説明

研磨機及びこれを用いたゴムローラの製造方法

【課題】研磨砥石の形状・条件を変更・調節する必要がなく、ゴム弾性層外周面の研磨性をその軸方向に沿って効果的に制御可能な研磨機を提供する。
【解決手段】回転可能な円筒形状の研磨砥石と、ゴムローラと研磨砥石の軸方向が互いに平行となるようにゴムローラを保持して回転させることが可能な保持手段と、ゴムローラの外周面の軸方向の温度分布を制御可能な制御手段と、を備えたことを特徴とするプランジ方式円筒研磨機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムローラのゴム外周面の研磨加工に使用されるプランジ方式円筒研磨機及びそれを用いたゴム弾性層の表面が研磨されたゴムローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置の帯電・転写プロセスにおいて、接触帯電及び接触転写の手法が研究されている。図1は、接触帯電手段及び接触転写手段を有する電子写真装置の構成を模式的に示す図である。1は被帯電体としての像保持体であり、アルミニウムなどの導電性の支持体と、その外周面に少なくとも光導電層を有するドラム型の感光体である。2はこの感光体に接し、感光体の表面を所定の電位に一様に帯電させる帯電手段である。
【0003】
この帯電手段は、バネ等の圧接手段(図示していない)を用いて所定の圧接力により感光体1に圧接され、感光体1の回転にともない従動回転する。また、軸体に直流と交流、又は、直流のみのバイアスを印加することで感光体1を所定の電位に接触帯電させる。つまり、良好な画像を得るためには、帯電手段2は、感光体1と均一に接触すること、及び良好な導電性を有することが必要となる。
【0004】
次に、帯電手段2により所定の電位が帯電された感光体1の表面は、レーザー、LED等の露光手段(図示していない)から出力される露光3によって画像情報を露光される。これによって、感光体1の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0005】
次いで、現像手段4によって、この感光体1表面の潜像を、トナー画像として可視像化する。このトナー画像は、転写部材5によって転写材6の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで、感光体1表面のトナー画像が転写材6の表面側に転写されたものである。トナー画像の転写を受けた転写材6は感光体1から分離されると共に、定着部材7によって熱、圧力を付与されて固着される。また、トナー画像転写後の感光体1の表面は、クリーニング部材8により転写時における残留トナー等の付着物の除去を受けて清浄面化され、くり返し作像に供される。なお、図1の中の9はトナー、10は回転軸を示す。
【0006】
こうした帯電手段2、転写部材5、現像手段4等としては、図2に示すように、少なくともその両端が回転可能に支持される軸体と、軸体の外周面上に設けられたゴム弾性層とによって構成されるゴムローラ101が用いられている。このゴムローラ101は、感光体、転写ベルトなどの像坦持体、紙などに対して、ローラ表面を密着させて安定した接触状態を確保することが求められる。この為、ゴム弾性層は、ゴム、エラストマーなどの材料を用いてソリッド又は発泡体状に形成した低硬度な弾性体により構成されている。
【0007】
また、帯電手段2、転写部材5、現像手段4等に使用されるゴムローラとしては、様々な形状のものが使用されている。例えば、軸方向に関して中央部と両端部の外径が同じであるストレート形状のゴムローラ、中央部から端部に向かってその外径が漸次、小さくなるクラウン形状のゴムローラなどを挙げることができる。また、中央部から端部に向かってその外径が漸次、大きくなる逆クラウン形状のゴムローラを挙げることができる。このゴムローラの形状は、使用するゴムローラの目的に合せて適宜、選択された形状となっている。
【0008】
一方、電子写真装置に用いられるゴムローラは、外径において100分の1のmm単位の加工精度が要求されている。この理由は、ゴムローラの外径や振れ等の寸法精度が画像特性に影響を与えるためである。例えば、電子写真装置用の感光体に圧接させて用いる帯電ローラは、感光体を均一に帯電させる為にクラウン形状が採用されることが多い。この帯電ローラにより感光体を帯電させる原理は、帯電ローラと感光体との間に形成されるギャップ間で放電するものである。そこで、この際、帯電ローラの外径や振れ等の寸法精度が悪いと、帯電ローラと感光体間のギャップの不均一さによって感光体に対する放電のムラが発生する場合がある。この結果、画像不良が発生して、トナーや外添剤などによる汚染の原因となる場合がある。そこで、帯電ローラと感光体のギャップの幅を均一にするためには、ゴムローラのクラウン形状の制御、すなわち研磨により外周面の寸法精度を高めることが重要となってくる。
【0009】
そこで、従来から、このようなゴムローラの外周面を研磨する方法の一つとしてプランジ方式が知られている。プランジ方式とは、ゴム弾性層の軸方向の幅以上の幅を有する円筒形状の研磨砥石を用い、ゴム弾性層の軸方向の全長を研磨砥石に接触させて研磨させる方法である。この方法では、研磨砥石とゴムローラの位置を移動させずに固定して研磨する。このプランジ方式の研磨加工では、ゴムローラの全幅を一度に研磨できるという利点があり、トラバース方式の研磨加工よりも加工時間を短くすることが可能である。特許文献1(特開2002−070840号公報)には、弾性ローラの弾性体層の軸方向長さに対し、0.9〜1.3倍の幅をもつ砥石を用い、オシュレーション処理を行なうプランジ方式の研削方法が開示されている。また、特許文献2(特開2006−130627号公報)には、研削時に砥石と弾性ローラの接触に伴う負荷変動をセンサーで感知して、切込み移動側の前進後退を制御したプランジ方式の研削方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−070840号公報
