説明

研磨パッド及びその製造方法

【課題】 研磨速度が大きく、しかも研磨速度が安定するまでの時間が短く、さらに厚み精度に優れる研磨パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】 基材層上に研磨層が設けられている研磨パッドにおいて、
前記研磨層は、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130であることを特徴とする研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、及びアルミ基板等の表面を研磨する際に用いられる研磨パッド(粗研磨用又は仕上げ研磨用)に関する。特に、本発明の研磨パッドは、仕上げ用の研磨パッドとして好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリコンウエハ等の半導体ウエハ、レンズ、及びガラス基板などの鏡面研磨には、平坦度及び面内均一度の調整を主目的とする粗研磨と、表面粗さの改善及びスクラッチの除去を主目的とする仕上げ研磨とがある。
【0003】
前記仕上げ研磨は、通常、回転可能な定盤の上に軟質な発泡ウレタンよりなるスエード調の人工皮革を貼り付け、その上にアルカリベース水溶液にコロイダルシリカを含有した研磨剤を供給しながら、ウエハを擦りつけることにより行われる(特許文献1)。
【0004】
仕上げ研磨に用いられる研磨パッドとしては、上記の他に以下のようなものが提案されている。
【0005】
ポリウレタン樹脂に、発泡剤を利用して厚さ方向に形成させた細長い微細な穴(ナップ)を多数形成したナップ層とナップ層を補強する基布からなるスエード調の仕上げ研磨パッドが提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、スエード調であり、表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で5μm以下である仕上げ研磨用研磨布が提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、基材部とこの基材部上に形成される表面層(ナップ層)とを備え、前記表面層に、ポリハロゲン化ビニルまたはハロゲン化ビニル共重合体を含有させた仕上げ研磨用研磨布が提案されている(特許文献4)。
【0008】
従来の研磨パッドは、いわゆる湿式硬化法により製造されていた。湿式硬化法とは、ウレタン樹脂をジメチルホルムアミドなどの水溶性有機溶媒に溶解させたウレタン樹脂溶液を基材上に塗布し、これを水中で処理し湿式凝固して多孔質銀面層を形成し、水洗乾燥後に該銀面層表面を研削して表面層(ナップ層)を形成する方法である。例えば、特許文献5では、平均径が1〜30μmの略球状の孔を有する仕上げ用研磨布を湿式硬化法により製造している。
【0009】
しかし、従来の研磨パッドは、気泡が細長い構造であるため又は表面層の材料自体の機械的強度が低いため、耐久性に乏しく、平坦化特性が次第に悪化したり、研磨速度の安定性に劣るという問題があった。さらに、従来の研磨パッドは、気泡内に研磨屑(特に、パッド屑)が詰まりやすいため研磨特性の安定性が悪く、寿命が短いという問題があった。
【0010】
一方、粗研磨に用いられる研磨パッドとしては、以下のようなものが提案されている。
【0011】
特許文献6には、半導体デバイス又は前駆体の表面を研磨するための、及び半導体ウエハ上の金属ダマシン構造を平坦化するための研磨パッドであって、研磨層が、約1〜3.6の30℃〜90℃でのE’の比を有し、約40〜70ショアDの硬度を有し、40℃で約150〜2000MPaの引張弾性率を有する研磨パッドが記載されている。
【0012】
特許文献7には、被研磨物の被研磨面のスクラッチ発生および低誘電率の絶縁膜の剥がれを抑制できる化学機械研磨パッドであって、研磨基体の30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)が120MPa以下であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)の比(E’(30℃)/E’(60℃))が2.5以上である化学機械研磨パッドが記載されている。
【0013】
特許文献8には、硬質発泡ポリウレタンでなる研磨層のスライス痕等の外観上の欠陥、厚みばらつきを低減し、研磨面の平坦性を向上させるために、常温でアスカーD硬度50以上の発泡ポリウレタンブロックの表面硬度をアスカーA硬度80〜95に調節し、硬度が調節された発泡ポリウレタンブロックを所定の厚さにスライスして研磨シートを作製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−37089号公報
【特許文献2】特開2003−100681号公報
【特許文献3】特開2004−291155号公報
【特許文献4】特開2004−335713号公報
【特許文献5】特開2006−75914号公報
【特許文献6】特表2004−507076号公報
【特許文献7】特開2006−114885号公報
【特許文献8】特開2005−169578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、研磨速度が大きく、しかも厚み精度に優れるためブレイクインタイム(ダミー研磨時間)が短い研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、基材層上に研磨層が設けられている研磨パッドにおいて、
前記研磨層は、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130であることを特徴とする研磨パッド、に関する。
【0018】
従来の仕上げ用研磨パッドは、気泡が細長い構造をしているため又は研磨層の材料自体の機械的強度が低いため、研磨層に繰り返し圧力が加わると「へたり」が生じて耐久性に乏しくなると考えられる。一方、上記のように、略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体で研磨層を形成することにより、研磨層の耐久性を向上させることができる。そのため、本発明の研磨パッドを用いた場合には、長期間平坦化特性を高く維持することができ、研磨速度の安定性も向上する。ここで、略球状とは、球状及び楕円球状をいう。楕円球状の気泡とは、長径Lと短径Sの比(L/S)が5以下のものであり、好ましくは3以下、より好ましくは1.5以下である。
