説明

研削装置

【課題】被加工物にダメージを与えることなく、研削ホイールの研削面が被加工物に接触して実際に研削が開始されるまで時間を短縮して生産性を向上させる研削装置を提供する。
【解決手段】制御手段10はチャックテーブル8に保持された加工前の被加工物Wの厚さを記憶する記憶手段を備えており、研削水供給手段4を作動して研削ホイール324に研削水を供給しつつ研削ユニット送り機構5を作動して研削ユニット3を移動する際に、研削ホイールの研削面と加工前の被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置までは第1の送り速度で、研削ユニット送り機構を作動し、送り速度変更位置から研削ホイール回転速度が所定値まで低下するまでは第1の送り速度より遅いが、研削送り速度より速い第2の送り速度で研削ユニット送り機構を作動し、以後研削終了位置まで研削送り速度で、研削ユニットを送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を所定の厚さに研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。なお、半導体ウエーハは、一般に個々のデバイスに分割する前にその裏面を研削装置によって研削して所定の厚さに形成されている。
【0003】
このような半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面上に保持されている被加工物を研削するための研削ホイールを備えた研削ユニットと、該研削ユニットを該チャックテーブルの載置面と垂直な方向に研削送りする研削ユニット送り機構とを具備している。
【0004】
半導体ウエーハはシリコン等の脆性材料によって形成されているため、研削ホイールが急激に接触すると損傷する虞がある。そこで従来の研削装置は、研削ユニット送り機構を作動して該研削ユニットを研削送り方向に移動する際に、研削ホイールの研削面と被加工物との間隔が例えば15μmに達するまでは40〜60mm/秒の速い速度で研削ユニット送り機構を作動し、研削ホイールの研削面と被加工物との間隔が例えば15μmに達した後は研削条件と同じ研削送り速度(例えば0.1〜0.3μm/秒)の非常に遅い速度で研削ユニット送り機構を作動するようにしている。
【0005】
しかるに、研削ホイールの研削面と被加工物との間隔が例えば15μmに達したら直ちに研削条件と同じ非常に遅い研削送り速度(例えば0.1〜0.3μm/秒)で研削ユニット送り機構を作動すると、研削ホイールの研削面が被加工物に接触して実際に研削が開始されるまでに例えば50〜150秒もの時間を要することになり、生産性が悪いという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するために、研削ホイールの研削面と被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置までは第1の送り速度(40〜60mm/秒)で研削ユニット送り機構を作動し、送り速度変更位置から研削ホイールの研削面と被加工物との接触が検出さるまでは第1の送り速度より遅いが研削送り速度より速い第2の送り速度(1.0〜3.0μm/秒)で研削ユニット送り機構を作動し、研削ホイールの研削面と被加工物との接触が検出されたら研削終了位置まで研削送り速度(例えば0.2〜0.4μm/秒)で研削ユニット送り機構を作動せしめるようにした研削装置が下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−322247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献1に開示された研削装置においては、研削ホイールの研削面と被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置から研削ホイールの研削面と被加工物との接触が検出さるまで研削ホイールを移動する第2の送り速度は研削ホイールの研削面が被加工物に当接しても被加工物に損傷が生じない速度(例えば1.0〜3.0μm/秒)に設定されているが、研削ホイールの研削面と被加工物は研削送り速度(例えば0.2〜0.4μm/秒)より10倍前後の速い移動速度で接触するので、被加工物にダメージを与えることがある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物にダメージを与えることなく、研削ホイールの研削面が被加工物に接触して実際に研削が開始されるまで時間を短縮して生産性を向上させることができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物を研削するための研削ホイールおよび該研削ホイールを回転駆動する回転駆動手段を備えた研削ユニットと、該研削ユニットを該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に移動せしめる研削ユニット送り機構と、該研削ホイールと該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物に研削水を供給する研削水供給手段と、を具備する研削装置において、
