説明

研磨パッド用ポリウレタン組成物及びそれを用いた研磨パッド

【課題】 水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーの存在下で被研磨面の研磨を行う場合、研磨スラリーに対する研磨パッドの濡れ性を改善することにより、研磨スラリーの供給量の均一化および研磨スラリーの保持量を向上させ、表面平坦性、面内均一性、時間当たりの研磨量の均一化を図ることができる研磨パッドを提供する。
【解決手段】 側鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有し、かつ主鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを含んでなる研磨パッド用ポリウレタン組成物、及び前記研磨パッド用ポリウレタン組成物を用いて形成され、表面にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有する親水性研磨パッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、電子部品等の被研磨部材の研磨加工において、高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定的にかつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッド用ポリウレタン組成物及び研磨パッドに関し、特にSi基板、GaAs基板、ガラス、ハードディスク、LCD基板等の薄型基板製造の平坦化工程に用いられる研磨パッド用ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求されるSi基板、GaAs基板、ガラス、ハードディスク、LCD基板等の薄型基板用の研磨工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
一般的にウレタン樹脂から構成される研磨パッドは、ウレタン樹脂が疎水性であるため、この研磨パッドを用いて加工物表面を研磨する場合、水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーが研磨パッドになじまないため、問題が発生する。すなわち、研磨パッドが研磨スラリーをはじいてスラリーの供給量が不均一となるという問題であり、またスラリーが研磨パッド上に滞留しないため、研磨スラリーが無駄に消費され、研磨スラリー保持量の低下が起こる結果、時間当たりの研磨量が不均一となり、基板または材料表面の平坦性および面内均一性等の品質不良または研磨パッドの品質劣化を招くという問題である。
【0004】
研磨パッドへの研磨スラリーの濡れ性を改善する方法としては、研磨パッド自体を親水性にする方法が挙げられ、具体的には、疎水性高分子量ポリオールからなるイソシアネート末端プレポリマーとエチレンオキサイド単位(−(CH−O−)を有する親水性高分子量ポリオールからなるイソシアネート末端プレポリマーを混合してなる研磨パッド(例えば特許文献1参照)、基材を構成する疎水性ポリマー表面に、N−モノアルキル置換構造等の親水性基を有するグラフトポリマー鎖が導入されてなる研磨パッド(例えば特許文献2参照)、親水性基を有する化合物が共重合されたウレタン樹脂を含有し、かつ親水剤を含有するポリウレタンよりなる研磨パッド(例えば特許文献3参照)、さらに、親水性等に優れたヒドロキシル基、アミノ基等の活性水素を有する物質を含有する研磨パッド(例えば特許文献4参照)が開示されている。
【0005】
しかし、親水性物質と疎水性物質とを混合する場合、均一に親水性物質を分散させることは困難であるため、表面平坦性が得られにくい。また、特許文献4では活性水素を含有する親水性物質がポリウレタンを合成中にイソシアネート基と反応し、その結果未反応のポリオールが残存し、脆い硬化物となる恐れがある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−68175号公報
【特許文献2】特開2004−303983号公報
【特許文献3】特開2003−128910号公報
【特許文献4】特開2002−134445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーの存在下で被研磨面の研磨を行う場合、研磨スラリーに対する研磨パッドの濡れ性を改善することにより、研磨スラリーの供給量の均一化および研磨スラリーの保持量を向上させ、表面平坦性、面内均一性、時間当たりの研磨量の均一化を図ることができる研磨パッドを供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、側鎖にペンダント状にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するジオールとポリイソシアネートからなるウレタンプレポリマーを用いると、疎水性のポリウレタン樹脂からなる研磨パッドの表面に親水性のエチレンオキサイドの繰り返し単位を導入することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、側鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有し、かつ主鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを含んでなる研磨パッド用ポリウレタン組成物を提供するものである。
また本発明は、前記研磨パッド用ポリウレタン組成物を用いて形成され、表面にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有する親水性研磨パッドを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研磨パッド用ポリウレタン組成物を用いた研磨パッドの水接触角は、親水性のエチレンオキサイド鎖がクシの歯状にウレタン樹脂の側鎖に導入されたことにより、水に対する濡れ性が良好であり、水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーに対して濡れ性が良好になり、研磨スラリーの供給量の均一化および研磨スラリーの保持量を向上させ、平坦性、面内均一性、時間当たりの研磨量の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明の研磨パッド用ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとから合成するものである。