【特許文献2】特開2006−130627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、プランジ方式を用いた研磨方法においてゴムローラを所望の形状に研磨するためには、従来から、ゴムローラを所望の形状に合わせた形状の研磨砥石を用いていた。例えば、ゴムローラをクラウン形状に仕上げる場合、予め逆クラウン形状に成形した研磨砥石を用いて研磨加工を行なっていた。
【0011】
しかしながら、研磨性の悪い材料のゴム弾性層を有するゴムローラに対して短時間で研磨加工を行う場合、研磨後のゴムローラの形状が所望の形状とならない場合があった。なお、この「研磨性」とは、一定の条件(研磨時間など)で研磨処理を行なった時に、実際に研磨されるゴムローラの量が大きいか少ないかによって判断される。すなわち、「研磨性が良い」とはゴムローラが研磨される量が多く研磨後にゴムローラの外径が小さくなることを表す。また、「研磨性が悪い」とはゴムローラが研磨される量が少なく研磨後でもゴムローラの外径が大きいことを表す。すなわち、研磨性の悪い材料のゴム弾性層は十分に研磨されず、研磨後のゴムローラの外径が太くなり、所望の形状が得られない場合があった。
【0012】
このため、研磨によりゴムローラを所望の形状とするためには、ゴムローラの所望の形状に合わせて研磨砥石の形状を調節する必要があった。この研磨砥石の形状の調節は、その表面をダイヤモンドドレッサ等により研磨・成形するドレスという作業により行なうことができる。しかしながら、このドレス作業による仕上げには、多大な作業時間が必要であり、作業能率を低下させることとなっていた。また、上記のように、仮に研磨砥石の形状を調節した場合であっても、研磨によってゴムローラを所望の形状とすることが不可能な場合があった。
【0013】
そこで、本発明者は上記課題を解決するため、鋭意検討した。その結果、ゴムローラの研磨中に、ゴム弾性層の外周面の軸方向の温度分布を制御することによって、ゴム弾性層のゴム特性(硬度、破断性など)を軸方向に部分的に変えられることを発見した。そして、これによりゴム弾性層の外周面の研磨性を、その軸方向に沿って変化させて、ゴムローラを所望の形状に研磨できることを発見した。すなわち、本発明は、研磨砥石の形状・条件を調節することなく、ゴムローラを研磨して容易に所望の形状と出来るプランジ方式円筒研磨機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態は、
軸体とゴム弾性層とを有するゴムローラの外周面の研磨用のプランジ方式円筒研磨機であって、
回転可能な円筒形状の研磨砥石と、
ゴムローラと研磨砥石の軸方向が互いに平行となるように前記ゴムローラを保持して回転させることが可能な保持手段と、
前記ゴムローラの外周面の軸方向の温度分布を制御可能な制御手段と、
を備えたことを特徴とするプランジ方式円筒研磨機に関する。
【0015】
また、本発明の、表面が研磨されたゴムローラの製造方法は、
プランジ方式円筒研磨機の保持手段に、軸体とゴム弾性層とを有するゴムローラを保持させる工程と、
前記研磨砥石とゴムローラを回転させながら前記研磨砥石とゴムローラの外周面を接触させて前記ゴムローラの外周面を研磨する工程と、
前記制御手段により前記ゴムローラの外周面の温度分布を制御する工程と
を含むことを特徴とする表面が研磨されたゴムローラの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ゴム弾性層外周面の研磨性をその軸方向に沿って効果的に制御して、ゴムローラを所望の形状に研磨することができる。このため、ゴムローラの形状に合わせて研磨砥石の形状・条件を変更・調節する必要がなく、ゴムローラを研磨して、簡易な工程で所望形状のゴムローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0018】
1.プランジ方式円筒研磨機
本発明のプランジ方式円筒研磨機について、以下に説明する。本発明の研磨機は、軸体と軸体の外周面上にゴム弾性層とを有するゴムローラの外周面の研磨用のプランジ方式円筒研磨機である。研磨砥石、保持手段、制御手段を備える。研磨砥石は、回転可能であり円筒形状を有している。保持手段は、ゴムローラと研磨砥石の軸方向が互いに平行となるようにゴムローラを、研磨機内に保持し、回転させることが可能なように構成されている。また、制御手段は、ゴムローラの外周面の軸方向の温度分布を制御可能となっている。
【0019】
図4は、本発明のプランジ方式円筒研磨機の一例を表す模式図である。図4に示されるように、この研磨機は、保持手段により、ゴムローラを保持して回転できるようになっている。このゴムローラの保持手段は、主軸台ユニット41と心押軸ユニット46を有している。主軸台ユニット41は、主軸受け部42、コレットチャック43a、プーリ及びベルト44、並びにプーリ及びベルトを介して主軸とコレットチャック43aを一体的に回転させるワーク回転用モータ45によって構成されている。心押軸ユニット46は、同様にして、心押軸受け部47、コレットチャック43b、プーリ及びベルト44、ワーク回転用モータ45により構成されている。また、心押台ユニット46は、前後進が可能なように、リニアガイド等(図示していない)を備えている。
【0020】
主軸の先端にはコレットチャック43aが取り付けてあり、ゴムローラ101の軸体端部103aはコレットチャック43aにより保持されるようになっている。また、もう一方の軸体端部103bは、心押軸ユニット46がゴムローラ101側に前進した後にコレットチャック43bにより保持されるようになっている。このようにして研磨機内に保持されたゴムローラ101は、ワーク回転用モータ45が駆動するとプーリ及びベルト44、並びに主軸受け部42及び心押軸受け部47を介して、回転するようになっている。
【0021】
48は研磨砥石であり、研磨砥石48を回転させながら49のダイヤモンドドレッサを押し当てることにより、逆クラウン状に成形される。また、410は回転する研磨砥石48を保持する砥石軸受け部、411は砥石回転伝達用のベルト及びプーリ、412は砥石軸受け部410を介して研磨砥石48を駆動回転させる砥石用モータである。この砥石台413上には、研磨砥石48、砥石軸受け部410、砥石用モータ412が取り付けられている。
