説明

研磨パッド及びガラス表面の汚れ除去方法

【解決手段】 天然もしくは合成繊維の単独又は天然もしくは合成繊維の複合で作られた弾性を有する基材の表面に酢酸ビニル樹脂エマルション及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散させた研磨塗料を塗布、乾燥させてなる研磨パッド。
【効果】 本発明の研磨パッドによれば、ガラス等素材に強固に付着した汚れを素材を傷つけることなく、かつ環境面に不利を与えず、容易に、確実に、長時間安定して除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、ビル、船舶、車両などの窓ガラス、鏡、セラミックス、ほうろうなどの素材表面に強固に付着した汚れ成分、特にはソーダ石灰シリカガラス素材表面に生成したガラス状物質などを、素材を痛めることなく除去できる研磨用具(研磨パッド)及びこれを用いたガラス表面の汚れ除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスやほうろうなどのセラミック素材は近年様々な分野で利用され、このセラミック素材に付着した強固な汚れを除去するため、湿式研磨法が用いられている。この湿式研磨法には、研磨砥粒を含有する研磨剤を用いて樹脂パッドで研磨する方法、研磨砥粒を含有しない研磨剤(水など)を用いて研磨砥粒が分散保持された樹脂パッドで研磨する方法、あるいはその両者を併用する方法などが提案されている。
【0003】
しかし、研磨砥粒を含有する研磨剤を用いる場合、研磨が終わった後の廃液には多量の研磨砥粒や分散安定剤が含有されているため、廃液処置が必要になるなど環境面上不利である。また、この場合、遊離研磨砥粒による研磨作用を利用するものであるため、研磨力が劣り、強固に付着した汚れを除去できないことがあった。
【0004】
一方、研磨砥粒を含有しない研磨剤(例えば、水)を用いる方法に使用することができる研磨剤として、従来、基材上に接着層を介して研磨層が積層された研磨剤において、上記接着層をエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする熱硬化性接着剤組成物又は光硬化性接着性組成物の硬化層により形成することが知られている(特許文献1:特開平9−235384号公報、特許文献2:特開平9−235385号公報)。これは、不溶性化したエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を用いて研磨砥粒を固定した研磨層を用いる固着研磨法であるが、研磨力は強いものの目詰まりを起こして研磨力が持続しないことがあった。
【0005】
また、ポリビニルアルコール樹脂層に研磨砥粒を固定して研磨層を形成することも知られている(特許文献3:特開平6−304874号公報)。しかし、主要な研磨メカニズムは、ポリビニルアルコールが水に溶けることで固定されていた研磨砥粒が脱落して遊離研磨砥粒が発生し、この遊離研磨砥粒で研磨するものであり、研磨力が劣り、耐久性が悪いものであった。
【0006】
ところで、例えば、洗面、浴室などの鏡や窓ガラスに用いられる家庭用ガラス、自動車、電車、船舶の窓ガラスに用いられる車両用ガラスには、主にソーダ石灰シリカガラス(Na2O−CaO−SiO2)が使われている。しかし、ソーダ石灰シリカガラスは永年に亘って使用していると表面にガラス状物質(以下、鱗状物質という)が生成し、透視性や鮮映性(まとめて視界性ということがある)が著しく阻害されることがあった。この鱗状物質は特に強固に付着していることが多く、上述した湿式研磨法では容易に除去できなかった。そこで、ダイヤモンドパウダーやその他高硬度の研磨砥粒を用いて固着研磨法で研磨する方法も提案されているが、例えば、ダイヤモンドの研磨シートは高価(75×110mmサイズで5,000〜10,000円/枚)であり、また素材表面上に研磨傷を残す重大な欠点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開平9−235384号公報
【特許文献2】特開平9−235385号公報