【0012】
かかるポリオールとして、例えば一般式(1)で示されるジオールが挙げられる。
【0013】
【化1】



一般式(1)中、R1は、炭素数が2〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基であり、R2は、炭素数が1〜9のアルキル基であり、R3は、−CO−NH−R4−NH−CO−である。またR4は、アルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、ビフェニレン基の何れかの官能基を含む炭素数2〜18のジイソシアネート残基であり、Aはエチレンオキサイドの繰り返し単位を含むポリアルキレンオキサイドである。
ポリオールとして、一般式(1)で示されるジオールに、末端にヒドロキシル基を有する高分子量ポリオール及び低分子ポリオールを併用することができる。この場合、親水性を向上の点で、一般式(I)で表されるジオールがプレポリマー組成中に5〜35重量%であることが好ましい。
高分子量ポリオールとしては、例えばポリエステル系ポリオール、ポリカ−ボネ−ト系ポリオール、ポリエ−テル系ポリオール、およびポリエステルアミド等が挙げられる。
【0014】
また低分子量ポリオールとしては、エチレングリコ−ル、1,3−及び1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−及び1,3−及び2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル等が挙げられる。
【0015】
前記した一般式(1)で表されるエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するジオールには、側鎖にエステル結合が含まれることから、水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーの存在下で懸念される加水分解に対しても、主鎖に対する影響はなく物性低下が起こりにくい。
【0016】
次に、前記した一般式(1)で表されるエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するジオールの製法について説明する。まず、ジオールの原料としての一級水酸基を有する2級アミンは、下式のとおり、一級アミンとモノアクリレートとをマイケル付加反応させることにより得ることができる。
【0017】
【化2】


化合物(I)は、R1が炭素数が2〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基である水酸基を有する一級アミンである。化合物(II)は、R2が、炭素数が1〜9のアルキル基であり、Aは、分子量200〜4000の2価のポリエチレンオキサイド基を含有するモノアクリレートである。
【0018】
エチレンオキサイドの繰り返し単位を有するジオールは、化合物(I)と化合物(II)とをいわゆるマイケル付加反応し、分子の末端に一級水酸基を有する2級アミン(III)とすることにより得ることができる。
【0019】
この2級アミン(III)を2モルと、(IV)で示されるジイソシアネート1モルとを反応させ、水酸基を残してNH基とジイソシアネートのNCO基とを反応させエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するジオ−ルを製造することができる。
【0020】
【化3】

化合物(I)の水酸基を有する1級アミンとしては、例えば2−アミノエタノール(モノエタノールアミン)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−アミノプロパノール 4−アミノブタノール等の一級水酸基と一級アミノ基を有するアミンが挙げられる。
【0021】
また、エチレンオキサイドの繰り返し単位を有するモノアクリレート(II)は、例えば片末端がメトキシ基、エトキシ基などのアルキルオキシ基で封鎖された、エチレンオキサイド(以後EOという)、1,2−及び1,3−プロピレンオキサイド(以後POという)、1,2−、2,3−及び1,4−ブチレンオキサイド、アルキルテトラヒドロフラン等の分子内環状エーテル化合物の単独重合又は2種類以上のランダム共重合、ブロック共重合等で得ることができる。かかるモノアクリレート(II)の分子量は、数平均分子量で、400〜4,000であることが好ましい。
【0022】
2級アミン(III)の2級アミノ基をイソシアネート基と反応させ、2級アミン(III)を尿素結合で2量化する目的で、ジイソシアネートが使用されるが、かかるジイソシアネートとしては、前記のポリイソシアネートが用いられるが、反応性の低い脂肪族、脂環族ジイソシアネートが好ましい。かかるジイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)が挙げられる。
上記の反応により、本発明に使用するウレタンプレポリマーの原料であるジオールの一つを製造することができる。
ウレタンプレポリマーの原料のポリオールとしては、かかるジオールに、公知のジオールを併用することができる。このような公知のジオールとしては、例えば、高分子量のポリエステル系ポリオール、ポリカ−ボネ−ト系ポリオール、ポリエ−テル系ポリオール、およびポリエステルアミド等が挙げられる。また低分子量のエチレングリコ−ル、1,3−及び1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−及び1,3−及び2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル等が挙げられる。この場合、親水性を向上させる点で、一般式(I)で表されるジオールがプレポリマー組成中に5〜35重量%であることが好ましい。
【0023】