【0019】
前記連続気泡の平均気泡径が35μm未満の場合には、研磨屑(特に、パッド屑)が堆積し、気泡がスラリー保持という役割を十分に果たせなくなる傾向にある。一方、平均気泡径が200μmを超える場合には、研磨層に繰り返し圧力が加わった際に「へたり」が生じやすくなり、耐久性に乏しくなるため好ましくない。
【0020】
また、研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130であることが必要である。
【0021】
通常、粗研磨又は仕上げ研磨時には、研磨層の表面温度は30〜60℃程度の範囲内で変化する。本発明においては、前記温度における研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を特定範囲に調整することにより、研磨パッドの研磨速度を大きくすることができる。貯蔵弾性率E’(40℃)が130MPa未満の場合は研磨速度が小さくなり、一方、400MPaを超える場合は研磨対象物にスクラッチが生じやすくなる。また、E’(30℃)/E’(60℃)が2.5以上の場合には研磨速度が小さくなる。
【0022】
また、通常、研磨パッド(研磨層)の厚み調整(スライス)工程においては、スライスし易くするために比較的高温に加温して行われるが、その場合、研磨層の厚み精度は低くなる傾向にある。本発明においては、研磨層の貯蔵弾性率の比を特定範囲に調整することにより、厚み調整工程において研磨層を高温に加温することなく研磨層の厚み精度を高くでき、それによりブレイクインタイム(ダミー研磨時間)を短くすることができる。E’(30℃)/E’(90℃)が15未満の場合には、硬度が高くなり、スライスし難くなるため厚み調整工程において研磨層を高温に加温しなければならず、加温時の温度と室温との温度差が大きくなるため研磨層の厚み精度を高くすることができない。一方、E’(30℃)/E’(90℃)が130を超える場合には、わずかな温度変化でスライス厚みが変わってしまうため、研磨層の厚み精度を高くすることができない。
【0023】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分及び活性水素含有化合物を含有するウレタン組成物の反応硬化体であり、前記活性水素含有化合物は、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含有することが好ましい。さらに、前記活性水素含有化合物は、水酸基価30〜150mgKOH/gの2官能ポリオールを10〜50重量%含有することが好ましい。これら材料を用いることにより、研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を上記特定範囲に調整することができる。
【0024】
また、研磨層は、基材層に自己接着していることが好ましい。それにより、研磨中に研磨層と基材層とが剥離することを効果的に防止することができる。
【0025】
また、本発明は、イソシアネート成分、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含む活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、基材層上に気泡分散ウレタン組成物を塗布する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体を形成する工程、及び熱硬化性ポリウレタン発泡体の厚さを均一に調整して研磨層を形成する工程を含み、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130である、研磨パッドの製造方法、に関する。
【0026】
また、本発明は、イソシアネート成分、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含む活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、離型シート上に気泡分散ウレタン組成物を塗布する工程、気泡分散ウレタン組成物上に基材層を積層する工程、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体を形成する工程、熱硬化性ポリウレタン発泡体下の離型シートを剥離する工程、及び露出した熱硬化性ポリウレタン発泡体表面のスキン層を除去して研磨層を形成する工程を含み、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130である、研磨パッドの製造方法、に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の研磨パッドは、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体(以下、ポリウレタン発泡体という)からなる研磨層と、基材層を含む。
【0029】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができ、また機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により略球状の微細気泡を容易に形成することができるため研磨層の形成材料として好ましい材料である。
【0030】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分、及び活性水素含有化合物(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン、鎖延長剤等)からなるものである。
【0031】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI(例えば、商品名ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業製)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
イソシアネート成分としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社製)や商品名デュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
