説明

研磨パッド

【課題】 相分離構造を有する研磨層を有しており、研磨速度が大きく、平坦化特性に優れ、スクラッチの発生を抑制できる研磨パッドを提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記研磨層は、イソシアネート成分及びポリエステル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(a)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート成分及びポリエーテル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(b)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤を含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体により形成されており、前記反応硬化体は相分離構造を有することを特徴とする研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッドに関するものである。本発明の研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
研磨パッドの研磨特性としては、被研磨材の平坦性(プラナリティー)及び面内均一性に優れ、研磨速度が大きいことが要求される。被研磨材の平坦性及び面内均一性は、研磨層を高弾性率化することによりある程度改善できる。また、研磨速度は、気泡を含有する発泡体にしてスラリーの保持量を多くすることにより向上できる。
【0004】
例えば、特許文献1には、段差を有する被平坦化材を平坦化するために用いる研磨布であって、研磨面が部分的に表面硬度の異なる部分を有し、該部分的に表面硬度の異なる部分は、表面部を構成する樹脂の相分離により形成されるものであることを特徴とする研磨布が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、平坦化するのに有用な研磨パッドであって、エラストマー性ポリマーを中に分散させた、室温を超えるガラス転移温度を有するポリマーマトリックスを含み、前記エラストマー性ポリマーが、少なくとも一つの方向に少なくとも0.1μmの平均長さを有し、研磨パッドの1〜45容量%を構成し、室温未満のガラス転移温度を有するものであることを特徴とする研磨パッドが開示されている。
【0006】
次世代素子への展開を考慮すると、平坦性をさらに向上できるような高硬度の研磨パッドが必要となる。平坦性を向上させるためには、無発泡系の硬い研磨パッドを用いることも可能である。しかし、このような硬いパッドを用いた場合、被研磨材の被研磨面にスクラッチ(傷)が生じやすいという問題がある。
【0007】
特許文献3には、スクラッチの発生を抑制することを目的として、ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有するCu膜研磨用研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とを原料成分として含有するイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤との反応硬化物であり、かつ前記高分子量ポリオール成分はポリエステルポリオールを30重量%以上含有することを特徴とするCu膜研磨用研磨パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−11050号公報
【特許文献2】特開2008−173760号公報
【特許文献3】特開2007−42923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、相分離構造を有する研磨層を有しており、研磨速度が大きく、平坦化特性に優れ、スクラッチの発生を抑制できる研磨パッドを提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記研磨層は、イソシアネート成分及びポリエステル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(a)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート成分及びポリエーテル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(b)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤を含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体により形成されており、前記反応硬化体は相分離構造を有することを特徴とする研磨パッド、に関する。
【0012】
本発明者らは、ポリエステル系ポリオールとポリエーテル系ポリオールが互いに相溶しない性質に着目して、別々に合成したイソシアネート成分及びポリエステル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(a)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(A)と、イソシアネート成分及びポリエーテル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(b)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(B)とを原料として用い、これらと鎖延長剤等とを反応させて硬化させることにより、マクロ的な相分離構造を有する反応硬化体が得られることを見出した。そして、当該反応硬化体を用いて研磨層を形成することにより、研磨速度が大きく、平坦化特性に優れ、スクラッチの発生を抑制できる研磨パッドが得ることができることを見出した。詳しくは、前記研磨層は、コンディショナーを用いたドレス処理(切削処理)によって表面目立てが良好に行われ、それにより研磨性能が向上するため研磨速度が大きい。また、前記研磨層は、全体としては高硬度であるため平坦化特性に優れており、そして部分的に相分離による低硬度領域を有するためスクラッチの発生を効果的に抑制できる。
【0013】
前記相分離構造は、島部と海部を有しており、島部の平均最大長さが0.5〜100μmであることが好ましい。相分離構造が、島部と海部とを有する海島構造である場合には上記効果がより向上する。島部の平均最大長さが0.5μm未満の場合には、一般的なポリウレタン樹脂のハードセグメント及びソフトセグメントからなるミクロ的な相分離構造に近い相分離構造になるため、ドレス処理による研磨層の表面目立て性が低下し、研磨速度の向上効果が不十分になる傾向にある。一方、100μmを超える場合には、研磨層全体の剛性が低下するため、平坦化特性の向上効果が不十分になる傾向にある。
【0014】
