説明

研磨パッド

【課題】 平坦化特性及び耐摩耗性に優れる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 微細気泡を有するポリウレタン発泡体からなる研磨層を含む研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン発泡体は、
(1)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーA、
(2)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーB、及び
(3)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)
との反応硬化体であり、かつイソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比が、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることを特徴とする研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッドに関するものである。本発明の研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
研磨パッドの研磨特性としては、研磨対象物の平坦性(プラナリティー)及び面内均一性に優れ、研磨速度が大きいことが要求される。研磨対象物の平坦性、面内均一性については研磨層を高弾性率化することによりある程度は改善できる。
【0004】
次世代素子への展開を考慮すると、平坦性をさらに向上できるような高硬度の研磨パッドが必要となる。平坦性を向上させるためには、無発泡系の硬い研磨パッドを用いることも可能である。しかし、このような硬いパッドを用いた場合、研磨対象物の被研磨面にスクラッチ(傷)を付けるという問題が生じる。また、無発泡系の研磨パッドは、研磨操作時にパッド表面にスラリー中の砥粒を十分に保持することができないため、研磨速度の観点からも望ましくない。さらに、高硬度の研磨パッドほど耐摩耗性が低下する傾向にあるため、これら研磨パッドでは長寿命化の要求に対して問題が生じる。
【0005】
また、非水溶性の熱可塑性重合体に水溶性物質を分散させた研磨パッドが提案されている(特許文献1)。この研磨パッドは、無発泡体であるが、研磨パッド中に分散させた水溶性物質が研磨時に溶解して研磨パッド表面に発泡体のような孔ができ、また研磨パッドが膨潤して研磨パッド表面の硬度が低下するため、スクラッチの低減と研磨速度の向上には有効である。しかしながら、該研磨パッドはパッド表面が膨潤して硬度が低下するため平坦化特性に関しては不十分である。
【0006】
また、プラナリティー向上とスクラッチ低減を両立することを目的として、有機ポリイソシアネート、水溶性高分子ポリオールを含有する高分子量ポリオール、及び低分子量ポリオールを反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーと鎖延長剤との重合体からなる研磨パッドが開示されている(特許文献2)。しかしながら、該研磨パッドもパッド表面が膨潤して硬度が低下するため、今後要求される平坦化特性を十分満足できるものではない。
【特許文献1】特開2001−47355号公報
【特許文献2】特許第3571334号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平坦化特性及び耐摩耗性に優れる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、微細気泡を有するポリウレタン発泡体からなる研磨層を含む研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン発泡体は、
(1)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーA、
(2)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーB、及び
(3)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)
との反応硬化体であり、かつイソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比が、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることを特徴とする研磨パッド、に関する。
【0010】
本発明者らは、前記2種のイソシアネート末端プレポリマーを特定の配合比で用いることにより、平坦化特性及び耐摩耗性の向上を両立することができることを見出した。
【0011】
イソシアネート末端プレポリマーA又はBを単独で使用した場合や、tanδのピーク温度が前記範囲外である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーを単独で使用又は併用した場合には、平坦化特性又は耐摩耗性のいずれかが劣り、両特性を共に向上させることはできない。
【0012】
また、イソシアネート末端プレポリマーAの配合比が50重量%未満の場合には、ポリウレタンの貯蔵弾性率が小さくなるため、研磨パッドの平坦化特性を向上させることができない。一方、イソシアネート末端プレポリマーAの配合比が90重量%を超える場合には、耐摩耗性が低下する。
【0013】
前記イソシアネート末端プレポリマーAは、数平均分子量500〜800の高分子量ポリオールを原料成分として含有し、前記イソシアネート末端プレポリマーBは、数平均分子量1500〜3000の高分子量ポリオールを原料成分として含有することが好ましい。
【0014】
また、前記イソシアネート末端プレポリマーAの原料であるイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートであり、前記イソシアネート末端プレポリマーBの原料であるイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートであることが好ましい。前記高分子量ポリオールやイソシアネート成分を用いることにより、無発泡ポリウレタンのtanδのピーク温度を上記範囲に調整しやすくなる。
【0015】
また、前記イソシアネート末端プレポリマーAのNCO重量%は9.8〜15であり、前記イソシアネート末端プレポリマーBのNCO重量%は1.5〜7であることが好ましい。プレポリマーA及びBのNCO重量%を上記範囲に調整することにより、無発泡ポリウレタンのtanδのピーク温度を上記範囲に調整しやすくなる。
【0016】
また、本発明は、イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分と鎖延長剤を含む第2成分とを混合し、硬化してポリウレタン発泡体を作製する工程(1)を含む研磨パッドの製造方法において、
前記工程(1)は、イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分にシリコン系ノニオン界面活性剤をポリウレタン発泡体中に0.05〜10重量%になるように添加し、さらに前記第1成分を非反応性気体と撹拌して前記非反応性気体を微細気泡として分散させた気泡分散液を調製した後、前記気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を混合し、硬化してポリウレタン発泡体を作製する工程であり、