【0033】
上記のイソシアネート成分のうち、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート又はカルボジイミド変性MDIを用いることが好ましい。
【0034】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールであるポリマーポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記高分子量ポリオールは、水酸基価が30〜400mgKOH/gであることが好ましい。また、前記高分子量ポリオールは、全活性水素含有化合物中に80〜95重量%含有させることが好ましく、より好ましくは85〜95重量%である。前記高分子量ポリオールを特定量用いることにより気泡膜が破れやすくなり、連続気泡構造を形成しやすくなる。
【0036】
また、上記高分子量ポリオールのうち、水酸基価が150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを用いることが好ましい。3官能及び/又は4官能ポリオールの水酸基価は150〜350mgKOH/gであることがより好ましい。3官能ポリオールはポリカプロラクトントリオールであることが好ましく、4官能ポリオールはポリオキシエチレンジグリセリルエーテルであることが好ましい。該材料を用いることにより、研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を目的範囲に調整しやすくなる。また、水酸基価が150mgKOH/g未満の場合には、ポリウレタンのハードセグメント量が少なくなって耐久性が低下する傾向にあり、400mgKOH/gを超える場合には、ポリウレタン発泡体の架橋度が高くなりすぎて脆くなる傾向にある。
【0037】
前記3官能及び/又は4官能ポリオールは、全活性水素含有化合物中に35〜90重量%(併用する場合は合計重量%)含有させることが好ましく、より好ましくは40〜75重量%であり、特に好ましくは45〜65重量%である。該材料を特定量用いることにより、研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を目的範囲に調整しやすくなる。
【0038】
また、前記3官能及び/又は4官能ポリオールと共に、水酸基価が30〜150mgKOH/gの2官能ポリオールを用いることが好ましい。2官能ポリオールの水酸基価は30〜120mgKOH/gであることがより好ましい。また、2官能ポリオールは、ポリカプロラクトンジオール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールであることが好ましい。該材料を併用することにより、研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を目的範囲により調整しやすくなる。
【0039】
前記2官能ポリオールは、全活性水素含有化合物中に10〜50重量%含有させることが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。該材料を特定量用いることにより、研磨層の貯蔵弾性率及び貯蔵弾性率比を目的範囲により調整しやすくなる。
【0040】
高分子量ポリオールと共に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
これらのうち、水酸基価が400〜1830mgKOH/gの低分子量ポリオール及び/又はアミン価が400〜1870mgKOH/gの低分子量ポリアミンを用いることが好ましい。水酸基価は900〜1500mgKOH/gであることがより好ましく、アミン価は400〜950mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が400mgKOH/g未満又はアミン価が400mgKOH/g未満の場合には、連続気泡化の向上効果が十分に得られない傾向にある。一方、水酸基価が1830mgKOH/gを超える場合又はアミン価が1870mgKOH/gを超える場合には、ウエハ表面にスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。特に、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、又はトリメチロールプロパンを用いることが好ましい。
【0042】
低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン及びアルコールアミンは、全活性水素含有化合物中に合計で5〜20重量%含有させることが好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。上記低分子量ポリオール等を特定量用いることにより気泡膜が破れやすくなり、連続気泡を形成しやすくなるだけでなく、ポリウレタン発泡体の機械的特性が良好になる。
【0043】
ポリウレタン樹脂をプレポリマー法により製造する場合において、イソシアネート末端プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオールや低分子量ポリアミン等を挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0044】
イソシアネート成分、活性水素含有化合物の比は、各々の分子量やポリウレタン発泡体の所望物性などにより種々変え得る。所望する特性を有する発泡体を得るためには、活性水素含有化合物の合計活性水素基(水酸基+アミノ基)数に対するイソシアネート成分のイソシアネート基数は、0.80〜1.20であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重、硬度、及び圧縮率などが得られない傾向にある。
【0045】
ポリウレタン樹脂は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0046】
ポリウレタン樹脂の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能である。
【0047】