ウレタンプレポリマーの原料として用いられるポリイソシアネートとしては、例えば芳香族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート等が挙げられ、これらのうち、成形性及び物性の点で芳香族系の2,4−及び/または2,6−トルエンジイソシアネ−トが好ましい。
【0024】
ウレタンプレポリマーの原料のポリオールとポリイソシアネートとは、当量比でNCO/OH=1.05〜2.5であり、このうち1.5〜2.0が好ましい。イソシアネート基当量としては、300〜800、好ましくは350〜600が用いられる。
【0025】
本発明に使用するウレタンプレポリマーは、前記のポリオールとポリイソシアネートとを用いて、通常は0〜120℃、好ましくは40〜100℃でこれらのウレタン化原料を、触媒なし、或いは公知のウレタン化触媒を用いるか又は反応遅延剤を添加して、撹拌混合することにより得ることができる。
【0026】
かかる原料を用いて得られるウレタンプレポリマー中のエチレンオキサイドの繰り返し単位は、数平均分子量が200〜4,000であることが物性及び親水性付与の点で好ましい。 エチレンオキサイドの繰り返し単位の数平均分子量が4,000を越えると、ウレタン組成物の弾性率等の物性が低下する傾向にあり、研磨効果が得られにくい。また200未満の場合には、ポリエチレンオキサイド鎖が短いため側鎖として十分ではなく親水性が得られにくい。
【0027】
本発明に使用する鎖伸長剤としては、例えば4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、1−メチル−3,5−ジエチルー2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチルー2,4−ジアミノベンゼン等の有機ジアミン、上記ポリオール、一般式(1)で示されるジオール等のジオール類が挙げられる。これらのうち、得られるポリウレタン、ならびにそれから製造される研磨パッドの機械特性、耐摩耗性等の観点から、4,4‘−メチレンビス(o−クロロアニリン)を用いることが好ましい。研磨パッド特性を損なわない範囲でその他のジアミン、ジオール類を併用することができる。
【0028】
本発明の研磨パッド用ポリウレタン組成物には、その他、水、ウレタン化触媒、砥粒、整泡剤、充填剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤等を適宜添加することができる。特にウレタン化触媒及び整泡剤を添加することが成形加工性および気泡のコントロールの点で好ましい。
【0029】
かかるウレタン化触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、またはN−メチルモルホリン等の種々の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、またはオクチル酸錫等の種々の金属塩、ジブチルチンジラウレート等の種々の有機金属化合物などが挙げられる。
また整泡剤としては、シリコーン系界面活性剤が挙げられ、その市販品として、例えばトーレシリコンSH−193、SH−192、SH−190(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)等が挙げられる。
【0030】
本発明で使用する水は、発泡剤として使用するもので、汚れ、濁りがない水、水道水等であれば特に問題無く使用できるが、好ましくはイオン交換水、純水である。
【0031】
本発明の研磨パッド用ウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを混合して攪拌することにより得ることができる。
得られたウレタン組成物は、研磨パッドに適した厚みに切断される。また研磨パッドの厚さを有する金型にウレタン組成物を流し込んで製造することができる。研磨パッドは、厚さが通常0.5〜5.0mmである。
研磨パッドは、表面に溝を付けたり、裏面に柔軟性多孔質シート等を貼り付けることができる。
研磨パッド表面の条溝は、研磨屑や研磨剤を被研磨物と研磨シートの接触面から外方へ逃す作用を有する。条溝の形状は、断面が矩形、三角形、U字形、半円状等が例示される。条溝は、シート面上に同心円状、格子状等にて配置される。
【0032】
本発明の研磨パッド用ウレタン組成物を用いて形成される研磨パッドの形態としては、特に限定はしないが、特開2000−343412号公報に見られるような水とポリイソシアネートの化学的反応による気泡を含むポリウレタン発泡体であっても構わないし、特許第3013105号明細書に見られるようなガスを内包した空隙を有する高分子微小エレメントをポリウレタンマトリックスに含浸されたものであっても構わない。また、特開2000−178374号公報のような非反応性気体を界面活性剤により微細気泡を有したポリウレタン発泡体からなるものでも構わない。さらには、特開2003−12918に見られるような研磨布でも構わないし、特開2004−306149に見られるようなウレタン樹脂が含浸された不織布の研磨クロスのような形態でも構わない。
【0033】
本発明の研磨パッドは、表面が親水性であり、エチレンオキサイドの繰り返し単位の表面以外を含めた全含有量が、5〜35重量%であることが好ましい。このエチレンオキサイドの繰り返し単位が5重量%未満の場合には、親水性が十分ではなく、35重量%を越える場合には、研磨パッド中の親水性が高くなり過ぎるために吸湿し、物性低下を引き起こし、平坦性および面内均一性が低下する傾向にある。
【0034】
本発明の研磨パッドの上に、さらに水系媒体中に砥粒を分散させた研磨スラリーを連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0035】
研磨スラリー中の砥粒としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、アルミナ等が好ましい。これらを配合して得られる発泡成形品が研磨パッドを切り出す材料として有用である。研磨パッドとしては、酸化セリウム、酸化ジルコニウムが特に好ましい。使用する砥粒の平均粒径は、研磨目的によるが、平均粒子径0.1μm〜200μmであるものが好ましい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の研磨パッド用ポリウレタン組成物、かつそれを用いた研磨パッドについて、その合成例、及び応用例を示し、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれら合成例、応用例に限定されるものではない。尚、合成例、応用例中の部及び%は断りのない限り重量に関するものである。又、分子量とは水酸基価から計算した数平均分子量を指すものとする。