該チャックテーブルの該保持面に対する該研削ユニットの移動位置を検出するための研削ユニット位置検出手段と、
該研削ホイールの回転速度を検出する研削ホイール回転速度検出手段と、
該研削ユニット位置検出手段および該研削ホイール回転速度検出手段からの検出信号に基づいて該研削ユニット送り機構を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該チャックテーブルの該保持面に保持された加工前の被加工物の厚さを記憶する記憶手段を備えており、該研削水供給手段を作動して該研削ホイールと該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物に研削水を供給しつつ該研削ユニット送り機構を作動して該研削ユニットを研削送り方向に移動する際に、該研削ホイールの研削面と加工前の被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置までは第1の送り速度で該研削ユニット送り機構を作動し、該送り速度変更位置から該研削ホイール回転速度検出手段によって検出された研削ホイール回転速度が所定値まで低下するまでは該第1の送り速度より遅いが研削送り速度より速い第2の送り速度で該研削ユニット送り機構を作動し、以後研削終了位置まで研削送り速度で該研削ユニット送り機構を作動せしめる、
ことを特徴とする研削装置が提供される。
【0010】
上記被加工物の厚さを入力する入力手段を備え、加工前の被加工物の厚さは該入力手段によって上記制御手段に入力され、制御手段は加工前の被加工物の厚さを上記記憶手段に格納する。また、上記チャックテーブルの保持面の高さおよびチャックテーブルの保持面に保持された加工前の被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段を備え、上記制御手段は高さ位置検出手段によって検出された該チャックテーブルの保持面の高さ位置およびチャックテーブルの保持面に保持された加工前の被加工物の高さ位置に基づいて被加工物の厚さを求め、求めた被加工物の厚さを上記記憶手段に格納する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による研削装置は以上のように構成され、研削ホイールの研削面と加工前の被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置までは第1の送り速度で研削ユニット送り機構を作動し、送り速度変更位置から研削ホイール回転速度検出手段によって検出された研削ホイール回転速度が研削水の抵抗によって所定値まで低下するまでは第1の送り速度より遅いが研削送り速度より速い第2の送り速度で研削ユニット送り機構を作動し、以後研削終了位置まで研削送り速度で該研削ユニット送り機構を作動せしめるので、送り速度変更位置から研削に関与しない研削ホイールの研削面が加工前の被加工物に接触する寸前まで移動させるために要する時間を大幅に短縮することができる。しかも、第2の送り速度による作動は研削ホイールの研削面が加工前の被加工物に接触する寸前までであるため、被加工物にダメージを与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された研削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には本発明に従って構成された研削装置の要部斜視図が示されている。
研削装置は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。装置ハウジング2の図1において右上端には、直立壁21が立設されている。この直立壁21の前側面には、上下方向に延びる1対の案内レール211、211が設けられている。この案内レール211、211には研削ユニット3が上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動可能に装着されている。
【0014】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31の後側面には上記一対の案内レール211、211と摺動可能に嵌合する被案内溝311、311が形成されている。このように直立壁21に設けられた一対の案内レール211、211に摺動可能に装着された移動基台31の前側面には支持部材33が複数個の締結ボルト331によって取り付けられており、この支持部材33の前側面にスピンドルユニット32が装着されている。
【0015】
スピンドルユニット32は、支持部材33に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための回転駆動手段としてのサーボモータ320(M1)とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、回転スピンドル322の下端にはホイールマウント323が設けられている。そして、このホイールマウント323の下面に研削ホイール324が取り付けられる。この研削ホイール324は、環状の砥石基台325と、該砥石基台325の下面に装着された研削砥石326からなる複数のセグメントとによって構成されており、砥石基台325が締結ネジ327によってホイールマウント323に装着される。このように構成されたスピンドルユニット32は、サーボモータ320(M1)が駆動されると研削ホイール324を矢印で示す方向に回転せしめる。
