説明

研磨材用両面感圧接着シート

【課題】プラスチックシート基材と感圧接着剤層とからなる研磨材用両面感圧接着シートであって、研磨液に長時間曝される前後において大きな接着力を維持し得る研磨材用両面感圧接着シートを提供すること。
【解決手段】プラスチックシート基材の少なくとも一方の面に、アクリル系ポリマーとフェノール骨格を有する粘着付与樹脂とを含有する感圧接着剤から形成される、ガラス転移温度が−50〜10℃であり、厚さ20〜100μmの感圧接着剤層を積層してなる研磨材用両面感圧接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨材用両面感圧接着シートに関する。詳しくは、研磨液への浸漬後において研磨材への密着性が低下し難い、プラスチックシート基材と感圧接着剤層とからなる研磨材用両面感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、光学機器、半導体等の分野では様々な部品、部材の表面研磨が行われている。例えば、液晶ディスプレイ用ガラス、ハードディスク用基板、光学レンズ、シリコンウェハや集積回路等の被研磨体は、硬質樹脂パッドや研磨布等の研磨材が両面感圧接着シートを用いて取り付けられた研磨装置と研磨液を用いて室温から約80℃雰囲気下で研磨される。
【0003】
一般的に、研磨材と両面感圧接着シートは予め一体化されて研磨部材を形成しており、研磨装置に装着直前に、感圧接着シートの、研磨材が貼り付けられていない側に貼り合わされている剥離シートを剥がして研磨装置に貼り付けられる。
研磨部材の基本的積層構成は、研磨材/両面感圧接着シート、あるいは研磨材/両面感圧接着シート/クッション性基材/両面感圧接着シートである。
さらに、両面感圧接着シートの積層構成は、感圧接着剤層/基材シート/感圧接着剤層であり、製品形態では少なくとも一方の感圧接着剤層に片面あるいは両面剥離処理された剥離シートが積層されている。
【0004】
研磨液の性状は被研磨体の種類によるが、pHが約1〜12の懸濁水溶液が使用され、過酸化水素を含有する場合もある。
両面感圧接着シートは、研磨液に曝されながら、時には加熱条件下において使用される。
このような過酷な条件下では、研磨時に研磨材あるいは研磨装置から剥がれてしまう問題が生じやすい。特に、研磨材がシリコーンオイル等の整泡剤や撥水剤を含有する場合が多いため、感圧接着剤層と研磨材との密着性が低下するという問題があり、貼付直後の密着性向上を目的として様々な工夫がなされてきた。
【0005】
一方、近年では研磨効率の向上を言われており、長時間連続使用される場合が多くなってきた。
従来の両面感圧接着シートは短時間で使用される場合には、研磨材や研磨装置との密着性が低下することなく特に問題は生じ難かったが、長時間研磨液に暴露されることで密着性が徐々に低化し、研磨時に加わる力に耐えきれず、研磨材あるいは研磨装置から剥がれてしまい高価な被研磨体を損傷してしまう不具合が頻発するようになった。
【0006】
特許文献1〜3には、ドライ条件下における特に研磨材への密着性を向上させるための方法が提案されている。
特開2001−354926号公報(特許文献1)の実施例1、2には、水酸基系熱活性型アクリル接着剤とフェノール樹脂とからなるガラス転移温度が20℃以上のホットメルト接着剤を用いる旨が記載されている。熱活性アクリル系接着剤が有する官能基が極性の低い水酸基であるために、研磨材との密着性は徐々に低下する。さらに接着剤層のガラス転移温度が高く硬いため、研磨中の振動に耐え切れず研磨材から剥離してしまいやすい。
【0007】
また、特開2002−285114号公報(特許文献2)の実施例1には、アクリル系重合体と、アクリル樹脂と不相溶の粘着付与樹脂とからなる粘着剤を用いて不織布芯材の両面テープを得る旨が記載されている。アクリル系共重合体の主成分にアクリル酸2−エチルヘキシルを用いているために粘着剤は柔らかくなり凝集力が不十分である。また、粘着付与樹脂がアクリル系共重合体と不相溶のロジンエステルを用いており、さらに不織布を芯材として用いているため、長時間研磨における研磨液耐性が不十分であり、テープとしての硬さが不十分である。
【0008】
また、特開2003−64327号公報(特許文献3)には、熱硬化型粘着剤を用いたテープを得る旨が記載されている。両面テープを作製する際、熱硬化反応が生じる温度で熱硬化型粘着剤組成物を塗工乾燥しており、研磨材に貼り付けるまでの性状が不安定である。さらに研磨材に貼り付ける際、熱硬化反応を生じさせるために高温でスピードを遅くしているために、研磨部材の生産性が著しく悪い。
【特許文献1】特開2001−354926号公報
【特許文献2】特開2002−285114号公報
【特許文献3】特開2003−64327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、プラスチックシート基材と感圧接着剤層とからなる研磨材用両面感圧接着シートであって、研磨液に長時間曝される前後において大きな接着力を維持し得る研磨材用両面感圧接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究し、本発明に至った。
即ち、第1の発明は、プラスチックシート基材の少なくとも一方の面に、アクリル系ポリマーとフェノール骨格を有する粘着付与樹脂とを含有する感圧接着剤から形成される、ガラス転移温度が−50〜10℃であり、厚さ20〜100μmの感圧接着剤層を積層してなる研磨材用両面感圧接着シートに関する。
【0011】
また、第2の発明は、感圧接着剤が、アクリル系ポリマー100重量部に対して、フェノール骨格を有する粘着付与樹脂を5〜50重量部含有することを特徴とする第1の発明の研磨材用両面感圧接着シートに関する。
【0012】
さらに、第3の発明は、アクリル系ポリマーが、ガラス転移温度が0℃以下のポリマーを形成し得るラジカル重合性不飽和モノマーを重合してなり、重量平均分子量が40万〜90万であって、前記ラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中、アクリル酸ブチル50〜95重量%を含有することを特徴とする第1又は第2の発明の研磨材用両面感圧接着シートに関する。