【0022】
この主軸コレットチャック43aと心押軸コレットチャック43bにより、両端を保持されたゴムローラ101の回転中心に対して、砥石台23の研磨砥石48の回転中心は平行に配置されている。すなわち、ゴムローラ101の軸方向と、研磨砥石48の軸方向は互いに平行となるように配置されている。そして、研磨砥石48は、研磨砥石48の回転中心とゴムローラ101の回転中心を含む面上を、ゴムローラ101の回転中心に対して直交する方向に移動可能なようになっている。
【0023】
なお、上記研磨機において、主軸側がコレットチャック、芯押軸側がセンタ又は逆センタ受けである構成としても良い。また、コレットチャックの代わりにダイヤフラムチャック等によりゴムローラの両端を保持する構成とすることも可能である。更に、主軸側を駆動回転し、芯押軸側を従動回転とする片駆動構成とすることも可能である。
【0024】
(制御手段)
次に、制御手段414について説明する。図4,8に示すように、本例の研磨機は、ゴムローラ101を介して研磨砥石48と反対側に制御手段414を備える。この制御手段414は効率的なゴムローラの温度制御が可能となるよう、制御手段の幅方向とゴムローラ101の軸方向が平行となるように設置されている。このように制御手段を配置することにより、研磨前又は研磨中のゴムローラ101をその軸方向に一括して効果的に温度分布を制御でき、ゴムローラ101を所望の形状に調整することができる。
【0025】
制御手段414には、遠赤外線・近赤外線、誘導加熱、熱板、熱風ヒーター等の公知の加熱方法を使用できる。また、これ以外に制御手段414の加熱・冷却方法としては、加熱した流体又は冷却した流体を、ゴムローラの外周面に吹き付ける方法などを使用することができる。しかし、制御手段414の加熱・冷却方法としては特にこれらの方法に限定されるわけではなく、その他の加熱手段、冷却手段を適宜、使用することが可能である。装置の大型化、複雑化を避けるためにも、本発明においては流体吹き付け機構を有する制御手段を用いることが好ましい。
【0026】
このように、制御手段によって、効果的にゴムローラ外周面を、その軸方向に沿って温度分布を生じさせることができる。この結果、研磨砥石による研磨後には、ゴムローラの加熱部分はその外径が小さくなり、冷却部分はその外径が大きくなる。この理由は、加熱した場合には研磨するゴム弾性層の構成材料が軟化して研磨し易くなるのに対して、冷却した場合にはゴム弾性層の構成材料の硬化と擬似的な性質(硬度/破断性)の変化が生じて研磨しにくくなるためと考えられる。そして、この研磨性の大小が、研磨後のゴムローラの外径の大小として生じるものと考えられる。以上のように、本発明では、研磨工程の前から研磨工程の終了まで、又は研磨工程において、制御手段を用いてゴムローラの外周面に対して、その軸方向の温度分布を制御する。これにより、研磨後のゴムローラの形状プロファイルを制御することが可能となる。
【0027】
図5〜図7を用いて、制御手段を更に詳細に説明する。図5に制御手段として、流体吹き付け機構を有するものを示す。なお、各図(図5(a)、(b)、図6(a)、(b)、図7(a)、(b))において、下方の図は制御手段の上面図、上方の図は制御手段の断面図を表す。これらの制御手段により、ゴムローラに吹き付ける流体としては、水、油、有機溶剤、空気、窒素、炭酸ガス等の各種液体や気体を使用することができる。ここで、例えば水のような液体を使用する場合には、制御手段の構成によっては排水機構など複雑な機構が必要な点、研磨時の水の周囲への飛散、水と研磨粉の分離処理が困難な点などが問題となる場合がある。このため、吹き付け用の流体としては気体を用いることが好ましい。また、気体の中でも入手性やコスト、設備等の観点から、空気を用いることがより好ましい。
【0028】
この流体の吹き付けによるゴムローラの軸方向の温度分布を変化させる方法としては、ゴムローラの軸方向に対して吹き付ける流体の温度を変化させる方法や流体の流量を変化させる方法を挙げることができる。また、これら両方の方法を併用することもできる。これらの方法を用いることにより、ゴムローラ外周面の軸方向の温度分布を、効果的に制御することが可能となる。
【0029】
図5に、ゴムローラの軸方向に吹き付ける流体の流量を変化させる機構を有する制御手段を示す。図5の制御手段では、ゴムローラの軸方向に対応する方向に、流体を噴出するスリット幅が変化している。より具体的には、図5(a)の例では、ゴムローラの端部に相当する部分の制御手段のスリット幅が狭く、中央部に相当する部分の制御手段のスリット幅が広くなっている。このようにゴムローラの軸方向に相当する方向に対してスリット幅が変化することによって、ゴムローラに吹き付けられる流体の流量が、ゴムローラの軸方向に対して変化する。すなわち、ゴムローラの端部に相当する部分の制御手段はスリット幅が狭いため、吹き付ける流体の流量が少なくなる。また、ゴムローラの中央部に相当する部分の制御手段はスリット幅が広いため、吹き付ける流体の流量が多くなる。このため、制御手段は、ゴムローラの軸方向に沿って見た場合、その端部から中央部に向かって徐々に吹き付ける流体の流量が増加した後、再び端部に向けて流量が減少することとなる。
【0030】
この制御手段414を用いてゴムローラに対して加熱した流体を吹き付けた場合、ゴムローラの端部に付与される熱量は少なく、端部から中央部に向けて徐々に熱量が増加した後、再び端部に向けて熱量が減少することとなる。また、この流体の加熱温度を高くすることによって、この流体の吹き付けによりゴムローラに与えられる熱量は、研磨砥石とゴムローラの摩擦により発生する摩擦の熱量よりも十分に大きくなる。このため、制御手段を使用しない場合と比較して、ゴムローラの中央部はより研磨されてローラ外径は小さくなる。また、ゴムローラの端部は中央部に対して研磨されにくくなりローラ外径は小さくなる。
【0031】
また、上記とは逆に、ゴムローラに対して冷却した流体を吹き付けた場合には、ゴムローラの中央部付近が最も冷却され、中央部から端部に向かうにつれて徐々に冷却される度合いが弱まる。このため、制御手段を使用しない場合と比較して、ゴムローラはその中央部はより研磨され難くなり、研磨後のローラ外径は大きくなる。また、ゴムローラは中央部から端部に向かうにつれて徐々に研磨されやすくなり、中央部に比べて端部は相対的にローラ外径が大きくなる。
