研削盤
【課題】ワークの熱変形に起因して、加工後のワークの寸法誤差とか被研削面の表面粗さの品質低下が発生するのを阻止する。
【解決手段】精研後のスパークアウトが開始された後の時間経過に伴うワークwの熱変形量を推測し、そのスパークアウトの開始後に前記熱変形量を考慮しつつ前記相対変位を制御する寸法誤差最小化研削機能部26、27を備えた研削盤とする。また精研後のスパークアウトが開始された後の時間経過に伴う加工中のワークwの熱収縮量及び熱収縮速度を推測し次にそのスパークアウト過程で研削砥石10をワークwに対し前記熱収縮速度の変化に関連した極微少切込み速度で且つ前記熱収縮量の変化に関連した量だけ一定時間切り込むように相対変位させ次に該相対変位の停止された状態でのスパークアウトをワークwの実寸法が目標寸法となるまで実行させる表面粗さ改善研削機能部28を備えた研削盤とする。
【解決手段】精研後のスパークアウトが開始された後の時間経過に伴うワークwの熱変形量を推測し、そのスパークアウトの開始後に前記熱変形量を考慮しつつ前記相対変位を制御する寸法誤差最小化研削機能部26、27を備えた研削盤とする。また精研後のスパークアウトが開始された後の時間経過に伴う加工中のワークwの熱収縮量及び熱収縮速度を推測し次にそのスパークアウト過程で研削砥石10をワークwに対し前記熱収縮速度の変化に関連した極微少切込み速度で且つ前記熱収縮量の変化に関連した量だけ一定時間切り込むように相対変位させ次に該相対変位の停止された状態でのスパークアウトをワークwの実寸法が目標寸法となるまで実行させる表面粗さ改善研削機能部28を備えた研削盤とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク研削中の被研削箇所の外径を計測する定寸装置を設けた研削盤として、例えば特許文献1〜3に示すようなものが存在している。
【0003】
この種の研削盤上での直接定寸研削では、ワークの寸法を定寸装置で計測しながら研削を実施するのであり、定寸装置から出力される寸法情報からワークの外径が目標寸法になった時点で研削を停止する。このように実施される直接定寸研削において、たとえ定寸装置の測定誤差がゼロであったとしても加工後のワークに寸法誤差が出ることがある。その要因は、ワークの温度変化による熱膨張や熱収縮にあることが最近の研究によってわかってきた。
【0004】
即ち、研削終了時のワークは研削熱により膨張している。このワークを研削盤から取り外して外径寸法を計測する時にはワークは冷えて収縮した状態となる。したがって、定寸装置による研削サイクル中の計測と研削終了後のポスト計測ではそれらの計測結果としてのワーク外径寸法は異なったものとなるのである。
【0005】
このさい、各ワークの熱収縮量が一定であれば研削された複数のワークにおけるワーク外径寸法のばらつきは生じないが、実際の研削では研削砥石の切れ味が研削時間の経過に関連して変化するため研削終了時のワークの温度はワーク間で異なったものとなり、ワークの熱収縮量は一定とならずワーク外径寸法のばらつきが生じる。
【0006】
また研削盤によるワーク研削加工の最終段階であるスパークアウト過程に入ると、砥石台の切込み送りが停止されて発熱作用が大幅に減少すると共にワークの蓄積熱量が研削液で除去されるためにワークは熱収縮を始める。このスパークアウト過程では研削砥石は前記熱収縮に対応した速度で研削砥石から離れるワーク表面に、該研削砥石の研削背分力により弾性曲げ変形されたワークなどの弾性復元変形により該変形に対応した力(かつぎ量)で接触した状態に保持され、この接触中に、ワークの外径寸法を生成させながら表面粗さを改善していくという研削が実行される。このとき熱収縮が急激に行われるとワークの寸法生成は短時間に終了してしまい、寸法生成に伴って進行される表面粗さの改善処理が十分に実行されない事態が生じる。
【0007】
一方、アコースティックエミッションシグナル(周波数が例えば100kHz〜1000kz程度の超音波領域である振動波或いは音波)を検出するAEセンサは既に公知となっており、例えば特許文献4に開示されているように、研削砥石とワークの接触開始時点を検出するものなどとして使用されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−79621号公報
【特許文献2】特開平6−335858号公報
【特許文献3】特開平7−100760号公報
【特許文献4】特開平10−244464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は研削盤上でのAEセンサの特性を実験により確認する過程で、研削盤のシステム系に変化がなければ、つまりワークの形状及び寸法や、加工条件に変化がなければ、研削盤上に固定されたAEセンサはワークの研削中における研削抵抗(研削主分力又は研削背分力であってもよい。)に比例した出力を正確に発生するという事実を知るに至ったのである。これにより研削加工中の研削砥石とワークとの間に発生する研削抵抗を高精度に検出することが可能となった。
【0010】
また本発明者等は研削盤上での研削加工中、ワークの形状及び寸法や加工条件が変化しなければ、ワークの熱変形量と研削主分力との間には比例関係が存在することを確認した。
【0011】
さらに研削盤上での研削加工中において、精研終了直前で研削砥石がワークから離れた状態でのワークの熱変形量の時間経過に伴う変化と、スパークアウト過程でのワークの熱変形量の時間経過に伴う変化は実質的に同一視できることが確認された。ただし、両者何れの変化の場合にもワークはワーク支持回転手段により同一回転速度で回転され且つ研削液は同一流動状況でワークに注がれることが条件である。
【0012】
本発明は、これらの知見に基づいて創案されたものであって、即ち、研削加工中のワークの熱変形によってワーク被研削箇所の寸法精度や被研削面の表面粗さの品質低下が発生するのを阻止することにより高精度、高品質な加工が行えるものとした研削盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明の研削盤は、ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させる表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、前記一定時間経過後、該相対変位を停止させた状態以降、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する。
【0015】
一方、前記小さい切り込み量だけワークに切り込むように研削砥石を相対変位させたことにより、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったら研削砥石の後退を開始する。
【0016】
上記した本発明によれば、そのスパークアウト過程において研削砥石をワークに対して、該ワークの被研削面の表面粗さを飛躍的に改善できるような極微少切込み速度(具体的には、ワークの発熱が加工精度上無視できる程度の大きさ)で送り込むことができて、表面粗さの品質を飛躍的に向上させることが可能となるのである。
【0017】
また、極微少切込み速度で一定時間切り込んだ後は、研削砥石を停止させてワークの熱変形量を考慮して目標寸法にまで研削砥石の停止状態を維持することから、ワークの熱変形量が収束した後の寸法である実寸法が正確に目標寸法となるような研削加工をも実行させることができる。
【0018】
一方、極微少切込み速度で切り込む間も、ワークの熱変形量が収束した後の寸法である実寸法が正確に目標寸法位させ次に該相対変位の停止された状態でのスパークアウトをワークの実寸法が目標寸法となるように監視しているので、これに達したら研削砥石を後退させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る研削盤の実施例を図1〜図21を参照して説明する。
図1は円筒体やカムなどを研削するさいに使用される一般的なCNC研削盤を示し、1はベッド、2はベッド1上に左右方向(Z軸方向)の移動自在に設けられたワーク支持テーブル、3はベッド1上に前後方向(X軸方向)の移動自在に設けられた砥石台である。
【0020】
4はベッド1と同体部位に設けられたワーク支持テーブル2送り用のサーボモータで、ワーク支持テーブル2を図示しないネジ送り機構を介してZ軸方向へ送り移動させるようになされている。5はベッド1と同体部位に設けられた砥石台3送り用のサーボモータで、砥石台3を図示しないネジ送り機構を介してX軸方向へ送り移動させるようになされている。
【0021】
ワーク支持テーブル2上には主軸台6及び心押し台7を備えたワーク支持回転手段が形成されている。8は主軸台6上に設けられた主軸9を駆動するためのサーボモータ、10は砥石台3上の砥石軸11に固定された研削砥石、12は砥石軸11を回転させるためのモータである。主軸台6には主軸9と同心状に配置された主軸センタ13a及びケレ回し13が設けられ、また心押し台7には主軸9と同心状に配置された心押しセンタ14が設けられる。このさい、心押し台7の代わりに右主軸台を設け、これに主軸センタ13aと同様の部材を主軸9と同心状の同期回転可能に設けることもできる。またワーク支持テーブル2上にはワークwの研削中にこれの直径を測定するものとした定寸装置15が設けられている。この定寸装置15はワークwの周面に当接される接触子を具備したものとなされる。
【0022】
図2において、16は研削抵抗検出手段としてのAEセンサで、砥石軸11の中心部で研削砥石10の近傍に固定状に埋設されている。AEセンサ16の出力部は砥石軸11の反砥石側の軸端に固定された送信部17と電気的に結合されている。18は送信部17から送信された信号を非接触状態で受信する受信部で、砥石軸11を回転自在に支持する軸受19と同体状に固定された支持片20に固定されている。この受信部18は各部を制御するための数値制御装置21と電気的に結合されている。22は研削砥石10の外周を覆う砥石カバーである。
【0023】
AEセンサ16周辺の構成は図3に示すように変形することもできるのであって、この例では、AEセンサ16は砥石軸11の砥石側の軸端に固定状に埋設され、送信部17はAEセンサ16を覆うようにAEセンサ16の外側に砥石軸11と同体状に固定され、受信部18は砥石カバー22に支持片20を介して固定されている。図2中の各部に対応する箇所には同一符号が付してある。
【0024】
上記したCNC研削盤の使用にさいしては、数値制御装置21に組み込まれたコンピュータに自動的な研削を実行させるためのプログラムを記憶させる。そして、主軸センタ13a及び心押しセンタ14との間に、ワークwを位置させ、これの各端部をこれら主軸センタ13a及び心押しセンタ14に固定状に把持させる。このさい、ワークwの中心は主軸9の回転中心に合致される。この後、各部を作動状態となして、自動的な研削を開始させる。
【0025】
この自動的な研削における各部の作動を順に説明する。
先ず、モータ12が回転され、研削砥石10が回転駆動される。また、必要に応じサーボモータ4が回転され、ワーク支持テーブル2がZ軸方向へ移動される。これによりワークwが主軸台6などと共に移動され、研削すべきワークwはX軸方向上で研削砥石10と対向した状態となされる。続いて、砥石台3はX軸方向の機械座標上で、図4に示すように、予めプログラムで特定されている基準位置である座標位置p1に位置される。
【0026】
この後、数値制御装置21に組み込まれた高速前進機能部23が次のように作動する。
即ち、研削砥石10を前進させる前にAEセンサ16を作動状態とする。このとき、研削砥石10はワークwに接触していないため空転していて空気を研削している状態となる。したがってAEセンサ16は研削砥石10の研削抵抗(研削抵抗と研削主分力qsの比は研削条件が同一であれば定数となるため、研削主分力qsでもよい。ここに、研削主分力qsとは研削点に作用する研削抵抗の分力の一つで研削点を通る砥石半径方向に直交した砥石接線方向の力を言うものである。)が殆どゼロであることを示すゼロ出力を発し、このゼロ出力が送信部17及び受信部18を経て数値制御装置21に伝達される。
