説明

研磨パッド用補助板および研磨装置

【課題】化学的機械研磨に際して研磨パッド表面の温度を速やかに且つ省エネルギー効率をもって昇温して適温に維持することができる、新規な構造の研磨パッド用補助板と研磨装置を提供すること。
【解決手段】研磨パッド16を重ね合わせて固着状態で支持するパッド支持面を表面40に有していると共に、裏面42において回転定盤14に重ね合わされて着脱可能に装着される装着面を有している研磨パッド用補助板10において、通電により補助板本体38(パッド支持面40)を昇温して適温に維持する通電式温度制御手段50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハや半導体基板のような高い平坦加工精度が要求される被加工物である基板を対象とする化学的機械研磨(CMP)に関連する技術に係り、特に、かかる基板の表面を研磨する際に用いられる研磨パッドを支持するための研磨パッド用補助板と該補助板を用いた研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように、半導体の製造に際しては、構成材となるシリコンウエハや半導体基板の表面を平坦化する研磨処理(CMP)が行われている。かかる研磨処理は、一般に、樹脂材等からなる円板形状の研磨パッドを研磨装置の回転定盤の上に固定し、砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を供給しつつ、研磨パッドと基板を相対的に回転運動させて研磨を行うことによって実施されている。
【0003】
ところで、このようなCMP処理において、時間当たりの研磨量は、供給する研磨液の量や、研磨パッドと基板の回転速度、研磨パッドへ基板を押し付ける圧力におおむね比例することが知られている。また、CMP処理に際しては、相互に押し付けられ相対回転せしめられる研磨パッドと基板との摩擦力等に起因して研磨処理面の温度が変化することにより、目的とする研磨処理に悪影響が及ぼされるおそれがある。
【0004】
そこで、従来では、特開2007−329342号公報(特許文献1)に記載されているように、研磨中に発生する熱により研磨パッドの表面温度が上がり過ぎるのを防ぐため、研磨装置の回転定盤を冷却することにより研磨パッドの表面の温度を下げる方法も提案されてきた。
【0005】
しかしながら、近年多用される銅のCMP工程では、反対に、研磨パッドの表面温度が充分に上がらないことに因る問題が指摘されている。その理由は、良好な研磨効率と研磨精度を得るためには、研磨パッドの表面温度が銅のCMP工程に適した温度に維持されることが有効であるのに対して、最近の半導体基板は薄膜化や配線の微細化によって、基板の押し付け圧力を小さくする必要があると共に、1回のCMP工程に要する加工時間も1分以内で終了するために、加工中に発生する熱量が少なくなったことが一因であると考えられる。加えて、研磨装置の回転定盤が、一般にステンレス等の熱伝導率の大きい材質であることから、CMP加工によって発生する熱が研磨パッドから回転定盤に伝わって放熱され易く、基板ひいては研磨パッドの大径化に伴って大型とされた回転定盤への放熱量が増えて研磨パッド表面の温度が上昇し難くなっているものと考えられる。
【0006】
また、近年では、基板が200mmから300mmへ大径化したことに伴って研磨パッドの表面積が約2倍になっており、更に基板を450mmへと一層大径化する検討もされていることから、大きな研磨パッドの全面に均一なスラリー層を形成するためにより大量のスラリーを研磨パッド表面に供給することが必要となってきている。そのために、スラリーで覆われた研磨パッド表面の摩擦熱による温度上昇が、一層実現され難くなっている。そして、研磨パッドの表面温度が研磨処理に適した温度まで上昇するのを待つと、処理に要する時間だけでなく、スラリーの無駄も発生し、スラリー廃液の処理という新たな問題さえも発生することとなる。
【0007】
なお、特開2005−56987号公報(特許文献2)には、研磨パッドの表面側に離隔して赤外線ランプを対向配置させて、かかる赤外線ランプで研磨パッドの表面を加熱する構造も提案されている。しかし、研磨パッドから離隔した位置に配した赤外線ランプで研磨パッドの中央部分だけを局所的に加熱するだけでは、研磨処理面の全体の温度を速やかに適温維持させることが困難であり、局所的な加熱によって研磨むら等の悪影響の発生も懸念される。また、研磨パッドの表面を加熱するだけでは、上述の如き回転定盤の大型化に伴う研磨パッドから回転定盤への放熱による問題等に関して有効な対策とはなり得なかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−329342号公報
【特許文献2】特開2005−56987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、化学的機械研磨に際して研磨パッド表面の温度を速やかに且つ省エネルギー効率をもって昇温して適温に維持することができる、新規な構造の研磨パッド用補助板と研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、研磨パッド用補助板に関する本発明の第一の態様の特徴とするところは、研磨パッドが重ね合わされて固着状態で支持されるパッド支持面を表面に有していると共に、裏面において回転定盤に重ね合わされて着脱可能に装着される装着面を有しており、更に、通電により該パッド支持面を昇温して適温に維持する通電式温度制御手段(例えばペルティエ素子)が設けられている研磨パッド用補助板にある。