前記ポリウレタン樹脂の製造は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分、及び活性水素含有化合物を含む第2成分を混合して硬化させるものである。プレポリマー法では、イソシアネート末端プレポリマーがイソシアネート基含有化合物となり、鎖延長剤が活性水素基含有化合物となる。ワンショット法では、イソシアネート成分がイソシアネート基含有化合物となり、ポリオール成分及び鎖延長剤が活性水素含有化合物となる。
【0048】
本発明の研磨層の形成材料であるポリウレタン発泡体は、シリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により作製できる。
【0049】
特に、ポリアルキルシロキサン、又はアルキルシロキサンとポリエーテルアルキルシロキサンとの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法が好ましい。かかるシリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B8443、B8465(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。
【0050】
シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン発泡体中に0.1〜10重量%添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0051】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0052】
研磨層を構成するポリウレタン発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
【0053】
(1)イソシアネート成分及び高分子量ポリオールなどを反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーにシリコン系界面活性剤を添加した第1成分を、非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。第2成分には、適宜触媒を添加してもよい。
【0054】
(2)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、シリコン系界面活性剤を添加した成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に残りの成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0055】
(3)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、前記第1成分及び第2成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0056】
また、気泡分散ウレタン組成物は、メカニカルフロス法で調製してもよい。メカニカルフロス法とは、原料成分をミキシングヘッドの混合室内に入れるとともに非反応性気体を混入させ、オークスミキサー等のミキサーで混合撹拌することにより、非反応性気体を微細気泡状態にして原料混合物中に分散させる方法である。メカニカルフロス法は、非反応性気体の混入量を調節することにより、容易にポリウレタン発泡体の比重を調整することができるため好ましい方法である。また、略球状の微細気泡を有するポリウレタン発泡体を連続成形することができるため製造効率がよい。
【0057】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0058】
非反応性気体を微細気泡状にして分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置を特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)、メカニカルフロス発泡機などが例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。目的とするポリウレタン発泡体を得るためには、撹拌翼の回転数は500〜2000rpmであることが好ましく、より好ましくは800〜1500rpmである。また、撹拌時間は目的とする比重に応じて適宜調整する。
【0059】
なお、発泡工程において気泡分散液を調製する撹拌と、第1成分と第2成分を混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。気泡分散液を調製する発泡工程と各成分を混合する混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0060】
その後、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物を硬化させて、基材層上に直接ポリウレタン発泡体(研磨層)を形成する。
【0061】
基材層は特に制限されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体を用いることが好ましい。また、基材層として両面テープ、片面粘着テープ(片面の粘着層はプラテンに貼り合わせるためのもの)を用いてもよい。
【0062】
基材層は、研磨パッドに靭性を付与するためにポリウレタン発泡体と同等の硬さ、もしくはより硬いことが好ましい。また、基材層(両面テープ及び片面粘着テープの場合は基材)の厚さは特に制限されないが、強度、可とう性等の観点から20〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは50〜800μmである。
【0063】
気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの塗布方法を採用することができるが、基材層上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0064】
気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布して流動しなくなるまで反応したポリウレタン発泡体を加熱し、ポストキュアすることは、ポリウレタン発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。ポストキュアは、30〜80℃で10分〜6時間行うことが好ましく、また常圧で行うと気泡形状が安定するため好ましい。