【0016】
図示の実施形態における研削装置は、図2に示すように上記研削ホイール324の回転速度を検出する研削ホイール回転速度検出手段34(RD)を具備している。なお、図示の実施形態における研削ホイール回転速度検出手段34(RD)は、上記サーボモータ320(M1)の回転速度を検出することにより研削ホイール324の回転速度を検出するように構成されている。この研削ホイール回転速度検出手段34(RD)は、検出信号を後述する制御手段10に送る。また、図示の実施形態における研削装置は、図2に示すように上記研削ホイール324および後述するチャックテーブルの保持面に保持されている被加工物に研削水を供給する研削水供給手段4を具備している。研削水供給手段4は、研削水供給源41と、該研削水供給源41と上記スピンドルユニット32とを接続する配管42と、該配管42に配設された電磁開閉弁43(MV)とからなっている。この電磁開閉弁43(MV)は、除勢(OFF)している状態では閉路しており、附勢(ON)されると開路して研削水供給源41とスピンドルユニット32を連通するように構成されている。なお、電磁開閉弁43(MV)は、後述する制御手段10によって制御される。
【0017】
図1に戻って説明を続けると、図示の形態における研削装置は、上記移動基台31即ち研削ユニット3を案内レール211、211に沿って移動させ研削ホイール324を後述するチャックテーブルの保持面と垂直な方向に研削送りする研削ユニット送り機構5を具備している。この研削ユニット送り機構5について、図2を参照して説明する。図2に示す研削ユニット送り機構5は、直立壁21の後側面に平行に上下方向に配設された雄ねじロッド51と、直立壁21の後側面上部に装着され雄ねじロッド51を回転駆動するためのパルスモータ52(M2)と、直立壁21の後側面下部に装着され雄ねじロッド51の下端部を回転可能に支持する軸受ブロック53と、上記移動基台31に装着され雄ねじロッド51と螺合する雌ねじブロック54を具備しており、パルスモータ52(M2)を正転駆動することにより研削ユニット3を下方に移動し、パルスモータ52(M2)を逆転駆動することにより研削ユニット3を上方に移動せしめる。なお、上記直立壁21には、雌ねじブロック54の移動を許容する長穴が形成されている。
【0018】
図示の実施形態における研削装置は、図2に示すように研削ユニット3即ち研削ホイール324の後述するチャックテーブルの保持面に対する移動位置を検出するための研削ユニット位置検出手段6を具備している。研削ユニット位置検出手段6は、上記雄ねじロッド51と平行に配設され直立壁21に固定されたリニヤスケール61と、上記雌ねじブロック54に取り付けられリニヤスケール61の被検出線を検出する検出器62(LS)とからなっている。なお、検出器62(LS)は、それ自体周知の光電式検出器でよく、上記リニヤスケール61の被検出線(例えば1μm間隔で形成されている)の検出に応じてパルス信号を生成し、このパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0019】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研削装置は、上記直立壁21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル7を具備している。このターンテーブル7は、図1に示すように比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印で示す方向に適宜回転せしめられる。ターンテーブル7には、図示の実施形態の場合180度の位相角をもって2個のチャックテーブル8が水平面内で回転可能に配置されている。このチャックテーブル8は、上面に被加工物を保持する保持面81を有し、図示しない回転駆動手段によって矢印で示す方向に回転せしめられるようになっている。なお、チャックテーブル8は、多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料から構成されており、図示しない吸引手段に接続されている。従って、チャックテーブル8を図示しない吸引手段に選択的に連通することにより、保持面81上に載置された被加工物を吸引保持する。なお、上記ターンテーブル7は、2個のチャックテーブル8を被加工物搬入・搬出域8aと上記研削ユニット3の下方位置である研削加工域8bに交互に位置付けるようになっている。被加工物搬入・搬出域8aに位置付けられたチャックテーブル8の保持面81上に加工前の被加工物としての半導体ウエーハWが図示しない被加工物搬入手段によって載置される。なお、被加工物としての半導体ウエーハWの表面には保護テープTが貼着されており、この保護テープT側がチャックテーブル8の保持面81上に載置される。