【0011】
本発明に従う構造とされた研磨パッド用補助板を採用することにより、研磨装置の回転定盤に対して直接に研磨パッドが載置されることなく、研磨パッド用補助板を介して、回転定盤に研磨パッドが載置されて装着されることとなる。それ故、大型化した回転定盤による放熱が抑えられて、研磨面における適温の維持効率が向上される。
【0012】
しかも、研磨パッド用補助板が、それ自体の備える通電式温度制御手段でパッド支持面を直接的に加熱することから、パッド支持面を優れたエネルギー効率で昇温して適温に維持することが出来る。また、研磨対象である基板の重ね合わせ領域に拘わらず、通電式温度制御手段の配設領域を広い領域に亘って任意に設定可能であることから、研磨パッド全体の略均一な且つ効率的な適温維持が可能になる。
【0013】
なお、本発明における通電式温度制御手段は、例えば通電制御により発熱量をコントロールすることができる電気ヒータも採用可能であるが、ペルティエ素子や電磁式発熱体なども採用され得る。特に、研磨面に要求される温度範囲を考慮するとペルティエ素子が有効である。また、本発明の通電式温度制御手段では、研磨面を目的とする温度に昇温させて保持させるために温度管理が容易で且つ制御精度も良いことが望ましく、昇温だけでなく冷却の機能も併せ備えていることも有効である。かかる観点から、ペルティエ素子を採用することにより、通電によって昇温だけでなく冷却の機能も併せ備えた通電式温度制御手段が実現可能となる。
【0014】
また、本発明の研磨パッド用補助板は、研磨パッドおよび回転定盤の何れに対しても着脱可能とされることから、例えば研磨パッドを交換するに際して繰り返して研磨パッド用補助板を再利用することも出来るし、研磨パッドを支持せしめたままで研磨パッドと共に研磨パッド用補助板を回転定盤から取り外すことにより研磨パッドの研磨面を再生処理等するに際して研磨パッドへの補強部材として利用することも可能となる。
【0015】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至る単位時間当たりの熱伝導量に比して、該通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る単位時間当たりの熱伝導量が小さくされているものである。
【0016】
本態様の研磨パッド用補助板においては、回転定盤への熱伝導による放熱を一層効果的に抑えつつ、通電式温度制御手段による発熱エネルギーを研磨パッドへ一層効率的に伝達せしめてより速やかに省エネルギーで適温に維持することが可能となる。
【0017】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る装着面側部材として、該通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至るパッド支持面側部材に比して熱伝導率の小さい部材が用いられているものである。
【0018】
本態様の研磨パッド用補助板においては、通電式温度制御手段から回転定盤に至る伝熱経路上に熱伝導率を小さい部材を設けることにより、回転定盤への熱伝導量を効果的に抑えることができる。熱伝導率が小さい部材は、例えば断熱材として利用できる公知の材質で設けることが可能であり、樹脂やゴムなどの発泡体を採用することも可能である。
【0019】
また、本態様において採用される熱伝導率の小さい装着面側部材は、通電式温度制御手段の配設位置から装着面に至る経路上の全体に亘って配設される必要はなく、当該経路の少なくとも一部に配設されていれば良い。また、かかる装着面側部材は、通電式温度制御手段から回転定盤に至る伝熱経路上に配設されていれば良く、研磨パッド用補助板において通電式温度制御手段が設けられた本体部分や装着面側部材に対して一体的に設けられている他、別体形成されて着脱可能に組み合わされるようになっていても良い。
【0020】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に係る研磨パッド用補助板において、前記通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る装着面側距離が、該通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至る支持面側距離に比して大きくされているものである。
【0021】
本態様の研磨パッド用補助板においては、通電式温度制御手段から回転定盤への伝熱経路が、通電式温度制御手段から研磨パッドへの伝熱経路に比して、物理的に大きく距離設定される。それ故、たとえ均一材質の研磨パッド用補助板を採用した場合でも、通電式温度制御手段からパッド支持面への熱伝導量に比して通電式温度制御手段から装着面への熱伝導量を小さくすることが出来、回転定盤への放熱を抑えつつ研磨パッドの効率的な適温維持が、簡単な構造で実現可能となる。
【0022】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第五の態様は、前記第一〜四の何れかの態様に係る研磨パッド用補助板において、温度センサが内蔵されているものである。
【0023】
本態様の研磨パッド用補助板では、通電式温度制御手段を備えた研磨パッド用補助板自体に温度センサが装着されていることにより、研磨パッドの適温維持に際して、優れた応答性をもって検出することが可能であり、通電式温度制御手段による昇温のオーバーシュートを抑えて精度良く温度制御することも可能となる。
【0024】