【0032】
図5(b)は、図5(a)とは逆に、ゴムローラの端部に相当する部分のスリット幅が広く、ゴムローラの中央部に相当する部分のスリット幅が狭い制御手段の一例を表したものである。この制御手段では、ゴムローラの端部に相当する部分から吹き付けられる流体の流量が多く、端部から中央部に相当する部分に向けて徐々に流体の流量が減少する。そして、再び、軸方向に沿って中央部から端部に向けて吹き付けられる流体の流量が増加する。結果として、図5(a)とは逆に、この制御手段により加熱した流体をゴムローラに吹き付けた場合には、ゴムローラの端部付近が最も加熱され、端部から中央部に向かって徐々に加熱される度合いが弱まる。すなわち、本例の制御手段を用いた場合、制御手段を使用しない場合と比較して、研磨後のゴムローラはその端部がより研磨されてローラ外径は小さくなる。また、ゴムローラの端部から中央部に向かって、ローラ外径は大きくなる。
【0033】
一方、図5(b)の制御手段を用いて冷却した流体をゴムローラに吹き付けた場合には、ゴムローラの端部付近が最も冷却され、軸方向に沿って端部から中央部に向かって徐々に冷却される度合いが弱まる。すなわち、本例の制御手段を用いた場合、制御手段を使用しない場合と比較して、研磨後のゴムローラは、その端部がより研磨され難くなりローラ外径は大きくなる。また、ゴムローラの端部から中央部に向かって、ローラ外径は小さくなる。
【0034】
上記のように、図5(a)及び(b)では、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、スリット幅を変化させた制御手段を例示した。図6(a)及び図6(b)は図5とは異なり、ゴムローラの軸方向に相当する方向に複数の円形ノズルを配置し、各円形ノズルの径を変化させた制御手段を示す。すなわち、図6(a)の制御手段は、ゴムローラの端部に相当する部分で円形ノズルの径が最も小さく、中央部に相当する部分で円形ノズルの径が最も大きくなっている。また、図6(b)の制御手段は、ゴムローラの端部に相当する部分で円形ノズルの径が最も大きく、中央部に相当する部分で円形ノズルの径が最も小さくなっている。
【0035】
また、図7(a)及び図7(b)の制御手段では、各円形ノズルの径は同一であり、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、円形ノズルの数や密度を変化させている。すなわち、図7(a)の制御手段は、ゴムローラの端部に相当する部分で円形ノズルの数が最も少なく、中央部に相当する部分で円形ノズルの数が最も多くなっている。また、図7(b)の制御手段は、ゴムローラの端部に相当する部分で円形ノズルの数が最も多く、中央部に相当する部分で円形ノズルの数が最も少なくなっている。なお、これらの制御手段において、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、スリット幅、円形ノズルの径や密度を変化させる割合は、円弧曲線、高次曲線、など適宜、選択することができる。
【0036】
制御手段の各部の寸法は、表面が研磨された後のゴムローラの形状・寸法に応じて適宜、選択することができる。例えば、図5(b)、図6(b)、図7(b)の制御手段を使用して研磨面230mm、外径φ9mm程度のゴムローラを研磨する場合には、表面が研磨された後のゴムローラを下記のような寸法とすることができる。W1=230mm、W2=12mm、W3=30mm、W4=1mm、W5=3mm、D1=3mm、D2=1mm、D3=0.8mm。なお、上記寸法は例示であり、研磨するゴムローラの外径や長さにより適宜、選択することができ、上記数値に制限されるわけではない。円形ノズルを備えた制御手段を使用する場合、円形ノズルの径は小さく、数が多い方が好ましい。
【0037】
図9〜12に、流体の吹き付け機構を備えた制御手段を示す。図9及び10の制御手段では、固定用ブロックに流体供給用の管が多数連結されている。また、図11及び12の制御手段ではそれぞれ、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、円形管、平形管が配置されている。図9〜12の管は、個別の流体供給装置(図示していない)に接続されており、これらの管と流体供給装置との間には個別に開閉弁が設けられている。なお、この開閉弁としては、手動弁や電磁弁等の公知の流量調整弁を使用することができる。そして、各管ごとに開閉状態を調整可能となっている。このような構成とすることにより、各管ごとに開閉状態を制御して、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、流体の流量を調整することが可能となる。なお、流体の供給機構は上記のような構成に限定されるわけではなく、各管ごとに個別の流体供給装置に接続しても良い。この場合、個別の供給装置ごとに流体の流量を調整することができる。
【0038】
なお、図5〜図7、図9〜図12の制御手段において、スリット、円形ノズル、管から吹き付ける流体の温度、流量、圧力等は、研磨条件によって適宜、最適な条件に設定する。この研磨条件としては、研磨砥石の回転数、ゴムローラの回転数、ゴム弾性層の構成材料、ノズルの設置間隔、研磨時に発生する摩擦熱、ゴムローラの形状等を挙げることができる。特に、ゴムローラに吹き付ける流体の温度は、研磨時のゴム弾性層の構成材料の劣化及び研磨砥石中の結合樹脂剤に与える熱の影響を考慮して、−50℃以上200℃以下とすることが好ましい。
【0039】
上記のように、ゴムローラに温度分布を生じさせる制御手段としては、図5〜図7、図9〜図12のように流体を吹き付けるものを挙げることができる。また、これ以外にも制御手段としては、ゴムローラの軸方向に相当する方向に沿って、複数の加熱装置を配置したものや、個別に温度調節した流体を吹き付け可能な手段を配置したものを挙げることができる。なお、この個別に温度調節した流体を吹き付け可能な手段としては、各手段ごとに個別に流体供給装置、温度調節装置を有するものや、共通の流体供給装置と個別の温度調整装置を有するものなどを挙げることができる。