前記島部は、イソシアネート末端プレポリマー(A)を主成分とする反応硬化体により形成されており、前記海部は、イソシアネート末端プレポリマー(B)を主成分とする反応硬化体により形成されていることが好ましい。イソシアネート末端プレポリマー(A)を主成分とする反応硬化体は、その構成成分であるポリエステル系ポリオールのエステル基の加水分解が生じることにより、イソシアネート末端プレポリマー(B)を主成分とする反応硬化体よりも剛性が低下しやすい。そのため、島部よりも大きな領域を占める海部をイソシアネート末端プレポリマー(A)を主成分とする反応硬化体により形成すると、研磨時に研磨層全体の剛性が低下しやすくなり、平坦化特性の向上効果が不十分になる傾向にある。
【0015】
前記プレポリマー原料組成物(a)及び(b)に含まれる高分子量ポリオール全重量に対するポリエステル系ポリオールを構成するオキシカルボニル基の全重量は8〜43重量%であることが好ましい。オキシカルボニル基の含有率が8重量%未満の場合には、マクロ的な相分離構造を有する反応硬化体を形成し難くなる傾向にある。一方、43重量%を超える場合には、マクロ的な相分離構造を有する反応硬化体を形成し難くなるだけでなく、エステル基の加水分解が起こりやすくなり、研磨層の剛性が低下するため平坦化特性の向上効果が不十分になる傾向にある。
【0016】
前記ポリエステル系ポリオールは、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、及びポリヘキサメチレンアジペートグリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例12で作製した研磨層の表面を走査型プローブ顕微鏡で測定した画像である。
【図3】比較例8で作製した研磨層の表面を走査型プローブ顕微鏡で測定した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する。本発明の研磨パッドは、前記研磨層のみであってもよく、研磨層と他の層(例えばクッション層など)との積層体であってもよい。
【0020】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため、研磨層の形成材料として特に好ましい材料である。
【0021】
前記研磨層は、イソシアネート成分及びポリエステル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(a)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート成分及びポリエーテル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(b)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤を含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体により形成されており、前記反応硬化体は相分離構造を有している。
【0022】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。これらのうち、イソシアネート末端プレポリマー(A)を作製する場合には、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、特にトルエンジイソシアネートを用いることが好ましい。イソシアネート末端プレポリマー(B)を作製する場合には、芳香族ジイソシアネートと脂環式ジイソシアネートとを併用することが好ましく、特にトルエンジイソシアネートとジシクロへキシルメタンジイソシアネートとを併用することが好ましい。
【0023】
上記ジイソシアネートの他に、3官能以上の多官能イソシアネートを用いてもよい。
【0024】
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペ−トグリコール、及びポリカプロラクトンポリオ−ルなどのポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、及びエチレンカーボネ−トを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させてなる生成物などのポリエステルポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、及びポリヘキサメチレンアジペートグリコールからなる群より選択される少なくとも1種のポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0025】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、得られるポリウレタン樹脂の相分離構造及び粘弾性特性の観点から200〜5000であることが好ましく、より好ましくは500〜2000である。数平均分子量が200未満であると、相分離構造を形成し難くなる傾向にある。一方、数平均分子量が5000を超えると、得られるポリウレタン樹脂が軟らかくなり、平坦化特性が悪化する傾向にある。
【0026】
プレポリマー原料組成物(a)中には、高分子量ポリオールとして前記ポリエステル系ポリオールのみを添加することが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で他の公知の高分子量ポリオール(数平均分子量が200〜5000程度のもの)を添加してもよい。ただし、他の高分子量ポリオールを併用する場合には、マクロ的な相分離構造を形成するために、前記ポリエステル系ポリオールは、プレポリマー原料組成物(a)及び(b)に含まれる高分子量ポリオール全体に対してポリエステル系ポリオールを構成するオキシカルボニル基の全重量が8〜43重量%になるように配合することが好ましい。
【0027】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコ−ル(PTMG)及びポリヘキサメチレンエーテルグリコール(PHMG)などのポリエーテルポリオール;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールなどのジオールと、ホスゲン又はジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)もしくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などのポリエーテルポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることが好ましい。
【0028】
ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、得られるポリウレタン樹脂の粘弾性特性の観点から200〜5000であることが好ましく、より好ましくは500〜2000である。数平均分子量が200未満であると、得られるポリウレタン樹脂が硬く、脆くなるため、スクラッチの発生を抑制することが難しくなったり、パッド寿命が短くなる傾向にある。一方、数平均分子量が5000を超えると、得られるポリウレタン樹脂が軟らかくなり、平坦化特性が悪化する傾向にある。