また、研磨パッド用補助板に温度センサを内蔵したことにより、温度センサを別体に設ける必要がなく構造が簡単になるだけでなく、温度センサの保護も実現され得て信頼性の向上が図られ得る。
【0025】
研磨パッド用補助板に関する本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れかの態様に係る研磨パッド用補助板において、前記通電式温度制御手段への通電制御装置が内蔵されているものである。
【0026】
本態様の研磨パッド用補助板では、通電式温度制御手段を備えた研磨パッド用補助板自体に通電を制御するための通電制御装置が備えられていることにより、研磨パッドの温度を優れた応答性をもって目的値にコントロールすることが可能になる。また、研磨パッド用補助板に通電制御装置を内蔵したことにより、通電制御装置を別体に設ける必要がなく構造が簡単になると共に、通電制御装置の保護も可能となる。
【0027】
また、本発明は、前記第一〜六の何れかの態様に係る研磨パッド用補助板が、回転定盤の上面に重ね合わされて着脱可能に取り付けられた研磨装置も特徴とする。
【0028】
さらに、このような本発明に係る研磨装置では、前記回転定盤の上方に開口するスラリー供給用ノズルを設けると共に、該スラリー供給用ノズルを加熱するヒータチューブを設けることも、好適である。
【0029】
かかるヒータチューブを設けることにより、研磨パッドの表面に供給されるスラリーを、研磨面への供給前に予め昇温しておくことが可能になり、本発明に係る研磨パッド用補助板の通電式温度制御手段による加熱と相俟って、研磨面の昇温を一層速やかに達成することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に従う構造とされた研磨パッド用補助板および研磨装置を用いることにより、化学的機械研磨に際して、研磨パッド表面における適温の維持を速やかに、効率良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態としての研磨パッド用補助板を装着した研磨装置の構造を概略的に示す説明図。
【図2】図1に示された研磨装置に装着される研磨パッド用補助板の構造例を示す平面説明図。
【図3】図1に示された研磨装置において採用され得る、研磨パッド用補助板への通電構造の一例を示す縦断面説明図。
【図4】別形態の伝送手段を用いた、図2に対応する研磨パッド用補助板の構造例を示す平面説明図。
【図5】別形態の研磨パッド用補助板の構造の一例を示す縦断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての研磨パッド用補助板10が示されている。この研磨パッド用補助板10は、研磨装置12の回転定盤14に装着されて用いられ、回転定盤14に対して研磨パッド16を着脱可能に取り付けるようになっている。
【0033】
研磨装置は、例えば特開2010−141155号公報等に記載されているようにCMP装置(化学機械研磨装置)として用いられるものであって、基本構造は周知であるが、その要部を図1を参照しつつ説明する。
【0034】
先ず、研磨装置12では、基礎ベース上に固定設置された装置本体によって鉛直方向に延びる回転軸18が回転可能に支持されており、この回転軸18の上端部に円盤形状の回転定盤14が固設されている。かかる回転定盤14は、水平方向に広がる平坦な上面20を有しており、この上面20が研磨パッド16の間接的な支持面とされている。また、回転軸18には、電気モータの回転出力軸が連結されており、電気モータの駆動力が伝達されることで回転軸18ひいては回転定盤14が鉛直な中心軸回りに回転駆動されるようになっている。
【0035】
一方、研磨パッド16を支持する回転定盤14の上面20の上方には、研磨ヘッド22が配設されている。かかる研磨ヘッド22は、回転定盤14よりも小径の円板形状とされており、中心軸上を上方に延びる回転支軸24によって吊り下げ状態で支持されている。そして、この研磨ヘッド22には、回転定盤14の上面20に対向位置せしめられた下面26に対して、研磨対象(被研磨物)であるウェハ等の基板28が重ね合わされて取り付けられるようになっている。
【0036】
また、研磨ヘッド22を支持する回転支軸24は、電気モータによって中心軸回りに回転駆動されるようになっていると共に、上下に延びる中心軸方向で往復変位可能とされている。そして、研磨ヘッド22は、電気モータによって回転支軸24の中心軸回りで回転駆動せしめられつつ、駆動モータや駆動シリンダから及ぼされる駆動力により、回転定盤14に対して接近/離隔方向に駆動されるようになっている。なお、一般に、研磨ヘッド22の外径寸法は、回転定盤14で支持される研磨パッド16の外径寸法の半分弱である。
【0037】
また、回転定盤14の上方には、研磨用スラリー32を供給するノズル34が配設されている。このノズル34は、回転定盤14で支持された研磨パッド16の上面30に対して直接に対向位置する開口部を備えており、研磨ヘッド22を避けた位置で、研磨パッド16上にスラリー32を開口部から吐出させて供給するようになっている。
【0038】
而して、このような研磨装置12では、ノズル34からスラリー32を研磨パッド16上に供給させつつ、回転定盤14と研磨ヘッド22をそれぞれ回転させながら、基板28を研磨パッド16上に押し付けることにより、基板28の表面への研磨処理が行われることとなる。
【0039】
