説明

研削装置

【課題】研削ホイールが回転中であるか停止中であるかを一目で判別できるための新規な技術を提供する。
【解決手段】スピンドルハウジング20から露出したスピンドル先端部21s(下端部)に固定されるホイールマウント23と、ホイールマウント23に装着された研削ホイール24とからなり、スピンドル先端部21sの外周側面21c、ホイールマウント23の外周側面23c、上面23dには、スピンドル21の回転方向に交差する縞目33A、33AC、33Eから構成される縞模様が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の板状の被加工物を研削加工する研削ホイールを備えた研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状の被加工物の裏面を研削する研削装置は、チャックテーブル上に吸引保持された被加工物を研削する研削手段を具備している。研削手段は、回転可能に配設され鉛直に延在するスピンドルと、スピンドルの下端に装着されたホイールマウントと、ホイールマウントに着脱自在に装着される研削ホイールとから構成されている。研削ホイールは、円環形状の基台とこの基台に固定された砥石とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
研削装置は、研削ホイールの交換や、被加工物であるウェーハを保持するチャックテーブルの交換など、様々なメンテナンスが行われるものであるが、このメンテナンスの際には、オペレータは研削ホイールが固定されたスピンドルの周辺に手を伸ばして作業を行う必要がある。
【0004】
このようなメンテナンスの作業が行われる際には、通常は、研削装置に備えた安全装置が作動するため、オペレータが研削ホイールなどの周辺に手を伸ばす際に、スピンドルは停止状態とされることでオペレータの安全が確保されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−48059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置メーカーのメンテナンス担当者等が安全装置を何らかの理由により意図的に解除してメンテナンスを行う場面が生じることが想定される。
【0007】
この際、スピンドル、および、スピンドルに装着された研削ホイールが回転しているような場合には、メンテナンス担当者や、オペレータが研削ホイールなどの周辺に手を伸ばすことは避けられなければならない。
【0008】
ところが、スピンドルや研削ホイールが回転しているか否かについては、従来の構成ではメンテナンス担当者や、オペレータが一見して判断することが困難なものであった。スピンドルや研削ホイールは、停止している状態と、回転している状態とでは、見た目に大差がないためである。
【0009】
そこで、本発明は、スピンドル、ホイールマウント、ひいては、研削ホイールが回転中であるか停止中であるかを一目で判別できるための新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、を備えた研削装置であって、研削手段は、スピンドルハウジング中に回転可能に収容されたスピンドルと、スピンドルハウジングから露出したスピンドル先端部に固定されるホイールマウントと、ホイールマウントに装着された研削ホイールとからなり、スピンドル先端部の外周側面、ホイールマウントの外周側面、ホイールマウントの上面の少なくともいずれか一つには、スピンドルの回転方向に交差する縞目から構成される縞模様、又は文字列が表示されている、ことを特徴とする研削装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スピンドルやホイールマウントの外周側面などに縞目や文字列などの模様(パターン)を形成するというシンプルで安価な方法によって、メンテナンス担当者や、オペレータに対し、スピンドル、ホイールマウント、ひいては、研削ホイールが回転中であるか停止中であるか否かを一目で判別させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施するのに適した研削装置の外観斜視図である。
【図2】粗研削ユニットの部位の構成について示す側面図である。
【図3】ホイールマウントと研削ホイールの構成について示す斜視図である。
【図4】研削ホイールによるウェーハの研削加工について示す斜視図である。
【図5】スピンドルとホイールマウントに斜め方向の縞目を構成する実施形態について示す側面図である。
【図6】ホイールマウントに文字列を表示させた実施形態について示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を実施するのに適した加工装置の例である研削装置2の斜視図である。4は研削装置2のハウジング(ベース)であり、ハウジング4の後方には二つのコラム6a,6bが垂直に立設されている。
【0014】
コラム6aには、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。この一対のガイドレール8に沿って粗研削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。粗研削ユニット10は、そのスピンドルハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0015】
図2にも示されるように、粗研削ユニット10は、スピンドルハウジング20と、スピンドルハウジング20にて回転可能に支持されつつ下端部がスピンドルハウジング20の下方へ突出されるスピンドル21と、スピンドル21を回転駆動するサーボモータ22と、スピンドル21の先端に固定されたホイールマウント23と、ホイールマウント23に固定される研削ホイール24を有している。研削ホイール24の下部には、複数の粗研削用の研削砥石26が設けられている。
【0016】
粗研削ユニット10は、粗研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成される粗研削ユニット移動機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0017】
