもよい。本発明の目的では、「活性水素」含有部分は、分子中の位置のために、ウェーラー(Wohler)によりJournal of the American Chemical Society,Vol.49,p.3181(1927)に記載されているツェレビチノフ(Zerewitnoff)試験により顕著な活性を示す水素原子を含有する部分を意味する。このような活性水素部分の例は、−COOH、−OH、−NH、−NH−、−CONH、−SH、及び−CONH−である。好ましい活性水素含有化合物としては、ポリオール類、ポリアミン類、ポリメルカプタン類、及びポリ酸類が挙げられる。好適なイミノ官能性化合物は、少なくとも1つの末端イミノ基を1分子当たりに有する化合物であり、例えば、米国特許第4,910,279号に記載されており、この記載内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
好適なポリオール類としては、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリ(アルキレンカーボネート)ポリオール類、ヒドロキシル含有ポリチオエーテル類、ポリマーポリオール類、及びそれらの混合物を挙げることができる。ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、及び/又はポリテトラメチレンエーテルを主成分とする1つ又はそれ以上のジオール、トリオール、又はテトロールが挙げられる。一般に、ポリエーテルポリオール類は、アルキレンオキシドを活性水素含有開始剤化合物の存在下で重合させることによって調製される。しかし最も好ましいものはアルキレンオキシドでキャップされたポリオールである。
【0016】
好ましくは、イソシアネート反応性化合物は、少なくとも約2.0、より好ましくは少なくとも約3.0の官能価を有し、好ましくは約5.0以下、より好ましくは約4.5以下、最も好ましくは約4.0以下である。好ましくは、イソシアネート反応性化合物の当量は、少なくとも約200、より好ましくは少なくとも約500であり、より好ましくは少なくとも約1,000であり、好ましくは約5,000以下、より好ましくは約3,000以下であり、最も好ましくは約2,500以下である。特定の一例では、約100〜約1500、特に約300〜約1000の当量を有するポリオールイソシアネート反応性化合物を使用する。
【0017】
イソシアネートとイソシアネート反応性化合物とは、好適な触媒の存在下で反応させることができる。本明細書で使用される触媒としては、例えば、金属錯体、例えば第一スズ又は第二スズ化合物を挙げることができる。例としては、カルボン酸の第一スズ塩(例えば、スタナスオクトエート、スタナスオレエート、スタナスアセテート、及びスタナスラウレート)、トリアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジカルボキシレート(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジエチルスズジアセテート、及びジヘキシルスズジアセテート)、ジアルキルスズジハライド、又はジアルキルスズオキシド、例えばジ−2−エチルヘキシルスズオキシド、又はジオクチルスズジオキシド、第3級アミン、或いはスズメルカプチドが挙げられる。他の触媒を使用することもできる。例えば、第3級アミン触媒としては、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン)、複素環式アミン、例えばN−アルキルモルホリン類(例えばN−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルジアミノジエチルエーテルなど)、1,4−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。脂肪族ポリアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミンを触媒として使用することもできる。非常に好ましい触媒の1つとしては、ジブチルスズ化合物が挙げられ、具体的には、これはジブチルスズジラウレートを含む又はこれから実質的になる。有用な触媒の別の具体例は2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)である。
【0018】
イソシアネート及びイソシアネート反応性化合物は、ケイ素をプライマー中に導入するために好適なシラン(例えばアミノシラン)の存在下で反応させることもできる。
【0019】
本明細書の組成物は、1つ又はそれ以上の他の成分、例えば、溶剤、安定剤、膜形成要素、フィラー、紫外線保護剤、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0020】