【0027】
上記ゼロ出力が数値制御装置21により確認されたことにより、数値制御装置21に組み込まれた砥石台送り制御手段24が砥石台3を図4に示すようにワークwへ近づけるべく特定速度Vkで高速前進させる。この高速前進中にもAEセンサ16は研削抵抗を検出するべく出力を発し続けるのであり、数値制御装置21はこの出力を比較的短い時間間隔Δtでサンプリングし、各サンプリング時点での研削抵抗を即時的に検出する。
【0028】
こうして特定された研削抵抗が、予め設定された特定値を超えたとき、砥石台送り制御手段24は研削砥石10の切込み速度が予め決定されている粗研時の切込み速度(砥石台送り速度)Vp1に合致するように砥石台3の前進速度を低下させる。
【0029】
即ち、例えば、図5Aに示すようにプランジカット研削を実行するときは砥石台送りを速度を粗送り速度に低下させるのであり、また図5Bに示すようにトラバースカット研削を実行するときはワーク支持テーブル2の送り方向を切り替えるときの砥石台3のX軸方向の送り量を粗研に対応した大きさとなすことで砥石台送り速度が粗送り速度となされる。
【0030】
以上のような高速前進機能の作動が行われた後は、図4に示すように粗研又は中粗研を行った後、必要に応じバックオフを実行して、最後にスパークアウトを実行する。なお粗研と中粗研に分けないで中粗研の段階をも粗研として粗研時の砥石台送り速度で研削することも差し支えない。図4中、Vp11は中粗研時の砥石台送り速度であり、Vp2は精研時の砥石台送り速度である。
【0031】
上記した数値制御装置21には熱変形量検出機能部25、1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26、2個目以降のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27、及び、表面粗さ改善研削機能部28が組み込まれている。次にこれら各機能部の作動について説明する。
【0032】
〈熱変形量検出機能部25〉
先ず熱変形量検出機能部25の作動について図6及び図7を参照して説明する。
即ち、図6のステップ(1)に示すように、例えば図4に示すような研削条件でワークwを精研終了直前(スパークアウト直前)まで切込み,そのときの研削抵抗(研削主分力qs又は研削背分力でもよい)に対応した力データをAEセンサ16による測定により取得しておき、次に図6のステップ(2)に移行し、精研終了後に砥石台3を極微小量(20μm程度)急速後退させて、ワークwから研削砥石10を離反させる。その状態でワークwに回転を与えたまま研削液をこれまで同様に注ぎ続ける作動を維持させる。
【0033】
一方では、図6のステップ(3)に示すように、砥石台3の急速後退直後の時点から、ワークwの被研削箇所の外径を測定している定寸装置15の出力する寸法信号データにより特定されるワークwの熱変形量dθwを微少時間間隔△tで検出する。いま仮に例えば60秒以上の時間が経過するまで検出を継続すると、時間経過に伴って得られる熱変形量dθwの変化についてのデータである熱変形量データは図7の(a)に示すようなものとなる。図6のステップ(4)では各検出時点ごとの熱変形量dθwを適当な特定長さの判定間隔n
・△tで平均化することを繰り返す。
【0034】
次に図6のステップ(5)ではこの平均化処理が、予め定められた測定時間Tkまで繰り返されたかを判定し、繰り返されたときは図6のステップ(6)へ移行する。
【0035】
図7(a)から判断されるように、図6のステップ(2)の砥石台急速後退直後の時点から60秒程度で熱変形量dθwはdθkに収束するが,研削能率の観点からは,この長い収束のための時間を待つことはできない。そこで、図6のステップ(6)においては、図7(b)中の比較的短い待ち時間である時点Tk(凡そ10秒程度)まで検出した熱変形量データを用いて、時間Tk以後の図7(a)中の各検出時点ごとの熱変形量dθwを図6のステップ(3)により平均化したものと等価なものとなる外挿推測データを作成する。こうして作成された外挿推測データは図7(b)中の時間Tk以後の曲線で示すようなものとなる。ここで、熱変形量dθwと砥石台急速後退した時点からの経過時間Tとの関係は次式、即ち、dθw=f(T)で表すものとする。
【0036】
そして最後に図6のステップ(7)に移行するのであり、このステップ(7)では図7(b)に示す曲線を図7(c)に示すように上下逆転させて、時間Tの経過に対して現象する実際の熱変形量、即ち熱変形量の演算値d′θwを確定するのである。
【0037】
この確定は次のように行われる。
即ち、実際の熱変形量d′θwと、砥石台3が急速後退した後からの時間Tの経過との関係は図7(c)に示すように次式、即ちd′θw=dθk−f(T)で表される。図7(c)中の実際の熱変形量d′θwを表す曲線の形状から判断すると、それは明らかに指数関数である。
【0038】
したがって、次式(s1)が成立すると想定される。
d′θw=dθk−f(T)=dθk・αT
・・・(s1)
ただし、0<α<1である。
式(s1)から次式、即ち、f(T)=dθk(1−αT)が得られる。
【0039】
この式から図7(b)における測定中の熱変形量dθwを表す次式(s2)が得られる。
dθw=f(T)=dθk(1−αT) ・・・(s2)
【0040】
この式が実際の場合において正確に適合することは既に実験により確認されている。
したがって、この熱変形量検出機能部25は式(s2)を使用して、この式(s2)中のαとdθkの値(定数)を図7(b)中の、0<T<Tkの領域の、既に測定された熱変形量dθwから得られた曲線に基づいて、最小自乗法により算出するのである。
【0041】
こうして確定された熱変形量d′θwの変化過程は、砥石台3を急速後退させて研削砥石10をワークwから離した状態での変化過程であるが、実際に研削砥石10をワークwに接触させるスパークアウト過程で研削させたときの熱変形量d′θwの変化過程と殆ど変わらないのである。その理由は、スパークアウト過程では研削抵抗(研削主分力qs)が急速に減衰し熱変形量の変化に殆ど影響しないからであると考えられる。
【0042】
〈1個目のワークwの寸法誤差を最小化するための寸法誤差最小化研削機能部26〉
次に寸法誤差最小化研削機能部26の作動について図8及び図9を参照して説明する。
この機能部26は先の熱変形量検出機能部25により熱変形量を測定された後のワークwを寸法誤差の最小化されるように研削するためのものであって、熱変形量検出機能部25の測定した熱変形量d′θwに基づいて寸法誤差最小化研削を実行するものである。
【0043】
砥石台3を急速後退させた後の時間Tに対する熱変形量の演算値d′θwを表す関数は上記式(s1)に示すとおりであり、この演算値d′θwの変化過程が、図8(a)に示されている。
【0044】
この機能26の作動が開始された直後では、図9のステップ(1)に示すように、上記式(s1)の関数を用いて、再研削開始時間Tgとそのときのプランジ速度Vpsを自動的に決定する。具体的には、図8(a)において、例えば関数d′θw=dθk−f(T)=dθk・αTを使用して、熱変形量の演算値d′θwの大きさに関連したプランジ速度Vps決定処理上の再研削開始時間Tgを任意な適当大きさに特定し、このTgからプランジ速度Vpsを決定する。ここに再研削開始時間Tgは、図7の熱変形量測定時間Tkに種々の演算時間を加え、さらに時間Tがゼロのときの位置にある研削砥石がプランジ速度Vpsでの切込み移動を開始してからワークwに接触するまでの砥石移動時間を加えたものとなる。
【0045】
そして図9のステップ(2)では、実際に研削砥石10が再度ワークwに接触して該ワークwを研削し始めた実際上の再研削開始時間(=Tg)から、再切込み時間tの計時を開始する。これと同時に、図9のステップ(3)では定寸装置15から出力される信号によりワークwの被研削箇所の外径Rの測定を開始する(それ以前から測定していてもよい)。
【0046】
そして図9のステップ(4)では、熱変形量の演算値d′θwの計算を行う。
この演算値d′θwは図8(b)中に記載された式、即ち、
d′θw=dθk − f(Tg+t)=dθk
・αTg+t ・・・(s3)
により演算される。ここでのTgは実際上の最研削開始時間である。
【0047】
熱変形量検出機能部25による砥石台急速後退の時点(T=0の時点)から図8中の再切込み開始時点(T=Tgの時点)まで、ワークwは適当速度で回転していて、しかも研削液が一定条件の下で注がれているので、熱変形量d′θwは上記式(s1)に対応した図8(a)に示す曲線上を経るように砥石台後退後の時間Tに対し減少する。したがって図8(a)中に示す時間T軸上のTgの位置が図8(a)中の再切込み時間t軸上でt=0となるように,両者の時間を一致させることが、再切込み時間tについての熱変形量を誤差なく演算するための必要十分条件となる。このような理由から、上記式(s3)は図7中の式、即ちd′θw=dθk−f(T)における「T」を、「Tg+t」で置き換えたものとしたのである。この式(s3)により再切込み過程でのワークwの熱変形量d′θwの変化過程が定量的に推測されたのである。
【0048】
図9のステップ(5)では、この演算熱変形量d′θwと定寸装置信号Rから、実寸法Rrを次式(s4)のように加算する。
Rr=R十d′θw ・・・(s4)
この式(s4)を用いることで熱変形量d′θwが収束した状態のワークwの寸法(実寸法Rr)、即ち熱変形量d′θwを考慮した研削砥石10の切込み位置が定量的に精度よく推則される。
【0049】
次に図9のステップ(6)で目標寸法Rkと実寸法Rrを比較することを繰り返して、Rr>Rkとなった時点、即ち、図8(b)で再切込み時間tがt1となった時点で、図9のステップ(7)へ移行し、ここで砥石台後退信号を発信させる。その後も、図8(b)に示すように、定寸装置信号Rは増加するが、熱変形量を考慮した実寸法Rrは一定のまま推移することになり、ワークwが冷却した状態では、その被研削箇所の径は目標値Rkに合致したものとなる。
【0050】
〈2個目以降のワークwの寸法誤差を最小化するための寸法誤差最小化研削機能部27〉
次に2個目以降であるi個目のワークwについての寸法誤差最小化研削機能部27の作動について図10〜図15を参照して説明する。
先ず、この機能の前提となる関係、即ち熱変形量dθkと、研削抵抗(研削主分力qs又は研削背分力でもよい。)との関係について説明する。
【0051】
図10は図6のステップ(2)において砥石台3を急速後退させるときの研削主分力qs(図6のステップ(1)で測定されたもの)とそのときワークwが持つ熱変形量dθk(図7の(a)参照)との関係を示したものである。図10から明らかなように、プランジ速度Vp、と速度比Kv(=ワークw周速度/砥石周速度)を広範囲に変化させても、熱変形量dθkと研削主分力qsの両者間には比例関係が存在する。ここで、図10中の中央のデータ(qs(1)、dθk(1))が、1個目のワークwのスパークアウト開始点での、研削主分力qs(1)と熱変形量dθk(1)である。この場合、i個目のワークwのスパークアウト開始点の研削抵抗qs(i)を測定することで、そのときの熱変形量dθk(i)は次式(s5)で定量的に推測できることになる。
【0052】
dθk(i)=dθk(1)・ qs(i)/qs(1) ・・・(s5)
この式(s5)が意味するところは、1個目のワークwと比較して、研削抵抗が大きければ、スパークアウト開始点の熱変形量dθkが比例関係に大きくなることである。実際の変化過程とは異なっているのである。
即ち、実際の熱変形量d′θwの変化過程は図12に示すとおりとなる。
図12(a)においては、切込み研削過程のプランジ速度Vpが大きいほどスパークアウト開始点の熱変形量d′θwは大きくなるのであるが、図11(b)に示す場合のように単純に縦方向へ拡大した形態ではない。図12(b)は図12(a)のスパークアウト過程だけの熱変形量d′θwを示す各曲線を横方向(時間軸)に対し平行に移動させて重ねた図を示しており、明確に1本の曲線にすべて重なる。
