説明

着色料の安定化方法

【課題】酸化防止効果や機能性を有するビタミンCを食品に添加すると、食品中に含まれる色素成分が、ビタミンCの存在により変退色するという問題があった。本発明は、ビタミンC源を含有しながらも変退色が抑制されてなる着色組成物を提供する。さらに本発明はビタミンC変退色性色素を含有するビタミンC強化着色組成物の変退色を抑制する方法を提供する。
【解決手段】 上記ビタミンC変退色性色素で着色された組成物において、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色料としてビタミンCによって変色または退色の影響をうける色素(ビタミンC変退色性色素)を用いて着色されてなる着色組成物に関する。より詳細には、本発明はビタミンC源を含有しながらも、ビタミンC変退色性色素を安定的に有して変色や退色(変退色)が抑制されてなる着色組成物に関する。さらに、本発明は着色料としてビタミンC変退色性色素を含むビタミンC強化着色組成物について、色素を安定に保持させて変退色を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康意識の高まる中、食品を通じて手軽に豊富な栄養素を摂取する目的で、様々な栄養素添加食品が販売されている。代表的な例としては、カルシウム強化食品、鉄強化食品、ビタミンD強化食品、ビタミンE強化食品などが挙げられる。また、様々な栄養素をタブレット状に加工したサプリメント製品も多数販売されている。さらに最近では、アントシアニン色素の抗肥満作用や抗糖尿病作用など、食品素材の新たな機能が発見され注目を集めている。
【0003】
代表的な健康素材であるビタミンC(以下、「アスコルビン酸」ともいう)を添加した食品も多数販売され、また、ビタミンCの抗酸化機能に基づき、ビタミンCを抗酸化剤、色素の変色防止剤として食品に添加する技術も多く開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ベタニン系色素1部を含む水性溶液に対してアスコルビン酸等の抗酸化剤を20部以上添加すると、ベタニン系色素の発色が低下し、しかも熱安定性も低いという欠点があることが指摘されている(特許文献2)。また、一般の色素で着色した飲料の中にビタミンCを配合すると、ビタミンC、色素あるいはその両方が貯蔵の間に破壊されてしまうこと、ビタミンCの還元作用によって色素が変色・退色し食品の色に影響を与えることが指摘されている(特許文献3)。さらに、アントシアニンの変色や退色には、アスコルビン酸が関与していること(非特許文献1)、アスコルビン酸とアントシアニン系色素が溶液中に存在すると、化学反応が生じて色素の漂白とアスコルビン酸の分解が起こること(特許文献4)等、ビタミンC(アスコルビン酸)とアントシアニンなどの色素を共存させることによって生じる種々の問題が指摘されている。
【0005】
これに対し、色素とビタミンCの共存を可能にするための技術が種々検討されている。例えば、ビタミンCを、少なくとも1つのOH官能においてブロック置換されたアスコルビン酸またはその可溶性の非毒性塩の形態とする方法(特許文献4)、ベタニン系色素含有物を酸性または塩基性物質で処理した後、アスコルビン酸等の抗酸化剤を含む水性系で処理する方法(特許文献2)、天然色素ベタシアニンにアスコルビン酸系の抗酸化剤、リン酸塩類及びフラボノール系物質の3種を併用添加する方法(特許文献5)、フラボノールと水溶性抗酸化剤とリン酸塩によりアントシアニンを安定化させる方法(特許文献6)、ルチン及び水溶性抗酸化剤と、食塩、塩化カルシウム、ミョウバン等の少なくとも1種とを、食品、色素液に接触させ、あらゆる食品、色素に持続的な変退色防止効果を付与して、色素を安定化する方法(特許文献7)などが提案されている。
【非特許文献1】アントシアニン 食品の色と健康 建帛社 2000年5月10日発行
【特許文献1】特開昭48−17824号公報
【特許文献2】特開昭52−147634号公報
【特許文献3】特開昭47−7779号公報
【特許文献4】特開昭55−34093号公報
【特許文献5】特開昭58−11555号公報
【特許文献6】特開平2−214780号公報
【特許文献7】特開平8−51952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記記載の技術は、ビタミンCと着色料の他に何らかの成分を必要としていることから、必然的に食品に添加する成分の種類や量が増えることになり、食品の製造工程が複雑・煩雑化するといった問題がある。
【0007】
本発明は、ビタミンC変退色性色素で着色された組成物であって、上記の問題なく調製することができ、ビタミンC源を含有しながらも変退色が抑制されてなる着色組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、着色料としてビタミンC変退色性色素を含有するビタミンC強化着色組成物について、変退色を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ビタミンC源を含有する着色組成物について、着色料としてビタミンC変退色性色素を用いた場合に生じる変色や退色を抑制する方法を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることにより、ビタミンC変退色性色素を安定に保持して、変色や退色等といったの色調の変化を有意に抑制した着色組成物が調製できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ビタミンC変退色性色素を含有する着色組成物において、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることにより、上記色素成分の変退色が抑制された着色組成物を提供するものである。
