説明

研磨パッドの製造方法

【課題】微細で均一な気泡を有し、研磨速度が大きい研磨パッドの製造方法、及び該製造方法により得られる研磨パッドを提供する。
【解決手段】イソシアネート化合物、活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、モールド内に気泡分散ウレタン組成物を注入する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを作製する工程、及び熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを切断して熱硬化性ポリウレタン発泡体シートを作製する工程を含む研磨パッドの製造方法において、前記活性水素含有化合物は、平均水酸基価が260〜400mgKOH/gであり、前記気泡分散ウレタン組成物は、融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を活性水素含有化合物100重量部に対して10〜40重量部含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料、シリコンウエハ、シリコンカーバイド、サファイア等の化合物半導体基板、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板等の表面を研磨する際に用いられる研磨パッド及びその製造方法に関する。特に、本発明の研磨パッドは、仕上げ用の研磨パッドとして好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際には、ウエハ表面に導電性膜を形成し、フォトリソグラフィー、エッチング等をすることにより配線層を形成する工程や、配線層の上に層間絶縁膜を形成する工程等が行われ、これらの工程によってウエハ表面に金属等の導電体や絶縁体からなる凹凸が生じる。近年、半導体集積回路の高密度化を目的として配線の微細化や多層配線化が進んでいるが、これに伴い、ウエハ表面の凹凸を平坦化する技術が重要となってきた。
【0003】
ウエハ表面の凹凸を平坦化する方法としては、一般的にケミカルメカニカルポリシング(以下、CMPという)が採用されている。CMPは、ウエハの被研磨面を研磨パッドの研磨面に押し付けた状態で、砥粒が分散されたスラリー状の研磨剤(以下、スラリーという)を用いて研磨する技術である。CMPで一般的に使用する研磨装置は、例えば、図1に示すように、研磨パッド1を支持する研磨定盤2と、被研磨材(半導体ウエハ)4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハの均一加圧を行うためのバッキング材と、スラリーの供給機構を備えている。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と被研磨材4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、被研磨材4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。
【0004】
このような研磨操作に使用される研磨パッドの製造方法としては、例えば以下の製造方法が提案されている。
【0005】
イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分にシリコン系界面活性剤を添加し、さらに前記第1成分を非反応性気体と撹拌して前記非反応性気体を微細気泡として分散させた気泡分散液を調製する。前記気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を混合して発泡反応液を調製する。前記発泡反応液を金型に流し込み、加熱し、反応硬化させてポリウレタン樹脂発泡体ブロックを作製する。その後、ポリウレタン樹脂発泡体ブロックをスライスしてポリウレタン樹脂発泡体シートからなる研磨パッドを製造する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1のように、イソシアネート末端プレポリマーと鎖延長剤とを用いてポリウレタン樹脂発泡体ブロックを作製する方法(いわゆるプレポリマー法)の場合には、ブロック内部の反応温度はそれほど高くはならない。そのため、ブロック内部の気泡はそれほど熱膨張せず、微細で均一な気泡が形成される。
【0007】
しかし、イソシアネート化合物と平均水酸基価が大きい活性水素含有化合物とを用いてポリウレタン樹脂発泡体ブロックを作製する方法(いわゆるワンショット法)の場合には、ブロック内部の反応温度がかなり高くなる。そのため、厚さが30mm以上のブロックを作製する場合には、ブロック内部の気泡が熱膨張したり、熱膨張により気泡同士が結合して気泡が粗大化しやすい。その結果、粗大化した気泡や大きさが不均一な気泡が形成される。粗大化した気泡や大きさが不均一な気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体シートからなる研磨パッドは、研磨速度が小さい、被研磨材の表面にスクラッチが発生しやすいなどの問題がある。
【0008】
特許文献2には、均一で微細な気泡を持つ表面平滑な高倍率の発泡体を製造するために、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融し、該溶融物に無機ガスを圧入すると共に、0.3〜80重量%の水を吸収させた吸水性ポリマーを熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部圧入し、溶融混練後、溶融物を押出機から押し出して発泡せしめることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提案している。
【0009】
特許文献3には、発泡プロセス中に混合物の一部の過熱によってフォームの品質が低下することを防止し、高品質のポリマーフォームを製造するために、発泡性混合物中に少なくとも80℃の温度で吸熱分解しうる化合物を添加することが記載されている。