前記イソシアネート末端プレポリマーは、鎖延長剤との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上であるポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーAと、鎖延長剤との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下であるポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーBとであり、かつイソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比が、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることを特徴とする研磨パッドの製造方法、に関する。
【0017】
さらに本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の研磨パッドは、微細気泡を有するポリウレタン発泡体からなる研磨層を有する。本発明の研磨パッドは、前記研磨層のみであってもよく、研磨層と他の層(例えばクッション層など)との積層体であってもよい。
【0019】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため、研磨層の形成材料として特に好ましい材料である。
【0020】
前記ポリウレタン樹脂は、(1)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーA、(2)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーB、及び(3)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応硬化体を含むものである。
【0021】
前記イソシアネート末端プレポリマーA及びBは、イソシアネート成分、及びポリオール成分(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール等)を用いて調製することができる。
【0022】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0023】
イソシアネート成分としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社製)や商品名デュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
【0024】
前記イソシアネート末端プレポリマーAを調製する場合には、芳香族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートを併用することが好ましく、特にトルエンジイソシアネートとジシクロへキシルメタンジイソシアネートを併用することが好ましい。
【0025】
前記イソシアネート末端プレポリマーBを調製する場合には、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、特にトルエンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0026】
高分子量ポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、及びポリヒドキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記イソシアネート末端プレポリマーAを調製する場合には、数平均分子量500〜800の高分子量ポリオールを用いることが好ましく、より好ましくは数平均分子量550〜750の高分子量ポリオールである。
【0028】
前記イソシアネート末端プレポリマーBを調製する場合には、数平均分子量1500〜3000の高分子量ポリオールを用いることが好ましく、より好ましくは数平均分子量1700〜2500の高分子量ポリオールである。
【0029】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、イソシアネート末端プレポリマーA及びBの原料として、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
低分子量ポリオールや低分子量ポリアミン等の配合量は特に限定されないが、前記tanδのピーク温度を目的とする範囲内に調整するために、イソシアネート末端プレポリマーA又はBの原料である全活性水素基含有化合物の5〜55モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜40モル%である。
【0032】
イソシアネート末端プレポリマーAを作製する際には、NCO重量%が9.8〜15になるように前記原料を配合することが好ましく、より好ましくはNCO重量%が11〜14.5である。一方、イソシアネート末端プレポリマーBを作製する際には、NCO重量%が1.5〜7になるように前記原料を配合することが好ましく、より好ましくはNCO重量%が2〜6.5である。
【0033】
ポリウレタン発泡体をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーA及びBの硬化には鎖延長剤として4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)を使用する。MOCAを使用することにより反応性及び得られるポリウレタン発泡体の物性が優れたものとなる。
【0034】
本発明において、イソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比は、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることが必要であり、好ましくはA/B=55/45〜85/15(重量%)である。また、所望する研磨特性を有する研磨パッドを得るためには、MOCAのアミノ基数に対するイソシアネート成分のイソシアネート基数は、0.8〜1.2であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重及び硬度が得られず、研磨特性が低下する傾向にある。
【0035】
また、前記イソシアネート末端プレポリマーA及びBとMOCAを反応して得られる無発泡ポリウレタンの40℃における貯蔵弾性率(E’)は800〜2500MPaであることが好ましく、より好ましくは900〜2000MPaである。貯蔵弾性率が800MPa未満の場合には平坦化特性が悪くなる傾向にあり、2500MPaを超える場合にはウエハ表面にスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。また、40℃におけるtanδは0.07〜0.3であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2である。tanδが0.07未満の場合には耐摩耗性が低下する傾向にあり、0.3を超える場合にはドレス性が低下して研磨速度が小さくなる傾向にある。なお、40℃における貯蔵弾性率及びtanδを評価する理由は、通常研磨時には研磨パッド表面の温度が40℃程度まで上昇するため、該温度でのポリウレタン樹脂の物性を評価する必要があるからである。