例として、プライマー組成物の溶剤成分は一般に揮発性であり、好ましくは約−10℃〜約100℃、より好ましくは約0℃〜約40℃の範囲内の温度で成分を溶解及び/又は分散させる溶剤である。溶剤は、イソシアネートが水と早期に反応するのを防止しやすくするために、好ましくは無水である。このような溶剤の例としては、キシレン、エチルベンゼン、トルエン、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、ブトキシル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシブチルアセテート、NMP、n−ヘプタン、石油、酢酸ブチル、アセトン、及びメチルエチルケトン、又はそれらのいずれかの組み合わせが挙げられ、好ましくはブトキシル、メチルエチルケトン又はそれらの混合物である。溶剤は、結果として得られる又は中間の組成のいずれかの残分を構成し、全プライマー組成物の重量を基準にして、好ましくは少なくとも約50パーセント、より好ましくは少なくとも約55パーセント、最も好ましくは少なくとも約60パーセントの量で使用され、好ましくは約90パーセント以下、より好ましくは約85パーセント以下、最も好ましくは約80パーセント以下である。
【0021】
本明細書の組成物は、1つ又はそれ以上の接着促進剤を含むこともでき、例えば、共通の所有者に所有される米国特許出願第60/913,706号に教示されており、これは参照により組み込まれる。例えば、このような接着促進剤は、有機官能性シランとイソシアネートとの反応生成物であってもよい(例えば、接着促進剤は、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートを含み、これは特にリンを含む)。このようなイソシアネートの一例は、米国特許第6,974,500号に概略的に記載されており、これは参照により組み込まれる。可能性のあるイソシアネートの1つはトリス(p−イソシアナト)チオホスファンである。特に好ましいイソシアネートの1つは、イソシアネート基を有するチオホスフェートであり、例えばトリス(p−イソシアナト−フェニル)−チオホスフェートのエチルアセテート中の溶液であり、商品名DESMODUR RFEで販売されており、ペンシルバニア州ピッツバーグのBayer Corporationより市販されている。
【0022】
本明細書のプライマー組成物は、多数の用途のいずれかで使用することができる。特定の方法の1つは、当分野で開示されている技術を使用して、プライマー組成物(例えば、1液組成物として)、自動車両のフロントガラス、バックライト、サイドウィンドウ、サンルーフ/ムーンルーフ、建築物の窓、天窓、舷窓、ドア開口部、陳列ケース、レンズなどに使用するための基材に適用することである。別の有用な用途の1つは、ラベル、包装材料、容器(例えば、飲料用ビン)などの印刷用である。好ましい用途の1つは、本明細書のプライマー組成物を使用して、実質的に透明のパネル組立体を作製することである。本明細書の組立体は、構造に一時的又は永久的に取り付けるために適合させることができる。組立体は、例えば、スライド、連接、枢動、折り畳み、又はその他のいずれかの組み合わせによる開放、閉鎖、又はその他の変換に適合させることができる。従って、組立体は、1つ又はそれ以上の用途、例えば自動車両のバックライト、サイドウィンドウ、サンルーフ/ムーンルーフ、建築物の窓、天窓、舷窓、ドア開口部、陳列ケースなどに使用することができる。本明細書の組成物及び方法は、あらかじめ適用された接着剤系を、静電気的にプライマー処理された(すなわちe−コートされた)基材、塗装基体、又はそれらのいずれかの組み合わせの上で併用する場合にも特に有用である。
【0023】
典型的には、基材は、実質的に平坦であるか、又は成形されており、例えば、曲面を画定するために成形されている。基材は一般に、表面の面積の少なくとも約25%、特に少なくとも過半量(例えば、表面の面積の少なくとも約60%、75%、又はさらには90%)にわたって、少なくとも1つの表面から透明であり、特に互いに反対側の表面から透明であるパネルである。本明細書の基材は、一般に、実質的に非晶質の材料でできており、特に非晶質セラミック(例えばガラス)、プラスチック、又はそれらの組み合わせでできている。限定するものではないが、好適な基材材料の例としては、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリカーボネート類、ビニル類(例えば、ポリ塩化ビニル類)、ポリエステル類(例えば配向ポリエステル類)、ポリイミド類、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ガラス、それらのいずれかの組み合わせ(例えば積層ガラス)などが挙げられる。特定の一例では、基材は、ガラス、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択される材料を含む、又はさらにはこれらの材料から実質的になる。基材は、積層された層、着色剤、又はそれらのいずれかの組み合わせを有することができる。基材は、反応射出成形されたプラスチックであってもよい。パネル、例えば実質的に透明のパネルを封入する反応射出成形部品を含む組立体は、本明細書の教示により接合することができる。封入されたパネルを製造するための可能性のある方法の一例は米国特許出願第60/870,643号(発明の名称:「封入されたパネル組立体及びその製造方法」(「ENCAPSULATED PANEL ASSEMBLIES AND METHODS FOR MAKING SAME」);参照により組み込まれる)に開示されている。本明細書の組成物は、ピンチウェルド組立体の表面を接合するために使用することもできる。