【0010】
特許文献4には、寝具や衣類等の用途における蒸れを防止することができ、また、精密OA機器等の衝撃吸収用梱包材用途における調温機能を付与した蓄熱性メカニカルフロスタイプポリウレタンフォームを製造するために、メカニカルフロスタイプポリウレタンフォームに蓄熱性粒子を配合することが記載されている。蓄熱性粒子としては、シェル内に潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセルが記載されている。特許文献4の発明は、寝具や衣類等が蓄熱して蒸れることを防止するためにポリウレタンフォームに蓄熱性粒子を配合しており、製造時に気泡が熱膨張することを防止するために蓄熱性粒子を配合しているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−282993号公報
【特許文献2】特開平5−320400号公報
【特許文献3】特表2007−501885号公報
【特許文献4】特開2001−294640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微細で均一な気泡を有し、研磨速度が大きい研磨パッドの製造方法、及び該製造方法により得られる研磨パッドを提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、イソシアネート化合物、活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、モールド内に気泡分散ウレタン組成物を注入する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを作製する工程、及び熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを切断して熱硬化性ポリウレタン発泡体シートを作製する工程を含む研磨パッドの製造方法において、
前記活性水素含有化合物は、平均水酸基価が260〜400mgKOH/gであり、
前記気泡分散ウレタン組成物は、融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を活性水素含有化合物100重量部に対して10〜40重量部含有することを特徴とする研磨パッドの製造方法、に関する。
【0015】
活性水素含有化合物の平均水酸基価が260mgKOH/g以上の場合には、イソシアネート化合物との反応により組成物が発熱しやすく、ブロック内部の温度がかなり高くなる。そのため、ブロック内部の気泡が熱膨張したり、熱膨張により気泡同士が結合して気泡が粗大化しやすい。本発明のように、融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を気泡分散ウレタン組成物中に添加しておくことにより、ブロック内部の気泡が熱膨張することを効果的に防止することができる。その結果、微細で均一な気泡を有するポリウレタン発泡体シートが得られる。
【0016】
活性水素含有化合物の平均水酸基価が400mgKOH/gを超える場合には、ポットライフが短くなりすぎるため、組成物を十分に撹拌することができず、非反応性気体を微細気泡として分散させることができない。また、組成物が非常に発熱しやすくなり、大量の蓄熱剤を添加しても気泡の熱膨張を防止することが難しくなる。さらに、ポリウレタン発泡体の架橋度が高くなりすぎて脆くなる。
【0017】
本発明においては、融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を用いることが必要である。融解点が70℃未満の場合には、ウレタン化反応がスムーズに進行せず、ポットライフが長くなりすぎるため製造上好ましくない。一方、融解点が110℃を超える場合には、融解点が高すぎるためウレタン化反応で発生した熱を吸収することができず、ブロック内部の気泡の熱膨張を防止することができない。
【0018】
また、水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤は、イソシアネート化合物又は活性水素含有化合物と反応することが可能であり、ポリウレタン分子に結合させることができるため、ブルームの発生を効果的に防止することができる。また、水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を用いると、気泡分散ウレタン組成物中への分散性が向上するため、ブロック内部全体において気泡の熱膨張を効果的に防止することができる。その結果、微細で均一な気泡を有するポリウレタン発泡体シートが得られる。
【0019】
前記蓄熱剤は、活性水素含有化合物100重量部に対して10〜40重量部添加することが必要である。蓄熱剤の添加量が10重量部未満の場合には、ウレタン化反応で発生した熱を十分に吸収することができないため、ブロック内部の気泡の熱膨張を防止することができない。一方、40重量部を超える場合には、ウレタンマトリックス自体の物性が可塑化により低下するため、研磨パッドの研磨特性(特に研磨速度)が悪化する。
【0020】
前記蓄熱剤は、融解熱量が100kJ/kg以上の変性ワックス系潜熱蓄熱剤であることが好ましい。融解熱量が100kJ/kg未満の場合には、ウレタン化反応で発生した熱を十分に吸収できないため、蓄熱剤の添加量を多くする必要がある。潜熱タイプの蓄熱剤は、吸熱効果が大きく、少量添加した場合でも発生した熱を十分に吸収できるため好ましい。また、水和物タイプの蓄熱剤は、融解時に水分が気化し、ブロック内にボイドが発生しやすくなるため好ましくない。そのため、変性ワックス系の蓄熱剤を用いることが好ましい。
【0021】
また本発明は、前記製造方法により得られる研磨パッド、に関する。
【0022】