かかる研磨装置12において、回転定盤14に装着された研磨パッド用補助板10は、補助板本体38を含んで構成されている。この補助板本体38は、円形の平板形状とされており、それぞれ平坦な円形状とされた表面(上面)40と裏面(下面)42を有している。この補助板本体38の表面(上面)40は、研磨パッド16の直接的な支持面とされており、研磨パッド16が重ね合わされて固着状態で支持される。なお、補助板本体38は、装着される研磨パッド16よりも硬質材料であるものや、研磨パッド16よりも部材剛性が大きいものが望ましい。部材剛性が大きい補助板本体38であれば、研磨パッド16への補強作用等が一層効果的に発揮されるからである。
【0040】
尤も、補助板本体38は、研磨加工に際して研磨装置12の回転定盤14の上面20に重ね合わされて使用されることで、下面42を回転定盤14により直接又は間接に支持されるものであることから、単体での強度や剛性がそれ程迄に要求されるものでない。それ故、合成樹脂や繊維強化樹脂、セラミックス、或いは金属等も、補助板本体38の材質として採用され得る。特に、合成樹脂は金属等に比して軽量で加工や取扱いが容易であると共に、電気絶縁性も有しており、例えばポリカーボネート等は、厚さ寸法精度の安定性や温度変化に対する低歪み特性にも優れているといった利点がある。
【0041】
また、補助板本体38の外周部分において、板厚方向下方に突出する円環形状の外周カラー44が一体形成により、或いは補助板本体38とは別体として固着されることにより設けられている。この外周カラー44により、補助板本体38には、下面42側の中央部分において下方に向かって開口する大径の装着凹所46が形成されている。
【0042】
さらに、装着凹所46の上底部分の下面である裏面42には、装着面側部材を構成する断熱部材48が取り付けられている。この断熱部材48は、円板形状とされており、補助板本体38の裏面42を略全体に亘って覆っている。なお、断熱部材48の材質は特に限定されるものでないが、少なくとも補助板本体38よりも熱伝導率の小さい材質とされている。例えば、補助板本体38としてポリカーボネートが採用される場合には、断熱部材48としてウレタンフォーム等が採用される。
【0043】
また、断熱部材48は、補助板本体38の装着凹所46の上底部分に嵌め入れられて装着されているが、補助板本体38に対して接着等で固着されていても良いし、装着凹所46内の裏面42に対して単に重ね合わされているだけでも良い。
【0044】
そして、補助板本体38は、研磨装置12の回転定盤14に対して装着凹所46が外挿状態で嵌め合わされることにより、補助板本体38の装着凹所46内の裏面42が、断熱部材48を介して、回転定盤14の上面20に重ね合わされて装着されている。また、かかる装着時には、回転定盤14の外周面に外周カラー44が嵌め合わされることにより、回転定盤14に対する補助板本体38の軸直角方向での位置決め作用が発揮されて、回転定盤14の回転中心軸に対して補助板本体38の中心軸が略位置合わせされるようになっている。
【0045】
さらに、補助板本体38には、通電によりパッド支持面40を昇温する通電式温度制御手段50が設けられている。かかる通電式温度制御手段50としては、例えば抵抗型の発熱線等からなる電気ヒータを採用することも可能であるが、ペルティエ素子が好適に採用される。また、かかる通電式温度制御手段50は、補助板本体38のパッド支持面40に対して全体的に効率的な温度制御機能を発揮し得るように適切に配置される。
【0046】
例えば、図2に示されているように、補助板本体38のパッド支持面40に対して適当な回路態様で通電回路52が形成される。そして、電気ヒータを採用する場合には、この通電回路52を発熱線として利用することができる。また、ペルティエ素子を採用する場合には、この通電回路52上で適当な間隔をもって複数のペルティエ素子を設置することにより、通電式温度制御手段50が構成され得る。これにより、補助板本体38における研磨パッド16の載置領域の平面視において略全体に亘って略均等な間隔で通電式温度制御手段50を配することが可能になる。
【0047】
また、ペルティエ素子を含む通電回路52は、補助板本体38の内部に埋設されることにより、補助板本体38に内蔵される。特に本実施形態では、補助板本体38として絶縁性の合成樹脂が採用されており、かかる補助板本体38の成形用型に予め形成した通電回路52をセットしてインサート成形することにより、通電回路52が埋設された補助板本体38を得ることができる。
【0048】
なお、通電回路52としてヒーターエレメントを採用する場合には、NiCr等の適当な抵抗値を持つ発熱型の導電材を採用することが出来る。また、通電回路52としてペルティエ素子を採用する場合には、例えばP型とN型の両半導体を配列させた公知の構造のものが採用可能であり、通電方向に応じて回転定盤14側とパッド支持面40側との何れか一方を昇温(発熱)側、他方を冷却側とすることができる。例えば通電方向を切り換えることにより、パッド支持面40に対して昇温作用と冷却作用を選択的に及ぼすことも可能であるが、パッド支持面40に対して昇温作用を発揮する昇温用のペルティエ素子を備えた通電回路52と、パッド支持面40に対して冷却作用を発揮する冷却用のペルティエ素子を備えた通電回路52とを、併せて補助板本体38に設けることも可能である。
【0049】
そして、補助板本体38の材質が合成樹脂やセラミックなどの電気抵抗が大きい実質的な電気絶縁性を有するものであれば、上述のように通電回路52を直接にインサート状態で埋設することが可能である。一方、ステンレスなどの導電性の補助板本体38を採用する場合には、通電回路52を電気絶縁層で被覆して配設したり、シーズヒーター等の絶縁性のヒーターエレメントが採用される。