図1に示される他方のコラム6bにも、同様に上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)19が固定されている。この一対のガイドレール19に沿って仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動可能に装着されている。
【0018】
仕上げ研削ユニット28は、そのハウジング36が一対のガイドレール19に沿って上下方向に移動する図示しない移動基台に取り付けられている。仕上げ研削ユニット28は、ハウジング36と、ハウジング36中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ38と、スピンドルの先端に固定された仕上げ研削用の研削砥石42を有する研削ホイール40を有している。
【0019】
仕上げ研削ユニット28は、仕上げ研削ユニット28を一対の案内レール19に沿って上下方向に移動するボールねじ47とパルスモータ48とから構成される仕上げ研削ユニット移動機構49を備えている。パルスモータ48を駆動すると、ボールねじ47が回転し、仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動される。
【0020】
研削装置2は、コラム6a,6bの前側においてハウジング4の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル44を具備している。ターンテーブル44は比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印45で示す方向に回転される。
【0021】
ターンテーブル44には、互いに円周方向に120°離間して3個のチャックテーブル46が水平面内で回転可能に配置されている。チャックテーブル46は、ポーラスセラミック材によって円盤状に形成された吸着チャックを有しており、吸着チャックの保持面上に載置されたウェーハを真空吸引手段を作動することにより吸引保持する。
【0022】
ターンテーブル44に配設された3個のチャックテーブル46は、ターンテーブル44が適宜回転することにより、ウェーハ搬入・搬出領域A、粗研削加工領域B、仕上げ研削加工領域C、及びウェーハ搬入・搬出領域Aに順次移動される。
【0023】
ハウジング4の前側部分には、ウエーハカセット50と、リンク51及びハンド52を有するウェーハ搬送ロボット54と、複数の位置決めピン58を有する位置決めテーブル56と、ウェーハ搬入機構(ローディングアーム)60と、ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)62と、研削されたウェーハを洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置64と、スピンナ洗浄装置64で洗浄及びスピン乾燥された研削後のウェーハを収容する収容カセット66が配設されている。
【0024】
スピンナ洗浄装置64には、研削された半導体ウェーハ11を吸引保持して回転する半導体ウェーハ11より小径のスピンナテーブル68が装着されている。70はスピンナ洗浄装置64のカバーである。
【0025】
以上の構成とする研削装置2は、半導体ウェーハ11(被加工物)を保持するチャックテーブル46と、チャックテーブル46に保持された被加工物を研削する研削手段としての粗研削ユニット10、仕上げ研削ユニット28、を備えた構成としている。
【0026】
次に、本発明において特徴的な構成について説明する。図3は、粗研削ユニット10の下端部の構成について示すものであり、スピンドルハウジング20から露出したスピンドル先端部(スピンドル21の下端部)にホイールマウント23が設けられ、ホイールマウント23に対して研削ホイール24が螺子31で固定される構成が示されている。なお、仕上げ研削ユニット28においても同様の構成とする。
【0027】
研削ホイール24は、ホイールマウント23の下面に装着される装着面32bを有する円環状の環状基台32と、環状基台32の下側の端部(自由端部)にリング状(円環状)に配設され、粒径2〜60μmのダイアモンド砥粒をビトリファイドボンド等で固めた複数の研削砥石26と、を有して構成される。環状基台32の周方向の複数箇所には、厚み方向に雌螺子穴32aが形成されており、雌螺子穴32aに対し、ホイールマウント23の貫通穴23aを通して螺子31を螺合させることで、ホイールマウント23に対して研削ホイール24が固定される。
【0028】
図4は、チャックテーブル46上に吸引保持されたウェーハ11の加工について示すものであり、チャックテーブル46を矢印a方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール24をチャックテーブル46と同一方向に、即ち矢印b方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、粗研削ユニット移動機構18(図1)を作動して研削砥石26をウェーハ11の裏面11bに接触させる。
【0029】
そして、研削ホイール24を所定の研削送り速度(例えば3〜5μm/秒)で下方に所定量研削送りすることで、ウェーハ11の研削が実施される。図示しない接触式の厚み測定ゲージによってウェーハの厚みを測定しながらウェーハ11を所望の厚み(例えば100μm)に仕上げる。
【0030】
本実施形態では、研削手段は、スピンドルハウジング20から露出したスピンドル先端部21s(下端部)に固定されるホイールマウント23と、ホイールマウント23に装着された研削ホイール24とからなり、スピンドル先端部21sの外周側面21c、ホイールマウント23の外周側面23c、上面23dには、スピンドル21の回転方向に交差する縞目33Aから構成される縞模様が表示されている構成としている。
【0031】
本実施形態では、まず、スピンドル21の先端部21sの外周側面21cにおいて、互いに色の異なる帯状ライン33a,33bを交互に配置することで、縦方向の縞目33Aから構成される縞模様が表示されることとしている。