【0065】
ポリウレタン発泡体の製造において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類や添加量は、各成分の混合工程後、基材層上に塗布するための流動時間を考慮して選択する。
【0066】
ポリウレタン発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、機械撹拌するバッチ方式であってもよく、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して機械撹拌し、気泡分散ウレタン組成物を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0067】
また、基材層上にポリウレタン発泡体を形成した後又はポリウレタン発泡体を形成するのと同時に、ポリウレタン発泡体の厚さを均一に調整しておくことが好ましい。ポリウレタン発泡体の厚さを均一に調整する方法は特に制限されないが、例えば、研磨材でバフがけする方法、プレス板でプレスする方法などが挙げられる。
【0068】
また、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物上に離型シートを積層する。その後、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン発泡体を形成してもよい。
【0069】
一方、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を離型シート上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物上に基材層を積層する。その後、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン発泡体を形成してもよい。
【0070】
離型シートの形成材料は特に制限されず、一般的な樹脂や紙などを挙げることができる。離型シートは、熱による寸法変化が小さいものが好ましい。なお、離型シートの表面は離型処理が施されていてもよい。
【0071】
基材層、気泡分散ウレタン組成物(気泡分散ウレタン層)、及び離型シートからなるサンドイッチシートの厚さを均一にする押圧手段は特に制限されないが、例えば、コーターロール、ニップロールなどにより一定厚さに圧縮する方法が挙げられる。圧縮後に発泡体中の気泡が1.2〜2倍程度大きくなることを考慮して、圧縮に際しては、(コーター又はニップのクリアランス)−(基材層及び離型シートの厚み)=(硬化後のポリウレタン発泡体の厚みの50〜85%)とすることが好ましい。
【0072】
そして、前記サンドイッチシートの厚さを均一にした後に、流動しなくなるまで反応したポリウレタン発泡体を加熱し、ポストキュアして研磨層を形成する。ポストキュアの条件は前記と同様である。
【0073】
その後、ポリウレタン発泡体の上面側又は下面側の離型シートを剥離して研磨パッドを得る。この場合、ポリウレタン発泡体上にはスキン層が形成されているため、バフがけ、スライス等することによりスキン層を除去する。また、研磨層の厚みを調整するために所定厚さにスライスしてもよい。また、上記のように機械発泡法によりポリウレタン発泡体を形成した場合、気泡のバラツキは、ポリウレタン発泡体の上面側よりも下面側の方が小さい。したがって、下面側の離型シートを剥離してポリウレタン発泡体の下面側を研磨表面にした場合には、気泡のバラツキが小さい研磨表面となるため研磨速度の安定性がより向上する。
【0074】
また、基材層上に直接ポリウレタン発泡体(研磨層)を形成せずに、研磨層を形成した後に両面テープ等を用いて基材層に貼り合わせてもよい。
【0075】
本発明の研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130であることを特徴としている。
【0076】
本発明の研磨層は上記物性を有するため、厚み調整時(スライス時)における研磨層の厚み精度を高くすることできる。
【0077】
本発明の研磨パッドの形状は特に制限されず、長さ数m程度の長尺状であってもよく、直径数十cmのラウンド状でもよい。
【0078】
前記方法で作製された研磨層は連続気泡構造を有しており、連続気泡の平均気泡径は 35〜200μmであることが必要であり、好ましくは40〜100μmである。
【0079】
研磨層の比重は、0.2〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6である。比重が0.2未満の場合には、研磨層の耐久性が低下する傾向にある。また、0.7より大きい場合は、ある一定の弾性率にするために材料を低架橋密度にする必要がある。その場合、永久歪が増大し、耐久性が悪くなる傾向にある。
【0080】
研磨層の硬度は、アスカーC硬度計にて、10〜95度であることが好ましく、より好ましくは40〜90度である。アスカーC硬度が10度未満の場合には、研磨層の耐久性が低下したり、研磨後の研磨対象物の表面平滑性が悪くなる傾向にある。一方、95度を超える場合は、研磨対象物の表面にスクラッチが発生しやすくなる。
【0081】
研磨層の表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有していてもよい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、研磨表面に凹凸構造を形成することにより、スラリーの保持と更新をさらに効率よく行うことができ、また研磨対象物との吸着による研磨対象物の破壊を防ぐことができる。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0082】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有した金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0083】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.2〜2mm程度であり、0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0084】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。