【0010】
具体的には、本発明は下記の態様を包含するものである:
項1.着色料としてビタミンC変退色性色素、及びビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有する着色組成物。
項2. 食品組成物、経口医薬組成物または飼料組成物である項1記載の着色組成物。
項3.ビタミンC変退色性色素がアントシアニン系色素である項1又は2に記載の着色組成物。
項4.アントシアニン系色素が紫トウモロコシ由来のものである項3記載の着色組成物。
【0011】
さらに、本発明は、ビタミンC強化着色組成物について、着色料としてビタミンC変退色性色素を用いる場合に生じる変色または退色を抑制する方法として、下記の方法を提供するものである:
項5.着色料としてビタミンC変退色性色素を含むビタミンC強化着色組成物について変退色を抑制する方法であって、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることを特徴とする方法。
項6.ビタミンC変退色性色素がアントシアニン系色素である項5記載の方法。
項7.アントシアニン系色素が紫トウモロコシ由来のものである項6記載の方法。
【0012】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0013】
(1)着色組成物
本発明は、ビタミンC(アスコルビン酸)によって変色または退色の影響を受けやすい色素(ビタミンC変退色性色素)で着色された組成物であって、ビタミンC源を含有しながらも、ビタミンC変退色性色素を安定に保持することで、変退色が抑制された着色組成物に関する。詳細には、本発明の着色組成物は、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを使用することにより、ビタミンC変退色性色素で着色されていても変退色が抑制された着色組成物である。
【0014】
本発明でビタミンC源として使用するアスコルビン酸グルコシドは、ビタミンC(アスコルビン酸)にグルコースが結合した配糖体である。グルコースの結合部位は特に制限されない。通常は、アスコルビン酸の2位にグルコースが結合した配糖体を挙げることができるが、5位または6位にグルコースが結合した配糖体であってもよい。アスコルビン酸グルコシドは小腸粘膜酵素によって容易にビタミンC、即ちアスコルビン酸とグルコースに分解され吸収される。
【0015】
アスコルビン酸グルコシドは、いずれも市販されているものをそのまま利用することができる。具体的には、株式会社林原生物化学研究所製の「L−アスコルビン酸2グルコシド」を例示することができる。
【0016】
本発明で用いる着色料は、ビタミンC(アスコルビン酸)によって変色または退色の影響を受けやすい色素(ビタミンC変退色性色素)である。かかるビタミンC変退色性色素としては、具体的には、赤キャベツ色素,赤ダイコン色素、シソ色素,ハイビスカス色素,ブドウ果汁色素,ブドウ果皮色素,紫イモ色素、紫トウモロコシ色素、紫ヤマイモ色素、エルダーベリー色素、クランベリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、プラム色素、ブルーベリー色素、ラズベリー色素、及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素を挙げることができる。中でも好ましくは、紫トウモロコシに由来するアントシアニン系色素である。これらは1種単独で使用されても、また2種以上を組合せて使用されてもよい。またかかる着色料は、着色組成物の調製にあたって人為的に添加されるものであってもよいが、着色組成物(例えば、食品など)の原料素材に本来的に含まれているものであってもよい。また、本発明において着色料とは、着色する主観的意図の有無に関わらず、着色能を有するものを広く意味するものである。なお、本発明の着色組成物に配合するビタミンC変退色性色素の割合は、着色組成物の用途や目的、希望する着色やその程度に応じて適宜選択調整することができ、特に制限されるものではない。例えば、着色組成物100重量%中に含まれるビタミンC変退色性色素の割合として、0.1〜80重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜80重量%を挙げることができる。
【0017】
ビタミンC源として、アスコルビン酸やその塩に代えて、アスコルビン酸の配糖体である上記アスコルビン酸グルコシドを配合した本発明の着色組成物は、着色料として使用される上記ビタミンC変退色性色素を安定に保有しており、その結果、変色や退色が生じにくいという効果を有する。
【0018】
本発明が対象とする着色組成物は、上記成分(ビタミンC変退色性色素、ビタミンC源)を含有するものであれば、その用途や種類を制限するものではない。好ましくはビタミンC変退色性色素または/及びビタミンC源を安定に保有することが求められる組成物である。かかる組成物としては、好ましくは食品、医薬品、医薬部外品、飼料、香粧品等を挙げることができる。前述するように、アスコルビン酸グルコシドは、体内に摂取された後、小腸粘膜酵素によって分解されてビタミンCになる。このため、本発明の好適な組成物は、体内に経口的に摂取されて用いられる組成物、例えば食品、経口医薬品または飼料である。特に好ましくは食品である。
【0019】