この事実は、図12(a)のスパークアウト過程だけの熱変形量d′θwを示す各曲線はいずれも式dθk(1)・ατで表されてその曲がり形状は変化せずに、スパークアウト開始点がそれぞれ移動したものになることを意味するものである。
【0053】
これが成立する条件としては同一の材質・形状・寸法のワークwを同じ研削砥石10で研削したときだけであり、ワークwの寸法や研削盤などが変化したときには成立しない。ただし、加工条件のプランジ速度Vpと速度比Kvの変化には十分対応すると考えられる。
【0054】
このような前提において、スパークアウト過程におけるi個目のワークwの熱変形量の演算値d′θw(i)は次のように推測される。即ち、スパークアウト過程の熱変形量の演算値d′θw(1)は、1個目のワークwについての熱変形量検出機能部25の作動における式(s1)において、時間Tの代わりにスパークアウト時間τを使用した次式(s6)で与えられる。
d′θw(1)= dθk(1)・ατ ・・・(s6)
【0055】
この式(s7)を表す曲線の形状は変化しないのだから、次式(s7)で与えられるi個目のスパークアウト開始点の熱変形量dθk(i)は式(s5)と同じになる。
dθk(i)=dθk(1)・qs(i)/qs(1)
・・・(s7)
【0056】
いま、qs(i)>qs(1)で考察してみる。このdθk(i)の値を式(s6)上で決定すると、スパークアウト開始点が図13に示すように左へτk(i)だけ移動した点から時間経過に伴って熱変形量d′θw(i)が変化することがわかる。
このτk(i)(<0)の解は数学的には、式(s6)の左辺がdθk(1)・qs(i)/qs(1)となるτの値となり、次式(s8)で表される。
τk(i)=logα(qs(i)/qs(1))
・・・(s8)
【0057】
以上から,結局求めようとするi個目のスパークアウト過程における熱変形量の演算値d′θw(i)は図13(a)の曲線をτk(i)が原点となるように右方向へ平行移動させた次式(s9)で表される関数となる。
d′θw(i)=dθk(1)・ατ+τk(i)
(s9)
この式(s9)が図13(b)の曲線となる。以上で寸法誤差最小化研削機能のすべての定式化が完了した。
【0058】
以上の定式化はqs(i)>qs(1)で考えたから、i個目のワークwのスパークアウト開始点の熱変形量d′θw(i)はτ=0を代入すればわかるようにατk(i)からスタートするのであるが、τk(i)<0だから開始点の熱変形量は確かに大きくなる。
逆に、qs(i)<qs(1)の場合も、各式はそのまま満足して、解析結果はτk(i)>0となることから、スパークアウト開始点の熱変形量d′θw(i)は間違いなく小さくなる。
【0059】
図14は2個目以降であるi個目のワークについての寸法誤差最小化研削機能部27の作動フローを示しているが、次にこれについて説明する。先ず、図14のステップ(1)でスパークアウト開始点の研削抵抗(研削主分力qs(i)又は研削背分力でもよい。)をAEセンサ16により測定する。次に図14のステップ(2)において、この測定値から式(s7)でスパークアウト開始点の熱変形量dθk(i)を計算し、さらに図14のステップ(3)で式(s8)、(s9)を用いて、熱変形量d′θw(i)の曲線を決定するのであり、これによりスパークアウト開始後の時間経過に伴うワークwの熱変形量d′θw(i)の推測が終了した。
【0060】
図14のステップ(4)では、この演算熱変形量d′θw(i)と定寸装置15の出力から特定される研削中のワークwの被研削箇所の寸法Rとから、熱変形量d′θw(i)の収束した状態になったとしたときのワークの実寸法Rrを次式(s10)で算出する。
Rr=R十d′θw(i) ・・・(s10)
この式(s10)を用いることで熱変形量d′θw(i)が収束した状態になったとしたときのワークwの被研削箇所の外径寸法である実寸法Rr、即ち熱変形量d′θw(i)を考慮したワークwの寸法が図15に曲線で示すように定量的に精度よく推則される。
【0061】
次に図14のステップ(5)で目標寸法Rkと実寸法Rrを比較することを繰り返して、Rr>Rkとなった時点、即ち、図15で再切込み時間がτ1となった時点で、図14のステップ(6)へ移行し、ここで砥石台後退信号を発信させる。この後も、図15に示すように定寸装置15の出力から特定されるワークwの被研削箇所の外径寸法Rは増加するが、熱変形量d′θw(i)が収束した状態になったとしたときのワークwの被研削箇所の外径寸法である実寸法Rrは一定のまま推移することになり、ワークwの被研削箇所の外径は目標値Rkに合致したものとなる。
【0062】
上記した熱変形量検出機能部25、1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26、2個目以降のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27を備えた研削盤を使用して、同一種類(同一の形状及び寸法)のワークの多数を繰り返し研削する場合には、図16に示す作動フローを実行させるのがよい。
【0063】
図16において、ステップ(1)〜(4)で熱変形量検出機能部による作動フローが行われる。このさい、ステップ(1)では精研終了直前の研削抵抗(研削主分力qs)をAEセンサ16の出力により測定する。ステップ(2)では精研終了時に砥石台3を20μm程度急速後退させて研削砥石10をワークwから離反させる。ステップ(3)でワークwの回転とワークwへの研削液の供給を精研過程と同様に維持させた状態の下で、ワークwの熱変形量dθwを定寸装置15の出力により検出する。ステップ(4)で図7に示すように熱変形量の演算値d′θw(1)などのデータを得る。そして、ステップ(5)で1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26の作動により1個目のワークの研削が自動的に実行される。
【0064】
次にステップ(6)に移行し、2個目のワークの粗研及び精研が実行されるのであり、精研が終了すると、砥石台3は後退することなくその送り込みを停止されてスパークアウトが開始される。このスパークアウト過程で、2個目以降(i個目)のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27の作動による2個目のワークの自動的な研削がステップ(7)〜(11)に示すように実行される。このさい、ステップ(7)では精研終了直前(スパークアウト開始直前)の研削抵抗(研削主分力qs)をAEセンサにより測定する。ステップ(8)ではスパークアウト過程での熱変形量d′θw(i)が推測される。ステップ(9)では定寸装置の信号位置Rに熱変形量d′θw(i)を加えるシフト処理が行われる状態とする。この状態でステップ(10)に示すようにスパークアウトが実行され、ワークwが目標寸法Rkになったことが定寸装置により検出されたときに、ステップ(11)に移行して加工完了となる。
【0065】
次にステップ(6)に移行し、3個目のワークの研削がステップ(6)〜(11)で実行され、以後は各ワークについてステップ(6)〜(11)が繰り返される。
【0066】
〈表面粗さ改善研削機能部28〉
次に表面粗さ改善研削機能部28の作動について図17〜図21を参照して説明する。
一般のスパークアウト過程では砥石台3の送り移動を停止させるが、これとは異なって、スパークアウト過程で砥石台3を停止させずに、極微小切込み速度で送り込むことで、表面粗さの劇的な改善が可能となることは発明者等により確認されている。
【0067】
具体的には例えば図6のステップ(2)において砥石台3が急速後退した時点から研削液の流量Qを低下させるように変化させることで、図17に示すようにワークwのスパークアウト過程での熱変形速度は小さくなる。図17中、下側の曲線は砥石台3の送りがゼロであるスパークアウト過程において研削液の流量Qが15L/minであるときのスパークアウト時間τとワークの熱変形量dθwとの関係を示しており、上側の曲線は砥石台3の送りが停止されるスパークアウト過程において研削液の流量Qが3L/minであるときのスパークアウト時間τとワークの熱変形量dθwとの関係を示している。
【0068】
図17中の両曲線の差だけ、研削液の流量Qを変化させない状態の下で砥石台3を極微小切込み速度で送り込んでやると、ワークの被研削箇所の表面粗さは劇的に改善されることは発明者等の実験により既に確認されているのであり、図18はその実験の結果を他の加工条件のものと比較して示している。
【0069】
図18(a)では被研削面の長さ0.8mmの範囲における凹凸状態を図示したものであり、この図中の右半分範囲には一般のスパークアウト研削を2.5秒間実行した場合のものが示されていて高低差が2μmを大幅に超えている段差箇所が多数存在したものとなっており、一方、左半分範囲には極微少切込み速度研削を2.5秒間実行した場合のものが示されていて高低差が2μmを超える段差箇所は存在しなくなってこれを大幅に下回る段差箇所が多数存在した状態となっている。
【0070】
また図18(b)では、極微少切込み速度研削を実施した場合の、極微少切込み時間tと表面粗さRyとの関係を示す曲線が示されているほか、砥石台が停止された一般のスパークアウト研削を実施した場合であって研削液の流量Qが15L/minである場合のスパークアウト時間τと表面粗さRyとの関係を示す曲線と、砥石台3が停止された一般のスパークアウト研削を実施した場合であって研削液の流量Qが3L/minに低下された状態の熱変形速度制御研削を実施した場合のスパークアウト時間τと表面粗さRyとの関係を示す曲線が示されている。
【0071】
ここでの表面粗さ改善研削機能部28は上記した極微少切込み速度研削による表面粗さ改善効果を狙ったものである。
この表面粗さ改善研削機能部28の改善機能を有効に実現するために必要な要件は、どれだけの切込み量をどれくらいの時間で送り込むかということである。
【0072】
図18に示した極微小切込み速度研削の場合の加工条件は、前記式(s2)で算出された図19に示すワークwの熱変形量(熱収縮量)dθw(i)を縦方向へ縮小させた量だけ砥石台3を極微小切込み時間τに対して送り込んでいる。ここにdθw(i)はi個目のワークwの熱変形量dθwを意味する。このような送り込みを採用した理由はそれが表面粗さ改善にとって効果的であることが既に確認されているからである。
【0073】
このような極微小切込み速度研削をスパークアウト開始後に実施するには、それに先行してスパークアウト開始後の時間経過τに伴うワークwの熱収縮量dθw(i)及び熱収縮速度が推測されていなければならないが、このさいの熱収縮量dθw(i)は、熱変形量検出機能部25の作動において説明した1個目のワークwについてのスパークアウト過程のワークwの熱変形量dθwに対応するものである。したがって上記の熱収縮量dθw(i)及び熱収縮速度は、既述したように、式(s2)、即ちdθw=f(T)=dθk(1−αT)中の定数α、dθkをこのワーク研削の加工条件に適合するように決定し、これら定数の決定された式(s2)により推測される。
【0074】
図19中の熱収縮量(熱変形量)dθw(i)の曲線は図6(b)の熱変形量dθwの曲線に対応するものである。
【0075】
i個目のワークの極微小切込み速度研削における砥石台3の送り込み量である極微少切込み量duは、そのワークwの熱変形量(熱収縮量)dθw(i)に比例係数k(<1)を掛けた量k・dθw(i)として決定されるのであり、スパークアウト開始後の時間経過に伴うその変化は図19に示すようなものとなる。このように特定された極微少切込み速度研削はスパークアウト開始後から予め決定された時間τg(例えば2.5秒)が経過するまで実行される。
【0076】
以上により、スパークアウト研削過程での極微少切込みによる表面粗さ改善機能の実現が可能となる。この表面粗さ改善研削機能部によるワークwの高精度研削を実施するには、この表面粗さ改善研削機能部の固有の機能と、先の寸法誤差最小化研削機能部の寸法誤差最小化研削機能とを同時に進行させなければならないのであり、この場合の作動流れについて図20を参照して説明する。
【0077】