【0032】
縞目33Aを構成する各帯状ライン33a,33bの幅や色については特に限定されるものではないが、例えば、帯状ライン33aを蛍光色(黄、緑、赤、橙などのいずれか一色)とし、帯状ライン33bを艶消しの黒色や、或いは、スピンドル21の素材そのまま(例えばステンレス素材の金属表面)などとすることが考えられる。このような色の組み合わせによれば、隣り合う帯状ライン33a,33bの間でのコントラストを明確にすることができる。
【0033】
さらに、以上のスピンドル21における縞目33Aと同様に、ホイールマウント23の上面23dに縞目33C(帯状ライン33c,33d)、外周側面23cに縞目33E(帯状ライン33e,33f)が構成されている。なお、このように、複数箇所の縞目33A、33C、33Eを構成するほか、これらの少なくとも一つを構成することによれば、本願発明の効果を得ることができる。
【0034】
また、縞目33A〜33Cを構成する帯状ライン33a,33b等の形態としては、スピンドル21の外周側面21cに対し、テープを貼着する、印刷する、塗装するなどの形態が考えられる。これらの形態によれば、研削ホイール24の特定箇所において重量のアンバランス(バラつき)の発生が抑えられ、スピンドル21やホイールマウント23の安定した高速回転を実現することが可能となる。
【0035】
そして、縞目33A〜33Cの存在により、スピンドル21が停止している場合には、装置メーカーのメンテナンス担当者や、オペレータは、縞目33A〜33Cの模様を目視確認することができ、これとともにスピンドル21が停止していることを認識できる。
【0036】
これにより、メンテナンス担当者や、オペレータは、スピンドル21やホイールマウント23が停止中である、つまりは、研削ホイール24が停止中であることを一目で判別することができ、また、安心して作業を行ってもらうことができる。
【0037】
他方、スピンドル21やホイールマウント23が回転中(例えば6000rpmの高速回転など)である場合には、装置メーカーのメンテナンス担当者や、オペレータは、縞目33A〜33Cの模様を目視確認することができず、これとともにスピンドル21、及び、ホイールマウント23が回転していることを認識できる。
【0038】
これにより、メンテナンス担当者や、オペレータは、スピンドル21、及び、ホイールマウント23が回転中である、つまりは、研削ホイール24が回転中であることを一目で判別することができ、また、この回転中であることを認識した上で研削ホイール24とは関係性が低い作業や、研削ホイール24から離れた位置についての作業を行うなど、適切な対応を図ることができる。そして、メンテナンス担当者や、オペレータが研削ホイールなどの周辺に手を伸ばすといった行為も防ぐことが可能となる。
【0039】
図5は、他の実施形態のスピンドル21A、ホイールマウント23Aについて示すものであり、スピンドル21A、ホイールマウント23Aのそれぞれの外周側面、及び、ホイールマウント23の上面(不図示)に、側面視において斜め方向の縞目33G,33Fが形成される構成とするものである。
【0040】
このように縞目33G,33Fについては、さまざまな形態が考えられ、回転方向に交差する縞目であって、スピンドルやホイールマウントの停止/回転の状態が容易に識別できるものであれば、具体的な構成については特に限定されるものではない。
【0041】
さらに、図6は、他の実施形態のホイールマウント23Bについて示すものであり、ホイールマウント23Bの外周側面23mには、文字列35が表示されている構成としている。この他の実施形態では、『停止中』という日本語が外周側面23mの周方向に繰り返して表示されることとしている。なお、ホイールマウント23Bの外周側面23mに加え、スピンドル21Bの外周側面21cや、ホイールマウント23Bの上面23dにも文字列を表示することとしてもよい。
【0042】
文字列35を構成する文字の字体、色、大きさについては特に限定されるものではないが、メンテナンス担当者や、オペレータが一目で文字を認識できるようにすることが好ましい。また、「停止中」といったように、「停止をしている状態である」という特定の観念を容易に想起させることができるように、よく知られた日本語文字列、外国語文字列を用いることが好ましい。
【0043】
以上に説明した実施形態によれば、スピンドル21やホイールマウント23の外周側面に縞目や文字列などの模様(パターン)を形成するというシンプルで安価な方法によって、メンテナンス担当者や、オペレータに対し、スピンドル21、ホイールマウント23、ひいては、研削ホイール24が回転中であるか停止中であるか否かを一目で判別させることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
20 スピンドルハウジング
21 スピンドル
23 ホイールマウント
24 研削ホイール
26 研削砥石
32 環状基台
32c 外周側面
33A 縞目
33a 帯状ライン
33b 帯状ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、
を備えた研削装置であって、
該研削手段は、
スピンドルハウジング中に回転可能に収容されたスピンドルと、
該スピンドルハウジングから露出したスピンドル先端部に固定されるホイールマウントと、
該ホイールマウントに装着された研削ホイールとからなり、
該スピンドル先端部の外周側面、該ホイールマウントの外周側面、該ホイールマウントの上面の少なくともいずれか一つには、
該スピンドルの回転方向に交差する縞目から構成される縞模様、又は文字列が表示されている、ことを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99798(P2013−99798A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243508(P2011−243508)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】