【0024】
一部の用途では、基材の実質的全面に本明細書の組成物をコーティングすることが必要となる場合があるが、通常は、組成物は基材に選択的に、所定のパターン(例えば、基材の遠端部分に実質的に沿って、基材周辺部に、など)により適用される。例えば、ある方法では、組成物が、基材の縁端部から、約2、5、8、又はさらには12cm以上の幅で中央部分に向かって内側に適用される。組成物は、1つ又はそれ以上の直線、曲線、点、或いは一定又は変動する幅、高さ、長さ、又はその他の寸法のセグメントを含むその他の幾何学的構造を画定するために適用することも可能である。
【0025】
当分野で開示されている種々のパターンのいずれかを適用することができる。本発明のプライマー組成物は、基材(例えば、ガラス又はコーティングされたプラスチック)に、当分野で開示されているあらゆる手段、例えばブラシ、ローラー、表面上への吹き付け、インクジェット印刷、スクリーン印刷などを使用して適用することができる。当分野で開示されているロボット適用装置(例えば、少なくとも2つの運動軸を有する装置)を使用して適用することもできる。組成物を基材表面に適用した後、重合条件に曝露される。
【0026】
本明細書の基材は、典型的には、上に組成物が適用される少なくとも1つの表面を含む。この表面は、組成物の基材への接合強度を改善するために場合により処理することができ、例えばプライマー、溶射、コロナ処理、プラズマ処理、又は一部の他の表面処理によって処理することができる。しかし、特定の一例では、外面にはいかなる表面処理も実質的に行われない。従って、適用後、本発明の組成物は、基材に直接密接に接触し、特に、あらゆる中間界面層が実質的に存在しない。当然ながら、本発明の組成物を基材に適用した後、本発明の組成物及び基材の一方又は両方の一部又は全体の上に、さらに別の層(例えば、保護上塗り層を実現するためのシリコーン、アクリル、ポリウレタンなど)を適用することもできる。本明細書の組成物を、無機又は有機フリットの上、下、及び/又は付近に適用することもできる(例えば、Baikerikarらによる2006年6月20日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/472,119号(2005年6月20日に出願された第60/692,318号に優先する)に教示される種類のフリット)(参照により組み込まれる)。
【0027】
適用すると、本明細書の組成物は一般に最大約250ミクロン以上の厚さを有する。より一般的には、厚さは約150ミクロン未満、約100ミクロン未満、さらには約50ミクロン未満(例えば、約10〜約30ミクロン又はそれ未満)となる。
【0028】
本発明のプライマー組成物と組み合わせて使用される好適な接着剤又はシーラントの例としては、湿気硬化性となり得る1液又は2液性のウレタン組成物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいウレタンは、MDI、HMDI、又はそれらの組み合わせを主成分とする。市販の接着剤の例としては、The Dow Chemical Companyより商品名BETASEAL(商標)、例えばグレード番号58702、16000などの1つ又はそれ以上で入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明は、接着剤又はシーラント組成物と1つ又はそれ以上のプライマー組成物とを含むキットも意図している。例えば、このようなキットは、本発明による1つ又はそれ以上のプライマー組成物を含むことができ、接着剤又はシーラント組成物(例えば、1液ウレタン又は2液ウレタン接着剤)を含む場合も含まない場合もある。キットは、1つ又はそれ以上のクリーナー、アプリケーター、テープ、工具、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むこともできる。本明細書の組成物は、カートリッジ、ホイルパック、又はその両方の中に提供することができる。
【0030】
本明細書の組成物は、一般に硬質で及び耐摩耗性のコーティングが得られる。本発明の組成物は、優れた接着性能及び耐候性を示すことも予想される。本明細書の教示により新しく製造された結果として得られるプライマー材料は、良好な貯蔵安定性を有することも予想される。
【0031】
本明細書の教示による組立体は、室温で7日間のエージング後、より好ましくは、さらに水にさらに7日間浸漬してエージングした後でも、より好ましくは、90℃でさらに7日間エージングした後でも、さらにより好ましくは、さらに7日間のカタプラズマ・サイクリング(cataplasma cycling)の後にも、100%凝集破壊を示すと予想される。本明細書の組成物は、さらに14日間のカタプラズマ・サイクリングの後で100%凝集破壊を示すことも可能である。
【0032】
一般に、カタプラズマ・サイクリングの場合、サンプルは、70℃、相対湿度100%の気候室中に直接7日間保管されるか、又は脱脂綿に包み、十分な水で湿らせ、ポリエチレン袋中に封入して、その後70℃のオーブン中で7日間維持されるかである。次に、サンプルを−20℃の冷凍庫に16時間入れた後、サンプルを室温で2時間静置する。このサイクルを複数回繰り返した後、サンプルを袋から取り出し、簡易ナイフ接着試験(quick knife adhesion test)を行う。望ましくは、プライマー層のふくれが存在せず、破壊はシーラント層中の凝集破壊である。