図20において、ステップ(0−1)(0−2)は前述の熱変形量検出機能部25の作動流れの大部分の処理と同じものであり、ここでは1個目(i=1)のワークwの精研終了直前の研削抵抗(研削主分力qs(1))を測定すると共に熱変形量dθw(1)のデータを取得する。ステップ(1)(2)(3)(4)(5)及び(6)はi個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27の作動流れ上の各処理と同じものである。このさい、ステップ(1)ではi個目のワークwのスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i)を測定し、ステップ(2)では式(s7)によりスパークアウト開始時の熱変形量dθk(i)を計算し、ステップ(3)では式(s8)(s9)により熱変形量d′θw(i)の曲線を決定し、さらに式(s1)から熱変形量(熱収縮量)dθw(i)を決定する。熱変形量(熱収縮量)dθw(i)は式(s1)から類推して、式dθw(i)=dθk(i)−d′θw(i)で算出されるのであり、これによりi個目のワークwのスパークアウト過程での熱変形量(熱収縮量)dθw(i)及び熱収縮速度が予測されるのである。またステップ(3−1)(3−2)及び(5−1)は表面粗さ改善研削機能部28に固有の処理を示すものである。
【0078】
ステップ(3)の次にステップ(3−1)に移行するが、ここでは、標準設定値として比例係数kと極微小切込み時間τgが決定される。これらの設定値は実験的に妥当な値を予め固定的に設定したものであっても、或いはオペレーターによる表面粗さの測定をポストプロセスで実行し、その測定結果をフィードバックして、比例定数kと極微少切込み時間τgを測定結果に応じて適当に変化させたものであってもよいのであり、後者の場合はニューラルネットワークを使用すればよい。
【0079】
次にステップ(3−2)に移行し、ここではステップ(3)で推測した熱変形量(熱収縮量)dθw(i)に基づいて砥石台3の極微少切込み量duを算出し、この切込み量による研削(極微少切込み速度研削)を実行する。
【0080】
次にステップ(4)を経てステップ(5)に移行する。ステップ(5)では、実寸法Rrが目標寸法Rkを超えているか否かを判定する。超えていないときはステップ(5−1)に移行し、超えているときはステップ(6)に移行する。
【0081】
ステップ(5−1)では、極微少切込み時間(スパークアウト時間の下位概念である。)τが設定時間τgを超えているか否かを判定する。超えていないときはステップ(3−2)へ戻り、超えているときは砥石台3の送り込みが停止されてステップ(4)へ移行するのであり、この後は、砥石台3の送りが停止された状態でのスパークアウトが実行され、ステップ(5)で実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていない限りステップ(5−1)に移行し、ここでは当然に極微少切込み時間τが設定時間τgを超えている判定が行われて、砥石台3の送りが停止されたままステップ(4)に戻ることが繰り返される。
【0082】
こうしてスパークアウト研削が進行するのであり、この後、ステップ(5)において実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていると判定されたときにステップ(6)へ移行して、砥石台3が後退してワークwから離れた状態となり、研削が終了する。その他の作動は既述したところに準じて実行される。
【0083】
図20の作動流れにおいて、ステップ(5−1)で極微少切込み時間τが設定時間τgを超えていると判断される前に、ステップ(5)で実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていると判定されることが生じ得る。即ち、表面粗さ改善研削機能部28の機能が目的を達成した程度まで実行されていない段階で、実寸法Rrが目標寸法Rkを超過して、研削が終了してしまうことが起こり得る。このような事態は回避されなければならないが、それには、表面粗さ改善研削機能部の目的達成に必要な設定時間τgの値と、砥石台3の停止した状態でのスパークアウト(寸法誤差最小化研削機能部26、27の作動)が実行されるべき期間とをある程度調整しておくことが必要である。表面粗さを高品質に保持して能率的な研削を行う上では、砥石台の停止したスパークアウトの期間は可能な限り短いのが好ましい。なお、適当な設定時間τgの確保が困難な場合はスパークアウト過程の研削代を少し大きくすることも差し支えない。
【0084】
この表面粗さ改善研削機能部の表面粗さ改善機能をさらに安定した状態で定量的に向上させるには、ワークwの表面粗さが、精研過程において、ある程度まで改善されていることが必要となるのであり、これを実現させるには、例えば、適当な研削抵抗と、この研削抵抗での研削継続時間とを予め実験的に確認しておき、数値制御装置に、この確認された条件での精研を実行させるようにする。
【0085】
上記のような表面粗さ改善研削機能部28を備えた研削盤を使用して、同一種類(同一の形状及び寸法)のワークwの多数を繰り返し研削する場合には、図21に示す作動フローを自動的に実行させるのがよい。
【0086】
図21において、1個目のワークについて、ステップ(1)〜(3)で熱変形量検出機能部25の一部の機能による作動が行われる。これらの各ステップ(1)〜(3)は図16の(1)〜(3)と同じものであり、このさいステップ(3)ではワークwの熱変形量dθwが特定される。そして、ステップ(4)では先の熱変形量dθwはワークwの熱収縮量と等価であり、この熱収縮量dθwか熱収縮速度のデータを把握する。
【0087】
この後、ステップ5に移行して砥石台3の送り込みが行われる。そして、ステップ(6)でスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i=1))をAEセンサで測定する。ステップ(7)で研削主分力の測定値qs(i=1)からスパークアウト開始時の熱変形量(熱収縮量)dθk(i=1)を算出し、この算出値を使用して、スパークアウト過程でのワークwの熱変形量(熱収縮量)d′θw(i=1)を特定し、これに対応した図19中の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=1)を決定する。これによりスパークアウト過程の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=1)及び熱変形速度が推測されたのである。次にステップ(8)でスパークアウト過程での極微少切り込み量duを決定し、極微少切込み速度研削を実行する。そして、ワークが目標寸法になったことを定寸装置15が検出したとき1個目のワークの加工が完了する。
【0088】
この後、再びステップ(5)に移行し、2個目のワークについて、ステップ(5)〜(9)までの作動が実行される。このさい、ステップ(6)でスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i=2))をAEセンサで測定する。ステップ(7)で研削主分力の測定値qs(i=2)から式(s7)を使用してスパークアウト開始時の熱変形量(熱収縮量)dθk(i=2)を算出し、この算出値から式(s8)(s9)を使用して、スパークアウト過程でのワークwの熱変形量(熱収縮量)d′θw(i=2)を特定し、これに対応した図19中の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)を既述したところに準じて決定する。これによりスパークアウト過程の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)及び熱変形速度が推測されたのである。次にステップ(8)で熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)からスパークアウト過程での極微少切り込み量duを決定し、極微少切込み速度研削を実行する。そして、ワークが目標寸法になったことを定寸装置15が検出したとき2個目のワークの加工が完了する。
以後は各ワークwについてステップ(5)〜(9)が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明で使用されるCNC研削盤を示す平面図である。
【図2】上記研削盤の砥石軸周辺の構造を示す断面図である。
【図3】上記砥石軸周辺の変形例を示す図である。
【図4】上記研削盤で実行される標準の研削過程を示す図である。
【図5】上記研削盤による研削過程を示しており、Aはプランジカット研削の説明図でBはトラバースカット研削の説明図である。
【図6】熱変形量検出機能部の作動流れを示す図である。
【図7】熱変形量検出機能部の作動により得られるデータの曲線などを示す図である。
【図8】寸法誤差最小化研削機能部により1個目のワークを研削する場合のデータに関し、(a)は熱変形量の演算値d′θwの変化過程の曲線を示す図であり、(b)は実寸法Rrの変化過程の曲線を示す図である。
【図9】1個目のワークを研削する場合の寸法誤差最小化研削機能部の作動流れを示す図である。
【図10】スパークアウト直前の研削主分力qsと熱変形量dθkの関係を示す図である。
【図11】寸法誤差最小化研削機能部に係るデータを示し、(a)は研削主分力qsの変化過程を示す図で、(b)は熱変形量の演算値d′θwについての間違った推測に係る曲線を示す図である。
【図12】実際の熱変形量d′θwの変化過程を示す説明図である。
【図13】熱変形量の演算値d′θwに係る曲線などを示し、(a)はi個目のワークの演算値d′θw(i)を推測するための曲線を示す図で(b)はi個目のワークの前記演算値d′θ(i)に係る曲線を示す図である。
【図14】i個目のワークを研削する場合の寸法誤差最小化研削機能部の作動流れを示す図である。
【図15】寸法誤差最小化研削機能部の作動における定寸装置の出力信号から特定される寸法Rの変化過程やi個目のワークの実寸法Rrの変化過程などを示す図である。
【図16】同一種類の多数のワークを繰り返して研削する場合の作動流れの一例を示す図である。
【図17】ワークのスパークアウト過程での熱変形量dθwの変化過程を示す図である。
【図18】極微少切込み速度研削や他種の研削におけるワークの表面粗さを示す図である。
【図19】極微少切込み量の決定についての説明図である。
【図20】表面粗さ改善研削機能の作動流れを示す図である。
【図21】同一種類の多数のワークを繰り返して研削する場合の作動流れの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
6 主軸台(ワーク支持回転手段)
7 心押し台(ワーク支持手段)
9 主軸(ワーク支持回転手段)
10 研削砥石
11 砥石軸
13a 主軸センタ(ワーク支持手段)
14 心押しセンタ(ワーク支持手段)
16 研削抵抗検出手段(AEセンサ)
25 熱変形量検出機能部
26 寸法誤差最小化研削機能部
27 寸法誤差最小化研削機能部
28 表面粗さ改善研削機能部
τg 設定時間(時間データ)
dθw 熱変形量(熱収縮量)
d′θw 熱変形量
qs 研削主分力
Rk 目標寸法
Rr 実寸法
w ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク研削中の被研削箇所の外径を計測する定寸装置を設けた研削盤として、例えば特許文献1〜3に示すようなものが存在している。
【0003】
この種の研削盤上での直接定寸研削では、ワークの寸法を定寸装置で計測しながら研削を実施するのであり、定寸装置から出力される寸法情報からワークの外径が目標寸法になった時点で研削を停止する。このように実施される直接定寸研削において、たとえ定寸装置の測定誤差がゼロであったとしても加工後のワークに寸法誤差が出ることがある。その要因は、ワークの温度変化による熱膨張や熱収縮にあることが最近の研究によってわかってきた。
【0004】