【0013】
さらにまた、第4の発明は、ラジカル重合性不飽和モノマーが、アクリル酸を必須成分とすることを特徴とする第3の発明の研磨材用両面感圧接着シートに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、プラスチックシート基材と感圧接着剤層とからなる研磨材用両面感圧接着シートであって、研磨液に長時間曝される前後において大きな接着力を維持し得る研磨材用両面感圧接着シートを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、プラスチックシート基材の少なくとも一方の面に、アクリル系ポリマーとフェノール骨格を有する粘着付与樹脂とを含有する感圧接着剤から形成される、ガラス転移温度が−50〜10℃であり、厚さ20〜100μmの感圧接着剤層を積層してなる両面感圧接着シートである。
【0016】
本発明においては、プラスチックシート基材の両面に前記感圧接着剤層が設けられていても良いし、あるいは、一方の面のみに前記感圧接着剤層を設ける場合には、他方の面には、前記感圧接着剤層とは異なる感圧接着剤層が設けられる。
【0017】
本発明におけるプラスチックシート基材としては、各種プラスチックシートの平坦な形状のものが挙げられる。また、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。さらに表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0018】
各種プラスチックシートは、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが使用できる。
【0019】
本発明の研磨材用両面感圧接着シートの少なくとも一方の感圧接着剤層は、アクリル系ポリマーとフェノール骨格を有する粘着付与樹脂とを含有する感圧接着剤から形成されるものであって、研磨液耐性及び接着性に優れるものである。
【0020】
本発明で用いる感圧接着剤を構成するアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを主成分とするラジカル重合性不飽和モノマーを、重合開始剤を用いて従来公知の重合法、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等によって重合することにより得ることができる。
ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の直鎖または分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステル及び対応するメタクリル酸エステル等が挙げられる。使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜10であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明における両面感圧接着シートは研磨材の研磨装置固定用として使用され、その環境は苛酷なものである。長時間にわたり強酸性から強アルカリ性の研磨液に曝され、感圧接着シートが研磨材や研磨装置から剥がれることはあってはならないため、感圧接着剤層は大きな接着力を必要とされる。これまで、研磨材用感圧接着シートではアクリル系ポリマーを形成するモノマーの種類については殆ど重要視されることが無く、どのようなものでも良いとされてきた。しかしながら、強酸性あるいは強アルカリ性、場合によっては過酸化水素を含む研磨液に長時間暴露されるというように、研磨環境が一層厳しくなっている状況下ではポリマーを構成するモノマーの選択は大変重要であり、ラジカル重合性不飽和モノマーがアクリル酸ブチルを主成分とすることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中70〜99.9重量%含有され、1種または2種以上含有される。
そして、ラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中、アクリル酸ブチルが50〜95重量%含有されることが好ましい。
【0022】
本発明における両面感圧接着シートは大きな接着力を有するものである。接着性を得るために極性基を有するモノマーが一般的に使用される。代表的な極性基含有モノマーとして水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーがあるが、水酸基含有モノマーを用いた感圧接着剤の接着性は低い。また、水酸基は極性基であるといえどもその強度は低く、オイル成分を含む研磨材と密着した場合に、本来極性の低いオイル成分が感圧接着剤層に移行しやすく、感圧接着剤層と研磨材との密着性が低下すると考えられる。オイル成分の感圧接着剤層への移行を阻害するために、本発明においてはラジカル重合性不飽和モノマーがカルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。
【0023】
ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマーをラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中0.1〜10重量%含有することが好ましく、0.2〜5重量%含有することがより好ましく、1〜4重量%含有することがさらに好ましい。カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられるが、これらの中でもアクリル酸が特に好ましく用いられる。カルボキシル基含有モノマーの割合が0.1重量%未満の場合、感圧接着剤層の研磨材等への強い接着性が得られにくい。一方、カルボキシル基含有モノマーの割合が10重量%を超えると、特に強アルカリ性の研磨液に曝された場合に研磨材や研磨装置から剥がれやすくなる。
【0024】