【0029】
プレポリマー原料組成物(b)中には、高分子量ポリオールとして前記ポリエーテル系ポリオールのみを添加することが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で他の公知の高分子量ポリオール(数平均分子量が200〜5000程度のもの)を添加してもよい。
【0030】
プレポリマー原料組成物(a)及び(b)中には、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン、及びアルコールアミンなどの低分子量成分を添加してもよい。特に、プレポリマー原料組成物(b)中に低分子量成分を添加することが好ましい。
【0031】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
アルコールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
プレポリマー原料組成物(b)中の低分子量成分の配合量は特に限定されず、研磨パッド(研磨層)に要求される特性により適宜決定されるが、プレポリマー原料組成物(b)中の活性水素基含有化合物全体に対して10〜70モル%であることが好ましい。
【0035】
また、プレポリマー原料組成物(a)及び(b)に含まれる高分子量ポリオール全重量に対するポリエステル系ポリオールを構成するオキシカルボニル基の全重量が8〜43重量%になるように各成分を配合することが好ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂をプレポリマー法で製造する場合には、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオール又は低分子量ポリアミンなどを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0037】
イソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤の比は、各々の分子量や研磨パッドの所望物性などにより種々変え得る。イソシアネート末端プレポリマー(A)の添加量は、イソシアネート末端プレポリマー(B)100重量部に対して15〜570重量部であることが好ましい。また、所望する研磨特性を有する研磨パッドを得るためには、鎖延長剤の活性水素基(水酸基、アミノ基)数に対する前記プレポリマーのイソシアネート基数(NCO Index)は、0.8〜1.2であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重及び硬度が得られず、研磨特性が低下する傾向にある。
【0038】
ポリウレタン樹脂(反応硬化体)は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂は、プレポリマー法により製造する。プレポリマー法にて得られるポリウレタン樹脂は、物理的特性が優れており好適である。
【0040】
なお、イソシアネート末端プレポリマー(A)及び(B)は、分子量が300〜5000程度のものが加工性、物理的特性等が優れており好適である。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂は、イソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤を含むポリウレタン原料組成物を反応硬化させて製造する。
【0042】
ポリウレタン樹脂は発泡体であってもよく、無発泡体であってもよい。ポリウレタン樹脂の製造は、各成分を計量して容器に投入し、撹拌するバッチ方式であってもよく、または撹拌装置に各成分を連続供給して撹拌し、混合液を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0043】
また、イソシアネート末端プレポリマー(A)及び(B)を反応容器に入れ、その後鎖延長剤を投入、撹拌後、所定の大きさの注型に流し込んでポリウレタン樹脂ブロックを作製し、そのブロックをスライサーを用いてスライスして研磨層を製造してもよく、又は前述の注型の段階で、薄いシート状に加工して研磨層を製造してもよい。また、原料となるポリウレタン樹脂を溶解し、Tダイから押し出し成形して直接シート状の研磨層を得てもよい。
【0044】
ポリウレタン発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法(メカニカルフロス法を含む)、化学的発泡法などが挙げられる。なお、各方法を併用してもよいが、特にポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用した機械的発泡法が好ましい。シリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B8443、B8465(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン原料組成物中に0.05〜10重量%添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0045】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0046】
研磨パッド(研磨層)を構成する微細気泡タイプのポリウレタン発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
1)気泡分散液を作製する発泡工程
イソシアネート末端プレポリマー(A)及び(B)を含む第1成分にシリコン系界面活性剤をポリウレタン発泡体中に0.05〜10重量%になるように添加し、非反応性気体の存在下で撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。前記プレポリマーが常温で固体の場合には適宜の温度に予熱し、溶融して使用する。
2)硬化剤(鎖延長剤)混合工程
上記の気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を添加、混合、撹拌して発泡反応液とする。 3)注型工程
上記の発泡反応液を金型に流し込む。
4)硬化工程
金型に流し込まれた発泡反応液を加熱し、反応硬化させる。
【0047】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0048】
非反応性気体を微細気泡状にしてシリコン系界面活性剤を含む第1成分に分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置は特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)等が例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。目的とするポリウレタン発泡体を得るためには、撹拌翼の回転数は500〜2000rpmであることが好ましく、より好ましくは800〜1500rpmである。また、撹拌時間は目的とする密度に応じて適宜調整する。