【特許文献3】特開平6−304874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、廃液処理等の環境面に不利を与えることなく、ガラスやほうろう等のセラミック素材表面に強固に付着した汚れ(ガラス状生成物、無機・有機付着物)、特にはソーダ石灰シリカガラス素材表面の鱗状物質を、素材を損傷することなく長時間安定して確実に除去することができる研磨パッド、及びこれを用いたガラス表面の汚れ除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した従来技術の問題(経済性と性能)を解決するため、素材表面上に付着する汚れの中で特に硬度が高く研磨除去が困難であるガラス素材表面に生成される鱗状物質を研磨除去可能であれば、他の強固な汚れの研磨除去も可能になると考え、鱗状物質をX線マイクロアナライザーで検討した。分析の結果、Si及びCa、Naが検出され、ソーダ石灰シリカガラス(Na2O−CaO−SiO2)と同じ組成であることがわかった。この鱗状物質が生成するメカニズムは解明されてはいないが、ガラス素材表面上に水滴が長時間に亘って付着、乾燥、固着、再付着を繰り返していると、ガラス素材のガラス成分の溶解や溶出、腐蝕、再結晶などが起きているものと考えられる。
【0010】
この鱗状物質を除去可能な研磨工具を開発することを鋭意検討した結果、天然あるいは合成繊維の基材表面に、酢酸ビニル樹脂エマルションあるいはエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散させてなる研磨塗料を塗布乾燥して研磨層を形成した研磨工具(研磨パッド)を用いることにより、鱗状物質のような高硬度で強固に付着した汚れであっても、環境面に不利を与えることなく、容易に、長時間安定して、しかも素材を損傷することなく確実に除去し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記研磨パッド及びガラス表面の汚れ除去方法を提供する。
請求項1:
天然もしくは合成繊維の単独又は天然もしくは合成繊維の複合で作られた弾性を有する基材の表面に酢酸ビニル樹脂エマルション及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散させた研磨塗料を塗布、乾燥させてなる研磨パッド。
請求項2:
上記研磨塗料が、更に有機もしくは無機の増粘剤及び/又は防腐剤を含有するものである請求項1記載の研磨パッド。
請求項3:
上記研磨砥粒が、平均粒径0.1〜200μmで、珪石、正長石、蛍石、パーミス、ガラスから選ばれる1種又は2種以上の砥粒である請求項1又は2記載の研磨パッド。
請求項4:
ガラス素材表面の汚れ除去用である請求項1,2又は3記載の研磨パッド。
請求項5:
請求項4記載の研磨パッドを水と併用して電動工具でガラス素材表面の汚れ部分を研磨し、このガラス素材表面の汚れを除去してガラス素材表面の視界性を向上させることを特徴とするガラス表面の汚れ除去方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨パッドによれば、ガラス等素材に強固に付着した汚れを素材を傷つけることなく、かつ環境面に不利を与えず、容易に、確実に、長時間安定して除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る研磨パッドは、ガラス、セラミック、ほうろうなどの表面に生成した汚れを除去するのに好適に用いられ、天然もしくは合成繊維の単独又は天然もしくは合成繊維の複合で作られた弾性を有する基材の表面に酢酸ビニル樹脂エマルション及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散してなる研磨塗料を塗布、乾燥させてなるものである。
【0014】
本発明の研磨パッドによれば、素材表面の汚れを除去する際に、水を用いるだけで十分に効果を発揮することができる。また、研磨砥粒が固定された研磨層が水によって徐々に溶解していくため、上記研磨砥粒が過度に研磨層から脱落することがなく、かつ新しい研磨砥粒が露出するため高い研磨力が長期安定すると共に、上記溶解作用によって目詰まりを起こすことなく素材表面の汚れを確実に除去することができる。また、理由は定かではないが、不溶性樹脂研磨層を用いるよりも格段に素材を傷つけることがなく、素材表面の汚れを除去することができる。
【0015】
本発明の研磨パッドの基材は、天然あるいは合成繊維を単独で、又はこれを複合して形成した弾性を有するものであり、繊維として具体的には、綿、羊毛などの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの材質で作製した合成繊維が挙げられる。その形態としては、織布でも不織布でもよいが、特にはポリエステル、ナイロン、フェルト製の不織布が挙げられ、面密度として50〜700g/m2のものが好適に用いられる。その厚さは適宜選定されるが、0.5〜10mmが好ましい。また弾性は、テクロック社製のテクロック・デュロメータGS701Gでの測定値で10〜70であることが好ましい。
【0016】