即ち、研削終了時のワークは研削熱により膨張している。このワークを研削盤から取り外して外径寸法を計測する時にはワークは冷えて収縮した状態となる。したがって、定寸装置による研削サイクル中の計測と研削終了後のポスト計測ではそれらの計測結果としてのワーク外径寸法は異なったものとなるのである。
【0005】
このさい、各ワークの熱収縮量が一定であれば研削された複数のワークにおけるワーク外径寸法のばらつきは生じないが、実際の研削では研削砥石の切れ味が研削時間の経過に関連して変化するため研削終了時のワークの温度はワーク間で異なったものとなり、ワークの熱収縮量は一定とならずワーク外径寸法のばらつきが生じる。
【0006】
また研削盤によるワーク研削加工の最終段階であるスパークアウト過程に入ると、砥石台の切込み送りが停止されて発熱作用が大幅に減少すると共にワークの蓄積熱量が研削液で除去されるためにワークは熱収縮を始める。このスパークアウト過程では研削砥石は前記熱収縮に対応した速度で研削砥石から離れるワーク表面に、該研削砥石の研削背分力により弾性曲げ変形されたワークなどの弾性復元変形により該変形に対応した力(かつぎ量)で接触した状態に保持され、この接触中に、ワークの外径寸法を生成させながら表面粗さを改善していくという研削が実行される。このとき熱収縮が急激に行われるとワークの寸法生成は短時間に終了してしまい、寸法生成に伴って進行される表面粗さの改善処理が十分に実行されない事態が生じる。
【0007】
一方、アコースティックエミッションシグナル(周波数が例えば100kHz〜1000kz程度の超音波領域である振動波或いは音波)を検出するAEセンサは既に公知となっており、例えば特許文献4に開示されているように、研削砥石とワークの接触開始時点を検出するものなどとして使用されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−79621号公報
【特許文献2】特開平6−335858号公報
【特許文献3】特開平7−100760号公報
【特許文献4】特開平10−244464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は研削盤上でのAEセンサの特性を実験により確認する過程で、研削盤のシステム系に変化がなければ、つまりワークの形状及び寸法や、加工条件に変化がなければ、研削盤上に固定されたAEセンサはワークの研削中における研削抵抗(研削主分力又は研削背分力であってもよい。)に比例した出力を正確に発生するという事実を知るに至ったのである。これにより研削加工中の研削砥石とワークとの間に発生する研削抵抗を高精度に検出することが可能となった。
【0010】
また本発明者等は研削盤上での研削加工中、ワークの形状及び寸法や加工条件が変化しなければ、ワークの熱変形量と研削主分力との間には比例関係が存在することを確認した。
【0011】
さらに研削盤上での研削加工中において、精研終了直前で研削砥石がワークから離れた状態でのワークの熱変形量の時間経過に伴う変化と、スパークアウト過程でのワークの熱変形量の時間経過に伴う変化は実質的に同一視できることが確認された。ただし、両者何れの変化の場合にもワークはワーク支持回転手段により同一回転速度で回転され且つ研削液は同一流動状況でワークに注がれることが条件である。
【0012】
本発明は、これらの知見に基づいて創案されたものであって、即ち、研削加工中のワークの熱変形によってワーク被研削箇所の寸法精度や被研削面の表面粗さの品質低下が発生するのを阻止することにより高精度、高品質な加工が行えるものとした研削盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明の研削盤は、ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させる表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、前記一定時間経過後、該相対変位を停止させた状態以降、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する。
【0015】
一方、前記小さい切り込み量だけワークに切り込むように研削砥石を相対変位させたことにより、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったら研削砥石の後退を開始する。
【0016】
上記した本発明によれば、そのスパークアウト過程において研削砥石をワークに対して、該ワークの被研削面の表面粗さを飛躍的に改善できるような極微少切込み速度(具体的には、ワークの発熱が加工精度上無視できる程度の大きさ)で送り込むことができて、表面粗さの品質を飛躍的に向上させることが可能となるのである。
【0017】
また、極微少切込み速度で一定時間切り込んだ後は、研削砥石を停止させてワークの熱変形量を考慮して目標寸法にまで研削砥石の停止状態を維持することから、ワークの熱変形量が収束した後の寸法である実寸法が正確に目標寸法となるような研削加工をも実行させることができる。
【0018】
一方、極微少切込み速度で切り込む間も、ワークの熱変形量が収束した後の寸法である実寸法が正確に目標寸法位させ次に該相対変位の停止された状態でのスパークアウトをワークの実寸法が目標寸法となるように監視しているので、これに達したら研削砥石を後退させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る研削盤の実施例を図1〜図21を参照して説明する。
図1は円筒体やカムなどを研削するさいに使用される一般的なCNC研削盤を示し、1はベッド、2はベッド1上に左右方向(Z軸方向)の移動自在に設けられたワーク支持テーブル、3はベッド1上に前後方向(X軸方向)の移動自在に設けられた砥石台である。
【0020】
4はベッド1と同体部位に設けられたワーク支持テーブル2送り用のサーボモータで、ワーク支持テーブル2を図示しないネジ送り機構を介してZ軸方向へ送り移動させるようになされている。5はベッド1と同体部位に設けられた砥石台3送り用のサーボモータで、砥石台3を図示しないネジ送り機構を介してX軸方向へ送り移動させるようになされている。
【0021】
ワーク支持テーブル2上には主軸台6及び心押し台7を備えたワーク支持回転手段が形成されている。8は主軸台6上に設けられた主軸9を駆動するためのサーボモータ、10は砥石台3上の砥石軸11に固定された研削砥石、12は砥石軸11を回転させるためのモータである。主軸台6には主軸9と同心状に配置された主軸センタ13a及びケレ回し13が設けられ、また心押し台7には主軸9と同心状に配置された心押しセンタ14が設けられる。このさい、心押し台7の代わりに右主軸台を設け、これに主軸センタ13aと同様の部材を主軸9と同心状の同期回転可能に設けることもできる。またワーク支持テーブル2上にはワークwの研削中にこれの直径を測定するものとした定寸装置15が設けられている。この定寸装置15はワークwの周面に当接される接触子を具備したものとなされる。
【0022】
図2において、16は研削抵抗検出手段としてのAEセンサで、砥石軸11の中心部で研削砥石10の近傍に固定状に埋設されている。AEセンサ16の出力部は砥石軸11の反砥石側の軸端に固定された送信部17と電気的に結合されている。18は送信部17から送信された信号を非接触状態で受信する受信部で、砥石軸11を回転自在に支持する軸受19と同体状に固定された支持片20に固定されている。この受信部18は各部を制御するための数値制御装置21と電気的に結合されている。22は研削砥石10の外周を覆う砥石カバーである。
【0023】
AEセンサ16周辺の構成は図3に示すように変形することもできるのであって、この例では、AEセンサ16は砥石軸11の砥石側の軸端に固定状に埋設され、送信部17はAEセンサ16を覆うようにAEセンサ16の外側に砥石軸11と同体状に固定され、受信部18は砥石カバー22に支持片20を介して固定されている。図2中の各部に対応する箇所には同一符号が付してある。
【0024】
上記したCNC研削盤の使用にさいしては、数値制御装置21に組み込まれたコンピュータに自動的な研削を実行させるためのプログラムを記憶させる。そして、主軸センタ13a及び心押しセンタ14との間に、ワークwを位置させ、これの各端部をこれら主軸センタ13a及び心押しセンタ14に固定状に把持させる。このさい、ワークwの中心は主軸9の回転中心に合致される。この後、各部を作動状態となして、自動的な研削を開始させる。
【0025】
この自動的な研削における各部の作動を順に説明する。
先ず、モータ12が回転され、研削砥石10が回転駆動される。また、必要に応じサーボモータ4が回転され、ワーク支持テーブル2がZ軸方向へ移動される。これによりワークwが主軸台6などと共に移動され、研削すべきワークwはX軸方向上で研削砥石10と対向した状態となされる。続いて、砥石台3はX軸方向の機械座標上で、図4に示すように、予めプログラムで特定されている基準位置である座標位置p1に位置される。
【0026】
この後、数値制御装置21に組み込まれた高速前進機能部23が次のように作動する。
即ち、研削砥石10を前進させる前にAEセンサ16を作動状態とする。このとき、研削砥石10はワークwに接触していないため空転していて空気を研削している状態となる。したがってAEセンサ16は研削砥石10の研削抵抗(研削抵抗と研削主分力qsの比は研削条件が同一であれば定数となるため、研削主分力qsでもよい。ここに、研削主分力qsとは研削点に作用する研削抵抗の分力の一つで研削点を通る砥石半径方向に直交した砥石接線方向の力を言うものである。)が殆どゼロであることを示すゼロ出力を発し、このゼロ出力が送信部17及び受信部18を経て数値制御装置21に伝達される。
【0027】
上記ゼロ出力が数値制御装置21により確認されたことにより、数値制御装置21に組み込まれた砥石台送り制御手段24が砥石台3を図4に示すようにワークwへ近づけるべく特定速度Vkで高速前進させる。この高速前進中にもAEセンサ16は研削抵抗を検出するべく出力を発し続けるのであり、数値制御装置21はこの出力を比較的短い時間間隔Δtでサンプリングし、各サンプリング時点での研削抵抗を即時的に検出する。
【0028】
こうして特定された研削抵抗が、予め設定された特定値を超えたとき、砥石台送り制御手段24は研削砥石10の切込み速度が予め決定されている粗研時の切込み速度(砥石台送り速度)Vp1に合致するように砥石台3の前進速度を低下させる。
【0029】
即ち、例えば、図5Aに示すようにプランジカット研削を実行するときは砥石台送りを速度を粗送り速度に低下させるのであり、また図5Bに示すようにトラバースカット研削を実行するときはワーク支持テーブル2の送り方向を切り替えるときの砥石台3のX軸方向の送り量を粗研に対応した大きさとなすことで砥石台送り速度が粗送り速度となされる。
【0030】
以上のような高速前進機能の作動が行われた後は、図4に示すように粗研又は中粗研を行った後、必要に応じバックオフを実行して、最後にスパークアウトを実行する。なお粗研と中粗研に分けないで中粗研の段階をも粗研として粗研時の砥石台送り速度で研削することも差し支えない。図4中、Vp11は中粗研時の砥石台送り速度であり、Vp2は精研時の砥石台送り速度である。
【0031】
上記した数値制御装置21には熱変形量検出機能部25、1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26、2個目以降のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27、及び、表面粗さ改善研削機能部28が組み込まれている。次にこれら各機能部の作動について説明する。
【0032】
〈熱変形量検出機能部25〉
先ず熱変形量検出機能部25の作動について図6及び図7を参照して説明する。
即ち、図6のステップ(1)に示すように、例えば図4に示すような研削条件でワークwを精研終了直前(スパークアウト直前)まで切込み,そのときの研削抵抗(研削主分力qs又は研削背分力でもよい)に対応した力データをAEセンサ16による測定により取得しておき、次に図6のステップ(2)に移行し、精研終了後に砥石台3を極微小量(20μm程度)急速後退させて、ワークwから研削砥石10を離反させる。その状態でワークwに回転を与えたまま研削液をこれまで同様に注ぎ続ける作動を維持させる。