【0040】
制御手段は、効率よくゴムローラ外周面の温度を制御できるよう、図4、8に示すように、ゴムローラを介して研磨砥石と反対側に配置することが好ましい。この制御手段とゴムローラ間の距離は、10〜100mm程度とすることが好ましい。制御手段とゴムローラ間の距離をこれらの範囲内にすることによって、研磨時に発生する研磨粉によるゴムローラの汚染を防ぐと共に、優れた温度制御効率を有することができる。
【0041】
また、制御手段の幅方向の長さは、ゴム弾性層の軸方向の長さと同等、又はそれ以上となっていることが好ましい。制御手段の幅方向の長さをこのように制御することによって、ゴム弾性層の外周面を、その軸方向の全長にわたって一度に研磨することができる。
【0042】
(研磨砥石)
次に、本発明に用いられるプランジ方式研磨機用の研磨砥石について説明する。研磨砥石は、研磨効率やゴム弾性層の構成材料の種類に応じて、適宜、表面の粗さを選択することができる。この砥石表面の粗さは、砥粒の種類、粒度、結合度、結合剤、組織(砥粒率)などによって調節することができる。
【0043】
なお、上記「砥粒の粒度」とは砥粒の大きさを示し、例えば、#80と表記する。この場合の数字は、砥粒を選別するメッシュの1インチ(25.4mm)あたり幾つの目があるかを意味しており、数字が大きくなるほど砥粒が細かいことを示す。この粒度としては、研磨性及び表面性の兼合いから#60以上#120以下の粒度を使用することがより好ましい。
【0044】
上記「砥粒の結合度」とは硬さを示し、アルファベットAからZで表す。この結合度はAに近いほど軟らかく、Zに近いほど硬いことを表す。砥粒中に結合剤を多量に含むほど、結合度の硬い砥石となる。
【0045】
上記「砥粒の組織(砥粒率)」とは、砥石の全容積中に占める砥粒の容積比を表し、この組織の大小により組織の粗密を表す。組織を示す数字が大きいほど、粗であること示す。この組織の数字が大きく、大きな空孔を有する砥石を多孔性砥石と呼び、目詰まり、砥石焼けを防ぐ等の利点を有する。
【0046】
一般的に、この研磨砥石は、原料(砥材、結合剤、気孔剤、等)を混合し、プレス成形、乾燥、焼成、仕上げにより製造することができる。砥粒としては、緑色炭化けい素質(GC)、黒色炭化けい素質(C)、白色アルミナ質(WA)、かっ色アルミナ質(A)、ジルコニアアルミナ質(Z)などを使用することができる。これらの材料は単体で、又は複数種を混合して用いることができる。
【0047】
また、上記結合剤としては、ビトリファイド(V)、レジノイド(B)、レジノイド補強(BF)、ゴム(R)、シリケート(S)、マグネシア(Mg)、シェラック(E)などを用途に応じて適宜、使用することができる。
【0048】
研磨砥石の形状としては、ゴムローラをクラウン形状に研磨できるように、端部から中央部に向けて徐々に外径が小さくなる逆クラウン形状とすることが好ましい。研磨砥石の外径形状は、長手方向に対して円弧曲線又は2次以上の高次曲線の形状となることが好ましい。また、これ以外にも、研磨砥石の外径形状は4次曲線やサイン関数等、様々な数式で表される形状となっていても良い。研磨砥石の外形形状は外径の変化が滑らかに変化するものが好ましいが、円弧曲線等を直線による多角形状に近似した形状としてもよい。この研磨砥石の軸方向に相当する方向の幅は、ゴムローラの軸方向の幅と同等か、それ以上であることが好ましい。
【0049】
(ゴムローラの製造方法)
本発明のゴムローラの製造方法は、以下の工程を有する。
プランジ方式円筒研磨機の保持手段に、軸体とゴム弾性層とを有するゴムローラを保持させる工程、
研磨砥石とゴムローラを回転させながら研磨砥石とゴムローラの外周面を接触させてゴムローラの外周面を研磨する工程、
制御手段によりゴムローラの外周面の温度分布を制御する工程。
【0050】
まず、予め準備するゴムローラは以下の方法により製造することができる。すなわち、軸体の外周面上に、射出成形法、押出成形法、トランスファー成形法、プレス成形法等によってゴム弾性層の材料を形成することにより製造することができる。
【0051】
例えば、射出成形法では、円筒金型内に同心状になるように、軸体を保持する。次に、この円筒金型内に、軸体の外周面上にゴム弾性層用の材料を注入した後、加熱して、ゴム弾性層用の材料を硬化させてゴムローラを成形する。
また、押出成形法では、押出機を用いてゴム弾性層用材料をチューブ状に押出す。この後、チューブ状のゴム弾性層用材料の、チューブ内部の中空部に軸体を挿入した後、加熱してゴムローラを形成する。なお、この押出成形法では、押出機から軸体とゴム弾性層用材料を一体的に共押出した後、加熱することによってゴムローラを成形することもできる。製造時間の短縮等を考えると、これらの製造方法の中では、押出機から軸体とゴム弾性層用材料を共押出した後、加熱する押出成形法が好ましい。なお、この軸体の外周面上へのゴム弾性層用材料の形成方法は、上記方法に限定されるわけではない。
【0052】
図3に、押出成形法によるゴムローラの製造方法の一例の模式図を示す。押出機31は、クロスヘッド32を備えている。この押出機31は、軸体送りローラ33によってクロスヘッド32内に送られた軸体34と、別途、押出機31に導入されたゴム弾性層用材料と、をクロスヘッド32から一体的に共押出する。そして、軸体34の外周面上に、円筒状のゴム弾性層用材料を形成する。次に、このように軸体の外周面上に押出したゴム弾性層用材料に対して加硫処理(この処理工程は図3中に示していない)を行ない、ゴム弾性層用材料を硬化させてゴム弾性層とする。この後、ゴム弾性層の端部を切断・除去する処理35を行い、研磨前のゴムローラ36を成形する。
【0053】
なお、このゴム弾性層用材料を加熱、加硫する方法としては、特に限定されるわけではなく、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法を使用することもできる。また、これらの方法と共に、ゴム弾性層用材料を設けた軸体を回転させながら、このゴム弾性層用材料の外周面に加熱状態の円筒状又は平面状の部材を接触させる方法を併用しても良い。この加熱状態の円筒状又は平面状の部材の加熱温度は140℃以上220℃以下が好ましく、加熱時間は10分以上120分以下が好ましい。