本発明の研磨パッドにおいて、上記基材に塗布、乾燥させて研磨層を形成する研磨塗料は、酢酸ビニル樹脂エマルション及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散させたものである。この場合、上記エマルションは樹脂粒子の他に、分散・重合安定剤を含有することが好ましい。
【0017】
ここで、本発明の研磨パッドにおける研磨砥粒の材質としては、研削用の研磨砥粒材料であって、SiO2と同程度又はそれ以上の硬度を有するものを、素材の硬度との関係を考慮して適宜選択すればよいが、ダイヤモンド等の特に硬度が高い材質を用いる場合は、研磨圧を調整できる工具や装置に採用することが好ましい。具体的には、珪石、正長石、蛍石、パーミス、ガラス、天然又は人造エメリー、ジルコニア、アルミナ、コランダム、炭化珪素、炭化ホウ素、ダイヤモンドなどが挙げられる。特に、ガラス素材表面の汚れを除去する場合には、珪石、正長石、蛍石、パーミス、ガラスなどを使用することが好ましく、必要に応じてこれら材質の研磨砥粒を併用してもよく、研磨促進剤として酸化セリウムや酸化マンガンを併用してもよい。
【0018】
なお、上記砥粒の平均粒径は適宜選択されるが、0.1〜200μm、特に1〜100μmとすることが好ましい。平均粒径が小さくなりすぎると研磨力が劣り、特に鱗状物質のような汚れを完全に除去できないことがあり、大きくなりすぎると細かい汚れが除去できなくなったり、粒径のばらつきによって過度に大きな研磨砥粒が混入して素材表面を傷つけることがある。
【0019】
また、これら研磨砥粒の量は、研磨砥粒の吸水性や作製した研磨塗料の粘度を考慮して適宜調整され得るが、研磨塗料中30〜75質量%、特に40〜75質量%であることが好ましい。30質量%未満では研磨力の低下が大きくなり、75質量%を超えると研磨塗料の粘度が高くなりすぎて、基材に対して容易に塗布することができなくなるおそれがある。
【0020】
次に、酢酸ビニル樹脂エマルション又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションは、水に酢酸ビニル樹脂粒子又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂粒子が分散されたものであり、更に、通常、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)等の重合・分散安定剤が配合、使用されている。酢酸ビニル樹脂エマルション又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションを用いる理由は二つあり、一つは可塑剤を使用しない水系の研磨塗料で研磨層を形成できること、もう一つは上記樹脂エマルションを用いた研磨塗料で形成した研磨層が、水に対して適度な可溶性、再乳化性を示すことである。
【0021】
例えば、酢酸ビニル樹脂及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂の合成樹脂エマルションに配合、使用されている重合、分散安定剤であるPVAは、塗布、乾燥して研磨層にした際、バインダーとなってその層中に酢酸ビニル樹脂粒子及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂粒子や研磨砥粒を分散固定させると考えられる。そのため、PVAが水に溶解しても上記樹脂粒子によって研磨砥粒が容易に研磨層から脱落しないようにでき、結果として、研磨層の耐久性が高まり、固着研磨法の研磨力を維持できると考えられる。一方、水によって発生するPVAの溶解作用や上記樹脂粒子の再乳化作用によって目詰まりも抑制されると考えられる。
【0022】
上記酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションにおける固形分濃度は20〜60質量%、特に30〜50質量%が好ましい。樹脂エマルションの固形分濃度が60質量%を超えると、再乳化作用が得られず、耐久性が悪くなることがある。また、研磨塗料としての使用に際して、これらエマルションは必要により水で希釈し得るが、この研磨塗料中の酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションの固形分濃度は4〜30質量%、特に5〜25質量%であることが好ましい。研磨塗料中での固形分が4質量%未満になると、基材との接着性が失われ、研磨砥粒の脱落が多く、摩耗が著しくなり、経済性に乏しくなるおそれがある。固形分が30質量%を超えると、研磨力が低下するおそれがある。
【0023】