【0085】
半導体ウエハ、レンズ、及びガラス板などの研磨対象物4の研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド1を支持する研磨定盤2と、研磨対象物4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と研磨対象物4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、研磨対象物4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ研磨対象物4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。これにより研磨対象物4の表面の表面粗さが改善され、スクラッチが除去される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
[測定、評価方法]
(平均気泡径の測定)
作製したポリウレタン発泡体を厚み1mm以下になるべく薄くカミソリ刃で平行に切り出したものをサンプルとした。サンプルをスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の全連続気泡の気泡径(直径)を測定し、平均気泡径を算出した。ただし、楕円状の気泡の場合は、その面積を円の面積に換算し、円相当径を気泡径とした。
【0088】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0089】
(硬度の測定)
JIS K−7312に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体を5cm×5cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、サンプルを重ね合わせ、厚み10mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーC型硬度計、加圧面高さ:3mm)を用い、加圧面を接触させてから60秒後の硬度を測定した。
【0090】
(貯蔵弾性率の測定)
研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)、60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)、及び90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)は、動的粘弾性測定装置(メトラー・トレド社製、DMA861e)を用いて下記条件で測定した。
周波数:1.6Hz
昇温速度:2.0℃/min
測定温度範囲:0〜120℃
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み1.0mm
【0091】
(厚みバラツキの測定)
作製したポリウレタン発泡体を50cm×50cmの大きさに切り出したものをサンプルとし、該サンプルに縦横5cmごとに直線を引き、その交点の厚みをマイクロメータ(ミツトヨ社製、CLM1−15QM)を用いて測定し、その最大値と最小値の差を厚みバラツキとした。
【0092】
(平均研磨速度の測定)
研磨装置として9B−5P−V(スピードファム社製)を用い、作製した研磨パッドの研磨速度を測定した。研磨条件は以下の通りである。
ガラス板:6インチφ、厚さ1.1mm(光学ガラス、BK7)
スラリー:セリアスラリー(昭和電工GPL C1010)
スラリー量:4000ml/min
研磨加工圧力:100g/cm
研磨下定盤回転数:30rpm
キャリア:正転
ドレッサー:#400のダイヤペレット付ドレッサー
研磨時間:10min/枚
研磨したガラス板枚数:100枚
研磨したガラス板1枚ごとの研磨速度(Å/min)を下記式にて算出し、ガラス板100枚の平均研磨速度(Å/min)を求めた。
研磨速度=〔研磨前後のガラス板の重量変化量[g]/(ガラス板密度[g/cm]×ガラス板の研磨面積[cm]×研磨時間[min])〕×10
【0093】
(ブレイクインタイムの測定)
ドレス5分ごとに前記方法で研磨速度を測定し、240分ドレスをかけた場合の研磨速度と同じになった時間をブレイクインタイムとした。
【0094】
実施例1
容器にポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学製、PCL305、官能基数:3、水酸基価:305mgKOH/g)55重量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学製、PTMG1000、官能基数:2、水酸基価:112mgKOH/g)30重量部、ジエチレングリコール(DEG、官能基数:2、水酸基価:1058mgKOH/g)13重量部、トリメチロールプロパン(TMP、官能基数:3、水酸基価:1255mgKOH/g)2重量部、シリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8443)6重量部、及び触媒(花王製、Kao No.25)0.03重量部を入れて混合した。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、ミリオネートMTL(日本ポリウレタン製)103重量部を添加し、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0095】
調製した気泡分散ウレタン組成物を、離型処理した離型シート(東洋紡績製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.1mm)上に塗布して気泡分散ウレタン層を形成した。そして、該気泡分散ウレタン層上に基材層(ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.2mm)を被せた。ニップロールにて気泡分散ウレタン層を1.2mmの厚さにし、その後70℃で3時間キュアしてポリウレタン発泡体(連続気泡構造)を形成した。その後、ポリウレタン発泡体から離型シートを剥離した。次に、バンドソータイプのスライサー(フェッケン社製)を用いてポリウレタン発泡体の表面をスライスして厚さを1.0mmにし、厚み精度を調整した。その後、基材層表面にラミ機を使用して両面テープ(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼りあわせて研磨パッドを作製した。