【0033】
以下の実施例により本明細書の教示を説明する。類似の結果は、成分量の変化が、記載の量の約10又はさらには約25パーセントの範囲内である組成物の場合にも可能であると考えられる。従って、実施例では、このようなばらつきの範囲内にある特定の範囲の濃度も教示している。
【実施例】
【0034】
ラップ剪断試験サンプルは、提案されているSAE J1721に準拠して作製する。ガラスサンプルをイソプロピルアルコールで拭く。次にこれらを、場合によりクリアープライマー(例えば、BETASEAL(登録商標)43518クリアープライマー)でプライマー処理し、約1分間フラッシングする。約0.01〜約0.03mmの未乾燥塗膜厚さで適用する。クリアープライマーの場合、ガラスを濡らしてから約5秒以内に過剰の材料を拭き取る。本発明の着色プライマー組成物を、含まれるクリアープライマーの上に、約0.006〜約0.03mmの乾燥塗膜厚で適用する。この着色プライマー組成物はカーボンブラックを含む。約10分後、シーラントを、得られたプライマー組成物と接触させる(例えば、BETASEAL(登録商標)58702)。サンプルを、23℃及び相対湿度約50%において7日間で硬化させる。次にサンプルを、例えば、SAE J 1885(例えば、少なくとも1000時間)に準拠してウェザオメーターによって環境曝露する。サンプルを約24時間後に取り出し、約12.7cm/分の速度の剪断下、又はASTM D3163に準拠して試験する。
【0035】
具体的には、6.3mm(幅)×6.3mm(高さ)×127mm(長さ)の大きさの接着剤のビードを、25.4mm×152.4mmのプライマー処理したガラス上に配置し、その組立体を所望の条件(例えば23℃及び相対湿度50パーセント)下で特定の時間硬化させることによって、簡易ナイフ接着試験を行う。次に、180度の角度でビード末端部を引き戻しながら、硬化したビードを、45度の角度でプライマー処理面までレザーブレードで切断する。ノッチを、表面上に3mmごとに切り込む。接着の程度は、接着破壊(AF)及び/又は凝集破壊(CF)として評価される。接着破壊の場合、硬化したビードがプライマー処理面から分離することができ、一方凝集破壊では、分離はシーラントビードの内部で切断及び引き戻しの結果として起こる。破壊形態の観察においては、界面領域のどの部分で、その破壊形態が観察されるかが留意される。例えば、凝集破壊が界面領域の約90パーセント(%)で観察される場合、これを90CFと報告することができる。プライマー破壊(PF)は、プライマーを適用した基材(例えば、ガラス)からプライマーが剥離する場合に起こると考えられる。100%の凝集破壊(100CF)の結果が各サンプルで得られる。場合により、ガラス破壊(GB)が生じることもあり、これは具体的には、プライマー処理したガラスが、シーラントの破壊の前に破壊することを意味する。予測される結果を、以下の表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
類似の結果が、カーボンブラックの代わりに本明細書に記載の他の着色剤を使用した場合に得ることができると考えられる。類似の結果が、前述による耐候性試験において少なくとも2000時間でも得ることができると考えられる。
【0038】
サンプルを70℃の水浴中で7日間加熱するカタプラズマ・サイクリングにもサンプルが耐えると考えられる。次にサンプルを脱脂綿で包み、ポリエチレン袋中に封入する。次に、サンプルを−20℃の冷凍庫に16時間入れた後、サンプルを室温で2時間静置する。このサイクルを複数回繰り返した後、サンプルを袋から取り出し、前述の簡易ナイフ接着試験を行う。望ましくは、ふくれが存在せず、破壊はシーラント層中の凝集破壊である。
【0039】
本明細書に示される説明及び例は、当業者に本発明、その原理、及びその実際的応用を知らせることを意図している。当業者は、個別の使用に最適となり得るように、本発明を数多くの形態で適合させ適用することができる。従って、記載の本発明の具体的な実施形態は、本発明の網羅又は限定を意図したものではない。従って本発明の範囲は、上記説明を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲とともに、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる同等物の範囲全体を参照することによって決定されるべきである。特許出願及び刊行物を含めたすべての論文及び参考文献の開示は、すべての目的で参照により組み込まれる。アクリル又は(メタ)アクリル(又は派生語、例えば「アクリレート」)への言及は、メタクリル及びアクリル(及び対応する派生語)を意図している。本明細書において検討される成分は、結果として得られる組成物の一部を形成することができる。しかし、これらの成分は、結果として得られる組成物の添加物部分を形成することもできる。例えば、接着促進剤が、結果として得られる組成物を形成するための混合物中に成分を供給するための媒介物であることが可能である。特に明記しない限り、「接着剤」又は「シーラント」への言及は互いに交換可能である。従って、特定の組成の接着剤への言及は、そのような組成のシーラントも含んでいる。
