説明

石膏ボード破砕分離機

【課題】 従来の石膏ボード粉砕分離機から得られる石膏粉体に比べて、粒子径が、著しく微細で、均一なものとなり、さらに、シート紙片の混入も殆どない石膏粉末が得られる石膏ボード破砕分離機を提供する。
【解決手段】 ボード投入口21から投入された石膏ボードの一端と接触可能な位置に固定した固定刃22と、固定刃22と特定のクリアランスをもって噛み合うように配置した複数の回転刃23とを有する破砕室2と、破砕室2から排出された第一の石膏ボード片を押し潰す一対のローラ3,3と、一対のローラ3,3から排出された第二の石膏ボード片をシート紙片と石膏粉末に分離するための仕分け部材41を有する分離室4とを備えた石膏ボード破砕分離機1により、課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の解体、増改築、新築や石膏ボードの製造などにより発生した廃石膏ボードを破砕し、微細で均一な石膏粉末を得るための石膏ボード破砕分離機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
現在、石膏ボードは、木材に比べ、加工性や寸法安定性に優れ、建築物の防火性や遮音性も向上するため、建物の天井板や壁板等として広く使用されている。
【0003】
不要となり廃棄される石膏ボード(以下、「廃石膏ボード」という。)は、建築物の解体時や増改築時に大量に発生するだけでなく、建築物の新築時における現場合わせの段階においても発生する。また、石膏ボードの製造工程における端材や不良品なども、廃石膏ボードとして処理される。
【0004】
この廃石膏ボードは、他に転用できないため、従来、産業廃棄物として、高価な廃棄コストを払い、安定型埋め立て処分などの廃棄処理が行われることが多かったが、法律の改正により、安定型埋め立てから管理型埋め立てへと移行し、廃棄処理に対する規制も強化され、産業廃棄物の処理手続が複雑になり、分別処理が義務付けられたこともあって、廃石膏ボードをリサイクルして資源化することの必要性は非常に高まっている。
【0005】
石膏ボードは、石膏からなる板状層の表裏各面にそれぞれ紙等のシートが貼り合わされた構造になっているため、石膏とシートを高純度で分別することができれば、資材(石膏成分)の再利用の面からは当然のこと、廃棄物の減量化という面からも好ましい。
【0006】
そこで、本発明の発明者は、既に、特許文献1に示す、廃石膏ボードから石膏粉体とシート紙片とを分離する石膏ボード破砕分離機を提案した。
【特許文献1】実用新案登録第3125552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者が既に提案した石膏ボード破砕分離機は、廃石膏ボードから石膏粉体とシート紙片を、非常に効率よく、高精度に分離することができるが、この石膏ボード破砕分離機によって得られた石膏粉体は、異なる粒子径のものが入り乱れ、1000マイクロメートル以上の粗大粒子も少なからず存在し、非常に幅広い粒度分布を示すため、例えば、この石膏ボード破砕分離機によって得られた石膏粉体を塗り壁材や床下調湿材などに利用する場合には、さらに石膏粉体の粒子径を微細かつ均一にする加工が必要となるという課題があった。
【0008】
また、この石膏ボード破砕分離機によって得られた石膏粉体には、依然として、シート紙片が2〜3%程度混入しているという課題もあった。
【0009】
本発明の目的は、従来の石膏ボード粉砕分離機から得られる石膏粉体に比べて、粒子径が、著しく微細で、均一なものとなり、さらに、シート紙片の混入も殆どない石膏粉末が得られる石膏ボード破砕分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、様々な検討を重ねた結果、ボード投入口から投入された石膏ボードの一端と接触可能な位置に固定した固定刃と、固定刃と特定のクリアランスをもって噛み合うように配置した複数の回転刃とを有する破砕室と、破砕室から排出された石膏ボード片を押し潰す一対のローラと、一対のローラから排出された第二の石膏ボード片をシート紙片と石膏粉末に分離するための仕分け部材を有する分離室とを備えた石膏ボード破砕分離機により、上記課題を解決することができることを見い出し、本発明をするに至った。
【0011】