【0096】
実施例2〜12、及び比較例1〜11
表1及び2記載の配合で実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。なお、表1及び2中の化合物は以下のとおりである。
・PTMG3000(三菱化学製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、官能基数:2、水酸基価:37mgKOH/g)
・PCL205(ダイセル化学製、ポリカプロラクトンジオール、官能基数:2、水酸基価:212mgKOH/g)
・MOCA(4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、官能基数:2、アミン価:419mgKOH/g)
・1,4−BG(1,4−ブタンジオール、官能基数:2、水酸基価:1245mgKOH/g)
・1,2−PG(1,2−プロピレングリコール、官能基数:2、水酸基価:1477mgKOH/g)
・PCL312(ダイセル化学製、ポリカプロラクトントリオール、官能基数:3、水酸基価:134mgKOH/g)
・PCL308(ダイセル化学製、ポリカプロラクトントリオール、官能基数:3、水酸基価:198mgKOH/g)
・SC−E1000(阪本薬品工業製、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、官能基数:4、水酸基価:224mgKOH/g)
・PCL303(ダイセル化学製、ポリカプロラクトントリオール、官能基数:3、水酸基価:560mgKOH/g)
・EX−890MP(旭硝子製、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物、官能基数:3、水酸基価:865mgKOH/g)
・EX551DE(日本フィライト製、フィラー)
・L−325(ユニロイヤル社製、アジプレンL−325、ポリエーテル系プレポリマー)
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【符号の説明】
【0099】
1:研磨パッド
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:研磨対象物(半導体ウエハ、レンズ、ガラス板)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に研磨層が設けられている研磨パッドにおいて、
前記研磨層は、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分及び活性水素含有化合物を含有するウレタン組成物の反応硬化体であり、前記活性水素含有化合物は、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含有する請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記活性水素含有化合物は、水酸基価30〜150mgKOH/gの2官能ポリオールを10〜50重量%含有する請求項2記載の研磨パッド。
【請求項4】
研磨層は、基材層に自己接着している請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
イソシアネート成分、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含む活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、基材層上に気泡分散ウレタン組成物を塗布する工程、気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体を形成する工程、及び熱硬化性ポリウレタン発泡体の厚さを均一に調整して研磨層を形成する工程を含み、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130である、研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
イソシアネート成分、水酸基価150〜400mgKOH/gの3官能及び/又は4官能ポリオールを35〜90重量%含む活性水素含有化合物、及びシリコン系界面活性剤を含有する気泡分散ウレタン組成物を機械発泡法により調製する工程、離型シート上に気泡分散ウレタン組成物を塗布する工程、気泡分散ウレタン組成物上に基材層を積層する工程、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより、平均気泡径35〜200μmの略球状の連続気泡を有する熱硬化性ポリウレタン発泡体を形成する工程、熱硬化性ポリウレタン発泡体下の離型シートを剥離する工程、及び露出した熱硬化性ポリウレタン発泡体表面のスキン層を除去して研磨層を形成する工程を含み、
前記研磨層は、40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)が130〜400MPaであり、30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と60℃における貯蔵弾性率E’(60℃)との比〔E’(30℃)/E’(60℃)〕が1以上2.5未満であり、かつ30℃における貯蔵弾性率E’(30℃)と90℃における貯蔵弾性率E’(90℃)との比〔E’(30℃)/E’(90℃)〕が15〜130である、研磨パッドの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−167556(P2010−167556A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290812(P2009−290812)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】