【0036】
ポリウレタン発泡体は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0037】
本発明のポリウレタン発泡体の製造は、プレポリマー法により行われる。プレポリマー法にて得られるポリウレタン樹脂は、物理的特性が優れており好適である。
【0038】
なお、イソシアネート末端プレポリマーA及びBは、分子量が800〜5000程度のものが加工性、物理的特性等が優れており好適である。
【0039】
前記ポリウレタン発泡体の製造は、イソシアネート末端プレポリマーA及びBを含む第1成分、及びMOCAを含む第2成分を混合して硬化させるものである。
【0040】
ポリウレタン発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、化学的発泡法などが挙げられる。なお、各方法を併用してもよいが、特にポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であるシリコン系ノニオン界面活性剤を使用した機械的発泡法が好ましい。該シリコン系ノニオン界面活性剤としては、SH−192、L−5340(東レダウコーニングシリコン製)、B8465(ゴールドシュミット製)等が好適な化合物として例示される。
【0041】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0042】
研磨パッド(研磨層)を構成する微細気泡タイプのポリウレタン発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
1)気泡分散液を作製する発泡工程
イソシアネート末端プレポリマーA及びBを含む第1成分にシリコン系ノニオン界面活性剤をポリウレタン発泡体中に0.05〜10重量%になるように添加し、非反応性気体の存在下で撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。前記プレポリマーが常温で固体の場合には適宜の温度に予熱し、溶融して使用する。
2)硬化剤(鎖延長剤)混合工程
上記の気泡分散液にMOCAを含む第2成分を添加、混合、撹拌して発泡反応液とする。
3)注型工程
上記の発泡反応液を金型に流し込む。
4)硬化工程
金型に流し込まれた発泡反応液を加熱し、反応硬化させる。
【0043】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0044】
非反応性気体を微細気泡状にしてシリコン系ノニオン界面活性剤を含む第1成分に分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置は特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)等が例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。
【0045】
なお、発泡工程において気泡分散液を作成する撹拌と、混合工程における鎖延長剤を添加して混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。特に混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。発泡工程と混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0046】
ポリウレタン発泡体の製造方法においては、発泡反応液を型に流し込んで流動しなくなるまで反応した発泡体を、加熱、ポストキュアすることは、発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。金型に発泡反応液を流し込んで直ちに加熱オーブン中に入れてポストキュアを行う条件としてもよく、そのような条件下でもすぐに反応成分に熱が伝達されないので、気泡径が大きくなることはない。硬化反応は、常圧で行うことが気泡形状が安定するために好ましい。
【0047】
ポリウレタン発泡体において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類、添加量は、混合工程後、所定形状の型に流し込む流動時間を考慮して選択する。
【0048】
ポリウレタン発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、撹拌するバッチ方式であっても、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して撹拌し、気泡分散液を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0049】
また、ポリウレタン発泡体の原料となるプレポリマーを反応容器に入れ、その後鎖延長剤を投入、撹拌後、所定の大きさの注型に流し込みブロックを作製し、そのブロックを鉋状、あるいはバンドソー状のスライサーを用いてスライスする方法、又は前述の注型の段階で、薄いシート状にしても良い。また、原料となる樹脂を溶解し、Tダイから押し出し成形して直接シート状のポリウレタン発泡体を得ても良い。
【0050】
前記ポリウレタン発泡体の平均気泡径は、20〜80μmであることが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。
【0051】
前記ポリウレタン発泡体のアスカーD硬度は、45〜65度であることが好ましく、より好ましくは55〜65度である。
【0052】
前記ポリウレタン発泡体の比重は、0.6〜0.87であることが好ましく、より好ましくは0.75〜0.85である。
【0053】
本発明の研磨パッド(研磨層)の被研磨材と接触する研磨表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有する。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、研磨表面に凹凸構造を形成することにより、スラリーの保持と更新をさらに効率よく行うことができ、また被研磨材との吸着による被研磨材の破壊を防ぐことができる。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0054】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有した金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0055】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.5〜2.5mmであることが好ましい。前記厚みの研磨層を作製する方法としては、前記微細発泡体のブロックをバンドソー方式やカンナ方式のスライサーを用いて所定厚みにする方法、所定厚みのキャビティーを持った金型に樹脂を流し込み硬化させる方法、及びコーティング技術やシート成形技術を用いた方法などが挙げられる。
【0056】