また、本発明に用いるラジカル重合性不飽和モノマーとしては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコール性水酸基含有モノマー、
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー、
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N―アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3オキソブチル)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドモノマー、
燐酸基含有ビニルモノマーや酢酸ビニル、スチレン、ブタジエン等のビニルモノマー、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられ、ラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中0〜10重量%の割合で用いることができ、1種または2種以上使用できる。
【0025】
アクリル系ポリマーは感圧接着剤を構成する成分である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、−70℃〜−5℃であることがより好ましく、さらに好ましくは−60℃〜−10℃である。ガラス転移温度が0℃を超えると、十分な接着性が確保できない傾向にある。
なお、アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、それを構成するラジカル重合性不飽和モノマーの組成比と、それぞれのモノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度を基に、公知の方法により算出することができる。
【0026】
アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が40万〜90万であることが好ましく、50万〜85万であることがより好ましく、さらに好ましくは60万〜80万である。重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による、標準のポリスチレン換算の値である。
重量平均分子量が40万より小さい場合には、感圧接着剤の凝集力が弱く、研磨時に加わるせん断力に耐え切れず、感圧接着シートが研磨材や研磨装置から剥がれるやすくなる。一方、重量平均分子量が90万よりも大きい場合には、研磨材への密着性が弱くなりやすい。
【0027】
アクリル系ポリマーは、種々の重合開始剤を用い、その量、重合温度等の重合諸条件を適宜調整することにより得ることができる。ラジカル重合性不飽和モノマーを重合する際には、開始剤として過酸化物やアゾ系化合物が用いられる。
本発明において用いられる過酸化物としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類等を挙げることができる。
【0028】
ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等が挙げられる。
【0029】
パーオキシケタール類としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0030】
ハイドロパーオキサイド類としては、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0031】
ジアルキルパーオキサイド類としては、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド等を挙げることができる。
【0032】
ジアシルパーオキサイド類としては、ジイソブチルパーオキシド、ジ(3,5,5,−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等を挙げることができる。
【0033】
パーオキシジカーボネート類としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。
【0034】
パーオキシエステル類としては、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0035】
本発明において用いられるアゾ系化合物としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等をあげることができる。反応性、重合安定性を考慮すると、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
【0036】
ラジカル重合性不飽和モノマーを重合する際には、重合開始剤を複数回使用することが好ましい。最初に添加した重合開始剤が熱等により分解し、時間が経つに従って活性が徐々になくなる。従って、重合反応の途中で重合開始剤を追加することが好ましい。重合開始剤を追加することにより、反応生成物、即ち重合体の分子量を大きくしたり、未反応モノマーを低減したりすることが可能となる。
【0037】
重合開始剤として用いられるアゾ系化合物は、水素引き抜き反応を殆ど生じない。一方、過酸化物を用いると、水素引き抜き反応が多数生じる。水素引き抜き反応が起こると、その部分を基点として、重合体に分岐構造が導入される。従って、重合開始剤の違いは、得られる重合体の物性やその重合体の溶液物性に影響を与える。特に、反応の初期に用いる重合開始剤の違いは、重合体の物性やその溶液物性に大きな影響を与える。
過酸化物を用いて重合したものは、ポリマー分子の分岐している部分が近傍のポリマー分子と絡まり合うので、感圧接着剤層の凝集力を大きくすることができる。重合の初期の段階で過酸化物を用いると分岐構造を効果的に導入することができる。
【0038】
本発明では、重合初期に過酸化物を用いる場合、ラジカル重合性不飽和モノマー100molに対して、過酸化物を0.03〜0.13mol用いることが好ましく、0.02〜0.1mol用いることがより好ましい。0.03mol未満だと重合が速やかに進行せず、0.13molより多いと反応が早くなりすぎて分子量が小さくなり、さらには反応が暴走しやすいため好ましくない。