【0054】
ゴムローラを構成する軸体34の材質としては、ニッケルメッキやクロムメッキを施したSUM材等の鋼材を含むステンレススチール棒、リン青銅棒、アルミニウム棒、耐熱樹脂棒等が好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。また、ゴム弾性層の材料としては、以下のものが挙げられる。天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム、熱可塑エラストマー等。これらの材料は単体で、又は複数種を混合して用いることができる。
【0055】
ゴム弾性層に導電性を付与するために、上記ゴム弾性層用材料中には導電性粒子を分散させることが好ましい。この導電性粒子としては、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボンなどの導電性カーボンを用いることができる。ゴム用カーボンとしては具体的には、以下のものを挙げることができる。Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性);Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性);High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性);Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性);General Purpose Furnace(GPF:汎用性);Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性);Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)など。
【0056】
また、天然グラファイトや人造グラファイトなどのグラファイト、TiO2、SnO2、ZnOなどの金酸化物、SnO2とSb23の固溶体、ZnOとAl23の固溶体などの複酸化物、Cu、Agなどの金属粉等、各種の導電性粒子を使用することができる。これらの導電性粒子は単体で、又は複数種を混合して使用しても良い。更に、導電性粒子に、導電性ポリマー、イオン導電剤などを併用することにより、ゴム弾性層に導電性を付与しても良い。
【0057】
上記ゴム弾性層用材料中には、加硫剤、加硫促進剤、導電剤、帯電制御剤、可塑剤、老化防止剤等を適宜、添加することもできる。また、帯電防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、充填剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、難燃剤等を必要に応じて適宜、添加することもできる。
上記のようにして研磨後のゴムローラに対しては、表面処理や塗工を行なうことにより、様々な電子写真用のローラとして使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
[実施例1]
(未加硫ゴム組成物の作製)
以下の組成の材料を、加圧式ニーダーで15分間、混練した。
アクリルニトリルブタジエンゴム(商品名「NIPOL N230SV」:JSR(株)製) 100質量部
カーボンブラック(商品名「トーカブラック#7360SB」:東海カーボン製、DBP吸油量87) 48質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
酸化亜鉛(酸化亜鉛二種 正同化学) 5質量部
炭酸カルシウム(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製)
20質量部
上記材料組成物に対して更に下記の材料を添加した後、15分間、オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。
ジベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製) 1質量部
テトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTBzTD」:大内新興化学(株)製) 4.5質量部
硫黄(加硫剤) 1.2質量部。
【0059】
(ゴムローラの作製)
外径φ6mm、長さ254mmで、予め両端の12mmの部分を除いた領域に接着剤を塗布したステンレス製の軸体を用意した。この接着剤としては、導電性ホットメルトタイプのものを用いた。この後、図3に示す押出機を用いて、軸体と未加硫ゴム組成物を一体的に共押出しすることで、軸体の外周面上に未加硫ゴムローラ組成物を成形した。この後、160℃、120分間、熱風炉による加熱加硫を行った。次に、未加硫ゴムローラ組成物の軸方向の長さが230mmとなるように、未加硫ゴムローラ組成物の両端部を切断・除去して、外径φ9mmのゴムローラを得た。
【0060】
次いで、テイケン(株)製で、砥粒が緑化炭化けい素(JIS記号:GC)、粒度#80、結合度C、組織20、結合剤V(ビトリファイド)の研磨砥石を準備した。なお、この研磨砥石は全幅234mm、直径300mmとした。次に、この研磨砥石を、(端部の研磨砥石の直径)−(中央部の研磨砥石の直径)=0.11mm(逆クラウン形状)となるように、ダイヤモンドドレッサにより成形した。次に、この研磨砥石を、図4に示す制御手段を備えたプランジ方式円筒研磨機に取り付けた。
【0061】
次に、この研磨機中に上記のようにして製造したゴムローラを保持させた。そして、ゴムローラを回転させながら、制御手段によってゴムローラの軸方向に温度分布を生じさせた。この制御手段としては、10個の遠赤外線加熱装置を、その幅方向に並べたものを用いた。また、ゴムローラと制御手段との距離は30mmとした。この時の制御手段の温度分布を図14(b)に示す。
【0062】