本発明が対象とする食品は、ビタミンC変退色性色素と、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有する食品であれば、その種類や形態に特に制限はない。好適には飲料である。飲料の種類は特に制限されず、一般の飲料を広く挙げることができる。一例を挙げると、乳酸菌飲料、発酵乳、乳清飲料等の乳性飲料;酸性飲料;野菜飲料、野菜・果実飲料、炭酸飲料、清涼飲料;果汁飲料、果肉飲料、果汁入り飲料、ニアウォーターやスポーツドリンクなどの飲料類;カクテルやチューハイなどのアルコール飲料;を挙げることができる。
【0020】
本発明の食品は、飲料以外の食品であってもよく、具体的には、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;ゼリーやヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケットやクッキー等の焼き菓子類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、朝鮮漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。また、錠剤、カプセル、顆粒剤、粉末剤、またはドリンク等の形態を有するサプリメント製品を挙げることができる。
【0021】
本発明に係るビタミンC変退色性色素と、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有する着色組成物の製造は、対象とする着色組成物の通常の製造工程において、製造する組成物の成分としてビタミンC変退色性色素とアスコルビン酸グルコシドを添加することによって行うことができる。このため、基本的に、本発明のために敢えて特別な製造装置や製造条件を整える必要がなく、工業的にも簡便に本発明を実施することができる。また、ビタミンC変退色性色素及びアスコルビン酸グルコシドの添加量や添加する時期については、調製する着色組成物の種類、用途またはその風味、並びに着色組成物の製造方法などに応じて適宜増減、調節することができる。
【0022】
着色組成物中に含まれるアスコルビン酸グルコシドの配合割合としては、例えば最終の着色組成物100重量%中に含まれるアスコルビン酸グルコシドの割合として0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%を例示することができる。これらの配合割合の範囲であれば、ビタミンC変退色性色素や他の成分の存在量に影響を受けることなく、本発明の効果を得ることができる。このため、上記の範囲で、製造者の所望する量のアスコルビン酸グルコシドをビタミンC強化、或いは酸化防止(抗酸化)の目的で添加することができ、またビタミンC変退色性色素を着色の目的、或いはその各種機能(例えば、抗酸化機能)を期待して添加することが可能となる。
【0023】
なお、本発明が対象とする着色組成物には、本発明の構成に必要なビタミンC変退色性色素とアスコルビン酸グルコシドに加え、着色組成物の用途、種類及び形態に応じて、当該着色組成物に通常添加される各種成分を、本発明の効果を妨げない範囲で添加することもできる。例えばクエン酸、乳酸等の有機酸及び/又はその塩類;アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、化工澱粉、加工澱粉、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、澱粉糖化物、還元澱粉水飴、デキストリン、トレハロース、黒糖、はちみつ等の糖類;ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコール類;スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリン等の高甘味度甘味料;アミノ酸;ミネラル;アスコルビン酸を除くビタミン類;酸化防止剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、カゼインナトリウム、レシチン等の乳化剤や分散安定剤を添加することができる。
【0024】
(2)変退色抑制方法
本発明は、また着色料としてビタミンC変退色性色素を含むビタミンC強化着色組成物について、変色または退色(変退色)を抑制する方法を提供する。本発明の方法が対象とする変退色は、ビタミンCまたはその塩をビタミンC変退色性色素と併用することによって生じる変退色である。
【0025】
当該方法は、ビタミンC強化着色組成物の調製に使用されるビタミンC源として、アスコルビン酸グルコシドを用いることによって実施することができる。
【0026】
なお、本発明においてビタミンC源とは、生体内に摂取された場合に、生体内でビタミンC(アスコルビン酸)としての作用を発揮するものを意味し、一般的にはビタミンC(アスコルビン酸)またはその塩、及び生体内でビタミンCとなるビタミンCの前駆体を挙げることができる。本発明では、ビタミンC源としてビタミンCの前駆体に該当するアスコルビン酸グルコシドを用いる。
【0027】
本発明でいうビタミンC強化着色組成物とは、かかるビタミンC源を含有し、生体内でのビタミンC機能が付加された着色組成物を意味する。よって、本発明のビタミンC強化着色組成物は、好適には、体内に経口的に摂取されて用いられる組成物、例えば食品、経口医薬品または飼料である。特に好ましくは食品である。
【0028】
また本発明が対象とする着色組成物に使用される着色料としては、上記(1)に記載されるビタミンC変退色性色素を制限なく挙げることができる。その配合割合は特に制限されないが、着色組成物100重量%中の配合割合として0.1〜80重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜80重量%を挙げることができる。