さらに本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造方法により得られる研磨パッドは、微細で均一な気泡を有しており、研磨速度が大きく、スクラッチの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の研磨パッドの製造方法は、イソシアネート化合物、活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、モールド内に気泡分散ウレタン組成物を注入する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロック(以下、ポリウレタン発泡体ブロックという)を作製する工程、及びポリウレタン発泡体ブロックを切断して熱硬化性ポリウレタン発泡体シート(以下、ポリウレタン発泡体シートという)を作製する工程を含む。
【0026】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができ、また機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により略球状の微細気泡を容易に形成することができるため研磨層の形成材料として好ましい材料である。
【0027】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート化合物、及び活性水素含有化合物(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等)からなるものである。
【0028】
本発明の研磨パッドの製造方法は、活性水素含有化合物の平均水酸基価が260〜400mgKOH/gである場合に有効な製造方法であり、活性水素含有化合物の平均水酸基価が260〜400mgKOH/gになるように各成分を調整することが必要である。
【0029】
イソシアネート化合物としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI(例えば、商品名ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業製)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
イソシアネート化合物としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社製)や商品名デュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
【0031】
上記のイソシアネート化合物のうち、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート又はカルボジイミド変性MDIを用いることが好ましい。
【0032】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールであるポリマーポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
高分子量ポリオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、得られるポリウレタン樹脂の弾性特性等の観点から500〜2000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、これを用いたポリウレタン樹脂は十分な弾性特性を有さず、脆いポリマーとなる。そのためこのポリウレタン樹脂から製造される研磨層は硬くなりすぎ、ウエハ表面のスクラッチの原因となる。また、摩耗しやすくなるため、パッド寿命の観点からも好ましくない。一方、数平均分子量が2000を超えると、これを用いたポリウレタン樹脂は軟らかくなりすぎるため、このポリウレタン樹脂から製造される研磨層は平坦化特性に劣る傾向にある。
【0034】
また、上記高分子量ポリオールのうち、水酸基価が150〜400mgKOH/gの3官能ポリオールを用いることが好ましい。水酸基価は200〜350mgKOH/gであることがより好ましい。また、3官能ポリオールはポリカプロラクトントリオールであることがより好ましい。水酸基価が150mgKOH/g未満の場合には、ポリウレタンのハードセグメント量が少なくなって耐久性が低下する傾向にあり、400mgKOH/gを超える場合には、ポリウレタン発泡体の架橋度が高くなりすぎて脆くなる傾向にある。
【0035】
水酸基価が150〜400mgKOH/gの3官能ポリオールの配合量は特に限定されず、研磨層に要求される特性により適宜決定されるが、活性水素含有化合物中に10〜70重量%含有させることが好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。
【0036】
また、水酸基価が150〜400mgKOH/gの3官能ポリオールと共に、水酸基価が50〜250mgKOH/gの2官能ポリオールを用いることが好ましい。2官能ポリオールの水酸基価は100〜150mgKOH/gであることがより好ましい。また、2官能ポリオールはポリカプロラクトンジオールであることがより好ましい。
【0037】
水酸基価が50〜250mgKOH/gの2官能ポリオールの配合量は特に限定されず、研磨層に要求される特性により適宜決定されるが、活性水素含有化合物中に20〜80重量%含有させることが好ましく、より好ましくは30〜70重量%である。
【0038】
高分子量ポリオールと共に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、又はトリメチロールプロパンを用いることが好ましい。低分子量ポリオール等の配合量は特に限定されず、研磨層に要求される特性により適宜決定されるが、活性水素含有化合物中に5〜25重量%であることが好ましい。
【0039】
イソシアネート化合物、活性水素含有化合物の比は、各々の分子量やポリウレタン発泡体の所望物性などにより種々変え得る。所望する特性を有する発泡体を得るためには、活性水素含有化合物の合計活性水素基(水酸基+アミノ基)数に対するイソシアネート化合物のイソシアネート基数は、0.80〜1.20であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重、硬度、及び圧縮率などが得られない傾向にある。