【0050】
また、本実施形態の補助板本体38では、厚さ方向となる図1中の上下方向において、通電式温度制御手段50(通電回路52)の配設位置が、補助板本体38の中央よりも上方に偏倚されている。これにより、通電式温度制御手段50(通電回路52)から補助板本体38の上面40(パッド支持面)に至る支持面側距離が、通電式温度制御手段50(通電回路52)から補助板本体38の下面42(間接的な回転定盤14装着面)に至る装着面側距離に比して、小さくされている。
【0051】
さらに、通電回路52の両端部分には、給電用コイル54が設けられており、かかる給電用コイル54を通じて、外部の電源56から通電制御装置58を通じて通電回路52へ外部から給電されるようになっている。特に本実施形態では、通電回路52の両端部間に設けられた給電用コイル54が、補助板本体36の中央部分において、補助板本体36の中心軸上で円環形状に延びるコイル構造をもって形成されている。
【0052】
このようなコイル構造の給電用コイル54を採用することにより、例えば特開2009−135842号公報等に開示された公知技術である無接触型の電力伝送手段を利用して、通電式温度制御手段50の通電回路52へ外部から給電することが可能である。特に、無接触型の電力伝送手段を用いることにより、通電式通電式温度制御手段50が装備された補助板本体38を給電部材60に対して直接に接触通電させることなく、図1に示されているように、補助板本体38を給電部材60から離隔配置することが可能となる。それ故、補助板本体38と給電部材60との間に、研磨パッド16を介在させた状態で、給電部材60から補助板本体38の通電式温度制御手段50へ給電することも可能となる。
【0053】
なお、図1に示された給電部材60には、特開2009−135842号公報等に記載の公知技術に従い、対向位置せしめられた補助板本体38の給電用コイル54に対応した送電用コイル80(後述)が組み込まれており、かかる送電用コイル80に対して、通電制御装置58から電力送電ライン62を通じて送電された電力が、電磁誘導作用に基づいて給電用コイル54へ給電されるようになっている。なお、送電用コイル80を備えた給電部材60は、研磨装置12によって固定的に支持されて、回転定盤14の回転中心軸上で上方に離隔して配設されていれば良い。
【0054】
なお、本実施形態では、無接触型の電力伝送手段が、補助板本体38の中央部分の上面に設けられた給電用コイル54と補助板本体38の中央部分の上方に対向配置された給電部材60とを含んで構成されていたが、それに代えて、例えば補助板本体38の下面に給電用コイル54を形成して、回転定盤14の上面に設けた送電用コイル80から給電することで無接触型の電力伝送手段を構成することも可能である。また、補助板本体38と回転定盤14との重ね合わせ面間で電力伝送する場合には無接触式を採用する必要はなく、カプラ等による接触式の通電回路で電力伝送することも可能である。そして、このように補助板本体38の下面で電力伝送を実現することにより、研磨パッド16の上面を全面に亘って研磨面30として利用することが可能となり、基板28に対する研磨領域へ支障が生ずるおそれもない。
【0055】
また、本実施形態の補助板本体38には、温度センサ66が固定的に組み付けられている。かかる温度センサ66としては、温度信号を電気信号によって取り出すことができる従来公知の各種のものが採用可能であり、研磨面の予測される温度範囲(例えば0〜80℃の程度)を計測可能であれば良く、例えば熱電対の他、白金測温抵抗体、サーミスタなどが、何れも用いられ得る。
【0056】
かかる温度センサ66は、補助板本体38に対して着脱により交換可能であっても良いが、補助板本体38の内部に埋設状態で配設されていても良い。また、温度センサ66は、補助板本体38の上面40に近い部分の温度を測定することが望ましく、補助板本体38に埋設状態で装着される場合には、補助板本体38の厚さ方向中央よりも上面40側に偏倚して配置されることが望ましい。
【0057】
また、温度センサ66の出力端子には、出力用コイル68が設けられており、かかる出力用コイル68を通じて、温度センサ66による検出電気信号が外部へ出力されるようになっている。なお、本実施形態では、温度センサ66の出力端子間に設けられた出力用コイル68が、通電式温度制御手段50の給電用コイル54と同様に、補助板本体36の中央部分において、補助板本体36の中心軸上で円環形状に延びるコイル構造をもって形成されている。そして、給電部材60に組み込まれた検出用コイル82(後述)により、温度センサ66の検出信号が、出力用コイル68と検出用コイル82との間での電磁誘導作用に基づいて外部送電され、検出信号ライン69から通電制御装置58に導かれるようになっている。
【0058】
これにより、通電式温度制御手段50への通電発熱で加熱された補助板本体38の温度を温度センサ66で検出することができるようになっている。そして、温度センサ66によって検出される補助板本体38の温度に基づいて、或いは温度センサ66の検出温度から推定される研磨パッド16の表面温度に基づいて、それが目標温度となるように、通電式温度制御手段50の通電回路52への通電が、通電制御装置58によってフィードバック制御されるようになっている。
【0059】
なお、かかるフィードバック制御に際しては、温度センサ66による検出精度を向上させるために、補助板本体38における複数位置での温度を各位置に配した複数の温度センサ66で検出して、それらの平均値を温度指標として採用する等しても良い。