そして、重合率が70〜90%になった後、第2の開始剤を用い、残存しているラジカル重合性不飽和モノマーを反応させることが好ましい。第1の開始剤と第2の開始剤との合計量は、ラジカル重合性不飽和モノマー100molに対して、0.05〜1mol程度であることが好ましく、0.07〜0.7mol程度であることがより好ましい。
【0039】
本発明では、感圧接着剤が、カルボキシル基と反応し得る化合物を硬化剤として含有することが好ましい。
カルボキシル基と反応し得る硬化剤としては、金属キレート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、アジリジン系硬化剤等を使用することができる。これらは単独で使用したり、複数種を併用したりすることもできる。
カルボキシル基と反応し得る硬化剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。さらに好ましくは、0.25〜5重量部である。0.01重量部未満だと、感圧接着剤層としての凝集力が不足し、10重量部を超えると、被着体への密着性が不良となりやすいので好ましくない。
【0040】
公知の金属キレート系硬化剤としては、チタンキレート硬化剤、アルミキレート硬化剤、ジルコニウムキレート硬化剤等が挙げられる。チタンキレート硬化剤を用いると感圧接着剤が着色し易く、また不透明となりやすい。また、ジルコニウムキレート硬化剤は、ジルコニウムの原子半径が大きいので、結合力が弱くなる傾向にある。従って、アルミキレート系硬化剤が好ましい。
金属キレート系硬化剤の安定性、取り扱いやすさを考慮すると、アルミキレート系硬化剤が好ましい。アルミキレート系硬化剤は、例えばβ−ジケトンのような化合物とアルミニウムがキレート構造を有しているものが多いので、硬化剤を配合後も感圧接着剤を安定な状態に維持することができる。
【0041】
公知のエポキシ系硬化剤としては、エポキシ基を分子内に複数個有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。該エポキシ系硬化剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0042】
公知のイソシアネート系硬化剤としては、公知のジイソシアネート化合物、公知のジイソシアネート化合物を3官能ポリオール成分で変性したいわゆるアダクト体、ジイソシアネート化合物が水と反応したビュレット体、ジイソシアネート化合物3分子から形成されるイソシアヌレート環を有する3量体(イソシアヌレート体)を使用することができる。
【0043】
公知のジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0047】
脂環族ジイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0048】
本発明に用いられるジイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)が好ましい。
【0049】
また、これらのジイソシアネート化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体も好適に使用することができる。
【0050】
公知のアジリジン系硬化剤としては、1分子中に少なくともアジリジニル基を2個以上有する化合物であり、例えば、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアマイド)、N,N’−ジフェニルエタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアマイド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(アジリジンカルボキシアマイド)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)ホスフィン、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0051】
本発明は、研磨材や研磨装置に使用される両面感圧接着シートであり、まず研磨材に十分に接着すること、次に強酸性あるいは強アルカリ性、場合によっては過酸化水素を含有する研磨液に曝されても研磨材及びプラスチックシート基材への密着性低下が少ないことが特徴である。
【0052】
研磨材は様々な樹脂から作られており、その多くは撥水加工等が施されているため、感圧接着剤が接着し難い素材である。また研磨材用両面感圧接着シートには平滑性が求められるために芯材にプラスチックシート基材を用いることが重要である。したがって、プラスチックシート基材に対しても密着性のよい感圧接着剤が求められる。
このような要求に応えるべく、本発明の両面感圧接着シートの製造に用いる感圧接着剤は、アクリル系ポリマーとの相溶性が高く、また難接着性素材に対する密着性の良いフェノール骨格を有する粘着付与樹脂を含有することが重要である。
【0053】
フェノール骨格を有する粘着付与樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール変性キシレン樹脂およびテルペンフェノール樹脂が好ましい。それぞれフェノール変性量を調整することが可能であるが、水酸基価が50〜180mgKOH/gであることが好ましく、60〜160mgKOH/gであることがより好ましく、さらに好ましくは65〜150mgKOH/gである。
水酸基価が50mgKOH/gより小さい場合には、研磨材への密着性が低くなりやすい。一方、180mgKOH/gを超える場合には、感圧接着剤層が硬くなりすぎて、研磨材へラミネートする際に多大な加熱を必要とするため好ましくない。
【0054】
また、フェノール骨格を有する粘着付与樹脂の軟化点は、60〜180℃であることが好ましく、70〜160℃であることが好ましく、さらに好ましくは100〜150℃である。60℃より低い場合には、感圧接着剤層が柔らかくなりやすく、凝集力を得にくい。一方180℃を超える場合には、研磨材への密着性が低下しやすい。