【0020】
図示の実施形態における研削装置は、図1および図2に示すようにチャックテーブル8の保持面81の高さ位置およびチャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前の被加工物としての半導体ウエーハWの高さ位置を検出する高さ位置検出手段としてのハイトゲージ9(HG)を具備している。このハイトゲージ9(HG)は、その検出信号を後述する制御手段10に送る。
【0021】
図示の実施形態における研削装置は、図2に示すように制御手段10を具備している。制御手段10はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。なお。ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、チャックテーブル8の保持面81の高さ位置ZC、チャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前被加工物の高さ位置ZW、加工前被加工物の厚さt1、被加工物の仕上がり厚さt2等を記憶する記憶手段として機能する。このように構成された制御手段10の入力インターフェース104には、上記研削ホイール回転速度検出手段34(RD)、研削ユニット位置検出手段6の検出器62(LS)、ハイトゲージ9(HG)、被加工物の厚さ等を入力する入力手段110(ID)等からの信号が入力される。また、出力インターフェース105からは、上記サーボモータ320(M1)、パルスモータ52(M2)、研削水供給手段4の電磁開閉弁43(MV)等に制御信号を出力する。
【0022】
図示の実施形態における研削装置は以上のように構成されており、以下その研削加工動作について説明する。
なお、研削加工に先立って上記チャックテーブル8の保持面81の高さ位置(ZC)が予め制御手段10のランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納される。即ち、チャックテーブル8を研削加工域8bに位置付け、研削ユニット送り機構5を作動して研削ユニット3を徐々に下降させていき、研削ホイール324の研削面(下面)がチャックテーブル8の保持面81に接触した状態における研削ユニット位置検出手段6の検出器62(LS)から出力された位置信号を、制御手段10はチャックテーブル8の保持面81の高さ位置(ZC)即ち研削ユニット3の原点位置としてランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納する。また、被加工物としての半導体ウエーハWについては、加工前の設計上の厚さt1および設計上の仕上がり厚さt2が入力手段110(ID)から制御手段10に入力され、この入力データが制御手段10のランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納される。
【0023】
加工前の半導体ウエーハWは、図示しない被加工物搬入手段によって被加工物搬入・搬出域8aに位置付けられているチャックテーブル8の保持面81上に載置される。チャックテーブル8の保持面81上に載置された加工前半導体ウエーハWは、図示しない吸引手段によってチャックテーブル8上に吸着保持される。そして、ターンテーブル7を図示しない回転駆動機構によって矢印Aで示す方向に180度回動せしめて、加工前半導体ウエーハWを載置したチャックテーブル8を研削加工域8bに位置付ける。研削加工域8bにチャックテーブル8が位置付けられたならば、ハイトゲージ9(HG)によってチャックテーブル8の保持面81の高さ(H1)およびチャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前半導体ウエーハWの高さ(H2)が検出され、その検出信号が制御手段10に入力されてランダムアクセスメモリ(RAM)103に一時格納される。そして、制御手段10は、上記チャックテーブル8の保持面81の高さ(H1)とチャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前半導体ウエーハWの高さ(H2)に基づいて半導体ウエーハWの加工前厚さt1を求め(t1=H2−H1)、このようにして求めた半導体ウエーハWの加工前厚さt1をランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納する。なお、加工前半導体ウエーハWの厚さt1は、上述したように入力手段110(ID)によって入力してもよいが、加工前半導体ウエーハWの厚さのバラツキ等を考慮すると、その都度チャックテーブル8の保持面81の高さ(H1)およびチャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前半導体ウエーハWの高さ(H2)とを検出してその差によって求めるのが望ましい。
【0024】