【0040】
本明細書では、一般に1段階のプライマー組成物中への使用の状況で開示しているが、本発明がそれに限定されるものではない。複数の成分を含むプライマー系の使用が可能であることも意図している。例えば、クリアープライマー(例えばセラミックエナメルを全く含有しないもの)を基材に適用した後、着色剤を含むプライマーをクリアープライマー上に適用することができる。市販のクリアープライマーの例としては、The Dow Chemical CompanyのBETASEAL(商標)16100、43518などが挙げられる。さらに、Betaprime(商標)5500又はBetaprime(商標)5404に特に言及しながら開示してきたが、本明細書の教示により、他のプライマー系、例えばBetaprime(商標)16100、Betaprime(商標)43526、又はBetaprime(商標)43520Aなどを改良することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に透明な基材を構造の開口部内に接合する方法であって、
a.実質的に透明な基材に、着色剤、及び脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導される少なくとも1つのイソシアネート官能性プレポリマーを含むプライマー組成物に適用するステップと、
b.接着剤を、前記開口部を画定する構造に適用するステップと、
c.実質的に透明な基材を前記開口部内に取り付けるステップとを含み、結果として取り付けられた基材が、いかなるセラミックエナメルも実質的に含まない、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、前記着色剤を含む前記プライマー組成物を適用する前に、シラン化化合物を前記実質的に透明な基材に適用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記着色剤がカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記開口部を画定する前記構造が、所定の色を有する自動車両の一部である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
自動車両の所定の色に実質的に一致させるため、所定の色彩設計に合わせるため、又はその両方のために、前記着色剤を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記着色剤が、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾ−又はジスアゾベンズイミダゾロン、イソインドリノン、モノアゾナフトール、ジアリーリドピラゾロン、ローダミン、インジゴイド、キナクリドン、ジアゾピラントロン、ジニトラニリン、ピラゾロン、ジアニシジン、ピラントロン、テトラクロロイソインドリノン、ジオキサジン、モノアゾアクリリド、アントラピリミジン、又はそれらのいずれかの混合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのイソシアネートプレポリマーが、1つ又はそれ以上のケイ素原子に結合した複数のアルコキシ基を含む第2級アミノシランのアミノ基と少なくとも部分的に反応する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記着色剤が、全プライマー組成物の最大約15重量パーセントの量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのイソシアネート官能性プレポリマーが、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導され、第2級アミノシランのアミノ基と少なくとも部分的に反応しており、前記第2級アミノシランが、ケイ素に結合した2又は3個のメトキシ基、ケイ素に結合した2又は3個のエトキシ基、或いはそれらの組み合わせを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のように作製された物品。
【請求項11】
a.基材と、
b.プライマーであって、
i.脂肪族のポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導され、第2級アミノシランのアミノ基と少なくとも部分的に反応しているイソシアネート官能性プレポリマーであって、前記第2級アミノシランが、ケイ素に結合した2又は3個のメトキシ基、ケイ素に結合した2又は3個のエトキシ基、又はそれらの組み合わせを含むプレポリマーと、
ii.前記プライマーの最大約15重量%の着色剤とを含む、プライマーとを含む、
コーティングされた物品であって、
いかなるセラミックエナメルコーティングも実質的に含まない、物品。
【請求項12】