【0055】
フェノール骨格を有する粘着付与樹脂としては、アクリル系ポリマー100重量部に対して5〜50重量部使用することが好ましく、5〜40重量部使用することがより好ましく、10〜35重量部使用することがさらにより好ましい。
【0056】
また、本発明においては、フェノール骨格を有する粘着付与樹脂以外のロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系石油系樹脂および脂肪族系石油樹脂等を併用するこができる。
ロジン系樹脂としては、天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジン、不均化ロジンエステル等が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。
芳香族系石油樹脂としては、スチレンオリゴマー、α−メチルスチレン/スチレン共重合体等が挙げられる。
【0057】
本発明における感圧接着剤層のガラス転移温度は−50〜10℃であることが重要であり、−40〜10℃であることが好ましく、さらに好ましくは−35〜10℃である。
−50℃よりも低い場合には、感圧接着剤の凝集力が小さくなりやすい。一方、10℃より高い場合には、研磨材への密着性が弱くなりやすい。
【0058】
さらに本発明における感圧接着剤は各種の添加剤等を含有することが可能である。
具体的には、シランカップリング剤、界面活性剤、消泡剤、中和剤、可塑剤、着色剤、フィラー、撥水剤等の添加剤が挙げられる。
【0059】
本発明の両面感圧接着シートは、上記性感圧接着剤を剥離シート上にコーティングし、乾燥し、感圧接着剤層を設けた後、該感圧接着剤層とプラスチックシート基材とを貼り合わせ、感圧接着剤層をシート基材上に転写する方法、あるいはプラスチックシート基材に直接感圧接着剤をコーティング、乾燥して剥離シートを張り合わせる方法、あるいは両方の方法を片方ずつ用いて得られるが、これらの方法に限定されない。さらに必要に応じてエージングすることによって、本発明の両面感圧接着シートとすることができる。
【0060】
感圧接着剤をコーティングする方法としては特に制限されるものではなく、コンマコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等のロールコーター、スロットダイコーター、リップコーター、カーテンコーター等の従来公知のコーティング装置によることができる。
形成される感圧接着剤層の厚さは、20〜100μmであることが重要であり、30〜100μmであることが好ましく、40〜90μmであることがより好ましい。
【0061】
得られた両面感圧接着シートは接着性、凝集力および耐研磨液性が良好であるため、研磨部材等の装着に好ましく用いられる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0063】
(実施例1)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部を、さらに酢酸エチル:46部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を混合し、滴下槽に仕込んだ。
【0064】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器にアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、酢酸エチル:18部、トルエン:18部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、還流温度下で滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら重合率が80%に達したところで、ベンゾイルパーオキサイド0.04部を添加し、重合率が99%以上になるまで5時間反応を続けた。
次いで、酢酸エチル40部を加えて室温まで冷却し、反応を終了した。この反応溶液は、無色透明で固形分44.8重量%、粘度20000mPa・sであり、共重合体の重量平均分子量は650,000であった。尚、上記ラジカル重合性不飽和モノマーの組成から得られるポリマーの、理論的に求められるガラス転移温度は−53.5℃である。
【0065】
不揮発分、重量平均分子量は以下の方法に従って求めた。
<不揮発分の測定>
各反応溶液約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分濃度(固形分)とした。
<溶液粘度の測定>
各反応溶液を25℃中でB型粘度計(東京計器社製)にて、12rpm、1分間回転の条件で測定した。
<重量平均分子量の測定>
東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;HPC−8020)を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0066】
得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して水酸基価:140mgKOH/g、軟化点112℃のテルペンフェノールであるシルバレスTP300(Arizona Chemical社製)を15重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
【0067】
得られた感圧接着剤を転写法にて塗工乾燥し、厚み25μmのポリエチレンテレフタラートフィルムの両面にそれぞれ厚さが40μm、80μmの感圧接着剤層を形成し、両面感圧接着シートを得た。形成された感圧接着剤層の外観(透明性)を目視にて観察した。
【0068】
<感圧接着剤層のガラス転移温度>
得られた感圧接着剤を剥離シートに塗工乾燥し、厚さ80μmの感圧接着剤キャストフィルムを作製した。この感圧接着剤層のみのキャストフィルムを測定試料として、RPT−3000W(株式会社エー・アンド・デイ社製)を用いて自由減衰振動法により感圧接着剤層のガラス転移温度を測定した。