即ち、本発明の石膏ボード破砕分離機は、一対のシート紙と該一対のシート紙の間に配置された石膏層とからなる石膏ボードを投入するためのボード投入口と、該ボード投入口から投入された石膏ボードの一端と接触可能な位置に固定し、複数の突起を設けた固定刃と、該固定刃の突起と所定のクリアランスをもって向かい合うように溝を形成して、該固定刃と特定のクリアランスをもって噛み合い、かつ長手方向を回転ロールの回転軸に対して平行の位置関係になるように、該回転ロールの円筒外周面に植設した複数の回転刃と、該固定刃と該複数の回転刃により粉砕して得られた第一の石膏ボード片を排出するボード片排出口とを有する破砕室と、該破砕室の下方に配置され、該ボード片排出口から排出された第一の石膏ボード片を押し潰す一対のローラと、該一対のローラの下方に傾斜して設置され、透過孔のない部分と多数の透過孔のある部分とからなり、該一対のローラから排出された第二の石膏ボード片をシート紙片と石膏粉末に分離するための仕分け部材を有する分離室とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の石膏ボード破砕分離機において、前記一対のローラのそれぞれの表面には、凹凸が形成されているという構成にすることができる。
【0013】
また、本発明の石膏ボード破砕分離機において、前記一対のローラのそれぞれの表面には、ローレット加工が施されているという構成にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の石膏ボード破砕分離機により得られる石膏粉末は、従来の石膏ボード粉砕分離機により得られる石膏粉体と比べて、粒子径が、著しく微細で、均一なものとなり、さらに、シート紙片の混入も殆どないという利点があり、例えば、建築現場で、塗り壁材や床下調湿材などに再利用する場合には最適である。
【0015】
また、本発明の石膏ボード破砕分離機の一対のローラのそれぞれの表面に凹凸を形成した場合には、得られる石膏粉末の粒子径がより微細になるという利点がある。
【0016】
さらに、本発明の石膏ボード破砕分離機の一対のローラのそれぞれの表面にローレット加工を施した場合には、得られる石膏粉末の粒子径がさらに微細になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図において、石膏ボード破砕分離機1は、破砕室2と、一対のローラ3,3と、分離室4を備える(図1、図2)。
【0018】
破砕室2には、ボード投入口21と、固定刃22と、複数の回転刃23,23,23,23を植設した回転ロール24と、ボード片排出口25とが設けられる(図3)。
【0019】
ボード投入口21は、石膏ボードを破砕室2に挿入するために設けられるが、石膏ボードの一端を破砕室2の所定の位置に配置する役割も有する。
【0020】
固定刃22は、硬質性の金属であれば特に限定されず、5〜15mm程度の厚みがよい。固定刃22の一側面には、上方に尖形状を形成した突起22a,22a,22a,22aが設けられる(図4(a)〜(c))。上方に尖形状を形成した突起の存在により、石膏層がより細かく粉砕される。また、突起が存在しない固定刃の場合、固定刃と回転刃の相互作用により粉砕された廃石膏ボードは、シート紙上に石膏粉体が付着したままのシート紙片が一枚の状態で残ってしまうが、突起22aが存在することにより、シート紙上に石膏粉体が付着したままのシート紙片が短冊状に裁断される。
【0021】
固定刃22は、ボード投入口21から挿入された石膏ボードの一端が到達する破砕室2の一側面に、突起22aを下にして固定穴22b,22b,22b,22bを介して固定具によって固定される(図3、図4(a)〜(c))。
【0022】
回転刃23は、硬質性の金属で、5〜15mm程度の厚みがよい。回転刃23の長手方向の中央部には、固定刃の突起22aに対応する溝23aが形成される(図5(a)、(b))。ここで、溝23aが設けられることにより、シート紙上に石膏粉体が付着したままのシート紙片がより短冊状になりやすくなる。
【0023】
回転ロール24の円筒外周面には、回転刃23,23,23,23が、回転ロール24の回転軸24aに対して平行の位置関係になるように、植設穴23b,23bを介した固定具により植設される(図6)。回転ロール24は、モータ26の動力を用いて、反時計回りに回転する。ここで、4つの回転刃23,23,23,23は、固定刃22と特定のクリアランスをもって噛み合うようになっており、これらの回転刃23,23,23,23の長手方向は、それぞれ回転ロール24の回転角が0度、90度、180度、270度の方向に設置されている(図6)。即ち、回転刃は、いずれも回転ローラの回転軸方向に列設していないため、回転ローラの一回転で廃石膏ボードを数回破砕することが可能となり、石膏層がより細かく粉砕されると共に、回転ローラを回転させるためのモータへの負担も軽減され、例えば、100Vで駆動するモータも使用することができるようになって、超小型化に寄与するだけでなく、少ない動力で効率よい破砕が可能となるため、省エネにも貢献する。なお、例えば、回転刃が3つの場合、回転刃の長手方向は、それぞれ回転ロールの回転角が0度、120度、240度の方向に設置され、回転刃が5つの場合、回転刃の長手方向は、それぞれ回転ロールの回転角が0度、72度、144度、216度、288度の方向に設置され、回転刃が6つの場合、回転刃の長手方向は、それぞれ回転ロールの回転角が0度、60度、120度、180度、240度、300度の方向に設置される。