上述したように加工前半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル8が研削加工域8bに位置付けられると、制御手段10は、チャックテーブル8を駆動する図示しない回転駆動機構を作動してチャックテーブル8を矢印Bで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転せしめるとともに、研削ユニット3のサーボモータ320(M1)を駆動して研削ホイール324を矢印Cで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転せしめる。また、制御手段10は、上記研削水供給手段4の電磁開閉弁43(MV)を附勢(ON)して開路し、研削水供給源41とスピンドルユニット32を連通する。この結果、スピンドルユニット32を構成する研削ホイール324およびチャックテーブル8の保持面81上に保持された半導体ウエーハWに研削水が供給される。次に制御手段10は、研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)を正転駆動して研削ユニット3を研削送り方向である下方に作動し、研削ホイール324の研削面がチャックテーブル8上に保持された加工前半導体ウエーハWに接触して研削加工が施される。
【0025】
ここで、研削ユニット送り機構5の送り制御について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
研削ユニット送り機構5の研削送り方向(下方向)への作動開始時には、研削ユニット3はチャックテーブル8の所定量上方位置(ホームポジション:Z0)に位置付けられている。制御手段10は、先ず研削水供給手段4の電磁開閉弁43(MV)を附勢(ON)して開路することにより研削水を研削ホイール324に供給するとともに、ステップS1において研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)を正転駆動し、研削ユニット3即ち研削ホイール324の送り速度(ZV)を第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)の速い速度で下降せしめる。
【0026】
ステップS1において研削ユニット3即ち研削ホイール324を第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)で下降せしめたならば、制御手段10はステップS2に進んで研削ユニット位置検出手段6の検出器62(LS)によって検出された移動位置(Z)が送り速度変更位置Z1に達したか否かをチェックする。この送り速度変更位置Z1は、チャックテーブル8の保持面81上に保持された加工前半導体ウエーハWの上面即ち加工前半導体ウエーハWの高さ位置ZW(ZC+t1)から研削ホイール323の研削面(下面)までの間隔が所定距離Lに相当する位置に設定されている。この所定距離Lは、研削ユニット3が第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)で下降している状態で送り速度(ZV)を急激に減速したとき、その慣性力による各部材の撓みに起因して研削ホイール324の研削面(下面)が加工前半導体ウエーハWに当接しない距離、例えば10〜20μmに設定されている。従って、送り速度変更位置Z1は、チャックテーブル8の保持面81の高さ位置ZCと加工前半導体ウエーハWの厚さt1と上記所定距離Lを加算した値(Z1=ZC+t1+L)となる。
【0027】
ステップS2において移動位置(Z)が送り速度変更位置Z1に達していなければ、制御手段10は上記ステップS1に戻って研削ユニット3の第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)での下降を継続して実行する。一方、ステップS2において移動位置(Z)が送り速度変更位置Z1に達したならば、制御手段10はステップS3に進んで研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)の正転駆動の回転速度を低下させ、研削ユニット3即ち研削ホイール324の送り速度(ZV)を第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)より遅いが研削送り速度V3(例えば0.1〜0.2μm/秒)より速い第2の送り速度V2(例えば1.0〜2.0μm/秒)に設定されている。
【0028】
ステップS3において研削ユニット3即ち研削ホイール324を第2の送り速度V2(例えば1.0〜3.0μm/秒)で下降せしめたならば、制御手段10はステップS4に進んで研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)まで低下したか否かをチェックする。即ち、制御手段10は、上記研削ホイール回転速度検出手段34(RD)からの検出信号に基いて、研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)まで低下したか否かを判定する。研削ホイール324の回転速度(RV)は研削ホイール324の研削面(下面)と半導体ウエーハWとの間隔が小さくなるに従って研削水の抵抗が増加して一時的に低下するので、この一時的に研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)まで低下したことを検出することにより、研削ホイール324の研削面(下面)が半導体ウエーハWに接触する寸前に達したことを確認することができる。なお、上記所定値(RV1)は、研削ホイール324の回転速度が上記のように6000rpmに設定されている場合には、例えば5950rpmに設定する。