<接着力評価試料作製>
得られた両面感圧接着シートを幅25mm、長さ100mmに裁断し、厚さ80μm側の露出した感圧接着剤層と、密度:0.51g/cm、A硬度(shore−A):86の硬質ウレタンフォームとを、圧力:1.5kgf/cm、速度:1m/分で、加熱ラミネートした。加熱ラミネート時に硬質ウレタンフォームに接触する感圧接着剤層表面の温度は60℃〜65℃であった。ラミネート後、23℃雰囲気下で24時間放置して試料を得た。
<薬品浸漬前>
得られた試料を40℃雰囲気下に約1時間放置した後、同雰囲気下で引張試験機を用いて、180度方向へ300mm/分の速度で引き剥がし、その強度を記録した。
<薬品浸漬後>
得られた試料を3%過酸化水素水、pH11のKOH水溶液、及びpH1.5の硫酸中にそれぞれ40℃で336時間浸漬し、40℃雰囲気下で各薬品から取り出してすぐに引張試験機を用いて、180度方向へ300mm/分の速度で引き剥がし、その強度を記録した。
測定結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して水酸基価:140mgKOH/g、軟化点112℃のテルペンフェノールであるシルバレスTP300(Arizona Chemical社製)を7.5重量部、フェノール骨格を有しないロジンエステルであるスーパーエステルA−100(荒川化学工業株式会社製):7.5重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0070】
(実施例3)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して水酸基価:165mgKOH/g、軟化点125℃のフェノール変性キシレン樹脂であるニカノールHP−120(フドー株式会社製)を7.5重量部、フェノール骨格を有しないロジンエステルであるスーパーエステルA−100(荒川化学工業株式会社製):7.5重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0071】
(実施例4)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸ブチル:15部、アクリル酸2−エチルヘキシル:30部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、酢酸エチル:46部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を混合し、滴下槽に仕込んだ。
【0072】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器にアクリル酸ブチル:15部、アクリル酸2−エチルヘキシル:30部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、酢酸エチル:18、トルエン:18部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、還流温度下で滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら重合率が80%に達したところで、ベンゾイルパーオキサイド0.04部を添加し、重合率が99%以上になるまで5時間反応を続けた。
次いで、酢酸エチル40部を加えて室温まで冷却し、反応を終了した。この反応溶液は、無色透明で固形分44.5重量%、粘度16000mPa・sであり、共重合体の重量平均分子量は550,000であった。尚、上記ラジカル重合性不飽和モノマーの組成から得られるポリマーの、理論的に求められるガラス転移温度は−58.6℃である。
得られたアクリル系ポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0073】
(実施例5)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル:1部、酢酸エチル:46部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を混合し、滴下槽に仕込んだ。
【0074】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器にアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル:1部、酢酸エチル:18、トルエン:18部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、還流温度下で滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら重合率が80%に達したところで、ベンゾイルパーオキサイド0.04部を添加し、重合率が99%以上になるまで5時間反応を続けた。
次いで、酢酸エチル40部を加えて室温まで冷却し、反応を終了した。この反応溶液は、無色透明で固形分44.8重量%、粘度17000mPa・sであり、共重合体の重量平均分子量は600,000であった。尚、上記ラジカル重合性モノマーの組成から得られるポリマーの、理論的に求められるガラス転移温度は−53.0℃である。
得られたアクリル系ポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0075】
(実施例6)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、アセトン:46部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を混合し、滴下槽に仕込んだ。
【0076】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器にアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、アセトン:36部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、還流温度下で滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら重合率が80%に達したところで、ベンゾイルパーオキサイド0.04部を添加し、重合率が99%以上になるまで5時間反応を続けた。