【0040】
本発明においては、ワンショット法によりポリウレタン発泡体ブロックを作製する。
【0041】
ポリウレタン発泡体ブロックは、シリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により作製する。
【0042】
特に、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法が好ましい。かかるシリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B8443、B8465(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。
【0043】
シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン発泡体中に0.1〜10重量%添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0044】
必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。また、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を添加してもかまわない。触媒の種類、添加量は、混合工程後、モールドに流し込む流動時間を考慮して選択する。
【0045】
ポリウレタン発泡体シートを製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン発泡体シートの製造方法は、以下の工程を有する。
【0046】
(1)イソシアネート化合物を含む第1成分、及び活性水素含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤及び融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を添加し、シリコン系界面活性剤を添加した成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に残りの成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0047】
(2)イソシアネート化合物を含む第1成分、及び活性水素含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤及び融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を添加し、前記第1成分及び第2成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0048】
融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤は、マイクロカプセル等で被覆されていないもの(非被覆タイプ)であり、固相−液相変化タイプの蓄熱剤であることが好ましい。液相−気相変化タイプの蓄熱剤は融解時に水分が気化し、ブロック内にボイドが発生しやすくなるため好ましくない。融解点は75〜100℃であることが好ましい。また、水和物タイプの蓄熱剤は、融解時に水分が気化し、ブロック内にボイドが発生しやすくなるため好ましくない。そのため、変性ワックス系の蓄熱剤を用いることが好ましい。蓄熱剤の融解熱量は、100kJ/kg以上であることが好ましく、より好ましくは120kJ/kg以上である。
【0049】
前記特性の蓄熱剤としては、例えば、融解点が75℃かつ水酸基を有する変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、NPS9210、融解熱量:150kJ/kg)、融解点が80℃かつウレタン基を有する変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、NPS6115、融解熱量:150kJ/kg)、融解点が100℃かつウレタン基を有する変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、HAD5150、融解熱量:130kJ/kg)などが挙げられる。
【0050】
固相−液相変化タイプの蓄熱剤の場合、粒径は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。
【0051】
前記蓄熱剤は、活性水素含有化合物100重量部に対して10〜40重量部添加することが必要であり、好ましくは15〜40重量部である。
【0052】
気泡分散ウレタン組成物は、メカニカルフロス法で調製してもよい。メカニカルフロス法とは、原料成分をミキシングヘッドの混合室内に入れるとともに非反応性気体を混入させ、オークスミキサー等のミキサーで混合撹拌することにより、非反応性気体を微細気泡状態にして原料混合物中に分散させる方法である。メカニカルフロス法は、非反応性気体の混入量を調節することにより、容易にポリウレタン発泡体の比重を調整することができるため好ましい方法である。また、略球状の微細気泡を有するポリウレタン発泡体を連続成形することができるため製造効率がよい。
【0053】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0054】
非反応性気体を微細気泡状にして分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置を特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)、メカニカルフロス発泡機などが例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。目的とするポリウレタン発泡体を得るためには、撹拌翼の回転数は1000〜2000rpmであることが好ましく、より好ましくは1000〜1500rpmである。また、撹拌時間は目的とする比重に応じて適宜調整する必要があるが、通常2〜5分程度である。