【0060】
さらに、本実施形態では、研磨パッド16上にスラリー32を供給するノズル34に対して、管体の周壁を加熱するヒータチューブ70が装着されている。そして、電源56から通電制御装置58および給電ライン72を通じてヒータチューブ70に給電されることにより、ノズル34を通じて供給されるスラリー32が加熱されるようになっている。
【0061】
特に、このヒータチューブ70への供給電力も、温度センサ66の検出信号に基づいて制御されるようになっている。これにより、低温時には、単に補助板本体38の通電式温度制御手段50への通電加熱だけでなくスラリー32の加熱も併せて行われることによって、目的温度への昇温が一層速やかに実現可能とされている。
【0062】
そして、上述の如き構造とされた補助板本体38は、その上面40に対して研磨パッド16が重ね合わされて両面テープなどの公知の手段で固着されて装着される一方、その下面に開口する装着凹所46において、回転定盤14に外嵌されるようにして装着される。なお、研磨パッド16は、従来から公知のものが何れも採用可能であり、例えばCMPに際して研磨面を提供する研磨層の裏面側にクッション層が設けられた積層構造とされたもの等も採用され得る。
【0063】
また、研磨パッド16の外径寸法は、一般に規格値とされるが、多くの場合、装着される回転定盤14の上面20および補助板本体38の上面40の外径寸法と同じか小さく設定される。特に本実施形態では、補助板本体38の上面40における研磨パッド16の装着領域の略全体に亘って、通電回路52が敷設されていることが望ましい。
【0064】
更にまた、補助板本体38の装着凹所46の深さ寸法は、断熱部材48の厚さ寸法よりも大きくされており、装着凹所46の周壁が回転定盤14の外周面に嵌め合わされている。そして、補助板本体38と回転定盤14とが断熱部材48を挟んで重ね合わされており、それら補助板本体38の下面42と回転定盤14の上面20との間には、全体に亘って断熱部材48が介在されている。
【0065】
なお、研磨処理に際して研磨パッド16を回転定盤14に対して安定支持させるために、断熱部材48は、補助板本体38の下面42と回転定盤14の上面20とに対して、接着剤や両面テープなどによって固着されていることが望ましい。
【0066】
上述の如き構造とされた研磨装置12は、特定構造の研磨パッド用補助板10を備えている。この研磨パッド用補助板10は、例えば研磨パッド16の交換等に際して繰り返して使用することが出来る。また、研磨パッド16と共に研磨パッド用補助板10を回転定盤14から取り外して、研磨パッド16の研磨面の再生処理等に際して研磨パッド16の補強部材としても機能し得る。それに加えて、かかる研磨パッド用補助板10を備えた研磨装置12は、以下の如き特別な技術的効果を発揮し得る。
【0067】
先ず、図1に示されている如き研磨パッド16の装着状態下で、研磨パッド16の上方からスラリー32を供給しつつ回転定盤14および研磨ヘッド22を回転駆動させて基板28を研磨パッド16に押し付けることでCMPを実施する際、当初に研磨処理面の温度が低い場合でも速やかに昇温して適温を維持することにより、効率的で且つ安定した研磨処理を実行することが可能となる。即ち、本実施形態の研磨装置12では、回転定盤14に装着された研磨パッド用補助板10自体が備える通電式温度制御手段50で研磨パッド16を支持する上面40が直接的に加熱されることから、研磨パッド16を優れたエネルギー効率で速やかに適温を維持することが出来るのである。
【0068】
しかも、研磨パッド16は、研磨パッド用補助板10を介して、回転定盤14に載置されていることから、大型化した回転定盤14による研磨パッド16の放熱も抑えられて、研磨面における適温の維持効率の更なる向上が図られ得る。また、本実施形態では、通電回路52の配設位置は、装着面側距離に比べ支持面側距離が小さくされている。それにより、通電式温度制御手段50(通電回路52)の配設位置から、補助板本体38の上面40(パッド支持面)に至る単位時間当たりの熱伝導量に比して、補助板本体38の下面42(間接的な回転定盤14装着面)に至る単位時間当たりの熱伝導量を小さくすることが可能である。更に、本実施形態では、研磨パッド用補助板10における回転定盤14への装着面側に熱伝導率の低い断熱部材48が組み付けられている。上記のように、通電式温度制御手段50の配設位置から回転定盤14装着面に至る装着面側部材として、通電式温度制御手段50の配設位置からパッド支持面40に至るパッド支持面側部材に比して熱伝導率の小さい部材が用いられることにより、研磨パッド16から回転定盤14への伝熱による放熱が一層効果的に抑えられて、通電式温度制御手段50による熱エネルギーが研磨パッド16に対してより効率的に及ぼされ得る。
【0069】
加えて、本実施形態の研磨パッド用補助板10では、通電式温度制御手段50により研磨パッド16の支持領域の略全体に亘って略均一な且つ効率的な適温の維持が可能となることから、基板28の研磨領域を略均一に温度制御することが可能になり、安定した研磨性能が発揮され得る。
【0070】
また、本実施形態の研磨パッド用補助板10では、温度センサ66も内蔵されており、この温度センサ66の検出信号に基づいて通電式温度制御手段50の発熱が制御されることから、研磨パッド16の研磨面の温度を目的とする適温に安定して保持することが可能となり、基板28への研磨処理の更なる安定化が図られ得る。
【0071】