【0037】
[調製例1]エチレンオキサイドの繰り返し単位をペンダント状に有するジオール
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、モノエタノールアミン、30.5g(0.5モル)を入れ攪拌した。ついで、あらかじめ50℃に加温して融解しておいた片末端がメトキシ基で封鎖されたEO/PO共重合グリコールモノアクリレート(EO/PO=9/1モル比でEO/PO部分の数平均分子量=約1000)500g(0.5モル)を、内温45〜50℃に保ちながら約30分で投入した。その後内温を30〜40℃に保ちながら5時間攪拌した。次に、水添MDI65.5g(0.25モル)を内温で30〜40℃に保ちながら約30分かけて投入した。投入後内温を30〜40℃に保ちながら1時間攪拌した。赤外分光光度計でイソシアネート基のピークが無いことを確認して、取り出した。得られたジオールは40℃で、ほとんど無色で、室温でワックス状に固化した。高速液体クロマトグラフィー(東ソー 8020)でピークが1本で高純度品であることが確認できた。水酸基価の計算値47.1に対して水酸基価の実測値は47.8とほぼ一致し、水添MDIでの二量化の際、水酸基と水添MDIは反応していないことが確認された。
重クロロホルムを溶媒としたH−NMRの測定結果
3.4ppm:−OCH
3.7ppm:EO/PO
5.8ppm:尿素結合(−NH−CO−N)
尚、H−NMRではアクリル2重結合及びウレタン結合は検出されなかった。
【0038】
[調製例2]エチレンオキサイドの繰り返し単位をペンダント状に有するジオールを含有するウレタンプレポリマー(a)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、調整例1で得られたジオール105部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)316部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)127部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中の調製例1で得られたエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は8重量%である。
【0039】
[調製例3]エチレンオキサイドの繰り返し単位をペンダント状に有するジオールを含有するウレタンプレポリマー(b)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、調製例1で得られたジオール207部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)207部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)135部を分割して投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中の調製例1で得られたエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は16重量%である。
【0040】
[調製例4]エチレンオキサイドの繰り返し単位をペンダント状に有するジオールを含有するウレタンプレポリマー(c)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、調製例1で得られたジオール314部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)94部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)142部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中の調製例1で得られたエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は25重量%である。
【0041】
[調製例5]エチレンオキサイドの繰り返し単位を含有しないウレタンプレポリマー(d)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)430部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)121部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。
【0042】
[調製例6]主鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するウレタンプレポリマー(e)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、PEG2000u(ポリエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)105部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)316部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)127部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中のエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は10重量%である。
【0043】