【0055】
なお、発泡工程において気泡分散液を調製する撹拌と、第1成分と第2成分を混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。混合工程における撹拌翼の回転数は1000〜2000rpmであることが好ましく、撹拌時間は、通常1〜3分程度である。気泡分散液を調製する発泡工程と各成分を混合する混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0056】
その後、モールド内に気泡分散ウレタン組成物を注入し、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることによりポリウレタン発泡体ブロックを作製する。
【0057】
ポリウレタン発泡体ブロックの製造方法においては、気泡分散ウレタン組成物をモールドに流し込んで流動しなくなるまで反応した発泡体を、加熱、ポストキュアすることは、発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。ポストキュアの温度は、通常40〜70℃程度である。モールドに気泡分散ウレタン組成物を流し込んで直ちに加熱オーブン中に入れてポストキュアを行ってもよい。硬化反応は、常圧で行うと気泡形状が安定するために好ましい。
【0058】
本発明の製造方法によると、ポリウレタン発泡体ブロックの厚さが30mm以上、さらには50mm以上であっても、蓄熱剤の効果によりブロック内部の気泡の熱膨張を効果的に防止することができる。そのため、微細で均一な気泡を有するポリウレタン発泡体シートが得られる。
【0059】
その後、ポリウレタン発泡体ブロックをバンドソー方式やカンナ方式のスライサーを用いて、所定厚みに切断してポリウレタン発泡体シート(研磨層)を作製する。
【0060】
ポリウレタン発泡体シートの厚みバラツキは100μm以下であることが好ましい。厚みバラツキが100μmを越えるものは、研磨層が大きなうねりを持ったものとなり、被研磨材に対する接触状態が異なる部分ができ、研磨特性に悪影響を与える。また、研磨層の厚みバラツキを解消するため、一般的には、研磨初期に研磨層表面をダイヤモンド砥粒を電着、融着させたドレッサーを用いてドレッシングするが、上記範囲を超えたものは、ドレッシング時間が長くなり、生産効率を低下させるものとなる。
【0061】
ポリウレタン発泡体シートの厚みのバラツキを抑える方法としては、所定厚みにスライスしたシート表面をバフィングする方法が挙げられる。また、バフィングする際には、粒度などが異なる研磨材で段階的に行うことが好ましい。
【0062】
ポリウレタン発泡体シートの厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.5〜2.5mmであることが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法により得られるポリウレタン発泡体の平均気泡径は、100〜300μm程度であり、好ましくは150〜250μmである。
【0064】
ポリウレタン発泡体の比重は、0.3〜0.8であることが好ましい。比重が0.3未満の場合、研磨層の耐久性が低下する傾向にある。一方、0.8より大きい場合は、気泡の砥粒保持性が悪くなり、研磨速度が低下する傾向にある。
【0065】
ポリウレタン発泡体の硬度は、アスカーD硬度計にて、10〜50度であることが好ましい。アスカーD硬度が10度未満の場合には、研磨層の耐久性が低下したり、研磨後の被研磨材の表面平滑性が悪くなる傾向にある。一方、50度より大きい場合は、被研磨材の表面にスクラッチが発生しやすくなる。
【0066】
ポリウレタン発泡体シート(研磨層)の被研磨材と接触する研磨表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、研磨表面に凹凸構造を形成することにより、スラリーの保持と更新をさらに効率よく行うことができ、また被研磨材との吸着による被研磨材の破壊を防ぐことができる。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0067】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0068】
本発明の研磨パッドは、前記研磨層とクッション層とを貼り合わせたものであってもよい。
【0069】
クッション層は、研磨層の特性を補うものである。クッション層は、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッション層の特性によってユニフォーミティを改善する。本発明の研磨パッドにおいては、クッション層は研磨層より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0070】
クッション層としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0071】
研磨層とクッション層とを貼り合わせる手段としては、例えば、研磨層とクッション層とを両面テープで挟みプレスする方法が挙げられる。
【0072】
前記両面テープは、不織布やフィルム等の基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものである。クッション層へのスラリーの浸透等を防ぐことを考慮すると、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。また、研磨層とクッション層は組成が異なることもあるため、両面テープの各接着層の組成を異なるものとし、各層の接着力を適正化することも可能である。