上記研磨塗料については、水溶性を上昇させるために、必要に応じて水溶性接着剤、例えばメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)などを樹脂有効成分の10質量%以下、好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは3〜5質量%配合することができる。10質量%を超える添加は、研磨パッド(研磨層)の耐久性を低下させるおそれがある。また、研磨塗料の粘度調整は、基材への塗布作業性改善に寄与するため、有機あるいは無機の増粘剤を添加することができ、研磨塗料に糸引性を与える場合、1〜2質量%の範囲で添加することができる。増粘剤として具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸、キサンタンガム、クレー粉、ベントナイトが挙げられる。更に、研磨塗料の粘度を改良する方法として、pHを8前後にすることもできる。このpH調整剤としては、アンモニア、重曹などが使用できる。その他、防腐剤を0.01〜0.1質量%配合してもよく、浴室等の鏡用の研磨パッドとする場合には、防曇剤を添加してもよい。
【0024】
本発明の研磨パッドは、上記研磨塗料を基材に塗布し、乾燥して基材表面に研磨層を形成するものであるが、研磨層が形成されればよく、塗布方法や乾燥方法に特に制限はない。研磨層の厚みとしては、0.5〜5mm、特に1〜3mmとするのが好ましく、この場合、研磨塗料の塗布量は、基材(A4サイズ)に対して50〜400g、特に100〜200gとすることができる。研磨層厚さを上記範囲とすることで、高い研磨力を持続でき、経済性を保てる。また、研磨層の形状も平面状、碁盤目模様、円斑点状、縞模様などにすることができる。
【0025】
上記研磨パッドは、適宜使用する形態にふさわしい形状に裁断して使用することができ、必要に応じて面ファスナーを貼って使用することもできる。また、研磨パッドの弾性は、研磨圧との関係を考慮して適宜基材弾性によって調整すればよいが、特に手動又は電動工具でガラス素材表面の汚れを除去する場合、上記研磨パッドの弾性は25〜150、特に70〜100(テクロック社製;テクロック・デュロメータGS701Gでの測定値)とすることが好ましい。弾性が上記範囲となることで、研磨力が低下して汚れを確実に除去できないおそれや、研磨砥粒の材質によってはガラス素材表面に傷がつくおそれを防止することができる。
【0026】
本発明の研磨パッドは、水と併用して手動で、又は回転ポリッシャーやオービダルサンダーなどの電動工具や公知の湿式研磨装置に装着して用いることができる。この場合、本発明の研磨パッドは、素材(被研磨面)と研磨パッド(研磨層表面)との間に水が保持された状態で用いることが好ましい。素材と研磨パッド間への水の供給は、開始時に素材表面に水を供給しておいてもよく、研磨パッドを水に浸漬して研磨層表面を濡らしてもよい。また、本発明の研磨パッドは、研磨パッドの基材に水を含浸させ、研磨層表面が乾燥した状態で、素材表面に水を供給せずに研磨してもよい。この場合、研磨中に上記基材に含浸させた水が、研磨層を介して素材表面へ供給される。また、研磨作業を継続する場合には、連続的又は間欠的(10〜60秒間隔)に、素材表面あるいは研磨パッドの基材に水を供給することが好ましい。
【0027】
上記電動工具への取り付け方法としては、特に制限なく常法を用いることができる。例えば、本発明の研磨パッドの裏面に粘着剤又は接着剤を施して上記工具へ取り付ける方法、接着剤の代わりに面ファスナーを用いて取り付ける方法、また研磨パッドに工具に加工された凸部に適合する孔をあけて取り付ける方法、更にはネジ込み式のホルダーで取り付ける方法など、用いる工具の種類に応じて公知の取り付け方法を自由に選択することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を示す。
【0029】
[実施例1]
酢酸ビニル樹脂エマルション[NS2146(昭和高分子(株)製)]22部に水7.3部を加えてよく混合した。次に、0.6〜200μm(平均粒径12μm)の珪石粉70.6部と防腐剤0.1部を加えて撹拌、混合し、珪石粉を分散させて、研磨塗料とした。この研磨塗料をA4サイズのポリエステル不織布(面密度600g/m2)に100g被覆し、80℃で30分乾燥して、研磨パッド(研磨層厚さ2mm;弾性70(テクロック社製;テクロック・デュロメータGS701Gでの測定値))を得た。
【0030】
[実施例2]
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルション[AD−2(昭和高分子(株)製)]25部に水9部と防腐剤0.1部を加え、これにガラスパウダー[UP−05L((株)ユニオン製)]を61.4部加えてよく混合し、研磨塗料とした。この塗料を実施例1と同様にA4サイズのポリエステル不織布に100g塗布し、80℃で30分乾燥して、研磨パッド(研磨層厚さ2mm;弾性75(テクロック社製;テクロック・デュロメータGS701Gでの測定値))を得た。