また、前記研磨層の厚みバラツキは100μm以下であることが好ましい。厚みバラツキが100μmを越えるものは、研磨層に大きなうねりを持ったものとなり、被研磨材に対する接触状態が異なる部分ができ、研磨特性に悪影響を与える。また、研磨層の厚みバラツキを解消するため、一般的には、研磨初期に研磨層表面をダイヤモンド砥粒を電着、融着させたドレッサーを用いてドレッシングするが、上記範囲を超えたものは、ドレッシング時間が長くなり、生産効率を低下させるものとなる。
【0057】
研磨層の厚みのバラツキを抑える方法としては、所定厚みにスライスした研磨シート表面をバフィングする方法が挙げられる。また、バフィングする際には、粒度などが異なる研磨材で段階的に行うことが好ましい。
【0058】
本発明の研磨パッドは、前記研磨層とクッションシートとを貼り合わせたものであってもよい。
【0059】
前記クッションシート(クッション層)は、研磨層の特性を補うものである。クッションシートは、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッションシートの特性によってユニフォーミティを改善する。本発明の研磨パッドにおいては、クッションシートは研磨層より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0060】
前記クッションシートとしては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0061】
研磨層とクッションシートとを貼り合わせる手段としては、例えば、研磨層とクッションシートとを両面テープで挟みプレスする方法が挙げられる。
【0062】
前記両面テープは、不織布やフィルム等の基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものである。クッションシートへのスラリーの浸透等を防ぐことを考慮すると、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。また、研磨層とクッションシートは組成が異なることもあるため、両面テープの各接着層の組成を異なるものとし、各層の接着力を適正化することも可能である。
【0063】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。該両面テープとしては、上述と同様に基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものを用いることができる。基材としては、例えば不織布やフィルム等が挙げられる。研磨パッドの使用後のプラテンからの剥離を考慮すれば、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。
【0064】
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド(研磨層)1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0065】
これにより半導体ウエハ4の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
[測定、評価方法]
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0068】
(tanδピーク温度の測定)
作製したイソシアネート末端プレポリマーa、b、c、又はdと、MOCAとをISO Index=105になるように混合し、100℃で20時間キュアを行って無発泡ポリウレタンをそれぞれ作製した。動的粘弾性測定装置(METTLER TOLEDO社製、DMA861e)を用いて下記測定条件で該無発泡ポリウレタンのtanδピーク温度を測定した。
測定条件
周波数:1Hz
温度:−60〜150℃
昇温速度:2.5℃/min
制御荷重:3N
【0069】
(無発泡ポリウレタンの40℃における貯蔵弾性率及びtanδの測定)
作製したイソシアネート末端プレポリマーa〜dとMOCAとを表1記載の割合でそれぞれ混合し、100℃で20時間キュアを行って無発泡ポリウレタンをそれぞれ作製した。動的粘弾性測定装置(METTLER TOLEDO社製、DMA861e)を用いて下記測定条件で各無発泡ポリウレタンの40℃における貯蔵弾性率(MPa)及びtanδを測定した。
測定条件
周波数:1Hz
温度:−60〜150℃
昇温速度:2.5℃/min
制御荷重:3N
【0070】
(平均気泡径測定)
作製したポリウレタン発泡体を厚み1mm以下になるべく薄くカミソリ刃で平行に切り出したものを平均気泡径測定用試料とした。試料をスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の全気泡径を測定し、平均気泡径を算出した。
【0071】
(比重測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0072】
(硬度測定)
JIS K6253−1997に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体を2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーD型硬度計)を用い、硬度を測定した。
【0073】
(研磨特性の評価)
研磨装置としてSPP600S(岡本工作機械社製)を用い、作製した研磨パッドを用いて、研磨速度の評価を行った。研磨速度は、8インチのシリコンウエハに熱酸化膜を1μm製膜したものを約0.5μm研磨して、このときの時間から算出した。この操作を繰り返し、8時間連続研磨後の研磨速度を表1に示す。酸化膜の膜厚測定には、干渉式膜厚測定装置(大塚電子社製)を用いた。研磨条件としては、スラリーとして、シリカスラリー(SS12 キャボット社製)を研磨中に流量150ml/min添加した。研磨荷重としては350g/cm、研磨定盤回転数35rpm、ウエハ回転数30rpmとした。
また、平坦性の評価は、8インチシリコンウエハに熱酸化膜を0.5μm堆積させた後、L/S(ライン・アンド・スペース)=25μm/5μm及び、L/S=5μm/25μmのパターンニングを行い、さらに酸化膜(TEOS)を1μm堆積させて、初期段差0.5μmのパターン付きウエハを製作した。このウエハを上述研磨条件にて研磨を行って、グローバル段差が2000Å以下になる時の、25μmスペースの底部分の削れ量を測定することで評価した。8時間連続研磨後の削れ量を表1に示す。平坦性は削れ量の値が小さいほど優れていると言える。
【0074】
(ドレス速度の測定)
作製した研磨パッドの表面をダイヤモンドドレッサー(旭ダイヤモンド社製、Mタイプ#100、20cmψ円形)を用いて回転させながら均一にドレッシングした。この時のドレッサー荷重は450g/cm、研磨定盤回転数は30rpm、ドレッサー回転数は15rpm、ドレス時間は100minとした。そして、ドレス前後の研磨パッドの厚さからドレス速度(μm/min)を算出した。ドレス速度は4.5以下であることが好ましい。
【0075】
製造例1