【0024】
ボード片排出口25は、破砕室2の下方に配置され、シート紙片と石膏粉体とが混ざり合った第一の石膏ボード片を排出する。
【0025】
なお、破砕室2内で微細な石膏粉体が舞うことを防止するため、破砕室2の上方には集塵ホース27の一端27aが接続され、集塵ホース27の他端27bは集塵モータ28を介して集塵回収袋29に接続される(図1、図2)。
【0026】
一対のローラ3,3は、所定のクリアランスをもって、破砕室2の下方に平行に配置される。一対のローラ3,3は、いずれもモータ26に接続され、互いに反対方向に回転し、第一の石膏ボード片を押し潰す。ここで、一対のローラ3,3のそれぞれの表面には、図8に示すような、アヤ目31のローレット加工が施され、凹凸が形成されている。なお、一対のローラ3,3のそれぞれの表面に形成される凹凸は、特に限定されず、ローラ3の表面にローレット加工を施す場合には、アヤ目であっても、平目であってもよいが、アヤ目であるのが好ましい。
【0027】
分離室4には、一対のローラ3,3を通過した後の粒子径が均一で微細な石膏粉末とシート紙片とが混ざった第二の石膏ボード片を石膏粉末とシート紙片に分離する仕分け部材41が傾斜して設置される。仕分け部材41は、透過孔のない部分41aと多数の透過孔41cのある部分(以下、「網目状部分」ということがある。)41bとで構成される(図7)。
【0028】
仕分け部材41は、透過孔のない部分41aがボード片排出口25の直下部分に配置され、網目状部分41bが透過孔のない部分41aよりも下流になるように設置される。仕分け部材41は、一端に連結した不図示の偏心輪と、偏心輪に回転運動を与えるモータ26により、ふるい運動が可能である。
【0029】
なお、仕分け部材41の下方には、網目状部分41bの透過孔41cを通過した石膏粉末を収集するための石膏粉末出口42が設けられ、仕分け部材41の下端41dから落下したシート紙片を収集するための紙片出口43が設けられる。
【0030】
次に、本発明の石膏ボード破砕分離機において、廃石膏ボードが石膏粉末とシート紙片に分離される過程の一例を説明する。
【0031】
ボード投入口21から破砕室2内に廃石膏ボードを投入すると、廃石膏ボードの一端が破砕室2の一側面に到達する。
【0032】
固定刃22の下端と回転刃23の外周面の相互作用により、廃石膏ボードの一対のシート紙の一方が破砕されると共に、石膏層が粉砕される。また、固定刃22の突起22aと回転刃23の溝23aの相互作用により、廃石膏ボードの石膏層が細かく粉砕され、石膏粉体が付着したシート紙は短冊状に裁断される。
【0033】
粉砕された石膏ボード片は、異なる粒子径のものが入り乱れた石膏粉体と、この石膏粉体が付着した短冊状シート紙片と、この石膏粉体が付着していないシート紙片とが混ざり合っている。この粉砕された石膏ボード片は、第一の石膏ボード片として、ボード片排出口25から破砕室2の外側に排出される。ここにいう第一の石膏ボード片に含まれる石膏粉体は、1000マイクロメートル以上の粗大粒子も少なからず存在し、非常に幅広い粒度分布を示す。それ故、例えば、この石膏粉体を塗り壁材や床下調湿材などに利用しようとする場合には、粒子径を均一かつ微細にする加工を行う必要がある。
【0034】
ボード片排出口25から排出された第一の石膏ボード片は、一対のローラ3,3の隙間32に到達すると、互いに反対方向に回転する一対のローラ3,3によって押し潰される。押し潰された第一の石膏ボード片は、第二の石膏ボード片として、一対のローラ3,3の隙間32から排出される。ここにいう第二の石膏ボード片には、粒子径が均一で微細な石膏粉末が大量に含まれたものとなっている。
【0035】
一対のローラ3,3の隙間32から排出された第二の石膏ボード片は、ふるい部材41の透過孔のない部分41aに落下する。ここで、透過孔のない部分41aを上流とするふるい部材41の傾斜配置とふるい部材41に付与されたふるい運動により、粒子径が均一で微細な石膏粉末と、シート紙片のそれぞれは、ふるい部材41の透過孔のない部分41aから網目状部分41bに移動する。その後、石膏粉末は、透過孔41cを通過して落下するが、シート紙片は、透過孔41cを通過せず、ふるい部材41の下端41dから落下する。
【0036】
透過孔41cを通過した粒子径が均一で微細な石膏粉末は、石膏粉末出口42から装置外に排出され、透過孔41cを通過せず、下端41dから落下したシート紙片は、紙片出口43から装置外に排出される。