次いで、酢酸エチル40部を加えて室温まで冷却し、反応を終了した。この反応溶液は、無色透明で固形分43.8重量%、粘度50000mPa・sであり、共重合体の重量平均分子量は1,200,000であった。尚、上記ラジカル重合性不飽和モノマーの組成から得られるポリマーの、理論的に求められるガラス転移温度は−53.5℃である。
得られたアクリル系ポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0077】
(実施例7)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、酢酸エチル:46部、連鎖移動剤としてα−ピネン:0.1部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を混合し、滴下槽に仕込んだ。
【0078】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器にアクリル酸ブチル:30部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、アクリル酸メチル:4部、アクリル酸:1部、酢酸エチル:18部、トルエン:18部、連鎖移動剤としてα−ピネン:0.1部、ベンゾイルパーオキサイド:0.02部を仕込み、重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、還流温度下で滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら重合率が80%に達したところで、ベンゾイルパーオキサイド0.04部を添加し、重合率が99%以上になるまで5時間反応を続けた。
次いで、酢酸エチル40部を加えて室温まで冷却し、反応を終了した。この反応溶液は、無色透明で固形分44.8重量%、粘度4000mPa・sであり、共重合体の重量平均分子量は350,000であった。尚、上記ラジカル重合性不飽和モノマーの組成から得られるポリマーの、理論的に求められるガラス転移温度は−53.5℃である。
得られたアクリル系ポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0079】
(比較例1)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して、フェノール骨格を有しないロジンエステルであるスーパーエステルA−100(荒川化学工業株式会社製):15重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0080】
(比較例2)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して、フェノール骨格を有しないロジンエステルであるペンセルD−160(荒川化学工業株式会社製):15重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0081】
(比較例3)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して、フェノール骨格を有しないテルペン樹脂であるYSポリスターPX1250(ヤスハラケミカル株式会社製):15重量部、酢酸エチル:15重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0082】
(比較例4)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液100重量部に対して、水酸基価140mgKOH/g、軟化点112℃のテルペンフェノールであるシルバレスTP300(Arizona Chemical社製):80重量部、酢酸エチル:80重量部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体:0.7重量部を添加及び混合して感圧接着剤を得た。
得られた感圧接着剤を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0083】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシート基材の少なくとも一方の面に、アクリル系ポリマーとフェノール骨格を有する粘着付与樹脂とを含有する感圧接着剤から形成される、ガラス転移温度が−50〜10℃であり、厚さ20〜100μmの感圧接着剤層を積層してなる研磨材用両面感圧接着シート。
【請求項2】
感圧接着剤が、アクリル系ポリマー100重量部に対して、フェノール骨格を有する粘着付与樹脂を5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載の研磨材用両面感圧接着シート。
【請求項3】
アクリル系ポリマーが、ガラス転移温度が0℃以下のポリマーを形成し得るラジカル重合性不飽和モノマーを重合してなり、重量平均分子量が40万〜90万であって、前記ラジカル重合性不飽和モノマーの合計100重量%中、アクリル酸ブチル50〜95重量%を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の研磨材用両面感圧接着シート。
【請求項4】
ラジカル重合性不飽和モノマーが、アクリル酸を必須成分とすることを特徴とする請求項3記載の研磨材用両面感圧接着シート。

【公開番号】特開2008−255253(P2008−255253A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100076(P2007−100076)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】