【0073】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。該両面テープとしては、上述と同様に基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものを用いることができる。基材としては、例えば不織布やフィルム等が挙げられる。研磨パッドの使用後のプラテンからの剥離を考慮すれば、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。
【0074】
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド(研磨層)1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0075】
これにより半導体ウエハ4の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
[測定、評価方法]
(平均気泡径の測定)
作製したポリウレタン発泡体シートを厚み1mm以下になるべく薄くミクロトームカッターで平行に切り出したものを平均気泡径測定用試料とした。試料をスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の全気泡径を測定し、平均気泡径を算出した。また、1mm以上のボイドの有無を観察した。
【0078】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体シートを4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0079】
(D硬度の測定)
JIS K6253−1997に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体シートを2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーD型硬度計)を用い、硬度を測定した。
【0080】
(ブルームの有無)
作製したポリウレタン発泡体シートの表面を目視及び指触にて観察し、蓄熱剤が表面にブルームしているか否かを確認した。
【0081】
(微小うねりの測定)
非接触表面形状測定機(ZYGO社製、New View6300)を使用し、レンズ倍率2.5倍、ズーム倍率0.5倍、バンドパスフィルターを200〜1250μmに設定して、被研磨材であるガラス板の表面5点のRa(nm)を測定し、その平均値を微小うねりとした。なお、前記ガラス板は、下記研磨方法で研磨した100枚目のものを用いた。
【0082】
(研磨速度安定性の評価)
研磨装置として9B両面研磨機(スピードファム社製)を用い、作製した研磨パッドの研磨速度安定性の評価を行った。評価結果を表1に示す。研磨条件は以下の通りである。
ガラス板:オハラ社製、TS−10SX、2.5インチ、厚さ0.8mm
スラリー:セリアスラリー(昭和電工社製、SHOROX A−10)を水に添加し混合して比重を1.06〜1.09に調製したもの
スラリー供給量:4L/min
研磨加工圧力:100g/cm
研磨定盤回転数:50rpm
研磨時間:60min/枚
研磨したガラス板枚数:500枚
まず、研磨したガラス板1枚ごとの研磨速度(Å/min)を算出する。算出方法は以下の通りである。
研磨速度=〔研磨前後のガラス板の重量変化量[g]/(ガラス板密度[g/cm]×ガラス板の研磨面積[cm]×研磨時間[min])〕×10
研磨速度安定性(%)は、ガラス板1枚目から500枚目までにおける最大研磨速度、最小研磨速度、及び全平均研磨速度(1枚目から500枚目までの各研磨速度の平均値)を求めて、その値を下記式に代入することにより算出する。研磨速度安定性(%)は数値が低いほど、多数のガラス板を研磨しても研磨速度が変化しにくいことを示す。本発明においては、500枚処理した後の研磨速度安定性が10%以内であることが好ましい。
研磨速度安定性(%)={(最大研磨速度−最小研磨速度)/全平均研磨速度}×100
【0083】
(スクラッチの評価)
MicroMax社製のVMX−2200を用いて、上記方法で研磨した100枚目のガラス板の任意4×5mm範囲にスクラッチ又は研磨条痕があるか否かを観察し、全くない場合を○、少しでもある場合を×と評価した。
【0084】
実施例1
容器に、ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製、プラクセル210、水酸基価:112mgKOH/g、官能基数2)65重量部、ポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業社製、プラクセル305、水酸基価:305mgKOH/g、官能基数3)20重量部、ジエチレングリコール(水酸基価:1058mgKOH/g、官能基数2)13重量部、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物(旭硝子製、EX−890MP、水酸基価:865mgKOH/g、官能基数:3)2重量部、シリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8443)6重量部、触媒(花王製、Kao No.25)0.03重量部、及び変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、NPS9210、水酸基含有タイプ、融解点:75℃、融解熱量:150kJ/kg、粒径:5μm)30重量部を入れ、混合して第2成分を調製した。そして、撹拌翼を用いて、回転数1500rpmで反応系内に気泡を取り込むように5分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(日本ポリウレタン工業製、ミリオネートMTL、NCOwt%:29wt%)82重量部を容器内に加え(NCO/OH=1.1)、3分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0085】