【0031】
[比較例1]
アクリル酸エステル共重合樹脂エマルション[AT−731(昭和高分子(株)製)]25部に水9部と防腐剤0.1部を加えてよく混合した。これに、実施例1に用いた珪石粉を65.9部加えて撹拌機で混合して研磨塗料とした。この塗料を実施例1と同様にA4サイズのポリエステル不織布に100g塗布し、80℃で30分乾燥して、研磨パッド(研磨層厚さ2mm;弾性70(テクロック社製;テクロック・デュロメータGS701Gでの測定値))を得た。
【0032】
表1に上記実施例の研磨塗料の組成を示す。
【0033】
【表1】

( )は樹脂有効成分(固形分)
【0034】
実施例1,2、比較例1に示した組成の研磨塗料で作製した研磨パッドの研磨評価を行った。まず、実施例1,2、比較例1の研磨パッドを75×110mmに切断し、水に1〜2分浸漬し、研磨パッド表面に親水性を付与した後、オービダルサンダー(日立工機(株)製SV12SE)を用いて鱗状物質が生成したガラス(ソーダ石灰シリカガラス)を一定時間研磨した。また、比較例2としてダイヤモンドシートを用いた。実施例1,2及び比較例1,2の研磨中、30秒毎に水をガラスにスプレーして湿式研磨を行った。更に、比較例3としてペースト状研磨剤を用いてフェルトにて研磨した。以上の結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
*1:鱗状物質が2μm生成したガラス素材表面(75×100mm)に工具の自重で研磨した時の、上記鱗状物質を除去しガラス素材表面が透明になるまでの時間(秒)を測定した。
*2:鱗状物質が生成したガラス素材表面3m2を、鱗状物質を除去し透明に処理したときの研磨パッド(75×110mm)の使用枚数とした。
*3:ダイヤモンドシートを1としたときの1枚当たりの価格比較を示し、ダイヤモンドシートは5,000〜10,000円/枚とした。
【0037】
表2の結果から、実施例1及び2はダイヤモンドシートと研磨性能はほとんど遜色がなかった。比較例1は耐水性のよいアクリル酸エステル共重合樹脂エマルションを用いたが、研磨性能が165秒で劣っており、研磨力が小さいことがわかる。また、耐久性も劣り、3枚必要になっているが、これは目詰まりや研磨力が持続されないために交換が必要となったためである。これによって、酢酸ビニル樹脂エマルション又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションを用いた研磨塗料で形成した研磨層が持つ水和性(可溶性、再乳化性)、特に分散される樹脂(酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)の再乳化作用によって、目詰まり等を起こさず、研磨力が高く持続し、耐久性にも優れていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然もしくは合成繊維の単独又は天然もしくは合成繊維の複合で作られた弾性を有する基材の表面に酢酸ビニル樹脂エマルション及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルションに研磨砥粒を分散させた研磨塗料を塗布、乾燥させてなる研磨パッド。
【請求項2】
上記研磨塗料が、更に有機もしくは無機の増粘剤及び/又は防腐剤を含有するものである請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
上記研磨砥粒が、平均粒径0.1〜200μmで、珪石、正長石、蛍石、パーミス、ガラスから選ばれる1種又は2種以上の砥粒である請求項1又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
ガラス素材表面の汚れ除去用である請求項1,2又は3記載の研磨パッド。
【請求項5】
請求項4記載の研磨パッドを水と併用して電動工具でガラス素材表面の汚れ部分を研磨し、このガラス素材表面の汚れを除去してガラス素材表面の視界性を向上させることを特徴とするガラス表面の汚れ除去方法。

【公開番号】特開2006−326797(P2006−326797A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156849(P2005−156849)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】