【0049】
なお、発泡工程において気泡分散液を作成する撹拌と、混合工程における鎖延長剤を添加して混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。特に混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。発泡工程と混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0050】
ポリウレタン発泡体の製造方法においては、発泡反応液を型に流し込んで流動しなくなるまで反応した発泡体を、加熱、ポストキュアすることは、発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。金型に発泡反応液を流し込んで直ちに加熱オーブン中に入れてポストキュアを行う条件としてもよく、そのような条件下でもすぐに反応成分に熱が伝達されないので、気泡径が大きくなることはない。硬化反応は、常圧で行うことが気泡形状が安定するために好ましい。
【0051】
なお、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類、添加量は、混合工程後、所定形状の型に流し込む流動時間を考慮して選択する。
【0052】
ポリウレタン発泡体の平均気泡径は、20〜70μmであることが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。
【0053】
ポリウレタン発泡体の場合、アスカーD硬度は35〜65度であることが好ましく、より好ましくは40〜65度である。
【0054】
ポリウレタン無発泡体の場合、アスカーD硬度は45〜75度であることが好ましく、より好ましくは45〜65度である。
【0055】
ポリウレタン発泡体の比重は0.4〜1.0であることが好ましい。
【0056】
上記ポリウレタン樹脂からなる研磨層は相分離構造を有しており、特に平均最大長さが0.5〜100μmである島部と、海部とを有する海島構造を有することが好ましい。島部の平均最大長さは20〜70μmであることがより好ましい。また、島部の表面形状は円形であることが好ましい。
【0057】
また、海島構造の場合、島部は、イソシアネート末端プレポリマー(A)を主成分とする反応硬化体により形成されており、海部は、イソシアネート末端プレポリマー(B)を主成分とする反応硬化体により形成されていることが好ましい。
【0058】
本発明の研磨パッド(研磨層)の被研磨材と接触する研磨表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、研磨表面に凹凸構造を形成することにより、スラリーの保持と更新をさらに効率よく行うことができ、また被研磨材との吸着による被研磨材の破壊を防ぐことができる。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0059】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有した金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0060】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.5〜2.5mmであることが好ましい。前記厚みの研磨層を作製する方法としては、前記微細発泡体のブロックをバンドソー方式やカンナ方式のスライサーを用いて所定厚みにする方法、所定厚みのキャビティーを持った金型に樹脂を流し込み硬化させる方法、及びコーティング技術やシート成形技術を用いた方法などが挙げられる。
【0061】
また、研磨層の厚みバラツキは100μm以下であることが好ましい。厚みバラツキが100μmを越えるものは、研磨層に大きなうねりを持ったものとなり、被研磨材に対する接触状態が異なる部分ができ、研磨特性に悪影響を与える。また、研磨層の厚みバラツキを解消するため、一般的には、研磨初期に研磨層表面をダイヤモンド砥粒を電着、融着させたドレッサーを用いてドレッシングするが、上記範囲を超えたものは、ドレッシング時間が長くなり、生産効率を低下させるものとなる。
【0062】
研磨層の厚みのバラツキを抑える方法としては、所定厚みにスライスした研磨シート表面をバフィングする方法が挙げられる。また、バフィングする際には、粒度などが異なる研磨材で段階的に行うことが好ましい。
【0063】
本発明の研磨パッドは、前記研磨層とクッションシートとを貼り合わせたものであってもよい。
【0064】
クッションシート(クッション層)は、研磨層の特性を補うものである。クッションシートは、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッションシートの特性によってユニフォーミティを改善する。本発明の研磨パッドにおいては、クッションシートは研磨層より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0065】
クッションシートとしては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0066】
研磨層とクッションシートとを貼り合わせる手段としては、例えば、研磨層とクッションシートとを両面テープで挟みプレスする方法が挙げられる。
【0067】
両面テープは、不織布やフィルム等の基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものである。クッションシートへのスラリーの浸透等を防ぐことを考慮すると、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。また、研磨層とクッションシートは組成が異なることもあるため、両面テープの各接着層の組成を異なるものとし、各層の接着力を適正化することも可能である。
【0068】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。該両面テープとしては、上述と同様に基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものを用いることができる。基材としては、例えば不織布やフィルム等が挙げられる。研磨パッドの使用後のプラテンからの剥離を考慮すれば、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。
【0069】
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド(研磨層)1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0070】