調製した気泡分散ウレタン組成物をパン型のオープンモールド(縦1000mm、横1000mm、深さ50mm)へ流し込んだ。組成物の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、70℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロック(厚さ30mm)を得た。約80℃に加熱した前記ポリウレタン発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1.20mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径61cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅2mm、溝ピッチ50mm、溝深さ0.5mmのXY格子状の溝加工を行い研磨層を得た。この研磨層の溝加工面と反対側の面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼り合わせて研磨パッドを作製した。
【0086】
実施例2〜8及び比較例1〜6
表1及び2記載の配合比を採用した以外は実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。表1及び2中の化合物は以下のとおりである。
・PCL210:ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製、水酸基価:112mgKOH/g、官能基数2)
・PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学社製、水酸基価:112mgKOH/g、官能基数:2)
・DEG:ジエチレングリコール(水酸基価:1058mgKOH/g、官能基数2)
・1,4−BG:1,4−ブタンジオール(水酸基価:1245mgKOH/g、官能基数2)
・PCL305:ポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業社製、水酸基価:305mgKOH/g、官能基数3)
・EX−890MP:トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物(旭硝子製、水酸基価:865mgKOH/g、官能基数:3)
・B8443:シリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製)
・Kao No.25:触媒(花王製)
・NPS9210:変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、水酸基含有タイプ、融解点:75℃、融解熱量:150kJ/kg、粒径:5μm)
・NPS6115:変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、ウレタン基含有タイプ、融解点:80℃、融解熱量:150kJ/kg、粒径:5μm)
・HAD5150:変性ワックス系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、ウレタン基含有タイプ、融解点:100℃、融解熱量:130kJ/kg、粒径:5μm)
・PW155:パラフィン系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、官能基なし、融解点:70℃、融解熱量:200kJ/kg、粒径:5μm)
・FT0070:パラフィン系潜熱蓄熱剤(日本精蝋社製、官能基なし、融解点:70℃、融解熱量:220kJ/kg、粒径:5μm)
・ミリオネートMTL:カルボジイミド変性MDI(日本ポリウレタン工業製、NCOwt%:29wt%)
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の研磨パッドは、レンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工に用いられる。本発明の研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用される。
【符号の説明】
【0090】
1:研磨パッド
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:被研磨材(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物、活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、モールド内に気泡分散ウレタン組成物を注入する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを作製する工程、及び熱硬化性ポリウレタン発泡体ブロックを切断して熱硬化性ポリウレタン発泡体シートを作製する工程を含む研磨パッドの製造方法において、
前記活性水素含有化合物は、平均水酸基価が260〜400mgKOH/gであり、
前記気泡分散ウレタン組成物は、融解点が70〜110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を活性水素含有化合物100重量部に対して10〜40重量部含有することを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記蓄熱剤は、融解熱量が100kJ/kg以上の変性ワックス系潜熱蓄熱剤である請求項1記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法により得られる研磨パッド。
【請求項4】
請求項3記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−235416(P2011−235416A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110502(P2010−110502)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】