[調製例7]主鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するウレタンプレポリマー(f)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、PEG2000u(ポリエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)207部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)207部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)135部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中のエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は20重量%である。
【0044】
[調製例8]主鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有するウレタンプレポリマー(g)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、コロネートT−80/20(トルエンジイソシアネート、日本ポリウレタン(株)社製品)500部入れ攪拌した。ついで、PEG2000u(ポリエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)314部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱化学(株)社製品)94部及びDEG(ジエチレングリコール、三菱化学(株)社製品)142部を分割で投入混合し、窒素気流下60℃で約5時間反応を行い、イソシアネート基当量400のウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマー中のエチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量は30重量%である。
【0045】
[実施例1]
調製例2のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型(300mm×300mm)に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0046】
[実施例2]
調製例3のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0047】
[実施例3]
調製例4のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0048】
[比較例1]
調製例5のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0049】
[比較例2]
調製例6のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0050】
[比較例3]
調製例7のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約150gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0051】
[比較例4]
調製例8のウレタンプレポリマー(a)100部と4,4‘−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)30部を配合し良く攪拌混合した。混合物を110℃に加熱したスペーサー2mmのガラス型に約120gを注入した。直ちに110℃ガラス型で2時間放置し、その後に成型品を取り出し、110℃で16時間アフターキュアを行った。得られた成形品は厚さ約2mmで表面平坦性が高いシートが得られた。
【0052】
実施例1、2、3と比較例1、2、3、4で得られた各2mm厚のシートを下記に示す方法で、硬度(ショアD)、水接触角を測定した。
<硬度及び水接触角の測定方法>
「硬度(ショアD)」:前記実施例で得られたシートを試料として、温度23℃、湿度50%の部屋に24時間以上置き、JIS K7312に準じて2mm厚シートを5枚重ねて測定した。
「水接触角」:前記実施例で得られたシートを試料として、協和界面科学(株)製温度計測ユニット(DM)付きのDropMaster700(固液界面解析システム オプション)にて水接触角を測定した。
【0053】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有し、かつ主鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを含んでなる研磨パッド用ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーが、一般式(1)で示されるジオ−ルとポリイソシアネートとを反応させて得られる請求項1記載の研磨パッド用ポリウレタン組成物。
【化1】

(式中、R1は、炭素数が2〜9のアルキレン基又はジアルキレンエーテル基であり、R2は、炭素数が1〜9のアルキル基であり、R3は、−CO−NH−R4−NH−CO−であり、R4は、アルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、ビフェニレン基の何れかの官能基を含む炭素数2〜18のジイソシアネート残基であり、Aはエチレンオキサイドの繰り返し単位を含むポリアルキレンオキサイドである。)
【請求項3】
前記エチレンオキサイドの繰り返し単位が、200〜4,000の数平均分子量を有する請求項2記載の研磨パッド用ポリウレタン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド用ポリウレタン組成物を用いて形成され、表面にエチレンオキサイドの繰り返し単位を有する親水性研磨パッド。
【請求項5】
前記エチレンオキサイドの繰り返し単位の含有量が、5〜35重量%である請求項4記載の親水性研磨パッド。




【公開番号】特開2007−63323(P2007−63323A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247546(P2005−247546)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】