前記基材がガラスを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記基材が、少なくとも1つの表面の面積の少なくとも約25%にわたって実質的に透明である、請求項11又は12に記載の物品。
【請求項14】
前記基材が、自動車両のガラスパネルである、請求項11から13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記基材が、自動車両バックライト、自動車両フロントガラス、自動車両サイドウィンドウ、自動車両サンルーフ/ムーンルーフ、建築物の窓、天窓、舷窓、ドア開口部、又は陳列ケースのための組立体中に含まれる、請求項11から13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
前記着色剤が、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾ−又はジスアゾベンズイミダゾロン、イソインドリノン、モノアゾナフトール、ジアリーリドピラゾロン、ローダミン、インジゴイド、キナクリドン、ジアゾピラントロン、ジニトラニリン、ピラゾロン、ジアニシジン、ピラントロン、テトラクロロイソインドリノン、ジオキサジン、モノアゾアクリリド、アントラピリミジン、又はそれらのいずれかの混合物を含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
前記プライマー上に配置されたウレタンシーラントをさらに含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
SAE J1885に準拠した少なくとも1000時間の耐候性試験、及びASTM D3163に準拠し約12.7cm/分の速度でのラップ剪断試験の後で、破壊形態には、いかなるシーラントの接着破壊も実質的に存在しない、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
ASTM D3163に準拠して、約12.7cm/分の速度で、少なくとも約1800kPaの最小ラップ剪断強度を示す、請求項17又は18に記載の物品。
【請求項20】
ASTM D3163に準拠して、約12.7cm/分の速度で、約3000〜約5000kPaの最少ラップ剪断強度を示す、請求項17又は18に記載の物品。
【請求項21】
基材をコーティングする方法であって、
a.基材を提供するステップと、
b.前記基材をプライマーと接触させるステップであって、前記プライマーが、
i.脂肪族のポリイソシアネートとポリオールとの反応から誘導され、第2級アミノシランのアミノ基と少なくとも部分的に反応しているイソシアネート官能性プレポリマーであって、前記第2級アミノシランが、ケイ素に結合した2又は3個のメトキシ基、ケイ素に結合した2又は3個のエトキシ基、又はそれらの組み合わせを含むプレポリマーと、
ii.前記プライマーの最大約15重量%の着色剤とを含む、プライマーであるステップとを含み、
結果として得られる基材が、いかなるセラミックエナメルコーティングも実質的に含まない、方法。
【請求項22】
前記基材がガラスを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基材が、少なくとも1つの表面の面積の少なくとも約25%にわたって実質的に透明である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記基材が、自動車両のガラスパネルである、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記基材が、自動車両バックライト、自動車両フロントガラス、自動車両サイドウィンドウ、自動車両サンルーフ/ムーンルーフ、建築物の窓、天窓、舷窓、ドア開口部、又は陳列ケースのための組立体中に含まれる、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記着色剤が、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾ−又はジスアゾベンズイミダゾロン、イソインドリノン、モノアゾナフトール、ジアリーリドピラゾロン、ローダミン、インジゴイド、キナクリドン、ジアゾピラントロン、ジニトラニリン、ピラゾロン、ジアニシジン、ピラントロン、テトラクロロイソインドリノン、ジオキサジン、モノアゾアクリリド、アントラピリミジン、又はそれらのいずれかの混合物を含む、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ウレタンシーラントを前記プライマーに接触させるステップをさらに含む、請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−533228(P2010−533228A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516076(P2010−516076)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054706
【国際公開番号】WO2009/009159
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】