【0029】
ステップS4において研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)まで低下していなければ、制御手段10は上記ステップS3に戻って研削ユニット3の第2の送り速度V2(例えば1.0〜3.0μm/秒)での下降を継続して実行する。一方、ステップS4において研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)まで低下したならば、制御手段10は研削ホイール324の研削面(下面)が半導体ウエーハWに接触する寸前に達したと判断し、ステップS5に進んで研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)の正転駆動の回転速度を更に低下させ、研削ユニット3即ち研削ホイール324の送り速度(ZV)を研削条件と同じ研削送り速度V3(例えば0.1〜0.2μm/秒)に変更して研削送りする。
【0030】
ステップS5において研削ユニット3即ち研削ホイール324を研削送り速度V3(例えば0.1〜0.2μm/秒)で研削送りを開始したならば、制御手段10はステップS6に進んで半導体ウエーハWが所定の仕上がり厚さt2まで研削されたか否かをチェックする。この半導体ウエーハWが仕上がり厚さt2まで研削されたか否かの判定は、研削ユニット位置検出手段6の検出器62(LS)によって検出された移動位置(Z)が研削終了位置Z2に達したか否かによって行う。即ち、研削終了位置Z2は、チャックテーブル8の保持面81の高さ位置ZCと半導体ウエーハWの仕上がり厚さt2を加算した値(Z2=ZC+t2)に設定されている。
【0031】
ステップS6において研削ユニット3即ち研削ホイール324の移動位置(Z)が研削終了位置Z2に達していなければ、制御手段10は半導体ウエーハWが仕上がり厚さt2まで研削されていないと判断し、上記ステップS5に戻って研削ユニット3の研削送り速度V3(例えば0.1〜0.2μm/秒)での研削送りを継続して実行する。一方、ステップS6において研削ユニット3即ち研削ホイール324の移動位置(Z)が研削終了位置Z2に達したならば、制御手段10は半導体ウエーハWが仕上がり厚さt2まで研削されたと判断し、ステップS7に進んで研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)を逆転駆動する。この結果、研削ユニット送り機構5は研削ユニット3即ち研削ホイール324を上昇せしめる。なお、研削ユニット3を上昇させる移動速度は、上記第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)と同等または速い速度でよい。
【0032】
ステップS7においてパルスモータ52(M2)を逆転駆動したならば、制御手段10はステップS8に進んで研削ユニット位置検出手段6の検出器62(LS)によって検出された移動位置(Z)が上記ホームポジション(Z0)に達したか否かをチェックする。ステップS8においてホームポジション(Z0)に達していなければ、制御手段10は上記ステップS7に戻ってパルスモータ52(M2)の逆転駆動を継続する。ステップS8において移動位置(Z)がホームポジション(Z0)に達したならば、制御手段10は研削ユニット3が所定のホームポジション(Z0)に達したと判断し、ステップS9に進んで研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)を停止(OFF)する。
【0033】
なお、ステップS7において研削ユニット送り機構5のパルスモータ52(M2)を逆転駆動し研削ユニット3を上昇させたら、制御手段10は上記研削ユニット3のサーボモータ320(M1)の駆動を停止するとともに、研削水供給手段4の電磁開閉弁43(MV)を除勢(OFF)して閉路することにより研削ホイール324への研削水の供給を停止し、チャックテーブル8の回転駆動を停止する。そして、ターンテーブル7を矢印Aで示す方向に180度回動せしめて、加工後半導体ウエーハWを載置したチャックテーブル8を被加工物搬入・搬出域8aに位置付ける。
【0034】