【0029】
本発明の方法(変退色抑制方法)に用いるアスコルビン酸グルコシドの割合は、制限されないが、対象とする最終の着色組成物100重量%中にアスコルビン酸グルコシドが、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2重量%の割合で含まれることが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ビタミンC源として体内でアスコルビン酸になるアスコルビン酸グルコシドを使用することで、着色料としてビタミンC変退色性色素を併用しても、変色や退色といった不都合が生じず、安定した色を有する着色組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、ビタミンC源として体内でアスコルビン酸になるアスコルビン酸グルコシドを用いてビタミンC強化組成物(ビタミンC強化食品)を調製することで、変色や退色といった悪影響なく、ビタミンC変退色性色素を含む幅広い色素で着色することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態として試験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、処方中の※は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。また、*は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを示す。また、アスコルビン酸グルコシドとして、株式会社株林原生物化学研究所製の「L-アスコルビン酸2グルコシド」を使用した。
【試験例】
【0032】
次の処方に基づき被験飲料を調製した。ビタミンC源として、表1に記載する添加量で、L−アスコルビン酸(比較例)またはアスコルビン酸グルコシド(実施例)を使用して、ビタミンC源の種類の相違に基づくアントシアニン系色素(紫サツマイモ色素)の安定性を評価した。なお、標準品として、ビタミンC源を配合しない飲料を作成して、同様にして、アントシアニン系色素(紫サツマイモ色素)の安定性を調べた。
【0033】
<処方>
紫サツマイモ色素(サンレッド※YMF*) 0.05(部)
クエン酸(結晶) 0.2
クエン酸三ナトリウム 適 量(pH3に調整)
果糖ブドウ糖液糖 13.3
ビタミンC源 表1参照
水にて全量 100 重量部。
【0034】
<飲料の調製及び試験方法>
各成分を水に溶解し、pHが3.0になるようにクエン酸三ナトリウムを適量加えて93℃に達するまで加熱し、その状態で110ml量の飲料を110mlスクリュー管に充填した。尚、ビタミンC(アスコルビン酸)としての添加量が同程度になるように、アスコルビン酸グルコシドはL−アスコルビン酸の2倍量用いた。斯くして調製した各飲料をフェードメーター照射(50 Langley、100 Langley)に供し、照射後の色素の残存率(%)を調べ、色素の安定性を評価した。尚、色素の残存率(%)は、照射前及び照射後の吸光度を分光光度計で測定し、照射前の色素量を100%として算出した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
<結果>
表1に示すように、フェードメーター照射による試験において、ビタミンC源としてL−アスコルビン酸を添加した紫サツマイモ色素含有飲料は、照射後の色素残存量が著しく低下していた。一方、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加した紫サツマイモ色素含有飲料は、L−アスコルビン酸を添加した飲料に比して有意に色素の残存率が向上していた。このことから、ビタミンC源としてアスコルビン酸に代えてアスコルビン酸グルコシドを用いることによって、着色料としてビタミンC変退色性色素(紫サツマイモ色素等のアントシアニン系色素)を用いても変色や退色が有意に抑制された着色組成物(例えば、ビタミンC強化着色組成物が含まれる)を調製することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色料としてビタミンC変退色性色素、及びビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有する着色組成物。
【請求項2】
食品組成物、経口医薬組成物または飼料組成物である請求項1記載の着色組成物。
【請求項3】
ビタミンC変退色性色素がアントシアニン系色素である請求項1又は2に記載の着色組成物。
【請求項4】
アントシアニン系色素が紫トウモロコシ由来のものである請求項3記載の着色組成物。
【請求項5】
着色料としてビタミンC変退色性色素を含むビタミンC強化着色組成物について変退色を抑制する方法であって、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることを特徴とする方法。
【請求項6】
ビタミンC変退色性色素がアントシアニン系色素である請求項5記載の方法。
【請求項7】
アントシアニン系色素が紫トウモロコシ由来のものである請求項6記載の方法。

【公開番号】特開2006−321731(P2006−321731A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144706(P2005−144706)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】