更にまた、本実施形態の研磨パッド用補助板10では、通電式温度制御手段50や温度センサ66に対する給電や送受信等に際してコイルの電磁誘導を利用した無接触型の伝送手段が採用されていることから、回転する研磨パッド用補助板10の通電式温度制御手段50や温度センサ66に対して、スラリー32や研磨パッド16の存在による影響を回避して、給電や送受信を行うことが可能となる。
【0072】
なお、かかる無接触型の伝送手段としては、例えば図3に示されている構造も好適に採用される。
【0073】
すなわち、研磨パッド用補助板10の中央に挿通孔74が形成されていると共に、研磨パッド用補助板10の中央から上方に突出して中央ボス部76が形成されており、かかる挿通孔74を通じて中央ボス部76が研磨パッド16よりも上方に突出されている。この中央ボス部76には、給電用コイル54と出力用コイル68が設けられている。特に本実施形態では、給電用コイル54と出力用コイル68の一方が中央ボス部76の外周面に配されていると共に、他方が中央ボス部76の上端面に配されている。
【0074】
さらに、研磨装置12の給電部材60には、下端面に開口して中央ボス部76に対して隙間を隔てて外嵌状態で被せられる嵌合凹所78が設けられており、この嵌合凹所78において送電用コイル80と検出用コイル82が設けられている。特に本実施形態では、送電用コイル80と検出用コイル82の一方が嵌合凹所78の内周面に配されていると共に、他方が嵌合凹所78の上底面に配されている。
【0075】
そして、研磨パッド用補助板10の中央ボス部76に対して給電装置60が被せられることにより、給電用コイル54と送電用コイル80、出力用コイル68と検出用コイル82が、それぞれ同心上で対向位置せしめられて電磁誘導作用で電力および信号の送受信を行うようになっている。このような無接触型の伝送手段を採用することにより、電力や信号の送受信の効率を更に向上させることが可能となる。なお、各コイル54,80,68,82の周囲には、対向面で開口する磁路を形成するヨーク部材を配することにより、送受信効率の向上を図ることも可能である。
【0076】
また、研磨パッド用補助板10の通電式温度制御手段50への給電や温度センサ66からの受信を、上述の如き無接触型の伝送手段に代えて公知のブラシ構造等を用いた有接触型の伝送手段を採用して行うことも可能である。
【0077】
具体的には、例えば図4に示されているように、通電回路52の両端に接続された一対の給電リング84,86を、研磨パッド用補助板10の上面40に同心的に形成する。また、温度センサ66の出力線に対しても送信リング88を同様に形成する。そして、これら給電リング84,86および送信リング88の形成領域を、研磨パッド用補助板10の中央に貫通形成した挿通孔74を通じて、外部に露呈させる。一方、研磨装置の給電部材において、給電リング84,86および送信リング88に向かって突出して弾性的に当接状態を維持され得る通電ブラシを設けることにより、有接触型の伝送手段を構成することが可能である。
【0078】
更にまた、図5に示されているように、研磨パッド用補助板10に対して、通電式温度制御手段50や温度センサ66だけでなく、通電制御装置58も組み込むことも可能である。例えば、温度センサ66の検出温度に基づいて通電式温度制御手段50への給電をコントロールする回路基板からなる通電制御装置58を、必要に応じて適当なケースに内蔵して、補助板本体38に内蔵することによって実現される。
【0079】
このように、通電制御装置58を研磨パッド用補助板10に組み込むことにより、研磨パッド用補助板10に対しては、外部から単に駆動電力だけを給電すれば良くなる。それ故、図5に示されているように、例えば無接触型の伝送手段を採用する場合でも、一つの給電リング90を装着すれば良く、給電および送電の構造の簡略化が図られ得る。
【0080】
因みに、本実施形態の研磨パッド用補助板10を装着して研磨面を適温に維持して温度管理を実施した場合(実施例)と、研磨パッド用補助板10を用いないで研磨面を適温に維持しない場合(比較例)との、それぞれについて、以下の同一の試験条件でCMP処理を行い、研磨精度を測定した。
【0081】
[試験条件]
研磨装置:不二越機械工業株式会社製「RDP−500」(商品型番)
研磨対象:1.5μm銅膜付きのφ200mmシリコン基板
研磨パッド:ニッタ・ハース株式会社製「IC1000」(商品型番)
クッション層「SUBA400」(商品型番)
スラリー:(株)フジミインコーポレーテッド製「PLANERLITE−7150」(商品型番)の研磨液1に対して、純水2を混合し、更に過酸化水素水(濃度30w/v%)を3v/v%混合したものを使用。(具体的には、例えば研磨液1L+純水2L+過酸化水素水90mlの混合物を使用。)
研磨条件:研磨圧力105gf/cm2 、パッドと基板(研磨対象)の回転数は何れも105rpm、スラリー供給量40ml,60ml,80mlの各条件でそれぞれ1分間研磨。
研磨精度の測定:基板の銅膜の厚みを互いに直交する2方向の径線上において等間隔に17点で、膜厚計により実測した。それら17点の測定結果の標準偏差を用いて、研磨精度を把握した。
膜厚計:オクスフォード・インスツルメント(OXFORD INSTRUMENT)社製「CMI760N」(商品型番)
【0082】
[試験結果]
(A)研磨面の温度を30℃に維持して、コントロールした実施例
(1)スラリー40mlの場合
研磨量:0.40μm
研磨量の標準偏差:0.024μm
(2)スラリー60mlの場合
研磨量:0.41μm
研磨量の標準偏差:0.023μm
(3)スラリー80mlの場合
研磨量:0.44μm