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)37.4重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート16.8重量部、数平均分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール41.6重量部、1,3−ブタンジオール4.2重量部を入れ、100℃で3時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーa(NCO重量%:14%)を得た。該プレポリマーaを原料とした無発泡ポリウレタンのtanδピーク温度は133℃であった。
【0076】
製造例2
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)18.4重量部、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール80.4重量部、1,4−ブタンジオール1.1重量部を入れ、100℃で5時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーb(NCO重量%:4.4%)を得た。該プレポリマーbを原料とした無発泡ポリウレタンのtanδピーク温度は−38℃であった。
【0077】
製造例3
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)39重量部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール56重量部、1,4−ブタンジオール5重量部を入れ、100℃で5時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーc(NCO重量%:9.4%)を得た。該プレポリマーcを原料とした無発泡ポリウレタンのtanδピーク温度は76℃であった。
【0078】
製造例4
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)22.2重量部、数平均分子量2000のポリエチレンアジペート(日本ポリウレタン製、N−4040)76.6重量部、1,4−ブタンジオール1.1重量部を入れ、100℃で5時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーd(NCO重量%:6.4%)を得た。該プレポリマーdを原料とした無発泡ポリウレタンのtanδピーク温度は3.5℃であった。
【0079】
実施例1
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa85重量部、イソシアネート末端プレポリマーb15重量部、及びシリコン系ノニオン界面活性剤(ゴールドシュミット製、B8465)3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(イハラケミカル社製、イハラキュアミンMT)38重量部を添加した。NCO重量%は12.56%である。約1分間撹拌を続けた後に、パン型のオープンモールドへ反応溶液を流し込んだ。この反応溶液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、110℃で6時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。このポリウレタン発泡体ブロックをバンドソータイプのスライサー(フェッケン社製)を用いてスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次にこのシートをバフ機(アミテック社製)を使用して、所定厚さになるように表面バフをし、厚み精度を整えたシートとした(シート厚み:1.27mm)。このバフ処理をしたシートを所定の直径(60cm)に打ち抜き、溝加工機(東邦鋼機社製)を用いてシート表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.50mm、溝深さ0.40mmの同心円状の溝加工を行って研磨層を作製した。その後、該研磨層の裏面に市販の不織布にポリウレタンを含浸させたクッション材(クッション層)を積層して研磨パッドを作製した。
【0080】
実施例2
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa60重量部、イソシアネート末端プレポリマーb40重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)30.7重量部を添加した。NCO重量%は10.16%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0081】
実施例3
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa70重量部、イソシアネート末端プレポリマーb30重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)33.6重量部を添加した。NCO重量%は11.12%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0082】
実施例4
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa85重量部、イソシアネート末端プレポリマーd15重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)38.9重量部を添加した。NCO重量%は12.86%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0083】
実施例5
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa70重量部、イソシアネート末端プレポリマーd30重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)35.4重量部を添加した。NCO重量%は11.72%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0084】
実施例6
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa60重量部、イソシアネート末端プレポリマーd40重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)33.1重量部を添加した。NCO重量%は10.96%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0085】
比較例1
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa100重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)42.3重量部を添加した。NCO重量%は14%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0086】
比較例2
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa30重量部、イソシアネート末端プレポリマーb70重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)22重量部を添加した。NCO重量%は7.28%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0087】