【0033】
一方では、図6のステップ(3)に示すように、砥石台3の急速後退直後の時点から、ワークwの被研削箇所の外径を測定している定寸装置15の出力する寸法信号データにより特定されるワークwの熱変形量dθwを微少時間間隔△tで検出する。いま仮に例えば60秒以上の時間が経過するまで検出を継続すると、時間経過に伴って得られる熱変形量dθwの変化についてのデータである熱変形量データは図7の(a)に示すようなものとなる。図6のステップ(4)では各検出時点ごとの熱変形量dθwを適当な特定長さの判定間隔n
・△tで平均化することを繰り返す。
【0034】
次に図6のステップ(5)ではこの平均化処理が、予め定められた測定時間Tkまで繰り返されたかを判定し、繰り返されたときは図6のステップ(6)へ移行する。
【0035】
図7(a)から判断されるように、図6のステップ(2)の砥石台急速後退直後の時点から60秒程度で熱変形量dθwはdθkに収束するが,研削能率の観点からは,この長い収束のための時間を待つことはできない。そこで、図6のステップ(6)においては、図7(b)中の比較的短い待ち時間である時点Tk(凡そ10秒程度)まで検出した熱変形量データを用いて、時間Tk以後の図7(a)中の各検出時点ごとの熱変形量dθwを図6のステップ(3)により平均化したものと等価なものとなる外挿推測データを作成する。こうして作成された外挿推測データは図7(b)中の時間Tk以後の曲線で示すようなものとなる。ここで、熱変形量dθwと砥石台急速後退した時点からの経過時間Tとの関係は次式、即ち、dθw=f(T)で表すものとする。
【0036】
そして最後に図6のステップ(7)に移行するのであり、このステップ(7)では図7(b)に示す曲線を図7(c)に示すように上下逆転させて、時間Tの経過に対して現象する実際の熱変形量、即ち熱変形量の演算値d′θwを確定するのである。
【0037】
この確定は次のように行われる。
即ち、実際の熱変形量d′θwと、砥石台3が急速後退した後からの時間Tの経過との関係は図7(c)に示すように次式、即ちd′θw=dθk−f(T)で表される。図7(c)中の実際の熱変形量d′θwを表す曲線の形状から判断すると、それは明らかに指数関数である。
【0038】
したがって、次式(s1)が成立すると想定される。
d′θw=dθk−f(T)=dθk・αT
・・・(s1)
ただし、0<α<1である。
式(s1)から次式、即ち、f(T)=dθk(1−αT)が得られる。
【0039】
この式から図7(b)における測定中の熱変形量dθwを表す次式(s2)が得られる。
dθw=f(T)=dθk(1−αT) ・・・(s2)
【0040】
この式が実際の場合において正確に適合することは既に実験により確認されている。
したがって、この熱変形量検出機能部25は式(s2)を使用して、この式(s2)中のαとdθkの値(定数)を図7(b)中の、0<T<Tkの領域の、既に測定された熱変形量dθwから得られた曲線に基づいて、最小自乗法により算出するのである。
【0041】
こうして確定された熱変形量d′θwの変化過程は、砥石台3を急速後退させて研削砥石10をワークwから離した状態での変化過程であるが、実際に研削砥石10をワークwに接触させるスパークアウト過程で研削させたときの熱変形量d′θwの変化過程と殆ど変わらないのである。その理由は、スパークアウト過程では研削抵抗(研削主分力qs)が急速に減衰し熱変形量の変化に殆ど影響しないからであると考えられる。
【0042】
〈1個目のワークwの寸法誤差を最小化するための寸法誤差最小化研削機能部26〉
次に寸法誤差最小化研削機能部26の作動について図8及び図9を参照して説明する。
この機能部26は先の熱変形量検出機能部25により熱変形量を測定された後のワークwを寸法誤差の最小化されるように研削するためのものであって、熱変形量検出機能部25の測定した熱変形量d′θwに基づいて寸法誤差最小化研削を実行するものである。
【0043】
砥石台3を急速後退させた後の時間Tに対する熱変形量の演算値d′θwを表す関数は上記式(s1)に示すとおりであり、この演算値d′θwの変化過程が、図8(a)に示されている。
【0044】
この機能26の作動が開始された直後では、図9のステップ(1)に示すように、上記式(s1)の関数を用いて、再研削開始時間Tgとそのときのプランジ速度Vpsを自動的に決定する。具体的には、図8(a)において、例えば関数d′θw=dθk−f(T)=dθk・αTを使用して、熱変形量の演算値d′θwの大きさに関連したプランジ速度Vps決定処理上の再研削開始時間Tgを任意な適当大きさに特定し、このTgからプランジ速度Vpsを決定する。ここに再研削開始時間Tgは、図7の熱変形量測定時間Tkに種々の演算時間を加え、さらに時間Tがゼロのときの位置にある研削砥石がプランジ速度Vpsでの切込み移動を開始してからワークwに接触するまでの砥石移動時間を加えたものとなる。
【0045】
そして図9のステップ(2)では、実際に研削砥石10が再度ワークwに接触して該ワークwを研削し始めた実際上の再研削開始時間(=Tg)から、再切込み時間tの計時を開始する。これと同時に、図9のステップ(3)では定寸装置15から出力される信号によりワークwの被研削箇所の外径Rの測定を開始する(それ以前から測定していてもよい)。
【0046】
そして図9のステップ(4)では、熱変形量の演算値d′θwの計算を行う。
この演算値d′θwは図8(b)中に記載された式、即ち、
d′θw=dθk − f(Tg+t)=dθk
・αTg+t ・・・(s3)
により演算される。ここでのTgは実際上の最研削開始時間である。
【0047】
熱変形量検出機能部25による砥石台急速後退の時点(T=0の時点)から図8中の再切込み開始時点(T=Tgの時点)まで、ワークwは適当速度で回転していて、しかも研削液が一定条件の下で注がれているので、熱変形量d′θwは上記式(s1)に対応した図8(a)に示す曲線上を経るように砥石台後退後の時間Tに対し減少する。したがって図8(a)中に示す時間T軸上のTgの位置が図8(a)中の再切込み時間t軸上でt=0となるように,両者の時間を一致させることが、再切込み時間tについての熱変形量を誤差なく演算するための必要十分条件となる。このような理由から、上記式(s3)は図7中の式、即ちd′θw=dθk−f(T)における「T」を、「Tg+t」で置き換えたものとしたのである。この式(s3)により再切込み過程でのワークwの熱変形量d′θwの変化過程が定量的に推測されたのである。
【0048】
図9のステップ(5)では、この演算熱変形量d′θwと定寸装置信号Rから、実寸法Rrを次式(s4)のように加算する。
Rr=R十d′θw ・・・(s4)
この式(s4)を用いることで熱変形量d′θwが収束した状態のワークwの寸法(実寸法Rr)、即ち熱変形量d′θwを考慮した研削砥石10の切込み位置が定量的に精度よく推則される。
【0049】
次に図9のステップ(6)で目標寸法Rkと実寸法Rrを比較することを繰り返して、Rr>Rkとなった時点、即ち、図8(b)で再切込み時間tがt1となった時点で、図9のステップ(7)へ移行し、ここで砥石台後退信号を発信させる。その後も、図8(b)に示すように、定寸装置信号Rは増加するが、熱変形量を考慮した実寸法Rrは一定のまま推移することになり、ワークwが冷却した状態では、その被研削箇所の径は目標値Rkに合致したものとなる。
【0050】
〈2個目以降のワークwの寸法誤差を最小化するための寸法誤差最小化研削機能部27〉
次に2個目以降であるi個目のワークwについての寸法誤差最小化研削機能部27の作動について図10〜図15を参照して説明する。
先ず、この機能の前提となる関係、即ち熱変形量dθkと、研削抵抗(研削主分力qs又は研削背分力でもよい。)との関係について説明する。
【0051】
図10は図6のステップ(2)において砥石台3を急速後退させるときの研削主分力qs(図6のステップ(1)で測定されたもの)とそのときワークwが持つ熱変形量dθk(図7の(a)参照)との関係を示したものである。図10から明らかなように、プランジ速度Vp、と速度比Kv(=ワークw周速度/砥石周速度)を広範囲に変化させても、熱変形量dθkと研削主分力qsの両者間には比例関係が存在する。ここで、図10中の中央のデータ(qs(1)、dθk(1))が、1個目のワークwのスパークアウト開始点での、研削主分力qs(1)と熱変形量dθk(1)である。この場合、i個目のワークwのスパークアウト開始点の研削抵抗qs(i)を測定することで、そのときの熱変形量dθk(i)は次式(s5)で定量的に推測できることになる。
【0052】
dθk(i)=dθk(1)・ qs(i)/qs(1) ・・・(s5)
この式(s5)が意味するところは、1個目のワークwと比較して、研削抵抗が大きければ、スパークアウト開始点の熱変形量dθkが比例関係に大きくなることである。実際の変化過程とは異なっているのである。
即ち、実際の熱変形量d′θwの変化過程は図12に示すとおりとなる。
図12(a)においては、切込み研削過程のプランジ速度Vpが大きいほどスパークアウト開始点の熱変形量d′θwは大きくなるのであるが、図11(b)に示す場合のように単純に縦方向へ拡大した形態ではない。図12(b)は図12(a)のスパークアウト過程だけの熱変形量d′θwを示す各曲線を横方向(時間軸)に対し平行に移動させて重ねた図を示しており、明確に1本の曲線にすべて重なる。
この事実は、図12(a)のスパークアウト過程だけの熱変形量d′θwを示す各曲線はいずれも式dθk(1)・ατで表されてその曲がり形状は変化せずに、スパークアウト開始点がそれぞれ移動したものになることを意味するものである。
【0053】
これが成立する条件としては同一の材質・形状・寸法のワークwを同じ研削砥石10で研削したときだけであり、ワークwの寸法や研削盤などが変化したときには成立しない。ただし、加工条件のプランジ速度Vpと速度比Kvの変化には十分対応すると考えられる。
【0054】
このような前提において、スパークアウト過程におけるi個目のワークwの熱変形量の演算値d′θw(i)は次のように推測される。即ち、スパークアウト過程の熱変形量の演算値d′θw(1)は、1個目のワークwについての熱変形量検出機能部25の作動における式(s1)において、時間Tの代わりにスパークアウト時間τを使用した次式(s6)で与えられる。
d′θw(1)= dθk(1)・ατ ・・・(s6)
【0055】
この式(s7)を表す曲線の形状は変化しないのだから、次式(s7)で与えられるi個目のスパークアウト開始点の熱変形量dθk(i)は式(s5)と同じになる。
dθk(i)=dθk(1)・qs(i)/qs(1)
・・・(s7)
【0056】
いま、qs(i)>qs(1)で考察してみる。このdθk(i)の値を式(s6)上で決定すると、スパークアウト開始点が図13に示すように左へτk(i)だけ移動した点から時間経過に伴って熱変形量d′θw(i)が変化することがわかる。
このτk(i)(<0)の解は数学的には、式(s6)の左辺がdθk(1)・qs(i)/qs(1)となるτの値となり、次式(s8)で表される。
τk(i)=logα(qs(i)/qs(1))
・・・(s8)
【0057】
以上から,結局求めようとするi個目のスパークアウト過程における熱変形量の演算値d′θw(i)は図13(a)の曲線をτk(i)が原点となるように右方向へ平行移動させた次式(s9)で表される関数となる。
d′θw(i)=dθk(1)・ατ+τk(i)
(s9)
この式(s9)が図13(b)の曲線となる。以上で寸法誤差最小化研削機能のすべての定式化が完了した。
【0058】
以上の定式化はqs(i)>qs(1)で考えたから、i個目のワークwのスパークアウト開始点の熱変形量d′θw(i)はτ=0を代入すればわかるようにατk(i)からスタートするのであるが、τk(i)<0だから開始点の熱変形量は確かに大きくなる。