以上のように図示の実施形態においては、研削加工時に研削ユニット3をホームポジション(Z0)から第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)で作動し、研削ホイール324の研削面(下面)がチャックテーブル8の保持面81に載置された加工前半導体ウエーハWの上面から所定距離L(例えば10〜20μm)上方の送り速度変更位置Z1に達したら、研削ホイール324の回転速度(RV)が所定値(RV1)に低下するまで第1の送り速度V1(例えば10〜50mm/秒)より遅いが研削送り速度V3(例えば0.1〜0.2μm/秒)より速い第2の送り速度V2(例えば1.0〜2.0μm/秒)で作動するため、上記送り速度変更位置Z1から研削に関与しない研削ホイール324の研削面(下面)が加工前半導体ウエーハWに接触する寸前まで移動させるために要する時間を大幅に短縮することができる。しかも、第2の送り速度V2(例えば1.0〜2.0μm/秒)による作動は研削ホイール324の研削面(下面)が加工前半導体ウエーハWに接触する寸前までであるため、半導体ウエーハWにダメージを与えることがない。このように上記実施形態においては、半導体ウエーハWにダメージを与えることなく、研削に関与しない時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によって構成された研削装置の一実施形態を示す要部斜視図。
【図2】本発明によって構成された研削装置の概略構成図。
【図3】図2に示す研磨装置に装備される制御手段の動作手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
33:支持部材
320:サーボモータ(M1)
321:スピンドルハウジング
322:回転スピンドル
323:ホイールマウント
324:研削ホイール
34:研削ホイール回転速度検出手段 (RD)
4:研削水供給手段
41:研削水供給源
43:電磁開閉弁(MV)
5:研削ユニット送り機構
51:雄ねじロッド
52:パルスモータ(M2)
53:軸受ブロック
54:雌ねじブロック
6:研削ユニット位置検出手段
61:リニヤスケール
62:検出器(LS)
7:ターンテーブル
8:チャックテーブル
9:ハイトゲージ(HG)
10:制御手段
110:入力手段(ID)
W:半導体ウエーハ
T:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物を研削するための研削ホイールおよび該研削ホイールを回転駆動する回転駆動手段を備えた研削ユニットと、該研削ユニットを該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に移動せしめる研削ユニット送り機構と、該研削ホイールと該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物に研削水を供給する研削水供給手段と、を具備する研削装置において、
該チャックテーブルの該保持面に対する該研削ユニットの移動位置を検出するための研削ユニット位置検出手段と、
該研削ホイールの回転速度を検出する研削ホイール回転速度検出手段と、
該研削ユニット位置検出手段および該研削ホイール回転速度検出手段からの検出信号に基づいて該研削ユニット送り機構を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該チャックテーブルの該保持面に保持された加工前の被加工物の厚さを記憶する記憶手段を備えており、該研削水供給手段を作動して該研削ホイールと該チャックテーブルの保持面に保持されている被加工物に研削水を供給しつつ該研削ユニット送り機構を作動して該研削ユニットを研削送り方向に移動する際に、該研削ホイールの研削面と加工前の被加工物との間隔が所定間隔に達する送り速度変更位置までは第1の送り速度で該研削ユニット送り機構を作動し、該送り速度変更位置から該研削ホイール回転速度検出手段によって検出された研削ホイール回転速度が所定値まで低下するまでは該第1の送り速度より遅いが研削送り速度より速い第2の送り速度で該研削ユニット送り機構を作動し、以後研削終了位置まで研削送り速度で該研削ユニット送り機構を作動せしめる、
ことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
被加工物の厚さを入力する入力手段を備え、加工前の被加工物の厚さは該入力手段によって該制御手段に入力され、該制御手段は加工前の被加工物の厚さを該記憶手段に格納する、請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該チャックテーブルの保持面の高さ位置および該チャックテーブルの保持面に保持された加工前の被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段を備え、該制御手段は該高さ位置検出手段によって検出された該チャックテーブルの保持面の高さ位置および該チャックテーブルの保持面に保持された加工前の被加工物の高さ位置に基づいて被加工物の厚さを求め、該求めた被加工物の厚さを該記憶手段に格納する、請求項1記載の研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−52075(P2010−52075A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218061(P2008−218061)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】