比較例3
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーa30重量部、イソシアネート末端プレポリマーc70重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)32.6重量部を添加した。NCO重量%は10.78%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0088】
比較例4
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーb100重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)13.3重量部を添加した。NCO重量%は4.4%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0089】
比較例5
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーc100重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)28.4重量部を添加した。NCO重量%は9.4%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0090】
比較例6
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーb40重量部、イソシアネート末端プレポリマーc60重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)22.4重量部を添加した。NCO重量%は7.4%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0091】
比較例7
反応容器にイソシアネート末端プレポリマーd100重量部、及び前記シリコン系ノニオン界面活性剤3重量部を入れ、温度を80℃に調整した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。そこへ予め120℃で溶融した前記4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)19.3重量部を添加した。NCO重量%は6.4%である。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0092】
実施例及び比較例にて得られた研磨パッドを使用して研磨試験を行い、研磨特性を評価した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0093】
表1の結果より、本発明の研磨パッドは平坦化特性及び耐摩耗性が共に良好であるが、比較例の研磨パッドは平坦化特性又は耐摩耗性のいずれかが劣っていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図
【符号の説明】
【0095】
1:研磨パッド(研磨層)
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:研磨対象物(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細気泡を有するポリウレタン発泡体からなる研磨層を含む研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン発泡体は、
(1)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーA、
(2)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下である無発泡ポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーB、及び
(3)4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)
との反応硬化体であり、かつイソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比が、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
イソシアネート末端プレポリマーAは、数平均分子量500〜800の高分子量ポリオールを原料成分として含有し、イソシアネート末端プレポリマーBは、数平均分子量1500〜3000の高分子量ポリオールを原料成分として含有する請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
イソシアネート末端プレポリマーAの原料であるイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートであり、イソシアネート末端プレポリマーBの原料であるイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートである請求項1又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
イソシアネート末端プレポリマーAのNCO重量%は9.8〜15であり、イソシアネート末端プレポリマーBのNCO重量%は1.5〜7である請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分と鎖延長剤を含む第2成分とを混合し、硬化してポリウレタン発泡体を作製する工程(1)を含む研磨パッドの製造方法において、
前記工程(1)は、イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分にシリコン系ノニオン界面活性剤をポリウレタン発泡体中に0.05〜10重量%になるように添加し、さらに前記第1成分を非反応性気体と撹拌して前記非反応性気体を微細気泡として分散させた気泡分散液を調製した後、前記気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を混合し、硬化してポリウレタン発泡体を作製する工程であり、
前記イソシアネート末端プレポリマーは、鎖延長剤との反応によりtanδのピーク温度が100℃以上であるポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーAと、鎖延長剤との反応によりtanδのピーク温度が40℃以下であるポリウレタンを形成するイソシアネート末端プレポリマーBとであり、かつイソシアネート末端プレポリマーAとイソシアネート末端プレポリマーBの配合比が、A/B=50/50〜90/10(重量%)であることを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−60360(P2008−60360A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235978(P2006−235978)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】