逆に、qs(i)<qs(1)の場合も、各式はそのまま満足して、解析結果はτk(i)>0となることから、スパークアウト開始点の熱変形量d′θw(i)は間違いなく小さくなる。
【0059】
図14は2個目以降であるi個目のワークについての寸法誤差最小化研削機能部27の作動フローを示しているが、次にこれについて説明する。先ず、図14のステップ(1)でスパークアウト開始点の研削抵抗(研削主分力qs(i)又は研削背分力でもよい。)をAEセンサ16により測定する。次に図14のステップ(2)において、この測定値から式(s7)でスパークアウト開始点の熱変形量dθk(i)を計算し、さらに図14のステップ(3)で式(s8)、(s9)を用いて、熱変形量d′θw(i)の曲線を決定するのであり、これによりスパークアウト開始後の時間経過に伴うワークwの熱変形量d′θw(i)の推測が終了した。
【0060】
図14のステップ(4)では、この演算熱変形量d′θw(i)と定寸装置15の出力から特定される研削中のワークwの被研削箇所の寸法Rとから、熱変形量d′θw(i)の収束した状態になったとしたときのワークの実寸法Rrを次式(s10)で算出する。
Rr=R十d′θw(i) ・・・(s10)
この式(s10)を用いることで熱変形量d′θw(i)が収束した状態になったとしたときのワークwの被研削箇所の外径寸法である実寸法Rr、即ち熱変形量d′θw(i)を考慮したワークwの寸法が図15に曲線で示すように定量的に精度よく推則される。
【0061】
次に図14のステップ(5)で目標寸法Rkと実寸法Rrを比較することを繰り返して、Rr>Rkとなった時点、即ち、図15で再切込み時間がτ1となった時点で、図14のステップ(6)へ移行し、ここで砥石台後退信号を発信させる。この後も、図15に示すように定寸装置15の出力から特定されるワークwの被研削箇所の外径寸法Rは増加するが、熱変形量d′θw(i)が収束した状態になったとしたときのワークwの被研削箇所の外径寸法である実寸法Rrは一定のまま推移することになり、ワークwの被研削箇所の外径は目標値Rkに合致したものとなる。
【0062】
上記した熱変形量検出機能部25、1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26、2個目以降のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27を備えた研削盤を使用して、同一種類(同一の形状及び寸法)のワークの多数を繰り返し研削する場合には、図16に示す作動フローを実行させるのがよい。
【0063】
図16において、ステップ(1)〜(4)で熱変形量検出機能部による作動フローが行われる。このさい、ステップ(1)では精研終了直前の研削抵抗(研削主分力qs)をAEセンサ16の出力により測定する。ステップ(2)では精研終了時に砥石台3を20μm程度急速後退させて研削砥石10をワークwから離反させる。ステップ(3)でワークwの回転とワークwへの研削液の供給を精研過程と同様に維持させた状態の下で、ワークwの熱変形量dθwを定寸装置15の出力により検出する。ステップ(4)で図7に示すように熱変形量の演算値d′θw(1)などのデータを得る。そして、ステップ(5)で1個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部26の作動により1個目のワークの研削が自動的に実行される。
【0064】
次にステップ(6)に移行し、2個目のワークの粗研及び精研が実行されるのであり、精研が終了すると、砥石台3は後退することなくその送り込みを停止されてスパークアウトが開始される。このスパークアウト過程で、2個目以降(i個目)のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27の作動による2個目のワークの自動的な研削がステップ(7)〜(11)に示すように実行される。このさい、ステップ(7)では精研終了直前(スパークアウト開始直前)の研削抵抗(研削主分力qs)をAEセンサにより測定する。ステップ(8)ではスパークアウト過程での熱変形量d′θw(i)が推測される。ステップ(9)では定寸装置の信号位置Rに熱変形量d′θw(i)を加えるシフト処理が行われる状態とする。この状態でステップ(10)に示すようにスパークアウトが実行され、ワークwが目標寸法Rkになったことが定寸装置により検出されたときに、ステップ(11)に移行して加工完了となる。
【0065】
次にステップ(6)に移行し、3個目のワークの研削がステップ(6)〜(11)で実行され、以後は各ワークについてステップ(6)〜(11)が繰り返される。
【0066】
〈表面粗さ改善研削機能部28〉
次に表面粗さ改善研削機能部28の作動について図17〜図21を参照して説明する。
一般のスパークアウト過程では砥石台3の送り移動を停止させるが、これとは異なって、スパークアウト過程で砥石台3を停止させずに、極微小切込み速度で送り込むことで、表面粗さの劇的な改善が可能となることは発明者等により確認されている。
【0067】
具体的には例えば図6のステップ(2)において砥石台3が急速後退した時点から研削液の流量Qを低下させるように変化させることで、図17に示すようにワークwのスパークアウト過程での熱変形速度は小さくなる。図17中、下側の曲線は砥石台3の送りがゼロであるスパークアウト過程において研削液の流量Qが15L/minであるときのスパークアウト時間τとワークの熱変形量dθwとの関係を示しており、上側の曲線は砥石台3の送りが停止されるスパークアウト過程において研削液の流量Qが3L/minであるときのスパークアウト時間τとワークの熱変形量dθwとの関係を示している。
【0068】
図17中の両曲線の差だけ、研削液の流量Qを変化させない状態の下で砥石台3を極微小切込み速度で送り込んでやると、ワークの被研削箇所の表面粗さは劇的に改善されることは発明者等の実験により既に確認されているのであり、図18はその実験の結果を他の加工条件のものと比較して示している。
【0069】
図18(a)では被研削面の長さ0.8mmの範囲における凹凸状態を図示したものであり、この図中の右半分範囲には一般のスパークアウト研削を2.5秒間実行した場合のものが示されていて高低差が2μmを大幅に超えている段差箇所が多数存在したものとなっており、一方、左半分範囲には極微少切込み速度研削を2.5秒間実行した場合のものが示されていて高低差が2μmを超える段差箇所は存在しなくなってこれを大幅に下回る段差箇所が多数存在した状態となっている。
【0070】
また図18(b)では、極微少切込み速度研削を実施した場合の、極微少切込み時間tと表面粗さRyとの関係を示す曲線が示されているほか、砥石台が停止された一般のスパークアウト研削を実施した場合であって研削液の流量Qが15L/minである場合のスパークアウト時間τと表面粗さRyとの関係を示す曲線と、砥石台3が停止された一般のスパークアウト研削を実施した場合であって研削液の流量Qが3L/minに低下された状態の熱変形速度制御研削を実施した場合のスパークアウト時間τと表面粗さRyとの関係を示す曲線が示されている。
【0071】
ここでの表面粗さ改善研削機能部28は上記した極微少切込み速度研削による表面粗さ改善効果を狙ったものである。
この表面粗さ改善研削機能部28の改善機能を有効に実現するために必要な要件は、どれだけの切込み量をどれくらいの時間で送り込むかということである。
【0072】
図18に示した極微小切込み速度研削の場合の加工条件は、前記式(s2)で算出された図19に示すワークwの熱変形量(熱収縮量)dθw(i)を縦方向へ縮小させた量だけ砥石台3を極微小切込み時間τに対して送り込んでいる。ここにdθw(i)はi個目のワークwの熱変形量dθwを意味する。このような送り込みを採用した理由はそれが表面粗さ改善にとって効果的であることが既に確認されているからである。
【0073】
このような極微小切込み速度研削をスパークアウト開始後に実施するには、それに先行してスパークアウト開始後の時間経過τに伴うワークwの熱収縮量dθw(i)及び熱収縮速度が推測されていなければならないが、このさいの熱収縮量dθw(i)は、熱変形量検出機能部25の作動において説明した1個目のワークwについてのスパークアウト過程のワークwの熱変形量dθwに対応するものである。したがって上記の熱収縮量dθw(i)及び熱収縮速度は、既述したように、式(s2)、即ちdθw=f(T)=dθk(1−αT)中の定数α、dθkをこのワーク研削の加工条件に適合するように決定し、これら定数の決定された式(s2)により推測される。
【0074】
図19中の熱収縮量(熱変形量)dθw(i)の曲線は図6(b)の熱変形量dθwの曲線に対応するものである。
【0075】
i個目のワークの極微小切込み速度研削における砥石台3の送り込み量である極微少切込み量duは、そのワークwの熱変形量(熱収縮量)dθw(i)に比例係数k(<1)を掛けた量k・dθw(i)として決定されるのであり、スパークアウト開始後の時間経過に伴うその変化は図19に示すようなものとなる。このように特定された極微少切込み速度研削はスパークアウト開始後から予め決定された時間τg(例えば2.5秒)が経過するまで実行される。
【0076】
以上により、スパークアウト研削過程での極微少切込みによる表面粗さ改善機能の実現が可能となる。この表面粗さ改善研削機能部によるワークwの高精度研削を実施するには、この表面粗さ改善研削機能部の固有の機能と、先の寸法誤差最小化研削機能部の寸法誤差最小化研削機能とを同時に進行させなければならないのであり、この場合の作動流れについて図20を参照して説明する。
【0077】
図20において、ステップ(0−1)(0−2)は前述の熱変形量検出機能部25の作動流れの大部分の処理と同じものであり、ここでは1個目(i=1)のワークwの精研終了直前の研削抵抗(研削主分力qs(1))を測定すると共に熱変形量dθw(1)のデータを取得する。ステップ(1)(2)(3)(4)(5)及び(6)はi個目のワークwの寸法誤差最小化研削機能部27の作動流れ上の各処理と同じものである。このさい、ステップ(1)ではi個目のワークwのスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i)を測定し、ステップ(2)では式(s7)によりスパークアウト開始時の熱変形量dθk(i)を計算し、ステップ(3)では式(s8)(s9)により熱変形量d′θw(i)の曲線を決定し、さらに式(s1)から熱変形量(熱収縮量)dθw(i)を決定する。熱変形量(熱収縮量)dθw(i)は式(s1)から類推して、式dθw(i)=dθk(i)−d′θw(i)で算出されるのであり、これによりi個目のワークwのスパークアウト過程での熱変形量(熱収縮量)dθw(i)及び熱収縮速度が予測されるのである。またステップ(3−1)(3−2)及び(5−1)は表面粗さ改善研削機能部28に固有の処理を示すものである。
【0078】
ステップ(3)の次にステップ(3−1)に移行するが、ここでは、標準設定値として比例係数kと極微小切込み時間τgが決定される。これらの設定値は実験的に妥当な値を予め固定的に設定したものであっても、或いはオペレーターによる表面粗さの測定をポストプロセスで実行し、その測定結果をフィードバックして、比例定数kと極微少切込み時間τgを測定結果に応じて適当に変化させたものであってもよいのであり、後者の場合はニューラルネットワークを使用すればよい。
【0079】
次にステップ(3−2)に移行し、ここではステップ(3)で推測した熱変形量(熱収縮量)dθw(i)に基づいて砥石台3の極微少切込み量duを算出し、この切込み量による研削(極微少切込み速度研削)を実行する。
【0080】
次にステップ(4)を経てステップ(5)に移行する。ステップ(5)では、実寸法Rrが目標寸法Rkを超えているか否かを判定する。超えていないときはステップ(5−1)に移行し、超えているときはステップ(6)に移行する。
【0081】