次に、研磨砥石を回転させながら、研磨砥石の外周面がゴムローラの外周面に接するように移動させた。この際の研磨条件は、ゴムローラが研磨砥石と接触してから終了までの時間8秒、研磨砥石の回転数2050rpm、ゴムローラの回転数350rpmとした。また、研磨砥石とゴムローラの回転方向を同方向とするアッパーカット方式とした。そして、研磨後のゴムローラの中央部外径φ8.4mmとなるように研磨を行い、ゴムローラ1を得た。この時のゴムローラの外径プロファイルを測定した結果を図14(a)に示す。なお、図14(a)において、横軸の左端(5mm近傍)、右端(225mm近傍)は、ゴム弾性層の端部を表す。なお、ゴムローラの外径プロファイルは、(株)キーエンス製の外径・寸法測定器LS−5500を用いて測定した。具体的な測定方法は、図13に示すように、ゴムローラのゴム弾性層の両端から5mmの位置と、この位置から軸方向50に沿って22mmピッチ毎にすれた位置の11点に関して、それぞれ円周方向に60度ピッチの3点の直径を測定した(合計11×3=33点)。そして、軸方向の各位置毎に60度ピッチで測定した3点の平均値をゴムローラの直径とした。
【0063】
[実施例2]
実施例1において、制御手段を、図5に示す軸方向に相当する方向にスリット幅を変化させた流体を吹き付けるタイプのものに変更した。また、ゴムローラと制御手段との距離を50mmとし、流体として空気を使用して流体圧力によりその流量を調整した。制御手段による、ゴムローラの軸方向の温度分布の制御を研磨中に開始し、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図15(b)に示すように調整した。なお、図15(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は実施例1と同様にして、ゴムローラ2を作製した。この後、実施例1と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図15(a)に示す。
【0064】
[実施例3]
実施例2において、制御手段を、図6に示す軸方向に相当する方向にノズル径を変化させたタイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図16(b)に示すように調整した。なお、図16(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ3を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図16(a)に示す。
【0065】
[実施例4]
実施例2において、制御手段を、図9に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図17(b)に示すように調整した。なお、図17(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ4を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図17(a)に示す。
【0066】
[実施例5]
実施例2において、制御手段を、図10に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図18(b)に示すように調整した。なお、図18(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ5を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図18(a)に示す。
【0067】
[実施例6]
実施例2において、制御手段を、図11に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図19(b)に示すように調整した。なお、図19(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ6を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図19(a)に示す。
【0068】
[実施例7]
実施例2において、制御手段を、図11に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図20(b)に示すように調整した。なお、図20(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ7を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図20(a)に示す。
【0069】
[実施例8]
実施例2において、制御手段を、図12に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図21(b)に示すように調整した。なお、図21(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ8を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図21(a)に示す。
【0070】
[実施例9]
実施例2において、制御手段を、図11に示す管並列タイプのものに変更した。また、制御手段から吹き付ける空気の幅方向(ゴムローラの軸方向に相当)の具体的な温度分布を図22(b)に示すように調整した。なお、図22(b)において、破線で示した曲線は、制御手段から吹き付ける空気の圧力(kg/cm2)を示す。これ以外は、実施例2と同様にして、ゴムローラ9を作製した。この後、実施例2と同様にして、ゴムローラの外径を測定した結果を図22(a)に示す。
【0071】
[参考例1〜9]
制御手段を使用しない以外は、実施例1〜9と同様にして、ゴムローラ10〜18を作製した。実施例1〜9と同様にして、ゴムローラの外径を測定した。それらの結果を図14(a)、15(a)、16(a)、17(a)、18(a)、19(a)、20(a)、21(a)、22(a)に示す。上記実施例及び参考例から、本発明によれば、研磨砥石の形状を変更することなく表面を研磨したゴムローラの外形の形状プロファイルを所望の形状とすることができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】電子写真装置の一例を示す図である。