これにより半導体ウエハ4の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
[測定、評価方法]
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0073】
(オキシカルボニル基の含有率の算出方法)
オキシカルボニル基の含有率は下記式により算出する。
オキシカルボニル基の含有率(重量%)={(ポリエステル系ポリオールの重量部)×(ポリエステル系ポリオールの繰り返し単位中のオキシカルボニル基の重量比)×100}/(プレポリマー原料組成物(a)及び(b)に含まれる高分子量ポリオールの全重量部)
【0074】
(島部の平均最大長さの測定)
作製したポリウレタン発泡体又は無発泡体を切り出し(大きさ任意)、−80℃の環境下において、ウルトラミクロトーム(ライカ社製、LEICA EM UC6)を用いて、ダイヤモンドナイフにて平滑面を切り出した。その後、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、SPM−9500)及びカンチレバー(オリンパス社製、OMCL−AC200TS−R3、ばね定数:9N/m、共振周波数:150Hz)を用い、カンチレバーの走査速度1Hz、測定温度23℃の条件下で、粘弾性測定システムの位相検出モードにて当該平滑面(測定範囲:30μm×30μm)を測定した。得られた画像の濃淡範囲を2Vとした際に、濃淡により島部が明確に判断できる画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて表示し、測定範囲30μm×30μmにおける島部10個の最大長さをそれぞれ測定し、それらの値から平均最大長さを算出した。
【0075】
(平均気泡径の測定)
作製したポリウレタン発泡体を厚み1mm以下になるべく薄くミクロトームカッターで平行に切り出したものを平均気泡径測定用試料とした。試料をスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の全気泡径を測定し、平均気泡径(μm)を算出した。
【0076】
(硬度の測定)
JIS K6253−1997に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体又は無発泡体を2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーD型硬度計)を用い、任意の10箇所における硬度を測定し、その平均値を求めた。
【0077】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡体又は無発泡体を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0078】
(研磨特性の評価)
研磨装置としてSPP600S(岡本工作機械社製)を用い、作製した研磨パッドを用いて、研磨特性の評価を行った。研磨速度は、8インチのシリコンウエハ上に熱酸化膜2000Å、Ta100Å、TaN100Å、及びCu−seed800Åをこの順で堆積させ、その上にCuメッキ25000Åを製膜したものを1枚につき60秒研磨し、このときの研磨量から算出した。平均研磨速度は4枚目、8枚目、及び12枚目の研磨速度から算出した。Cu膜の膜厚測定には、非接触抵抗測定システム(ナプソン社製、Model−NC−80M)を用いた。研磨条件としては、スラリーとして、Cu用中性スラリー(フジミインコーポレット社製、PL7101)に過酸化水素を1重量%添加したものを研磨中に流量200ml/minにて添加した。研磨荷重としては2psi、研磨定盤回転数70rpm、ウエハ回転数70rpmとした。なお、研磨前に、ダイヤモンド砥粒ディスク(旭ダイヤ社製、M#100)を用いて研磨パッド表面を30分間ドレス処理した。ドレス処理条件は、ディスク荷重0.6psi、研磨定盤回転数30rpm、ディスク回転数15rpmとした。
【0079】
平坦化特性(ディッシング)の評価は、8インチパターンウエハ(SEMATECH社製、854パターンウエハ)を用いて、前述条件にて研磨を行ってCu膜を完全に除去した。Cu膜の完全除去の測定は、研磨中、研磨温度をモニターし研磨温度が低下した瞬間を研磨終点とし、研磨終点から10秒のオーバーポリッシュを実施した後に研磨を停止した。その後、段差形状測定装置(KLAテンコール社製、P−15)を用いてL/S=100μm/100μmにおける段差(Å)を測定した。
【0080】
スクラッチの評価は、前述条件にて研磨した後にウエハ洗浄装置(MAT社製、MATZAB−8W2MC)を用いてアルカリ洗浄液(三洋化成工業社製、ジャスペン)でウエハを洗浄し、洗浄したウエハを表面欠陥検査装置(KLAテンコール社製、サーフスキャンSP1TBI)を用いて、EE(Edge Exclusion)5mm領域のCu膜上に0.24〜2.0μmの条痕がいくつあるかを測定した。
【0081】
実施例1
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)934重量部、数平均分子量1000のポリエチレンアジペートグリコール2666重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマー(A)を得た。
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1229重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート272重量部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール1901重量部、ジエチレングリコール198重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマー(B)を得た。
前記プレポリマー(A)15重量部、前記プレポリマー(B)85重量部、及びシリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8465)3重量部を重合容器内に加えて混合し、70℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃に溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)25.1重量部を添加した(NCO Index:1.1)。該混合液を約70秒間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。