研磨量の標準偏差:0.024μm
(B)研磨面の温度を室温(20℃)のままで維持して、コントロールしない比較例
(1)スラリー40mlの場合
研磨量:0.42μm
研磨量の標準偏差:0.031μm
(2)スラリー60mlの場合
研磨量:0.41μm
研磨量の標準偏差:0.039μm
(3)スラリー80mlの場合
研磨量:0.38μm
研磨量の標準偏差:0.027μm
【0083】
上記の試験結果から、研磨面の温度を適温に維持することにより、CMP処理に際しての加工精度の向上と安定化が達成され得ることが認められる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の具体的構造はかかる第一の実施形態によって限定的に解釈されるものでない。例えば、研磨パッド用補助板10に組み付けられた通電式温度制御手段50への給電部60を、研磨パッド用補助板10の外周面上で周方向に延びるリング形状に形成して、研磨パッド用補助板10の外周面から給電することなども可能である。
【0085】
また、第一の実施形態において、断熱部材48は、必ずしも設ける必要がなく、その場合でも、研磨パッド用補助板10自体による断熱作用により、回転定盤14への熱拡散による放熱の抑制効果が発揮され得る。
【0086】
更にまた、研磨パッド用補助板10における通電回路52の配設位置も限定されるものでなく、例えば研磨パッド用補助板10の厚さ方向の中央に配設したり、研磨パッド用補助板10の上面40に露出状態で配設し、必要に応じて保護膜を付加すること等も可能である。
【0087】
また、補助板本体38の外周部分における外周カラー44は必須でなく、更に、外周カラー44を上方に向かって円環形状で突出させることにより、補助板本体38の上面40に開口して研磨パッド16の外周を位置決めし得るパッド装着用の凹所を設けることも可能である。
【0088】
また、温度センサ66は補助板本体38とは別体に設けても良い。例えば、温度センサとしての赤外放射温度計を研磨パッド16の研磨面30に対向配置することにより、温度センサを研磨パッド用補助板10の外部に設けることも可能となる。
【0089】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
10:研磨パッド用補助板、12:研磨装置、14:回転定盤、16:研磨パッド、20:上面、34:ノズル、40:表面(補助板本体上面)(直接的なパッド支持面)、42:裏面(補助板本体下面)(間接的な回転定盤装着面)、50:通電式通電式温度制御手段、58:通電制御装置、66:温度センサ、70:ヒータチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドが重ね合わされて固着状態で支持されるパッド支持面を表面に有していると共に、裏面において回転定盤に重ね合わされて着脱可能に装着される装着面を有しており、更に、通電により該パッド支持面を昇温して適温に維持する通電式温度制御手段が設けられていることを特徴とする研磨パッド用補助板。
【請求項2】
前記通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至る単位時間当たりの熱伝導量に比して、該通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る単位時間当たりの熱伝導量が小さくされている請求項1に記載の研磨パッド用補助板
【請求項3】
前記通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る装着面側部材として、該通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至るパッド支持面側部材に比して熱伝導率の小さい部材が用いられている請求項2に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項4】
前記通電式温度制御手段の配設位置から前記装着面に至る装着面側距離が、該通電式温度制御手段の配設位置から前記パッド支持面に至る支持面側距離に比して大きくされている請求項2又は3に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項5】
温度センサが内蔵されている請求項1〜4の何れかに記載の研磨パッド用補助板。
【請求項6】
前記通電式温度制御手段への通電制御装置が内蔵されている請求項1〜5の何れか1項に記載の研磨パッド用補助板。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の研磨パッド用補助板が、回転定盤の上面に重ね合わされて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする研磨装置。
【請求項8】
前記回転定盤の上方に開口するスラリ供給用ノズルが設けられていると共に、該スラリ供給用ノズルを加熱するヒータチューブが設けられている請求項7に記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−59831(P2013−59831A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200595(P2011−200595)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(599096053)東邦エンジニアリング株式会社 (11)
【Fターム(参考)】