【図2】ゴムローラを研磨する場合の一例を示す図である。
【図3】押出機の一例を表す模式図である。
【図4】本発明のプランジ方式研磨機の一例を表す模式図である。
【図5】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図6】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図7】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図8】本発明の研磨機中の制御手段と、ゴムローラの位置関係を表す模式図である。
【図9】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図10】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図11】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図12】本発明の制御手段の一例を表す模式図である。
【図13】ゴムローラの外径測定方法を表す模式図である。
【図14】実施例1及び参考例1の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図15】実施例2及び参考例2の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図16】実施例3及び参考例3の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図17】実施例4及び参考例4の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図18】実施例5及び参考例5の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図19】実施例6及び参考例6の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図20】実施例7及び参考例7の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図21】実施例8及び参考例8の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【図22】実施例9及び参考例9の外径測定結果及び制御手段による加熱条件を表す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 感光体
2 帯電部材
3 露光光
4 現像部材
5 転写部材
6 転写材
7 定着部材
8 クリーニング部材
9 トナー
10 回転軸
31 押出機
32 クロスヘッド
33 軸体送りローラ
34 軸体
35 切断・除去処理
36 研磨前のゴムローラ
41 主軸台ユニット
42 主軸受け部
43a,43b コレットチャック
44 回転伝達用プーリおよびベルト
45 ワーク回転用モータ
46 心押台ユニット
47 心押軸受け部
48 プランジ研磨用砥石
49 ダイヤモンドドレッサ
50 軸方向
410 砥石軸受け部
411 回転伝達用ベルトおよびプーリ
412 砥石用モータ
413 砥石台
414 温度分布制御手段
101 ゴムローラ
102 ゴム弾性層
103a,103b 軸体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体とゴム弾性層とを有するゴムローラの外周面の研磨用のプランジ方式円筒研磨機であって、
回転可能な円筒形状の研磨砥石と、
ゴムローラと研磨砥石の軸方向が互いに平行となるように前記ゴムローラを保持して回転させることが可能な保持手段と、
前記ゴムローラの外周面の軸方向の温度分布を制御可能な制御手段と、
を備えたことを特徴とするプランジ方式円筒研磨機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ゴムローラの外周面に流体を吹き付け、前記流体を吹き付ける際に流体の流量及び温度のうち少なくとも一方を、前記ゴムローラの軸方向に沿って変化させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のプランジ方式円筒研磨機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記研磨砥石の軸方向に配置された複数の流体吹き付け用のノズル又は管を具備し、各ノズル又は各管は、それぞれ個別に前記流体の流量及び温度のうち少なくとも一方を制御することが可能であることを特徴とする請求項2に記載のプランジ方式円筒研磨機。
【請求項4】
前記研磨砥石の形状が逆クラウン形状であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のプランジ方式円筒研磨機。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のプランジ方式円筒研磨機の保持手段に、軸体とゴム弾性層とを有するゴムローラを保持させる工程と、
前記研磨砥石とゴムローラを回転させながら前記研磨砥石とゴムローラの外周面を接触させて前記ゴムローラの外周面を研磨する工程と、
前記制御手段により前記ゴムローラの外周面の温度分布を制御する工程と
を含むことを特徴とする表面が研磨されたゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196050(P2009−196050A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41957(P2008−41957)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】