ステップ(5−1)では、極微少切込み時間(スパークアウト時間の下位概念である。)τが設定時間τgを超えているか否かを判定する。超えていないときはステップ(3−2)へ戻り、超えているときは砥石台3の送り込みが停止されてステップ(4)へ移行するのであり、この後は、砥石台3の送りが停止された状態でのスパークアウトが実行され、ステップ(5)で実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていない限りステップ(5−1)に移行し、ここでは当然に極微少切込み時間τが設定時間τgを超えている判定が行われて、砥石台3の送りが停止されたままステップ(4)に戻ることが繰り返される。
【0082】
こうしてスパークアウト研削が進行するのであり、この後、ステップ(5)において実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていると判定されたときにステップ(6)へ移行して、砥石台3が後退してワークwから離れた状態となり、研削が終了する。その他の作動は既述したところに準じて実行される。
【0083】
図20の作動流れにおいて、ステップ(5−1)で極微少切込み時間τが設定時間τgを超えていると判断される前に、ステップ(5)で実寸法Rrが目標寸法Rkを超えていると判定されることが生じ得る。即ち、表面粗さ改善研削機能部28の機能が目的を達成した程度まで実行されていない段階で、実寸法Rrが目標寸法Rkを超過して、研削が終了してしまうことが起こり得る。このような事態は回避されなければならないが、それには、表面粗さ改善研削機能部の目的達成に必要な設定時間τgの値と、砥石台3の停止した状態でのスパークアウト(寸法誤差最小化研削機能部26、27の作動)が実行されるべき期間とをある程度調整しておくことが必要である。表面粗さを高品質に保持して能率的な研削を行う上では、砥石台の停止したスパークアウトの期間は可能な限り短いのが好ましい。なお、適当な設定時間τgの確保が困難な場合はスパークアウト過程の研削代を少し大きくすることも差し支えない。
【0084】
この表面粗さ改善研削機能部の表面粗さ改善機能をさらに安定した状態で定量的に向上させるには、ワークwの表面粗さが、精研過程において、ある程度まで改善されていることが必要となるのであり、これを実現させるには、例えば、適当な研削抵抗と、この研削抵抗での研削継続時間とを予め実験的に確認しておき、数値制御装置に、この確認された条件での精研を実行させるようにする。
【0085】
上記のような表面粗さ改善研削機能部28を備えた研削盤を使用して、同一種類(同一の形状及び寸法)のワークwの多数を繰り返し研削する場合には、図21に示す作動フローを自動的に実行させるのがよい。
【0086】
図21において、1個目のワークについて、ステップ(1)〜(3)で熱変形量検出機能部25の一部の機能による作動が行われる。これらの各ステップ(1)〜(3)は図16の(1)〜(3)と同じものであり、このさいステップ(3)ではワークwの熱変形量dθwが特定される。そして、ステップ(4)では先の熱変形量dθwはワークwの熱収縮量と等価であり、この熱収縮量dθwか熱収縮速度のデータを把握する。
【0087】
この後、ステップ5に移行して砥石台3の送り込みが行われる。そして、ステップ(6)でスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i=1))をAEセンサで測定する。ステップ(7)で研削主分力の測定値qs(i=1)からスパークアウト開始時の熱変形量(熱収縮量)dθk(i=1)を算出し、この算出値を使用して、スパークアウト過程でのワークwの熱変形量(熱収縮量)d′θw(i=1)を特定し、これに対応した図19中の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=1)を決定する。これによりスパークアウト過程の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=1)及び熱変形速度が推測されたのである。次にステップ(8)でスパークアウト過程での極微少切り込み量duを決定し、極微少切込み速度研削を実行する。そして、ワークが目標寸法になったことを定寸装置15が検出したとき1個目のワークの加工が完了する。
【0088】
この後、再びステップ(5)に移行し、2個目のワークについて、ステップ(5)〜(9)までの作動が実行される。このさい、ステップ(6)でスパークアウト開始時の研削抵抗(研削主分力qs(i=2))をAEセンサで測定する。ステップ(7)で研削主分力の測定値qs(i=2)から式(s7)を使用してスパークアウト開始時の熱変形量(熱収縮量)dθk(i=2)を算出し、この算出値から式(s8)(s9)を使用して、スパークアウト過程でのワークwの熱変形量(熱収縮量)d′θw(i=2)を特定し、これに対応した図19中の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)を既述したところに準じて決定する。これによりスパークアウト過程の熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)及び熱変形速度が推測されたのである。次にステップ(8)で熱変形量(熱収縮量)dθw(i=2)からスパークアウト過程での極微少切り込み量duを決定し、極微少切込み速度研削を実行する。そして、ワークが目標寸法になったことを定寸装置15が検出したとき2個目のワークの加工が完了する。
以後は各ワークwについてステップ(5)〜(9)が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明で使用されるCNC研削盤を示す平面図である。
【図2】上記研削盤の砥石軸周辺の構造を示す断面図である。
【図3】上記砥石軸周辺の変形例を示す図である。
【図4】上記研削盤で実行される標準の研削過程を示す図である。
【図5】上記研削盤による研削過程を示しており、Aはプランジカット研削の説明図でBはトラバースカット研削の説明図である。
【図6】熱変形量検出機能部の作動流れを示す図である。
【図7】熱変形量検出機能部の作動により得られるデータの曲線などを示す図である。
【図8】寸法誤差最小化研削機能部により1個目のワークを研削する場合のデータに関し、(a)は熱変形量の演算値d′θwの変化過程の曲線を示す図であり、(b)は実寸法Rrの変化過程の曲線を示す図である。
【図9】1個目のワークを研削する場合の寸法誤差最小化研削機能部の作動流れを示す図である。
【図10】スパークアウト直前の研削主分力qsと熱変形量dθkの関係を示す図である。
【図11】寸法誤差最小化研削機能部に係るデータを示し、(a)は研削主分力qsの変化過程を示す図で、(b)は熱変形量の演算値d′θwについての間違った推測に係る曲線を示す図である。
【図12】実際の熱変形量d′θwの変化過程を示す説明図である。
【図13】熱変形量の演算値d′θwに係る曲線などを示し、(a)はi個目のワークの演算値d′θw(i)を推測するための曲線を示す図で(b)はi個目のワークの前記演算値d′θ(i)に係る曲線を示す図である。
【図14】i個目のワークを研削する場合の寸法誤差最小化研削機能部の作動流れを示す図である。
【図15】寸法誤差最小化研削機能部の作動における定寸装置の出力信号から特定される寸法Rの変化過程やi個目のワークの実寸法Rrの変化過程などを示す図である。
【図16】同一種類の多数のワークを繰り返して研削する場合の作動流れの一例を示す図である。
【図17】ワークのスパークアウト過程での熱変形量dθwの変化過程を示す図である。
【図18】極微少切込み速度研削や他種の研削におけるワークの表面粗さを示す図である。
【図19】極微少切込み量の決定についての説明図である。
【図20】表面粗さ改善研削機能の作動流れを示す図である。
【図21】同一種類の多数のワークを繰り返して研削する場合の作動流れの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
6 主軸台(ワーク支持回転手段)
7 心押し台(ワーク支持手段)
9 主軸(ワーク支持回転手段)
10 研削砥石
11 砥石軸
13a 主軸センタ(ワーク支持手段)
14 心押しセンタ(ワーク支持手段)
16 研削抵抗検出手段(AEセンサ)
25 熱変形量検出機能部
26 寸法誤差最小化研削機能部
27 寸法誤差最小化研削機能部
28 表面粗さ改善研削機能部
τg 設定時間(時間データ)
dθw 熱変形量(熱収縮量)
d′θw 熱変形量
qs 研削主分力
Rk 目標寸法
Rr 実寸法
w ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させる表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【請求項2】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させ、その後、該相対変位を停止させた状態以降、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【請求項3】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させ、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【請求項1】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させる表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【請求項2】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、一定時間の間、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させ、その後、該相対変位を停止させた状態以降、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【請求項3】
ワークを支持し特定中心線回りへ回転させるワーク支持回転手段と、砥石軸回りへ回転されワークに対しワーク回転半径方向へ相対変位される研削砥石とを備えた研削盤において、
ワークに回転を与えかつ研削液を注ぎ続けた状態でワークから研削砥石を離反させ、当該離反状態の下で時間経過に伴ってワークの外径を継続測定して、経過時間とワークの熱変形量との間の関係を取得する熱変形量検出機能部と、
スパークアウト開始点以降に経過する各時刻位置において前記取得した関係により推測される当該時刻位置での熱変形量よりも小さい切り込み量だけ、ワークに切り込むように研削砥石を相対変位させ、各時刻位置で計測されるワークの外径と前記取得した関係により推測される当該各時刻位置での熱変形量とを合わせて得られるワークの実寸法が目標寸法となったときに研削砥石の後退開始を制御する表面粗さ改善研削機能部を備えたことを特徴とする研削盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−115987(P2012−115987A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31206(P2012−31206)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2006−278832(P2006−278832)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(593127027)株式会社シギヤ精機製作所 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2006−278832(P2006−278832)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(593127027)株式会社シギヤ精機製作所 (19)
【Fターム(参考)】
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