【0037】
これにより、本発明の石膏ボード破砕分離機を使用すれば、従来の石膏ボード粉砕分離機により得られる石膏粉体と比べて、粒子径が、著しく微細で、均一なものとなり、さらに、シート紙片の混入も殆どない石膏粉末が得られることは明らかである。
【0038】
以上、添付図面を参照して、この発明の実施形態を説明したが、この発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の石膏ボード破砕分離機の一実施例を示す斜視図。
【図2】図1におけるA−A面の断面図。
【図3】本発明の石膏ボード破砕分離機における粉砕室の内部の一例を示す斜視図。
【図4】(a)本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる固定刃の一例を示す上面図、(b)本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる固定刃の一例を示す正面図、(c)本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる固定刃の一例を示す斜視図。
【図5】(a)本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる回転刃の一例を示す上面図、(b)本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる回転刃の一例を示す正面図。
【図6】本発明の石膏ボード破砕分離機に用いる固定刃、回転ロール及び回転刃の位置関係の一例を示す上面図。
【図7】本発明の石膏ボード破砕分離機に用いるふるい部材の一例を示す斜視図。
【図8】本発明の石膏ボード破砕分離機における固定刃と回転刃と一対のローラとふるい部材の位置関係の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0040】
1 石膏ボード破砕分離機
2 破砕室
3 ローラ
4 分離室
21 ボード投入口
22 固定刃
22a 突起
22b 固定穴
23 回転刃
23a 溝
23b 植設穴
24 回転ロール
24a 回転軸
25 ボード片排出口
26 モータ
27 集塵ホース
27a 集塵ホースの一端
27b 集塵ホースの他端
28 集塵モータ
29 集塵回収袋
31 アヤ目
32 隙間
41 仕分け部材
41a 透過孔のない部分
41b 多数の透過孔のある部分(網目状部分)
41c 透過孔
41d 下端
42 石膏粉末出口
43 紙片出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のシート紙と該一対のシート紙の間に配置された石膏層とからなる石膏ボードを投入するためのボード投入口と、該ボード投入口から投入された石膏ボードの一端と接触可能な位置に固定し、複数の突起を設けた固定刃と、該固定刃の突起と所定のクリアランスをもって向かい合うように溝を形成して、該固定刃と特定のクリアランスをもって噛み合い、かつ長手方向を回転ロールの回転軸に対して平行の位置関係になるように、該回転ロールの円筒外周面に植設した複数の回転刃と、該固定刃と該複数の回転刃により粉砕して得られた第一の石膏ボード片を排出するボード片排出口とを有する破砕室と、該破砕室の下方に配置され、該ボード片排出口から排出された第一の石膏ボード片を隙間で押し潰す一対のローラと、該一対のローラの下方に傾斜して設置され、透過孔のない部分と多数の透過孔のある部分とからなり、該一対のローラの隙間から排出された第二の石膏ボード片をシート紙片と石膏粉末に分離するための仕分け部材を有する分離室とを備えたことを特徴とする石膏ボード破砕分離機。
【請求項2】
前記一対のローラのそれぞれの表面には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボード破砕分離機。
【請求項3】
前記一対のローラのそれぞれの表面には、ローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボード破砕分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−284448(P2008−284448A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131339(P2007−131339)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(507161215)株式会社エヌシーエム (1)
【出願人】(504158548)株式会社アイケン (1)
【Fターム(参考)】