約80℃に加熱した前記ポリウレタン発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1.27mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径61cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.50mm、溝深さ0.40mmの同心円状の溝加工を行い研磨層を得た。研磨層表面は、島部と海部とを有する海島構造であり、島部の形状は円形であった。この研磨層の溝加工面と反対側の面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼りつけた。更に、コロナ処理をしたクッションシート(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)の表面をバフ処理し、それを前記両面テープにラミ機を使用して貼り合わせた。さらに、クッションシートの他面にラミ機を使用して両面テープを貼り合わせて研磨パッドを作製した。
【0082】
実施例2〜11、比較例1〜3、7
表1及び2に記載の配合を採用した以外は実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。実施例2〜11の研磨層は島部と海部とを有する海島構造であり、島部の形状は円形であった。比較例1〜3、7の研磨層は相分離構造を有していなかった。
【0083】
実施例12
実施例1と同様の方法でイソシアネート末端プレポリマー(A)及び(B)を得た。前記プレポリマー(A)25重量部、及び前記プレポリマー(B)75重量部を遊星式撹拌脱泡装置で混合し、脱泡した。その後、120℃に溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)20.4重量を混合液に加え(NCO Index:1.1)、遊星式撹拌脱泡装置で混合し、脱泡してポリウレタン原料組成物を調製した。該組成物を縦横800mm、深さ2.5mmのオープンモールド(注型容器)に流し込み、100℃で16時間ポストキュアを行い、無発泡ポリウレタンシートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1.27mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径61cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.50mm、溝深さ0.40mmの同心円状の溝加工を行い研磨層を得た。研磨層表面は、島部と海部とを有する海島構造であり、島部の形状は円形であった。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。
【0084】
比較例4〜6
表2に記載の配合を採用した以外は実施例12と同様の方法で研磨パッドを作製した。比較例4〜6の研磨層は相分離構造を有していなかった。
【0085】
比較例8
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1081重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート136重量部、数平均分子量1000のポリエチレンアジペートグリコール1333重量部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール950重量部、ジエチレングリコール99重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマー(C)を得た。
前記プレポリマー(C)100重量部、及びシリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8465)3重量部を重合容器内に加えて混合し、70℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃に溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)25.1重量部を添加した(NCO Index:1.1)。該混合液を約70秒間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。その後、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。研磨層は相分離構造を有していなかった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表1の結果から明らかなように、本発明の研磨パッドは、研磨速度、及び平坦化特性に優れており、ウエハ表面のスクラッチの発生も抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0089】
1:研磨パッド(研磨層)
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:被研磨材(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記研磨層は、イソシアネート成分及びポリエステル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(a)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(A)、イソシアネート成分及びポリエーテル系ポリオールを含むプレポリマー原料組成物(b)を反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー(B)、及び鎖延長剤を含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体により形成されており、前記反応硬化体は相分離構造を有することを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
相分離構造は、島部と海部を有しており、島部の平均最大長さが0.5〜100μmである請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
プレポリマー原料組成物(a)及び(b)に含まれる高分子量ポリオール全重量に対するポリエステル系ポリオールを構成するオキシカルボニル基の全重量が8〜43重量%である請求項1又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
ポリエステル系ポリオールは、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、及びポリヘキサメチレンアジペートグリコールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
ポリエーテル系ポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−194563(P2011−194563A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21994(P2011−21994)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】